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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第66巻(巳の巻)
序文
総説
第1篇 月の高原
第1章 暁の空
第2章 祖先の恵
第3章 酒浮気
第4章 里庄の悩
第5章 愁雲退散
第6章 神軍義兵
第2篇 容怪変化
第7章 女白浪
第8章 神乎魔乎
第9章 谷底の宴
第10章 八百長劇
第11章 亞魔の河
第3篇 異燭獣虚
第12章 恋の暗路
第13章 恋の懸嘴
第14章 相生松風
第15章 喰ひ違ひ
第4篇 恋連愛曖
第16章 恋の夢路
第17章 縁馬の別
第18章 魔神の囁
第19章 女の度胸
第20章 真鬼姉妹
余白歌
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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第66巻(巳の巻)
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<<< 恋の懸嘴
(B)
(N)
喰ひ違ひ >>>
第一四章
相生
(
あひおひ
)
松風
(
まつかぜ
)
〔一六九六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第66巻 山河草木 巳の巻
篇:
第3篇 異燭獣虚
よみ(新仮名遣い):
いしょくじゅうきょ
章:
第14章 相生松風
よみ(新仮名遣い):
あいおいまつかぜ
通し章番号:
1696
口述日:
1924(大正13)年12月17日(旧11月21日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年6月29日
概要:
舞台:
オーラ山の岩窟の牢獄
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6614
愛善世界社版:
191頁
八幡書店版:
第11輯 801頁
修補版:
校定版:
193頁
普及版:
67頁
初版:
ページ備考:
001
サンダー、
002
スガコの
両人
(
りやうにん
)
は
玄真坊
(
げんしんばう
)
の
要求
(
えうきう
)
を
何
(
なん
)
とか
彼
(
か
)
とか
云
(
い
)
つて、
003
ハツキリと
承諾
(
しようだく
)
せぬので、
004
玄真坊
(
げんしんばう
)
も
稍
(
やや
)
自暴自棄
(
やけ
)
気味
(
ぎみ
)
になり、
005
モウ
此
(
この
)
上
(
うへ
)
は
食
(
しよく
)
責
(
ぜ
)
めに
会
(
あ
)
はして、
006
往生
(
わうじやう
)
させ、
0061
吾
(
わが
)
意志
(
いし
)
に
従
(
したが
)
はしめむと
厳重
(
げんぢう
)
な
錠前
(
ぢやうまへ
)
をおろし、
007
両人
(
りやうにん
)
を
取
(
とり
)
込
(
こ
)
めておいた。
008
二人
(
ふたり
)
は
相思
(
さうし
)
の
間柄
(
あひだがら
)
とて、
009
斯
(
か
)
かる
岩窟
(
がんくつ
)
に
食物
(
しよくもつ
)
も
与
(
あた
)
へられず
閉
(
と
)
ぢ
込
(
こ
)
められても
余
(
あま
)
り
苦
(
くる
)
しいとは
思
(
おも
)
はず、
010
恋
(
こひ
)
しき
人
(
ひと
)
に
会
(
あ
)
はれたのをば
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
楽
(
たの
)
しみとして、
011
いろいろの
話
(
はなし
)
を
交換
(
かうくわん
)
してゐた。
012
スガコ『サンダーさま、
013
貴郎
(
あなた
)
は
何
(
ど
)
うして
又
(
また
)
斯様
(
かやう
)
な
所
(
ところ
)
へ
捕
(
とら
)
はれてお
出
(
い
)
でになりましたの』
014
サンダー『お
前
(
まへ
)
の
行方
(
ゆくへ
)
が
分
(
わか
)
らなくなつたものだから、
015
それが
心配
(
しんぱい
)
になり、
016
一
(
いち
)
時
(
じ
)
は
憂欝症
(
いううつしやう
)
に
陥
(
おちい
)
り、
017
自分
(
じぶん
)
も
今度
(
こんど
)
は
到底
(
たうてい
)
命
(
いのち
)
はないだらうと
思
(
おも
)
つた
位
(
くらゐ
)
苦
(
くるし
)
んだのです。
018
医者
(
いしや
)
は
到底
(
たうてい
)
駄目
(
だめ
)
だといふなり、
019
両親
(
りやうしん
)
は
心配
(
しんぱい
)
するなり、
020
能
(
よ
)
く
能
(
よ
)
く
其方
(
そなた
)
とは
縁
(
えん
)
のないものだと
諦
(
あきら
)
め
乍
(
なが
)
ら、
021
どうしても
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
れぬ
恋
(
こひ
)
の
暗
(
やみ
)
に
包
(
つつ
)
まれて、
022
日夜
(
にちや
)
煩悶
(
はんもん
)
苦悩
(
くなう
)
をつづけて
居
(
を
)
りました。
023
然
(
しか
)
るにオーラ
山
(
さん
)
の
修験者
(
しゆげんじや
)
だとか
云
(
い
)
つて、
024
白髪
(
はくはつ
)
異様
(
いやう
)
の
老人
(
らうじん
)
が
吾
(
わが
)
門前
(
もんぜん
)
を
通
(
とほ
)
り、
025
いろいろの
効能書
(
かうのうがき
)
を
並
(
なら
)
べ
立
(
た
)
てたものだから、
026
一
(
いち
)
時
(
じ
)
は
怪
(
あや
)
しみもしたが、
027
何分
(
なにぶん
)
恋
(
こひ
)
に
心
(
こころ
)
を
奪
(
うば
)
はれた
弱味
(
よわみ
)
で、
028
神徳
(
しんとく
)
に
仍
(
よ
)
つて
其方
(
そなた
)
の
所在
(
ありか
)
を
知
(
し
)
らして
貰
(
もら
)
はむと
両親
(
りやうしん
)
の
目
(
め
)
を
忍
(
しの
)
び、
029
夜
(
よる
)
の
路
(
みち
)
をやつて
来
(
き
)
た
所
(
ところ
)
、
030
玄真坊
(
げんしんばう
)
の
使
(
つか
)
つてゐる
手下
(
てした
)
の
小盗人
(
こぬすと
)
共
(
ども
)
とみえ、
031
自分
(
じぶん
)
を
巧
(
うま
)
く
担
(
かつ
)
いで、
032
此
(
この
)
岩窟
(
がんくつ
)
に
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
たのですよ。
033
併
(
しか
)
し
今日
(
けふ
)
は
恋
(
こひ
)
しい
其方
(
そなた
)
に
会
(
あ
)
うて、
034
何
(
なん
)
とも
知
(
し
)
れぬ
喜
(
よろこ
)
びです。
035
最早
(
もはや
)
此処
(
ここ
)
で
私
(
わたし
)
は
死
(
し
)
んでも
満足
(
まんぞく
)
です』
036
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
涙
(
なみだ
)
を
袖
(
そで
)
に
拭
(
ぬぐ
)
ふ。
037
スガコ『
妾
(
わらは
)
のやうな
者
(
もの
)
でも、
038
ようそこ
迄
(
まで
)
思
(
おも
)
つて
下
(
くだ
)
さいました。
039
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
040
貴郎
(
あなた
)
はトルマン
国
(
ごく
)
切
(
き
)
つての
美男子
(
びだんし
)
、
041
両親
(
りやうしん
)
の
許嫁
(
いひなづけ
)
とは
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
042
到底
(
たうてい
)
妾
(
わらは
)
の
如
(
ごと
)
き
者
(
もの
)
を、
043
まさかの
時
(
とき
)
には
相手
(
あひて
)
にしては
下
(
くだ
)
さるまいと
思
(
おも
)
ひまして、
044
平素
(
へいそ
)
から
諦
(
あきら
)
めて
居
(
を
)
りました。
045
それだけ
貴郎
(
あなた
)
に
篤
(
あつ
)
いお
恵
(
めぐみ
)
があるとは
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らず、
046
時々
(
ときどき
)
貴郎
(
あなた
)
をお
怨
(
うら
)
み
申
(
まを
)
して
暮
(
くら
)
して
来
(
き
)
ました
妾
(
わらは
)
の
罪
(
つみ
)
、
047
どうぞ
御
(
お
)
赦
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
048
サンダー『
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
相思
(
さうし
)
の
男女
(
だんぢよ
)
が、
049
かやうな
所
(
ところ
)
で
会
(
あ
)
はうとは、
050
実
(
じつ
)
に
奇縁
(
きえん
)
です。
051
玄真坊
(
げんしんばう
)
の
云
(
い
)
つたのには、
052
両人
(
りやうにん
)
共
(
とも
)
自分
(
じぶん
)
のいふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
かねば
食責
(
しよくぜめ
)
にするとの
事
(
こと
)
、
053
仮令
(
たとへ
)
食責
(
しよくぜめ
)
に
合
(
あ
)
うても、
054
恋
(
こひ
)
しい
其方
(
そなた
)
に
会
(
あ
)
うた
以上
(
いじやう
)
は、
055
互
(
たがひ
)
に
手
(
て
)
を
取
(
と
)
り、
056
真
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
のまします
天国
(
てんごく
)
の
旅行
(
りよかう
)
を
神
(
かみ
)
に
祈
(
いの
)
りませう。
057
最早
(
もはや
)
それより
吾々
(
われわれ
)
は
開
(
ひら
)
くべき
道
(
みち
)
はありませぬからなア』
058
スガコ『
御尤
(
ごもつと
)
もで
厶
(
ござ
)
います。
059
三途
(
せうづ
)
の
川
(
かは
)
も
死出
(
しで
)
の
山
(
やま
)
も、
060
天
(
あめ
)
の
八衢
(
やちまた
)
も、
061
貴郎
(
あなた
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
参
(
まゐ
)
りますならば、
062
何
(
なん
)
の
苦
(
くるし
)
みも
厶
(
ござ
)
いませぬ。
063
どうか
一時
(
いつとき
)
も
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
去
(
さ
)
りたいもので
厶
(
ござ
)
います。
064
あゝ
一人
(
ひとり
)
の
父上
(
ちちうへ
)
を
後
(
あと
)
に
遺
(
のこ
)
し
先立
(
さきだ
)
ちまする
不孝
(
ふかう
)
の
罪
(
つみ
)
、
065
どうぞ
赦
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さいませ』
066
と
死
(
し
)
ぬ
覚悟
(
かくご
)
を
決
(
き
)
めたスガコはホロリと
涙
(
なみだ
)
を
膝
(
ひざ
)
の
上
(
うへ
)
に
落
(
おと
)
した。
067
サンダー『
斯
(
か
)
うなれば、
068
互
(
たがひ
)
に
覚悟
(
かくご
)
を
致
(
いた
)
しませう。
069
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
別
(
わか
)
れに
臨
(
のぞ
)
み、
070
歌
(
うた
)
でも
詠
(
よ
)
んで
潔
(
いさぎよ
)
く
死期
(
しき
)
を
待
(
ま
)
ちませう』
071
スガコ『ハイ、
072
現世
(
このよ
)
の
名残
(
なごり
)
に
妾
(
わらは
)
も
歌
(
うた
)
を
詠
(
よ
)
まして
頂
(
いただ
)
きませう、
073
先
(
ま
)
づ
貴郎
(
あなた
)
からお
聞
(
き
)
かせ
下
(
くだ
)
さいませ』
074
サンダー『
天
(
てん
)
は
蒼々
(
さうさう
)
として
高
(
たか
)
し
075
地
(
ち
)
は
漠々
(
ばくばく
)
として
限
(
かぎり
)
なく
広
(
ひろ
)
し
076
あゝ
吾
(
われ
)
は
077
天地
(
てんち
)
の
御子
(
みこ
)
として
078
明暗
(
めいあん
)
ゆき
交
(
か
)
ふ
079
うつし
世
(
よ
)
の
人
(
ひと
)
と
生
(
うま
)
れ
来
(
き
)
ぬ
080
幸
(
かう
)
か
不幸
(
ふかう
)
か
081
里庄
(
りしやう
)
の
家
(
いへ
)
の
子
(
こ
)
となり
082
年
(
とし
)
若
(
わか
)
くして
未
(
いま
)
だ
世情
(
せじやう
)
に
通
(
つう
)
ぜず
083
艱苦
(
かんく
)
の
味
(
あぢ
)
はひを
知
(
し
)
らず
084
漸
(
やうや
)
く
十八
(
じふはつ
)
才
(
さい
)
の
春
(
はる
)
を
迎
(
むか
)
へて
085
恋海
(
れんかい
)
の
浪
(
なみ
)
に
漂
(
ただよ
)
ひ
086
激浪
(
げきらう
)
怒濤
(
どたう
)
に
呑
(
の
)
まれ
087
舟
(
ふね
)
将
(
まさ
)
に
覆
(
くつが
)
へらむとす
088
あゝ
如何
(
いか
)
にせむ
089
あが
恋
(
こ
)
ふる
090
玉
(
たま
)
の
舟
(
ふね
)
の
091
渦
(
うづ
)
巻
(
ま
)
く
波
(
なみ
)
に
翻弄
(
ほんろう
)
されて
092
今
(
いま
)
は
何処
(
いづく
)
の
空
(
そら
)
に
彷徨
(
さまよ
)
ふか
093
探
(
さぐ
)
り
当
(
あ
)
てむと
朝夕
(
あさゆふ
)
に
094
天
(
てん
)
に
訴
(
うつた
)
へ
地
(
ち
)
に
哭
(
こく
)
し
095
心
(
こころ
)
は
千々
(
ちぢ
)
にかき
乱
(
みだ
)
れて
096
身体
(
しんたい
)
日
(
ひ
)
に
夜
(
よ
)
に
細
(
ほそ
)
りゆく
097
恋
(
こひ
)
に
悩
(
なや
)
みし
心
(
こころ
)
の
苦
(
くる
)
しさ
098
いかに
艱苦
(
かんく
)
の
世
(
よ
)
とはいへ
099
吾
(
わが
)
身
(
み
)
にふりかかりし
100
恋
(
こひ
)
のなやみの
101
激
(
はげ
)
しきには
及
(
およ
)
ばむや
102
あゝ
如何
(
いか
)
にせむ
103
なれが
命
(
みこと
)
の
行方
(
ゆくへ
)
をと
104
空
(
そら
)
行
(
ゆ
)
く
雲
(
くも
)
に
心
(
こころ
)
を
移
(
うつ
)
し
105
或
(
あるひ
)
は
夕
(
ゆふべ
)
の
虫
(
むし
)
の
音
(
ね
)
に
106
汝
(
なれ
)
が
面影
(
おもかげ
)
を
浮
(
うか
)
び
出
(
い
)
でては
107
夜
(
よ
)
も
夜
(
よる
)
ならず
昼
(
ひる
)
も
昼
(
ひる
)
ならず
108
常夜
(
とこよ
)
の
暗
(
やみ
)
に
迷
(
まよ
)
ふが
如
(
ごと
)
し
109
むしろ
運
(
うん
)
を
天
(
てん
)
に
任
(
まか
)
し
110
味気
(
あぢき
)
なき
浮世
(
うきよ
)
を
去
(
さ
)
つて
111
天国
(
てんごく
)
に
昇
(
のぼ
)
り
112
永久
(
とこしへ
)
の
生命
(
いのち
)
を
保
(
たも
)
たむやと
113
静
(
しづか
)
に
門
(
かど
)
を
立
(
たち
)
出
(
い
)
でて
114
野辺
(
のべ
)
の
景色
(
けしき
)
を
眺
(
なが
)
むる
折
(
をり
)
しも
115
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
る
116
白髪
(
はくはつ
)
異様
(
いやう
)
の
修験者
(
しゆげんじや
)
117
われに
向
(
むか
)
つて
宣
(
の
)
らす
様
(
やう
)
118
オーラの
山
(
やま
)
の
聖場
(
せいぢやう
)
に
119
神力
(
しんりき
)
無双
(
むさう
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
120
現
(
あら
)
はれ
玉
(
たま
)
ふと
教
(
をし
)
へしゆ
121
汝
(
な
)
れを
思
(
おも
)
ふの
余
(
あま
)
り
122
若
(
も
)
しやと
一縷
(
いちる
)
の
望
(
のぞ
)
みを
起
(
おこ
)
し
123
病
(
やまひ
)
にやつれし
身
(
み
)
をも
124
恋
(
こひ
)
の
力
(
ちから
)
に
支
(
ささ
)
へつつ
125
漸
(
やうや
)
く
登
(
のぼ
)
り
岩窟
(
いはやど
)
に
126
つくづく
思案
(
しあん
)
の
折
(
をり
)
もあれ
127
心
(
こころ
)
汚
(
きたな
)
き
玄真坊
(
げんしんばう
)
が
128
恋
(
こひ
)
の
擒
(
とりこ
)
となり
果
(
は
)
てて
129
身動
(
みうご
)
きならぬ
破目
(
はめ
)
となり
130
言葉
(
ことば
)
を
左右
(
さいう
)
に
托
(
たく
)
しつつ
131
一日
(
ひとひ
)
々々
(
ひとひ
)
と
今日
(
けふ
)
迄
(
まで
)
も
132
送
(
おく
)
り
来
(
きた
)
りし
果敢
(
はか
)
なさよ
133
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
134
梵天
(
ぼんてん
)
帝釈
(
たいしやく
)
自在天
(
じざいてん
)
135
何卒
(
なにとぞ
)
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
窮状
(
きうじやう
)
を
136
憐
(
あはれ
)
み
玉
(
たま
)
ひて
逸早
(
いちはや
)
く
137
二人
(
ふたり
)
の
身
(
み
)
をば
明
(
あか
)
るみに
138
救
(
すく
)
はせ
玉
(
たま
)
へと
139
願
(
ね
)
ぎまつる。
140
うつし
世
(
よ
)
をあとに
見
(
み
)
すてて
久方
(
ひさかた
)
の
141
天津
(
あまつ
)
御国
(
みくに
)
に
吾
(
われ
)
は
進
(
すす
)
まむ。
142
大神
(
おほかみ
)
の
御許
(
みゆる
)
しうけてわれは
今
(
いま
)
143
スガコと
共
(
とも
)
に
天国
(
みくに
)
に
行
(
ゆ
)
かむ。
144
村肝
(
むらきも
)
の
心
(
こころ
)
の
合
(
あ
)
ひし
二人
(
ふたり
)
連
(
づ
)
れ
145
うべなひ
玉
(
たま
)
はむ
天津
(
あまつ
)
御神
(
みかみ
)
も。
146
醜神
(
しこがみ
)
の
魔手
(
ましゆ
)
を
遁
(
のが
)
れて
天津国
(
あまつくに
)
147
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く
身
(
み
)
ぞ
楽
(
たの
)
しかるらむ。
148
われ
行
(
ゆ
)
かば
嘸
(
さぞ
)
醜神
(
しこがみ
)
は
驚
(
おどろ
)
きて
149
足
(
あ
)
がきなすらむ
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
に。
150
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
命
(
いのち
)
の
糸
(
いと
)
も
刻々
(
こくこく
)
に
151
切
(
き
)
れなむとす
神国
(
みくに
)
待
(
ま
)
たるる』
152
スガコは
声低
(
こゑびく
)
に
歌
(
うた
)
ふ。
153
スガコ『
天津空
(
あまつそら
)
よりいと
高
(
たか
)
き
154
神
(
かみ
)
の
御恵
(
みめぐみ
)
父
(
ちち
)
の
恩
(
おん
)
155
海
(
うみ
)
より
深
(
ふか
)
き
母
(
はは
)
の
恩
(
おん
)
156
父
(
ちち
)
と
母
(
はは
)
とにはぐくまれ
157
二八
(
にはち
)
の
春
(
はる
)
の
今日
(
けふ
)
迄
(
まで
)
も
158
月
(
つき
)
よ
花
(
はな
)
よと
育
(
そだ
)
てられ
159
足
(
た
)
らはぬ
事
(
こと
)
のなき
迄
(
まで
)
も
160
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
幸
(
さち
)
を
身
(
み
)
に
受
(
う
)
けて
161
月
(
つき
)
より
清
(
きよ
)
き
御姿
(
みすがた
)
の
162
サンダーの
君
(
きみ
)
を
背
(
せ
)
となして
163
タライの
村
(
むら
)
の
花
(
はな
)
となり
164
月
(
つき
)
ともなりて
世
(
よ
)
の
人
(
ひと
)
に
165
羨
(
うらや
)
まれつつ
天国
(
てんごく
)
の
166
楽
(
たの
)
しき
御代
(
みよ
)
を
送
(
おく
)
らむと
167
思
(
おも
)
ひ
居
(
ゐ
)
たるも
水
(
みづ
)
の
泡
(
あわ
)
168
醜
(
しこ
)
の
嵐
(
あらし
)
に
吹
(
ふ
)
かれつつ
169
身
(
み
)
は
常暗
(
とこやみ
)
の
巌
(
いはほ
)
の
中
(
なか
)
170
悪神
(
あくがみ
)
共
(
ども
)
に
囚
(
とら
)
はれて
171
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
厭
(
いや
)
らしき
172
醜
(
しこ
)
の
司
(
つかさ
)
の
恋
(
こひ
)
の
鞭
(
むち
)
173
受
(
う
)
くる
度
(
たび
)
毎
(
ごと
)
身体
(
からたま
)
も
174
吾
(
わが
)
魂
(
たましひ
)
も
千万
(
ちよろづ
)
に
175
砕
(
くだ
)
くる
許
(
ばか
)
りの
苦
(
くる
)
しさよ
176
如何
(
いか
)
なる
宿世
(
すぐせ
)
の
罪業
(
ざいごふ
)
が
177
吾
(
わが
)
身
(
み
)
にめぐり
来
(
きた
)
りしか
178
仰
(
あふ
)
いで
天
(
てん
)
に
叫
(
さけ
)
べ
共
(
ども
)
179
天
(
てん
)
は
答
(
こた
)
へず
地
(
ち
)
に
伏
(
ふ
)
して
180
歎
(
なげ
)
けど
地
(
ち
)
には
声
(
こゑ
)
もなし
181
オーラの
山
(
やま
)
の
山颪
(
やまおろし
)
182
時
(
とき
)
じく
吹
(
ふ
)
けど
吾
(
わが
)
魂
(
たま
)
は
183
父
(
ちち
)
の
御側
(
みそば
)
に
通路
(
かよひぢ
)
の
184
ひたと
断
(
た
)
たれし
悩
(
なや
)
ましさ
185
せめては
父
(
ちち
)
の
御
(
おん
)
夢
(
ゆめ
)
に
186
吾
(
わが
)
魂
(
たましひ
)
の
苦
(
くるし
)
みを
187
告
(
つ
)
げさせ
玉
(
たま
)
へと
祈
(
いの
)
れ
共
(
ども
)
188
祈
(
いの
)
りし
甲斐
(
かひ
)
やあら
悲
(
かな
)
し
189
朝夕
(
あさゆふ
)
幾
(
いく
)
つ
重
(
かさ
)
ねつつ
190
待
(
ま
)
てど
暮
(
くら
)
せど
音沙汰
(
おとさた
)
も
191
只
(
ただ
)
泣
(
な
)
く
声
(
こゑ
)
は
猿
(
ましら
)
のみ
192
木魂
(
こだま
)
に
響
(
ひび
)
く
鳥
(
とり
)
の
声
(
こゑ
)
193
あゝ
是非
(
ぜひ
)
もなや
是非
(
ぜひ
)
もなや
194
一層
(
いつそ
)
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
暇
(
いとま
)
乞
(
ご
)
ひ
195
霊
(
みたま
)
となりて
父上
(
ちちうへ
)
や
196
恋
(
こひ
)
しき
汝
(
なれ
)
の
御
(
おん
)
側
(
そば
)
に
197
通
(
かよ
)
はむものと
思
(
おも
)
ふ
折
(
をり
)
198
不思議
(
ふしぎ
)
や
恋
(
こひ
)
しき
汝
(
なれ
)
の
声
(
こゑ
)
199
巌
(
いはほ
)
の
戸口
(
とぐち
)
に
耳
(
みみ
)
を
寄
(
よ
)
せ
200
様子
(
やうす
)
洩
(
も
)
れなく
聞
(
き
)
く
折
(
をり
)
もあれ
201
夢
(
ゆめ
)
か
現
(
うつつ
)
か
幻
(
まぼろし
)
か
202
恋
(
こひ
)
しき
人
(
ひと
)
の
声
(
こゑ
)
すなり
203
天
(
てん
)
をば
拝
(
はい
)
し
地
(
ち
)
を
拝
(
はい
)
し
204
喜
(
よろこ
)
ぶ
間
(
ま
)
もなく
岩
(
いは
)
の
戸
(
と
)
を
205
開
(
ひら
)
いて
入
(
い
)
り
来
(
く
)
る
玄真坊
(
げんしんばう
)
206
恋
(
こひ
)
しき
人
(
ひと
)
の
手
(
て
)
を
取
(
と
)
つて
207
これの
岩窟
(
いはや
)
に
投
(
なげ
)
込
(
こ
)
みつ
208
憎々
(
にくにく
)
しげに
睨
(
にら
)
みつけ
209
立
(
たち
)
去
(
さ
)
りしこそ
忌
(
いま
)
はしき
210
あゝさり
乍
(
なが
)
らさり
乍
(
なが
)
ら
211
こがれ
慕
(
した
)
ひし
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
の
212
気高
(
けだか
)
き
姿
(
すがた
)
目
(
ま
)
のあたり
213
拝
(
をが
)
みし
事
(
こと
)
の
嬉
(
うれ
)
しさよ
214
仮令
(
たとへ
)
飢死
(
うゑじに
)
なすとても
215
高天原
(
たかあまはら
)
に
昇
(
のぼ
)
りなば
216
霊
(
みたま
)
の
糧
(
かて
)
は
沢々
(
さはさは
)
に
217
神
(
かみ
)
の
御国
(
みくに
)
の
御
(
おん
)
倉
(
くら
)
に
218
蓄
(
たくは
)
へありて
汝
(
な
)
とあれに
219
与
(
あた
)
へ
給
(
たま
)
はむ
厳
(
いづ
)
の
神
(
かみ
)
220
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
221
慈愛
(
じあい
)
に
充
(
み
)
つる
顔容
(
かんばせ
)
を
222
今
(
いま
)
目
(
ま
)
のあたりたしたしに
223
拝
(
をが
)
みまつりし
心地
(
ここち
)
する
224
サンダーの
君
(
きみ
)
よ
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
よ
225
仮令
(
たとへ
)
如何
(
いか
)
なる
事
(
こと
)
あるも
226
互
(
たがひ
)
に
心
(
こころ
)
を
結
(
むす
)
びつけ
227
後
(
のち
)
の
命
(
いのち
)
を
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
228
縁
(
えにし
)
の
糸
(
いと
)
にしかと
結
(
むす
)
び
229
いづくの
空
(
そら
)
に
至
(
いた
)
るとも
230
二人
(
ふたり
)
離
(
はな
)
れぬ
常磐木
(
ときはぎ
)
の
231
栄
(
さか
)
え
久
(
ひさ
)
しき
青松葉
(
あをまつば
)
232
おちて
枯
(
か
)
れても
二人
(
ふたり
)
連
(
づ
)
れ
233
常磐
(
ときは
)
の
契
(
ちぎり
)
今
(
いま
)
よりも
234
誓
(
ちか
)
はせ
給
(
たま
)
へ
背
(
せ
)
の
御君
(
みきみ
)
235
吾
(
わ
)
れは
汝
(
なれ
)
をば
力
(
ちから
)
とし
236
生命
(
いのち
)
となして
現世
(
うつしよ
)
や
237
幽界
(
かくりよ
)
共
(
とも
)
に
活
(
い
)
くるなり
238
汝
(
なれ
)
をば
恋
(
こ
)
ふる
吾
(
わが
)
心
(
こころ
)
239
之
(
これ
)
を
除
(
のぞ
)
きて
生命
(
せいめい
)
の
240
泉
(
いづみ
)
の
何処
(
いづこ
)
にあるものぞ
241
憐
(
あはれ
)
み
給
(
たま
)
へ
天津
(
あまつ
)
神
(
かみ
)
242
愛
(
あい
)
させ
給
(
たま
)
へ
吾
(
あが
)
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
243
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
244
御神
(
みかみ
)
に
任
(
まか
)
せ
奉
(
たてまつ
)
る。
245
恋雲
(
こひぐも
)
の
漸
(
やうや
)
くはれて
大空
(
おほぞら
)
に
246
輝
(
かがや
)
きわたるみづの
月影
(
つきかげ
)
。
247
醜神
(
しこがみ
)
の
醜
(
しこ
)
の
館
(
やかた
)
に
囚
(
とら
)
はれて
248
心
(
こころ
)
は
清
(
きよ
)
き
御空
(
みそら
)
に
遊
(
あそ
)
ぶ。
249
身体
(
からたま
)
は
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
にまかるとも
250
霊
(
みたま
)
は
広
(
ひろ
)
く
宇宙
(
うちう
)
に
遊
(
あそ
)
ぶ。
251
オーラ
山
(
やま
)
曲
(
まが
)
の
砦
(
とりで
)
に
忍
(
しの
)
び
入
(
い
)
り
252
恋
(
こひ
)
しき
人
(
ひと
)
に
只
(
ひた
)
に
会
(
あ
)
ふ
哉
(
かな
)
。
253
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
と
天国
(
みくに
)
に
行
(
ゆ
)
くは
嬉
(
うれ
)
しけれど
254
心
(
こころ
)
は
残
(
のこ
)
る
父
(
ちち
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
。
255
父
(
ちち
)
なくば
妾
(
わらは
)
も
心
(
こころ
)
痛
(
いた
)
めまじ
256
恋
(
こひ
)
の
勝利
(
しようり
)
を
得
(
え
)
たる
身
(
み
)
なれば。
257
現世
(
うつしよ
)
はよし
添
(
そ
)
へず
共
(
とも
)
天津国
(
あまつくに
)
258
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
永久
(
とは
)
に
栄
(
さか
)
えむ』
259
サンダー『
天津国
(
あまつくに
)
昇
(
のぼ
)
り
得
(
え
)
ずして
八衢
(
やちまた
)
に
260
よし
彷徨
(
さまよふ
)
も
二人
(
ふたり
)
楽
(
たの
)
しき。
261
根
(
ね
)
の
国
(
くに
)
によしおつる
共
(
とも
)
吾
(
あ
)
と
汝
(
なれ
)
と
262
二人
(
ふたり
)
なりせば
楽
(
たの
)
しかるらむ。
263
八衢
(
やちまた
)
の
関所
(
せきしよ
)
を
無事
(
ぶじ
)
に
通
(
とほ
)
りぬけ
264
恋
(
こひ
)
の
花
(
はな
)
さく
神国
(
みくに
)
に
至
(
いた
)
らむ。
265
月
(
つき
)
花
(
はな
)
に
譬
(
たと
)
ふべらなる
吾
(
あ
)
と
汝
(
なれ
)
は
266
天
(
あめ
)
八衢
(
やちまた
)
の
栄
(
さか
)
えなるらむ』
267
スガコ『
八衢
(
やちまた
)
によし
迷
(
まよ
)
ふ
共
(
とも
)
何
(
なに
)
かあらむ
268
恋
(
こひ
)
しき
汝
(
なれ
)
を
光
(
ひかり
)
と
思
(
おも
)
へば。
269
常暗
(
とこやみ
)
の
根底
(
ねそこ
)
の
国
(
くに
)
に
落
(
お
)
つる
共
(
とも
)
270
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
の
汝
(
なれ
)
としあらば。
271
月影
(
つきかげ
)
を
仰
(
あふ
)
ぎみる
度
(
たび
)
思
(
おも
)
ふ
哉
(
かな
)
272
いつも
清
(
きよ
)
けき
君
(
きみ
)
の
姿
(
すがた
)
を』
273
サンダー『
春夏
(
はるなつ
)
の
野
(
の
)
に
咲
(
さ
)
く
花
(
はな
)
を
眺
(
なが
)
めては
274
君
(
きみ
)
の
御姿
(
みすがた
)
思
(
おも
)
ひうかべつ。
275
山百合
(
やまゆり
)
の
花
(
はな
)
に
微風
(
びふう
)
の
当
(
あた
)
るさま
276
汝
(
な
)
がスタイルによくも
似
(
に
)
しかな。
277
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
のすべての
事
(
こと
)
を
打
(
うち
)
忘
(
わす
)
れ
278
只
(
ただ
)
君
(
きみ
)
のみに
心
(
こころ
)
注
(
そそ
)
ぎぬ』
279
スガコ『たらちねの
親
(
おや
)
と
親
(
おや
)
との
許嫁
(
いひなづけ
)
280
なりとし
聞
(
き
)
けどいとも
恥
(
はづ
)
かし。
281
仰
(
あふ
)
ぎ
見
(
み
)
る
高根
(
たかね
)
の
花
(
はな
)
か
大空
(
おほぞら
)
の
282
月
(
つき
)
にひとしき
君
(
きみ
)
にありせば。
283
手折
(
たを
)
られて
君
(
きみ
)
が
館
(
やかた
)
の
床
(
とこ
)
のべに
284
かをらむものと
思
(
おも
)
ひける
哉
(
かな
)
』
285
斯
(
か
)
く
両人
(
りやうにん
)
は
述懐
(
じゆつくわい
)
や
辞世
(
じせい
)
をよんで、
286
身
(
み
)
の
餓
(
う
)
ゑ
疲
(
つか
)
れを
忘
(
わす
)
れ、
287
霊
(
たま
)
を
天国
(
てんごく
)
の
楽園
(
らくゑん
)
に
馳
(
は
)
せ
居
(
ゐ
)
る
折
(
をり
)
しも、
288
ガチンと
錠前
(
ぢやうまへ
)
を
外
(
はづ
)
して、
289
悠々
(
いういう
)
と
入
(
いり
)
来
(
きた
)
りしは
二人
(
ふたり
)
の
男女
(
だんぢよ
)
が
蚰蜒
(
げぢげぢ
)
の
如
(
ごと
)
く
嫌
(
きら
)
つて
居
(
ゐ
)
た
玄真坊
(
げんしんばう
)
であつた。
290
玄真坊
(
げんしんばう
)
は
両人
(
りやうにん
)
の
痩
(
やせ
)
こけた
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て、
291
さも
愉快
(
ゆくわい
)
げに
打
(
うち
)
笑
(
ゑ
)
み
乍
(
なが
)
ら、
292
玄真
(
げんしん
)
『アハヽヽヽ、
293
オイ
何
(
ど
)
うだ
両人
(
りやうにん
)
、
294
最早
(
もはや
)
覚悟
(
かくご
)
はついたか、
295
其方
(
そなた
)
等
(
たち
)
の
生命
(
いのち
)
は、
296
此
(
この
)
玄真坊
(
げんしんばう
)
が
手
(
て
)
の
内
(
うち
)
に
握
(
にぎ
)
つてゐるのだ。
297
生命
(
いのち
)
あつての
物種
(
ものだね
)
、
298
いつ
迄
(
まで
)
も
頑固
(
ぐわんこ
)
な
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
さずに、
299
ウンと
靡
(
なび
)
いたが、
300
其方
(
そなた
)
の
身
(
み
)
の
得
(
とく
)
、
301
命
(
いのち
)
の
鍵
(
かぎ
)
、
302
返答
(
へんたふ
)
を
聞
(
き
)
かして
呉
(
く
)
れ』
303
サンダー、
304
スガコの
両人
(
りやうにん
)
は
既
(
すで
)
に
死
(
し
)
を
決
(
けつ
)
してゐたものの、
305
まだ
何処
(
どこ
)
やらに
生
(
せい
)
の
執着心
(
しふちやくしん
)
が
残
(
のこ
)
つてゐた。
306
……
何
(
なん
)
とかゴマかして
一
(
いち
)
日
(
にち
)
でも
生命
(
いのち
)
を
保
(
たも
)
ち
居
(
を
)
らば、
307
両人
(
りやうにん
)
が
此
(
この
)
岩窟
(
いはや
)
を
無事
(
ぶじ
)
に
逃
(
にげ
)
出
(
だ
)
し、
308
天下
(
てんか
)
晴
(
は
)
れて、
309
此
(
この
)
世
(
よ
)
で
添
(
そ
)
ひ
遂
(
と
)
げる
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
るであらう。
310
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ、
311
迷
(
まよ
)
ひきつた
此
(
この
)
売僧
(
まいす
)
、
312
口
(
くち
)
の
先
(
さき
)
にてゴマかしやらむ……と
期
(
き
)
せずして
両人
(
りやうにん
)
の
胸
(
むね
)
に
泛
(
うか
)
んだ。
313
サンダー『
玄真坊
(
げんしんばう
)
様
(
さま
)
、
314
妾
(
わらは
)
も
決心
(
けつしん
)
を
致
(
いた
)
しました。
315
おかげに
依
(
よ
)
りまして、
316
利害
(
りがい
)
得失
(
とくしつ
)
を
悟
(
さと
)
り
得
(
え
)
ましたから、
317
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
の
頑固
(
ぐわんこ
)
一点
(
いつてん
)
の
態度
(
たいど
)
を
更
(
あらた
)
め
318
可成的
(
なるべく
)
御意
(
ぎよい
)
に
従
(
したが
)
ひませう。
319
どうか
空腹
(
くうふく
)
に
悩
(
なや
)
んで
居
(
を
)
りますから、
320
パンをお
与
(
あた
)
へ
下
(
くだ
)
さいませ』
321
玄真坊
(
げんしんばう
)
は
此
(
この
)
言葉
(
ことば
)
に
飛立
(
とびた
)
つ
許
(
ばか
)
り
打
(
うち
)
喜
(
よろこ
)
び
乍
(
なが
)
ら、
322
ワザと
素知
(
そし
)
らぬ
渋
(
しぶ
)
り
切
(
き
)
つた
顔
(
かほ
)
して、
323
玄真
(
げんしん
)
『ウン、
324
気
(
き
)
が
付
(
つ
)
いたならば、
325
そち
共
(
ども
)
の
幸福
(
かうふく
)
だ。
326
断食
(
だんじき
)
といふものは
精神
(
せいしん
)
が
落付
(
おちつ
)
いて、
327
悟
(
さと
)
りを
開
(
ひら
)
く
第一
(
だいいち
)
の
修行
(
しゆぎやう
)
の
要訣
(
えうけつ
)
だ。
328
決
(
けつ
)
して
此
(
この
)
玄真坊
(
げんしんばう
)
は
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
両人
(
りやうにん
)
を
干
(
ほ
)
し
殺
(
ころ
)
さうと
思
(
おも
)
つて
食
(
しよく
)
を
与
(
あた
)
へないのではない。
329
断食
(
だんじき
)
の
修行
(
しうぎやう
)
をさせて、
330
誠
(
まこと
)
の
真理
(
しんり
)
を
悟
(
さと
)
らしてやりたいといふ、
331
大慈
(
だいじ
)
大悲
(
だいひ
)
の
心
(
こころ
)
より
斯
(
か
)
く
取計
(
とりはか
)
らつたのだ。
332
どうだ、
333
吾
(
わが
)
慈悲心
(
じひしん
)
が
分
(
わか
)
つたか』
334
サンダー『ハイ
確
(
たしか
)
に
分
(
わか
)
りまして
厶
(
ござ
)
います。
335
結構
(
けつこう
)
な
修行
(
しうぎやう
)
をさして
頂
(
いただ
)
きました。
336
いかにも
貴方
(
あなた
)
は
天
(
てん
)
の
選
(
えら
)
みし
救世主
(
きうせいしゆ
)
だと
悟
(
さと
)
らして
頂
(
いただ
)
きました』
337
玄真
(
げんしん
)
『アハヽヽヽ、
338
さうなくては
叶
(
かな
)
はぬ
事
(
こと
)
、
339
これこれスガコ、
340
そちは
何
(
ど
)
うだ。
341
少
(
すこ
)
し
真理
(
しんり
)
が
分
(
わか
)
つたか、
342
此
(
この
)
玄真坊
(
げんしんばう
)
が
真心
(
まごころ
)
を
悟
(
さと
)
つたか』
343
スガコ『ハイ、
344
悟
(
さと
)
らして
頂
(
いただ
)
きました』
345
玄真
(
げんしん
)
『
何
(
ど
)
う
悟
(
さと
)
つたのだ』
346
スガコ『ハイ、
347
師
(
し
)
の
君様
(
きみさま
)
の
魔心
(
まごころ
)
をスツカリ
悟
(
さと
)
らして
貰
(
もら
)
ひました』
348
玄真
(
げんしん
)
『アハヽヽヽ、
349
悟
(
さと
)
りが
開
(
ひら
)
けたならば、
350
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
は
絶対
(
ぜつたい
)
服従
(
ふくじゆう
)
するだらうな。
351
ヨモヤ
両人
(
りやうにん
)
、
352
違背
(
ゐはい
)
は
致
(
いた
)
すまいのう』
353
サンダー『どうかパンをお
与
(
あた
)
へ
下
(
くだ
)
さい。
354
最早
(
もはや
)
お
答
(
こた
)
へする
勇気
(
ゆうき
)
が
出
(
で
)
て
参
(
まゐ
)
りませぬ』
355
玄真
(
げんしん
)
『
成程
(
なるほど
)
無理
(
むり
)
もない。
356
まてまて
拙僧
(
せつそう
)
が
自
(
みづか
)
ら
飲食
(
おんじき
)
を
調理
(
てうり
)
し、
357
可愛
(
かあい
)
い
其方
(
そなた
)
等
(
たち
)
に
食
(
く
)
はしてやらう』
358
とニコニコし
乍
(
なが
)
ら、
359
戸
(
と
)
をピシヤリと
締
(
し
)
め、
360
再
(
ふたた
)
び
錠
(
ぢやう
)
をおろして
立
(
たち
)
去
(
さ
)
つた。
361
(
大正一三・一二・一七
旧一一・二一
於祥雲閣
松村真澄
録)
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