霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
サイトをリニューアルしました(従来バージョンはこちら)【新着情報】サブスクのお知らせ)

第一〇章 八百長(やほちやう)(げき)〔一六九二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第66巻 山河草木 巳の巻 篇:第2篇 容怪変化 よみ(新仮名遣い):ようかいへんげ
章:第10章 八百長劇 よみ(新仮名遣い):やおちょうげき 通し章番号:1692
口述日:1924(大正13)年12月16日(旧11月20日) 口述場所:祥雲閣 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年6月29日
概要: 舞台:オーラ山、シノワ谷の入口 あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2018-04-17 14:47:53 OBC :rm6610
愛善世界社版:140頁 八幡書店版:第11輯 781頁 修補版: 校定版:140頁 普及版:67頁 初版: ページ備考:
001 ヨリコ(ひめ)大頭目(だいとうもく)(はじ)め、002シーゴー、003玄真坊(げんしんばう)(さん)(にん)(さけ)()()はし、004いろいろと面白(おもしろ)からぬ協議(けふぎ)(ふけ)つてゐた。005そこへ(あわ)ただしく手下(てした)一人(ひとり)(あら)はれ(きた)り、
006親分(おやぶん)(まをし)()げます』
007ヨリコ『(あわ)ただしき(その)様子(やうす)008何事(なにごと)(おこ)つたのかなア、009(まへ)はコリぢやないか』
010コリ『ハイ、011左様(さやう)(ござ)います。012シーゴー親分(おやぶん)(さま)()命令(めいれい)()り、013タライの(むら)里庄(りしやう)(いへ)十数(じふすう)(にん)(ひき)つれ、014夜陰(やいん)乗込(のりこ)み、015たうとう絶世(ぜつせい)美人(びじん)スガコ(ひめ)(ひつ)(とら)へて(かへ)り、016狼谷(シノワだに)入口(いりぐち)(おい)て、017吾々(われわれ)同僚(どうれう)芝居(しばゐ)をやつてゐる(ところ)(ござ)いますから、018どうか救世主(きうせいしゆ)として、019()一人(ひとり)(あら)はれ(くだ)さいませ』
020ヨリコ『ソリヤ()(こと)をした。021あしこの(むすめ)ならば随分(ずいぶん)美人(びじん)だらう。022そして沢山(たくさん)(かね)要求(えうきう)出来(でき)るだらう。023ヤ、024面白(おもしろ)面白(おもしろ)い。025オイ、026コリ、027あの(むすめ)をかつさらへるに()いての殊勲者(しゆくんじや)(たれ)だ』
028コリ『ハイ、029()(かく)(わたし)引率(いんそつ)して(まゐ)つたのですから、030(たれ)がかつさらへても、031ヤツパリ(わたし)(すべ)ての画策(くわくさく)(よろ)しきを()結果(けつくわ)(ござ)いますから、032()月桂冠(げつけいくわん)(この)コリに()すべきものと(ぞん)じます』
033ヨリコ『自分(じぶん)(うま)れた(むら)(むすめ)()けば、034(なん)だか(はづか)しいやうだ。035そして(かほ)()られちや大変(たいへん)だから、036(わたし)天王(てんわう)(やしろ)床下(ゆかした)なる地下室(ちかしつ)住居(ぢうきよ)(うつ)さう。037玄真坊(げんしんばう)038コリ、039(まへ)両人(りやうにん)()つて、040よきに取計(とりはか)らうたが()からう』
041 両人(りやうにん)は『ハイ』と(かしら)()げ、042()椋鳥(むくどり)(つか)まつた……と俯向(うつむ)いたまま、043ホクソ()んでゐる。
044ヨリコ『コレ、045シーゴー殿(どの)046(わが)居間(ゐま)()いて()(くだ)さい。047(まへ)さまには(また)(べつ)(よう)があるから』
048()(なが)ら、049シーゴーを(ともな)ひ、050地下室(ちかしつ)(かへ)()く。051玄真坊(げんしんばう)(いかめ)しき法服(ほふふく)をつけ、052錫杖(しやくぢやう)をガチヤガチヤと(ひび)かせ(なが)ら、053(なな)(さが)りの山路(やまみち)法螺貝(ほらがひ)(ふき)()(ふき)()(くだ)()く。
054 狼谷(シノワだに)入口(いりぐち)十五六(じふごろく)(にん)手下(てした)(ども)が、055一人(ひとり)美人(びじん)(なか)におき、
056(かふ)(ショール)『オイ、057(をんな)058(きさま)(いま)(まで)栄燿(えいえう)栄華(えいぐわ)に、059(なに)不自由(ふじゆう)なく、060里庄(りしやう)(むすめ)として(くら)して()(やつ)だが、061最早(もはや)(きさま)運命(うんめい)ツキ(くに)だ。062サア(これ)から因果腰(いんぐわごし)()めて、063(この)(はう)女房(にようばう)になるか、064(いや)(ぬか)さば、0641(この)(はう)(かたな)(さび)065性念(しやうねん)をすゑてシツカリ返答(へんたふ)(いた)すが()からうぞ』
066(をんな)(スガコ)『お(まへ)さまは、067(この)(やま)割拠(かつきよ)してゐる小盗児(こぬすと)サンだな。068(おな)人間(にんげん)(うま)(なが)ら、069なぜ(また)こんな卑怯(ひけふ)商売(しやうばい)をしてゐるのだい。070自在天(じざいてん)(さま)()冥罰(めいばつ)(おそ)ろしくはありませぬか』
071(かふ)(ショール)『アツハヽヽヽ、072大自在天(だいじざいてん)がこはくつて、073こんな商売(しやうばい)出来(でき)るか、074馬鹿(ばか)(こと)をいふな。075どうだ(ひと)つ、076改心(かいしん)して泥棒(どろばう)(さま)奥様(おくさま)になり、077女盗賊(をんなたうぞく)頭目(とうもく)として羽振(はぶり)()かす()はないか』
078(をんな)(スガコ)『エー、079(けが)らはしい、080小泥棒(こどろばう)分際(ぶんざい)として貴婦人(きふじん)(むか)つて(なに)をいふのだ。081さがりおらう!』
082(かふ)(ショール)『アツハヽヽヽ、083チヨツクとやりよるワイ。084流石(さすが)里庄(りしやう)(むすめ)(だけ)あつて、085どこともなく(たましひ)出来(でき)てゐる、086ヤ、087感心(かんしん)々々(かんしん)088(その)(たましひ)見込(みこ)んで、089(この)(はう)(ほれ)たのだ。090(まへ)(おれ)小盗児(こぬすと)といふが、091(けつ)して(その)(やう)(もの)ではない。092トルマン(ごく)のバルガン城下(じやうか)(うま)れたショールさまといふ立派(りつぱ)(をとこ)だよ。093(をとこ)(なか)(をとこ)といはれた哥兄(あにき)だ。094(おれ)(あご)()(かた)で、095(まへ)(いのち)(たす)からうと(たす)かるまいと、096自由(じいう)自在(じざい)権力(けんりよく)をもつ(をとこ)だ。097どうだ、098(ひと)(かんが)(なほ)して、099(おれ)(おく)になる()はないか』
100(おつ)『ショールさま、101エ、102邪魔(じやま)(くさ)い、103こんな(あま)ツチヨに相手(あひて)になつてたら、104()()れますよ。105サ、106たたんだり たたんだり。107コリの親分(おやぶん)(かへ)つて()たら、108(なん)()つて小言(こごと)をつかれるか(わか)らぬ。109こんな婦女(あま)一疋(いつぴき)半疋(はんぴき)手古(てこ)ずつたとあつちや(をとこ)()たねえ。110オイ(みな)(やつ)111やつつけろ』
112 『ヨーシ合点(がつてん)だ』と一同(いちどう)柄物(えもの)()つて、113一人(ひとり)(をんな)(むか)()つてかかる。114(をんな)強者(しれもの)115身構(みがまえ)なし、116柳眉(りうび)逆立(さかだ)て、
117(をんな)(スガコ)『タカが小泥棒(こどろばう)(じふ)(にん)二十(にじふ)(にん)118(なん)(おそ)るる(こと)あらむや。119日頃(ひごろ)(おぼ)えし柔術(じうじゆつ)妙技(めうぎ)(あら)はすは(この)(とき)だ。120サア()い、121(きた)れ』
122大手(おほで)(ひろ)げて()つてゐる。
123(なに)猪口才(ちよこさい)な』
124一同(いちどう)は、125武者振(むしやぶり)ついて、1251()()(あし)()126(たちま)地上(ちじやう)捻伏(ねぢふ)せて(しま)つた。
127ショール『コリヤ(をんな)128ジタバタしてもモウ駄目(だめ)だ。129サア(おれ)(こころ)(したが)ふか、130()うだ、131(その)(はう)一言(いちごん)()つて、132(きさま)生死(せいし)(わか)るるのだ』
133(をんな)(スガコ)『エー、134(けが)らはしい、135(わらは)はタライの(むら)里庄(りしやう)(むすめ)スガコ(ひめ)だ。136(なんぢ)(ごと)(こころ)(けが)れし小泥棒(こどろぼう)(なび)(やう)(をんな)ではないぞ。137(ころ)したくば(ころ)したがよい。138(をし)まれて()るのが(はな)値打(ねうち)だ。139サア(ころ)(ころ)せ』
140()ばはつてゐる。141ショールも……(はや)玄真坊(げんしんばう)()()れないかなア……と(やや)手持(てもち)無沙汰(ぶさた)気味(きみ)でまつてゐると、142ブーブーと法螺(ほら)(ふき)()(なが)ら、143ガチヤリ ガチヤリと急坂(きふはん)(くだ)つて()(をとこ)がある。144(かれ)はコリの注進(ちうしん)によりて、145(この)芝居(しばゐ)処置(しよち)をつけむ(ため)146修験者(しゆげんじや)法服(ほふふく)(まと)うてやつて()玄真坊(げんしんばう)である。147玄真坊(げんしんばう)はあたりに(ひび)大音声(だいおんじやう)にて、
148玄真(げんしん)()れこそは、149(てん)(めい)()け、150オーラ(さん)天降(あまくだ)りたる玄真坊(げんしんばう)(だい)救世主(きうせいしゆ)だ。151()ればかよわき(をんな)(かどは)かし、152乱暴(らんばう)狼藉(らうぜき)(はたら)()る、153こわつぱの(たく)みと()えたり。154()てツ、155(いま)神譴(しんけん)(くは)へくれむ、156そこ(うご)くなツ』
157()ばはる(こゑ)に、158ショール(はじ)部下(ぶか)者共(ものども)は、159ヤレ(さいはひ)と、160蜘蛛(くも)()()らすが(ごと)く、161バラバラバツと()()(とほ)姿(すがた)をかくした。162スガコ(ひめ)(あま)りの無念(むねん)さ、163残念(ざんねん)さに白歯(しらは)をくひしばり、164嗚咽(をえつ)涕泣(ていきふ)してゐる。165玄真坊(げんしんばう)(そば)(ちか)くより(きた)り、166(しづか)(ひめ)(あたま)背中(せなか)()167一入(ひとしほ)(しづか)なやさしみのある(こゑ)で、
168玄真(げんしん)『どこのお女中(ぢよちう)()らぬが、169えらい()災難(さいなん)(ござ)つたのう。170最早(もはや)拙僧(せつそう)(あら)はれた(うへ)()安心(あんしん)なさい。171テも(さて)(あぶな)(ところ)(ござ)つたワイ』
172スガコ『(いづ)れの(かた)かは(ぞん)じませぬが、173(わらは)(いのち)瀬戸際(せとぎは)をお(たす)(くだ)さいまして有難(ありがた)(ぞん)じます。174貴方(あなた)(いづ)れの(かみ)(さま)(ござ)いますか、175(おそ)れながら()()(うけたまは)りたう(ござ)います』
176玄真(げんしん)拙僧(せつそう)(てん)(ちち)となし、177()(はは)となし、178宇宙(うちう)主宰(しゆさい)となり、179トルマン(ごく)救済(きうさい)(ため)1791(この)オーラ(さん)聖蹟(せいせき)(とど)め、180(かく)(ごと)修験者(しゆげんじや)変化(へんげ)して衆生(しゆじやう)済度(さいど)(いた)(もの)181最早(もはや)(わが)()にかかりし(うへ)は、182如何(いか)なる曲神(まががみ)(いへど)183貴女(あなた)(からだ)一指(いつし)だもそへる(こと)出来(でき)ない。184()安心(あんしん)なさい』
185スガコ『どうも有難(ありがた)(ござ)います。186貴方(あなた)(うはさ)(たか)きオーラ(さん)玄真坊(げんしんばう)(さま)(ござ)いますか、187これも(まつた)(かみ)(さま)()引合(ひきあは)せ、188(なに)かの御縁(ごえん)(ござ)いませう。189(わらは)はタライの(むら)里庄(りしやう)(むすめ)190(おや)一人(ひとり)()一人(ひとり)(あはれ)(もの)(ござ)いますが、191昨夜(さくや)泥棒(どろばう)団体(だんたい)()()まれ、192猿轡(さるぐつわ)()められて(ひろ)原野(げんや)(ひき)(まは)され、193(いま)(また)この(ところ)(おい)泥棒頭(どろぼうがしら)無体(むたい)恋慕(れんぼ)194(かれ)()(したが)はざる(ため)195(わらは)(いのち)()らむと(いた)し、196大勢(おほぜい)()つてかかつて(ねぢ)()せてをりました一刹那(いつせつな)197(たふと)法螺貝(ほらがひ)(こゑ)(きこ)えたかと(おも)へば、198救世主(きうせいしゆ)(さま)()来臨(らいりん)199おかげで(あやふ)(ところ)(たす)けて(いただ)きました、200幾重(いくへ)にも(おん)(れい)(まをし)()げます』
201玄真(げんしん)『イヤ、202()(れい)()はれては(こま)る。203(あめ)(した)万民(ばんみん)(みな)(わが)()だ、204(わが)弟子(でし)だ。205(おや)()危急(ききふ)(すく)ふのは当然(たうぜん)だ、206(けつ)して(れい)をいふにや(およ)ばぬ。207サア(これ)から(この)(はう)(とも)に、208オーラ(さん)聖場(せいぢやう)()つて(やす)まうぢやないか』
209スガコ『ハイ()親切(しんせつ)有難(ありがた)(ござ)いますが、210(わが)()におきましては、211(ちち)(まを)すに(およ)ばず、212(いへ)()(ども)(うへ)(した)へと、213(わらは)(たづ)ねて心配(しんぱい)をして()りませうから、214何卒(なにとぞ)(ちち)(いへ)(まで)(おく)つて(いただ)(わけ)には(まゐ)りますまいか。215そして十日(とをか)二十日(はつか)(ひやく)(にち)()逗留(とうりう)(くだ)さいまして、216里人(さとびと)結構(けつこう)(めぐ)みを()(あた)(くだ)さいますまいか』
217玄真(げんしん)『そなたの(のぞ)み、218()いてやりたいは山々(やまやま)なれど、219(この)玄真坊(げんしんばう)(なな)(さが)ると、220天地(てんち)神々(かみがみ)相談(さうだん)(いた)さねばならず、221(ほし)(てん)より(くだ)大杉(おほすぎ)(こずゑ)(とど)まつて、222(わが)教説(けうせつ)()きに()る……といふやうな次第(しだい)であるから、223(いま)少時(しばし)里方(さとがた)()(わけ)()かぬ。224さうだと()つて、225(まへ)一人(ひとり)226(この)(まま)(かへ)せば、227(また)もや泥棒(どろばう)(なん)()はぬとも保証(ほしよう)(がた)い。228それ(ゆゑ)(いま)少時(しばし)229(この)(はう)(とも)にオーラ(さん)聖場(せいぢやう)(まう)でて、230天王(てんわう)(やしろ)感謝(かんしや)祈願(きぐわん)(まこと)(ささ)げ、231少時(しばし)逗留(とうりう)(いた)したが()からう。232貴方(そなた)父上(ちちうへ)には、233(この)(はう)より(ひと)をつかはし、234報告(はうこく)をしておくから(やが)(むか)へにみえるだらう。235救世主(きうせいしゆ)言葉(ことば)二言(にごん)はない。236サアサア(この)(はう)()いてお(いで)なされ』
237スガコ『さう()親切(しんせつ)仰有(おつしや)つて(くだ)されば、238(いな)(わけ)には(まゐ)りませぬ。239左様(さやう)なれば不束(ふつつか)(わらは)240少時(しばし)()厄介(やくかい)(あづ)かりませう』
241玄真(げんしん)『ウン、242ヨシヨシ、243流石(さすが)明察(めいさつ)淑女(しゆくぢよ)244(いな)賢女(けんぢよ)だ』
245とほめそやし(なが)ら、246スガコの()()いて、247コツリコツリと急阪(きふはん)(のぼ)り、248おのが住家(すみか)へと(かへ)()く。249(はや)くも()(やま)(いただき)(ぼつ)し、250四辺(あたり)薄暗(うすぐら)く、251大杉(おほすぎ)(こずゑ)には燦爛(さんらん)なる妖星(えうせい)(ひかり)(かがや)いてゐた。252玄真坊(げんしんばう)頭上(づじやう)(ひかり)(ゆび)ざし「ざ」はママ253(ゑみ)満面(まんめん)(たた)(なが)ら、
254玄真(げんしん)『コレコレお女中(ぢよちう)255あの(こずゑ)御覧(ごらん)なさい、256あの(とほ)り、257()()れるが最後(さいご)258(てん)からお(ほし)(さま)がお(くだ)りになり、259救世主(きうせいしゆ)教説(けうせつ)()かんとお()(かね)だ』
260 スガコは頭上(づじやう)打仰(うちあふ)(なが)ら、261()(まばゆ)(ひかり)(こずゑ)散在(さんざい)せるを()て、262()(おどろ)()(あや)しみ(なが)ら、263(あを)(かほ)して(ふる)うてゐる。264玄真坊(げんしんばう)(この)(さま)()高笑(たかわら)ひ、
265玄真(げんしん)『アハヽヽヽ、266流石(さすが)深窓(しんさう)(そだ)つたお(ぢやう)さまだなア。267(てん)からお(くだ)りになつたお(ほし)(さま)がこわいと()える。268(その)(あを)(かほ)……』
269スガコ『玄真坊(げんしんばう)(さま)270(あま)りの()神徳(しんとく)(たか)さに、271(わらは)(きも)をとられました。272(なん)不思議(ふしぎ)(こと)があるもので(ござ)いますなア。273天地(てんち)開闢(かいびやく)以来(いらい)274(ほし)(さま)(くだ)つて(をしへ)()かれるといふ(こと)は、275言置(いひおき)にも書置(かきおき)にも(ござ)いませぬ。276(おも)へば(おも)へば貴方(あなた)(さま)絶対(ぜつたい)無限(むげん)神権(しんけん)(そな)へて()らつしやる活神(いきがみ)(さま)()化身(けしん)(ござ)いませう、277(あま)有難(ありがた)くつて()(れい)(まをし)(やう)(ござ)いませぬ』
278玄真(げんしん)『お(まへ)(じつ)見上(みあ)げた才媛(さいえん)だ、279(この)(はう)(みたま)素性(すじやう)をよくもそこ(まで)看破(かんぱ)したなア。280(まへ)尋常(ただ)人間(にんげん)ではない。281(たふと)(ある)女神(めがみ)(さま)化身(けしん)だよ』
282スガコ『ホヽヽヽ、283勿体(もつたい)ない、284(わらは)(ごと)(いや)しき(をんな)(むか)女神(めがみ)化身(けしん)だなどとは、285玄真坊(げんしんばう)さま、286()冗談(じやうだん)(ほど)(ござ)いますよ、287貴方(あなた)(ひと)(わる)(ござ)いますな。288さう揶揄(からかつ)(いただ)きますと、289()らず()らずに慢心(まんしん)(いた)しますからなア』
290玄真(げんしん)『イヤ(けつ)して揶揄(からかふ)のではない、291救世主(きうせいしゆ)言葉(ことば)には(うそ)(いつは)りはない(はず)だ。292拙僧(せつそう)言葉(ことば)(かみ)言葉(ことば)だ。293スガコ殿(どの)294安心(あんしん)をなされよ』
295スガコ『ハイ有難(ありがた)(ござ)います、296そんなら少時(しばらく)297(みたま)素性(すじやう)(わか)(まで)298貴方(あなた)のお(そば)において(いただ)きたいもので(ござ)いますなア』
299玄真(げんしん)『ヨシヨシ、300それが()からう、301(まへ)第一(だいいち)霊国(れいごく)天人(てんにん)天降(あまくだ)りだ。302八百万(やほよろづ)(かみ)()ひつけて、303天国(てんごく)身許(みもと)調(しら)べをしてやらう。304ここ(いつ)週間(しうかん)(うち)には、305(まへ)素性(すじやう)判然(はつきり)(わか)るだらう』
306スガコ『ハイ、307有難(ありがた)御座(ござ)います、308何分(なにぶん)(よろ)しく()(ねが)(いた)します』
309 スガコは相当(さうたう)教育(けういく)もあり、310凡人(ぼんじん)にすぐれた智慧(ちゑ)()つてゐた、311そして天性(てんせい)美人(びじん)であつた。312(しか)(なが)(なに)(ほど)賢明(けんめい)婦人(ふじん)でも(おも)はぬ厄難(やくなん)()ひ、313九死(きうし)一生(いつしやう)場合(ばあひ)314(おも)はぬ(ひと)(たす)けられ、315(その)(ひと)から……お(まへ)立派(りつぱ)女神(めがみ)さまだの、316化身(けしん)だの……と()はれては、317如何(いか)なる明智(めいち)(をんな)でも(まよ)はざるを()ないのである。318スガコは到頭(たうとう)(かれ)()悪人輩(あくにんばら)()()けた(わな)(おちい)り、319玄真坊(げんしんばう)(しん)救世主(きうせいしゆ)(しん)じ、320(とら)(おほかみ)(あな)()るとは()らず、321欣然(きんぜん)として妖僧(えうそう)(あと)(したが)ひ、322(やうや)大杉(おほすぎ)(もと)323玄真坊(げんしんばう)居間(ゐま)(みちび)かるる(こと)となつた。324あゝスガコの今後(こんご)()(うへ)()うなるであらうか。
325大正一三・一二・一六 旧一一・二〇 於祥雲閣 松村真澄録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki