霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第二章 祖先(そせん)の恵(めぐみ)〔一六八四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第66巻 山河草木 巳の巻 篇:第1篇 月の高原 よみ(新仮名遣い):つきのこうげん
章:第2章 祖先の恵 よみ(新仮名遣い):そせんのめぐみ 通し章番号:1684
口述日:1924(大正13)年12月15日(旧11月19日) 口述場所:祥雲閣 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年6月29日
概要: 舞台:タライの村のサンヨの家 あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]: 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2026-07-07 18:01:16 文字数:5932 OBC :rm6602
愛善世界社版:21頁 八幡書店版:第11輯 736頁 修補版: 校定版:21頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 デカタン高原(かうげん)の大暴風(だいばうふう)は岩石(がんせき)を飛(と)ばし樹木(じゆもく)を捻(ねぢ)倒(たふ)し、002棟(むね)の低(ひく)い此(この)家(いへ)迄(まで)もキクキクと梁(うつばり)を鳴(な)らしてゐる。003併(しか)し乍(なが)ら老婆(らうば)のサンヨは日課(につくわ)の如(ごと)く吹(ふ)き来(く)る大風(おほかぜ)に馴(なれ)て少(すこ)しも意(い)に介(かい)せず、004前後(ぜんご)左右(さいう)に揺(ゆ)れる家(いへ)の中(なか)に平然(へいぜん)たるものであつた。005照国別(てるくにわけ)、006照公(てるこう)、007梅公(うめこう)、008タクソン、009エルソンは車坐(くるまざ)となつて010バラモン軍(ぐん)の荒(あら)したる跡(あと)の実況談(じつきやうだん)につき問答(もんだふ)を始(はじ)めてゐた。
011梅公(うめこう)『何(なん)とマア素敵(すてき)滅法界(めつぱふかい)に強烈(きやうれつ)な風(かぜ)が吹(ふ)くぢやないか。012お婆(ばあ)さま、013お前(まへ)さまはこんな風(かぜ)が吹(ふ)いても平然(へいぜん)としてゐるが、014恐(おそ)ろしい事(こと)はないかい』
015サンヨ『此(この)風(かぜ)はデカタン高原(かうげん)の名物(めいぶつ)で厶(ござ)います。016年(ねん)に一度(いちど)や二度(にど)は家(いへ)も空中(くうちう)に吹(ふ)き上(あ)げるやうな強風(きやうふう)が吹(ふ)きます。017それ故(ゆゑ)、018何(いづ)れの家(うち)も地下室(ちかしつ)を掘(ほ)り避難(ひなん)する事(こと)になつてゐます。019こんな風(かぜ)はまだまだ宵(よひ)の口(くち)です。020それよりも恐(おそ)ろしいのはバラモンの風(かぜ)で厶(ござ)います』
021梅公(うめこう)『フン、022非常(ひじやう)な風(かぜ)の荒(あら)い国(くに)だな。023之(これ)が所謂(いはゆる)風国(ふうこく)強塀(きやうへい)と云(い)ふのだらう、024アツハヽヽヽ』
025照公(てるこう)『バラモン風(かぜ)と云(い)ふのは、026どんな風(かぜ)が吹(ふ)くのですかな』
027サンヨ『ジフテリヤよりもインフルエンザよりもひどい風(かぜ)で厶(ござ)います。028家(いへ)を焼(や)き、029財物(ざいぶつ)を奪(うば)ひ、030人家(じんか)へ這入(はい)つて女房(にようばう)や娘(むすめ)の嫌(きら)ひなく、031皆(みな)何処(どこ)かへ、032攫(さら)つて行(ゆ)く鬼風(おにかぜ)で厶(ござ)いますよ。033何(なに)よりも、034かよりも、035之(これ)位(くらゐ)恐(おそ)ろしい風(かぜ)は厶(ござ)いませぬ』
036梅公(うめこう)『成程(なるほど)、037弱味(よわみ)につけ込(こ)む風(かぜ)の神(かみ)と云(い)ふ謎(なぞ)だな。038これこれタクソンさま、039エルソンさま、040バラモンの嵐(あらし)の跡(あと)の実況(じつきやう)を聞(き)かして下(くだ)さらないか。041吾々(われわれ)にも対抗策(たいかうさく)があるからなア』
042タクソン『ハイ、043お尋(たづ)ねなくとも逐一(ちくいち)事情(じじやう)を申(まをし)上(あ)げ、044お助(たす)けを乞(こ)ひ度(た)いと思(おも)つてゐた所(ところ)で厶(ござ)います。045私(わたし)の妻(つま)はミールと申(まを)しますが、046まだ二十才(はたち)の花盛(はなざか)り、047数日(すうじつ)以前(いぜん)にバラモン軍(ぐん)が此(この)里(さと)に駐屯(ちうとん)致(いた)し、048老若(らうにやく)男女(なんによ)を縛(しば)り上(あ)げ、049一切(いつさい)の食料(しよくれう)や金銭(きんせん)等(など)を奪(うば)ひ、050私(わたし)の女房(にようばう)なり、051村中(むらぢう)の綺麗(きれい)な娘(むすめ)と見(み)れば全部(ぜんぶ)掻(か)ツ攫(さら)へて参(まゐ)りました。052それのみならず、053之(これ)から数(すう)里(り)隔(へだ)てたオーラ山(さん)の山(やま)続(つづ)き、054シノワ谷(だに)と云(い)ふ所(ところ)には馬賊(ばぞく)の団体(だんたい)が数千(すうせん)人(にん)割拠(かつきよ)して、055時々(ときどき)遠近(ゑんきん)の村落(そんらく)に入(い)り来(きた)り、056金品(きんぴん)を徴発(ちようはつ)し、057女房(にようばう)娘(むすめ)の嫌(きら)ひなく皆(みな)掻(か)ツ攫(さら)へて参(まゐ)りますので、058吾々(われわれ)人民(じんみん)は一(いち)日(にち)も枕(まくら)を高(たか)くして眠(ねむ)る事(こと)が出来(でき)ないので厶(ござ)います。059シノワ谷(だに)の馬賊(ばぞく)を退治(たいぢ)して下(くだ)さるかと思(おも)へば、060バラモン軍(ぐん)の大足別(おほだるわけ)は馬賊(ばぞく)に勝(まさ)る悪逆(あくぎやく)無道(ぶだう)、061吾々(われわれ)バラモン信者(しんじや)は最早(もはや)生活(せいくわつ)の途(みち)もきれ、062塗炭(とたん)の苦(くるし)みを嘗(な)め、063不運(ふうん)に泣(な)いて居(を)ります。064どうか三五教(あななひけう)の御(ご)神徳(しんとく)によつて、065此(この)苦難(くなん)を免(まぬが)れさして頂(いただ)きたう厶(ござ)います』
066梅公(うめこう)『先生(せんせい)、067聞(き)けば聞(き)く程(ほど)気(き)の毒(どく)ぢやありませぬか。068現(げん)、069幽(いう)、070神(しん)の三界(さんかい)を救済(きうさい)すべき吾々(われわれ)宣伝使(せんでんし)として看過(かんくわ)出来(でき)ないぢやありませぬか。071アヽ血(ち)は湧(わ)き腕(うで)は躍(をど)る。072愈(いよいよ)自分(じぶん)の活動(くわつどう)舞台(ぶたい)が開(ひら)かれたやうぢや厶(ござ)いませぬか』
073照国(てるくに)『成程(なるほど)、074お前(まへ)のいふ通(とほ)りだ。075愈(いよいよ)真剣(しんけん)に自分(じぶん)等(ら)の活動(くわつどう)すべき舞台(ぶたい)を与(あた)へられたのだな。076併(しか)し乍(なが)ら梅公(うめこう)、077あまり事(こと)を軽率(けいそつ)にやつては失敗(しつぱい)するから、078ここは一切(いつさい)万事(ばんじ)を神(かみ)様(さま)にお任(まか)せして、079徐(おもむろ)に神策(しんさく)を進(すす)めて行(ゆ)くのが万全(ばんぜん)の策(さく)だらうよ』
080梅公(うめこう)『成程(なるほど)、081御尤(ごもつとも)千万(せんばん)、082水(みづ)も漏(も)らさぬ貴方(あなた)のお考(かんが)へ。083併(しか)し乍(なが)ら此(この)惨状(さんじやう)を聞(き)いては、084余(あま)り泰然(たいぜん)自若(じじやく)と済(す)まし込(こ)んでる訳(わけ)にも行(ゆ)かぬぢやありませぬか。085オイ、086タクソン君(くん)、087君(きみ)も掛替(かけがへ)のない一人(ひとり)の女房(にようばう)をバラモン軍(ぐん)に掠奪(りやくだつ)されて088男(をとこ)らしくもない涙(なみだ)をこぼしてゐるよりも、089どうだ、090俺(おれ)の家来(けらい)となつて女房(にようばう)奪回戦(だつくわいせん)に参加(さんか)する気(き)はないか。091精神(せいしん)一到(いつたう)何事(なにごと)か成(な)らざらむやだ。092お前(まへ)に信仰(しんかう)と熱心(ねつしん)と勇気(ゆうき)とさへあらば、093キツト此(この)目的(もくてき)は達(たつ)し得(え)られるだらうよ』
094タクソン『ハイ、095有難(ありがた)う厶(ござ)います。096併(しか)し乍(なが)ら女房(にようばう)を取(と)られたと云(い)つて男(をとこ)の目(め)から涙(なみだ)を流(なが)してゐるのぢやありませぬ。097天下(てんか)万民(ばんみん)の為(ため)涙(なみだ)を濺(そそ)いでゐるのです』
098梅公(うめこう)『ハヽヽヽヽ、099ヤア大(おほ)きく出(で)よつたな。100さうなくては男子(だんし)は叶(かな)はぬ、101見上(みあ)げた男(をとこ)だ、102愈(いよいよ)気(き)に入(い)つた。103梅公別(うめこうわけ)の弟子(でし)にしてやるから、104吾輩(わがはい)の云(い)ふ事(こと)を忠実(ちうじつ)に守(まも)るのだよ』
105タクソン『イヤ、106有難(ありがた)う厶(ござ)います。107併(しか)し乍(なが)ら私(わたし)は先生(せんせい)の家来(けらい)にして頂(いただ)きたいのです。108貴方(あなた)には先生(せんせい)があるでせう』
109梅公(うめこう)『先生(せんせい)は余(あま)り御(ご)神徳(しんとく)も高(たか)く智慧(ちゑ)証覚(しようかく)の程度(ていど)も、110お前(まへ)とは非常(ひじやう)に距離(きより)があるから、111直々(ぢきぢき)のお弟子(でし)には勿体(もつたい)ない。112罰(ばち)が当(あた)るぞ。113それより身魂(みたま)相応(さうおう)の理(り)によつて俺(おれ)の弟子(でし)にしてやる。114神(かみ)は順序(じゆんじよ)だからな。115順序(じゆんじよ)を離(はな)れて神(かみ)もなく道(みち)もない。116なア先生(せんせい)、117暫(しばら)く私(わたし)の直接(ちよくせつ)の弟子(でし)にしても宜(い)いでせう』
118照国(てるくに)『信仰(しんかう)は自由(じいう)だ。119兎(と)も角(かく)タクソンさまの意志(いし)に任(まか)すがよからう。120相応(さうおう)の理(り)によつてなア』
121照公(てるこう)『ハヽヽヽ、122オイ梅(うめ)さま、123どうですか、124先生(せんせい)のお目(め)から見(み)れば君(きみ)とタクソン君(くん)とは甲乙(かふおつ)の区別(くべつ)がつかないやうだよ。125バラモン教(けう)で余程(よほど)魂(みたま)が研(みが)いてあると見(み)へて、126どこともなしに面貌(めんばう)に光(ひかり)が輝(かがや)いてゐるやうだ。127流石(さすが)先生(せんせい)は偉(えら)いわい』
128梅公(うめこう)『そんなら、129タクソン君(くん)、130君(きみ)の意志(いし)に任(まか)す。131オイ、132エルソン君(くん)、133君(きみ)は相応(さうおう)の理(り)によつて僕(ぼく)の弟子(でし)にしてやる。134満足(まんぞく)だらうなア』
135エルソン『ハイ、136御(ご)親切(しんせつ)に有難(ありがた)う厶(ござ)います。137併(しか)し乍(なが)ら私(わたし)は年(とし)は若(わか)うても、138神(かみ)様(さま)のお道(みち)は聊(いささ)か、139学(まな)んで居(を)りまする。140仮令(たとへ)バラモン教(けう)でも誠(まこと)の教(をしへ)には二(ふた)つは厶(ござ)いますまい。141私(わたし)はタクソンと竹馬(ちくば)の友(とも)で厶(ござ)いますから、142行動(かうどう)を共(とも)にする考(かんが)へです。143何卒(どうぞ)貴方(あなた)は教(をしへ)の道(みち)の兄弟(きやうだい)となつて下(くだ)さいな』
144梅公(うめこう)『ハヽヽヽヽ、145偉(えら)い馬力(ばりき)だな』
146照公(てるこう)『又(また)梅公(うめこう)、147凹(へこ)まされたのか、148それだから「吾(われ)程(ほど)のものなきやうに思(おも)うて偉(えら)さうに申(まを)してをると、149スカタン喰(く)ふぞよ」と御(ご)神諭(しんゆ)にお示(しめ)しになつてゐるのだ。150梅(うめ)え事(こと)考(かんが)へて居(を)つても、151さう梅(うめ)え事(こと)には問屋(とひや)が卸(おろ)さないよ。152マア此(この)度(たび)は御(ご)両人(りやうにん)の兄弟分(きやうだいぶん)となつて仲良(なかよ)く神業(しんげふ)に奉仕(ほうし)するがよからう。153俺(おれ)達(たち)は少(すこ)しも乾児(こぶん)は欲(ほ)しくない。154兄弟分(きやうだいぶん)が欲(ほ)しいのだ』
155梅公(うめこう)『親分(おやぶん)、156乾児(こぶん)の関係(くわんけい)ならば、157マサカの時(とき)には命令(めいれい)が行(おこな)はれ秩序(ちつじよ)整然(せいぜん)と、158物事(ものごと)の埓(らち)があきよいが、159兄弟(きやうだい)と云(い)ふものは水臭(みずくさ)いものだよ。160「兄弟(きやうだい)は他人(たにん)の初(はじ)まり」と云(い)ふからな』
161照公(てるこう)『馬鹿(ばか)云(い)ふな。162「兄弟(きやうだい)は他人(たにん)が初(はじ)まり」と云(い)ふのだ。163他人(たにん)同志(どうし)が寄(よ)つて兄弟(きやうだい)の約束(やくそく)を結(むす)ぶのだ。164それで特(とく)に義兄弟(ぎきやうだい)と云(い)ふのだ。165四海(しかい)兄弟(きやうだい)も、166ここから初(はじ)まるのだ。167兄弟(きやうだい)力(ちから)を合(あは)せて弱小(じやくせう)な団体(だんたい)も遂(つひ)には強大(きやうだい)となるのだ。168あゝ強大(きやうだい)なるかな強大(きやうだい)なるかな。169兄弟(きやうだい)(鏡台(きやうだい))は所謂(いはゆる)鏡(かがみ)の台(だい)だ。170互(たがひ)に勇(いさ)み交(かは)して短所(たんしよ)を補(おぎな)ひ長所(ちやうしよ)を採(と)り、171悪(あく)を去(さ)り善(ぜん)をとり、172神業(しんげふ)に奉仕(ほうし)するのが所謂(いはゆる)四海(しかい)兄弟(きやうだい)、173天下(てんか)同胞(どうはう)の義務(ぎむ)だよ』
174梅公(うめこう)『イヤ、175重々(ぢうぢう)の御(ご)説法(せつぽふ)、176豁然(かつぜん)として白蓮華(びやくれんげ)の咲(さ)き香(にほ)ふが如(ごと)く、177胸中(きようちう)の新天地(しんてんち)が開(ひら)けたやうだ。178そんなら之(これ)から吾々(われわれ)四(よ)人(にん)は親友(しんいう)兼(けん)兄弟(きやうだい)となつて、179世界(せかい)の善悪(ぜんあく)正邪(せいじや)を明(あきら)かに裁(さば)く所(ところ)の鑑(かがみ)とならうぢやないか。180国公(くにこう)は親子(おやこ)対面(たいめん)の嬉(うれ)しさにアーメニヤに帰(かへ)つて了(しま)ひ、181三(さん)人(にん)の兄弟(きやうだい)が二人(ふたり)になつて、182稍(やや)寂寥(せきれう)の気分(きぶん)にうたれてゐた所(ところ)だ。183ここに天(てん)より二人(ふたり)の補充(ほじゆう)兄弟(きやうだい)を与(あた)へられ、184愈(いよいよ)四魂(しこん)揃(そろ)うて轡(くつわ)を並(なら)べてハルナの都(みやこ)へ進軍(しんぐん)と出掛(でかけ)ようかい』
185 婆(ばあ)さまは勝手(かつて)覚(おぼ)へし家(いへ)の中(なか)、186真黒気(まつくろけ)に燻(くすぶ)つた土瓶(どびん)に白湯(さゆ)を沸(わ)かし、187天然竹(てんねんだけ)を切(き)つた其(その)儘(まま)の竹製(たけせい)の茶碗(ちやわん)に湯(ゆ)をなみなみと注(つ)いで一行(いつかう)に饗応(きやうおう)し、188裏(うら)の瀬戸口(せとぐち)に枝(えだ)もたわわに実(な)つてゐた棗(なつめ)の実(み)をむしり来(きた)り、
189サンヨ『折角(せつかく)おこし下(くだ)さいまして、190何(なん)のお愛想(あいそう)も厶(ござ)いませぬ。191之(これ)は此(この)里(さと)にて有名(いうめい)な棗(なつめ)で御座(ござ)いますが、192此(この)間(あひだ)バラモン軍(ぐん)がやつてきて大方(おほかた)拗(むし)りとりましたが、193僅(わづ)か残(のこ)つてゐるのを、194浚(さら)へて持(も)つて参(まゐ)りました。195何卒(どうぞ)お食(あが)り下(くだ)さいませ』
196 照国別(てるくにわけ)一行(いつかう)は、
197『美事(みごと)な大(おほ)きな棗(なつめ)だ。198頂戴(ちやうだい)しませう』
199と各自(めいめい)に舌鼓(したつづみ)を打(う)つて食(く)ひ初(はじ)めた。
200梅公(うめこう)『何(なん)と、201うまい果物(くだもの)だな。202種(たね)は小(ちひ)さく実(み)は大(おほ)きく、203まるつきり林檎(りんご)を喰(く)つてるやうだ。204婆(ばあ)さま、205此(この)村(むら)には此(この)棗(なつめ)は沢山(たくさん)あるだらうなア』
206サンヨ『ハイ、207此(この)村(むら)の名物(めいぶつ)で厶(ござ)いますが、208今年(ことし)は余程(よほど)不作(ふさく)で厶(ござ)いました。209併(しか)し乍(なが)ら二人(ふたり)や三(さん)人(にん)の年中(ねんぢう)の食料(しよくれう)は、210どうなり、2101かうなり続(つづ)けるで厶(ござ)いませう』
211梅公(うめこう)『天然(てんねん)の恩恵(おんけい)だな。212肥料(こやし)もやらず世話(せわ)もせず、213神(かみ)様(さま)から実(な)らして下(くだ)さる実(み)を勝手(かつて)に食(く)はして貰(もら)つていいのか。214それでは、215あまり冥加(みやうが)がよくないだらう。216人間(にんげん)が遊惰(いうだ)になるのも無理(むり)がないわい』
217サンヨ『此(この)棗(なつめ)はコーラン国(ごく)から取(とり)寄(よ)せたもので厶(ござ)いまして、218此(この)村(むら)にも余(あま)り沢山(たくさん)は厶(ござ)いませぬ。219さうして日々(にちにち)虫取(むしと)りに骨(ほね)を折(を)らねば、220一(いち)日(にち)油断(ゆだん)すれば其(その)虫(むし)が繁殖(はんしよく)して葉(は)を一(いち)枚(まい)も残(のこ)らず噛(か)んで了(しま)ひます。221葉(は)が無(な)くなれば木(き)が枯(か)れるのです。222仲々(なかなか)油断(ゆだん)は出来(でき)ませぬよ。223仲々(なかなか)生活(みすぎ)[※「みすぎ」は「見過ぎ」で、なりわい、生計のこと。]は楽(らく)ぢやありませぬ』
224梅公(うめこう)『さうかな、225ヤツパリ天然(てんねん)に生(は)える果物(くだもの)でも世話(せわ)が要(い)るものかいな。226其(その)代(かは)り肥料(ひれう)は要(い)らないだらう。227此(この)辺(へん)は地(ち)が肥(こえ)てゐるから』
228サンヨ『此(この)棗(なつめ)を頂(いただ)く家(うち)は祖先(そせん)の恩恵(おんけい)によるのです。229さうですから、230余(あま)り何処(どこ)にも、231沢山(たくさん)はありませぬ』
232梅公(うめこう)『祖先(そせん)の恩恵(おんけい)と云(い)ふが、233其(その)祖先(そせん)と云(い)ふのは神(かみ)様(さま)を指(さ)して云(い)ふのか、234或(あるひ)は此(この)家(や)の祖先(そせん)を云(い)ふのか。235世(よ)の中(なか)の人間(にんげん)は何(いづ)れも神祖(しんそ)、236人祖(じんそ)の恩恵(おんけい)を受(う)けないものはない筈(はず)だ。237此(この)棗(なつめ)に限(かぎ)つて先祖(せんぞ)の恩恵(おんけい)とは、238チツト受(う)け取(と)れぬぢやないか』
239サンヨ『此(この)棗(なつめ)を植(うゑ)る時(とき)には犠牲(いけにへ)が要(い)ります。240私(わたし)の大祖先(だいそせん)は子孫(しそん)を愛(あい)する為(た)めに自分(じぶん)の腹(はら)を切(き)り、241その血潮(ちしほ)を根(ね)に染(そ)め、242肉体(にくたい)は木(き)の根(ね)に葬(ほうむ)らせ、243祖先(そせん)の霊肉(れいにく)共(とも)に此(この)棗(なつめ)の肥料(こやし)となり、244万古(まんご)末代(まつだい)子孫(しそん)安楽(あんらく)の為(ため)に守(まも)つて下(くだ)さるのです。245それ故(ゆゑ)、246此(この)棗(なつめ)は生命(いのち)と申(まを)しまして、247あまり沢山(たくさん)は厶(ござ)いませぬ。248今(いま)お食(あが)りに成(な)つたでせうが249此(この)棗(なつめ)は酸(すつ)ぱくて甘(あま)いでせう。250之(これ)は人間(にんげん)の血液(けつえき)や肉(にく)の味(あぢ)で厶(ござ)います。251吾々(われわれ)は祖先(そせん)の血(ち)を啜(すす)り、252肉(にく)を食(た)べて安全(あんぜん)に暮(くら)してゐるのですから、253云(い)はば、254あの棗(なつめ)は先祖(せんぞ)の肉体(にくたい)も同様(どうやう)で厶(ござ)います』
255梅公(うめこう)『何(なん)と先祖(せんぞ)の恩(おん)と云(い)ふものは尊(たふと)いものだな。256吾々(われわれ)の祖先(そせん)も国(くに)を肇(はじ)め徳(とく)を樹(た)て、257道(みち)を開(ひら)き、258子孫(しそん)を安住(あんぢう)させむ為(ため)苦労(くらう)をして下(くだ)さつたのだ。259三五(あななひ)の教(をしへ)も実(じつ)の所(ところ)は祖先(そせん)崇拝教(すうはいけう)だ。260人類愛(じんるゐあい)の神教(しんけう)だ。261あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)』
262と、263流石(さすが)、2631洒脱(しやだつ)な梅公(うめこう)も思(おも)はず知(し)らず感涙(かんるい)に咽(むせ)んでゐる。
264照国別(てるくにわけ)『遠津(とほつ)御祖(みおや)、神(かみ)の恵(めぐ)みは雨(あめ)となり
265土(つち)となりてぞ子孫(みこ)をば救(すく)ふ。
266親々(おやおや)の恵(めぐ)みの露(つゆ)に生(い)き乍(なが)ら
267親(おや)を忘(わす)るる邪神(まがかみ)もあり。
268親(おや)の恩(おん)忘(わす)れし時(とき)は身(み)も魂(たま)も
269亡(ほろ)びに向(むか)ふ初(はじ)めなりけり』
270サンヨ『春(はる)夏(なつ)の別(わか)ちなくして此(この)棗(なつめ)
271実(みの)るも祖先(おや)の恵(めぐ)みなりけり。
272親々(おやおや)の恵(めぐみ)忘(わす)れし酬(むく)いにや
273今日(けふ)の歎(なげ)きの身(み)にふりかかる。
274今(いま)よりは心(こころ)の柱(はしら)樹(た)て直(なほ)し
275祖先(みおや)の祭(まつり)厚(あつ)く仕(つか)へむ』
276梅公(うめこう)『村肝(むらきも)の心(こころ)一度(いちど)に開(ひら)け行(ゆ)く
277白梅(しらうめ)の花(はな)咲(さ)き初(そ)めてより。
278梅(うめ)林檎(りんご)棗(なつめ)の味(あぢ)も皆(みな)同(おな)じ
279主(ス)の大神(おほかみ)の恵(めぐみ)なりせば』
280照公(てるこう)『此(この)家(いへ)の祖先(おや)の恵(めぐみ)を居(ゐ)ながらに
281受(う)けし吾(われ)等(ら)は神(かみ)の賜物(たまもの)。
282親々(おやおや)の踏(ふ)みてし道(みち)を辿(たど)りつつ
283世(よ)の犠牲(いけにへ)にならむとぞ思(おも)ふ』
284タクソン『吾(わが)家(や)にも祖先(おや)の恵(めぐみ)の棗(なつめ)あり
285いざ之(これ)よりは詫言(わびごと)やせむ。
286御恵(みめぐみ)を忘(わす)れ果(は)てたる酬(むく)いにや
287吾(わが)恋妻(こひづま)は攫(さら)はれにけり』
288エルソン『吾(わが)恋(こ)ふる妹(いも)は枉霊(まがひ)に奪(うば)はれて
289袖(そで)の涙(なみだ)の乾(かわ)く間(ま)もなし。
290如何(いか)にして姫(ひめ)の所在(ありか)を探(さぐ)らむと
291只(ただ)思(おも)ふより外(ほか)なかりけり』
292タクソン『御(ご)一同(いちどう)様(さま)に申(まをし)上(あ)げ度(た)う厶(ござ)いますが、293此(この)タライの村(むら)の里庄(りしやう)ジャンク様(さま)の娘(むすめ)、294スガコ姫(ひめ)は絶世(ぜつせい)の美人(びじん)で厶(ござ)いますが、295バラモンの軍隊(ぐんたい)が出(で)て来(く)る数日(すうじつ)以前(いぜん)に、296何者(なにもの)にか掻(かつ)攫(さら)はれ、297今(いま)迄(まで)行衛(ゆくゑ)が分(わか)りませぬので、298ジャンク一家(いつか)の歎(なげ)きは一通(ひととほ)りぢや厶(ござ)いませぬ。299私(わたくし)もジャンク様(さま)の家(いへ)の子(こ)として、300先祖(せんぞ)代々(だいだい)仕(つか)へてゐますが、301家(いへ)の宝(たから)をとられ、302嬢様(ぢやうさま)の行衛(ゆくゑ)を探(さが)す暇(ひま)もなく、303女房(にようばう)の行衛(ゆくゑ)について頭(あたま)を悩(なや)めてゐます。304何卒(どうぞ)貴方(あなた)のお伴(とも)となつて、305嬢様(ぢやうさま)や女房(にようばう)の行衛(ゆくゑ)を探(さが)し度(た)う厶(ござ)いますが、306どうか、307お伴(とも)にお加(くは)へ下(くだ)さいますまいか』
308照国(てるくに)『委細(ゐさい)承知(しようち)しました。309御(ご)心底(しんてい)お察(さつ)し申(まを)します。310何事(なにごと)も神(かみ)にお任(まか)せなさいませ』
311タクソン『ハイ、312有難(ありがた)う厶(ござ)います。313之(これ)で私(わたし)も甦(よみがへ)つたやうな心持(こころもち)が致(いた)します』
314エルソン『先生(せんせい)、315私(わたし)もお願(ねが)ひ致(いた)します。316何卒(どうぞ)、3161お伴(とも)にお引(ひき)連(つ)れを、317強(た)つてお許(ゆる)し下(くだ)さいませ。318私(わたし)は独身者(どくしんもの)で御座(ござ)いますから、319家(いへ)に系累(けいるゐ)もなく宣伝使(せんでんし)のお伴(とも)には最適任(さいてきにん)者(しや)と存(ぞん)じます』
320照国(てるくに)『よしよし、321お前(まへ)も一緒(いつしよ)に来(く)るがよからう』
322梅公(うめこう)『オイ、323エルソン君(くん)、324君(きみ)は何(なん)だか心(こころ)に秘密(ひみつ)を抱(いだ)いてゐるやうだな』
325エルソン『ハイ、326私(わたくし)も相思(さうし)の女(をんな)が厶(ござ)いました。327その女(をんな)の行衛(ゆくゑ)を尋(たづ)ね、328此(この)お婆(ばあ)さまに会(あ)はして上(あ)げねばなりませぬ』
329梅公(うめこう)『ハヽヽヽヽ、330さうすると当家(たうけ)の妹娘(いもうとむすめ)と以心(いしん)伝心(でんしん)とか、331相思(さうし)とか、332の経緯(いきさつ)があるのだな。333これ、334お婆(ばあ)さま、335あなたは此(この)エルソンに娘(むすめ)を与(や)らうと云(い)つたのですか。336さいぜん、337私(わたし)に娘(むすめ)の身(み)の上(うへ)を依頼(いらい)すると仰有(おつしや)つたでせう』
338サンヨ『ホヽヽヽヽ油断(ゆだん)のならぬのは娘(むすめ)で厶(ござ)います。339何時(いつ)の間(ま)にか此(この)エルソンさまと親(おや)に秘密(ないしよ)で約束(やくそく)をしたのかも知(し)れませぬ。340宅(うち)の娘(むすめ)は年(とし)をとつても子供(こども)だ子供(こども)だと思(おも)つてゐましたが、341油断(ゆだん)のならぬのは娘(むすめ)で厶(ござ)います。342これこれエルソンさま、343お前(まへ)は娘(むすめ)の花香(はなか)と何(なに)か約束(やくそく)でもなさつたのかい』
344エルソン『ハイ……イーエ……エー……まだ予定(よてい)で厶(ござ)います』
345サンヨ『お前(まへ)さまの方(はう)で定(き)めてゐるのだらう。346娘(むすめ)の花香(はなか)はお前(まへ)さまから一回(いつくわい)の交渉(かうせふ)も受(う)けてゐないのだらうなア』
347エルソン『花香(はなか)さまに対(たい)し、348どうせう、349こうせう(交渉(かうせう))と胸(むね)を痛(いた)めてゐる最中(さいちう)、350お行衛(ゆくゑ)が分(わか)らなくなつたので、351私(わたし)も憤慨(ふんがい)の極(きよく)に達(たつ)し、352おのれバラモン軍(ぐん)、353吾(わが)愛人(あいじん)の仇(あだ)だ354仮令(たとへ)天(てん)を駆(かけ)り地(ち)を潜(くぐ)る妙術(めうじゆつ)、3541彼(かれ)にありとも355恋愛(れんあい)至上(しじやう)の真心(まごころ)は金鉄(きんてつ)も熔(とろ)かす勢(いきほ)ひ、356あく迄(まで)も花香(はなか)様(さま)を奪(うば)ひ回(かへ)し、357私(わたし)の赤心(まごころ)を買(か)つて貰(もら)ふ考(かんが)へで厶(ござ)います。358どうかお婆(ばあ)さま、359私(わたし)が花香(はなか)さまを無事(ぶじ)に連(つ)れて帰(かへ)りましたら、360その御(ご)褒美(ほうび)として当家(たうけ)の養子(やうし)にして下(くだ)さるでせうな』
361サンヨ『ホヽヽヽヽ何(なん)とマア抜目(ぬけめ)のない男(をとこ)だこと、362仲々(なかなか)お前(まへ)さまも隅(すみ)には置(お)けませぬわい』
363梅公(うめこう)『ハヽヽヽヽそれで一切(いつさい)事情(じじやう)が判然(はんぜん)して来(き)た。364世(よ)の中(なか)には変則(へんそく)的(てき)恋愛(れんあい)に熱中(ねつちう)する連中(れんぢう)もあるものだな。365オイ、366エルソン君(くん)、367それだけの熱心(ねつしん)があればキツト成功(せいこう)するよ。368実(じつ)の所(ところ)は俺(おれ)がお婆(ばあ)さまの委託(ゐたく)を受(う)け、369舐(ねぶ)つて喰(く)はうと焚(た)いて喰(く)はうと自由(じいう)自在(じざい)との事(こと)だつたが、370それ丈(だ)けお前(まへ)に執着心(しふちやくしん)があるのを聞(き)くと、371何(なん)だか俺(おれ)も君(きみ)の心理(しんり)情態(じやうたい)が憐(あは)れになつて来(き)た。372僕(ぼく)は花香姫(はなかひめ)に対(たい)する一切(いつさい)の権利(けんり)を君(きみ)に譲渡(じやうと)するよ。373なアお婆(ばあ)さま、374それで宜(い)いでせう。375云(い)はば生死(せいし)不明(ふめい)の美人(びじん)を托(たく)されたのだから、376お婆(ばあ)さまだとてエルソンさまの女房(にようばう)にするのに不足(ふそく)はありますまい』
377サンヨ『エルソンさまも村中(むらぢう)の褒(ほ)めものなり、378模範(もはん)青年(せいねん)と云(い)はれて居(ゐ)るから、379キツト娘(むすめ)も喜(よろこ)ぶでせう。380此(この)事(こと)については私(わたし)は何(なに)も申(まを)しませぬ、381梅公(うめこう)さまにお任(まか)せ致(いた)します』
382梅公(うめこう)『比較(ひかく)的(てき)開(ひら)けたお婆(ばあ)さまだ、383いや感心(かんしん)々々(かんしん)。384これお婆(ばあ)さま、385之(これ)から三五(あななひ)の神(かみ)様(さま)の教(をしへ)も聞(き)きなさい。386然(しか)しバラモンの神(かみ)様(さま)を捨(す)てよとは云(い)はないからなア』
387サンヨ『ハイ有難(ありがた)う厶(ござ)います。388貴方(あなた)等(がた)の吾(わが)家(いへ)においで下(くだ)さつたのをいい機会(きくわい)として、389今日(けふ)から信仰(しんかう)に入(い)れて頂(いただ)きませう』
390タクソン『もし宣伝使(せんでんし)様(さま)、391どうかお邪魔(じやま)でも厶(ござ)いませうが、392一度(いちど)私(わたし)の主人(しゆじん)と会(あ)ふため、393里庄(りしやう)の宅(うち)へお立寄(たちより)下(くだ)されますまいか。394里庄(りしやう)はキツト喜(よろこ)ぶで厶(ござ)いませうから』
395照国(てるくに)『里庄(りしやう)の宅(うち)も嘸(さぞ)御(ご)心配(しんぱい)して厶(ござ)るだらう。396兎(と)も角(かく)お尋(たづ)ねする事(こと)にしよう。397さア一同(いちどう)出立(しゆつたつ)の用意(ようい)をなされ……、398イヤお婆(ばあ)さま、399永(なが)らくお邪魔(じやま)を致(いた)しました。400もう大丈夫(だいぢやうぶ)ですから御(ご)安心(あんしん)なさいませ』
401と言葉(ことば)を残(のこ)し402里庄(りしやう)の宅(たく)に向(むか)つて宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひ乍(なが)ら進(すす)み行(ゆ)く。403老婆(らうば)サンヨは杖(つゑ)にすがり乍(なが)ら門(かど)の外(そと)迄(まで)見送(みおく)り、404名残(なごり)惜(を)しげに一行(いつかう)の姿(すがた)の見(み)えぬ迄(まで)見送(みおく)つてゐた。405あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)。
406(大正一三・一二・一五 旧一一・一九 於祥雲閣 北村隆光録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→