霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一〇章 転香(てんこう)〔一四六〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第57巻 真善美愛 申の巻 篇:第2篇 顕幽両通 よみ(新仮名遣い):けんゆうりょうつう
章:第10章 転香 よみ(新仮名遣い):てんこう 通し章番号:1460
口述日:1923(大正12)年03月25日(旧02月9日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年5月24日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
シャルは、寒風吹きまくる四つ辻に、若芽のような弊衣をまとって、唇まで紫色に染め、ふるえながら立っている。路傍の立石にもたれて、シャルは高姫への不平不満をつぶやいている。
シャルはやけくそになって四股を踏みながら、早く自分の仕事を手伝ってくれる新入りが来ないかと不満をどなりはじめた。そこへ向こうから寒そうなふうでうつむき気味にやってくる青白い男があった。シャルは男を見つけると大喝一声呼び止めた。
男は元アブナイ教信者の鰐口曲冬だと名乗り、懺悔生活のために便所の掃除なりとさせてほしいとシャルに頼み込んだ。シャルは喜んで男を高姫のところに連れて行った。
高姫は、この便所は大弥勒様のお肥料様だからなかなか身魂が磨けないと掃除ができない、と言いだした。そして偽善の懺悔生活をするよりも、ウラナイ教に入るようにと曲冬を説きつけた。
曲冬は、長らく入信していた天香教の偽善を語りだした。高姫はここぞと衆生済度のウラナイ教に入るべきだと勧める。曲冬は、ウラナイ教の説教をまず聞かせてもらいたいと高姫に答えた。
高姫は講釈を始めたが、曲冬はさわりを聞いて上げ足を取り、自分には必要のない教えだと言うとさっさと門口から逃げ出してしまった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5710
愛善世界社版:131頁 八幡書店版:第10輯 307頁 修補版: 校定版:138頁 普及版:62頁 初版: ページ備考:
001 寒風(かんぷう)()()くる四辻(よつつじ)若布(わかめ)のやうな弊衣(へいい)(まと)うて(くちびる)まで紫色(むらさきいろ)()め、002(ふる)(ふる)()つて()一人(ひとり)(をとこ)はシャルであつた。003シャルは道別(みちわけ)立石(たていし)(もた)れてブルブル(ふる)(なが)一人(ひとり)(つぶや)いて()る。
004シャル『エー(くそ)面白(おもしろ)うもない。005(この)(かぜ)()きつ(ぱな)しに(つみ)もないのに()たされて……石地蔵(いしぢざう)でもあるまいに……(おれ)(たち)はこれでも血液(けつえき)(かよ)つて()るのだぞ。006高姫(たかひめ)(ばば)()007(ひと)滅多(めつた)矢鱈(やたら)にこき使(つか)ひやがつて、008馬鹿(ばか)にしてやがる。009()(さむ)いのに()んな(ところ)亡者引(もさひ)きに()(くらゐ)なら矢張(やつぱ)泥坊(どろばう)でもやつて()(はう)何程(なにほど)(をとこ)らしいか()れやしないわ。010(みづ)(なが)れと(ひと)行末(ゆくすゑ)011(かは)れば(かは)るものだな。012(おれ)もバラモン(けう)軍人(ぐんじん)さまで公然(こうぜん)強姦(がうかん)もやり、013強盗(がうたう)もやり、014法螺(ほら)()き、015喇叭(ラツパ)()いて()たものだが()零落(おちぶ)れては、016もう仕方(しかた)がない。017(はら)空腹(くうふく)となる(のど)(かわ)く、018着物(きもの)(やぶ)(しらみ)はしがむ、019何処(どこ)ともなしに身体(からだ)(ふる)()す、020宛然(まるで)地獄(ぢごく)(やう)だワイ。021一丈(いちぢやう)()(しやく)(まはし)をかいた荒男(あらをとこ)がアトラスの(やう)(つら)した(ばば)にこき使(つか)はれて、022アタ胸糞(むねくそ)(わる)い、023(くそ)面白(おもしろ)うもない、024ケツタ(くそ)(わる)いワイ。025それにまだまだケツタ(くさ)(こと)は、026高姫(たかひめ)(やつ)(おのれ)()れた(くそ)小便(せうべん)掃除(さうぢ)せいと(ぬか)しやがる。027金勝要(きんかつかね)大神(おほかみ)さまだつて雪隠(せつちん)(おと)されたのだから、028(まへ)(たち)雪隠(せつちん)掃除(さうぢ)するのは結構(けつこう)()神徳(かげ)(など)本当(ほんたう)馬鹿(ばか)にして()やがる。029(じつ)糞慨(ふんがい)(いた)りだ。030だと()つて何処(どこ)()(ところ)もなし、031(はつ)(しやく)(からだ)置場(おきば)(こま)つて()るのだからチツトは()()はいでも、032あの(ばば)(くら)ひついて()るより仕方(しかた)がないわ。033エー(くそ)忌々(いまいま)しい。034(たれ)かモ一人(ひとり)(おれ)()(こと)()(やつ)()()れると雪隠(せつちん)掃除(さうぢ)をさしてやるのだが、035()(やつ)()(やつ)036高姫(たかひめ)喧嘩(けんくわ)して()げて()にやがるものだから、037宛然(まるで)(かご)(みづ)()れて()(やう)なものだ。038何時(いつ)(まで)かかつたつて満足(まんぞく)信者(しんじや)一人(ひとり)だつて出来(でき)やしないわ。039ウラナイ(けう)(なに)()らぬが教祖(けうそ)もし、040役員(やくゐん)もし、041信者(しんじや)一人(ひとり)()ねてるのだから(ばば)(いそが)しいだらう。042(この)(あひだ)信者(しんじや)幾何(いくら)あると()いて()たら四十一(しじふいち)(にん)あると(ぬか)しよつた。043よく(かんが)へて()ればアタ阿呆(あはう)らしい、044四十(しじふ)()意味(いみ)始終(いつも)()意味(いみ)だつた。045今年(ことし)(ほとん)四十四(しじふし)(ねん)布教(ふけう)してると()ひやがつたが、046まだ(さん)(にん)()(にん)信者(しんじや)出来(でき)ぬのだから(たい)したものだワイ。047(しうとめ)十八(じふはち)ばつかり(あさ)から(ばん)まで(なら)()てやがつて、048一人(ひとり)よがりの一人(ひとり)自慢(じまん)049()げも(おろ)しもならぬ糞婆(くそばば)だ。050(とし)幾才(いくつ)だと()いて()たら四十九(しじふく)(さい)だと(ぬか)しやがる。051(おれ)()(ところ)では、052どうしても五十(ごじふ)五六(ごろく)()えるがヤツパリ年寄(としより)()られるのが(つら)いと()えるワイ。053(なん)だか()らぬが始終(しじう)(くさ)(こと)ばかり(ぬか)しやがる。054アタ辛気臭(しんきくさ)い もう(いや)になつて(しま)つた。055(たれ)かよい馬鹿(ばか)野郎(やらう)()()(おれ)仕事(しごと)手伝(てつだ)つて()れる(やつ)があるまいかな』
056自暴糞(やけくそ)になり四股(しこ)()(なが)一人(ひとり)呶鳴(どな)つて()る。057そこへ(むか)ふの(はう)から(さむ)さうな風姿(ふう)をして(やや)俯向(うつむ)気味(ぎみ)(やぶ)(がさ)(かぶ)臭気(しうき)紛々(ふんぷん)たる着物(きもの)をつけ(なが)ら、058やつて()蒼白(あをじろ)中肉(ちうにく)中背(ちうぜい)(をとこ)があつた。059シャルは(この)(をとこ)()るより大喝(だいかつ)一声(いつせい)()てツ』と(さけ)んだ。060(をとこ)(この)(こゑ)(おどろ)いてハツと立止(たちど)まり、061(すこ)(しり)(うしろ)()し、062両手(りやうて)金剛杖(こんがうづゑ)(うへ)にキチンと()(なが)ら、
063(をとこ)何用(なによう)(ござ)いますかな』
064シャル『何用(なによう)でもない。065一寸(ちよつと)(たづ)ねたい(こと)があるのだ。066貴様(きさま)姓名(せいめい)(なん)()ふか』
067(をとこ)『ハイ、068(わたし)(もと)はアブナイ(けう)信者(しんじや)(ござ)いまして鰐口(わにぐち)曲冬(まがふゆ)()ひ、069(いま)人間(にんげん)一等(いつとう)(きら)一等厭(いつとうえん)()偽君子(ぎくんし)団体(だんたい)這入(はい)つて懺悔(ざんげ)生活(せいくわつ)をやつてる(もの)(ござ)います。070どうか小便壺(せうべんつぼ)071雪隠壺(せつちんつぼ)072塵芥場(ごもくば)掃除(さうぢ)をさして(いただ)けませぬだらうかな』
073シャル『ヤ、074そいつは感心(かんしん)だ。075(おほい)(わが)()()たりと()ふべしだ。076(じつ)(ところ)077(おれ)(やかた)はここ三月(みつき)(ばか)小便(せうべん)078(くそ)()ふに(およ)ばず、079(きたな)塵芥(ごもくた)(には)(すみ)にかためてあるのだ。080どうだ、081掃除(さうぢ)して(もら)(わけ)には()くまいかな』
082曲冬(まがふゆ)(つつし)んで掃除(さうぢ)をさして(いただ)きます。083十分(じふぶん)活動(くわつどう)(いた)しますから、084何卒(どうぞ)麦飯(むぎめし)でも()いから()んで(いただ)きたいものです』
085シャル『小便(せうべん)シシ()ひ、086(くそ)フン()塵埃(ごもく)ジン(あい)()ふから獅子(しし)奮迅(ふんじん)活動(くわつどう)をやつて()せて()れ。087さうすりや(おれ)師匠(ししやう)八釜(やかま)しやの高姫(たかひめ)麦飯(むぎめし)一杯(いつぱい)(ぐらゐ)()んで()れぬ(こと)もあるまい。088()(かく)089(まへ)(はたら)次第(しだい)だ。090(げい)()(たす)けると()ふから屹度(きつと)(まへ)高姫(たかひめ)さまに重宝(ちようほう)がられるだらう。091サアこれから(ひと)(かへ)つて高姫(たかひめ)さまに(たい)して信者(しんじや)(つく)つたのを土産(みやげ)となし、092(おれ)仕事(しごと)(たす)けて(もら)(こと)ともなり一挙(いつきよ)両得(りやうとく)だ。093マアこれで(おれ)一寸(ちよつと)(いき)出来(でき)ると()ふものだ。094オイ曲冬(まがふゆ)とやら、095(なが)らく(おれ)部下(ぶか)となつて雪隠(せんち)掃除(さうぢ)だけ受持(うけも)つて()れ。096(なん)懺悔(ざんげ)生活(せいくわつ)()ふものは重宝(ちようほう)なものだのう』
097曲冬(まがふゆ)初稚姫(はつわかひめ)さまは天刑病(てんけいびやう)(しや)膿血(うみち)()うて(たす)けてやられた(こと)があるでせう。098(くそ)小便(せうべん)掃除(さうぢ)(ぐらゐ)(なん)ですか。099人間(にんげん)(みな)(くそ)小便(せうべん)(よろこ)んで()つて()るのですよ。100直接(ちよくせつ)()(やつ)(いぬ)だけど間接(かんせつ)()うのは(みな)人間(にんげん)です。101(くそ)たれては大根(だいこん)102(かぶら)103(いね)104(むぎ)(など)にかけ、105その肥料(こやし)野菜(やさい)成長(せいちやう)し、106米麦(こめむぎ)(みの)るのだ。107()はば間接(かんせつ)糞喰(くそく)ひ、108小便呑(せうべんの)人間(にんげん)だ。109(くそ)掃除(さうぢ)(ぐらゐ)(なに)それ(ほど)(きたな)いものか。110(よろこ)んで(きたな)(ところ)掃除(さうぢ)をする(こころ)にならないと本当(ほんたう)(ぜん)にはなりませぬよ。111これが(まこと)神心(かみごころ)ですからな。112(おのれ)(ほつ)する(ところ)(ひと)(ほどこ)し、113(おのれ)(ほつ)せざる(ところ)(つと)めて(おこな)はなくては懺悔(ざんげ)生活(せいくわつ)ではありませぬワイ』
114シャル『イヤ感心(かんしん)(いた)した。115サ、116()(くだ)さい。117(まへ)事業(じげふ)何程(いくら)でも(たま)つてる、118随分(ずいぶん)()顧客(とくい)だよ』
119曲冬(まがふゆ)『ハイ、120有難(ありがた)(ござ)います』
121()(なが)らシャルの(あと)(したが)(つめた)野分(のわけ)()かれ(なが)岩山(いはやま)(ふもと)茅家(あばらや)(みちび)かれた。
122 シャルは(はすかい)になつた()を、123がたつかせ(なが)(やうや)うに()()け、
124シャル『サ、125曲冬(まがふゆ)さま、126此処(ここ)大弥勒(おほみろく)(さま)金殿(きんでん)玉楼(ぎよくろう)だ。127マア這入(はい)つて(つめた)(ちや)なつと一杯(いつぱい)(あが)つて(くだ)さい。128モシ高姫(たかひめ)さま、129よい(とり)一羽(いちは)生捕(いけど)つて()ました。130サア何卒(どうぞ)(まへ)さまの大和(やまと)(だましひ)で、131()きすつぽうに料理(れうり)して(くだ)さい。132屹度(きつと)此奴(こいつ)アお()()るかも()れませぬぜ』
133高姫(たかひめ)『これこれシャル、134結構(けつこう)人間(にんげん)(さま)()案内(あんない)(なが)(なん)()()無礼(ぶれい)(こと)(まを)すのだ。135何故(なぜ)善言(ぜんげん)美詞(びし)(もち)ひないのか。136悪言(あくげん)醜詞(しうし)禁物(きんもつ)だと、137何時(いつ)()つてあるぢやないかい』
138シャル『エ、139()につけ、140味噌(みそ)につけ、141(なん)とかかんとか叱言(こごと)()はねば()()まぬ(ひと)ですな。142(この)(ひと)一等厭(いつとうえん)曲冬(まがふゆ)さまとか()つて懺悔(ざんげ)生活(せいくわつ)をして()偽君子(ぎくんし)ですよ。143貴方(あなた)弁舌(べんぜつ)(ひと)帰順(きじゆん)させて御覧(ごらん)なさいませ。144そして便所(べんじよ)掃除(さうぢ)をさして()れと仰有(おつしや)るのです。145(なん)とマア結構(けつこう)なお(かた)もあればあるものですな』
146高姫(たかひめ)『ア、147曲冬(まがふゆ)さまとやら、148そこは端近(はしぢか)149マア囲炉裏(ゐろり)(そば)へお()りなさいませ。150(さぞ)(さむ)かつたで(ござ)いませう。151(この)(ばば)()()えても()かけによらぬ(やさ)しい(もの)だから安心(あんしん)して(くだ)さい。152そしてお(まへ)153懺悔(ざんげ)生活(せいくわつ)をしてると()ふことだが、154懺悔(ざんげ)せにやならぬやうな悪事(あくじ)をしたのかい』
155曲冬(まがふゆ)『ハイ、156これと()つて(べつ)(わる)(こと)をしたやうにも(おも)ひませぬが、157人間(にんげん)()ふものは()らず()らずの(つみ)(つく)つてるものですから懺悔(ざんげ)のために、158(ひと)一等(いつとう)(いや)便所(べんじよ)掃除(さうぢ)塵芥場(ごもくば)掃除(さうぢ)をさして(いただ)き、159其処辺(そこらぢう)(めぐ)つてるので(ござ)います』
160高姫(たかひめ)()()奇特(きとく)(こと)だ。161(しか)(なが)らよう(かんが)へて御覧(ごらん)なさい。162便所(べんじよ)掃除(さうぢ)をするのは女房(にようばう)女衆(をんなしう)(やく)ぢやありませぬか。163(をとこ)(をとこ)としての立派(りつぱ)事業(じげふ)があるでせう。164それに(なん)ぞや、165睾丸(きんたま)さげた(をとこ)卑怯(ひけふ)未練(みれん)にも便所(べんじよ)掃除(さうぢ)をするとは、166チト可笑(をか)しいぢやありませぬか。167(まへ)さま(たち)がそんな(こと)をするものだから(この)(ごろ)女中(ぢよちう)(みな)増長(ぞうちよう)して(しま)ひ、168(わたし)下女(げぢよ)には()たが便所(べんじよ)掃除(さうぢ)約束外(やくそくぐわい)だ」と、169自分(じぶん)()いたもの(まで)主人(しゆじん)(おく)さまに掃除(さうぢ)さす(やう)になつたのも、170(みな)(まへ)(たち)(わる)いからだ。171世界(せかい)男子(だんし)が、172()れも(これ)一等厭(いつとうえん)這入(はい)り、173便所(べんじよ)掃除(さうぢ)になつたら如何(どう)するのです。174自分(じぶん)()いた(くそ)まで(ひと)掃除(さうぢ)させたり、175(また)(ひと)(くそ)まで掃除(さうぢ)して(ある)(やう)不合理(ふがふり)罰当(ばちあた)りの(こと)何処(どこ)にありますかい。176それだから世間(せけん)(ひと)一等厭(いつとうえん)(やつ)はド(やつこ)糞奴(くそやつこ)(ばか)りだと()ふのですよ。177(なん)だか怪体(けたい)(にほひ)がすると(おも)へばお(まへ)着物(きもの)尿糞塵(ししふんじん)(にほひ)()みこんで()る。178地獄(ぢごく)(せき)()いたものは(はな)をつく(やう)堆糞(たいふん)場所(ばしよ)便所(べんじよ)塵芥場(ごもくば)(よろこ)ぶものだ。179(その)臭気(しうき)をまるで高天原(たかあまはら)天香(てんかう)(やう)(おも)うて()るのだから(こま)つたものだな。180(はな)もそこ(まで)痳痺(まひ)しては善悪(ぜんあく)美醜(びしう)区別(くべつ)もつかなくなり、181(かへつ)(らく)かも()れない。182(しか)(なが)折角(せつかく)(かみ)分霊(ぶんれい)(もら)つてる人間(にんげん)酔生(すゐせい)夢死(むし)生活(せいくわつ)(おく)るのも勿体(もつたい)ない、183自分(じぶん)()いた(くそ)自分(じぶん)掃除(さうぢ)すれば()いのだ。184(ひと)()いた(くそ)まで掃除(さうぢ)させたり、185したりするものぢやない。186他人(ひと)(くそ)掃除(さうぢ)をさせるのは(あか)(ばう)(うち)だ。187(また)その(ふん)掃除(さうぢ)するものは赤坊(あかんばう)()うた母親(ははおや)か、188子守(こもり)仕事(しごと)だ。189チツト(かんが)へて御覧(ごらん)なさい』
190曲冬(まがふゆ)『さう一口(ひとくち)にコキ(おろ)されては便(べんめい)()がありませぬ。191(しか)(なが)一等厭(いつとうえん)一等厭(いつとうえん)としての主義(しゆぎ)綱領(かうりやう)があります。192どうか便所(べんじよ)掃除(さうぢ)をさして(いただ)()いものですな』
193高姫(たかひめ)『イヤイヤなりませぬ。194(なん)心得(こころえ)(ござ)る。195ここの便所(べんじよ)普通(ふつう)一般(いつぱん)便所(べんじよ)とは(ちが)ひますぞや。196勿体(もつたい)なくも大弥勒(おほみろく)(さま)のお(いど)から()たお肥料(こえ)(さま)だ。197そこへシャルの(きたな)(やつ)(まじ)つて()るが、198(しか)(この)(やかた)にはシャルと()ふものが()りますから……ここの便所(べんじよ)なんか身魂(みたま)(みが)けない(ひと)(かま)つて(もら)(こと)出来(でき)ませぬ。199中々(なかなか)大弥勒(おほみろく)さまの便所(べんじよ)掃除(さうぢ)をさして(もら)はうと(おも)へば(なみ)大抵(たいてい)(こと)ぢやありませぬぞや。200余程(よほど)神徳(しんとく)(もら)はなくちや出来(でき)ませぬ。201そんな(こと)()つて麦飯(むぎめし)一杯(いつぱい)()ばれようと(おも)つてるのだらうが、202()(から)()(なか)に、203(たれ)がそんな糞奴(くそやつこ)(めし)一杯(いつぱい)()はす(もの)がありますかい。204それよりもチツト()出神(でのかみ)義理(ぎり)天上(てんじやう)(まを)(こと)(はら)()()んで()きなされ。205さうすれば結構(けつこう)出世(しゆつせ)出来(でき)ますぞや。206折角(せつかく)結構(けつこう)人間(にんげん)(うま)れて便所(べんじよ)掃除(さうぢ)をやつて()つては(かみ)(さま)(たい)しても()まぬぢやありませぬか。207(まへ)さまの(やう)連中(れんちう)沢山(たくさん)出来(でき)便所(べんじよ)掃除(さうぢ)引受(ひきう)けて(くだ)さるのは(よろ)しいが、208これが(ひやく)(ねん)将来(さき)()つて御覧(ごらん)なさい。209世間(せけん)から特種(とくしゆ)部落(ぶらく)(あつか)ひをされて、210便族(べんぞく)()()がつきますぞや。211さうすりや普通(ふつう)人間(にんげん)縁組(えんぐみ)出来(でき)ませぬぞえ。212()加減(かげん)テンコウして()くが(よろ)しからう。213特種(とくしゆ)部落(ぶらく)開祖(かいそ)になる(つも)りだらうが、214そんな(こと)するより三千(さんぜん)世界(せかい)(たす)けるウラナイ(けう)にお這入(はい)りなさい(なに)(ほど)結構(けつこう)だか()れませぬぞや』
215曲冬(まがふゆ)『それもさうですな。216(じつ)(ところ)(いや)(たま)らないのだけど、217()はんが(かな)しさに(ひと)(いや)がる便所(べんじよ)掃除(さうぢ)をして(その)()(うゑ)(しの)いで()るのです。218それでも世間(せけん)馬鹿者(ばかもの)(おほ)いと()えて一種(いつしゆ)(てい)のよい乞食(こじき)聖人(せいじん)だ、219君子(くんし)だと(あが)めて()れますからな。220新聞(しんぶん)雑誌(ざつし)()()てて()めるのですもの、221チツト(ぐらゐ)(くさ)くても辛抱(しんばう)出来(でき)たものですよ。222(しか)(なが)天香宗(てんかうしう)教祖(けうそ)(さま)(おもて)から()れば随分(ずいぶん)立派(りつぱ)なお(かた)ですが、223ヤツパリ(かぶ)売買(ばいばい)したり、224(まう)かりさうな鉱山(くわうざん)買占(かひし)めたり、225()つたものは(なん)とか()つて(かへ)さず、226()()(こと)随分(ずいぶん)上手(じやうず)ですよ。227それでも上流(じやうりう)社会(しやくわい)から非常(ひじやう)()めそやされ、228沢山(たくさん)書物(かきもの)()れるのですから、229()(なか)(めう)なものですな。230児島(こじま)高徳(たかのり)(さくら)()に「天香(てんかう)雪隠(せんち)(むな)しうする(なか)れ、231(とき)飯礼(はんれい)()きにしも(あら)ず」と()つて、232(わたくし)狂祖(きやうそ)さまの(こと)予言(よげん)しておいた(くらゐ)ですもの、233(あま)馬鹿(ばか)にはなりませぬワイ』
234高姫(たかひめ)『サ、235それが(くら)がりの()(なか)()ふのだよ。236善人(ぜんにん)(あく)とせられ、237悪人(あくにん)善人(ぜんにん)推称(すゐしよう)せらるる逆様(さかさま)()(なか)だから、238それで(この)(たび)(てん)から大弥勒(おほみろく)(さま)が、239(この)()(うへ)にお(くだ)(あそ)ばし、240(この)高姫(たかひめ)肉体(にくたい)宿(やど)として衆生(しうじやう)済度(さいど)(ため)にウラナイの(みち)をお(ひら)(あそ)ばしたのだ、241(なん)有難(ありがた)(こと)ではないかな。242天香教(てんかうけう)とウラナイ(けう)何方(どちら)(まこと)(おも)ひますか』
243曲冬(まがふゆ)天香教(てんかうけう)には(なが)らく這入(はい)つて()りましたので大抵(たいてい)教理(けうり)(わか)りましたが、244まだウラナイ(けう)(なに)()いて()りませぬから、245どちらが()いか(わる)いか、246判断(はんだん)がつきませぬ。247()()説教(せつけう)()かして(もら)つた(うへ)でお返事(へんじ)(いた)しませう』
248高姫(たかひめ)成程(なるほど)249何程(なにほど)おいしいものでも()つて()ねば(あぢ)(わか)らぬ道理(だうり)だ。250(まへ)()(こと)には一理(いちり)がある。251(こめ)(めし)(むぎ)(めし)()(くら)べて()れば、252(こめ)(めし)がうまいと(たれ)()ふだらう。253(この)ウラナイ(けう)(じつ)農業(のうげふ)(もと)とする(をしへ)だ。254それだから北山村(きたやまむら)農園(のうゑん)(ひら)いて種物(たねもの)神社(じんじや)(まつ)つてるのだよ。255ウラナイ(けう)(しるし)()御覧(ごらん)なさい。256八木(はちぼく)()いてあるでせう。257八木(はちぼく)所謂(いはゆる)(こめ)といふ()だ。258米国(べいこく)から(わた)つて()常世姫(とこよひめ)(をしへ)だからな』
259曲冬(まがふゆ)()出神(でのかみ)さまの御紋(ごもん)(こめ)()とはチツト釣合(つりあ)ひがとれぬぢやありませぬか』
260高姫(たかひめ)『お(まへ)(かんが)へが(あさ)いから、261そんな(こと)()ふのだ。
262()()()()朝日(あさひ)()()
263米国(べいこく)(べい)()(こめ)()
264(やが)()()ままとなる。
265()(うた)があるだらう。266(この)(うた)()出神(でのかみ)義理(ぎり)天上(てんじやう)世界(せかい)人間(にんげん)()らす(ため)(つく)つて()いたのだよ。267(なん)()のつんだ(うた)だらうがな。268到底(たうてい)人間(にんげん)作物(さくぶつ)ぢやありますまい。269それだから()()(かみ)()(こと)()いて()れば(この)()(なか)ままになるのだ。270(わか)りましたかな』
271曲冬(まがふゆ)(なん)言霊(ことたま)()ふものは(えら)いものですな。272よく()がつんで()りますワイ』
273高姫(たかひめ)『エ、274(また)しても、275こましやくれた言霊(ことたま)なんて……(なに)仰有(おつしや)るのだ。276言霊(ことたま)変性(へんじやう)女子(によし)緯身魂(よこみたま)()(こと)だ。277ここは誠生粋(まこときつすゐ)()()(だましひ)(をしへ)(いた)(たて)御用(ごよう)だから、278言霊(ことたま)なんか()つて(くだ)さるな。279こと()(やつ)(よこ)()さされて、280沢山(たくさん)(すぢ)(なら)べてピンピンシヤンシヤンと誤魔化(ごまくわ)(やつ)だ。281ここは誠一筋(まことひとすぢ)立通(たてとほ)善一筋(ぜんひとすぢ)(をしへ)だから、282その(つも)りで()つて(くだ)さいや』
283曲冬(まがふゆ)『イヤ、284(おほ)きに有難(ありがた)う。285こんなお(はなし)何時(いつ)(まで)()いて()つても(らち)()きませぬから御免(ごめん)(かうむ)りませう』
286高姫(たかひめ)『コレコレ、287さう短気(たんき)(おこ)さずにジツクリ落着(おちつ)いて()きなされ。288結構(けつこう)結構(けつこう)誠一厘(まこといちりん)仕組(しぐみ)(をし)へてあげますぞや』
289曲冬(まがふゆ)一厘(いちりん)二厘(にりん)()りませぬ。290左様(さやう)なら』
291()(なが)足早(あしばや)門口(かどぐち)さして()()す。292高姫(たかひめ)は、
293高姫(たかひめ)(この)(まま)()がしてなるものか、294(いや)でも(おう)でも(あと)おつ()けて引捉(ひつとら)へ、295ウラナイ(けう)信者(しんじや)になさねば()くものか、296シャル、297つづけ』
298()(なが)家鴨(あひる)火事(くわじ)見舞(みまひ)(やう)(あし)つきでペタペタペタと内鰐足(うちわにあし)(あと)追駆(おひか)けて()く。299曲冬(まがふゆ)細長(ほそなが)いコンパスに()(かる)くトントントンと四辻(よつつじ)まで引返(ひきかへ)し、300(きた)(きた)へと(はし)()く。
301大正一二・三・二五 旧二・九 於皆生温泉浜屋 北村隆光録)

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5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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