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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第14巻(丑の巻)
序歌
信天翁(四)
凡例
総論歌
第1篇 五里夢中
第1章 三途川
第2章 銅木像
第3章 鷹彦還元
第4章 馬詈
第5章 風馬牛
第2篇 幽山霊水
第6章 楽隠居
第7章 難風
第8章 泥の川
第9章 空中滑走
第3篇 高加索詣
第10章 牡丹餅
第11章 河童の屁
第12章 復縁談
第13章 山上幽斎
第14章 一途川
第15章 丸木橋
第16章 返り咲
第4篇 五六七号
第17章 一寸一服
跋文
余白歌
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霊界物語
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如意宝珠(第13~24巻)
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第14巻(丑の巻)
> 第1篇 五里夢中 > 第3章 鷹彦還元
<<< 銅木像
(B)
(N)
馬詈 >>>
第三章
鷹彦
(
たかひこ
)
還元
(
くわんげん
)
〔五五三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第14巻 如意宝珠 丑の巻
篇:
第1篇 五里夢中
よみ(新仮名遣い):
ごりむちゅう
章:
第3章 鷹彦還元
よみ(新仮名遣い):
たかひこかんげん
通し章番号:
553
口述日:
1922(大正11)年03月23日(旧02月25日)
口述場所:
筆録者:
藤津久子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年11月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
岩彦ら宣伝使ら一行は、峠で音彦、弥次彦、与太彦を置いてきてしまったことに気がついて、心配になり、鷹彦は鷹に変化して探しに行っていたのであった。
一行もウラル教の捕り手に出くわす。岩彦は捕り手たちに、三五教に改心するようにと説得をする。そこへ鷹彦が戻って来て、音彦らは捕り手に囲まれて難儀していること、ウラル教の目付の源五郎が討ち死にしたことを告げた。
ウラル教の捕り手のうち、小頭の六だけが改心し、宣伝使たちの供をすることになった。そこへ日の出別宣伝使がやってきて、音彦らの危急を告げた。一行は急いで猿山峠の坂道を下り、小鹿峠へと向かった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-12-19 01:36:52
OBC :
rm1403
愛善世界社版:
53頁
八幡書店版:
第3輯 176頁
修補版:
校定版:
56頁
普及版:
24頁
初版:
ページ備考:
001
鷹彦
(
たかひこ
)
、
002
梅彦
(
うめひこ
)
、
003
亀彦
(
かめひこ
)
は
心
(
こころ
)
の
堅
(
かた
)
き
岩彦
(
いはひこ
)
の
改心
(
かいしん
)
を
喜
(
よろこ
)
びて、
004
駒彦
(
こまひこ
)
諸共
(
もろとも
)
、
005
駒
(
こま
)
に
鞭
(
むち
)
打
(
う
)
ち
堂々
(
だうだう
)
と
小鹿峠
(
こしかたうげ
)
を
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
006
爪先
(
つまさき
)
上
(
あが
)
りの
山道
(
さんだう
)
を
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
に
夜
(
よる
)
の
道
(
みち
)
、
007
早
(
はや
)
頂上
(
ちやうじやう
)
に
登
(
のぼ
)
り
着
(
つ
)
いた。
008
鷹
(
たか
)
『
御
(
お
)
蔭
(
かげ
)
で、
009
小鹿峠
(
こしかたうげ
)
を
見極
(
みきは
)
めました。
010
ご
一同
(
いちどう
)
ここで
馬
(
うま
)
を
休息
(
きうそく
)
させて
参
(
まゐ
)
りませうか』
011
と
一同
(
いちどう
)
は
鷹彦
(
たかひこ
)
の
提議
(
ていぎ
)
に
満場
(
まんぢやう
)
一致
(
いつち
)
賛意
(
さんい
)
を
表
(
あら
)
はし
馬
(
うま
)
よりヒラリと
飛
(
と
)
び
下
(
お
)
りた。
012
岩
(
いは
)
『
何
(
いづ
)
れも
方
(
がた
)
、
013
余
(
あま
)
りの
急坂
(
きふはん
)
でお
疲
(
つか
)
れでしたらう。
014
然
(
しか
)
し、
015
音彦
(
おとひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
居
(
ゐ
)
ませんなア』
016
梅
(
うめ
)
『アヽさうですな、
017
どうしたのでせう。
018
途中
(
とちう
)
に
馬
(
うま
)
でもへたつたのではありますまいか、
019
真逆
(
まさか
)
あれほど
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
呼
(
よ
)
んだのだから
聞
(
きこ
)
えぬ
筈
(
はず
)
もなからうし、
020
目
(
め
)
の
醒
(
さ
)
めない
道理
(
だうり
)
も
無
(
な
)
い。
021
之
(
これ
)
は
的切
(
てつき
)
り
落馬
(
らくば
)
されたのではありますまいか。
022
弥次
(
やじ
)
、
023
与太
(
よた
)
の
二人
(
ふたり
)
も
居
(
ゐ
)
ませぬなア』
024
岩
(
いは
)
『ナニ
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
ですよ。
025
一人
(
ひとり
)
なれば
心配
(
しんぱい
)
もして
見
(
み
)
なくてはならぬが、
026
三人
(
さんにん
)
連
(
づれ
)
だから
滅多
(
めつた
)
に
紛失
(
ふんしつ
)
する
心配
(
しんぱい
)
もありませぬワ、
027
アハヽヽヽ』
028
亀
(
かめ
)
『
何
(
なん
)
だか
私
(
わたくし
)
は
気懸
(
きがか
)
りでなりませぬワ、
029
途中
(
とちう
)
でウラル
教
(
けう
)
の
目付役
(
めつけやく
)
に
打
(
ぶ
)
つかつて
苦戦
(
くせん
)
して
居
(
を
)
られるのではありますまいか。
030
音彦
(
おとひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
温順
(
おんじゆん
)
で
胆力
(
たんりよく
)
があるから、
031
如何
(
いか
)
なる
難関
(
なんくわん
)
も
容易
(
ようい
)
に
切
(
き
)
り
抜
(
ぬ
)
けられませうが、
032
新参者
(
しんざんもの
)
の
弥次彦
(
やじひこ
)
、
033
与太彦
(
よたひこ
)
が
要
(
い
)
らぬ
空元気
(
からげんき
)
を
出
(
だ
)
して
一悶着
(
ひともんちやく
)
やつて
居
(
を
)
るのではあるまいかと
気
(
き
)
が
気
(
き
)
でなりませぬ』
034
駒
(
こま
)
『
亀
(
かめ
)
サン
貴方
(
あなた
)
もさう
思
(
おも
)
ふか、
035
私
(
わたくし
)
も
同感
(
どうかん
)
だ、
036
何
(
なん
)
だか
気懸
(
きがか
)
りでなりませぬワ。
037
なんでもこの
辺
(
へん
)
はウラル
教
(
けう
)
の
根拠地
(
こんきよち
)
だと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
です。
038
ウラル
山
(
さん
)
アーメニヤの
驍将
(
げうしやう
)
共
(
ども
)
は
大分
(
だいぶん
)
フサの
国
(
くに
)
に
集
(
あつ
)
まつてゐると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
ですから
油断
(
ゆだん
)
は
出来
(
でき
)
ませぬよ。
039
鷹彦
(
たかひこ
)
サン、
040
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが
貴方
(
あなた
)
の
特能
(
とくのう
)
を
現
(
あら
)
はして、
041
一寸
(
ちよつと
)
鷹
(
たか
)
に
還元
(
くわんげん
)
して、
042
偵察
(
ていさつ
)
をして
下
(
くだ
)
さるまいか。
043
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
と
云
(
い
)
つても
充分
(
じゆうぶん
)
の
安心
(
あんしん
)
は
出来
(
でき
)
ませぬからナア』
044
鷹
(
たか
)
『
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
045
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
046
と
忽
(
たちま
)
ち
霊鷹
(
れいよう
)
と
変
(
へん
)
じ
中天
(
ちうてん
)
高
(
たか
)
く
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
した。
047
後
(
あと
)
に
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
此処
(
ここ
)
に
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
さうじやう
)
し、
048
過来
(
すぎこ
)
し
方
(
かた
)
の
物語
(
ものがた
)
りに
時
(
とき
)
の
移
(
うつ
)
るのも
知
(
し
)
らなかつた。
049
東
(
あづま
)
の
空
(
そら
)
は
茜
(
あかね
)
晒
(
さ
)
して、
050
日
(
ひ
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
影
(
かげ
)
、
051
タカオ
山脈
(
さんみやく
)
の
頂
(
いただき
)
より
登
(
のぼ
)
りたまふ。
052
岩
(
いは
)
『アヽもう
夜
(
よ
)
が
明
(
あ
)
けた。
053
鷹彦
(
たかひこ
)
さまはどうだらう。
054
木乃伊
(
みいら
)
取
(
と
)
りが
木乃伊
(
みいら
)
になつたのではあるまいかなア』
055
梅
(
うめ
)
『
真逆
(
まさか
)
ソンナ
事
(
こと
)
はあるまい。
056
音
(
おと
)
サンの
事
(
こと
)
だから
今
(
いま
)
に
何
(
なん
)
とか
音
(
おと
)
づれがありませう』
057
駒
(
こま
)
『
本当
(
ほんたう
)
に
音
(
おと
)
サンの
連
(
つれ
)
がないのは
音
(
おと
)
づれないのと
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
、
058
道中
(
だうちう
)
が
淋
(
さび
)
しい
様
(
やう
)
な
気
(
き
)
がする』
059
斯
(
かか
)
る
処
(
ところ
)
へ、
060
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
覆面
(
ふくめん
)
のまま
峠
(
たうげ
)
を
西方
(
せいはう
)
より
登
(
のぼ
)
り
来
(
き
)
たり、
061
甲
(
かふ
)
『ヤア
居
(
を
)
るぞ
居
(
を
)
るぞ、
062
而
(
しか
)
も
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
四
(
よ
)
人
(
にん
)
だ。
063
オイ
八公
(
はちこう
)
、
064
貴様
(
きさま
)
は
早
(
はや
)
く
源五郎
(
げんごらう
)
の
大将
(
たいしやう
)
に
報告
(
はうこく
)
して
沢山
(
たくさん
)
の
捕手
(
とりて
)
を
差
(
さ
)
し
向
(
む
)
ける
様
(
やう
)
にして
呉
(
く
)
れ。
065
吾々
(
われわれ
)
はそれ
迄
(
まで
)
此処
(
ここ
)
に
彼奴
(
あいつ
)
等
(
ら
)
の
遁
(
に
)
げない
様
(
やう
)
に
監視
(
かんし
)
をして
居
(
ゐ
)
るから』
066
と
小声
(
こごゑ
)
に
囁
(
ささや
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
067
岩
(
いは
)
『オイ
其処
(
そこ
)
へ
来
(
く
)
るのはウラル
教
(
けう
)
の
捕手
(
とりて
)
ぢやないか、
068
皆
(
みな
)
サンお
早
(
はや
)
うから
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
様
(
さん
)
だなア、
069
緩
(
ゆつく
)
り
一服
(
いつぷく
)
なとしなさい。
070
海山
(
うみやま
)
の
話
(
はな
)
しを
致
(
いた
)
しませうよ』
071
梅
(
うめ
)
『
斯
(
こ
)
う
峠
(
たうげ
)
の
頂
(
いただ
)
きから
四方
(
しはう
)
を
見晴
(
みは
)
らしもつて、
072
世間話
(
せけんばなし
)
をするのも
余
(
あんま
)
り
悪
(
わる
)
くはありませぬよ。
073
さう
恟々
(
びくびく
)
として
落着
(
おちつ
)
かない
態度
(
たいど
)
をせずに、
074
吾々
(
われわれ
)
と
一所
(
いつしよ
)
に
どつか
と
腰
(
こし
)
を
下
(
おろ
)
して
御
(
ご
)
一服
(
いつぷく
)
なさいませ』
075
甲
(
かふ
)
『ヤアその
方
(
はう
)
等
(
ら
)
は
紛
(
まが
)
ふ
方
(
かた
)
なき
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だなア。
076
吾々
(
われわれ
)
は
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
の
察
(
さつ
)
する
如
(
ごと
)
く、
077
ウラル
教
(
けう
)
の
捕手
(
とりて
)
の
役人
(
やくにん
)
だ。
078
最
(
も
)
う
斯
(
か
)
うなる
以上
(
いじやう
)
は
百年目
(
ひやくねんめ
)
だ、
079
たとへ
神変
(
しんぺん
)
不可思議
(
ふかしぎ
)
の
術
(
じゆつ
)
を
使
(
つか
)
つて
天
(
てん
)
を
翔
(
かけ
)
り
地
(
ち
)
を
潜
(
くぐ
)
る
共
(
とも
)
、
080
此方
(
こつち
)
にはまた
此方
(
こつち
)
の
不可思議
(
ふかしぎ
)
力
(
りよく
)
がある、
081
サア
神妙
(
しんめう
)
に
手
(
て
)
を
廻
(
まは
)
せ』
082
岩
(
いは
)
『アハヽヽヽヽ、
083
仰有
(
おつしや
)
ります
哩
(
わい
)
。
084
鉛
(
なまり
)
で
拵
(
こしら
)
へた
仁王
(
にわう
)
サンのやうに
四角
(
しかく
)
四面
(
しめん
)
な
顔
(
かほ
)
をして、
085
さう
頑張
(
ぐわんば
)
るものぢあない。
086
同
(
おな
)
じ
天
(
てん
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
氏子
(
うぢこ
)
だ、
087
持
(
も
)
ちつ
持
(
も
)
たれつ、
088
互
(
たがひ
)
に
助
(
たす
)
け
助
(
たす
)
けられ、
089
この
世
(
よ
)
に
生
(
い
)
きて
栄
(
さか
)
えて、
090
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
の
御用
(
ごよう
)
を
致
(
いた
)
す
尊
(
たふと
)
い
人間
(
にんげん
)
同志
(
どうし
)
だ、
091
マア
緩
(
ゆつく
)
りと
一服
(
いつぷく
)
なさるがよかろう』
092
乙
(
おつ
)
『この
期
(
ご
)
に
及
(
およ
)
んで
要
(
い
)
らざる
繰言
(
くりごと
)
、
093
聞
(
き
)
く
耳
(
みみ
)
持
(
も
)
たぬぞ。
094
貴様
(
きさま
)
は
三五教
(
あななひけう
)
といふ
邪教
(
じやけう
)
を
天下
(
てんか
)
に
宣伝
(
せんでん
)
する
曲津
(
まがつ
)
神
(
かみ
)
だ、
095
それ
丈
(
だけ
)
の
悟
(
さと
)
りがあるなら
何故
(
なぜ
)
そのやうな
教
(
をしへ
)
を
信
(
しん
)
ずるのだ。
096
巧言
(
かうげん
)
令色
(
れいしよく
)
致
(
いた
)
らざるなく、
097
乞食
(
こじき
)
の
虱
(
しらみ
)
ぢやないが
口
(
くち
)
で
殺
(
ころ
)
さうと
思
(
おも
)
つたつて、
098
ソンナ
事
(
こと
)
に
迂濶
(
うか
)
々々
(
うか
)
乗
(
の
)
る
六
(
ろく
)
サンぢやないぞ。
099
エヽグヅグヅ
吐
(
ぬか
)
さずと
従順
(
すなを
)
に
手
(
て
)
を
廻
(
まは
)
せ、
100
ウラル
山
(
さん
)
の
砦
(
とりで
)
に
拘引
(
こういん
)
してやらうか』
101
駒
(
こま
)
『アハハヽヽヽ、
102
マアマア、
103
マアこの
日
(
ひ
)
の
長
(
なが
)
いのに
朝
(
あさ
)
つぱらから、
104
さう
発動
(
はつどう
)
をなさると
草臥
(
くたぶ
)
れますよ。
105
マア
鎮
(
おさ
)
まつて
一服
(
いつぷく
)
しなさい。
106
吾々
(
われわれ
)
が
丁寧
(
ていねい
)
に
鎮魂
(
ちんこん
)
でもして
上
(
あ
)
げませう』
107
六
(
ろく
)
『ナヽ
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
しよるのだ、
108
その
鎮魂
(
ちんこん
)
が
気
(
き
)
に
食
(
く
)
はぬのだ。
109
グヅグヅ
吐
(
ぬか
)
すと
貴様
(
きさま
)
の
命
(
いのち
)
は
瞬
(
またた
)
く
間
(
うち
)
に
沈没
(
ちんぼつ
)
だぞ』
110
亀
(
かめ
)
『
何
(
なん
)
とウラル
教
(
けう
)
といふ
教
(
をしへ
)
は
荒
(
あら
)
い
言葉
(
ことば
)
を
使
(
つか
)
ふ
教理
(
けうり
)
だな、
111
恰
(
まる
)
で
雲助
(
くもすけ
)
サンと
間違
(
まちが
)
へられますよ。
112
言霊
(
ことたま
)
の
幸
(
さち
)
はふ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
、
113
尠
(
ちつ
)
とは
丁寧
(
ていねい
)
な
言葉
(
ことば
)
をお
使
(
つか
)
ひなさつたら
如何
(
どう
)
ですか』
114
六
(
ろく
)
『
喧
(
やかま
)
しい
哩
(
わい
)
。
115
貴様
(
きさま
)
の
様
(
やう
)
に
表
(
うはべ
)
は
蚤
(
のみ
)
も
殺
(
ころ
)
さぬ
様
(
やう
)
な
態度
(
たいど
)
を
装
(
よそほ
)
ふて、
116
鬼
(
おに
)
か
大蛇
(
おろち
)
か
狼
(
おほかみ
)
か
獅子
(
しし
)
か
山犬
(
やまいぬ
)
かといふ
様
(
やう
)
な
表裏
(
へうり
)
反対
(
はんたい
)
の
教
(
をしへ
)
とは
雲泥
(
うんでい
)
の
相違
(
さうゐ
)
があるのだ。
117
温和
(
おとなし
)
い
顔
(
かほ
)
をして
悪念
(
あくねん
)
を
包蔵
(
はうざう
)
する
奴
(
やつ
)
程
(
ほど
)
、
118
この
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
危険
(
きけん
)
な
者
(
もの
)
はない。
119
外面
(
げめん
)
如
(
によ
)
菩薩
(
ぼさつ
)
、
120
内心
(
ないしん
)
如
(
によ
)
夜叉
(
やしや
)
、
121
悪鬼
(
あくき
)
羅刹
(
らせつ
)
の
化
(
ばけ
)
の
皮
(
かは
)
今
(
いま
)
にヒン
剥
(
む
)
いてやるから
覚悟
(
かくご
)
を
致
(
いた
)
せ。
122
吾々
(
われわれ
)
ウラル
教
(
けう
)
の
御
(
おん
)
方
(
かた
)
は
上
(
うへ
)
から
見
(
み
)
れば
荒削
(
あらけづ
)
りの
仁王
(
にわう
)
サンの
様
(
やう
)
だが、
123
心
(
こころ
)
の
綺麗
(
きれい
)
な
事
(
こと
)
は
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
サンか
天教山
(
てんけうざん
)
の
木
(
こ
)
の
花姫
(
はなひめ
)
が
素足
(
はだし
)
で
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
す
様
(
やう
)
な
綺麗
(
きれい
)
な
御霊
(
みたま
)
の
持主
(
もちぬし
)
計
(
ばか
)
りだぞ。
124
余
(
あま
)
り
見違
(
みちが
)
ひをして
貰
(
もら
)
ふまいかい』
125
岩
(
いは
)
『それはそれは
結構
(
けつこう
)
な
教
(
をしへ
)
ですな、
126
しかしながら
霊肉
(
れいにく
)
一致
(
いつち
)
といつて
心
(
こころ
)
の
色
(
いろ
)
が
外
(
そと
)
に
表
(
あら
)
はれるものだ。
127
心
(
こころ
)
が
和
(
やはら
)
ぎ
美
(
うつく
)
しければ
其
(
その
)
人
(
ひと
)
の
言行
(
げんかう
)
はやつぱり
柔
(
やはら
)
かく
美
(
うつく
)
しくなくてはならぬ。
128
黄金
(
こがね
)
の
玉
(
たま
)
を
襤褸
(
ぼろ
)
で
包
(
つつ
)
むと
云
(
い
)
ふ
道理
(
だうり
)
は
無
(
な
)
い
筈
(
はず
)
だ』
129
六
(
ろく
)
『エヽ
好
(
よ
)
うツベコベ
団子
(
だんご
)
理窟
(
りくつ
)
を
捏
(
こ
)
ねる
奴
(
やつ
)
だナ。
130
今
(
いま
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
奴
(
やつ
)
は、
131
口
(
くち
)
許
(
ばか
)
り
発達
(
はつたつ
)
しやがつて、
132
男
(
をとこ
)
までが
女
(
をんな
)
のやうな
言葉
(
ことば
)
を
使
(
つか
)
ひ、
133
髪
(
かみ
)
に
油
(
あぶら
)
をつけ
洒落
(
しやれ
)
る
時節
(
じせつ
)
だ。
134
俺
(
おい
)
らの
様
(
やう
)
な、
135
天真
(
てんしん
)
爛漫
(
らんまん
)
素地
(
きじ
)
その
儘
(
まま
)
の
人間
(
にんげん
)
が
鉦
(
かね
)
や
太鼓
(
たいこ
)
で
探
(
さが
)
し
廻
(
まは
)
つた
処
(
ところ
)
でさう
沢山
(
たくさん
)
はありはせぬぞ、
136
悪魔
(
あくま
)
は
善
(
ぜん
)
の
仮面
(
かめん
)
を
被
(
かぶ
)
つて
好
(
よ
)
う
誑
(
たぶ
)
らかすものだ。
137
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
もその
伝
(
でん
)
だらう、
138
言
(
い
)
ふべくして
行
(
おこな
)
ふべからざるものは
教
(
をしへ
)
の
道
(
みち
)
だ。
139
グヅグヅ
云
(
い
)
はずに、
140
もう
斯
(
こ
)
うなつちや
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
い、
141
因縁
(
いんねん
)
づくぢやと
諦
(
あきら
)
めてこの
方
(
はう
)
の
仰
(
あふ
)
せに
服従
(
ふくじゆう
)
致
(
いた
)
せ』
142
岩
(
いは
)
『アハヽヽヽヽ、
143
ウラル
教
(
けう
)
は
随分
(
ずゐぶん
)
理窟
(
りくつ
)
は
極
(
きは
)
めて
巧妙
(
こうめう
)
に
仰有
(
おつしや
)
りますな、
144
否
(
いな
)
、
145
聞
(
き
)
いて
見
(
み
)
なくては
分
(
わ
)
からぬものだ、
146
誰
(
たれ
)
も
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
人間
(
にんげん
)
は
食
(
く
)
はず
嫌
(
ぎら
)
ひが
多
(
おほ
)
くて
困
(
こま
)
る。
147
お
前
(
まへ
)
の
云
(
い
)
ふのが
本当
(
ほんたう
)
なら
吾々
(
われわれ
)
もウラル
教
(
けう
)
を
信
(
しん
)
ずるのだ。
148
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らウラル
教
(
けう
)
は
言行
(
げんかう
)
相反
(
あひはん
)
する
邪教
(
じやけう
)
だ。
149
実
(
じつ
)
の
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
へば
吾々
(
われわれ
)
は
元
(
もと
)
はウラル
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だ、
150
竜宮
(
りうぐう
)
の
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
に
渡
(
わた
)
つて
宣伝
(
せんでん
)
をし
乍
(
なが
)
らつい
一月前
(
ひとつきまへ
)
までウラル
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
を
勤
(
つと
)
めて
居
(
ゐ
)
たのだ。
151
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
吾々
(
われわれ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
を
聞
(
き
)
いてウラル
教
(
けう
)
と
比較
(
ひかく
)
して
見
(
み
)
れば
実
(
じつ
)
に
天地
(
てんち
)
霄壤
(
せうじやう
)
の
差
(
さ
)
ある
事
(
こと
)
を
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
悟
(
さと
)
つたのだ。
152
要
(
えう
)
するに
何程
(
なにほど
)
教
(
をしへ
)
が
立派
(
りつぱ
)
でも
行
(
おこな
)
ひが
出来
(
でき
)
なくては
却
(
かへつ
)
て
社会
(
しやくわい
)
に
害毒
(
がいどく
)
を
流
(
なが
)
す
様
(
やう
)
になる。
153
三五教
(
あななひけう
)
は
不言
(
ふげん
)
実行
(
じつかう
)
の
教
(
をしへ
)
だよ。
154
何
(
なに
)
ほど
立派
(
りつぱ
)
な
教
(
をしへ
)
でも
宣伝使
(
せんでんし
)
にその
人
(
ひと
)
を
得
(
え
)
ざれば、
155
折角
(
せつかく
)
の
金玉
(
きんぎよく
)
を
泥濘
(
でいねい
)
に
埋没
(
まいぼつ
)
した
様
(
やう
)
なものだ。
156
お
前
(
まへ
)
たちもどうだ、
157
今
(
いま
)
から
三五教
(
あななひけう
)
に
帰順
(
きじゆん
)
して
了
(
しま
)
つたが
後生
(
ごしやう
)
の
為
(
ため
)
だらう
否
(
いな
)
この
身
(
み
)
このまま
無限
(
むげん
)
の
安心
(
あんしん
)
と
光栄
(
くわうえい
)
に
浴
(
よく
)
する
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
るであらう。
158
三五教
(
あななひけう
)
は
現当
(
げんたう
)
利益
(
りやく
)
の
教理
(
けうり
)
だよ』
159
六
(
ろく
)
『ヤイヤイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
160
どう
仕様
(
しやう
)
かな。
161
この
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
元
(
もと
)
はウラル
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ。
162
吾々
(
われわれ
)
も
茲
(
ここ
)
に
到
(
いた
)
つて
沈思
(
ちんし
)
黙考
(
もくかう
)
の
余地
(
よち
)
は
充分
(
じゆうぶん
)
に
存
(
そん
)
するではないか』
163
甲
(
かふ
)
『
今更
(
いまさら
)
らしい
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つたつて
仕方
(
しかた
)
がないぢやないか。
164
今
(
いま
)
に
八公
(
はちこう
)
の
報告
(
はうこく
)
に
依
(
よ
)
つて、
165
源五郎
(
げんごらう
)
の
大将
(
たいしやう
)
が
数多
(
あまた
)
の
部下
(
ぶか
)
を
引連
(
ひきつ
)
れ
押
(
お
)
し
寄
(
よ
)
せて
来
(
く
)
るといふ
手筈
(
てはず
)
になつて
居
(
ゐ
)
るのだ。
166
コンナ
処
(
ところ
)
で、
167
三五教
(
あななひけう
)
になろうものなら、
168
それこそ
大変
(
たいへん
)
だぞ。
169
何
(
なに
)
、
170
構
(
かま
)
ふものか、
171
弱音
(
よわね
)
を
吹
(
ふ
)
くな、
172
たとヘウラル
教
(
けう
)
が
悪
(
あく
)
の
教
(
をしへ
)
であらうと、
173
毒
(
どく
)
食
(
く
)
はば
皿
(
さら
)
まで
嘗
(
ね
)
ぶれといふ
事
(
こと
)
がある、
174
行
(
ゆ
)
く
処
(
ところ
)
まで
行
(
ゆ
)
くのだよ』
175
六
(
ろく
)
『アヽ
此処
(
ここ
)
はサル
山
(
やま
)
峠
(
たうげ
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
だ、
176
此処
(
ここ
)
へ
降
(
ふ
)
る
雨
(
あめ
)
は
紙
(
かみ
)
一
(
いち
)
枚
(
まい
)
の
違
(
ちが
)
ひで、
177
一方
(
いつぱう
)
は
東
(
ひがし
)
へ
流
(
なが
)
れ
落
(
お
)
ちる、
178
一方
(
いつぱう
)
は
西
(
にし
)
へ
流
(
なが
)
れ
落
(
お
)
ちる、
179
善悪
(
ぜんあく
)
正邪
(
せいじや
)
の
分水嶺
(
ぶんすゐれい
)
だ。
180
吾々
(
われわれ
)
も
一
(
ひと
)
つ
此処
(
ここ
)
で
向背
(
かうはい
)
を
決
(
けつ
)
せねばなるまい』
181
この
時
(
とき
)
、
182
天空
(
てんくう
)
より
舞
(
ま
)
ひ
下
(
さが
)
つた
一羽
(
いちは
)
の
霊鷹
(
れいよう
)
は
見
(
み
)
る
見
(
み
)
る
身体
(
しんたい
)
膨張
(
ばうちよう
)
し、
183
一丈
(
いちぢやう
)
許
(
ばか
)
りの
羽
(
はね
)
を
拡
(
ひろ
)
げてバタバタ
羽
(
は
)
ばたきした。
184
岩
(
いは
)
『アヽ
鷹様
(
たかさん
)
か、
185
音彦
(
おとひこ
)
の
様子
(
やうす
)
は
如何
(
いか
)
に』
186
鷹彦
(
たかひこ
)
は
羽
(
はね
)
を
納
(
をさ
)
め
元
(
もと
)
の
姿
(
すがた
)
となり
汗
(
あせ
)
を
拭
(
ふ
)
き
乍
(
なが
)
ら、
187
鷹彦
『
御
(
ご
)
連中
(
れんちう
)
、
188
大変
(
たいへん
)
ですよ。
189
音彦
(
おとひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
はウラル
教
(
けう
)
の
大目付
(
おほめつけ
)
、
190
鷲掴
(
わしづかみ
)
の
源五郎
(
げんごらう
)
の
為
(
ため
)
に
包囲
(
はうゐ
)
攻撃
(
こうげき
)
をされ、
191
命
(
いのち
)
からがら
小鹿峠
(
こしかたうげ
)
の
方面
(
はうめん
)
に
遁
(
のが
)
れ
去
(
さ
)
つたといふ
事
(
こと
)
です。
192
而
(
さ
)
うして
源五郎
(
げんごらう
)
は
自分
(
じぶん
)
の
馬
(
うま
)
の
下敷
(
したじき
)
となつて
腹
(
はら
)
を
破
(
やぶ
)
り
悶死
(
もんし
)
したさうです。
193
八
(
はち
)
といふ
男
(
をとこ
)
が
一隊
(
いつたい
)
を
引
(
ひ
)
き
連
(
つ
)
れて
音彦
(
おとひこ
)
様
(
さん
)
の
後
(
あと
)
を
追跡
(
つゐせき
)
したと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
です』
194
六
(
ろく
)
『そりや
大変
(
たいへん
)
だ、
195
八
(
はち
)
といふ
名
(
な
)
は
沢山
(
たくさん
)
にあるが
源五郎
(
げんごらう
)
といふ
大将
(
たいしやう
)
の
名
(
な
)
は
一人
(
ひとり
)
だ、
196
そうすれば
吾々
(
われわれ
)
の
大将
(
たいしやう
)
は
討死
(
うちじに
)
したのか、
197
エヽ
残念
(
ざんねん
)
ぢやない
哩
(
わい
)
、
198
残念
(
ざんねん
)
なのは
源五郎
(
げんごらう
)
御
(
ご
)
自身
(
じしん
)
だ。
199
常平生
(
つねへいぜい
)
からウラル
彦
(
ひこ
)
の
大将
(
たいしやう
)
を
笠
(
かさ
)
に
着
(
き
)
よつて、
200
虎
(
とら
)
の
威
(
ゐ
)
を
藉
(
か
)
る
古狐
(
ふるぎつね
)
に
罰
(
ばち
)
は
覿面
(
てきめん
)
、
201
死様
(
しにやう
)
にも
種々
(
いろいろ
)
あるに、
202
自分
(
じぶん
)
の
乗
(
の
)
つた
馬
(
うま
)
の
背中
(
せなか
)
に
押
(
おさ
)
へられ
死
(
し
)
ぬとはよくよく
因果
(
いんぐわ
)
な
者
(
もの
)
だナア。
203
ヤア
最
(
も
)
う
安心
(
あんしん
)
だ、
204
何時
(
いつ
)
もいつも
吾々
(
われわれ
)
を
圧迫
(
あつぱく
)
しよつた
報
(
むく
)
いだ。
205
モシモシウラル
教
(
けう
)
の
元
(
もと
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
206
三五教
(
あななひけう
)
の
新米
(
しんまい
)
のヌクヌクの
宣伝使
(
せんでんし
)
の
御
(
ご
)
歴々
(
れきれき
)
さま、
207
私
(
わたくし
)
も
三五教
(
あななひけう
)
に
帰順
(
きじゆん
)
いたしますワ』
208
岩
(
いは
)
『
要
(
い
)
らぬ
事
(
こと
)
を
沢山
(
たくさん
)
云
(
い
)
ふものぢやない。
209
旧
(
きう
)
だの
新
(
しん
)
だのホヤホヤだのと、
210
それだからウラル
教
(
けう
)
は
口
(
くち
)
が
悪
(
わる
)
いと
云
(
い
)
ふのだ。
211
帰順
(
きじゆん
)
するならするで、
212
ベンベンダラリと
前口上
(
まへこうじやう
)
を
並
(
なら
)
べなくても
好
(
い
)
いぢやないか。
213
モシモシ
鷹彦
(
たかひこ
)
さま、
214
この
男
(
をとこ
)
は
今
(
いま
)
お
聞
(
き
)
きの
通
(
とほ
)
り
帰順
(
きじゆん
)
すると
言
(
い
)
ひました。
215
貴方
(
あなた
)
のお
留守中
(
るすちう
)
にコンナ
勝利品
(
しようりひん
)
を
得
(
え
)
ました、
216
ホンの
一服
(
いつぷく
)
休
(
やす
)
みに
一人
(
ひとり
)
の
帰順者
(
きじゆんしや
)
を
得
(
え
)
たのですから
随分
(
ずゐぶん
)
豪勢
(
がうせい
)
なものでせう』
217
鷹
(
たか
)
『
相変
(
あひかは
)
らず、
218
喇叭
(
らつぱ
)
吹
(
ふ
)
きがお
上手
(
じやうづ
)
ですなア』
219
六
(
ろく
)
『オイオイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
220
小頭
(
こがしら
)
の
六
(
ろく
)
サンが
帰順
(
きじゆん
)
したのだから、
221
貴様
(
きさま
)
たちも
俺
(
おれ
)
に
殉死
(
じゆんし
)
だぞ。
222
異議
(
いぎ
)
はあるまいな』
223
一同
(
いちどう
)
『あーりーがー
度
(
た
)
く
存
(
ぞん
)
じませぬワイ』
224
六
(
ろく
)
『なんだ、
225
曖昧
(
あいまい
)
ぢやないか、
226
しつかり
云
(
い
)
はぬかい』
227
辰
(
たつ
)
『お
前
(
まへ
)
の
云
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
り、
228
善悪
(
ぜんあく
)
正邪
(
せいじや
)
の
分水嶺
(
ぶんすゐれい
)
だ、
229
一雨
(
ひとあめ
)
降
(
ふ
)
るまで
待
(
ま
)
つて
呉
(
く
)
れ。
230
決着
(
けつちやく
)
が
着
(
つ
)
かぬ
哩
(
わい
)
』
231
六
(
ろく
)
『
執着心
(
しふちやくしん
)
の
深
(
ふか
)
い
奴
(
やつ
)
だナア、
232
置
(
お
)
け
置
(
お
)
け。
233
人間
(
にんげん
)
は
淡白
(
あつさり
)
とするものだ。
234
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
音彦
(
おとひこ
)
や
二人
(
ふたり
)
の
伴
(
とも
)
のやうに、
235
吾々
(
われわれ
)
に
両方
(
りやうはう
)
から
包囲
(
はうゐ
)
攻撃
(
こうげき
)
されて
深
(
ふか
)
い
谷間
(
たにま
)
に
身
(
み
)
を
躍
(
をど
)
らして
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
み
冥土
(
めいど
)
の
旅
(
たび
)
をした
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
へば
屁
(
へ
)
でもない
事
(
こと
)
だ。
236
牛
(
うし
)
を
馬
(
うま
)
に
乗
(
の
)
り
換
(
か
)
へる
丈
(
だけ
)
の
事
(
こと
)
だ。
237
とかく
人間
(
にんげん
)
は
諦
(
あきら
)
めが
肝腎
(
かんじん
)
だよ。
238
断
(
だん
)
の
一字
(
いちじ
)
は
男子
(
だんし
)
たるものの
必要
(
ひつえう
)
欠
(
か
)
くべからざる
宝
(
たから
)
だからのう』
239
岩
(
いは
)
『モシ
六
(
ろく
)
サンとやら、
240
音彦
(
おとひこ
)
が
谷
(
たに
)
へ
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
んで死んだと
云
(
い
)
ふのは、
241
そりや
本当
(
ほんたう
)
かい』
242
六
(
ろく
)
『
私
(
わたくし
)
も
三五教
(
あななひけう
)
に
帰順
(
きじゆん
)
した
以上
(
いじやう
)
は、
243
何
(
なに
)
、
244
嘘
(
うそ
)
を
申
(
まを
)
しませうか、
245
誠
(
まこと
)
も
誠
(
まこと
)
、
246
現
(
げん
)
に
私
(
わたくし
)
が
実地
(
じつち
)
を
目撃
(
もくげき
)
したのですもの』
247
駒
(
こま
)
『そりや
大変
(
たいへん
)
だ、
248
こりや
斯
(
こ
)
うして
居
(
を
)
られぬ
哩
(
わい
)
』
249
六
(
ろく
)
『モシモシ
三五教
(
あななひけう
)
は
刹那心
(
せつなしん
)
ですよ。
250
過
(
す
)
ぎ
越
(
こ
)
し
苦労
(
くらう
)
はお
止
(
よ
)
しなさい。
251
もう
今頃
(
いまごろ
)
は
三途
(
せうづ
)
の
川
(
かは
)
の
婆
(
ばば
)
アに
着物
(
きもの
)
を
強請
(
ねだ
)
られて
渡
(
わた
)
す
着物
(
きもの
)
は
無
(
な
)
し
当惑
(
たうわく
)
して
居
(
ゐ
)
る
最中
(
さいちう
)
ですだらう。
252
何
(
なに
)
ほど
泣
(
な
)
いても
悔
(
くや
)
んでも、
253
一旦
(
いつたん
)
死
(
し
)
んだ
人
(
ひと
)
は
呼
(
よ
)
べど
叫
(
さけ
)
べど
何
(
なん
)
の
答
(
こた
)
へも
ない
ぢやくり、
254
泣
(
な
)
いて
明石
(
あかし
)
の
浜千鳥
(
はまちどり
)
』
255
岩
(
いは
)
『オイオイ
六
(
ろく
)
、
256
ろく
でも
無
(
な
)
いことを
云
(
い
)
ふな、
257
冗談
(
じやうだん
)
処
(
どころ
)
ではないワ』
258
六
(
ろく
)
『
六道
(
ろくだう
)
の
辻
(
つじ
)
で
六
(
ろく
)
サンが………と
云
(
い
)
ふ
所
(
ところ
)
ですワイ』
259
岩
(
いは
)
『エヽソンナ
冗談
(
じやうだん
)
処
(
どころ
)
かい、
260
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
してせめては
音彦
(
おとひこ
)
一同
(
いちどう
)
の
冥福
(
めいふく
)
を
祈
(
いの
)
り、
261
幽界
(
いうかい
)
宣伝
(
せんでん
)
の
加勢
(
かせい
)
をして
上
(
あ
)
げねばなるまい。
262
……
頓生
(
とんしやう
)
菩提
(
ぼだい
)
音彦
(
おとひこ
)
、
263
弥次彦
(
やじひこ
)
、
264
与太彦
(
よたひこ
)
の
御魂
(
みたま
)
、
265
神
(
かみ
)
の
御国
(
みくに
)
に
幸
(
さち
)
あれよ。
266
アーメン、
267
ソーメン、
268
ドツコイ
南無
(
なむ
)
妙
(
めう
)
法蓮
(
はふれん
)
、
269
陀仏
(
だぶつ
)
、
270
遠
(
とほ
)
神
(
かめ
)
笑
(
ゑ
)
みため、
271
惟神
(
かむながら
)
祓
(
はらひ
)
給
(
たま
)
へ
助
(
たす
)
け
給
(
たま
)
へ、
272
妙々
(
めうめう
)
』
273
鷹
(
たか
)
『アハヽヽヽヽ、
274
岩彦
(
いはひこ
)
サン、
275
ソンナ
混雑
(
こんざつ
)
した
祝詞
(
のりと
)
がありますか』
276
岩
(
いは
)
『イヤもう
親密
(
しんみつ
)
なる
友人
(
いうじん
)
の
訃
(
ふ
)
を
聞
(
き
)
いて
心
(
こころ
)
も
心
(
こころ
)
ならず、
277
何
(
いづ
)
れの
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
祈
(
いの
)
つたら
音彦
(
おとひこ
)
の
御魂
(
みたま
)
サンを
守
(
まも
)
つて
下
(
くだ
)
さらうかと
一寸
(
ちよつと
)
麻胡
(
まご
)
つきました。
278
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
之
(
これ
)
が
人間
(
にんげん
)
の
真心
(
まごころ
)
ですワ』
279
亀
(
かめ
)
『
岩彦
(
いはひこ
)
サンは
好
(
よ
)
う
麻胡
(
まご
)
つく
方
(
かた
)
だなア、
280
シヅの
窟
(
いはや
)
で
私
(
わたくし
)
たちの
骨
(
ほね
)
なと
肉
(
にく
)
なと
拾
(
ひろ
)
ふてやろうと
仰有
(
おつしや
)
つた
時
(
とき
)
のお
麻胡
(
まご
)
つき
方
(
かた
)
そつくりだワ』
281
岩
(
いは
)
『アハヽヽヽヽ、
282
一寸
(
ちよつと
)
余興
(
よきよう
)
に
洒落
(
しやれ
)
て
見
(
み
)
ました』
283
駒
(
こま
)
『これは
怪
(
け
)
しからぬ、
284
友人
(
いうじん
)
の
訃
(
ふ
)
を
聞
(
き
)
いてそれ
程
(
ほど
)
可笑
(
をか
)
しいですか』
285
岩
(
いは
)
『アハヽヽヽ、
286
可笑
(
をか
)
しい
可笑
(
をか
)
しい、
287
苟
(
いやし
)
くも
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
たるもの、
288
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
御
(
お
)
守
(
まも
)
りある
以上
(
いじやう
)
敵
(
てき
)
に
包囲
(
はうゐ
)
攻撃
(
こうげき
)
されたと
云
(
い
)
つて、
289
自
(
みづか
)
ら
谷
(
たに
)
へ
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
んで
自殺
(
じさつ
)
を
遂
(
と
)
げると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
がどうしてありませう。
290
屹度
(
きつと
)
助
(
たす
)
かつて
居
(
を
)
ると、
291
吾々
(
われわれ
)
の
何
(
なん
)
だか
琴線
(
きんせん
)
に
触
(
ふ
)
れる
様
(
やう
)
な
心持
(
こころも
)
ちがして
来
(
き
)
ましたアハヽヽヽ』
292
遽
(
にはか
)
に
聞
(
きこ
)
ゆる
人馬
(
じんば
)
の
物音
(
ものおと
)
、
293
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
一斉
(
いつせい
)
に
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り
音
(
おと
)
する
方
(
かた
)
を
眺
(
なが
)
むれば、
294
数百
(
すうひやく
)
人
(
にん
)
のウラル
教
(
けう
)
の
捕手
(
とりて
)
の
役人
(
やくにん
)
、
295
各自
(
てんで
)
に
柄物
(
えもの
)
を
携
(
たづさ
)
へて
此方
(
こなた
)
に
向
(
むか
)
つて
登
(
のぼ
)
り
来
(
く
)
る。
296
岩
(
いは
)
『ヨー、
297
お
出
(
いで
)
たお
出
(
いで
)
た』
298
六公
『サア
面白
(
おもしろ
)
い、
299
一行
(
いつかう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
300
此処
(
ここ
)
で
六公
(
ろくこう
)
が
三五教
(
あななひけう
)
に
帰順
(
きじゆん
)
しました
心底
(
しんてい
)
を
現
(
あら
)
はして
見
(
み
)
せませう』
301
と
捻鉢巻
(
ねぢはちまき
)
をしながら、
302
六公
(
ろくこう
)
は
峠
(
たうげ
)
の
真
(
ま
)
ん
中
(
なか
)
に
大手
(
おほで
)
を
拡
(
ひろ
)
げ
大音声
(
だいおんじやう
)
、
303
六公
『
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
鷲掴
(
わしづかみ
)
の
源五郎
(
げんごらう
)
か、
304
自分
(
じぶん
)
の
馬
(
うま
)
に
押
(
お
)
し
潰
(
つぶ
)
されて
死
(
し
)
んだ
奴
(
やつ
)
めが。
305
未
(
ま
)
だ
娑婆
(
しやば
)
が
恋
(
こひ
)
しいと
見
(
み
)
えて
数多
(
あまた
)
の
亡者
(
まうじや
)
を
引
(
ひ
)
き
連
(
つ
)
れて、
306
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
を
召
(
め
)
し
捕
(
とら
)
むとは
片腹
(
かたはら
)
痛
(
いた
)
い。
307
サアこれから
六
(
ろく
)
サンが
三五教
(
あななひけう
)
に
寝返
(
ねがへ
)
り
打
(
う
)
つた
初陣
(
うひじん
)
の
活動
(
くわつどう
)
、
308
吾
(
わ
)
が
言霊
(
ことたま
)
の
神力
(
しんりき
)
に
往生
(
わうじやう
)
いたせ。
309
アーオーウーエーイー』
310
この
声
(
こゑ
)
終
(
をは
)
ると
共
(
とも
)
に、
311
大将
(
たいしやう
)
源五郎
(
げんごらう
)
の
騎馬
(
きば
)
の
姿
(
すがた
)
も、
312
数多
(
あまた
)
の
軍卒
(
ぐんそつ
)
の
影
(
かげ
)
も
忽
(
たちま
)
ち
煙
(
けむり
)
の
如
(
ごと
)
く
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せて、
313
後
(
あと
)
には、
314
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
を
渡
(
わた
)
る
松風
(
まつかぜ
)
の
音
(
おと
)
が
聞
(
きこ
)
ゆるのみ。
315
六
(
ろく
)
『アハヽヽヽヽ、
316
何
(
なん
)
と
源五郎
(
げんごらう
)
の
奴
(
やつ
)
、
317
執念深
(
しふねんぶか
)
い
奴
(
やつ
)
だ。
318
亡者
(
まうじや
)
になつても
未
(
ま
)
だやつて
来
(
き
)
よる。
319
しかし
乍
(
なが
)
ら、
320
三五教
(
あななひけう
)
のお
蔭
(
かげ
)
で
亡者隊
(
まうじやたい
)
は、
321
モジヤモジヤと
煙
(
けむり
)
となつて
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せたり。
322
ヤア
宣伝使
(
せんでんし
)
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
様
(
さま
)
、
323
何卒
(
どうぞ
)
これを
証拠
(
しようこ
)
に
貴方
(
あなた
)
のお
弟子
(
でし
)
にして
下
(
くだ
)
さいませ。
324
お
荷物
(
にもつ
)
でも
持
(
も
)
たして
頂
(
いただ
)
きませう』
325
岩
(
いは
)
『
自分
(
じぶん
)
の
荷物
(
にもつ
)
は
自分
(
じぶん
)
が
持
(
も
)
つべき
物
(
もの
)
だ。
326
吾々
(
われわれ
)
は
人
(
ひと
)
の
力
(
ちから
)
を
借
(
か
)
りるといふ
事
(
こと
)
は
絶対
(
ぜつたい
)
に
出来
(
でき
)
ない。
327
六
(
ろく
)
サンは
六
(
ろく
)
サンの
荷物
(
にもつ
)
を
持
(
も
)
つて
随
(
つ
)
いて
来
(
き
)
なさい』
328
六
(
ろく
)
『
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り、
329
私
(
わたくし
)
の
荷物
(
にもつ
)
は
此
(
こ
)
の
槍
(
やり
)
一
(
ひと
)
つで
御座
(
ござ
)
ります。
330
もう
斯
(
こ
)
うなる
以上
(
いじやう
)
は
槍
(
やり
)
の
必要
(
ひつえう
)
もござりませぬ。
331
コンナ
物
(
もの
)
は
谷底
(
たにそこ
)
へ
やり
放
(
ほか
)
しにして、
332
是
(
こ
)
れから
大
(
おほ
)
いに、
333
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
宣伝
(
せんでん
)
をやりませう。
334
やり
繰
(
くり
)
上手
(
じやうづ
)
の
六
(
ろく
)
サンは
一
(
ひと
)
つ
足
(
た
)
らぬ
許
(
ばか
)
りで
何時
(
いつ
)
も
七
(
なな
)
つやの
御
(
ご
)
厄介
(
やくかい
)
、
335
是
(
これ
)
からは、
336
三五教
(
あななひけう
)
の
御
(
ご
)
厄介
(
やくかい
)
になりませう』
337
岩
(
いは
)
『アハヽヽヽヽ、
338
滑稽
(
こつけい
)
諧謔
(
かいぎやく
)
口
(
くち
)
を
突
(
つ
)
いて
出
(
いづ
)
ると
云
(
い
)
ふ
風流人
(
ふうりうじん
)
だナ、
339
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い。
340
お
前
(
まへ
)
の
荷物
(
にもつ
)
と
云
(
い
)
ふのは
外
(
ほか
)
でもない、
341
まだ
一匹
(
いつぴき
)
残
(
のこ
)
つてゐる、
342
四足
(
よつあし
)
の
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
だよ』
343
六
(
ろく
)
『エエソンナ
物
(
もの
)
が
居
(
を
)
りますか』
344
岩
(
いは
)
『
居
(
を
)
るとも
居
(
を
)
るとも、
345
その
副
(
ふく
)
サンが
滑稽
(
こつけい
)
諧謔
(
かいぎやく
)
の
主
(
ぬし
)
だ。
346
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らお
正
(
しやう
)
月
(
ぐわつ
)
言葉
(
ことば
)
許
(
ばか
)
り
使
(
つか
)
つて
居
(
ゐ
)
る
宣伝使
(
せんでんし
)
中
(
ちう
)
には、
347
時
(
とき
)
に
取
(
と
)
つては
副
(
ふく
)
サンも
必要
(
ひつえう
)
だ。
348
或
(
あ
)
る
時機
(
じき
)
までは
大切
(
たいせつ
)
に
背負
(
せお
)
つて
行
(
ゆ
)
きなさい』
349
六
(
ろく
)
『
六
(
ろく
)
の
身体
(
からだ
)
から
一
(
ひと
)
つ
取
(
と
)
つたら
五
(
いつ
)
つになります。
350
五
(
い
)
ツの
御霊
(
みたま
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
にして
下
(
くだ
)
さいな』
351
岩
(
いは
)
『
宜
(
よろ
)
しい
宜
(
よろ
)
しい、
352
もう
暫
(
しば
)
らく
副
(
ふく
)
サンを
保留
(
ほりう
)
して
置
(
お
)
くんだよ』
353
遽
(
にはか
)
に
一陣
(
いちぢん
)
の
強風
(
きやうふう
)
吹
(
ふ
)
き
来
(
きた
)
ると
見
(
み
)
る
間
(
ま
)
に、
354
馬
(
うま
)
の
蹄
(
ひづめ
)
の
音
(
おと
)
、
355
何処
(
どこ
)
ともなく
響
(
ひび
)
いて、
356
木
(
こ
)
の
間
(
ま
)
に
現
(
あら
)
はれた
眉目
(
びもく
)
清秀
(
せいしう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
あり。
357
鷹
(
たか
)
『
貴方
(
あなた
)
は、
358
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
359
能
(
よ
)
う
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました。
360
一同
(
いちどう
)
の
者
(
もの
)
がどれ
丈
(
だ
)
け、
361
憧憬
(
あこが
)
れて
居
(
を
)
つた
事
(
こと
)
ぢやか
知
(
し
)
れませぬワ』
362
日
(
ひ
)
『ホー
皆
(
みな
)
サンご
苦労
(
くらう
)
でした。
363
しかし
音彦
(
おとひこ
)
、
364
外
(
ほか
)
二人
(
ふたり
)
は、
365
コシカ
峠
(
たうげ
)
においてウラル
教
(
けう
)
の
捕手
(
とりて
)
の
為
(
た
)
めに
包囲
(
はうゐ
)
攻撃
(
こうげき
)
されて、
366
進退
(
しんたい
)
維
(
これ
)
谷
(
きは
)
まり、
367
千仭
(
せんじん
)
の
谷間
(
たにま
)
に
身
(
み
)
を
投
(
とう
)
じて
気絶
(
きぜつ
)
をしてゐます。
368
時
(
とき
)
遅
(
おく
)
れては
一大事
(
いちだいじ
)
、
369
サアサア
皆
(
みな
)
サン
早
(
はや
)
くお
支度
(
したく
)
をなされ、
370
一鞭
(
ひとむち
)
当
(
あ
)
ててコシカ
峠
(
たうげ
)
の
溪間
(
けいかん
)
に、
371
宣伝使
(
せんでんし
)
を
救
(
すく
)
ひに
参
(
まゐ
)
りませう』
372
一同
(
いちどう
)
『ヨーそれは
大変
(
たいへん
)
』
373
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
くヒラリと
馬
(
うま
)
に
跨
(
またが
)
り、
374
九十九
(
つづら
)
折
(
をり
)
のサル
山峠
(
やまたうげ
)
の
坂道
(
さかみち
)
さして『ヤア
六
(
ろく
)
サン
来
(
きた
)
れ』と
一目散
(
いちもくさん
)
に
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
の
神
(
かみ
)
に
従
(
したが
)
ひ
走
(
はし
)
り
行
(
ゆ
)
く。
375
(
大正一一・三・二三
旧二・二五
藤津久子
録)
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【第3章 鷹彦還元|第14巻|如意宝珠|霊界物語|/rm1403】
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