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捨鉢

インフォメーション

題名：捨鉢著者：出口王仁三郎

ページ：165 目次メモ：

概要：備考：『故山の夢』p317-320 タグ：データ凡例：データ最終更新日：2023-11-06 17:41:21 OBC ：B121808c74

─二十六七歳の頃─

稲(いね)みのる秋の田(た)の面(も)に親鳥(おやどり)にはなれて一人鎌(かま)もつ若き日

霜(しも)のあした雨の夕(ゆふ)べをひしひしと淋しさ迫る父なき吾(われ)には

稲みのる秋の田の面(も)に茫然と鎌(かま)握りたるままにたたずむ

あかあかとうれたる柿の梢(こずゑ)にも心いためぬ亡父(ばうふ)を思ひて

霜(しも)降(ふ)りしあしたは思ふたらちねの父と大枝(おほえ)の坂(さか)越えし日を

白梅(しらうめ)の花もみ空(そら)の月かげも観(み)る気にならず親なき吾(われ)には

野(の)に山にいそしみ給ふははそはの母のすがたの何かさびしも

八人の家族のこして神(かむ)さりし父のこころをしのびてなみだす

○

世の中の一切万事いやになり捨鉢(すてばち)気分で浄瑠璃(じやうるり)にふける

節(ふし)のなき根深(ねぶか)太夫(だいふ)とそしられてなほこりずまにうなる浄瑠璃(じやうるり)

目の見えぬ吾妻(あづま)太夫(だいふ)の家に通ひ無精(むしやう)矢鱈(やたら)にうなりつづけし

めしひたる吾妻(あづま)太夫(だいふ)は大阪の文楽座(ぶんらくざ)よりくだり来(こ)しひと

○

親戚のひとびと来(きた)り正式の妻をめとれと勧(すす)めてやまず

正式も准(じゆん)正式もあるものか自由結婚せむとてこばみぬ

親戚の言葉きかねばこれからは勝手にせよとて怒(おこ)る治郎松(ぢろまつ)

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