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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第66巻(巳の巻)
序文
総説
第1篇 月の高原
第1章 暁の空
第2章 祖先の恵
第3章 酒浮気
第4章 里庄の悩
第5章 愁雲退散
第6章 神軍義兵
第2篇 容怪変化
第7章 女白浪
第8章 神乎魔乎
第9章 谷底の宴
第10章 八百長劇
第11章 亞魔の河
第3篇 異燭獣虚
第12章 恋の暗路
第13章 恋の懸嘴
第14章 相生松風
第15章 喰ひ違ひ
第4篇 恋連愛曖
第16章 恋の夢路
第17章 縁馬の別
第18章 魔神の囁
第19章 女の度胸
第20章 真鬼姉妹
余白歌
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霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第66巻(巳の巻)
> 第4篇 恋連愛曖 > 第19章 女の度胸
<<< 魔神の囁
(B)
(N)
真鬼姉妹 >>>
第一九章
女
(
をんな
)
の
度胸
(
どきよう
)
〔一七〇一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第66巻 山河草木 巳の巻
篇:
第4篇 恋連愛曖
よみ(新仮名遣い):
れんれんあいあい
章:
第19章 女の度胸
よみ(新仮名遣い):
おんなのどきょう
通し章番号:
1701
口述日:
1924(大正13)年12月17日(旧11月21日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年6月29日
概要:
舞台:
オーラ山の大杉の下、ヨリコ姫の居間
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6619
愛善世界社版:
266頁
八幡書店版:
第11輯 828頁
修補版:
校定版:
271頁
普及版:
67頁
初版:
ページ備考:
001
梅公
(
うめこう
)
、
002
花香
(
はなか
)
の
両人
(
りやうにん
)
は
密
(
ひそか
)
に
大杉
(
おほすぎ
)
の
麓
(
ふもと
)
に
忍
(
しの
)
び
寄
(
よ
)
り、
003
よくよく
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
れば、
004
鉄線
(
てつせん
)
の
梯子
(
はしご
)
がタワタワと
木
(
き
)
の
上
(
うへ
)
から
下
(
さが
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
005
梅公
(
うめこう
)
『ハハア
曲神
(
まがかみ
)
の
奴
(
やつ
)
ども
此
(
この
)
梯子
(
はしご
)
を
上
(
あが
)
つて
木
(
き
)
の
上
(
うへ
)
に
火
(
ひ
)
を
点
(
とも
)
し、
006
天
(
てん
)
から
星
(
ほし
)
が
降
(
くだ
)
るなどと
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
を
誑
(
たば
)
かつて
居
(
ゐ
)
るのだらう。
007
ヤ、
008
面白
(
おもしろ
)
い、
009
曲神
(
まがかみ
)
の
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
力
(
ちから
)
と
頼
(
たの
)
むこの
光
(
ひかり
)
を
先
(
ま
)
づ
消
(
け
)
してやらう』
010
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
花香
(
はなか
)
と
共
(
とも
)
に
梯子
(
はしご
)
を
伝
(
つた
)
うて
大杉
(
おほすぎ
)
の
梢
(
こずゑ
)
に
攀
(
よぢ
)
登
(
のぼ
)
り、
011
十六
(
じふろく
)
の
燈
(
あかり
)
を
一個
(
いつこ
)
も
残
(
のこ
)
らず
吹
(
ふ
)
き
消
(
け
)
して
仕舞
(
しま
)
つた。
012
昼
(
ひる
)
を
欺
(
あざむ
)
く
杉
(
すぎ
)
の
根本
(
ねもと
)
は
俄
(
にはか
)
に
闇
(
やみ
)
の
幕
(
まく
)
が
下
(
お
)
りた。
013
玄真坊
(
げんしんばう
)
、
014
シーゴーは
俄
(
にはか
)
に
火
(
ひ
)
の
消
(
き
)
えたのに
不審
(
ふしん
)
を
起
(
おこ
)
し
樹下
(
じゆか
)
に
佇
(
たたず
)
んで、
015
シーゴー『オイ
玄真坊
(
げんしんばう
)
、
016
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
があるものぢやないか。
017
まだ
油
(
あぶら
)
が
断
(
き
)
れる
時
(
とき
)
でもなし、
018
又
(
また
)
十六個
(
じふろくこ
)
が
十六個
(
じふろくこ
)
共
(
とも
)
消
(
き
)
えるのは
不思議
(
ふしぎ
)
ぢやなア。
019
附近
(
ふきん
)
の
人民
(
じんみん
)
は
此
(
この
)
大杉
(
おほすぎ
)
の
巨燈
(
きよとう
)
を
見
(
み
)
て
天
(
てん
)
の
星
(
ほし
)
と
信
(
しん
)
じ、
020
渇仰
(
かつかう
)
憧憬
(
どうけい
)
して
居
(
ゐ
)
るのに、
021
唯
(
ただ
)
一
(
いち
)
時
(
じ
)
でも
光
(
ひかり
)
が
消
(
き
)
えたとすれば、
022
信仰
(
しんかう
)
の
土台
(
どだい
)
がぐらつく
筈
(
はず
)
だ。
023
さうすれば
吾々
(
われわれ
)
の
目的
(
もくてき
)
は
到底
(
たうてい
)
達
(
たつ
)
せられない。
024
別
(
べつ
)
に
強
(
つよ
)
い
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いたのでもなし、
025
どうしたのだらうかなア』
026
玄真
(
げんしん
)
『どうも
不思議
(
ふしぎ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
027
こんな
事
(
こと
)
が
有
(
あ
)
らう
筈
(
はず
)
がありませぬ。
028
十分
(
じふぶん
)
調
(
しら
)
べて
油
(
あぶら
)
もついでおきましたなり、
029
何
(
なに
)
かこの
山
(
やま
)
に
住
(
す
)
む
天狗
(
てんぐ
)
の
業
(
わざ
)
では
厶
(
ござ
)
いますまいか。
030
何
(
いづ
)
れにしても
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
る』
031
と
二人
(
ふたり
)
頻
(
しきり
)
に
心配
(
しんぱい
)
をして
居
(
ゐ
)
ると、
032
木
(
き
)
の
上
(
うへ
)
から
割
(
わ
)
るるが
如
(
ごと
)
き
大声
(
おほごゑ
)
で、
033
『ウゥー、
034
ウゥー、
035
ウゥー、
036
ウゥー、
037
ウゥー』
038
と
連続
(
れんぞく
)
的
(
てき
)
に
唸
(
うな
)
り
声
(
ごゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
る。
039
其
(
その
)
怖
(
おそ
)
ろしさといつたら
五臓
(
ござう
)
六腑
(
ろくぷ
)
に
浸
(
しみ
)
わたり、
040
両人
(
りやうにん
)
の
身体
(
からだ
)
には
体内
(
たいない
)
地震
(
ぢしん
)
が
突発
(
とつぱつ
)
した。
041
又
(
また
)
もや
樹上
(
じゆじやう
)
より、
042
『オーラ
山
(
さん
)
に
立
(
た
)
て
籠
(
こ
)
もり、
043
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
企
(
くはだ
)
てを
致
(
いた
)
す
汝
(
なんぢ
)
シーゴー、
044
玄真坊
(
げんしんばう
)
、
045
よツく
聞
(
き
)
け。
046
此
(
この
)
方
(
はう
)
は、
047
オーラ
山脈
(
さんみやく
)
一体
(
いつたい
)
を
昔
(
むかし
)
より
住家
(
すみか
)
と
致
(
いた
)
す、
048
真
(
しん
)
の
玄真坊
(
げんしんばう
)
大天狗
(
だいてんぐ
)
だ。
049
汝
(
なんぢ
)
不都合
(
ふつがふ
)
千万
(
せんばん
)
にも
吾
(
わが
)
名
(
な
)
を
騙
(
かた
)
り
玄真坊
(
げんしんばう
)
と
称
(
しよう
)
し、
050
大杉
(
おほすぎ
)
の
枝
(
えだ
)
に
燈火
(
とうくわ
)
を
点
(
てん
)
じ、
051
天
(
てん
)
より
星
(
ほし
)
下
(
くだ
)
つて
汝
(
なんぢ
)
が
説法
(
せつぱふ
)
を
聴聞
(
ちやうもん
)
すると
佯
(
いつは
)
り、
052
天下
(
てんか
)
万民
(
ばんみん
)
を
誑惑
(
たぶら
)
かし、
053
金銭
(
きんせん
)
物品
(
ぶつぴん
)
は
云
(
い
)
ふも
更
(
さら
)
なり、
054
人
(
ひと
)
の
妻
(
つま
)
や
娘
(
むすめ
)
を
誘拐
(
かどわか
)
し、
055
金穀
(
きんこく
)
を
強奪
(
がうだつ
)
する
不届者
(
ふとどきもの
)
。
056
もはや
汝
(
なんぢ
)
の
天命
(
てんめい
)
つきたれば、
057
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
め、
058
解散
(
かいさん
)
を
致
(
いた
)
さばよし、
059
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
も
悪事
(
あくじ
)
を
続行
(
ぞくかう
)
するに
於
(
おい
)
ては、
060
玄真坊
(
げんしんばう
)
大天狗
(
だいてんぐ
)
、
061
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
の
素首
(
そつくび
)
を
引
(
ひ
)
き
抜
(
ぬ
)
き
呉
(
く
)
れむ。
062
返答
(
へんたふ
)
は
如何
(
いか
)
に、
063
ウゥーウゥーウゥー』
064
これを
聞
(
き
)
くより
両人
(
りやうにん
)
は
顔色
(
かほいろ
)
をかへ、
065
ビリビリ
慄
(
ふる
)
へながら、
066
シーゴー『オイオイ
玄真
(
げんしん
)
、
067
偉
(
えら
)
い
事
(
こと
)
になつたぢやないか。
068
あんな
事
(
こと
)
を
天狗
(
てんぐ
)
が
云
(
い
)
ふわい。
069
折角
(
せつかく
)
茲
(
ここ
)
迄
(
まで
)
仕組
(
しぐ
)
んだ
狂言
(
きやうげん
)
を
中途
(
ちうと
)
に
止
(
や
)
めるのは
惜
(
をし
)
いけれど、
070
命
(
いのち
)
にや
代
(
か
)
へられぬぢやないか』
071
玄真坊
(
げんしんばう
)
は
慄
(
ふる
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
072
玄真
(
げんしん
)
『ソヽヽそれぢやと
云
(
い
)
つて、
073
今
(
いま
)
俄
(
にはか
)
に
止
(
や
)
める
訳
(
わけ
)
にはゆかず、
074
沢山
(
たくさん
)
の
乾児
(
こぶん
)
もある
事
(
こと
)
なり、
075
何
(
なん
)
とか
天狗
(
てんぐ
)
さまにお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
し、
076
暫
(
しばら
)
くの
御
(
ご
)
猶予
(
いうよ
)
を
願
(
ねが
)
はうぢやないか』
077
シーゴー『ウン、
078
それもさうだ。
079
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
はどうなつてもよいが、
080
今
(
いま
)
俄
(
にはか
)
に
解散
(
かいさん
)
するとなると
沢山
(
たくさん
)
の
部下
(
ぶか
)
が
忽
(
たちま
)
ち
路頭
(
ろとう
)
に
迷
(
まよ
)
ふからなア。
081
まア
一
(
ひと
)
つお
願
(
ねが
)
ひして
見
(
み
)
ようかい』
082
玄真
(
げんしん
)
『もしもし、
083
樹上
(
じゆじやう
)
の
玄真坊
(
げんしんばう
)
大天狗
(
だいてんぐ
)
様
(
さま
)
、
084
誠
(
まこと
)
に
申訳
(
まうしわけ
)
のない
事
(
こと
)
では
厶
(
ござ
)
いますが、
085
今
(
いま
)
俄
(
にはか
)
に
解散
(
かいさん
)
致
(
いた
)
しましては、
086
三千
(
さんぜん
)
の
部下
(
ぶか
)
が
忽
(
たちま
)
ち
路頭
(
ろとう
)
に
迷
(
まよ
)
ひ、
087
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
に
散
(
ち
)
り
乱
(
みだ
)
れて、
088
益々
(
ますます
)
悪
(
あく
)
を
逞
(
たくま
)
しうするかも
知
(
し
)
れませぬ。
089
さうなれば
国民
(
こくみん
)
の
難儀
(
なんぎ
)
は
層一層
(
そういつそう
)
甚
(
はなはだ
)
しくなるかも
知
(
し
)
れませぬ。
090
何
(
ど
)
うか
改心
(
かいしん
)
致
(
いた
)
しますから、
091
部下
(
ぶか
)
を
取纒
(
とりまと
)
め、
092
貴方
(
あなた
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
教訓
(
けうくん
)
を
篤
(
とつく
)
と
云
(
い
)
ひ
聞
(
き
)
かせ
郷里
(
きやうり
)
に
帰
(
かへ
)
しますから、
093
夫
(
それ
)
迄
(
まで
)
御
(
ご
)
猶予
(
いうよ
)
を
願
(
ねが
)
ひます。
094
私
(
わたくし
)
のみの
難儀
(
なんぎ
)
では
厶
(
ござ
)
いませぬ、
095
部下
(
ぶか
)
三千
(
さんぜん
)
の
難儀
(
なんぎ
)
で
厶
(
ござ
)
いますから』
096
声
(
こゑ
)
に
応
(
おう
)
じて
樹上
(
じゆじやう
)
より、
097
『ウゥーウゥー、
098
ならぬならぬ。
099
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
退散
(
たいさん
)
致
(
いた
)
せ。
100
三千
(
さんぜん
)
人
(
にん
)
の
小泥棒
(
こどろぼう
)
が
苦
(
くる
)
しむのは
自業
(
じごふ
)
自得
(
じとく
)
だ。
101
積悪
(
せきあく
)
の
酬
(
むく
)
いだ。
102
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
は
無辜
(
むこ
)
の
良民
(
りやうみん
)
を
苦
(
くる
)
しめ
苛責
(
さいな
)
み、
103
良家
(
りやうか
)
の
婦女
(
ふぢよ
)
を
誘拐
(
かどわか
)
し
岩窟
(
がんくつ
)
に
閉
(
と
)
ぢ
籠
(
こ
)
めおき、
104
肉欲
(
にくよく
)
を
逞
(
たくま
)
しふせむとする
不届
(
ふとど
)
き
者
(
もの
)
。
105
この
霊山
(
れいざん
)
を
汚
(
けが
)
せしにより、
106
これよりレコード
破
(
やぶ
)
りの
山風
(
やまかぜ
)
を
起
(
おこ
)
し
三千
(
さんぜん
)
の
部下
(
ぶか
)
を
天空
(
てんくう
)
高
(
たか
)
く
捲
(
ま
)
き
上
(
あ
)
げ、
107
其
(
その
)
身体
(
しんたい
)
を
木
(
こ
)
ツ
端
(
ぱ
)
微塵
(
みぢん
)
に
打
(
う
)
ち
砕
(
くだ
)
き、
108
懲
(
こら
)
して
呉
(
く
)
れむ』
109
次
(
つぎ
)
に
女
(
をんな
)
の
優
(
やさ
)
しき
声
(
こゑ
)
にて、
110
『
妾
(
わらは
)
は
天
(
てん
)
より
下
(
くだ
)
りし、
111
誠
(
まこと
)
の
棚機姫
(
たなばたひめの
)
命
(
みこと
)
であるぞ。
112
汝
(
なんぢ
)
玄真坊
(
げんしんばう
)
、
113
シーゴー
坊
(
ばう
)
とやら、
114
よく
承
(
うけたま
)
はれ。
115
今
(
いま
)
やトルマン
国
(
ごく
)
はバラモン
軍
(
ぐん
)
に
攻
(
せ
)
め
悩
(
なや
)
まされ、
116
バルガン
城
(
じやう
)
は
十重
(
とへ
)
廿重
(
はたへ
)
に
囲
(
かこ
)
まれ、
117
国王
(
こくわう
)
のトルカは
将
(
まさ
)
に
捕虜
(
ほりよ
)
にせられむとする
大国難
(
だいこくなん
)
の
際
(
さい
)
なるぞ。
118
其
(
その
)
虚
(
きよ
)
に
乗
(
じやう
)
じて
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
は
所在
(
あらゆる
)
良民
(
りやうみん
)
を
誑
(
たぶ
)
らかし、
119
金銭
(
きんせん
)
を
奪
(
うば
)
ひ
取
(
と
)
り、
120
武備
(
ぶび
)
を
整
(
ととの
)
へてバルガン
城
(
じやう
)
を
囲
(
かこ
)
みトルマン
国
(
ごく
)
を
占領
(
せんりやう
)
し、
121
引
(
ひ
)
いて
印度
(
いんど
)
七千
(
しちせん
)
余国
(
よこく
)
を
蹂躙
(
じうりん
)
せむとする、
122
極悪
(
ごくあく
)
無道
(
ぶだう
)
の
外道
(
げだう
)
畜生
(
ちくしやう
)
奴
(
め
)
。
123
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
めて
神
(
かみ
)
に
謝
(
しや
)
せよ』
124
シーゴー『ハイ、
125
どうも
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
りまして
厶
(
ござ
)
います。
126
キツト
心得
(
こころえ
)
ますから、
127
私
(
わたし
)
を
初
(
はじ
)
め
部下
(
ぶか
)
の
命
(
いのち
)
だけはお
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さいますやうに』
128
樹上
(
じゆじやう
)
より、
129
『ウハヽヽヽ、
130
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
つたか、
131
往生
(
わうじやう
)
致
(
いた
)
したか。
132
サア
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
解散
(
かいさん
)
の
実
(
じつ
)
を
示
(
しめ
)
せよ』
133
シーゴー『ハイ
唯今
(
ただいま
)
、
134
大親分
(
おほおやぶん
)
のヨリコ
姫
(
ひめ
)
女帝
(
によてい
)
に
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げ
直
(
す
)
ぐに
解散
(
かいさん
)
致
(
いた
)
します。
135
暫
(
しばら
)
くお
待
(
ま
)
ちを
願
(
ねが
)
ひます』
136
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
137
ヨリコ
姫
(
ひめ
)
の
居間
(
ゐま
)
に
駆
(
か
)
け
付
(
つ
)
け
右
(
みぎ
)
の
次第
(
しだい
)
を
詳細
(
つぶさ
)
に
物語
(
ものがた
)
つた。
138
ヨリコ
姫
(
ひめ
)
は
一伍
(
いちぶ
)
一什
(
しじふ
)
を
聞
(
き
)
き
取
(
と
)
り、
139
ニツコと
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
140
ヨリコ『あれ
程
(
ほど
)
沢山
(
たくさん
)
油
(
あぶら
)
がさしてあり、
141
風
(
かぜ
)
も
吹
(
ふ
)
かぬに
火
(
ひ
)
の
消
(
き
)
える
道理
(
だうり
)
もなし、
142
又
(
また
)
樹
(
き
)
の
上
(
うへ
)
に
天狗
(
てんぐ
)
がとまつて
託宣
(
たくせん
)
するのもをかしい。
143
又
(
また
)
棚機姫
(
たなばたひめ
)
が
下
(
くだ
)
つて
宣示
(
せんじ
)
するとは
益々
(
ますます
)
怪
(
あや
)
しいでは
無
(
な
)
いか。
144
さう
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
に
騙
(
だま
)
されるやうで
此
(
この
)
大望
(
たいまう
)
が
成就
(
じやうじゆ
)
するものか。
145
些
(
ち
)
と
確
(
しつ
)
かりなさい。
146
玄真坊
(
げんしんばう
)
はどうして
居
(
を
)
るのか』
147
シーゴー『ハイ、
148
玄真
(
げんしん
)
は
慄
(
ふる
)
ひ
戦
(
をのの
)
き
樹下
(
じゆか
)
に
倒
(
たふ
)
れて
仕舞
(
しま
)
ひました』
149
ヨリコ『ホヽヽヽ、
150
何
(
なん
)
とした
腰抜
(
こしぬ
)
けだらう。
151
天狗
(
てんぐ
)
なんか
何
(
なに
)
が
怖
(
おそ
)
ろしい。
152
屹度
(
きつと
)
何者
(
なにもの
)
かの
悪戯
(
いたづら
)
だらう。
153
よく
調
(
しら
)
べて
来
(
き
)
なさい』
154
シーゴー『ハイ、
155
もう
此
(
この
)
上
(
うへ
)
調
(
しら
)
べやうは
厶
(
ござ
)
いませぬ。
156
一
(
ひと
)
つ
唸
(
うな
)
られやうものなら、
157
五臓
(
ござう
)
六腑
(
ろくぷ
)
が
慄
(
ふる
)
ひ
戦
(
をのの
)
き、
158
立
(
た
)
つても
居
(
ゐ
)
ても
居
(
を
)
られなくなります。
159
人間
(
にんげん
)
がどうして、
160
あんな
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
が
出
(
で
)
ませう。
161
屹度
(
きつと
)
天狗
(
てんぐ
)
に
間違
(
まちが
)
ひはありませぬ』
162
ヨリコ『これシーゴーさま、
163
お
前
(
まへ
)
も
随分
(
ずいぶん
)
経験
(
けいけん
)
を
積
(
つ
)
んだ
悪党
(
あくたう
)
ぢやないか。
164
天狗
(
てんぐ
)
が
夫
(
それ
)
程
(
ほど
)
怖
(
こは
)
いのか。
165
そして
天狗
(
てんぐ
)
の
声
(
こゑ
)
は
陰性
(
いんせい
)
だから、
166
決
(
けつ
)
して
人
(
ひと
)
の
体
(
たい
)
に
響
(
ひび
)
くものでない。
167
大方
(
おほかた
)
酒
(
さけ
)
にでも
酔
(
よ
)
うて
乾児
(
こぶん
)
の
奴
(
やつ
)
共
(
ども
)
が
口
(
くち
)
に
竹筒
(
たけづつ
)
でも
当
(
あ
)
てて、
168
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
の
胆試
(
きもだめ
)
しをやつて
居
(
ゐ
)
るのかも
知
(
し
)
れませぬよ』
169
シーゴー『イエイエ、
170
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
竹筒
(
たけづつ
)
の
声
(
こゑ
)
ぢやありませぬ。
171
人間
(
にんげん
)
の
声
(
こゑ
)
でも
無
(
な
)
し、
172
大変
(
たいへん
)
な
強力
(
がうりき
)
な
声
(
こゑ
)
で
厶
(
ござ
)
います』
173
ヨリコ『ハテ、
174
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふぢやないか。
175
どれ
自分
(
じぶん
)
が
行
(
い
)
つて
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
ませう』
176
と
落付
(
おちつ
)
き
払
(
はら
)
つた
風
(
ふう
)
でボツボツと
着衣
(
ちやくい
)
を
整理
(
せいり
)
し、
177
悠然
(
いうぜん
)
としてシーゴーの
後
(
うしろ
)
から、
178
大杉
(
おほすぎ
)
の
下
(
もと
)
へとやつて
来
(
き
)
た。
179
ヨリコ『そこに
居
(
ゐ
)
るのは
玄真坊
(
げんしんばう
)
ぢやないか。
180
何
(
なん
)
だい、
181
天狗
(
てんぐ
)
位
(
ぐらゐ
)
に
慄
(
ふる
)
つて
居
(
ゐ
)
るのかい』
182
玄真
(
げんしん
)
『ハイ、
183
女帝
(
によてい
)
様
(
さま
)
、
184
どうかお
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さいませ。
185
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
て
来
(
き
)
ました。
186
もう
私
(
わたし
)
も
年貢
(
ねんぐ
)
の
納
(
をさ
)
め
時
(
どき
)
です。
187
身体
(
しんたい
)
強直
(
きやうちよく
)
して
身動
(
みうご
)
きが
出来
(
でき
)
なくなりました』
188
ヨリコ『ホヽヽヽ、
189
まアよい
腰抜
(
こしぬけ
)
だこと。
190
どれ、
191
これから
妾
(
わらは
)
が
樹上
(
じゆじやう
)
の
天狗
(
てんぐ
)
とやらを
取
(
と
)
つちめてやりませう』
192
この
時
(
とき
)
樹上
(
じゆじやう
)
より
又
(
また
)
もや、
193
『ウゥーウゥーウゥー』
194
と
千匹
(
せんびき
)
狼
(
おほかみ
)
が
一度
(
いちど
)
に
唸
(
うな
)
り
出
(
だ
)
したやうな
怖
(
おそ
)
ろしい
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
195
シーゴー、
196
玄真
(
げんしん
)
は
耳
(
みみ
)
をかかへて
打
(
う
)
ち
慄
(
ふる
)
ひ
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
パタリ
と
打
(
う
)
ち
伏
(
ふ
)
して
仕舞
(
しま
)
つた。
197
ヨリコ
姫
(
ひめ
)
は
平然
(
へいぜん
)
として
樹上
(
じゆじやう
)
を
打
(
う
)
ち
仰
(
あふ
)
ぎ
乍
(
なが
)
ら、
198
ヨリコ『オイ、
199
樹上
(
じゆじやう
)
に
居
(
ゐ
)
る
怪物
(
くわいぶつ
)
は
何物
(
なにもの
)
だ。
200
いい
加減
(
かげん
)
に
悪戯
(
いたづら
)
を
致
(
いた
)
しておけ。
201
ヨリコ
姫
(
ひめ
)
が
現
(
あら
)
はれた
以上
(
いじやう
)
は、
202
如何
(
いか
)
なる
汝
(
なんぢ
)
が
奸策
(
かんさく
)
も
根底
(
こんてい
)
より
看破
(
かんぱ
)
してやらうぞや。
203
その
方
(
はう
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
供
(
とも
)
をいたす
木
(
こ
)
ツ
端
(
ぱ
)
武者
(
むしや
)
だらう』
204
此
(
この
)
落付
(
おちつ
)
き
払
(
はら
)
つたヨリコの
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
いて、
205
遉
(
さすが
)
の
梅公
(
うめこう
)
も
舌
(
した
)
を
捲
(
ま
)
いた。
206
樹上
(
じゆじやう
)
の
花香
(
はなか
)
はヨリコ
姫
(
ひめ
)
と
云
(
い
)
ふ
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
き……
何
(
なん
)
となく
聞
(
き
)
き
覚
(
おぼ
)
えもあり、
207
もしか
三年前
(
さんねんまへ
)
に
吾
(
わが
)
家
(
や
)
を
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
した
姉上
(
あねうへ
)
ではあるまいか、
208
ても
扨
(
さ
)
ても
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
だなア……と
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
けて
居
(
ゐ
)
た。
209
樹上
(
じゆじやう
)
より、
210
『
某
(
それがし
)
は
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
梅公別
(
うめこうわけの
)
命
(
みこと
)
である。
211
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
悪党
(
あくたう
)
共
(
ども
)
オーラ
山
(
さん
)
に
立
(
た
)
て
籠
(
こも
)
り、
212
よからぬ
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
すと
聞
(
き
)
き、
213
神命
(
しんめい
)
を
奉
(
ほう
)
じ、
214
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
一同
(
いちどう
)
に
改心
(
かいしん
)
を
迫
(
せま
)
るべく、
215
其
(
その
)
第一
(
だいいち
)
着手
(
ちやくしゆ
)
として
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
が
詐術
(
さじゆつ
)
の
根元
(
こんげん
)
たる
樹上
(
じゆじやう
)
の
諸燈
(
しよとう
)
を
吹
(
ふ
)
き
消
(
け
)
し、
216
大天狗
(
だいてんぐ
)
として
訓戒
(
くんかい
)
を
与
(
あた
)
へてやつたのだ。
217
何
(
ど
)
うだ、
218
斯
(
か
)
く
事
(
こと
)
の
ばれ
たる
上
(
うへ
)
はスツカリ
改心
(
かいしん
)
を
致
(
いた
)
すか、
219
是
(
これ
)
でもまだ
継続
(
けいぞく
)
して
悪事
(
あくじ
)
を
致
(
いた
)
す
覚悟
(
かくご
)
か、
220
返答
(
へんたふ
)
聞
(
き
)
かう』
221
玄真坊
(
げんしんばう
)
は
初
(
はじ
)
めて
人間
(
にんげん
)
と
知
(
し
)
り
俄
(
にはか
)
に
強
(
つよ
)
くなり、
222
樹上
(
じゆじやう
)
を
打
(
う
)
ち
仰
(
あふ
)
ぎ
乍
(
なが
)
ら、
223
玄真
(
げんしん
)
『アハヽヽヽ、
224
猪口才
(
ちよこざい
)
千万
(
せんばん
)
な
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
玉子
(
たまご
)
奴
(
め
)
、
225
いらざる
ほててんごう
を
致
(
いた
)
して
後悔
(
こうくわい
)
するな。
226
吾々
(
われわれ
)
には
三千
(
さんぜん
)
の
部下
(
ぶか
)
がある。
227
汝
(
なんぢ
)
の
如
(
ごと
)
き
木
(
こ
)
ツ
端
(
ぱ
)
武者
(
むしや
)
、
228
仮令
(
たとへ
)
鬼神
(
きじん
)
を
挫
(
ひし
)
ぐ
勇
(
ゆう
)
あるも
寡
(
くわ
)
をもつて
衆
(
しう
)
に
敵
(
てき
)
することは
出来
(
でき
)
まい。
229
要
(
い
)
らざる
せつかい
を
止
(
や
)
めて
樹上
(
じゆじやう
)
を
下
(
くだ
)
り、
230
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
吾
(
わが
)
前
(
まへ
)
に
謝罪
(
しやざい
)
を
致
(
いた
)
せ』
231
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
にシーゴーは
縄梯子
(
なはばしご
)
の
縛
(
くくり
)
を
解
(
と
)
いたから
耐
(
たま
)
らない。
232
梅公
(
うめこう
)
、
233
花香
(
はなか
)
の
両人
(
りやうにん
)
は
急転
(
きふてん
)
直下
(
ちよくか
)
の
勢
(
いきほひ
)
で、
234
ズルズルズルドスンと
樹下
(
じゆか
)
に
落
(
お
)
ちて
来
(
き
)
た。
235
ヨリコ
姫
(
ひめ
)
は
手早
(
てばや
)
く
女
(
をんな
)
を
引
(
ひ
)
つ
捉
(
とら
)
へ
後手
(
うしろで
)
に
縛
(
しば
)
り
上
(
あ
)
げた。
236
梅公
(
うめこう
)
は
聊
(
いささ
)
か
腰
(
こし
)
を
打
(
う
)
つて
気
(
き
)
が
遠
(
とほ
)
くなつて
居
(
ゐ
)
た
間
(
ま
)
にシーゴーの
部下
(
ぶか
)
のパンクに
高手
(
たかて
)
小手
(
こて
)
に
縛
(
しば
)
られ、
237
サンダー、
238
スガコの
幽閉
(
いうへい
)
してある
石室
(
いしむろ
)
の
中
(
なか
)
に
男女
(
だんぢよ
)
共
(
とも
)
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
まれて
了
(
しま
)
つた。
239
ヨリコ『ホヽヽヽ、
240
いらざる
構
(
かま
)
へ
立
(
だ
)
てをして
縛
(
いましめ
)
につくとは
情
(
なさけ
)
ない
奴
(
やつ
)
だなア。
241
飛
(
と
)
んで
火
(
ひ
)
に
入
(
い
)
る
夏
(
なつ
)
の
虫
(
むし
)
。
242
ヨリコ
女帝
(
によてい
)
の
威勢
(
ゐせい
)
には
如何
(
いか
)
なる
者
(
もの
)
も
敵
(
かな
)
うまいがな。
243
これ、
244
玄真
(
げんしん
)
、
245
シーゴー
確
(
しつか
)
りなさらないのか。
246
こんな
事
(
こと
)
で
肝
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
すやうでは、
247
バルガン
城
(
じやう
)
を
占領
(
せんりやう
)
し、
248
次
(
つ
)
いで
印度
(
いんど
)
七千
(
しちせん
)
余国
(
よこく
)
を
掌握
(
しやうあく
)
するやうな
事
(
こと
)
は
到底
(
たうてい
)
出来
(
でき
)
ますまいぞや』
249
玄真
(
げんしん
)
『
私
(
わたし
)
も
人間
(
にんげん
)
と
知
(
し
)
れば
別
(
べつ
)
に
驚
(
おどろ
)
かないのです。
250
人間
(
にんげん
)
なれば
仮令
(
たとへ
)
何万
(
なんまん
)
押
(
お
)
し
寄
(
よ
)
せて
来
(
く
)
るともビクとも
致
(
いた
)
さぬ
某
(
それがし
)
ですが、
251
中有界
(
ちううかい
)
の
魔神
(
まがみ
)
と
聞
(
き
)
いては
一寸
(
ちよつと
)
面
(
めん
)
喰
(
く
)
らはないでは
居
(
ゐ
)
られませぬ。
252
併
(
しか
)
し
人間
(
にんげん
)
だと
云
(
い
)
うたつて
此
(
この
)
山
(
やま
)
は
天狗
(
てんぐ
)
の
巣窟
(
さうくつ
)
と
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
ますから、
253
本当
(
ほんたう
)
の
天狗
(
てんぐ
)
が
来
(
きた
)
ら
困
(
こま
)
るでせう。
254
其
(
その
)
時
(
とき
)
の
用意
(
ようい
)
を
今
(
いま
)
から
講究
(
かうきう
)
しておかねばなりますまい』
255
ヨリコ『これ
玄真坊
(
げんしんばう
)
、
256
何
(
なに
)
を
呆
(
ほう
)
けて
居
(
ゐ
)
るのだ。
257
仮令
(
たとへ
)
中有界
(
ちううかい
)
の
魔
(
ま
)
であらうが、
258
天界
(
てんかい
)
の
鬼神
(
きじん
)
であらうと、
259
地獄
(
ぢごく
)
の
鬼
(
おに
)
であらうと、
260
獅子
(
しし
)
、
261
虎
(
とら
)
、
262
熊
(
くま
)
、
263
大蛇
(
をろち
)
であらうが、
264
万物
(
ばんぶつ
)
の
霊長
(
れいちやう
)
たる
人間
(
にんげん
)
と
生
(
うま
)
れて
何
(
なに
)
怖
(
おそ
)
るべき
事
(
こと
)
があらうぞ。
265
人間
(
にんげん
)
は
万有
(
ばんいう
)
を
支配
(
しはい
)
するの
権能
(
けんのう
)
を
神
(
かみ
)
から
与
(
あた
)
へられて
居
(
を
)
るのだ。
266
些
(
ちつ
)
と
確
(
しつか
)
りしなさい』
267
玄真
(
げんしん
)
『ハイハイ
確
(
しつか
)
り
致
(
いた
)
します。
268
何分
(
なにぶん
)
宜敷
(
よろし
)
うお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まをし
)
ます。
269
到底
(
たうてい
)
かふ
云
(
い
)
ふ
時
(
とき
)
には
貴女
(
あなた
)
でなければ
解決
(
かいけつ
)
がつきませぬ』
270
ヨリコ『ホヽヽヽ、
271
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
様
(
さま
)
でも
真実
(
ほんま
)
ものの
天狗
(
てんぐ
)
には
敵
(
かな
)
ひませぬかな。
272
これシーゴー
殿
(
どの
)
、
273
年
(
とし
)
にも
似合
(
にあは
)
ぬ、
274
お
前
(
まへ
)
も
随分
(
ずいぶん
)
狼狽
(
うろた
)
へましたね。
275
些
(
ち
)
と
恥
(
はぢ
)
をお
知
(
し
)
りなさい。
276
何
(
なん
)
ですか、
277
高
(
たか
)
が
男
(
をとこ
)
の
一匹
(
いつぴき
)
や
二匹
(
にひき
)
に
肝
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
して、
278
こんな
事
(
こと
)
でどうして
今後
(
こんご
)
の
大望
(
たいまう
)
が
成就
(
じやうじゆ
)
致
(
いた
)
しますか』
279
シーゴー『ハイ、
280
面目
(
めんぼく
)
次第
(
しだい
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬ。
281
何分
(
なにぶん
)
突然
(
とつぜん
)
の
事
(
こと
)
と
云
(
い
)
ひ、
282
消
(
き
)
ゆべき
筈
(
はず
)
の
無
(
な
)
い
火
(
ひ
)
が
消
(
き
)
え、
283
大木
(
たいぼく
)
の
上
(
うへ
)
から
不思議
(
ふしぎ
)
な
声
(
こゑ
)
がいたすものだから
一寸
(
ちよつと
)
面喰
(
めんくら
)
ひましたので、
284
日頃
(
ひごろ
)
沈着
(
おちつき
)
のある
私
(
わたくし
)
も、
285
玄真坊
(
げんしんばう
)
の
狼狽病
(
らうばいびやう
)
が
伝染
(
でんせん
)
致
(
いた
)
しまして、
286
つい
気後
(
きおく
)
れ
病
(
びやう
)
が
突発
(
とつぱつ
)
致
(
いた
)
しました。
287
女帝
(
によてい
)
様
(
さま
)
の
懇切
(
こんせつ
)
周到
(
しうたう
)
なる
外科
(
げくわ
)
手術
(
しゆじゆつ
)
によつて、
288
やつと
全快
(
ぜんくわい
)
したやうで
厶
(
ござ
)
います』
289
ヨリコ『ホヽヽヽ、
290
まア
全快
(
ぜんくわい
)
が
出来
(
でき
)
て
結構
(
けつこう
)
々々
(
けつこう
)
、
291
薬礼
(
やくれい
)
は
幾何
(
いくら
)
出
(
だ
)
しますかな』
292
シーゴー『ハイ、
293
先
(
ま
)
づさうですな、
294
薬
(
やく
)
、
295
窮戦
(
きうせん
)
窮百
(
きうひやく
)
九重
(
きうぢう
)
九怨
(
きうゑん
)
許
(
ばか
)
り
差上
(
さしあ
)
げませう。
296
アハヽヽ』
297
ヨリコ『
九死
(
きうし
)
一生
(
いつしやう
)
の
場合
(
ばあひ
)
を
女帝
(
によてい
)
さまに
救
(
すく
)
はれたのだからな、
298
其
(
その
)
位
(
くらゐ
)
はお
出
(
だ
)
しになつてもよろしからう、
299
ホヽヽヽ。
300
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らあの
怪
(
あや
)
しき
男
(
をとこ
)
と
女
(
をんな
)
をよく
取調
(
とりしら
)
べて
後
(
のち
)
程
(
ほど
)
報告
(
はうこく
)
して
貰
(
もら
)
ひたい。
301
私
(
わたし
)
はこれから
居間
(
ゐま
)
に
帰
(
かへ
)
つて
暫
(
しばら
)
く
休息
(
きうそく
)
するから』
302
シーゴー『ハイ、
303
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
304
玄真坊
(
げんしんばう
)
と
相談
(
さうだん
)
致
(
いた
)
し、
305
篤
(
とつ
)
くと
実否
(
じつぴ
)
を
調
(
しら
)
べ、
306
改
(
あらた
)
めて
御
(
ご
)
報告
(
ほうこく
)
申上
(
まをしあ
)
げます。
307
どうか
明朝
(
みやうてう
)
迄
(
まで
)
御
(
ご
)
猶予
(
いうよ
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
308
ヨリコはニコニコし
乍
(
なが
)
ら
打
(
う
)
ち
諾
(
うなづ
)
き、
309
足早
(
あしばや
)
に
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
310
(
大正一三・一二・一七
旧一一・二一
於祥雲閣
加藤明子
録)
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