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十六神将

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題名：十六神将著者：出口王仁三郎

ページ：386 目次メモ：

概要：28歳の頃備考：タグ：データ凡例：データ最終更新日：2023-05-08 00:00:00 OBC ：B119800c083

二十八歳の頃

戸隠(とがくし)の山の彼方(あなた)にむらさきの雲棚引(たなび)きて音楽きこゆる

皆神(みなかみ)の山の清(すが)しささやさやに笙(しやう)の音(ね)流れて月冴(さ)えわたる

東北の天(てん)に一(ひと)すぢむらさきの雲の長橋(ながはし)かかりそめたり

仰ぎ見れば荘厳美麗の姫神(ひめがみ)は十六(じふろく)神将(しんしやう)従へ来(き)たらす

神将をしたがへ雲の架橋(かけはし)を悠悠(いういう)わたらす女神のかしこさ

大空(おほぞら)の星は次(つ)ぎつぎ雲の橋にあつまり来たりて黄金(こがね)と輝(かがよ)ふ

雲の橋たちまち天(あま)の川(かは)となり数万(すまん)の星は川砂(かはすな)と見ゆ

天(あま)の川(かは)ながるる水のあをあをと空(そら)一面の海にそそげり

わが立てるうしろの峰ゆ笙(しやう)の音(おと)流れ来たりて人声(ひとごゑ)高し

何気なくふりかへりみるたまゆらを八束髯(やつかひげ)なす神人(しんじん)立たせる

漆黒(しつこく)の八束(やつか)の髯(ひげ)を垂らしつつ矛手(ほこて)握りて笑(ゑ)ませる男神(をがみ)よ

何神(なにがみ)におはしますかと問ふ刹那闇(やみ)地(ち)におちて物かげもなし

天(あま)の川(かは)如何(いか)にと見れば影もなくただ黒雲(くろくも)のそらにまよへる

迅速なるこの変転にわが霊(たま)は消えなむばかりおののきにけり

上(うへ)も下(した)も前もうしろも真(しん)の闇(やみ)一足(ひとあし)さへも自由にならず

常世(とこよ)行く闇に包まれただ一人尾(を)の上(へ)の風に吹かれゐたりき

女体の神人

いやらしき声は四辺(あたり)に響かひて吾(わが)首すぢの毛はよだちたり

毛の生えし大(だい)なる腕(かいな)闇(やみ)に見えて吾(わが)頭(かしら)辺(べ)を引(ひつ)つかみたり

かむながら御霊(みたま)幸(さち)はへましませとわが言霊に闇は晴れたり

皆神山(みなかみやま)つつみし闇は大(おほ)いなる塊(かたまり)となりて山下(さんか)に落ちたり

笙(しやう)の音(ね)は虚空をはしり琴の音(ね)は皆神山(みなかみやま)の尾の上(へ)ながるる

忽然(こつぜん)と以前の女神神将(しんしやう)をしたがへまして前に立たせり

いかめしくましてやさしき姫神(ひめがみ)の御前(みまへ)に吾(われ)は再拝なせり

紅梅(こうばい)の露(つゆ)にほころび笑ふ如き女神の唇(くちびる)ゆるぎ初(そ)めたり

姫神(ひめがみ)はおん声(こゑ)いともしとやかに剣(つるぎ)の神よと宣らせ給ひぬ

やさしかるその御姿(みすがた)にましながら剣(つるぎ)の神とは如何(いか)にとわれ問ふ

八洲川(やすかは)の誓約(うけひ)の太刀(たち)にあらはれし妾(わらは)は伊都岐島姫(いつきしまひめ)と宣らす

葦原(あしはら)の中津(なかつ)御国(みくに)は曲神(まがかみ)の雄(を)たけび強し薙(な)ぎて払はむ

汝(なれ)こそは瑞(みづ)の霊(みたま)の化身ぞや十六神将ささげまつらむ

有難(ありがた)しかたじけなしと答(いら)へつつわが頬の辺(へ)に涙したたる

三十年(みそとせ)の後(のち)に用ふるたからぞと吾(われ)にたまひし剣(つるぎ)たふとし

葦原の中津御国の醜草(しこぐさ)を薙(な)ぎ払ひませと宣らすかしこさ

全身に重荷(おもに)を負ひし心地して女神の言葉をうべなひにけり

わが霊(みたま)あらむ限りは神のため御国(みくに)のために尽(つく)しまつらむ

蔭(かげ)になり日向(ひなた)になりてわが神業(みわざ)守らせ給へと合掌なしたり

姫神(ひめがみ)は微笑(ほほゑ)みながらわが肩に真玉手(またまで)かけて何か祈(の)らせり

真玉手(またまで)の肩にかかりしたまゆらを恍惚(くわうこつ)として数歌(かずうた)よみぬ

姫神(ひめがみ)を中心として十六の神将矛(ほこ)もていさみをどれり

素盞嗚(すさのを)の神の剣(つるぎ)にあらはれし瑞(みづ)のみたまよ十六神将

神将の御影

一　久(ひさ)かたの天津(あまつ)御神(みかみ)の命(みこと)もて地上を清めむために下(くだ)れり

二　五月蝿(さばへ)なす地上の曲神(まがみ)を言向(ことむ)けて松の神代(かみよ)を建つる神使(みつかひ)

三　桶伏(をけふせ)の山に天降(あも)りて三五(あななひ)のをしへに国を清めむと思ふ

四　大日本(おほやまと)日高見(ひだかみ)の国に天降(あも)りして厳(いづ)と瑞(みづ)との道に仕へむ

五　地の上の国のことごと三五(あななひ)の道の光に照らさむと思ふ

六　神の子の住むべき地上を汚(けが)したる八岐大蛇(やまたをろち)を言向(ことむ)けてみむ

七　七人のおみなの霊(みたま)あらはして闇世(やみよ)を照らす光となさむ

八　八乙女(やおとめ)をこの地の上(うへ)に天降(あまくだ)し瑞(みづ)の霊(みたま)を永久(とは)に守らむ

九　国魂(くにたま)の神を高天(たかま)に呼びあつめ千代(ちよ)万代(よろづよ)に神代(かみよ)を建てむ

一〇　地の上(うへ)に十曜(とえう)の神旗(しんき)を翻(ひるがへ)しあらゆる曲(まが)を言向(ことむ)けて見む

一一　今までの曲(まが)の教(をしへ)をはき清めあらたに神の大道(おほぢ)を開(ひら)かむ

一二　山脈の十字形(じふじけい)なす皆神(みなかみ)の山をまもりて神代(かみよ)を立てむ

一三　日の本は云ふも更なり外国(とつくに)の山川(さんせん)草木(さうもく)なびき伏せなむ

一四　三千年(みちとせ)の神の経綸(しぐみ)をあらはして天地(てんち)神人(しんじん)安く治めむ

一五　国直霊主(くになほひぬし)の霊(みたま)を天国の守りとなして神国(みくに)をひらかむ

一六　瑞霊(みづみたま)言霊別(ことたまわけ)の神柱(かむばしら)まもりつかへむ十六神将

おのがじし十六神将言霊(ことたま)の御歌(みうた)詠(よ)ませて合掌したまふ

素盞嗚神

姫神(ひめがみ)のすがたたちまち益良夫(ますらを)となりて八束(やつか)の髭(ひげ)を垂(た)らせり

よく見れば神素盞嗚(かむすさのを)の大神(おほかみ)の威厳そなはる御姿(みすがた)なりけり

われこそは神素盞嗚(かむすさのをの)尊(みこと)なり汝(なれ)が魂(みたま)に添ひてまもらむ

いざさらばわれ天上に帰らむと忽(たちま)ち女神となり給ひたり

むらさきの雲の階段(きざはし)ふみしめて昇らす女神の姿のたふとさ

十六の神将たちまち姫神と変(かは)らせたまひ数歌(かずうた)うたはす

数歌(かずうた)の声のさやけさうつとりとわれ聞き惚(と)れて時を移せり

さつと吹くあらしの音に眼(め)ざむればわれ産土(うぶすな)の前に坐(すわ)れり

あかつきをすがしく告ぐる鶏(にはとり)の声は藁家(わらや)の軒(のき)よりひびかふ

なんとなく心すがしく大前(おほまへ)に声張り上げて神言を宣る

朝庭(あさには)の露(つゆ)を素足(すあし)に踏みながら賤(しづ)が伏屋(ふせや)にわれ帰りけり

百万の見方を得たる心地してわが魂(たましひ)のかがやきをおぼゆ

かけまくも畏(かしこ)き神の御言葉(みことば)を忘れ得なくて微笑(ほほゑ)みつづくる

如何(いか)にしてわが神業(しんげふ)を遂げむかと心(こころ)矢竹(やたけ)にはやり初(そ)めたり

千早(ちはや)ふる神あれましし日の本の同胞(はらから)の魂(たま)救はむと誓ふ

産土の社(やしろ)の朝のすがしさにわれ大前(おほまへ)を去り難(が)てに思ふ

形無き神に声なき御(おん)こゑを聴かされ心はとみに勇(いさ)めり

三十年(みそとせ)の苦労を積みて軈(やが)てわれ神国(みくに)来たさむと思ひける朝

かささぎの声もすがしく産土の森の大樹(おほき)に黎明(れいめい)うたふ

家いへの軒(のき)より漏(も)るる家鶏(かけ)の声は吾(われ)を鞭(むちう)つごとく聞(きこ)え来(く)

今こそは友なく一人の味方なしただ大神(おほかみ)を力(ちから)と頼まむ

わが立てし誠の誓ひ必ずや神の守りに成(な)らむと思へり

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