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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第66巻(巳の巻)
序文
総説
第1篇 月の高原
第1章 暁の空
第2章 祖先の恵
第3章 酒浮気
第4章 里庄の悩
第5章 愁雲退散
第6章 神軍義兵
第2篇 容怪変化
第7章 女白浪
第8章 神乎魔乎
第9章 谷底の宴
第10章 八百長劇
第11章 亞魔の河
第3篇 異燭獣虚
第12章 恋の暗路
第13章 恋の懸嘴
第14章 相生松風
第15章 喰ひ違ひ
第4篇 恋連愛曖
第16章 恋の夢路
第17章 縁馬の別
第18章 魔神の囁
第19章 女の度胸
第20章 真鬼姉妹
余白歌
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霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第66巻(巳の巻)
> 第1篇 月の高原 > 第4章 里庄の悩
<<< 酒浮気
(B)
(N)
愁雲退散 >>>
第四章
里庄
(
りしやう
)
の
悩
(
なやみ
)
〔一六八六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第66巻 山河草木 巳の巻
篇:
第1篇 月の高原
よみ(新仮名遣い):
つきのこうげん
章:
第4章 里庄の悩
よみ(新仮名遣い):
りしょうのなやみ
通し章番号:
1686
口述日:
1924(大正13)年12月15日(旧11月19日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年6月29日
概要:
舞台:
タライの村の里庄ジャンクの家
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6604
愛善世界社版:
51頁
八幡書店版:
第11輯 748頁
修補版:
校定版:
51頁
普及版:
67頁
初版:
ページ備考:
001
タライの
村
(
むら
)
の
里庄
(
りしやう
)
ジャンクは
重
(
かさ
)
なる
悲運
(
ひうん
)
に
悄然
(
せうぜん
)
として
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
火物断
(
ひものだ
)
ちをなし、
002
顔色
(
がんしよく
)
青
(
あを
)
ざめ、
003
殆
(
ほとん
)
ど
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
人
(
ひと
)
とは
見
(
み
)
えぬ
迄
(
まで
)
にやつれ
乍
(
なが
)
ら
004
二絃琴
(
にげんきん
)
を
弾
(
だん
)
じて、
0041
心
(
こころ
)
の
煩悶
(
はんもん
)
苦悩
(
くなう
)
を
慰
(
なぐさ
)
めてゐた。
005
ジャンク『
久方
(
ひさかた
)
の、
空
(
そら
)
すみ
渡
(
わた
)
り
日月
(
じつげつ
)
の
006
光
(
ひかり
)
は
清
(
きよ
)
く
万有
(
ばんいう
)
を
007
照
(
て
)
らし
玉
(
たま
)
へど
醜神
(
しこがみ
)
の
008
其
(
その
)
勢
(
いきほひ
)
の
猛
(
たけ
)
くして
009
真澄
(
ますみ
)
の
空
(
そら
)
も
瞬間
(
しゆんかん
)
に
010
墨
(
すみ
)
を
流
(
なが
)
せし
常暗
(
とこやみ
)
の
011
淋
(
さび
)
しき
世
(
よ
)
とはなりにけり
012
地
(
ち
)
には
百草
(
ももぐさ
)
繁茂
(
はんも
)
して
013
紫
(
むらさき
)
紅
(
くれなゐ
)
赤
(
あか
)
白
(
しろ
)
の
014
目出
(
めで
)
たき
花
(
はな
)
は
遠近
(
をちこち
)
と
015
所
(
ところ
)
狭
(
せ
)
き
迄
(
まで
)
咲
(
さき
)
匂
(
にほ
)
ふ
016
さながら
花
(
はな
)
の
莚
(
むしろ
)
をば
017
布
(
し
)
きし
如
(
ごと
)
くに
見
(
み
)
ゆれ
共
(
ども
)
018
天
(
てん
)
に
叢雲
(
むらくも
)
花
(
はな
)
に
嵐
(
あらし
)
019
静
(
しづか
)
な
波
(
なみ
)
も
風
(
かぜ
)
吹
(
ふ
)
かば
020
海
(
うみ
)
の
底
(
そこ
)
ひも
白波
(
しらなみ
)
の
021
立髪
(
たてがみ
)
ふるひ
大津辺
(
おほつべ
)
の
022
岸
(
きし
)
に
噛
(
か
)
みつく
世
(
よ
)
の
習
(
なら
)
ひ
023
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
と
頼
(
たの
)
みてし
024
タライの
村
(
むら
)
の
吾
(
わが
)
家
(
いへ
)
も
025
世
(
よ
)
の
変遷
(
へんせん
)
にもれずして
026
柱
(
はしら
)
と
頼
(
たの
)
む
吾
(
わが
)
妻
(
つま
)
は
027
十年
(
ととせ
)
の
前
(
まへ
)
に
病気
(
いたづき
)
の
028
身
(
み
)
を
横
(
よこ
)
たへて
幽界
(
かくりよ
)
に
029
果敢
(
はか
)
なき
旅
(
たび
)
をなせしより
030
忘
(
わす
)
れがたみの
一人娘
(
ひとりご
)
を
031
家
(
いへ
)
の
杖
(
つゑ
)
とし
力
(
ちから
)
とし
032
這
(
は
)
へば
立
(
た
)
て
立
(
た
)
てば
歩
(
あゆ
)
めと
朝宵
(
あさよひ
)
に
033
心
(
こころ
)
を
配
(
くば
)
り
育
(
はぐ
)
くみて
034
漸
(
やうや
)
く
二九
(
にく
)
の
春
(
はる
)
迎
(
むか
)
へ
035
ヤレ
嬉
(
うれ
)
しやと
思
(
おも
)
ふ
間
(
ま
)
も
036
なくなく
醜
(
しこ
)
の
荒風
(
あらかぜ
)
に
037
吹
(
ふ
)
きまくられて
情
(
つれ
)
なくも
038
後
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
りし
吾
(
われ
)
独
(
ひと
)
り
039
天
(
てん
)
に
歎
(
なげ
)
き
地
(
ち
)
に
哭
(
こく
)
し
040
呼
(
よ
)
べど
叫
(
さけ
)
べど
行方
(
ゆくへ
)
さへ
041
空
(
そら
)
白雲
(
しらくも
)
の
当
(
あて
)
もなく
042
無限
(
むげん
)
の
涙
(
なみだ
)
干
(
ひ
)
もやらず
043
憂
(
う
)
きに
苦
(
くるし
)
む
吾
(
わが
)
不運
(
ふうん
)
044
憐
(
あは
)
れみ
玉
(
たま
)
へ
自在天
(
じざいてん
)
045
大国彦
(
おほくにひこ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
046
偏
(
ひとへ
)
に
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
る
047
此
(
この
)
家
(
や
)
の
柱
(
はしら
)
と
頼
(
たの
)
みてし
048
スガコの
姫
(
ひめ
)
は
今
(
いま
)
いづこ
049
雨
(
あめ
)
の
夕
(
ゆふべ
)
や
霜
(
しも
)
の
朝
(
あさ
)
050
心
(
こころ
)
痛
(
いた
)
むる
足乳根
(
たらちね
)
の
051
父
(
ちち
)
の
心
(
こころ
)
を
思
(
おも
)
ひ
出
(
で
)
て
052
胸
(
むね
)
に
万斛
(
ばんこく
)
の
涙
(
なみだ
)
をば
053
湛
(
たた
)
へて
苦
(
くるし
)
みゐるならむ
054
さは
去
(
さ
)
り
乍
(
なが
)
ら
吾
(
わが
)
娘
(
むすめ
)
055
如何
(
いか
)
なる
曲
(
まが
)
に
捉
(
とら
)
はれて
056
苦
(
くるし
)
み
悩
(
なや
)
みあるとても
057
神
(
かみ
)
の
賜
(
たま
)
ひし
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
058
命
(
いのち
)
の
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
在
(
あ
)
る
限
(
かぎ
)
り
059
日頃
(
ひごろ
)
頼
(
たの
)
みし
家
(
いへ
)
の
子
(
こ
)
を
060
四方
(
よも
)
に
遣
(
つか
)
はし
所在
(
ありか
)
をば
061
尋
(
たづ
)
ね
出
(
いだ
)
して
老
(
おい
)
の
身
(
み
)
の
062
涙
(
なみだ
)
にぬれし
衣手
(
ころもで
)
を
063
天津
(
あまつ
)
御空
(
みそら
)
の
日
(
ひ
)
のかげに
064
乾
(
かわ
)
かし
喜
(
よろこ
)
ぶ
事
(
こと
)
もあらむ
065
それを
一途
(
いちづ
)
の
望
(
のぞ
)
みとし
066
老
(
おい
)
の
命
(
いのち
)
を
永
(
なが
)
らへて
067
味
(
あぢ
)
なき
月日
(
つきひ
)
を
送
(
おく
)
るなり
068
憐
(
あはれ
)
み
玉
(
たま
)
へ
自在天
(
じざいてん
)
069
仮令
(
たとへ
)
天地
(
てんち
)
は
失
(
う
)
するとも
070
忘
(
わす
)
れ
難
(
がた
)
きは
恩愛
(
おんあい
)
の
071
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
を
思
(
おも
)
ふ
赤心
(
まごころ
)
に
072
まさりしものはあらざらむ
073
あゝなつかしやなつかしや
074
夢
(
ゆめ
)
になり
共
(
とも
)
スガコ
姫
(
ひめ
)
075
恋
(
こひ
)
しき
父
(
ちち
)
よと
一言
(
ひとこと
)
の
076
言
(
こと
)
あげせよや
惟神
(
かむながら
)
077
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
の
深
(
ふか
)
ければ
078
又
(
また
)
も
逢瀬
(
あふせ
)
の
川波
(
かはなみ
)
の
079
会
(
あ
)
うて
流
(
なが
)
るる
愛
(
あい
)
の
海
(
うみ
)
080
救世
(
ぐぜい
)
の
舟
(
ふね
)
に
救
(
すく
)
はれて
081
父
(
ちち
)
の
館
(
やかた
)
へイソイソと
082
帰
(
かへ
)
り
来
(
き
)
ませよ
吾
(
あ
)
は
汝
(
なれ
)
の
083
身魂
(
みたま
)
の
幸
(
さち
)
を
祈
(
いの
)
りつつ
084
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
歎
(
なげ
)
くなり
085
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
086
神霊
(
みたま
)
の
恩頼
(
ふゆ
)
を
願
(
ね
)
ぎまつる』
087
かかる
折
(
をり
)
しも
玄関番
(
げんくわんばん
)
に
導
(
みちび
)
かれて
隣村
(
となりむら
)
の
侠客
(
けふかく
)
インカが
088
隔
(
へだ
)
ての
襖
(
ふすま
)
を
押
(
お
)
しあけ、
0881
叮嚀
(
ていねい
)
に
辞儀
(
じぎ
)
をし
乍
(
なが
)
ら、
089
インカ『エー、
0891
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
090
御免
(
ごめん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
091
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
にジャンクは
琴
(
こと
)
の
手
(
て
)
を
止
(
や
)
めて、
092
涙
(
なみだ
)
をかくし
乍
(
なが
)
ら、
093
ジャンク『ヨー、
094
ア、
095
其方
(
そなた
)
は、
096
音
(
おと
)
に
名高
(
なだか
)
き
隣村
(
となりむら
)
の
侠客
(
けふかく
)
インカ
親分
(
おやぶん
)
であつたか、
097
ヨウ、
098
マア
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さつた。
099
そして
御用
(
ごよう
)
の
筋
(
すぢ
)
はどんな
事
(
こと
)
かなア、
100
早
(
はや
)
く
聞
(
き
)
かしてもらひたい』
101
インカ『ハイ、
102
お
嬢様
(
ぢやうさま
)
の
御
(
お
)
行方
(
ゆくへ
)
を
探
(
さが
)
し
求
(
もと
)
め、
103
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
に
喜
(
よろこ
)
んで
頂
(
いただ
)
かうと
思
(
おも
)
ひ、
104
五十
(
ごじふ
)
人
(
にん
)
の
手下
(
てした
)
を
遠近
(
ゑんきん
)
四方
(
しはう
)
に
間
(
ま
)
くばり、
105
大捜索
(
だいさうさく
)
を
致
(
いた
)
しましたが、
106
今
(
いま
)
にお
所在
(
ありか
)
は
分
(
わか
)
らず
面目
(
めんぼく
)
次第
(
しだい
)
は
厶
(
ござ
)
りませぬ。
107
貴方
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
心中
(
しんちう
)
は
此
(
この
)
インカ
御
(
お
)
察
(
さつ
)
し
申
(
まを
)
します』
108
ジャンク『ア、
109
それはお
心
(
こころ
)
を
煩
(
わづら
)
はし、
110
誠
(
まこと
)
に
申訳
(
まをしわけ
)
がありませぬ。
111
何
(
いづ
)
れ
貴方
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
威光
(
ゐくわう
)
と
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
によつて、
112
娘
(
むすめ
)
のスガコはやがて
帰
(
かへ
)
るで
厶
(
ござ
)
いませう。
113
何卒
(
なにとぞ
)
々々
(
なにとぞ
)
宜
(
よろ
)
しう
願
(
ねが
)
ひます』
114
インカ『ハイ、
115
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
116
面目
(
めんぼく
)
次第
(
しだい
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬが、
117
痩
(
やせ
)
てもこけても、
118
遠近
(
ゑんきん
)
に
名
(
な
)
を
売
(
う
)
つた
侠客
(
けふかく
)
の
私
(
わたし
)
、
119
力
(
ちから
)
の
限
(
かぎ
)
り
活動
(
くわつどう
)
を
致
(
いた
)
し、
120
お
心
(
こころ
)
に
副
(
そ
)
ふ
様
(
やう
)
努
(
つと
)
めるで
厶
(
ござ
)
いませう。
121
併
(
しか
)
しかかるお
歎
(
なげき
)
の
央
(
なかば
)
へ、
122
又
(
また
)
もや
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
の
事
(
こと
)
を
申上
(
まをしあげ
)
るのは
私
(
わたし
)
の
身
(
み
)
に
取
(
と
)
つて、
123
実
(
じつ
)
に
心苦
(
こころぐる
)
しい
次第
(
しだい
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
124
お
嬢
(
ぢやう
)
さまの
許嫁
(
いひなづけ
)
のサンダー
様
(
さま
)
は、
125
日夜
(
にちや
)
怏々
(
おうおう
)
として
楽
(
たのし
)
まず、
126
遂
(
つひ
)
には
御
(
お
)
行方
(
ゆくへ
)
が
分
(
わか
)
らなくなり、
127
お
父上
(
ちちうへ
)
マルク
様
(
さま
)
より
私
(
わたし
)
に
捜索方
(
さうさくかた
)
を
依頼
(
いらい
)
され、
128
これも
又
(
また
)
二三
(
にさん
)
日前
(
にちまへ
)
から
骨
(
ほね
)
を
折
(
を
)
つて
探
(
さが
)
してゐますが、
129
どうもお
行方
(
ゆくへ
)
が
分
(
わか
)
りませぬので、
130
私
(
わたし
)
の
顔
(
かほ
)
も
台
(
だい
)
なしで
厶
(
ござ
)
います』
131
ジャンク『
何
(
なに
)
、
132
マルクさまの
御
(
ご
)
子息
(
しそく
)
が、
133
行方
(
ゆくへ
)
不明
(
ふめい
)
とな。
134
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
が……
出来
(
でき
)
てゐるのなら、
135
これ
程
(
ほど
)
眤懇
(
じつこん
)
な
間柄
(
あひだがら
)
、
136
なぜに
直
(
す
)
ぐに
知
(
し
)
らしに
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さらなかつたのだらう。
137
サテ
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
だなア』
138
インカ『
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は、
139
マルクの
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
も
直様
(
すぐさま
)
御
(
ご
)
通知
(
つうち
)
遊
(
あそ
)
ばす
筈
(
はず
)
で
厶
(
ござ
)
いましたが、
140
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
が
嬢様
(
ぢやうさま
)
の
事
(
こと
)
に
就
(
つ
)
いて
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
の
最中
(
さいちう
)
へ、
141
こんな
話
(
はなし
)
を
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げたら、
142
嘸
(
さぞ
)
お
力
(
ちから
)
おとしをなさるだらうと
思召
(
おぼしめ
)
され、
143
ソツと
人知
(
ひとし
)
れず
捜索
(
そうさく
)
を
始
(
はじ
)
められ、
144
御
(
ご
)
子息
(
しそく
)
のサンダー
様
(
さま
)
が
御
(
お
)
帰
(
かへ
)
りになりさへすれば、
145
それで
貴方
(
あなた
)
様
(
さま
)
に
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
をかけるに
及
(
およ
)
ばないと、
146
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
包
(
つつ
)
んでゐられましたので
厶
(
ござ
)
いますが、
147
どうしても
行方
(
ゆくへ
)
が
分
(
わか
)
らぬとすれば、
148
当家
(
たうけ
)
の
御
(
ご
)
養子
(
やうし
)
と
定
(
き
)
まつたサンダーさまの
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
149
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
に
報告
(
はうこく
)
せずには
居
(
を
)
られないので、
150
今日
(
こんにち
)
は
私
(
わたし
)
に「
一寸
(
ちよつと
)
、
151
お
使
(
つかひ
)
に
行
(
い
)
つて
来
(
き
)
てくれぬか」との
御
(
お
)
頼
(
たの
)
み、
152
罷
(
まかり
)
出
(
いで
)
ました
次第
(
しだい
)
で
厶
(
ござ
)
います』
153
ジャンク『
何
(
なん
)
と、
154
憂
(
うれひ
)
が
重
(
かさ
)
なれば
重
(
かさ
)
なるものだなア。
155
吾
(
わが
)
娘
(
むすめ
)
の
紛失
(
ふんしつ
)
といひ、
156
許嫁
(
いひなづけ
)
の
養子
(
やうし
)
サンダーの
行方
(
ゆくへ
)
不明
(
ふめい
)
といひ、
157
あゝ
天道
(
てんだう
)
は
是
(
ぜ
)
か
非
(
ひ
)
か。
158
かく
迄
(
まで
)
歎
(
なげ
)
きの
打
(
うち
)
重
(
かさ
)
なるものだらうか、
159
如何
(
いか
)
なる
宿世
(
すぐせ
)
の
罪業
(
ざいごふ
)
かは
知
(
し
)
らね
共
(
ども
)
、
160
これは
又
(
また
)
余
(
あんま
)
り
惨酷
(
ざんこく
)
だ、
161
あゝ』
162
と
吐息
(
といき
)
をつき
差
(
さし
)
俯
(
うつむ
)
き、
163
熱
(
あつ
)
い
涙
(
なみだ
)
をポロリポロリとおとしてゐる。
164
インカ『お
歎
(
なげき
)
は
御
(
ご
)
無理
(
むり
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬが、
165
歎
(
なげ
)
いて
事
(
こと
)
のすむものでも
厶
(
ござ
)
いませぬ。
166
先
(
ま
)
づ
心
(
こころ
)
を
落
(
おち
)
つけなさいませ。
167
きツと
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
御
(
お
)
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さるでせう』
168
ジャンク『ヤ、
169
有難
(
ありがた
)
う、
170
悔
(
くや
)
んで
帰
(
かへ
)
らぬ
事
(
こと
)
を、
171
又
(
また
)
しても
年老
(
としより
)
の
愚痴
(
ぐち
)
、
172
つい
涙
(
なみだ
)
がこぼれるのだ、
173
アハヽヽヽヽヽ。
174
これもしインカさま、
175
サンダーはバラモン
軍
(
ぐん
)
に
捉
(
とら
)
はれたのではありますまいか』
176
インカ『
神
(
かみ
)
ならぬ
身
(
み
)
の
吾々
(
われわれ
)
、
177
何
(
ど
)
うとも
申上
(
まをしあ
)
げかねますが、
178
サンダー
様
(
さま
)
は
何時
(
いつ
)
も
女装
(
ぢよさう
)
をしてゐられますから、
179
大足別
(
おほだるわけ
)
の
軍勢
(
ぐんぜい
)
が
女
(
をんな
)
と
過
(
あやま
)
つてつれ
帰
(
かへ
)
つたのかも
知
(
し
)
れませぬ。
180
私
(
わたし
)
も
一身
(
いつしん
)
を
賭
(
と
)
して、
181
バラモンの
陣中
(
ぢんちう
)
に
駆
(
か
)
け
込
(
こ
)
み、
182
実否
(
じつぴ
)
を
査
(
しら
)
べむかと
存
(
ぞん
)
じますけれど、
183
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
うても
目
(
め
)
に
余
(
あま
)
る
大軍
(
たいぐん
)
、
184
血
(
ち
)
に
飢
(
う
)
ゑたる
虎狼
(
こらう
)
共
(
ども
)
の
群
(
むれ
)
、
185
可惜
(
あたら
)
犬死
(
いぬじに
)
を
致
(
いた
)
すよりも……と
存
(
ぞん
)
じ、
186
卑怯
(
ひけふ
)
かは
知
(
し
)
りませぬが、
187
何
(
なに
)
とかして
安全
(
あんぜん
)
にお
救
(
すく
)
ひ
申
(
まを
)
したいと
苦心
(
くしん
)
惨澹
(
さんたん
)
の
最中
(
さいちう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
188
義
(
ぎ
)
を
見
(
み
)
ては
命
(
いのち
)
を
惜
(
をし
)
まぬ
侠客
(
けふかく
)
なれど、
189
目的
(
もくてき
)
も
達
(
たつ
)
せずに
犬死
(
いぬじに
)
するは、
190
男子
(
だんし
)
の
意気
(
いき
)
でも
厶
(
ござ
)
いますまい。
191
湧
(
わ
)
きかへる
胸
(
むね
)
を
抑
(
おさ
)
へて、
192
時
(
とき
)
を
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
るやうな
次第
(
しだい
)
で
厶
(
ござ
)
います。
193
併
(
しか
)
し
邪
(
じや
)
は
正
(
せい
)
に
勝
(
か
)
つものぢや
厶
(
ござ
)
いませぬ。
194
きつとお
嬢様
(
ぢやうさま
)
もサンダー
様
(
さま
)
も
無事
(
ぶじ
)
にお
帰
(
かへ
)
りなさるでせう。
195
心丈夫
(
こころぢやうぶ
)
にお
待
(
ま
)
ちなさいませ』
196
ジャンク『ハイ、
197
弱肉
(
じやくにく
)
強食
(
きやうしよく
)
の
暗
(
やみ
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
、
198
誰
(
たれ
)
にたよる
術
(
すべ
)
もなき
腑甲斐
(
ふがひ
)
なき
里庄
(
りしやう
)
の
身
(
み
)
、
199
只
(
ただ
)
貴方
(
あなた
)
様
(
さま
)
を
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
助
(
たす
)
け
神
(
がみ
)
として、
200
細
(
ほそ
)
き
息
(
いき
)
の
根
(
ね
)
をつないで
居
(
を
)
ります。
201
何分
(
なにぶん
)
宜
(
よろ
)
しく
願
(
ねが
)
ひます』
202
斯
(
か
)
く
話
(
はな
)
す
所
(
ところ
)
へ
旧臣
(
きうしん
)
のタクソンは
慌
(
あわただ
)
しく
入
(
いり
)
来
(
きた
)
り、
203
頭
(
あたま
)
を
畳
(
たたみ
)
にすりつけ
乍
(
なが
)
ら、
204
タクソン『
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
205
御
(
ご
)
愁傷
(
しうしやう
)
の
程
(
ほど
)
御
(
お
)
察
(
さつ
)
し
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げます。
206
まだ
嬢様
(
ぢやうさま
)
のお
行方
(
ゆくへ
)
は
何
(
なん
)
の
便
(
たよ
)
りも
厶
(
ござ
)
いませぬか』
207
ジャンク『ア、
208
其方
(
そなた
)
はタクソンか、
209
よう
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さつた。
210
娘
(
むすめ
)
の
行方
(
ゆくへ
)
に
付
(
つい
)
て、
211
今
(
いま
)
インカ
親分
(
おやぶん
)
と
相談
(
さうだん
)
をしてゐた
所
(
ところ
)
だ。
212
お
前
(
まへ
)
も
大切
(
だいじ
)
な
女房
(
にようばう
)
を
取
(
と
)
られ、
213
さぞ
心配
(
しんぱい
)
してゐるだらう』
214
タクソン『
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
215
勿体
(
もつたい
)
ない
其
(
その
)
お
言葉
(
ことば
)
。
216
私
(
わたし
)
の
女房
(
にようばう
)
なんか、
217
物
(
もの
)
の
数
(
かず
)
でも
厶
(
ござ
)
いませぬが、
218
大切
(
たいせつ
)
な、
219
只
(
ただ
)
お
一人
(
ひとり
)
の
嬢様
(
ぢやうさま
)
を、
220
お
捕
(
と
)
られ
遊
(
あそ
)
ばした
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
のお
心
(
こころ
)
、
221
立
(
た
)
つても
居
(
ゐ
)
てもゐられないで
厶
(
ござ
)
いませう。
222
早速
(
さつそく
)
御
(
お
)
見舞
(
みまひ
)
に
参
(
まゐ
)
り、
223
嬢様
(
ぢやうさま
)
の
御
(
おん
)
在所
(
ありか
)
を
探
(
さが
)
し
出
(
だ
)
さねば
済
(
す
)
まないので
厶
(
ござ
)
いますが、
224
バラモン
軍
(
ぐん
)
の
跋扈
(
ばつこ
)
跳梁
(
てうりやう
)
の
為
(
ため
)
に、
225
吾
(
わが
)
女房
(
にようばう
)
はかつさらはれ、
226
又
(
また
)
村
(
むら
)
の
妻女
(
さいぢよ
)
は
残
(
のこ
)
らず
毒手
(
どくしゆ
)
にかかり、
227
阿鼻
(
あび
)
叫喚
(
けうくわん
)
の
地獄
(
ぢごく
)
の
有様
(
ありさま
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
228
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
にはすまぬ
事
(
こと
)
とは
知
(
し
)
り
乍
(
なが
)
ら、
229
其
(
その
)
方
(
はう
)
に
手
(
て
)
をとられ、
230
いろいろ
善後策
(
ぜんごさく
)
を
講
(
かう
)
じ、
231
つい、
232
御
(
ご
)
無沙汰
(
ぶさた
)
を
致
(
いた
)
しました』
233
ジャンク『ナニ、
234
そんな
心配
(
しんぱい
)
はしてくれな。
235
お
前
(
まへ
)
も
村人
(
むらびと
)
の
為
(
ため
)
に
非常
(
ひじやう
)
に
力
(
ちから
)
を
尽
(
つく
)
してゐるといふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
いて、
236
蔭
(
かげ
)
乍
(
なが
)
ら
私
(
わたし
)
も
感涙
(
かんるい
)
にむせんでゐたのだ。
237
私
(
わたし
)
の
娘
(
むすめ
)
はどうでもよい。
238
村
(
むら
)
の
災難
(
さいなん
)
を
救
(
すく
)
ひさへすれば、
239
之
(
これ
)
にまさつた
喜
(
よろこ
)
びはないのだ』
240
タクソン『
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
の
慈愛
(
じあい
)
に
深
(
ふか
)
き
其
(
その
)
お
言葉
(
ことば
)
を、
241
村人
(
むらびと
)
が
聞
(
き
)
いたなら、
242
さぞ
喜
(
よろこ
)
ぶ
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いませう。
243
私
(
わたし
)
も
貴方
(
あなた
)
のお
言葉
(
ことば
)
は
神
(
かみ
)
の
慈言
(
じげん
)
のやうに
心
(
こころ
)
にしみ
渡
(
わた
)
り、
244
有難
(
ありがた
)
さ
勿体
(
もつたい
)
なさ、
245
自然
(
しぜん
)
に
落涙
(
らくるい
)
を
致
(
いた
)
します。
246
あゝ
時
(
とき
)
にインカの
親分
(
おやぶん
)
さま、
247
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
に
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
248
どうかお
嬢様
(
ぢやうさま
)
の
為
(
ため
)
に
一臂
(
いつぴ
)
の
力
(
ちから
)
をお
添
(
そ
)
へ
下
(
くだ
)
さいますやう、
249
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
に
代
(
かは
)
り、
250
お
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
します』
251
インカも
涙
(
なみだ
)
ぐみ
乍
(
なが
)
ら、
252
許嫁
(
いひなづけ
)
のサンダーが
又
(
また
)
もやさらはれたといへば、
253
歎
(
なげき
)
の
上
(
うへ
)
に
歎
(
なげき
)
をかさねる
道理
(
だうり
)
だ。
254
此
(
この
)
タクソンには
知
(
し
)
らさない
方
(
はう
)
が
可
(
い
)
いだらうと
思
(
おも
)
つたから、
255
サンダーの
事
(
こと
)
は
口
(
くち
)
にせず、
256
インカ『お
嬢様
(
ぢやうさま
)
の
事
(
こと
)
は
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
下
(
くだ
)
さいますな。
257
キツト
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
がお
救
(
すく
)
ひ
下
(
くだ
)
さるでせう。
258
又
(
また
)
私
(
わたし
)
も
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
力
(
ちから
)
に
仍
(
よ
)
つて
最善
(
さいぜん
)
の
努力
(
どりよく
)
を
尽
(
つく
)
さして
頂
(
いただ
)
きませう』
259
タクソン『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
260
モウ
斯
(
か
)
うなれば、
261
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
何事
(
なにごと
)
もおすがりするより
途
(
みち
)
が
厶
(
ござ
)
いませぬ。
262
時
(
とき
)
に、
263
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
264
インカ
様
(
さま
)
、
265
お
喜
(
よろこ
)
び
下
(
くだ
)
さいませ。
266
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
より
派遣
(
はけん
)
されたる
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
267
照国別
(
てるくにわけ
)
といふ
活神
(
いきがみ
)
様
(
さま
)
が
此
(
この
)
村
(
むら
)
にお
出
(
い
)
でになり、
268
サンヨの
家
(
いへ
)
にお
立寄
(
たちよ
)
り
下
(
くだ
)
さいまして、
269
婆
(
ばあ
)
さまの
危難
(
きなん
)
をお
救
(
すく
)
ひ
下
(
くだ
)
され、
270
其
(
その
)
上
(
うへ
)
、
271
バラモンの
悪神
(
あくがみ
)
を
言向
(
ことむけ
)
和
(
やは
)
してやらうと
仰有
(
おつしや
)
いましたので、
272
吾々
(
われわれ
)
の
奉
(
ほう
)
ずる
宗旨
(
しうし
)
は
違
(
ちが
)
ひますけれど、
273
神
(
かみ
)
の
助
(
たすけ
)
に
二
(
ふた
)
つはないと
存
(
ぞん
)
じ、
274
お
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
しまして、
275
只
(
ただ
)
今
(
いま
)
当家
(
たうけ
)
の
玄関
(
げんくわん
)
迄
(
まで
)
お
伴
(
とも
)
を
致
(
いた
)
しました。
276
宣伝使
(
せんでんし
)
にお
尋
(
たづ
)
ねになつたならば
277
嬢様
(
ぢやうさま
)
の
所在
(
ありか
)
も
判然
(
はんぜん
)
するだらうかと
存
(
ぞん
)
じましたので、
278
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
に
照会
(
せうくわい
)
もせず、
279
だしぬけに、
280
失礼
(
しつれい
)
ながら
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
申
(
まを
)
して
参
(
まゐ
)
りました』
281
ジャンク『ナニ、
282
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
を
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
申
(
まを
)
して
来
(
き
)
たといふのか。
283
あ、
284
何
(
なに
)
はともあれ
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
引合
(
ひきあは
)
せだらう。
285
サアサア
玄関
(
げんくわん
)
にお
待
(
ま
)
たせ
申
(
まを
)
してはすまない。
286
早
(
はや
)
く
奥
(
おく
)
へ
通
(
とほ
)
つて
頂
(
いただ
)
くやうに……セールは
居
(
を
)
らぬか、
287
セール セール』
288
呼
(
よ
)
ばはれば『ハイ』と
答
(
こた
)
へて、
289
セールは
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれ、
290
セール『
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
291
何
(
なん
)
の
御用
(
ごよう
)
で
厶
(
ござ
)
いますか』
292
ジャンク『お
前
(
まへ
)
は、
293
玄関
(
げんくわん
)
にお
客様
(
きやくさま
)
が
見
(
み
)
えてゐるのを
知
(
し
)
らぬのか、
294
早
(
はや
)
くお
迎
(
むか
)
へ
申
(
まを
)
して
来
(
こ
)
い。
295
玄関番
(
げんくわんばん
)
もせずにどこへ
行
(
い
)
つて
居
(
を
)
つたのだ』
296
セール『ハイ、
297
誠
(
まこと
)
に
不都合
(
ふつがふ
)
を
致
(
いた
)
しました。
298
実
(
じつ
)
は
表門
(
おもてもん
)
に
当
(
あた
)
つて、
299
騒々
(
さうざう
)
しい
声
(
こゑ
)
がしますので
取
(
と
)
る
物
(
もの
)
も
取
(
とり
)
敢
(
あへ
)
ず
行
(
い
)
つてみれば、
300
アンコ、
301
バンコの
大喧嘩
(
おほげんくわ
)
、
302
バンコは
鉄拳
(
てつけん
)
をくらつて
気絶
(
きぜつ
)
致
(
いた
)
しましたので、
303
いろいろと
介抱
(
かいはう
)
を
致
(
いた
)
し、
304
漸
(
やうや
)
く
蘇生
(
そせい
)
させましたが、
305
どうやらすると
再
(
ふたた
)
び
昏睡
(
こんすい
)
状態
(
じやうたい
)
に
入
(
い
)
り
相
(
さう
)
なので、
306
目
(
め
)
も
放
(
はな
)
されず
介抱
(
かいはう
)
致
(
いた
)
してをりました。
307
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
歎
(
なげき
)
の
央
(
なかば
)
へ、
308
かやうな
下
(
くだ
)
らぬ
門番
(
もんばん
)
の
争
(
あらそい
)
事
(
ごと
)
迄
(
まで
)
申上
(
まをしあ
)
げては
済
(
す
)
まないと
存
(
ぞん
)
じ、
309
差
(
さし
)
控
(
ひか
)
えて
居
(
を
)
りました』
310
ジャンク『そりや
怪
(
け
)
しからぬ
奴
(
やつ
)
だ。
311
アンコといふ
奴
(
やつ
)
は、
312
酒
(
さけ
)
くせの
悪
(
わる
)
い
男
(
をとこ
)
だからなア。
313
併
(
しか
)
し
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ、
314
宣伝使
(
せんでんし
)
を
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
申
(
まを
)
して
来
(
こ
)
い』
315
『ハイ』と
答
(
こた
)
へて、
316
セールは
玄関
(
げんくわん
)
に
立
(
たち
)
現
(
あら
)
はれ、
317
一同
(
いちどう
)
を
案内
(
あんない
)
した。
318
照国別
(
てるくにわけ
)
始
(
はじ
)
め
梅公
(
うめこう
)
、
319
照公
(
てるこう
)
、
320
エルソンの
四
(
よ
)
人
(
にん
)
はジャンクの
居間
(
ゐま
)
に、
321
一礼
(
いちれい
)
を
施
(
ほどこ
)
し
座
(
ざ
)
に
着
(
つ
)
いた。
322
ジャンク『これはこれは
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
323
賤
(
しづ
)
が
伏家
(
ふせや
)
を
能
(
よ
)
くお
訪
(
たづ
)
ね
下
(
くだ
)
さいました。
324
何分
(
なにぶん
)
宜
(
よろ
)
しく
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
します。
325
私
(
わたし
)
は
此
(
この
)
村
(
むら
)
の
里庄
(
りしやう
)
を
勤
(
つと
)
むるジャンクと
申
(
まを
)
す
者
(
もの
)
で
厶
(
ござ
)
います』
326
照国
(
てるくに
)
『お
初
(
はつ
)
にお
目
(
め
)
にかかります。
327
此
(
この
)
村
(
むら
)
の
入口
(
いりぐち
)
にてタクソンさまにお
目
(
め
)
にかかり、
328
承
(
うけたま
)
はればお
館
(
やかた
)
にはお
取込
(
とりこみ
)
のお
有
(
あ
)
りなさるといふ
事
(
こと
)
、
329
それを
聞
(
き
)
いては
宣伝使
(
せんでんし
)
の
吾々
(
われわれ
)
、
330
聞捨
(
ききずて
)
にもなりませぬから、
331
御
(
お
)
邪魔
(
じやま
)
を
致
(
いた
)
し、
332
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
を
伺
(
うかが
)
ひに
参
(
まゐ
)
りました。
333
何分
(
なにぶん
)
神力
(
しんりき
)
の
足
(
た
)
らぬ、
334
修業中
(
しうげふちう
)
の
吾々
(
われわれ
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
335
何
(
なに
)
もお
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
ひませぬが、
336
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
力
(
ちから
)
によりて、
337
最善
(
さいぜん
)
の
方法
(
はうはふ
)
を
尽
(
つく
)
さして
頂
(
いただ
)
きたいと
思
(
おも
)
ひます』
338
ジャンク『
尊
(
たふと
)
き
有難
(
ありがた
)
き
其
(
その
)
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
、
339
老木
(
おいき
)
も
若芽
(
わかめ
)
を
吹
(
ふき
)
出
(
だ
)
し、
340
花
(
はな
)
に
合
(
あ
)
ふ
春陽
(
しゆんやう
)
の
気
(
き
)
が
漂
(
ただよ
)
ふ
様
(
やう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
341
此処
(
ここ
)
に
厶
(
ござ
)
るお
方
(
かた
)
はインカ
親分
(
おやぶん
)
といつて
隣村
(
となりむら
)
の
侠客
(
けふかく
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
342
此
(
この
)
方
(
かた
)
にもいろいろと
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
にあづかつて
居
(
ゐ
)
るので
厶
(
ござ
)
います』
343
照国
(
てるくに
)
『あゝ、
344
これはこれは、
345
お
初
(
はつ
)
にお
目
(
め
)
にかかります。
346
あなたが
有名
(
いうめい
)
な
侠客
(
けふかく
)
のインカ
親分
(
おやぶん
)
で
厶
(
ござ
)
いましたか。
347
何卒
(
なにとぞ
)
お
見知
(
みし
)
りおかれまして、
348
今後
(
こんご
)
は
御
(
ご
)
眤懇
(
じつこん
)
に
願
(
ねが
)
ひます』
349
インカ『
貴方
(
あなた
)
様
(
さま
)
は、
350
今
(
いま
)
承
(
うけたま
)
はれば
尊
(
たふと
)
き
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
。
351
ならず
者
(
もの
)
の
取締
(
とりしまり
)
を
致
(
いた
)
す
野郎
(
やらう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
352
どうか
私
(
わたし
)
のやうなケチな
奴
(
やつ
)
でも、
353
男
(
をとこ
)
のはしくれと
思召
(
おぼしめ
)
し、
354
何卒
(
なにとぞ
)
お
目
(
め
)
をかけ
下
(
くだ
)
さいませ』
355
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へセールはあわただしく
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれ、
356
セール『
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
に
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げます、
357
今
(
いま
)
国王
(
こくわう
)
様
(
さま
)
のお
使
(
つかひ
)
がみえまして
厶
(
ござ
)
います。
358
如何
(
いかが
)
取
(
とり
)
斗
(
はか
)
らひませうや』
359
ジャンク『ハテ
国王
(
こくわう
)
様
(
さま
)
のお
使
(
つかひ
)
とは
何事
(
なにごと
)
だらう。
360
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ、
361
別殿
(
べつでん
)
に
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
申
(
まを
)
せ。
362
すぐさまお
目
(
め
)
にかかるから……』
363
セール『ハイ
畏
(
かしこ
)
まりました』
364
とセールは
足早
(
あしばや
)
に
玄関
(
げんくわん
)
指
(
さ
)
して
出
(
いで
)
てゆく。
365
一同
(
いちどう
)
は
面
(
かほ
)
見合
(
みあは
)
せ、
366
何事
(
なにごと
)
の
起
(
おこ
)
りしならむかと
不審
(
ふしん
)
の
眉
(
まゆ
)
をひそめて
居
(
ゐ
)
た。
367
照国別
(
てるくにわけ
)
『
三五
(
あななひ
)
の
神
(
かみ
)
のあれます
上
(
うへ
)
からは
368
いかなる
事
(
こと
)
もゆめな
憂
(
うれ
)
ひそ』
369
照国
(
てるくに
)
『
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
相身互
(
あひみたがひ
)
、
370
まして
四海
(
しかい
)
兄弟
(
けいてい
)
と
申
(
まを
)
しますれば、
371
何卒
(
なにとぞ
)
御
(
ご
)
眤懇
(
じつこん
)
に
願
(
ねが
)
ひませう』
372
ジャンクは
小声
(
こごゑ
)
で『ハヽヽヽヽヽ』と
笑
(
わら
)
い
乍
(
なが
)
ら、
373
ジャンク『
先生
(
せんせい
)
様
(
さま
)
374
暫
(
しばら
)
く
失礼
(
しつれい
)
を
致
(
いた
)
します。
375
オイ、
376
タクソン、
377
お
使
(
つかひ
)
にお
目
(
め
)
に
掛
(
かか
)
つて
来
(
く
)
るから、
378
お
前
(
まへ
)
は
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
の
接待
(
せつたい
)
をしてゐてくれ』
379
タクソン『ハイ
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
380
勝手
(
かつて
)
覚
(
おぼ
)
えし
御
(
お
)
家
(
いへ
)
の
中
(
なか
)
、
381
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさいませ』
382
ジャンク『タクソン、
383
落度
(
おちど
)
のないよう、
384
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
をせぬ
様
(
やう
)
に
頼
(
たの
)
んでおくぞや』
385
と
言葉
(
ことば
)
を
残
(
のこ
)
し、
386
別室
(
べつしつ
)
に
入
(
はい
)
つて、
3861
礼服
(
れいふく
)
を
着用
(
ちやくよう
)
し、
387
別殿
(
べつでん
)
さして
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
388
(
大正一三・一二・一五
旧一一・一九
於祥雲閣
松村真澄
録)
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