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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第66巻(巳の巻)
序文
総説
第1篇 月の高原
第1章 暁の空
第2章 祖先の恵
第3章 酒浮気
第4章 里庄の悩
第5章 愁雲退散
第6章 神軍義兵
第2篇 容怪変化
第7章 女白浪
第8章 神乎魔乎
第9章 谷底の宴
第10章 八百長劇
第11章 亞魔の河
第3篇 異燭獣虚
第12章 恋の暗路
第13章 恋の懸嘴
第14章 相生松風
第15章 喰ひ違ひ
第4篇 恋連愛曖
第16章 恋の夢路
第17章 縁馬の別
第18章 魔神の囁
第19章 女の度胸
第20章 真鬼姉妹
余白歌
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第66巻(巳の巻)
> 第4篇 恋連愛曖 > 第18章 魔神の囁
<<< 縁馬の別
(B)
(N)
女の度胸 >>>
第一八章
魔神
(
まがみ
)
の
囁
(
ささやき
)
〔一七〇〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第66巻 山河草木 巳の巻
篇:
第4篇 恋連愛曖
よみ(新仮名遣い):
れんれんあいあい
章:
第18章 魔神の囁
よみ(新仮名遣い):
まがみのささやき
通し章番号:
1700
口述日:
1924(大正13)年12月17日(旧11月21日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年6月29日
概要:
舞台:
オーラ山の岩窟
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6618
愛善世界社版:
254頁
八幡書店版:
第11輯 824頁
修補版:
校定版:
259頁
普及版:
67頁
初版:
ページ備考:
001
玄真坊
(
げんしんばう
)
はサンダー、
002
スガコの
幽閉
(
いうへい
)
してある
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
にニコニコし
乍
(
なが
)
ら
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
003
玄真
(
げんしん
)
『オイ、
004
サンダー、
005
スガコ
両人
(
りやうにん
)
、
006
大変
(
たいへん
)
待
(
ま
)
たして
済
(
す
)
まなかつた。
007
腹
(
はら
)
が
空
(
へ
)
つただらうのう。
008
直様
(
すぐさま
)
捻鉢巻
(
ねぢはちまき
)
で
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
を
拵
(
こしら
)
へ、
009
お
前
(
まへ
)
等
(
たち
)
を
喜
(
よろこ
)
ばさうと
思
(
おも
)
つた
所
(
ところ
)
、
010
此
(
この
)
山
(
やま
)
に
働
(
はたら
)
く
大泥棒
(
おほどろばう
)
シーゴーの
奴
(
やつ
)
、
011
突然
(
とつぜん
)
ここへ
帰
(
かへ
)
りやがつて
其
(
その
)
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
に
目
(
め
)
をかけ、
012
喉
(
のど
)
をゴロゴロさせ
乍
(
なが
)
ら、
013
「
永
(
なが
)
い
間
(
あひだ
)
宣伝
(
せんでん
)
に
働
(
はたら
)
いたから
俺
(
おれ
)
も
大分
(
だいぶ
)
疲
(
つか
)
れた。
014
お
頭分
(
かしらぶん
)
のヨリコ
女帝
(
によてい
)
の
前
(
まへ
)
でお
前
(
まへ
)
と
三
(
さん
)
人
(
にん
)
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
を
喰
(
た
)
べやうぢやないか」と、
0141
誅求
(
ちうきう
)
するものだから、
015
折角
(
せつかく
)
お
前
(
まへ
)
と
三
(
さん
)
人
(
にん
)
食
(
く
)
ひ
度
(
た
)
いと
思
(
おも
)
つた
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
を、
016
たうとう
女帝
(
によてい
)
の
前
(
まへ
)
に
提出
(
ていしゆつ
)
せざるを
得
(
え
)
なくなつたのだ。
017
お
前
(
まへ
)
も
永
(
なが
)
い
間
(
あひだ
)
断食
(
だんじき
)
をし、
018
嘸
(
さぞ
)
お
腹
(
なか
)
も
空
(
す
)
いたらうと
思
(
おも
)
ひ、
019
俺
(
わし
)
は
同情心
(
どうじやうしん
)
が
起
(
おこ
)
り、
020
気
(
き
)
が
気
(
き
)
でないのだが、
021
さう
云
(
い
)
ふ
訳
(
わけ
)
だから
打割
(
うちわ
)
つて
云
(
い
)
ふ
訳
(
わけ
)
にもゆかず、
022
第一線
(
だいいつせん
)
をシーゴーの
親分
(
おやぶん
)
に
占領
(
せんりやう
)
されて
了
(
しま
)
つたのだ。
023
それで
再
(
ふたた
)
びお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
が
可愛相
(
かあいさう
)
になり
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
を
拵
(
こしら
)
へて
来
(
き
)
たのだ。
024
決
(
けつ
)
して
気
(
き
)
を
悪
(
わる
)
くして
呉
(
く
)
れな。
025
仲々
(
なかなか
)
以
(
もつ
)
て
等閑
(
とうかん
)
に
附
(
ふ
)
した
訳
(
わけ
)
ぢやないからのう』
026
サンダー『どうも
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
に
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
027
然
(
しか
)
しながら
今
(
いま
)
承
(
うけたま
)
はれば
此
(
この
)
山
(
やま
)
に
働
(
はたら
)
く
親分
(
おやぶん
)
のシーゴー
様
(
さま
)
だとか、
028
も
一
(
ひと
)
つ
親分
(
おやぶん
)
のヨリコだとか
仰有
(
おつしや
)
つたが、
029
妾
(
わたし
)
は
此処
(
ここ
)
は
天地
(
てんち
)
の
大神
(
おほかみ
)
のお
降
(
くだ
)
り
遊
(
あそ
)
ばす
聖場
(
せいぢやう
)
と
思
(
おも
)
ひました
所
(
ところ
)
、
030
泥棒
(
どろばう
)
の
親分
(
おやぶん
)
と
御
(
ご
)
交際
(
かうさい
)
があるとは
一向
(
いつかう
)
に
合点
(
がつてん
)
が
参
(
まゐ
)
りませぬ。
031
何
(
なに
)
ほど
恋
(
こ
)
ひ
慕
(
した
)
うた
貴方
(
あなた
)
でも
泥棒
(
どろばう
)
に
関係
(
くわんけい
)
があると
思
(
おも
)
へば
032
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
の
恋
(
こひ
)
も
一
(
いち
)
時
(
じ
)
に
醒
(
さ
)
めるやうで
厶
(
ござ
)
ります。
033
折角
(
せつかく
)
の
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
だけど
妾
(
わたし
)
は
頂
(
いただ
)
きませぬ。
034
なあスガコさま、
035
貴女
(
あなた
)
どう
思
(
おも
)
ひますか』
036
スガコ『
本当
(
ほんたう
)
に
恐
(
おそ
)
ろしい
方々
(
かたがた
)
ですね。
037
此処
(
ここ
)
は
天地
(
てんち
)
の
生神
(
いきがみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
降臨
(
かうりん
)
遊
(
あそ
)
ばす
霊場
(
れいぢやう
)
だとか、
038
玄真坊
(
げんしんばう
)
さまは
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
だとか
世界
(
せかい
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
だとか、
0381
仰有
(
おつしや
)
いますが、
039
つらつらその
御
(
ご
)
行動
(
かうどう
)
を
考
(
かんが
)
へますと、
040
妾
(
わたし
)
は
全
(
まつた
)
く
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
詐
(
いつは
)
る
山賊
(
さんぞく
)
の
巣窟
(
さうくつ
)
とより
外
(
ほか
)
思
(
おも
)
ひませぬ。
041
ねー
玄真坊
(
げんしんばう
)
様
(
さま
)
、
042
それに
間違
(
まちがひ
)
は
厶
(
ござ
)
いますまいね』
043
玄真坊
(
げんしんばう
)
は
驚
(
おどろ
)
いて、
044
「ウツカリと
秘密
(
ひみつ
)
を
喋
(
しやべ
)
つて
了
(
しま
)
つた。
045
こりや
大変
(
たいへん
)
だ。
046
到頭
(
たうとう
)
、
047
内兜
(
うちかぶと
)
を
見
(
み
)
すかされたやうだ。
048
何
(
なん
)
とか
考
(
かんが
)
へて
捻
(
ねぢ
)
を
戻
(
もど
)
さねばなるまい」と
冷汗
(
ひやあせ
)
を
流
(
なが
)
し
乍
(
なが
)
ら、
049
ワザと
高笑
(
たかわら
)
ひ、
050
玄真
(
げんしん
)
『アツハヽヽヽ、
051
嘘
(
うそ
)
だ
嘘
(
うそ
)
だ、
052
一寸
(
ちよつと
)
お
前
(
まへ
)
の
肝玉
(
きもだま
)
を
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
たのだ。
053
こんな
所
(
ところ
)
に
泥棒
(
どろばう
)
が
居
(
を
)
つてたまらうかい。
054
泥棒
(
どろばう
)
の
居
(
ゐ
)
るやうな
山
(
やま
)
へ、
055
どうして
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
がお
降
(
くだ
)
り
遊
(
あそ
)
ばすものか。
056
そんな
恐
(
おそ
)
ろしい
処
(
ところ
)
へ、
057
あんな
沢山
(
たくさん
)
の
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
が
詣
(
まゐ
)
つて
来
(
く
)
るものか、
058
皆
(
みな
)
嘘
(
うそ
)
だから
安心
(
あんしん
)
したが
宜
(
よ
)
からう。
059
まアそんな
小
(
ちひ
)
さい
事
(
こと
)
に
気
(
き
)
をかけず、
060
此
(
この
)
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
を
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
くお
食
(
あが
)
りなさい。
061
私
(
わたし
)
もお
相伴
(
せうばん
)
するから、
062
滅多
(
めつた
)
に
毒
(
どく
)
は
入
(
はいつ
)
て
居
(
ゐ
)
ないよ』
063
サンダー『
何
(
なん
)
だか
恐
(
おそ
)
ろしくなつて
来
(
き
)
ました。
064
師
(
し
)
の
君様
(
きみさま
)
の
御
(
おん
)
顔
(
かほ
)
迄
(
まで
)
も、
065
どこともなしに
泥棒
(
どろばう
)
めいたやうになつて
来
(
き
)
ましたのですもの。
066
お
腹
(
なか
)
は
空
(
す
)
いてゐるし、
067
食
(
た
)
べ
度
(
た
)
いのは
山々
(
やまやま
)
だけど……
渇
(
かつ
)
しても
盗泉
(
たうせん
)
の
水
(
みづ
)
は
飲
(
の
)
まず……と
云
(
い
)
ふ
諺
(
ことわざ
)
もあるし、
068
泥棒
(
どろばう
)
の
拵
(
こしら
)
へた
飲食
(
おんじき
)
は
妾
(
わたし
)
、
069
どうしても
食
(
く
)
ふ
気持
(
きもち
)
は
致
(
いた
)
しませぬの』
070
スガコ『あたいだつて、
071
さうだわ。
072
玄真坊
(
げんしんばう
)
様
(
さま
)
のお
姿
(
すがた
)
が
何
(
なん
)
とはなしに、
073
泥棒
(
どろばう
)
のやうに
見
(
み
)
えて
仕方
(
しかた
)
がないのだもの。
074
もし
玄真坊
(
げんしんばう
)
様
(
さま
)
、
075
此
(
この
)
山
(
やま
)
に
泥棒
(
どろばう
)
がゐるのでせう。
076
妾
(
あて
)
イよく
聞
(
き
)
いてゐますよ。
077
シーゴー
坊
(
ばう
)
と
云
(
い
)
ふ
白髪
(
はくはつ
)
童顔
(
どうがん
)
の
大泥棒
(
おほどろばう
)
が
居
(
ゐ
)
るでせう。
078
さうして
天王
(
てんわう
)
の
社
(
やしろ
)
の
中
(
なか
)
に
棚機姫
(
たなばたひめ
)
と
云
(
い
)
ふ
女神
(
めがみ
)
さまが
居
(
を
)
られるのでせう。
079
あの
方
(
かた
)
が
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
の
崇
(
あが
)
めなさる
大親分
(
おほおやぶん
)
でせう。
080
妾
(
わたし
)
、
081
夢
(
ゆめ
)
に
聞
(
き
)
きましたよ』
082
玄真
(
げんしん
)
『アハヽヽヽヽ、
083
お
前
(
まへ
)
は
神経
(
しんけい
)
興奮
(
こうふん
)
してゐるから、
084
そんな、
085
しやうもない
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
るのだ。
086
然
(
しか
)
しながら
今日
(
こんにち
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
皆
(
みな
)
泥棒
(
どろばう
)
だよ。
087
よく
考
(
かんが
)
へて
御覧
(
ごらん
)
。
088
どこやらの
国
(
くに
)
の
王
(
わう
)
様
(
さま
)
だつて、
089
もとは
海賊
(
かいぞく
)
上
(
あが
)
りだよ。
090
満州王
(
まんしうわう
)
の
張作霖
(
ちやうさくりん
)
だつて
支那
(
しな
)
各地
(
かくち
)
の
督軍
(
とくぐん
)
だつて、
091
大抵
(
たいてい
)
皆
(
みな
)
馬賊
(
ばぞく
)
上
(
あが
)
りだよ。
092
××
大臣
(
だいじん
)
や
伴食
(
ばんしよく
)
××が
何百万
(
なんびやくまん
)
円
(
ゑん
)
、
093
何千万
(
なんぜんまん
)
円
(
ゑん
)
と
云
(
い
)
ふ
財産
(
ざいさん
)
を
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
るでせう。
094
終身
(
しうしん
)
総理
(
そうり
)
××になつてゐた
所
(
ところ
)
で、
095
さう
何千万
(
なんぜんまん
)
円
(
ゑん
)
の
月給
(
げつきふ
)
を
貰
(
もら
)
へる
筈
(
はず
)
もなし、
096
皆
(
みな
)
泥棒
(
どろばう
)
して
貯
(
た
)
めたのだよ。
097
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
の
富豪
(
ふうがう
)
だつて
難爵
(
なんしやく
)
を
貰
(
もら
)
つて
威張
(
ゐば
)
つて
居
(
ゐ
)
るが、
098
あれでも、
099
ヤツパリ
贋札
(
にせさつ
)
を
拵
(
こしら
)
へたり、
100
今
(
いま
)
でも
外国
(
ぐわいこく
)
紙幣
(
しへい
)
を
盛
(
さかん
)
に
贋造
(
がんざう
)
してゐるぢやないか。
101
さうだから
泥棒
(
どろばう
)
を、
102
ようせないやうな
男子
(
だんし
)
は、
103
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
立
(
た
)
つことの
出来
(
でき
)
ないものだ。
104
然
(
しか
)
しながら
105
さう
云
(
い
)
ふ
悪人
(
あくにん
)
に
天地
(
てんち
)
の
大道
(
だいだう
)
を
説
(
と
)
いて
聞
(
き
)
かせ
心
(
こころ
)
改
(
あらた
)
めしめるのが、
106
救世主
(
きうせいしゆ
)
の
天
(
てん
)
よりの
使命
(
しめい
)
だ。
107
それで
此
(
この
)
玄真坊
(
げんしんばう
)
は
泥棒
(
どろばう
)
の
張本
(
ちやうほん
)
なる××
大臣
(
だいじん
)
や
伴食
(
ばんしよく
)
××を
初
(
はじ
)
め
紳士
(
しんし
)
紳商
(
しんしやう
)
等
(
など
)
云
(
い
)
ふ
獣
(
けだもの
)
を
此処
(
ここ
)
へ
集
(
あつ
)
めて、
108
天地
(
てんち
)
の
大道
(
だいだう
)
を
説
(
と
)
き
聞
(
き
)
かせ
地獄
(
ぢごく
)
的
(
てき
)
精神
(
せいしん
)
を
改善
(
かいぜん
)
せしめ、
109
永遠
(
えいゑん
)
無窮
(
むきう
)
の
生命
(
せいめい
)
を
保
(
たも
)
つて
栄
(
さか
)
えと
喜
(
よろこ
)
びに
満
(
み
)
ちた
天国
(
てんごく
)
へ
救
(
すく
)
つてやる
為
(
ため
)
に
救世主
(
きうせいしゆ
)
として
現
(
あらは
)
れてゐるのだから、
110
馬賊
(
ばぞく
)
の
頭目
(
とうもく
)
だつて
山賊
(
さんぞく
)
だつて、
111
自分
(
じぶん
)
の
教
(
をしへ
)
を
聞
(
き
)
きに
来
(
く
)
るのは
当然
(
たうぜん
)
だ。
112
あのシーゴーだつて、
113
元
(
もと
)
は
大変
(
たいへん
)
な
大泥棒
(
おほどろばう
)
の
頭目
(
とうもく
)
だつたが
俺
(
わし
)
の
説教
(
せつけう
)
を
聞
(
き
)
いて
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
め、
114
今
(
いま
)
では
猫
(
ねこ
)
のやうに、
1141
おとなしくなつてゐるのだよ。
115
さうして
此
(
この
)
玄真坊
(
げんしんばう
)
の
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
弟子
(
でし
)
として
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
仕
(
つか
)
へしてゐるのだ。
116
又
(
また
)
女帝
(
によてい
)
様
(
さま
)
は
女帝
(
によてい
)
で、
117
あれは
女盗賊
(
をんなたうぞく
)
の
大頭目
(
だいとうもく
)
だつたが
俺
(
わし
)
の
感化
(
かんくわ
)
によつて、
118
今
(
いま
)
はスツクリ
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
め、
119
天王
(
てんわう
)
の
社
(
やしろ
)
の
神司
(
かむづかさ
)
となつて
仕
(
つか
)
へて
居
(
ゐ
)
るのだよ。
120
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
元
(
もと
)
は
泥棒
(
どろばう
)
だつて
改心
(
かいしん
)
すれば
真人間
(
まにんげん
)
だ。
121
何
(
なに
)
も
恐
(
おそ
)
ろしい
事
(
こと
)
はない。
122
安心
(
あんしん
)
してここに
居
(
ゐ
)
るがよい。
123
お
前
(
まへ
)
も
救世主
(
きうせいしゆ
)
の
見出
(
みいだ
)
しに
預
(
あづか
)
り、
124
妻
(
つま
)
となり
妾
(
てかけ
)
となるのは
無上
(
むじやう
)
の
幸福
(
かうふく
)
だよ。
125
どうだ
分
(
わか
)
つたかな』
126
スガコ『
女帝
(
によてい
)
様
(
さま
)
もシーゴー
様
(
さま
)
も
貴方
(
あなた
)
の
御
(
お
)
弟子
(
でし
)
ならば
127
折角
(
せつかく
)
お
拵
(
こしら
)
へ
遊
(
あそ
)
ばした
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
を
強圧
(
きやうあつ
)
的
(
てき
)
に
奪
(
と
)
られる
筈
(
はず
)
はないぢやありませぬか。
128
それを
考
(
かんが
)
へますと、
129
どうやら
女帝
(
によてい
)
やシーゴーの
幕下
(
ばくか
)
になつてゐられるやうな
心持
(
こころもち
)
が
致
(
いた
)
しますがな』
130
玄真
(
げんしん
)
『アハヽヽヽヽ、
131
そこが
救世主
(
きうせいしゆ
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
たる
処
(
ところ
)
だ。
132
光
(
ひかり
)
を
和
(
やは
)
らげ
塵
(
ちり
)
に
交
(
まじ
)
はり
衆生
(
しゆじやう
)
を
済度
(
さいど
)
するのだから、
133
威張
(
ゐば
)
る
奴
(
やつ
)
は
威張
(
ゐば
)
らしておくなり、
134
観
(
くわん
)
自在天
(
じざいてん
)
様
(
さま
)
の
働
(
はたら
)
きをしてゐるのだ。
135
観
(
くわん
)
自在天
(
じざいてん
)
様
(
さま
)
は
泥棒
(
どろばう
)
を
改心
(
かいしん
)
させようと
思
(
おも
)
へば
泥棒
(
どろばう
)
となり、
136
賭博
(
ばくち
)
打
(
う
)
ちを
改心
(
かいしん
)
させようと
思
(
おも
)
へば、
137
自
(
みづか
)
から
賭博
(
ばくち
)
打
(
う
)
ちとおなり
遊
(
あそ
)
ばし、
138
或時
(
あるとき
)
は
非人
(
ひにん
)
となり、
139
或
(
あるひ
)
は
病人
(
びやうにん
)
となり、
140
又
(
また
)
或時
(
あるとき
)
は
蠑螈
(
いもり
)
となり
蚯蚓
(
みみづ
)
ともなり、
141
竜
(
りゆう
)
となり
馬
(
うま
)
となり、
142
獅子
(
しし
)
、
143
虎
(
とら
)
、
144
狼
(
おほかみ
)
となり、
145
宇宙
(
うちう
)
一切
(
いつさい
)
をお
救
(
すく
)
ひ
遊
(
あそ
)
ばすのだから、
146
況
(
ま
)
して
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
たる
玄真坊
(
げんしんばう
)
に
於
(
おい
)
てをやだ。
147
そこが
神
(
かみ
)
の
神
(
かみ
)
たる
処
(
ところ
)
、
148
救世主
(
きうせいしゆ
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
たる
処
(
ところ
)
だ。
149
何
(
なん
)
と、
150
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
慈悲
(
じひ
)
と
云
(
い
)
ふものは
勿体
(
もつたい
)
ないものだらうがなア。
151
到底
(
たうてい
)
人心
(
じんしん
)
小智
(
せうち
)
の
窺知
(
きち
)
し
得
(
う
)
る
処
(
ところ
)
ではない。
152
それで
人間
(
にんげん
)
は
救世主
(
きうせいしゆ
)
を
信
(
しん
)
じて
少
(
すこ
)
しも
疑
(
うたが
)
はず
怪
(
あや
)
しまず、
153
維命
(
これめい
)
維従
(
これしたが
)
ふ
154
と
云
(
い
)
ふ
絶対
(
ぜつたい
)
服従心
(
ふくじゆうしん
)
がなくてはならないよ』
155
サンダー『ハイ、
156
重
(
かさ
)
ね
重
(
がさ
)
ねの
御
(
ご
)
教訓
(
けうくん
)
、
157
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
158
お
蔭様
(
かげさま
)
で、
159
根
(
ね
)
ツから、
160
葉
(
は
)
ツから、
161
よく
分
(
わか
)
りました。
162
ホヽヽヽヽ』
163
玄真
(
げんしん
)
『これこれサンダー、
164
根
(
ね
)
ツから、
165
葉
(
は
)
ツからよく
分
(
わか
)
つた……とは、
166
怪体
(
けたい
)
な
言
(
い
)
ひ
分
(
ぶん
)
ぢやないか、
167
一体
(
いつたい
)
分
(
わか
)
つたのか、
168
分
(
わか
)
らないのか』
169
サンダー『ハイ、
170
分
(
わか
)
つたやうでもあり、
171
分
(
わか
)
らぬやうでも
厶
(
ござ
)
います』
172
玄真
(
げんしん
)
『さうだろさうだろ、
173
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
は
分
(
わか
)
らぬものだと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
つたら、
174
それが
所謂
(
いはゆる
)
分
(
わか
)
つたのだ。
175
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
心
(
こころ
)
が
分
(
わか
)
つたと
云
(
い
)
ふものは、
176
何
(
なに
)
も
分
(
わか
)
つてゐないのだ。
177
マアマアそれ
位
(
くらゐ
)
ならば
上等
(
じやうとう
)
の
部
(
ぶ
)
だ。
178
サアサア
遠慮
(
ゑんりよ
)
は
要
(
い
)
らぬ、
179
二人
(
ふたり
)
とも、
180
この
飲食
(
おんじき
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
するがよい。
181
俺
(
わし
)
もこれからお
交際
(
つきあひ
)
に
毒味
(
どくみ
)
旁
(
かたがた
)
お
前
(
まへ
)
の
美
(
うつく
)
しい
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
乍
(
なが
)
らお
招伴
(
せうばん
)
するからのう』
182
二人
(
ふたり
)
の
美人
(
びじん
)
は
何分
(
なにぶん
)
空腹
(
くうふく
)
に
悩
(
なや
)
んでゐる
事
(
こと
)
とて
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
箸
(
はし
)
をとつた。
183
玄真坊
(
げんしんばう
)
は
之
(
これ
)
を
見
(
み
)
てニヤリと
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
184
さも
愉快気
(
ゆくわいげ
)
に、
185
玄真
(
げんしん
)
『ハヽヽヽどうだ、
186
両人
(
りやうにん
)
、
187
美味
(
うま
)
いだらう』
188
サンダー『ハイ、
189
誠
(
まこと
)
にお
加減
(
かげん
)
が
宜
(
よろ
)
しう
厶
(
ござ
)
います』
190
玄真
(
げんしん
)
『スガコ、
191
お
前
(
まへ
)
はどうだ』
192
スガコ『ハイ、
193
何
(
なん
)
とも
知
(
し
)
れぬお
加減
(
かげん
)
のよいお
料理
(
れうり
)
で
厶
(
ござ
)
います』
194
玄真
(
げんしん
)
『ハヽヽヽヽ、
195
そら、
196
さうだろて、
197
此
(
この
)
玄真
(
げんしん
)
が
魂
(
たましひ
)
をこめて
拵
(
こしら
)
へた
馳走
(
ちそう
)
だもの。
198
此
(
この
)
料理
(
れうり
)
の
中
(
なか
)
には
玄真
(
げんしん
)
の
魂
(
たましひ
)
が
這入
(
はい
)
つてゐるのだよ。
199
』
200
サンダー『
左様
(
さやう
)
で
厶
(
ござ
)
いますか、
201
何
(
なん
)
だか
存
(
ぞん
)
じませぬが
云
(
い
)
ふに
云
(
い
)
はれぬ
風味
(
ふうみ
)
が
厶
(
ござ
)
いますわ』
202
玄真
(
げんしん
)
『
飯
(
めし
)
一
(
ひと
)
つ
焚
(
た
)
くにしても、
203
釜
(
かま
)
の
下
(
した
)
に
薪
(
たきぎ
)
をくべたなり、
204
外
(
ほか
)
の
仕事
(
しごと
)
をしてゐるやうな
事
(
こと
)
ぢや
魂
(
たましひ
)
が
入
(
はい
)
らない。
205
甘
(
あま
)
い
汁
(
しる
)
を
外
(
そと
)
へ
零
(
こぼ
)
さぬやう、
206
釜
(
かま
)
の
下
(
した
)
を
燻
(
くす
)
べないやうに、
207
或時
(
あるとき
)
は
火力
(
くわりよく
)
を
強
(
つよ
)
め、
208
或時
(
あるとき
)
は
火
(
ひ
)
の
力
(
ちから
)
を
弱
(
よわ
)
めたり
209
一秒
(
いちべう
)
時間
(
じかん
)
も
御
(
お
)
飯
(
まんま
)
の
出来
(
でき
)
る
迄
(
まで
)
心
(
こころ
)
を
外
(
はづ
)
してはいけない。
210
そして
途中
(
とちう
)
に
鍋蓋
(
なべぶた
)
をとつては、
211
味
(
あぢ
)
がぬけて いけない。
212
蓋
(
ふた
)
をとつて
見
(
み
)
て、
213
ボツボツと
豆粒
(
まめつぶ
)
のやうな
穴
(
あな
)
があいて
居
(
を
)
つたら、
214
もはやお
飯
(
まんま
)
が
加減
(
かげん
)
よく
出来
(
でき
)
た
所
(
ところ
)
だ。
215
然
(
しか
)
しその
蓋
(
ふた
)
をとつちやいけない。
216
蓋
(
ふた
)
の
上
(
うへ
)
から、
217
そのボツボツが
見
(
み
)
えるやうに
魂
(
たましひ
)
が
入
(
はい
)
らぬと、
218
折角
(
せつかく
)
焚
(
た
)
いた
御飯
(
ごはん
)
がおいしくないのだ。
219
其
(
その
)
外
(
ほか
)
の
煮〆
(
にしめ
)
だつて
魚
(
さかな
)
だつてさうだ。
220
一
(
いち
)
秒間
(
べうかん
)
だつて
外
(
ほか
)
に
心
(
こころ
)
を
移
(
うつ
)
すやうでは
何
(
なん
)
だつて、
221
おいしい
料理
(
れうり
)
は
出来
(
でき
)
ないんだからなア。
222
ここ
迄
(
まで
)
気
(
き
)
をつけてお
前
(
まへ
)
等
(
たち
)
両人
(
りやうにん
)
に、
223
おいしいものを
食
(
く
)
はしてやらうと
云
(
い
)
ふ
親切
(
しんせつ
)
、
224
よもや、
225
無
(
む
)
には
致
(
いた
)
すまいのう。
226
どうだ、
227
も
一杯
(
いつぱい
)
食
(
く
)
はないか』
228
サンダー『ハイ、
229
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います、
230
もう
之
(
これ
)
で
充分
(
じゆうぶん
)
頂
(
いただ
)
きました』
231
スガコ『
妾
(
わたし
)
も
沢山
(
たくさん
)
に
頂
(
いただ
)
きました、
232
大
(
おほ
)
きに
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
様
(
さま
)
』
233
玄真
(
げんしん
)
『ウン、
234
さうかさうか。
235
皆
(
みな
)
甘
(
うま
)
さうに
食
(
く
)
つて
呉
(
く
)
れたので
俺
(
わし
)
も
骨折
(
ほねをり
)
甲斐
(
がひ
)
があつた。
236
折角
(
せつかく
)
骨
(
ほね
)
を
折
(
を
)
つて
味
(
あぢ
)
ない
顔
(
かほ
)
して
食
(
く
)
はれると、
237
根
(
ね
)
ツから
骨折
(
ほねをり
)
甲斐
(
がひ
)
がないけど
猫
(
ねこ
)
が
鰹節
(
かつをぶし
)
を
見
(
み
)
たやうに
飛
(
と
)
びついて
食
(
く
)
つたのを
見
(
み
)
た
時
(
とき
)
は、
238
此
(
この
)
玄真坊
(
げんしんばう
)
も
本当
(
ほんたう
)
に
愉快
(
ゆくわい
)
だつたよ。
239
サア、
240
御膳
(
ごぜん
)
が
済
(
す
)
んだら、
241
之
(
これ
)
から
俺
(
わし
)
の
要求
(
えうきう
)
を
聞
(
き
)
いて
貰
(
もら
)
ふのだ。
242
否
(
いな
)
此
(
この
)
玄真坊
(
げんしんばう
)
にお
前
(
まへ
)
等
(
たち
)
両人
(
りやうにん
)
から
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
を
頂
(
いただ
)
くのだ。
243
人
(
ひと
)
に
招
(
よ
)
ばれたらキツト
招
(
よ
)
び
返
(
かへ
)
すのは
世間
(
せけん
)
普通
(
ふつう
)
の
礼儀
(
れいぎ
)
だからのう』
244
サンダー『ハイ、
245
何
(
なに
)
か
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
を
差上
(
さしあげ
)
度
(
た
)
う
厶
(
ござ
)
いますが、
246
妾
(
わたし
)
としては
何
(
なに
)
も
材料
(
ざいれう
)
がありませぬから、
247
御
(
お
)
礼
(
れい
)
の
返
(
かへ
)
しやうが
厶
(
ござ
)
りませぬわ』
248
スガコ『
妾
(
わたし
)
だつて
御
(
お
)
礼
(
れい
)
を
致
(
いた
)
さねば
済
(
す
)
まないのだけど、
249
かやうの
処
(
ところ
)
へ
閉
(
と
)
ぢ
込
(
こ
)
められてゐるのだから、
250
何一
(
なにひと
)
つ
所持品
(
しよぢひん
)
もなし、
251
玄真
(
げんしん
)
様
(
さま
)
にお
愛想
(
あいさう
)
の
仕方
(
しかた
)
がありませぬわ。
252
どうか
時節
(
じせつ
)
をお
待
(
ま
)
ち
下
(
くだ
)
さいませ。
253
キツトお
礼
(
れい
)
を
申
(
まを
)
しますから』
254
玄真
(
げんしん
)
『
俺
(
わし
)
の
馳走
(
ちそう
)
と
云
(
い
)
ふのは、
255
そんな
者
(
もの
)
ぢやない。
256
稀代
(
きたい
)
の
珍味
(
ちんみ
)
、
257
しかも、
258
其方
(
そなた
)
が
所持
(
しよぢ
)
する
畑
(
はたけ
)
で
掘
(
ほ
)
つた×だ。
259
それを、
260
この
玄真坊
(
げんしんばう
)
に
一口
(
ひとくち
)
賞玩
(
しやうぐわん
)
させて
貰
(
もら
)
ひ
度
(
た
)
い。
261
その
代
(
かは
)
りに
又
(
また
)
秋山
(
あきやま
)
の
名物
(
めいぶつ
)
、
262
常磐
(
ときは
)
の
松
(
まつ
)
の
精
(
せい
)
から
生
(
うま
)
れた××の
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
を
進
(
しん
)
ぜよう。
263
あんまり
悪
(
わる
)
くはあるまい、
264
エヘヽヽヽ』
265
サンダー『オホヽヽヽ、
266
御
(
ご
)
冗談
(
じやうだん
)
許
(
ばか
)
り
仰有
(
おつしや
)
いまして、
267
貴方
(
あなた
)
は
要
(
えう
)
するに
妾
(
わらは
)
に
対
(
たい
)
し、
268
オチコ、
269
ウツトコ、
270
ハテナを
御
(
ご
)
要求
(
えうきう
)
なさるのでせう。
271
貴方
(
あなた
)
も
余程
(
よほど
)
オホノ、
272
トルッテですね』
273
玄真
(
げんしん
)
『オイ、
274
そんな
蒙古語
(
もうこご
)
を
使
(
つか
)
つても、
275
ネツから
分
(
わか
)
らぬぢやないか。
276
サンスクリットで
云
(
い
)
はないか』
277
サンダー『
妾
(
あて
)
エ、
278
サンスクリット
忘
(
わす
)
れたのよ。
279
貴方
(
あなた
)
のやうな
事
(
こと
)
仰有
(
おつしや
)
いますと、
280
ポホラのヌホが
呆
(
あき
)
れますよ。
281
ポホラからパサヌーですわ。
282
鼬
(
いたち
)
の
最後屁
(
さいごべ
)
、
283
オンクス、
284
アルテチウンヌルテですわ。
285
ホヽヽヽヽ』
286
玄真
(
げんしん
)
『エー
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふ
女
(
をんな
)
だな。
287
言論
(
げんろん
)
よりも
実行
(
じつかう
)
だ。
288
オイ、
289
スガコ、
290
そこに
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
らう。
291
サンダーの
方
(
はう
)
から
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
をしてやらう』
292
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
293
アワヤ
猥褻
(
わいせつ
)
なる
行為
(
かうゐ
)
に
出
(
い
)
でむとした。
294
二人
(
ふたり
)
は……こりや
堪
(
たま
)
らぬと……
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に、
295
『
助
(
たす
)
けてくれ
助
(
たす
)
けてくれ』
2951
と
叫
(
さけ
)
んだ。
296
折
(
をり
)
から
戸
(
と
)
の
外
(
そと
)
を
通
(
とほ
)
り
合
(
あは
)
したシーゴーが、
297
妙
(
めう
)
な
声
(
こゑ
)
がすると
思
(
おも
)
ひ、
298
パツト
戸
(
と
)
を
開
(
ひら
)
いて
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り
此
(
この
)
態
(
てい
)
を
見
(
み
)
て、
299
シーゴー『
玄真坊
(
げんしんばう
)
殿
(
どの
)
、
300
この
不仕鱈
(
ふしだら
)
は
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
る。
301
万民
(
ばんみん
)
の
模範
(
もはん
)
となり、
302
神
(
かみ
)
の
福音
(
ふくいん
)
を
宣
(
の
)
べ
伝
(
つた
)
ふる
身
(
み
)
でゐ
乍
(
なが
)
ら、
303
可憐
(
かれん
)
な
女
(
をんな
)
を
一室
(
いつしつ
)
に
監禁
(
かんきん
)
し、
304
強圧
(
きやうあつ
)
的
(
てき
)
に
醜行
(
しうかう
)
を
遂
(
と
)
げむとなさるは、
305
貴下
(
きか
)
にも
不似合
(
ふにあひ
)
な
事
(
こと
)
、
306
おたしなみなさい』
307
玄真坊
(
げんしんばう
)
は
頭
(
あたま
)
をかき
乍
(
なが
)
ら、
308
玄真
(
げんしん
)
『アイヤ、
309
シーゴー
殿
(
どの
)
、
310
決
(
けつ
)
して
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
下
(
くだ
)
さるな。
311
ツイ
貴方
(
あなた
)
と
最前
(
さいぜん
)
お
酒
(
さけ
)
を
呑
(
の
)
んで
酔
(
よひ
)
がまはり、
312
酒
(
さけ
)
の
奴
(
やつ
)
め、
313
遂
(
つひ
)
斯様
(
かやう
)
なホテテンゴを
致
(
いた
)
して
厶
(
ござ
)
る。
314
酒
(
さけ
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は
本当
(
ほんたう
)
に
仕方
(
しかた
)
のない
悪魔
(
あくま
)
で
厶
(
ござ
)
るわい』
315
シーゴー『これこれ
二人
(
ふたり
)
のお
女中
(
ぢよちう
)
、
316
危
(
あぶ
)
ない
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
つたな。
317
ヤア
其方
(
そなた
)
はコマの
村
(
むら
)
のサンダー
姫
(
ひめ
)
ぢやないか』
318
サンダー『ハイ、
319
貴方
(
あなた
)
は
妾
(
わらは
)
の
門前
(
もんぜん
)
に
於
(
おい
)
て、
320
お
目
(
め
)
にかかつた
修験者
(
しゆげんじや
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いましたか』
321
シーゴー『いかにも
左様
(
さやう
)
、
322
よくお
詣
(
まゐ
)
りなさつた。
323
然
(
しか
)
し
目的
(
もくてき
)
の
捜索物
(
さうさくぶつ
)
は
分
(
わか
)
りましたかな』
324
サンダー『ハイ、
325
お
蔭様
(
かげさま
)
で
分
(
わか
)
つたでもなし、
326
分
(
わか
)
らぬでもなし、
327
此
(
この
)
岩窟
(
いはや
)
で
玄真坊
(
げんしんばう
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
慈悲
(
じひ
)
により、
328
永
(
なが
)
らく
断食
(
だんじき
)
の
行
(
ぎやう
)
をさせて
頂
(
いただ
)
きました。
329
玄真坊
(
げんしんばう
)
様
(
さま
)
は
見
(
み
)
かけによらぬ、
330
シトラ(
鬼
(
おに
)
)で
厶
(
ござ
)
いますな』
331
玄真
(
げんしん
)
『アハヽヽヽヽ、
332
何
(
なん
)
でもかんでも、
333
シツトル
ワイ。
334
天地
(
てんち
)
の
間
(
あひだ
)
の
事
(
こと
)
を
シツトラ
いで、
335
万民
(
ばんみん
)
を
導
(
みちび
)
く
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないからのう』
336
とサンダーに
鬼
(
おに
)
と
云
(
い
)
はれし
事
(
こと
)
を
少
(
すこ
)
しも
知
(
し
)
らず
鼻
(
はな
)
高々
(
たかだか
)
と
嘯
(
うそぶ
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
337
斯
(
か
)
くして
夜
(
よ
)
はダンダンと
更
(
ふけ
)
渡
(
わた
)
り、
338
オーラ
山
(
ざん
)
の
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
を
渡
(
わた
)
る
松風
(
まつかぜ
)
の
音
(
おと
)
は
颯々
(
さつさつ
)
と
聞
(
きこ
)
え
来
(
きた
)
る。
339
(
大正一三・一二・一七
旧一一・二一
於祥雲閣
北村隆光
録)
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