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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第57巻(申の巻)
序文
総説歌
第1篇 照門山颪
第1章 大山
第2章 煽動
第3章 野探
第4章 妖子
第5章 糞闘
第6章 強印
第7章 暗闇
第8章 愚摺
第2篇 顕幽両通
第9章 婆娑
第10章 転香
第11章 鳥逃し
第12章 三狂
第13章 悪酔怪
第14章 人畜
第15章 糸瓜
第16章 犬労
第3篇 天上天下
第17章 涼窓
第18章 翼琴
第19章 抱月
第20章 犬闘
第21章 言触
第22章 天葬
第23章 薬鑵
第24章 空縛
第25章 天声
余白歌
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真善美愛(第49~60巻)
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第57巻(申の巻)
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<<< 糸瓜
(B)
(N)
涼窓 >>>
第一六章
犬労
(
けんらう
)
〔一四六六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第57巻 真善美愛 申の巻
篇:
第2篇 顕幽両通
よみ(新仮名遣い):
けんゆうりょうつう
章:
第16章 犬労
よみ(新仮名遣い):
けんろう
通し章番号:
1466
口述日:
1923(大正12)年03月25日(旧02月9日)
口述場所:
皆生温泉 浜屋
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年5月24日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
デビス姫はワックスの話から、父がまだ存命で如意宝珠もひとまず戻ったこと、妹も生きていることを知ってやや安心していた。
三千彦とケリナ姫がやってきて問いかけた時には眠りについていた。デビス姫はスマートの吠え声で目を覚ました。
三千彦は強力にまかせて錠前をねじ切り、デビス姫を救い出した。二人とも足が立たなかったので、三千彦はまず二人を館に背負って送り届け、その後また戻って求道居士を助け出すことにした。
小国彦は昏睡状態であったが、三千彦が天の数歌を歌って祈願をこらした結果目を覚ました。小国別は娘たちとの再会をひとしきり喜んだあと、再び昏睡状態に陥った。
三千彦は求道居士を救い出すべくスマートとともに館を飛び出した。受付のエルはふと目をさまし、姉妹が帰ってきたこと、三千彦がテルモン山の岩窟に向かったことを知り、三千彦の後を追って飛び出した。
エルは先回りして、数十人の荒くれ男たちを指揮して三千彦を捕えようとしたが、スマートが飛び出して駆けまわり、足をくわえて将棋倒しに倒してしまった。男たちはいずれも草の中に四つ這いになってふるえている。
三千彦は求道居士とヘルが囚われている岩窟に近づいた。二人は数十人に棒きれで叩きつけられて血を流して倒れていた。三千彦は大声で呼ばわって群衆を止めた。群衆は棍棒、竹槍をもって三千彦に迫ってくる。三千彦は求道居士をかばいながら敵の刀を奪って守っている。
スマートがまたもや駆け回り、悪酔怪会員の男たちの足をくわえ、手にかみつき、一人残らず草の中に投げ倒した。
三千彦は求道居士とヘルに呼びかけると、二人とも返事があった。三千彦は二人を安堵させた。求道居士を背負い、ヘルはどうにか歩けたのでスマートに補助させて神館に帰って行った。
三五教の魔法使いがまた現れたというので、悪酔怪会員や宮町の老若男女は戦々恐々として、魔法使いと狂犬を撲殺すべく相談会をあちこちで開いていた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm5716
愛善世界社版:
208頁
八幡書店版:
第10輯 335頁
修補版:
校定版:
217頁
普及版:
100頁
初版:
ページ備考:
001
三千彦
(
みちひこ
)
はテルモン
山
(
ざん
)
の
中腹
(
ちうふく
)
をケリナ
姫
(
ひめ
)
を
背
(
せ
)
に
負
(
お
)
ひ、
002
スマートに
道案内
(
みちあんない
)
をさせ
乍
(
なが
)
ら
草
(
くさ
)
茫々
(
ばうばう
)
たる
歩
(
ある
)
き
難
(
にく
)
き
道
(
みち
)
を
辿
(
たど
)
り
辿
(
たど
)
つて、
003
デビス
姫
(
ひめ
)
を
押込
(
おしこ
)
めた
岩窟
(
いはや
)
の
前
(
まへ
)
に
漸
(
やうや
)
く
着
(
つ
)
いた。
004
デビス
姫
(
ひめ
)
はワックスの
話
(
はなし
)
によつて、
005
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
れる
事
(
こと
)
及
(
およ
)
び
父
(
ちち
)
の
存命
(
ぞんめい
)
なる
事
(
こと
)
、
006
並
(
なら
)
びに
妹
(
いもうと
)
の
安全
(
あんぜん
)
なる
事
(
こと
)
を
略
(
ほぼ
)
覚
(
さと
)
り、
007
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
で
下
(
おろ
)
し、
008
稍
(
やや
)
心
(
こころ
)
も
弛
(
ゆる
)
みグツタリと
岩
(
いは
)
に
凭
(
もた
)
れて
眠
(
ねむり
)
に
就
(
つ
)
いた。
009
漸
(
やうや
)
くにして
三千彦
(
みちひこ
)
は
岩窟
(
いはや
)
の
入口
(
いりぐち
)
に
着
(
つ
)
いた。
010
三千彦
(
みちひこ
)
『もし、
011
デビス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
012
私
(
わたし
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
神司
(
かむづかさ
)
三千彦
(
みちひこ
)
で
厶
(
ござ
)
います』
013
ケリナ
姫
(
ひめ
)
『お
姉様
(
あねさま
)
、
014
ケリナで
厶
(
ござ
)
います』
015
と
二人
(
ふたり
)
が
代
(
かは
)
る
代
(
がは
)
る
名
(
な
)
を
呼
(
よ
)
べども
少
(
すこ
)
しも
答
(
こたへ
)
がない。
016
ケリナ
姫
(
ひめ
)
は、
017
……
姉
(
あね
)
は
最早
(
もはや
)
何者
(
なにもの
)
にか
攫
(
さら
)
はれ
玉
(
たま
)
ひしか……と
心
(
こころ
)
も
心
(
こころ
)
ならず、
018
ケリナ
姫
(
ひめ
)
『
三千彦
(
みちひこ
)
様
(
さま
)
、
019
どう
致
(
いた
)
しませう。
020
姉上
(
あねうへ
)
様
(
さま
)
は
何者
(
なにもの
)
にか
攫
(
さら
)
はれ
遊
(
あそ
)
ばしたと
見
(
み
)
えまする。
021
これ
程
(
ほど
)
呼
(
よ
)
んでもお
答
(
こたへ
)
がないのは
不思議
(
ふしぎ
)
では
厶
(
ござ
)
いませぬか』
022
三千彦
(
みちひこ
)
『
決
(
けつ
)
して
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
023
鼾
(
いびき
)
の
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
居
(
ゐ
)
ます。
024
屹度
(
きつと
)
お
眠
(
やす
)
みになつて
居
(
ゐ
)
るのでせう』
025
スマートは
四辺
(
あたり
)
の
空気
(
くうき
)
を
震動
(
しんどう
)
させ、
026
『ウワツ ウワツ』と
叫
(
さけ
)
んだ。
027
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
驚
(
おどろ
)
いてデビス
姫
(
ひめ
)
は
夢
(
ゆめ
)
を
破
(
やぶ
)
られ
窓口
(
まどぐち
)
を
見
(
み
)
て、
028
……
何
(
なに
)
か
人声
(
ひとごゑ
)
がする
様
(
やう
)
だ……と
戸口
(
とぐち
)
に
躙寄
(
にじりよ
)
り、
029
隙間
(
すきま
)
より
透
(
す
)
かし
見
(
み
)
れば
星月夜
(
ほしづくよ
)
の
事
(
こと
)
とて
明瞭
(
はつきり
)
姿
(
すがた
)
は
分
(
わか
)
らねど、
030
どうやら
妹
(
いもうと
)
のスタイルによく
似
(
に
)
て
居
(
を
)
るので、
031
デビス
姫
(
ひめ
)
『
花
(
はな
)
の
色
(
いろ
)
はうつりに
けりな
姫
(
ひめ
)
の
姿
(
すがた
)
032
窶
(
やつ
)
れ
玉
(
たま
)
ひしことの
苦
(
くる
)
しさ。
033
吾
(
わが
)
命
(
いのち
)
助
(
たす
)
け
玉
(
たま
)
ひし
犬彦
(
いぬひこ
)
の
034
黒
(
くろ
)
き
姿
(
すがた
)
の
慕
(
した
)
はしきかな』
035
ケリナは
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
打悦
(
うちよろこ
)
び、
036
ケリナ
姫
(
ひめ
)
『
三千彦
(
みちひこ
)
の
情
(
なさけ
)
の
御手
(
みて
)
に
助
(
たす
)
けられ
037
汝
(
な
)
を
救
(
すく
)
はむと
尋
(
たづ
)
ね
来
(
きた
)
りぬ』
038
三千彦
(
みちひこ
)
『
神館
(
かむやかた
)
珍
(
うづ
)
の
御
(
おん
)
子
(
こ
)
とあれませる
039
デビスの
姫
(
ひめ
)
よ
安
(
やす
)
く
出
(
い
)
でませ。
040
いざさらば
此
(
こ
)
れの
鉄門
(
かなど
)
を
打破
(
うちやぶ
)
り
041
救
(
すく
)
ひまつらむ
神
(
かみ
)
のまにまに』
042
デビス
姫
(
ひめ
)
『
嬉
(
うれ
)
しさは
乙女
(
をとめ
)
の
胸
(
むね
)
に
三千彦
(
みちひこ
)
の
043
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
を
伏
(
ふ
)
し
仰
(
あふ
)
ぐかな』
044
三千彦
(
みちひこ
)
は
強力
(
がうりき
)
に
任
(
まか
)
せて
錠前
(
ぢやうまへ
)
を
捻切
(
ねぢき
)
り、
045
窟内
(
くつない
)
に
入
(
はい
)
つてデビス
姫
(
ひめ
)
の
手
(
て
)
を
執
(
と
)
り、
046
引抱
(
ひつかか
)
へ
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
した。
047
ケリナは
見
(
み
)
るよりデビスに
抱
(
だ
)
きつき、
048
ケリナ
姫
(
ひめ
)
『
姉上
(
あねうへ
)
様
(
さま
)
』
049
と
云
(
い
)
つたきり
後
(
あと
)
は
一言
(
ひとこと
)
も
発
(
はつ
)
し
得
(
え
)
ず、
050
悲
(
かな
)
しさと
嬉
(
うれ
)
しさに
咽返
(
むせかへ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
051
デビス
姫
(
ひめ
)
も
同
(
おな
)
じ
思
(
おも
)
ひの
懐
(
なつか
)
しさに、
052
妹
(
いもうと
)
の
体
(
からだ
)
を
抱
(
だ
)
きしめ
熱涙
(
ねつるゐ
)
を
流
(
なが
)
し、
053
言葉
(
ことば
)
さへ
得出
(
えだ
)
さず、
054
嬉
(
うれ
)
し
泣
(
な
)
きに
泣
(
な
)
きしやくつて
居
(
ゐ
)
る。
055
三千彦
(
みちひこ
)
『お
二人
(
ふたり
)
様
(
さま
)
、
056
斯様
(
かやう
)
な
処
(
ところ
)
に
長居
(
ながゐ
)
は
恐
(
おそ
)
れで
厶
(
ござ
)
います。
057
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
求道
(
きうだう
)
居士
(
こじ
)
やヘルを
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
さねばなりますまい。
058
サア
参
(
まゐ
)
りませう』
059
デビス
姫
(
ひめ
)
『ハイ、
060
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
に
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
061
どうも
妾
(
わたし
)
は
斯様
(
かやう
)
な
処
(
ところ
)
に
押込
(
おしこ
)
められて
立
(
た
)
ちもならず、
062
坐
(
すわ
)
りもならず
居
(
を
)
りましたので
歩
(
ある
)
く
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませぬ。
063
如何
(
どう
)
したら
宜
(
よろ
)
しう
厶
(
ござ
)
いませうかな』
064
三千彦
(
みちひこ
)
『ア、
065
さうでせうとも、
066
お
察
(
さつ
)
し
申
(
まを
)
します。
067
失礼
(
しつれい
)
ながらお
二人
(
ふたり
)
さま、
068
私
(
わたし
)
の
背
(
せな
)
に
負
(
おぶ
)
さつて
下
(
くだ
)
さい。
069
どうなり、
070
かうなりお
館
(
やかた
)
迄
(
まで
)
お
届
(
とど
)
けしませう。
071
再
(
ふたた
)
び
出直
(
でなほ
)
してスマートに
案内
(
あんない
)
させて
居士
(
こじ
)
を
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
しに
参
(
まゐ
)
りませう』
072
デビス
姫
(
ひめ
)
『
危急
(
ききふ
)
の
場合
(
ばあひ
)
で
厶
(
ござ
)
いますからお
言葉
(
ことば
)
に
甘
(
あま
)
へて、
073
さう
願
(
ねが
)
ひませうかな。
074
本当
(
ほんたう
)
に
済
(
す
)
まない
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
います』
075
三千彦
(
みちひこ
)
『
決
(
けつ
)
して
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
は
要
(
い
)
りませぬ。
076
サア』
077
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
少
(
すこ
)
し
蹲
(
しやが
)
んで
背
(
せな
)
を
突
(
つ
)
き
出
(
だ
)
す。
078
二人
(
ふたり
)
は
三千彦
(
みちひこ
)
の
背
(
せな
)
に
負
(
お
)
ぶさつた
儘
(
まま
)
、
079
星月夜
(
ほしづくよ
)
の
山坂
(
やまさか
)
をトボトボと
下
(
くだ
)
つて
神館
(
かむやかた
)
へ
密
(
ひそ
)
かに
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
080
スマートは
後前
(
あとさき
)
を
警護
(
けいご
)
し
乍
(
なが
)
ら
人影
(
ひとかげ
)
なき
所
(
ところ
)
を
案内
(
あんない
)
し、
081
夜明
(
よあ
)
け
前
(
まへ
)
、
082
ヤツトの
事
(
こと
)
で
館
(
やかた
)
に
着
(
つ
)
いた。
083
館
(
やかた
)
の
玄関口
(
げんくわんぐち
)
にはエルが
依然
(
いぜん
)
として
高鼾
(
たかいびき
)
をかいて
当直
(
たうちよく
)
を
勤
(
つと
)
めて
居
(
を
)
る。
084
受付
(
うけつけ
)
の
寝
(
ね
)
て
居
(
を
)
るのを
幸
(
さいは
)
ひ
勝手
(
かつて
)
覚
(
おぼ
)
えし
家
(
いへ
)
の
中
(
うち
)
、
085
小国別
(
をくにわけ
)
の
病室
(
びやうしつ
)
をさして
二人
(
ふたり
)
の
娘
(
むすめ
)
を
背負
(
せお
)
つた
儘
(
まま
)
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
つた。
086
小国別
(
をくにわけ
)
は
今
(
いま
)
や
断末魔
(
だんまつま
)
の
息
(
いき
)
を
引
(
ひ
)
き
取
(
と
)
らむとする
所
(
ところ
)
であつた。
087
小国姫
(
をくにひめ
)
は
最早
(
もは
)
や、
088
これ
迄
(
まで
)
と
夫
(
をつと
)
の
側
(
そば
)
に
附添
(
つきそ
)
ひ、
089
首
(
くび
)
頸垂
(
うなだ
)
れて
憂
(
うれ
)
ひに
沈
(
しづ
)
んでゐる。
090
それ
故
(
ゆゑ
)
三千彦
(
みちひこ
)
の
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
たのに
気
(
き
)
がつかなかつた。
091
三千彦
(
みちひこ
)
は
言葉
(
ことば
)
静
(
しづ
)
かに、
092
三千彦
(
みちひこ
)
『
奥様
(
おくさま
)
、
093
お
嬢
(
ぢやう
)
さまをお
伴
(
とも
)
して
帰
(
かへ
)
りました。
094
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさいませ』
095
と
云
(
い
)
ふ
声
(
こゑ
)
に
小国姫
(
をくにひめ
)
はフと
此方
(
こちら
)
を
向
(
む
)
いた。
096
見
(
み
)
れば
三千彦
(
みちひこ
)
が
二人
(
ふたり
)
の
娘
(
むすめ
)
を
背
(
せな
)
に
負
(
お
)
うて
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
097
小国姫
(
をくにひめ
)
は
夢
(
ゆめ
)
か、
098
現
(
うつつ
)
か、
099
幻
(
まぼろし
)
かと
嬉
(
うれ
)
しさ
余
(
あま
)
つてものをも
得
(
え
)
云
(
い
)
はず、
100
口
(
くち
)
を
開
(
あ
)
け、
101
目
(
め
)
を
瞠
(
みは
)
つた
儘
(
まま
)
、
102
石像
(
せきざう
)
の
如
(
ごと
)
く
突
(
つ
)
つ
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
103
三千彦
(
みちひこ
)
は
二人
(
ふたり
)
の
娘
(
むすめ
)
を
労
(
いたは
)
り、
104
ソツと
居間
(
ゐま
)
に
下
(
お
)
ろした。
105
二人
(
ふたり
)
の
乙女
(
をとめ
)
は
身体
(
しんたい
)
綿
(
わた
)
の
如
(
ごと
)
く
疲
(
つか
)
れ
果
(
は
)
て
一人
(
ひとり
)
で
歩
(
あゆ
)
む
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
なくなつてゐた。
106
デビス
姫
(
ひめ
)
『お
父
(
とう
)
様
(
さま
)
、
107
お
母
(
かあ
)
様
(
さま
)
、
108
漸
(
やうや
)
く
此
(
この
)
方
(
かた
)
に
助
(
たす
)
けられ
帰
(
かへ
)
つて
参
(
まゐ
)
りました。
109
誠
(
まこと
)
に
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
かけて
済
(
す
)
まぬ
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いました』
110
ケリナ
姫
(
ひめ
)
『
御
(
ご
)
両親
(
りやうしん
)
様
(
さま
)
、
111
つひ
悪魔
(
あくま
)
に
誘
(
さそ
)
はれて
家出
(
いへで
)
を
致
(
いた
)
し、
112
種々
(
いろいろ
)
と
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
を
掛
(
か
)
けましてお
詫
(
わび
)
の
申
(
まを
)
し
様
(
やう
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬ。
113
何卒
(
どうぞ
)
御
(
お
)
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
114
と
涙
(
なみだ
)
と
共
(
とも
)
に
詫入
(
わびい
)
る。
115
小国姫
(
をくにひめ
)
『ア、
116
夢
(
ゆめ
)
かと
思
(
おも
)
つたら
夢
(
ゆめ
)
ではなかつたかな。
117
三千彦
(
みちひこ
)
様
(
さま
)
、
118
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
119
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
が
貴方
(
あなた
)
の
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
うて
今
(
いま
)
の
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
待
(
ま
)
ち
兼
(
か
)
ねて
居
(
を
)
られた
様子
(
やうす
)
でしたが
最早
(
もはや
)
絶命
(
ことぎ
)
れた
様
(
やう
)
です。
120
アーア
何
(
なん
)
とかして
貴方
(
あなた
)
のお
顔
(
かほ
)
や
娘
(
むすめ
)
の
顔
(
かほ
)
を、
121
も
一度
(
いちど
)
見
(
み
)
せ
度
(
た
)
いものですが、
122
とても
此
(
この
)
世
(
よ
)
では
叶
(
かな
)
ひますまいな』
123
とワツと
泣
(
な
)
き
倒
(
たふ
)
れる。
124
二人
(
ふたり
)
の
娘
(
むすめ
)
は
父
(
ちち
)
の
枕辺
(
まくらべ
)
にすり
寄
(
よ
)
つて、
125
『お
父
(
とう
)
様
(
さま
)
お
父
(
とう
)
様
(
さま
)
』
126
と
泣
(
な
)
き
叫
(
さけ
)
ぶ。
127
三千彦
(
みちひこ
)
は
此
(
この
)
惨状
(
さんじやう
)
を
見
(
み
)
るに
忍
(
しの
)
びず、
128
『
国治立
(
くにはるたちの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
129
豊国主
(
とよくにぬしの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
130
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
131
何卒
(
なにとぞ
)
々々
(
なにとぞ
)
、
132
も
一度
(
いちど
)
病人
(
びやうにん
)
の
魂返
(
たまがへ
)
しをお
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいまして
親娘
(
おやこ
)
の
対面
(
たいめん
)
さして
下
(
くだ
)
さい』
133
と
汗
(
あせ
)
をタラタラ
流
(
なが
)
し
乍
(
なが
)
ら
祈願
(
きぐわん
)
を
凝
(
こ
)
らし、
134
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
唱
(
とな
)
へ
出
(
だ
)
した。
135
昏睡
(
こんすゐ
)
状態
(
じやうたい
)
に
陥
(
おちい
)
つた
小国別
(
をくにわけ
)
はパツと
目
(
め
)
を
開
(
ひら
)
き、
136
二人
(
ふたり
)
の
娘
(
むすめ
)
が
枕許
(
まくらもと
)
に
居
(
を
)
るのを
見
(
み
)
て
打驚
(
うちおどろ
)
き、
137
小国別
(
をくにわけ
)
『ア、
138
其方
(
そなた
)
はデビス
姫
(
ひめ
)
、
139
ケリナ
姫
(
ひめ
)
であつたか。
140
臨終
(
いまは
)
の
際
(
きは
)
に
一目
(
ひとめ
)
会
(
あ
)
ひたかつた。
141
ようマア
宜
(
よ
)
い
処
(
ところ
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さつた。
142
嘸
(
さぞ
)
苦労
(
くらう
)
をしたであらうな』
143
と
男泣
(
をとこな
)
きに
泣
(
な
)
く。
144
二人
(
ふたり
)
の
姉妹
(
おとどい
)
は
声
(
こゑ
)
を
揃
(
そろ
)
へて、
145
『お
父
(
とう
)
様
(
さま
)
、
146
お
懐
(
なつか
)
しう
厶
(
ござ
)
います。
147
何卒
(
どうぞ
)
確
(
しつか
)
りして
下
(
くだ
)
さいませ。
148
三千彦
(
みちひこ
)
様
(
さま
)
が
居
(
ゐ
)
らつしやいますから
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
149
さうお
気
(
き
)
の
弱
(
よわ
)
い
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
はずに
長生
(
ながいき
)
して
下
(
くだ
)
さいませ』
150
小国別
(
をくにわけ
)
『ア、
151
娘
(
むすめ
)
、
152
よう
云
(
い
)
うて
呉
(
く
)
れた。
153
その
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
くからは、
154
父
(
ちち
)
はもう、
155
何時
(
いつ
)
死
(
し
)
んでも
心残
(
こころのこ
)
りはない』
156
小国姫
(
をくにひめ
)
は
漸
(
やうや
)
うに
顔
(
かほ
)
をあげ、
157
『
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
158
嘸
(
さぞ
)
御
(
ご
)
満足
(
まんぞく
)
で
厶
(
ござ
)
いませうな。
159
妾
(
わたし
)
も
斯
(
こ
)
んな
有難
(
ありがた
)
い
事
(
こと
)
は
厶
(
ござ
)
いませぬ』
160
小国別
(
をくにわけ
)
は「ウン」と
云
(
い
)
つたきり、
161
又
(
また
)
もやスヤスヤ
昏睡
(
こんすゐ
)
状態
(
じやうたい
)
に
入
(
い
)
つた。
162
三千彦
(
みちひこ
)
は
小国姫
(
をくにひめ
)
に
向
(
むか
)
ひ、
163
『ケリナ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
164
デビス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
をお
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さつた
求道
(
きうだう
)
居士
(
こじ
)
が、
165
悪漢
(
わるもの
)
の
為
(
ため
)
に
岩窟内
(
がんくつない
)
に
押込
(
おしこ
)
められて
居
(
を
)
りますから、
166
私
(
わたし
)
は
之
(
これ
)
から
救
(
すく
)
うて
参
(
まゐ
)
ります。
167
さうして
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
がお
帰
(
かへ
)
りになつた
事
(
こと
)
は
私
(
わたし
)
が
帰
(
かへ
)
る
迄
(
まで
)
内密
(
ないみつ
)
に
願
(
ねが
)
ひます。
168
何卒
(
どうぞ
)
、
169
別
(
べつ
)
の
座敷
(
ざしき
)
に
移
(
うつ
)
してお
忍
(
しの
)
ばせを
願
(
ねが
)
ひます』
170
と
裏口
(
うらぐち
)
よりスマートと
共
(
とも
)
に
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
した。
171
受付
(
うけつけ
)
のエルは
奥
(
おく
)
の
様子
(
やうす
)
が
何
(
なん
)
となく
騒
(
さわ
)
がしいのでフと
目
(
め
)
を
覚
(
さ
)
まし、
172
四這
(
よつばひ
)
になつて
足音
(
あしおと
)
を
忍
(
しの
)
ばせ
乍
(
なが
)
ら
親娘
(
おやこ
)
対面
(
たいめん
)
の
様子
(
やうす
)
を
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
た。
173
今
(
いま
)
三千彦
(
みちひこ
)
が
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
したので
自分
(
じぶん
)
も
裏口
(
うらぐち
)
から
真跣足
(
まつぱだし
)
の
儘
(
まま
)
、
174
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
し、
175
見
(
み
)
え
隠
(
かく
)
れにトントントンと
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
うて
行
(
ゆ
)
く。
176
三千彦
(
みちひこ
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
にスマートの
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ、
177
求道
(
きうだう
)
居士
(
こじ
)
を
救
(
すく
)
ふべく
道
(
みち
)
を
急
(
いそ
)
いだ。
178
岩窟
(
がんくつ
)
の
一町
(
いつちやう
)
ばかり
手前
(
てまへ
)
迄
(
まで
)
来
(
き
)
て
見
(
み
)
ると
数多
(
あまた
)
の
荒男
(
あらをとこ
)
がワイワイと
何事
(
なにごと
)
か
喚
(
わめ
)
いて
居
(
を
)
る。
179
三千彦
(
みちひこ
)
は
暫
(
しば
)
らく
様子
(
やうす
)
を
窺
(
うかが
)
はむと
草
(
くさ
)
の
中
(
なか
)
に
身
(
み
)
を
隠
(
かく
)
し、
180
考
(
かんが
)
へて
居
(
ゐ
)
た。
181
エルは
道
(
みち
)
を
転
(
てん
)
じて
草
(
くさ
)
を
分
(
わ
)
け
大勢
(
おほぜい
)
の
前
(
まへ
)
へ
走
(
はし
)
り
寄
(
よ
)
つて、
182
エル『
今
(
いま
)
三五教
(
あななひけう
)
の
魔法使
(
まはふつかひ
)
三千彦
(
みちひこ
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
、
183
二人
(
ふたり
)
の
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
を
連
(
つ
)
れ
帰
(
かへ
)
り、
184
今
(
いま
)
又
(
また
)
求道
(
きうだう
)
居士
(
こじ
)
を
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
すべくやつて
来
(
き
)
て、
185
其処
(
そこ
)
の
草原
(
くさはら
)
に
隠
(
かく
)
れて
居
(
ゐ
)
る』
186
と
報告
(
はうこく
)
したので
数十
(
すうじふ
)
人
(
にん
)
の
荒
(
あら
)
くれ
男
(
をとこ
)
は
二
(
ふた
)
つに
分
(
わか
)
れ、
187
三十
(
さんじふ
)
人
(
にん
)
許
(
ばか
)
りは
三千彦
(
みちひこ
)
を
召捕
(
めしと
)
らむとエルが
案内
(
あんない
)
の
下
(
もと
)
に
詰
(
つ
)
めかけて
来
(
き
)
た。
188
スマートは
忽
(
たちま
)
ち
毛
(
け
)
を
逆立
(
さかだ
)
て
縦横
(
じうわう
)
無尽
(
むじん
)
に
駆
(
か
)
け
廻
(
めぐ
)
り、
189
足
(
あし
)
を
啣
(
くわ
)
へて
将棊倒
(
しやうぎだふ
)
しにバタバタと
倒
(
たふ
)
して
了
(
しま
)
つた。
190
此
(
この
)
勢
(
いきほ
)
ひに
辟易
(
へきえき
)
し、
191
何
(
いづ
)
れも
四這
(
よつばひ
)
となつて
雑草
(
ざつさう
)
の
中
(
なか
)
に
身
(
み
)
を
隠
(
かく
)
し
慄
(
ふる
)
うて
居
(
ゐ
)
る。
192
三千彦
(
みちひこ
)
は、
193
三千彦
(
みちひこ
)
『アハハハハハ』
194
と
高笑
(
たかわら
)
ひし
乍
(
なが
)
ら
岩窟
(
がんくつ
)
に
近付
(
ちかづ
)
けば、
195
求道
(
きうだう
)
居士
(
こじ
)
、
196
ヘルの
両人
(
りやうにん
)
を
雁字搦
(
がんじがら
)
みにして
数十
(
すうじふ
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
が
棒片
(
ぼうちぎれ
)
を
以
(
もつ
)
て
叩
(
たた
)
きつけて
居
(
ゐ
)
る。
197
求道
(
きうだう
)
居士
(
こじ
)
、
198
ヘルの
両人
(
りやうにん
)
は
半死
(
はんし
)
半生
(
はんしやう
)
の
態
(
てい
)
にて
顔面
(
がんめん
)
血潮
(
ちしほ
)
を
漲
(
みなぎ
)
らし
倒
(
たふ
)
れて
居
(
ゐ
)
た。
199
三千彦
(
みちひこ
)
は
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれ、
200
三千彦
(
みちひこ
)
『
罪
(
つみ
)
なき
修験者
(
しゆげんじや
)
を
打擲
(
ちやうちやく
)
するとは
何事
(
なにごと
)
ぞ。
201
理由
(
りいう
)
を
承
(
うけたま
)
はり
度
(
た
)
い』
202
と
云
(
い
)
はせも
果
(
は
)
てず、
203
群衆
(
ぐんしう
)
『
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
魔法使
(
まはふづかひ
)
、
204
サアよい
所
(
ところ
)
に
来
(
き
)
た。
205
貴様
(
きさま
)
も
血祭
(
ちまつり
)
にして
呉
(
く
)
れむ』
206
と
棍棒
(
こんぼう
)
、
207
竹槍
(
たけやり
)
を
持
(
も
)
つて
勢
(
いきほひ
)
よく
迫
(
せま
)
り
来
(
く
)
る。
208
三千彦
(
みちひこ
)
は
右
(
みぎ
)
に
左
(
ひだり
)
に
体
(
たい
)
をすかし、
209
一方
(
いつぱう
)
求道
(
きうだう
)
居士
(
こじ
)
を
庇
(
かば
)
ひながら、
210
敵
(
てき
)
の
刀
(
かたな
)
をひつたくり、
211
仁王立
(
にわうだ
)
ちとなつて、
212
寄
(
よ
)
らば
斬
(
き
)
らむと
身構
(
みがま
)
へして
居
(
ゐ
)
る。
213
空
(
くう
)
を
切
(
き
)
つて
駆
(
か
)
け
来
(
きた
)
るスマートは、
214
又
(
また
)
もや
縦横
(
じうわう
)
無尽
(
むじん
)
に
駆
(
か
)
け
廻
(
めぐ
)
り
足
(
あし
)
を
啣
(
くわ
)
へ
手
(
て
)
を
噛
(
か
)
み
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
さず
草原
(
くさはら
)
の
中
(
なか
)
へ
投倒
(
なげたふ
)
した。
215
悪酔怪
(
あくすゐくわい
)
員
(
ゐん
)
の
面々
(
めんめん
)
は
何
(
いづ
)
れも
不意
(
ふい
)
を
喰
(
くら
)
ひ、
216
肝
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
し
四這
(
よつばひ
)
となつて
草野
(
くさの
)
を
潜
(
くぐ
)
り
乍
(
なが
)
ら
各
(
おのおの
)
思
(
おも
)
ひ
思
(
おも
)
ひに
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く。
217
求道
(
きうだう
)
居士
(
こじ
)
及
(
および
)
ヘルは
余
(
あま
)
りの
負傷
(
いたで
)
に
気
(
き
)
も
遠
(
とほ
)
くなり、
218
呆
(
ほう
)
けた
様
(
やう
)
になつて
首
(
くび
)
ばかり
振
(
ふ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
219
三千彦
(
みちひこ
)
は
声
(
こゑ
)
を
励
(
はげ
)
まし、
220
三千彦
(
みちひこ
)
『
求道
(
きうだう
)
居士
(
こじ
)
殿
(
どの
)
、
221
ヘル
殿
(
どの
)
、
222
確
(
しつか
)
りなさいませ。
223
私
(
わたし
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
三千彦
(
みちひこ
)
で
厶
(
ござ
)
いますぞ』
224
と
耳許
(
みみもと
)
にて
呼
(
よば
)
はつた。
225
求道
(
きうだう
)
居士
(
こじ
)
はハツと
気
(
き
)
を
取
(
と
)
り
直
(
なほ
)
し、
226
四辺
(
あたり
)
をキヨロキヨロ
見廻
(
みまは
)
し
乍
(
なが
)
らヤツと
安心
(
あんしん
)
の
態
(
てい
)
にて、
227
求道
(
きうだう
)
居士
(
こじ
)
『ア、
228
危
(
あやふ
)
い
所
(
ところ
)
へよく
助
(
たす
)
けに
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました。
229
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
以前
(
いぜん
)
から
此
(
この
)
岩窟
(
がんくつ
)
に
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
まれ、
230
夜中
(
よなか
)
頃
(
ごろ
)
引張
(
ひつぱ
)
り
出
(
だ
)
されて
種々
(
いろいろ
)
と
打擲
(
ちやうちやく
)
に
合
(
あ
)
ひ、
231
到底
(
たうてい
)
助
(
たす
)
かるまいと
思
(
おも
)
ひましたが
貴方
(
あなた
)
がおいでなさつて
私
(
わたし
)
の
命
(
いのち
)
をお
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さつて、
232
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
233
そしてデビス
様
(
さま
)
、
234
ケリナ
様
(
さま
)
は
無事
(
ぶじ
)
で
厶
(
ござ
)
いませうか。
235
どうも、
236
それが
気
(
き
)
にかかりましてなりませぬ』
237
三千彦
(
みちひこ
)
『
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
238
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
はお
二人
(
ふたり
)
とも
私
(
わたし
)
が
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
し
今
(
いま
)
お
館
(
やかた
)
へ
送
(
おく
)
り
届
(
とど
)
けました。
239
そして
親娘
(
おやこ
)
の
対面
(
たいめん
)
をなさいました。
240
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
貴方
(
あなた
)
の
事
(
こと
)
が
気
(
き
)
にかかりお
救
(
すく
)
ひに
参
(
まゐ
)
りまして
厶
(
ござ
)
います』
241
求道
(
きうだう
)
居士
(
こじ
)
『ハイ、
242
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
243
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
如何
(
どう
)
したものか
私
(
わたし
)
は
足
(
あし
)
が
立
(
た
)
たない
様
(
やう
)
で
厶
(
ござ
)
います』
244
三千彦
(
みちひこ
)
『
私
(
わたし
)
は
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り
独活
(
うど
)
の
大木
(
たいぼく
)
と
云
(
い
)
はれた
位
(
くらゐ
)
ですから、
245
お
二人
(
ふたり
)
さまとも
私
(
わたし
)
の
背
(
せ
)
に
負
(
おぶ
)
さつて
下
(
くだ
)
さい。
246
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
お
館
(
やかた
)
までお
届
(
とど
)
け
致
(
いた
)
します』
247
求道
(
きうだう
)
居士
(
こじ
)
『
実
(
まこと
)
に
腑甲斐
(
ふがひ
)
ない
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
248
そんなら
助
(
たす
)
けて
頂
(
いただ
)
きませう。
249
ヘルさま、
250
貴方
(
あなた
)
は
如何
(
どう
)
ですか』
251
ヘル『ハイ、
252
私
(
わたし
)
はどうなりと
歩
(
ある
)
けるだらうと
思
(
おも
)
ひます』
253
三千彦
(
みちひこ
)
『もし
歩
(
ある
)
けなかつたら、
254
スマートさまの
首
(
くび
)
にでも
喰
(
くら
)
いついてお
帰
(
かへ
)
りなさい』
255
ヘル『ハイ、
256
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います、
257
命
(
いのち
)
の
親様
(
おやさま
)
』
258
と
感謝
(
かんしや
)
の
涙
(
なみだ
)
を
流
(
なが
)
し
乍
(
なが
)
らエチエチと
神館
(
かむやかた
)
を
指
(
さ
)
して
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
259
三五教
(
あななひけう
)
の
魔法使
(
まはふつかひ
)
、
260
並
(
ならび
)
に
狂犬
(
きやうけん
)
が
現
(
あら
)
はれたと
云
(
い
)
ふので、
261
悪酔怪
(
あくすゐくわい
)
員
(
ゐん
)
や
宮町
(
みやまち
)
の
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
は
戦々
(
せんせん
)
恟々
(
きようきよう
)
として
魔法使
(
まはふつかひ
)
及
(
およ
)
び
狂犬
(
きやうけん
)
撲殺
(
ぼくさつ
)
の
相談会
(
さうだんくわい
)
を
彼方
(
あちら
)
此方
(
こちら
)
に
開
(
ひら
)
いて
居
(
ゐ
)
た。
262
惟神
(
かむながら
)
神
(
かみ
)
のまにまに
述
(
の
)
べて
行
(
ゆ
)
く
263
テルモン
館
(
やかた
)
にありし
次第
(
しだい
)
を。
264
(
大正一二・三・二五
旧二・九
於皆生温泉浜屋
北村隆光
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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