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意馬

インフォメーション

題名：意馬著者：出口王仁三郎

ページ：150 目次メモ：

概要：備考：『故山の夢』p285-288 タグ：データ凡例：データ最終更新日：2023-11-06 12:27:21 OBC ：B121808c68

─二十五六歳の頃─

花にくるふ小鳥や蝶の自由さを見るたびごとに羨(うらや)みて見し

意地悪き彼女の母は瞬間も目ばなさざりき影のごとくに

百日で追ひ出されるやうな男(を)の子(こ)には相手になるなと彼女の母云ふ

れんじ窓の外(そと)より親娘(おやこ)の問答を闇(やみ)にききつつ歯ぎしりをかむ

れんじ窓の障子の破れゆのぞき見れば女(をんな)淋しげに寝巻着替(きか)へる

短夜(みじかよ)の眠(ねむ)たさこらへて要領を得ざるにほつと吐息(といき)つきたり

ふつつりとあきらめむかとは思へども心猿(しんえん)意馬(いば)はますます狂ふ

馬鹿らしい女ぐらゐに益良男(ますらを)が悩まさるるかとこころを叱る

青春の血は体内に燃えてゐるあきらめられぬと吾(わ)が心いふ

かほどまで吾(われ)をなやます曲者(くせもの)は退散せよと呶鳴りても見し

吾(わ)が前途(ぜんと)閉ぢふさがれし心地して菖蒲(あやめ)も牡丹(ぼたん)もまなこに入(い)らず

吾(われ)富める家の子なればかくまでも悩まじものをと歎(なげ)きし春の夜(よ)

大象(だいざう)も女の髪の毛ひとすぢにひかるる喩(たとへ)を知りしわかき日

○

青雲(せいうん)の希望(のぞみ)をいだく若者われもまよひけるかな恋の闇路(やみぢ)に

吾(わ)が恋のまとまらぬうちに花の春は早くも青葉(あをば)の峰にうつれり

夜(よ)な夜(よ)なにわが見し夢は花のゆめ紫のゆめ桃色のゆめ

人(ひと)恋ふるこころの空は五月闇(さつきやみ)の山時鳥(やまほととぎす)か血をはきて啼(な)く

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