霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二章 懸橋(かけはし)御殿(ごてん)〔八二四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第29巻 海洋万里 辰の巻 篇:第1篇 玉石混来 よみ(新仮名遣い):ぎょくせきこんらい
章:第2章 懸橋御殿 よみ(新仮名遣い):かけはしごてん 通し章番号:824
口述日:1922(大正11)年08月11日(旧06月19日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
竜国別、テーリスタン、カーリンスは謹厳を装って鏡の池の前で祈願していた。そこへヒルの国のテーナの里の酋長・アールの一行がやってきた。アールは祈願する三人の姿を見て感じ入り、自らも輿を降りて鏡の池の前に向かい拝跪し合掌した。
岩窟の中よりど拍子の抜けた声で、月照彦神を名乗る託宣が響いた。託宣は、アールに国玉依別命という名を与えた。託宣は、黄金の玉を竜国別を通じて献上せよと命じた。
竜国別はテーリスタンとカーリンスに命じて、玉を受け取らせたが、二人は足元に躓いて、鏡の池の中へ箱を落としてしまった。二人は慌てて池の中に飛び込んだ。
しかし玉の箱は二人が池に飛び込んだはずみで岩窟の奥の鷹依姫の前に飛び出した。鷹依姫は参拝の人々がいるのも忘れて玉の箱を抱えて岩窟の外に出てきてしまった。竜国別は鷹依姫に注意を促したが、鷹依姫は玉が手に入った以上はもういいと言う。
酋長のアールは鷹依姫が岩窟から出てきたのを見て、神様がお姿を現してくださったと想って感じ入り、鷹依姫に丁重に喜びの意を表した。鷹依姫はにわかに荘厳な口調にて、一同にアリナの滝で一昼夜禊をなすように言い渡した。
酋長一行が滝に向かった後、鷹依姫は箱を開けて中を見てみれば、中には金色燦然と輝く玉が入っていた。黒姫が持っていた玉に比べてやや小さいように感じたが、気のせいと思い直して、これを聖地に持って帰ることとした。
竜国別の思いつきで、これまで集めた玉の中からもっとも勝れたものを取ってそこに月照彦神様の御魂をうつして酋長夫婦にその玉を守る神司を命じ、そして自分たちは神の眷属として天上に帰った、という書置きを残すことにした。
一行は鏡の池に天津祝詞を奏上して酋長たちのために祈願をこらし、闇に紛れてその場を離れ、宇都の国の櫟が原という平原にたどり着いた。
次の日、酋長たちは禊を終えて鏡の池に来てみると、庵の中に自分たちが献上した玉箱が置かれ、書置きが残してあった。酋長夫婦は書置きの文句を固く信じ、酋長は国玉依別命、妻は玉竜姫命となって、鏡の池の神司を引き継ぐこととなった。
夫婦の祈願によって、相当の御神徳を頂く者が増えてきたことにより、それほど広くない鏡の池のあたりは、参拝の信者たちで雑踏をきたすことになった。やむを得ず数多の信者の協議の上、谷から谷へ橋を渡し、橋の上に高大な八尋殿を作った。
国玉依別命夫婦が神主となって神前に使え、三五教の教えを日夜宣伝した。これを懸橋の御殿と称えられることになった。
あるときから、丑満のころに神殿に怪しい物音が聞こえてくることを不審に思い、国玉依別夫婦は神前に端座して、正体を調べようと待っていた。神殿の床下から怪しい煙が立ち上り、蛸のような禿頭の不細工な神が現れて、玉を納めた輿の周りを廻っている。
国玉依別命は怪しい神に向かって毅然として誰何した。神は、自分は狭依彦の霊体であると告げ、以前の鏡の池の司たちは鷹依姫たちであり、策略によって国玉依別命から黄金の玉を奪い取って瑪瑙の玉とすり替えたのだ、と真実を告げた。
国玉依別命は、月照彦神の御神霊が宿られていることが大切なので、形ばかりの黄金の玉は惜しくないと告げた。狭依彦は、国玉依別命夫婦の真心に感じたと告げ、この神前に幽仕して神業を助けようと約束した。
夫婦は狭依彦の御魂を祀るべく鏡の池のほとりに宮を作って朝夕奉仕することになった。懸橋の御殿は月照彦神、狭依彦命、国魂神の威徳によって光輝を放ち、国玉依別命夫婦の盛名は高砂島に隈なく喧伝されることになった。
ちなみに、竜国別一行が高砂島を目指したのは、鷹依姫の神懸りを信じたためである。帰神への迷信は慎むべきである。しかしながら、これによって思いもかけず海外宣伝がなされたことは、神慮と言うべきである。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ:櫟ケ原(櫟が原) データ凡例: データ最終更新日:2021-12-19 17:11:21 文字数:4847 OBC :rm2902
愛善世界社版:26頁 八幡書店版:第5輯 474頁 修補版: 校定版:27頁 普及版:12頁 初版: ページ備考:昭和11年6月7日付けの付記がある
001 竜国別(たつくにわけ)、002テーリスタン、003カーリンスの三(さん)人(にん)は、004黄金(こがね)の玉(たま)献上(けんじやう)といふ旗印(はたじるし)を、005木(こ)の間(ま)にチラとすかし見(み)て、006胸(むね)を躍(をど)らせ、007俄(にはか)に心(こころ)も緊張(きんちやう)し、008謹厳振(きんげんぶり)を装(よそほ)うて、009祈願(きぐわん)に余念(よねん)なきものの如(ごと)く、010素知(そし)らぬ顔(かほ)にて一生(いつしやう)懸命(けんめい)に祈(いの)つて居(ゐ)る。011そこへ御輿(みこし)を担(かつ)がせ、012数多(あまた)の村人(むらびと)を伴(ともな)ひ、013ヒルの国(くに)のテーナの酋長(しうちやう)アールは盛装(せいさう)を整(ととの)へ、014細路(ほそみち)を漸(やうや)くにして、015アリナの滝(たき)を横(よこ)にながめ、016この岩窟(がんくつ)の前(まへ)に辿(たど)り着(つ)き、017三(さん)人(にん)の祈願(きぐわん)の姿(すがた)を見(み)て感(かん)じ入(い)り、018自分(じぶん)もソツと、019御輿(みこし)を傍(かたはら)の美(うる)はしき岩(いは)の上(うへ)に据(す)ゑさせ、020一生(いつしやう)懸命(けんめい)になつて鏡(かがみ)の池(いけ)に打向(うちむか)ひ、021拝跪(はいき)合掌(がつしやう)してゐる。022一同(いちどう)は無言(むごん)の儘(まま)、023テーナの酋長(しうちやう)の背後(はいご)に堵列(とれつ)し、024跪(ひざまづ)いて鏡(かがみ)の池(いけ)を隔(へだ)てて岩窟内(がんくつない)を拝(をが)みゐる。
025 岩窟(がんくつ)の中(なか)より、026奴拍子(どびやうし)の抜(ぬ)けた声(こゑ)で、
027月照彦(正体は鷹依姫)『月照彦(つきてるひこの)命(みこと)、028此処(ここ)に在(あ)り。029黄金(こがね)の玉(たま)を遥々(はるばる)と持参(ぢさん)致(いた)したる身魂(みたま)の美(うる)はしき信者(しんじや)、030一時(いつとき)も早(はや)く其処(そこ)に居(ゐ)る神司(かむづかさ)に手渡(てわた)し致(いた)せ、031汝(なんぢ)の名(な)は月照彦(つきてるひこの)神(かみ)より国玉依別(くにたまよりわけの)命(みこと)と名(な)を賜(たま)ふ』
032 酋長(しうちやう)のアールはハツと平伏(へいふく)し、
033アール『恐(おそ)れ乍(なが)ら、034月照彦(つきてるひこの)大神(おほかみ)様(さま)、035私(わたくし)はヒルの国(くに)のテーナの里(さと)の酋長(しうちやう)、036アールと申(まを)す賤(いや)しき神(かみ)の僕(しもべ)で御座(ござ)います。037此(こ)の度(たび)神界(しんかい)の御(ご)経綸(けいりん)上(じやう)いろいろの玉(たま)を、038神(かみ)様(さま)よりお集(あつ)めになると云(い)ふことを承(うけたま)はり、039家(いへ)の重宝(ぢうほう)として大切(たいせつ)に保護(ほご)致(いた)したる黄金(こがね)の玉(たま)を、040女房(にようばう)のアルナ姫(ひめ)と謀(はか)り、041只今(ただいま)此処(ここ)に持参(ぢさん)致(いた)しまして御座(ござ)います。042どうぞ御(お)調(しら)べの上(うへ)、043御(お)受納(うけをさ)め下(くだ)さいますれば、044私(わたくし)を始(はじ)め妻(つま)のアルナも恐悦(きようえつ)至極(しごく)に存(ぞん)ずることで御座(ござ)いませう』
045 岩穴(いはあな)の中(なか)より、
046月照彦(正体は鷹依姫)『国玉依別(くにたまよりわけの)命(みこと)、047神(かみ)は時節(じせつ)参(まゐ)りて、048声(こゑ)を人民(じんみん)の前(まへ)に発(はつ)する様(やう)になりたれ共(ども)、049吾(わが)姿(すがた)を現(あら)はすことは、050神界(しんかい)の規則(きそく)として相成(あひな)らざれば、051そこに控(ひか)へ居(を)る竜国別(たつくにわけ)の審神者(さには)、052月照彦(つきてるひこの)神(かみ)が代理(だいり)として受取(うけと)らしめむ、053左様(さやう)心得(こころえ)たがよからうぞ』
054 アール、055アルナの夫婦(ふうふ)はハツと許(ばか)りに有難(ありがた)涙(なみだ)をこぼし、
056アール、アルナ『実(じつ)に有難(ありがた)き神(かみ)の御(お)言葉(ことば)、057斯様(かやう)な嬉(うれ)しい事(こと)は御座(ござ)いませぬ。058……竜国別(たつくにわけ)の神司(かむづかさ)様(さま)、059どうぞ此(こ)の宝玉(ほうぎよく)をよく検(あらた)めて御(お)受取(うけと)りを願(ねが)ひ奉(たてまつ)ります』
060 竜国別(たつくにわけ)は、061漸(やうや)くにして重(おも)たさうに口(くち)を開(ひら)き、
062竜国別『其方(そなた)は噂(うはさ)に高(たか)きテーナの郷(さと)の酋長(しうちやう)であつたか。063其方(そなた)は神界(しんかい)に因縁(いんねん)深(ふか)き身魂(みたま)であるから、064斯(かく)の如(ごと)く結構(けつこう)な御用(ごよう)が勤(つと)めあがつたのであるぞよ。065有難(ありがた)く思(おも)へ。066……あいや、067テー、068カーの両人(りやうにん)、069酋長(しうちやう)アルナの献上(たてまつ)つた黄金(こがね)の宝玉(ほうぎよく)を早(はや)く実検(あらた)めて、070此(この)方(はう)が前(まへ)に差出(さしだ)せよ』
071 テー、072カー両人(りやうにん)は小声(こごゑ)にて、
073テーリスタン、カーリンス『何(なん)ぢや、074馬鹿(ばか)々々(ばか)しい。075竜国別(たつくにわけ)の奴(やつ)、076俄(にはか)に荘重(さうちよう)らしい言霊(ことたま)を使(つか)ひよつて、077まるで俺(おれ)達(たち)を奴扱(やつこあつか)ひにしやがる。078怪(け)しからぬ奴(やつ)だ。079これが果(はた)して吾々(われわれ)の捜(さが)してゐる黄金(こがね)の宝玉(ほうぎよく)なれば結構(けつこう)だが、080モシヤ鍍金玉(めつきだま)でもあつたら、081吾々(われわれ)両人(りやうにん)の者(もの)は愈(いよいよ)馬鹿(ばか)の上塗(うはぬ)りをせなならぬがなア』
082と呟(つぶや)き乍(なが)ら輿(こし)の前(まへ)に進(すす)み寄(よ)る。083アルナは恭(うやうや)しく輿(こし)の戸(と)を開(ひら)き、084玉筥(たまばこ)を取出(とりだ)し、085テー、086カーの二人(ふたり)の前(まへ)に差出(さしだ)した。087テー、088カー両人(りやうにん)は左右(さいう)より其(その)玉筥(たまばこ)を手(て)に取(と)り、089頭上(づじやう)高(たか)く捧(ささ)げ、090蟹(かに)の様(やう)になつて、091四(よつ)つの足(あし)をそろりそろりと運(はこ)び出(だ)した。092余(あま)り頭上(づじやう)の玉筥(たまばこ)に心(こころ)を奪(と)られ、093足許(あしもと)に気(き)が付(つ)かず、094岩角(いはかど)にガンと躓(つまづ)いた途端(とたん)に、095二人(ふたり)は玉筥(たまばこ)と共(とも)に、096鏡(かがみ)の池(いけ)にドブンと音(おと)立(た)てて落(お)ち込(こ)んで了(しま)つた。097竜国別(たつくにわけ)を始(はじ)め、098酋長(しうちやう)夫婦(ふうふ)、099其(その)他(た)一同(いちどう)は総立(そうだ)ちとなり『アツ』と叫(さけ)んで、100池(いけ)の面(おも)を眺(なが)めてゐる。101幸(さいは)ひ玉筥(たまばこ)は、102二人(ふたり)の落(お)ち込(こ)んだ機(はづ)みに撥(はね)られて、103岩窟(がんくつ)の中(なか)に都合(つがふ)よく飛(と)び込(こ)みにけり。
104 岩窟内(がんくつない)の鷹依姫(たかよりひめ)は吾(わが)足許(あしもと)に勢(いきほひ)よく飛込(とびこ)んで来(き)た玉筥(たまばこ)に心(こころ)を奪(うば)はれ、105外(そと)に酋長(しうちやう)其(その)他(た)の人々(ひとびと)の居(を)るのも忘(わす)れ、106玉筥(たまばこ)を引抱(ひつかか)へ、107ツカツカと岩窟内(がんくつない)を走(はし)り出(い)で、108竜国別(たつくにわけ)の前(まへ)に持来(もちきた)り、
109鷹依姫『コレコレ竜国別(たつくにわけ)、110よく検(あらた)めて御覧(ごらん)なさい。111全(まつた)くこれは本物(ほんもの)に相違(さうゐ)ありませぬぞよ』
112竜国別(たつくにわけ)『お母(か)アさま、113こんな所(とこ)へ出(で)られちや困(こま)るぢやありませぬか。114モウ暫(しばら)く幸抱(しんぼう)して居(を)つて下(くだ)さらぬと化(ばけ)が現(あら)はれますよ』
115鷹依姫(たかよりひめ)『モウ現(あら)はれたつて良(よ)いぢやないか。116斯(こ)うして此方(こちら)の手(て)に入(はい)つた以上(いじやう)は、117誰(たれ)が何(なん)と云(い)つても構(かま)はぬぢやないか』
118 斯(か)くする内(うち)テー、119カーの両人(りやうにん)は体中(からだぢう)、120青藻(あをも)を被(かぶ)つて這(は)ひ上(あが)り来(きた)り、
121テーリスタン、カーリンス『アーア、122玉(たま)のおかげで、123ドテライ目(め)に会(あ)ひ、124肝玉(きもだま)を潰(つぶ)し、125面目玉(めんぼくだま)をなくして了(しま)つた』
126 酋長(しうちやう)は鷹依姫(たかよりひめ)の姿(すがた)を見(み)て、127神(かみ)様(さま)の御意(ぎよい)に叶(かな)ひしと見(み)え、128大神(おほかみ)様(さま)は婆(ばば)の姿(すがた)と変(へん)じ、129此処(ここ)に生神(いきがみ)となつて出現(しゆつげん)し玉(たま)ひしものと深(ふか)く信(しん)じ、130有難(ありがた)涙(なみだ)をこぼし、131恐(おそ)る恐(おそ)る拍手(かしはで)を打(う)ち、
132アール『コレはコレは月照彦(つきてるひこの)神(かみ)様(さま)、133よくも御(ご)神体(しんたい)を現(あら)はして、134私(わたくし)如(ごと)き身魂(みたま)の曇(くも)つた者(もの)の前(まへ)に現(あら)はれ下(くだ)さいました。135どうぞ此(この)玉(たま)をお納(をさ)め下(くだ)さいますれば、136夫婦(ふうふ)の者(もの)の喜(よろこ)び、137里人(さとびと)の喜(よろこ)びは此(この)上(うへ)御座(ござ)いませぬ』
138 鷹依姫(たかよりひめ)はヤツと安心(あんしん)したものの如(ごと)く、139俄(にはか)に荘重(さうちよう)な口調(くてう)にて、
140鷹依姫『其(その)方(はう)、141国玉依別(くにたまよりわけの)命(みこと)、142神(かみ)は汝(なんぢ)の至誠(しせい)を満足(まんぞく)に思(おも)ふぞよ。143併(しか)し乍(なが)ら汝(なんぢ)に言(い)ひ渡(わた)したき事(こと)あれ共(ども)、144まだ身魂(みたま)の垢(あか)取(と)れざれば、145四五丁(しごちやう)下(くだ)つて、146アリナの滝(たき)に一日(いちにち)一夜(いちや)、147夫婦(ふうふ)共(とも)身魂(みたま)を浄(きよ)め、148又(また)従(したが)ひ来(きた)れる者共(ものども)、149残(のこ)らず赤裸(まつぱだか)となつて御禊(みそぎ)をなし、150更(あらた)めて吾(わが)前(まへ)に登(のぼ)り来(きた)れ。151大切(たいせつ)なる使命(しめい)を汝(なんぢ)に仰(あふ)せ付(つ)けるぞよ』
152 アール、153アルナの夫婦(ふうふ)を始(はじ)め、154供人(ともびと)一同(いちどう)は、155此(この)言葉(ことば)に、
156アール、アルナ、供人一同『ハイ畏(かしこ)まりました』
157と恐(おそ)る恐(おそ)る後(あと)しざりし乍(なが)ら、158岩窟(がんくつ)の前(まへ)を退(しりぞ)きアリナの滝(たき)に一昼夜(いつちうや)の御禊(みそぎ)をなすべく、159降(くだ)つて行(ゆ)く。
160 蜩(ひぐらし)の声(こゑ)は谷間(たにま)の木々(きぎ)にけたたましく聞(きこ)えて来(き)た。
161 鷹依姫(たかよりひめ)は一同(いちどう)をうまくアリナの滝(たき)に向(むか)はせおき、162猫(ねこ)の様(やう)に喉(のど)を鳴(な)らし、163玉筥(たまばこ)に飛付(とびつ)き、164中(なか)を開(ひら)いて見(み)れば、165金色(こんじき)燦然(さんぜん)たる黄金(こがね)の玉(たま)、166されど、167黒姫(くろひめ)が保管(ほくわん)せし玉(たま)に比(くら)べては、168稍(やや)小(ちい)さき感(かん)じがした。169されどこれも心(こころ)の故(せい)であらうと、170無理(むり)に得心(とくしん)し、171手早(てばや)く元(もと)の如(ごと)く蓋(ふた)を閉(と)ぢ、
172鷹依姫『サア此(この)玉(たま)さへ手(て)に入(はい)れば、173吾々(われわれ)の願望(ぐわんもう)は成就(じやうじゆ)したのだ。174併(しか)し乍(なが)らテーナの郷(さと)の酋長(しうちやう)に対(たい)し、175何(なに)か一(ひと)つの神徳(しんとく)を渡(わた)しておかねば済(す)むまい。176何(なん)とか良(よ)い工夫(くふう)はあるまいかな』
177竜国別(たつくにわけ)『お母(か)アさま、178そんなら斯(こ)う致(いた)しませう。179此(この)玉筥(たまばこ)の中(なか)の黄金(こがね)の玉(たま)は錦(にしき)の此(この)袋(ふくろ)に納(をさ)め吾々(われわれ)が持帰(もちかへ)ることと致(いた)し、180後(あと)へ此処(ここ)にある沢山(たくさん)の玉(たま)の中(うち)、181最(もつと)も優(すぐ)れたるものに、182月照彦(つきてるひこの)神(かみ)様(さま)の御霊(みたま)をうつし……『テーナの酋長(しうちやう)アールを以(もつ)て国玉依別(くにたまよりわけの)命(みこと)と名(な)を賜(たま)ひ、183アルナを以(もつ)て玉竜姫(たまたつひめの)命(みこと)と名(な)を賜(たま)ふ。184汝(なんぢ)はこれより此(この)庵(いほり)に永住(えいぢう)し、185月照彦(つきてるひこの)神(かみ)の神司(かむづかさ)となり、186普(あまね)く万民(ばんみん)を救(すく)へよ。187此(この)汝(なんぢ)が献(たてまつ)りし黄金(こがね)の玉(たま)は万劫(まんがふ)末代(まつだい)開(ひら)く可(べ)からず。188万一(まんいち)此(この)玉筥(たまばこ)を開(ひら)く時(とき)は神霊(しんれい)忽(たちま)ち現(あら)はれ、189汝(なんぢ)等(ら)夫婦(ふうふ)の身(み)に大災厄(だいさいやく)来(きた)り、190高砂島(たかさごじま)は、191地震(ぢしん)洪水(こうずい)の厄(やく)に遭(あ)ひ、192海底(かいてい)に沈没(ちんぼつ)するの虞(おそれ)あり、193必(かなら)ず必(かなら)ず神(かみ)の言葉(ことば)を反(そむ)く勿(なか)れ。194月照彦(つきてるひこの)神(かみ)は此(この)黄金(こがね)の玉(たま)に御霊(みたま)をうつし、195三(さん)人(にん)の眷属(けんぞく)を引連(ひきつ)れ、196雲(くも)に乗(の)つて天上(てんじやう)に帰(かへ)るべし』……(とスラスラと玉筥(たまばこ)のぐるりに烏羽玉(うばたま)の実(み)の汁(しる)もて書(か)き記(しる)し)……サア斯(こ)うしておけば、197酋長(しうちやう)も結構(けつこう)なお蔭(かげ)を戴(いただ)き、198御(ご)神徳(しんとく)が世界(せかい)に輝(かがや)くであらう』
199 これから[※御校正本も「これから」になっている。「それから」の誤りか?]此(この)鏡(かがみ)の池(いけ)にお暇乞(いとまごひ)の為(ため)に天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し、200後(あと)をよく御(お)願(ねが)ひ申(まを)し、
201『国玉依別(くにたまよりわけの)命(みこと)、202玉竜姫(たまたつひめの)命(みこと)に宏大(くわうだい)無辺(むへん)なる御(ご)神徳(しんとく)をお授(さづ)け下(くだ)され、203遂(つひ)には高砂島(たかさごじま)の生神(いきがみ)となつて、204人望(じんばう)を一身(いつしん)に集(あつ)むる様(やう)御(ご)守護(しゆご)下(くだ)さいませ』
205と一生(いつしやう)懸命(けんめい)に祈願(きぐわん)し、206一行(いつかう)四(よ)人(にん)は闇(やみ)に紛(まぎ)れて、207雲(くも)を霞(かすみ)と、208山(やま)を越(こ)え、209夜(よ)を日(ひ)に継(つ)いで、210漸(やうや)く宇都(うづ)の国(くに)の櫟(くぬぎ)が原(はら)と云(い)ふ平原(へいげん)に辿(たど)り着(つ)きけり。
211 アール、212アルナの酋長(しうちやう)夫婦(ふうふ)は月照彦(つきてるひこ)の神示(しんじ)と確信(かくしん)し、213一昼夜(いつちうや)の御禊(みそぎ)を終(をは)り、214恭(うやうや)しく鏡(かがみ)の池(いけ)の前(まへ)に来(き)て見(み)れば、215庵(いほり)の中(なか)は藻抜(もぬ)けの殻(から)、216神(かみ)様(さま)の声(こゑ)もなければ、217三(さん)人(にん)の男(をとこ)の姿(すがた)も見(み)えぬ。218……ハテ不思議(ふしぎ)……と庵(いほり)の中(なか)を隈(くま)なく捜(さが)し見(み)れば、219美(うる)はしき石(いし)を積(つ)み重(かさ)ね、220其(その)上(うへ)に自分(じぶん)の持来(もちきた)りし玉筥(たまばこ)がキチンと載(の)つて居(ゐ)る。221よくよく見(み)れば以前(いぜん)の文句(もんく)が書(か)き記(しる)してある。222酋長(しうちやう)夫婦(ふうふ)は送(おく)り来(きた)りし御輿(みこし)を鏡(かがみ)の池(いけ)の向(むか)ふ側(がは)、223岩窟(がんくつ)の入口(いりぐち)に安置(あんち)し、224玉筥(たまばこ)を再(ふたた)び其(その)中(なか)に納(をさ)め、225書置(かきお)きの文句(もんく)を堅(かた)く信(しん)じ、226自分(じぶん)は国玉依別(くにたまよりわけの)命(みこと)、227妻(つま)は玉竜姫(たまたつひめの)命(みこと)となり済(す)まし、228御輿(みこし)の前(まへ)に朝夕(あさゆふ)祈願(きぐわん)を凝(こ)らし、229夜(よ)は庵(いほり)に入(い)りて、230夫婦(ふうふ)はここを住処(すみか)とし、231普(あまね)く四方(しはう)より参(まゐ)り来(きた)る人々(ひとびと)の為(ため)に福徳(ふくとく)円満(ゑんまん)、232寿命(じゆみやう)長久(ちやうきう)、233病気(びやうき)平癒(へいゆ)などの祈願(きぐわん)を凝(こ)らし居(ゐ)たりける。
234 テー、235カー二人(ふたり)の宣伝(せんでん)は大(おほい)に功(こう)を奏(そう)したと見(み)え、236日々(にちにち)絡繹(らくえき)として、237玉(たま)の形(かたち)したる石塊(いしころ)を携(たづさ)へ、238或(あるひ)はいろいろの木(こ)の実(み)を持来(もちきた)りて神前(しんぜん)に供(きよう)し、239国玉依別(くにたまよりわけの)命(みこと)夫婦(ふうふ)の祈願(きぐわん)を依頼(いらい)し、240相当(さうたう)の御(ご)神徳(しんとく)を蒙(かうむ)つて帰(かへ)る者(もの)、241日(ひ)に月(つき)に殖(ふ)えて来(き)た。242遂(つひ)には余(あま)り多数(たすう)の参詣者(さんけいしや)にて、243身(み)を容(い)るる所(ところ)なく、244余(あま)り広(ひろ)からざる鏡(かがみ)の池(いけ)のあたりは、245身動(みうご)きならぬ計(ばか)りの雑閙(ざつたう)を来(きた)すこととなり、246止(や)むを得(え)ず、247数多(あまた)の信者(しんじや)協議(けふぎ)の上(うへ)、248谷(たに)から谷(たに)へ橋(はし)を渡(わた)し、249宏大(くわうだい)なる八尋殿(やひろどの)を造(つく)り、250ここに改(あらた)めて玉筥(たまばこ)を奉斎(ほうさい)し、251夫婦(ふうふ)は神主(かむぬし)として神前(しんぜん)に仕(つか)へ、252国(くに)、253玉(たま)、254依(より)、255竜(たつ)、256別(わけ)などの人々(ひとびと)を幹部(かんぶ)とし、257三五(あななひ)の神(かみ)の教(をしへ)を日夜(にちや)宣伝(せんでん)することとなりぬ。258此(この)八尋殿(やひろどの)は谷(たに)の上(うへ)を塞(ふさ)いで橋(はし)の如(ごと)く造(つく)られたるを以(もつ)て、259懸橋(かけはし)の御殿(ごてん)と称(とな)へられける。
260 国玉依別(くにたまよりわけ)夫婦(ふうふ)は、261毎夜(まいよ)丑満(うしみつ)の頃(ころ)に、262神殿(しんでん)に怪(あや)しき物音(ものおと)の聞(きこ)ゆるに不審(ふしん)を起(おこ)し、263十五(じふご)の月(つき)の照(て)り輝(かがや)く夜(よ)、264幹部(かんぶ)にも知(し)らさず、265夫婦(ふうふ)只(ただ)二人(ふたり)、266神前(しんぜん)に端坐(たんざ)して、267怪(あや)しき物音(ものおと)の正体(しやうたい)を調(しら)べむと待構(まちかま)へてゐた。268神殿(しんでん)の床下(ゆかした)より怪(あや)しき煙(けむり)ポーツと立昇(たちのぼ)り、269朦朧(もうろう)として蛸(たこ)の様(やう)な禿頭(はげあたま)の不細工(ぶさいく)な一柱(ひとはしら)の神(かみ)、270腰(こし)をくの字(じ)に曲(ま)げて、271煙(けぶり)の中(なか)より現(あら)はれ、272輿(こし)のぐるりを幾回(いくくわい)となく、273クルクルと廻(まは)つてゐる、274其(その)怪(あや)しさ、275厭(いや)らしさ。276玉竜姫(たまたつひめ)は肝(きも)を潰(つぶ)し『キヤツ』と悲鳴(ひめい)をあげて其(その)場(ば)に倒(たふ)れた。277国玉依別(くにたまよりわけ)は流石(さすが)気丈(きぢやう)の男子(だんし)とて、278怪(あや)しき影(かげ)に向(むか)ひ、279言葉(ことば)厳(おごそ)かに、
280国玉依別『吾(われ)こそは月照彦(つきてるひこの)神(かみ)の命(めい)を奉(ほう)じ、281御(ご)神霊(しんれい)を玉筥(たまばこ)に納(をさ)め、282朝夕(あさゆふ)此(この)八尋殿(やひろどの)を作(つく)りて奉仕(ほうし)する神司(かむづかさ)なるぞ。283汝(なんぢ)何者(なにもの)なるか、284吾々(われわれ)の許(ゆる)しもなく、285神聖(しんせい)なる神殿(しんでん)に夜(よ)な夜(よ)な現(あら)はれ来(きた)り、286御(ご)神宝(しんぱう)の辺(あた)りに附纏(つきまと)ふ曲者(くせもの)、287名(な)を名乗(なの)れ、288返答(へんたふ)次第(しだい)に依(よ)つては容赦(ようしや)は致(いた)さぬぞ』
289とキツとなつて身構(みがま)へした。290怪(あや)しき影(かげ)は追々(おひおひ)濃厚(のうこう)の度(ど)を増(ま)し、291そこに倒(たふ)れたる玉竜姫(たまたつひめ)の傍(かたはら)に足音(あしおと)も立(た)てず寄添(よりそ)ひ、292細(ほそ)き手(て)を伸(の)べて、293二三回(にさんくわい)胸(むね)のあたりを撫(な)でさすれば、294姫(ひめ)は忽(たちま)ち正気(しやうき)づき、295両手(りやうて)を合(あは)せて怪物(くわいぶつ)に向(むか)ひ、296恐(おそ)れ気(げ)もなく感謝(かんしや)の意(い)を表(へう)し居(ゐ)たりける。
297 国玉依別(くにたまよりわけ)は合点(がつてん)行(ゆ)かず、298黙然(もくねん)として怪物(くわいぶつ)の姿(すがた)を眺(なが)めて居(ゐ)た。299怪物(くわいぶつ)は涼(すず)しき、300細(ほそ)き声(こゑ)にて、
301怪物(くわいぶつ)『吾(わ)れこそはアリナの滝(たき)の水上(みなかみ)、302鏡(かがみ)の池(いけ)の岩窟(がんくつ)に三五(あななひ)の教(をしへ)を宣伝(せんでん)し居(ゐ)たる狭依彦(さよりひこ)の神(かみ)の霊体(れいたい)である。303吾(わ)れ帰幽後(きいうご)は、304一人(ひとり)として吾(わが)霊魂(れいこん)を祭(まつ)る者(もの)なく、305御供(ごく)一(ひと)つ供(そな)へ呉(く)るる者(もの)もなし。306然(しか)るに一(いち)年(ねん)以前(いぜん)、307三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)鷹依姫(たかよりひめ)、308竜国別(たつくにわけ)は二人(ふたり)の供人(ともびと)を引連(ひきつ)れ、309鏡(かがみ)の池(いけ)の岩窟(がんくつ)に来(きた)り、310玉集(たまあつ)めをなし、311遂(つひ)に汝(なんぢ)が家(いへ)の重宝(ぢうほう)黄金(こがね)の玉(たま)を奪(うば)ひ取(と)り帰(かへ)りたり。312吾(わ)れは此(この)事(こと)を汝(なんぢ)に知(し)らさむが為(ため)に夜(よ)な夜(よ)な出現(しゆつげん)するものなり。313其(その)玉筥(たまばこ)の中(なか)は瑪瑙(めなう)の玉(たま)と摺替(すりか)へおき、314黄金(こがね)の玉(たま)を引(ひつ)さらへて、315四(よ)人(にん)の者(もの)は今(いま)や宇都(うづ)の国(くに)の櫟(くぬぎ)が原(はら)に出(い)で、316草原(くさはら)をあちらこちらとさまよひつつあり。317汝(なんぢ)は其(その)玉(たま)を取返(とりかへ)す所存(しよぞん)なきか』
318国玉依(くにたまより)『何(いづ)れの神(かみ)様(さま)かと思(おも)へば、319昔(むかし)鏡(かがみ)の池(いけ)の神(かみ)として有名(いうめい)なる狭依彦(さよりひこ)様(さま)で御座(ござ)いましたか。320御(ご)親切(しんせつ)は有難(ありがた)う御座(ござ)いまするが、321何事(なにごと)も因縁(いんねん)づくと諦(あきら)めて居(を)りますれば、322仮令(たとへ)黄金(こがね)の玉(たま)が瑪瑙(めなう)の玉(たま)に変(かは)ればとて、323少(すこ)しも苦(くる)しうは御座(ござ)いませぬ。324月照彦(つきてるひこ)の御(ご)神霊(しんれい)の懸(うつ)らせ玉(たま)ふ以上(いじやう)は、325仮令(たとへ)団子石(だんごいし)の玉(たま)にても、326私(わたくし)に取(と)つては、327それの方(はう)が何程(なにほど)重宝(ちようほう)だか知(し)れませぬ。328黄金(こがね)の玉(たま)などには少(すこ)しも執着(しふちやく)はかけませぬ』
329狭依彦(さよりひこ)『実(じつ)に感(かん)じ入(い)つたる其(その)方(はう)の心掛(こころが)け、330それでこそ三五教(あななひけう)の神(かみ)の教(をしへ)は天下(てんか)に拡(ひろ)まり、331万民(ばんみん)を救(すく)う事(こと)が出来(でき)るであらう。332狭依彦(さよりひこ)も汝(なんぢ)夫婦(ふうふ)が尊(たつと)き、333清(きよ)き真心(まごころ)に感(かん)じ、334これより此(この)神前(しんぜん)に幽仕(いうし)して、335汝(なんぢ)が神業(しんげふ)を助(たす)けむ。336ゆめゆめ疑(うたが)ふ事(こと)勿(なか)れ』
337と又(また)もやパツと立上(たちのぼ)る煙(けぶり)の中(なか)に、338怪(あや)しき姿(すがた)を消(け)しにける。339これより夫婦(ふうふ)は狭依彦(さよりひこ)の霊(みたま)を祀(まつ)るべく鏡(かがみ)の池(いけ)の傍(かたはら)に宮(みや)を造(つく)り、340朝夕(あさゆふ)に種々(くさぐさ)の供物(くもつ)を献(けん)じ、341崇敬(すうけい)怠(おこた)らざりき。342月照彦(つきてるひこの)神(かみ)の霊力(れいりよく)と狭依彦(さよりひこ)の守護(しゆご)と、343国魂(くにたまの)神(かみ)の威徳(ゐとく)に依(よ)つて、344懸橋(かけはし)の御殿(ごてん)の奥深(おくふか)く斎(いつ)き奉(まつ)れる神壇(しんだん)は日(ひ)に月(つき)に神徳(しんとく)輝(かがや)き、345遂(つひ)には高砂島(たかさごじま)全部(ぜんぶ)に国玉依別(くにたまよりわけ)夫婦(ふうふ)の盛名(せいめい)は隈(くま)なく喧伝(けんでん)さるるに至(いた)りける。
346 鰯(いわし)の頭(あたま)も信心(しんじん)からとやら、347黄金(こがね)の玉(たま)は掏(す)り替(かへ)られ、348似(に)ても似(に)つかぬ瑪瑙(めなう)の玉(たま)も神(かみ)の神霊(しんれい)の力(ちから)と、349信仰(しんかう)の誠(まこと)に依(よ)つて無限(むげん)絶大(ぜつだい)なる光輝(くわうき)を放(はな)つに至(いた)りしを見(み)れば、350形体(けいたい)上(じやう)の宝(たから)の、351余(あま)り尊重(そんちよう)すべき物(もの)にあらざるを悟(さと)り得(え)らるるなるべし。352あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)。
353(大正一一・八・一一 旧六・一九 松村真澄録)
354○
355 因(ちなみ)に曰(い)ふ。356竜国別(たつくにわけ)一行(いつかう)が遥々(はるばる)海洋(かいやう)万里(ばんり)の浪(なみ)を渡(わた)りて、357玉(たま)の所在(ありか)を尋(たづ)ねむとしたるは、358実(じつ)は鷹依姫(たかよりひめ)の帰神(かむがかり)を盲信(まうしん)したるが故(ゆゑ)なり。359帰神(かむがかり)に迷信(めいしん)したるもの程(ほど)、360憐(あは)れむべきは無(な)かるべし。361然(さ)り乍(なが)ら又(また)一方(いつぱう)には、362是(これ)によりて海外(かいぐわい)の布教(ふけう)宣伝(せんでん)を為(な)し得(え)たるは神慮(しんりよ)と云(い)ふべき也(なり)。[※「因に曰ふ」からの文章は王仁三郎が校正の際に付け加えたものである。校定版・八幡版では「帰神」ではなく「神憑」に直されている。]
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