竹藪を切り払ひてゆ小雀の声さえもなき長閑な城趾〈序文(初版)〉
土堤に立ちて亀岡城趾眺むれば巨石たたみの最中なりけり〈序文(初版)〉
会心の友なき吾はただ一人事業を友とし春を楽しむ〈序文(初版)〉
夜もすがら蚤に攻められ眠り得ず都にゐます君ぞ偲ばゆ〈序文(初版)〉
酔どれが千鳥足にて歩み行く千鳥の渕辺いとも危ふく〈序文(初版)〉
大本教スタイルゑいぞとぞめかれて川の上を降る舟のまばゆさ〈序文(初版)〉
円山や空に金柱みろく塔
五六七塔片側濡らす春の雨
光照殿地均し工事雨三日〈総説歌(初版)〉
石垣の高さに見ゆる経綸かな
諸々の人寄り来たる万寿苑
瑞霊の恵みも高し天恩郷
丸窓に弥生の満月影おぼろ
雨やみて頬白の声いと清し〈総説歌(初版)〉
夕焼けの空を眺めて翌日を祝ぎ
初雷も交りて花のあらし山
火喰い(低い)鳥金光の空に高く舞ひ
普選通過猫も杓子も腕まくり
鉄筆を振つて鉄外彫刻詩〈第1章(初版)〉
夕日落ちて潜客晩来猫の家
灯燈を股につるして夜這かな
臘燭が立てば灯燈皺が伸び
法城を築いて王仁は安息し
春の夕野渡る風の微笑かな〈第2章(初版)〉
川の辺に小鳥の影も流る春
物をいふ他の花香に花見かな
渓流もいと清瀧の舟あそび〈第3章(初版)〉
花よりも団子と皆が食道楽
汽笛をばきいてかけ出す駅の前〈第4章(初版)〉
かけ付けて見れば馬鹿らし上り汽車
華を去りて実に就かんと団子食ひ
汽車を待つプラツトホームや風さむし
花園のあたり走るか汽車の音
お土産の団子で客を花むけし〈第6章(初版)〉
人の子の吾を神のごと崇め立て仕へむとする人ぞ歎てき〈第7章(初版)〉
吾がために鞭を加ふる人もがなと朝な夕なに祈る淋しさ〈第7章(初版)〉
我思ふ一つ汲み取る人あらばかほどに胸をば傷めざらまし〈第8章(初版)〉
形ある宝はよしや失するとも愛と信との宝おとさじ〈第8章(初版)〉
霊場はたとへ毀たれ了るともいよいよ光を添ふる大本〈第8章(初版)〉
今はただ誠一つの限りをば尽して神の裁き待つのみ〈第8章(初版)〉
艮のわが大神の教ませる道にすすまむ顕幽ともに〈第8章(初版)〉
身はたとへ根底の国に沈むとも愛と信との道に魂生く〈第11章(初版)〉
吾は今浮世の風に散らされて空しからんとすももの功も〈第12章(初版)〉
空しきは形の上の功なり神に尽くせし功は朽ちず〈第13章(初版)〉
もろこしの空を包みしむら雲ゆ降るあめりかを防ぐ傘なし〈第13章(初版)〉
燃えさかる胸のほのほを消さんとて水の御魂に朝夕祈る〈第13章(初版)〉
身はたとへ障りありとも愛信の熱と光に心は勇む〈第14章(初版)〉
うき事の限りをなめて吾は今ただただ神の道に息する〈第15章(初版)〉
まがつみの魂の猛びは強くとも吾は命の限りを忍ばむ〈第15章(初版)〉
三五の月日かがやくうまし代は四方の山野も笑ひ栄えむ〈第16章(初版)〉
二三年さきに来ること狼狽て今日蓮が言挙げをする〈第16章(初版)〉
弥勒神顕はれ初めて満三年過ぎし綾部の秋の大空〈第16章(初版)〉
三御玉五ツの御玉の麻邇宝珠神の用ゆる時は来にけり〈第17章(初版)〉
弥勒の世早や来よかしと祈りつつ岩戸開きの瑞祥待つかな〈第17章(初版)〉
夢の世と夢にも知らず飛び出して蒙古の空に夢を見しかな〈第18章(初版)〉
新玉の年の始めのよろこびは不二の高嶺の夢にぞありける〈第20章(初版)〉
心にもかけずうとみし夢枕なほざりにせぬ新年の朝〈第23章(初版)〉
ある時は死なまくおもひ或時は活きむとおもふ人心かな〈第24章(初版)〉
今日もまたあたら一日を消しにけり神仕ひすべき忙しき身を〈第24章(初版)〉
天人の座に進みて地の上に神の食す国建てむとぞ思ふ〈第25章(初版)〉
[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に他の資料と付き合わせて作成しました]