霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第八章 高姫(たかひめ)慴伏(せふふく)〔八三〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第29巻 海洋万里 辰の巻 篇:第2篇 石心放告 よみ(新仮名遣い):せきしんほうこく
章:第8章 高姫慴伏 よみ(新仮名遣い):たかひめしょうふく 通し章番号:830
口述日:1922(大正11)年08月11日(旧06月19日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
一行はようやく滝に着いた。すでに四五人の信者が禊をしている。高姫たちも身を清め、鏡の池の前に出たときにはちょうど夜が明けていた。
池の傍らには狭依彦命のお宮が新造されていた。以前に竜国別らが住んでいた庵には、奉仕者が詰めている。諸方から献上された玉は、積み上げられていた。上方には新造の懸橋御殿が建っている。
高姫は鏡の池に拍手しながらも、すでに積み上げられた玉に気を取られ、隼のような眼で眺めいっている。すると長年の沈黙を破ってブクブクと唸り出した。池の声は、いろは歌で高姫のこれまでの所業を数え挙げ、金毛九尾の邪神に使われていると非難を始めた。
高姫もいろは歌で池の神に言い返す。池の神は月照彦神と名乗り、高姫に改心を迫った。高姫は自分は審神の第一人者だと言って言い返し、常彦がたしなめても聞かない。池の神はまたしてもいろは歌で高姫の罪を責めた。高姫は池の神をすっぽんだと罵る。
高姫は、玉は懸橋御殿に隠してあると言い出した。まだ責め立てる池の神に対して、悪口を返す高姫を常彦と春彦はなだめるが、高姫は二人に食ってかかった。
そこへ懸橋御殿の神司である国玉依別がやってきた。国玉依別は、鏡の池に詣でる前に、懸橋御殿にお参りするようにと案内した。
高姫は池の神はすっぽんだと罵って、玉のひとつを池に投げ込んだ。すると池の中から恐ろしい唸り声が大地を揺らし、高姫はその場にへたり込んでしまった。しかし高姫以外の人たちにはこの音響は音楽のように聞こえていた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-12-25 16:56:52 文字数:8979 OBC :rm2908
愛善世界社版:109頁 八幡書店版:第5輯 505頁 修補版: 校定版:110頁 普及版:50頁 初版: ページ備考:
001 高姫(たかひめ)一行(いつかう)は漸(やうや)くにしてアリナの滝(たき)に着(つ)いた。002四五(しご)人(にん)の信者(しんじや)らしき者(もの)滝壺(たきつぼ)の前(まへ)に赤裸(まつぱだか)のまま跪(ひざまづ)いて何事(なにごと)か一生(いつしやう)懸命(けんめい)に祈願(きぐわん)してゐる。003されど轟々(ぐわうぐわう)たる瀑布(ばくふ)の音(おと)に聞(き)き取(と)ることは出来(でき)なかつた。004高姫(たかひめ)一行(いつかう)は身(み)を浄(きよ)め、005それより、006瀑布(ばくふ)の右側(みぎがは)を攀登(よぢのぼ)り、007漸(やうや)くにして鏡(かがみ)の池(いけ)に着(つ)いたのは恰度(ちやうど)夜明(よあ)けであつた。008群鴉(むらからす)は前後(ぜんご)左右(さいう)に飛交(とびか)ひ、009『カアカア』と潔(いさぎよ)く鳴(な)いてゐる。
010 因(ちなみ)に云(い)ふ、011朝(あさ)なく烏(からす)は最(もつと)も冴(さ)えたる声(こゑ)にて、012『カアカア』と鳴(な)く、013之(これ)を鵲(かささぎ)と云(い)ふ、014少(すこ)しく普通(ふつう)の烏(からす)よりは矮小(わいせう)である。015夕(ゆふ)べに鳴(な)くのを之(これ)を真(しん)の烏(からす)と云(い)ふ。016夕(ゆふ)べの烏(からす)は鵲(かささぎ)に比(くら)べては余程(よほど)体格(たいかく)も大(おほ)きく、017どこともなしに下品(げひん)な所(ところ)があり、018鳴声(なきごゑ)は『ガアガア』と濁(にご)つて居(ゐ)る。019又(また)百人(ひやくにん)一首(いつしゆ)の歌(うた)に……鵲(かささぎ)の渡(わた)せる橋(はし)におく霜(しも)の白(しろ)きを見(み)れば夜(よ)ぞ更(ふ)けにける……とある鵲(かささぎ)の橋(はし)は大極殿(たいきよくでん)の階段(かいだん)を指(さ)したものである。020カと云(い)ふ言霊(ことたま)は輝(かがや)き照(て)る意(い)、021ササギは幸(さちは)ひと云(い)ふ意義(いぎ)である。022天津(あまつ)日継(ひつぎ)天皇(てんのう)様(さま)の御(ご)昇降(しようかう)遊(あそ)ばす、023行幸橋(みゆきはし)と云(い)ふ意味(いみ)である。024又(また)帝陵(ていりよう)をみささぎと云(い)ふのは、025水幸(みづさち)はふと云(い)ふ意味(いみ)であつて、026神霊(しんれい)の脱出(だつしゆつ)し給(たま)ひたる肉体(にくたい)は即(すなは)ち水(みづ)である。027それ故(ゆゑ)、028崩御(ほうぎよ)して行幸(みゆき)遊(あそ)ばす所(ところ)を御陵(みささぎ)と云(い)ふのである。029鵲(かささぎ)のカは火(ひ)の意義(いぎ)であり御陵(みささぎ)のミは水(みづ)の意義(いぎ)である。030今(いま)鳴(な)いた烏(からす)は即(すなは)ち鵲(かささぎ)の声(こゑ)であつた。
031 鏡(かがみ)の池(いけ)の傍(かたはら)には狭依彦(さよりひこの)命(みこと)の神霊(しんれい)が新(あたら)しき宮(みや)を立(た)てて斎(まつ)られてあつた。032さうして、033岩窟(がんくつ)の前方(ぜんぱう)左側(さそく)の方(はう)に鏡(かがみ)の池(いけ)に向(むか)つて、034竜国別(たつくにわけ)等(ら)の住(す)まつてゐた庵(いほり)が残(のこ)つてゐる。035そこには国(くに)、036玉(たま)の両人(りやうにん)が鏡(かがみ)の池(いけ)の番(ばん)を兼(か)ね、037狭依彦(さよりひこ)神社(じんじや)の奉仕(ほうし)にかかつて居(ゐ)た。038諸方(しよはう)より献上(けんじやう)したる種々(いろいろ)の玉石(たまいし)や瑪瑙(めなう)などの玉(たま)は山(やま)の如(ごと)くに積(つ)み重(かさ)ねられてある。039少(すこ)しく上(うへ)の方(はう)には例(れい)の懸橋(かけはし)の御殿(ごてん)が新造(しんざう)され、040木(き)の香(にほひ)香(かう)ばしく、041あたりに漂(ただよ)ひゐたり。
042 高姫(たかひめ)は鏡(かがみ)の池(いけ)に向(むか)ひ、043拍手(はくしゆ)し乍(なが)ら、044うづ高(たか)くつまれたる種々(しゆじゆ)の玉(たま)に早(はや)くも目(め)をつけ、045如意(によい)宝珠(ほつしゆ)、046麻邇(まに)の宝玉(ほうぎよく)などはなきかと、047隼(はやぶさ)の如(ごと)き眼(まなこ)を光(ひか)らせ乍(なが)ら眺(なが)め入(い)つた。048鏡(かがみ)の池(いけ)は俄(にはか)に永年(ながねん)の沈黙(ちんもく)を破(やぶ)つて、
049声『ブクブクブク、050ウンウンウン』
051と唸(うな)り出(だ)した。052国(くに)、053玉(たま)の神司(かむづかさ)は顔色(がんしよく)を変(か)へて、054懸橋(かけはし)御殿(ごてん)へ国玉依別(くにたまよりわけ)の神司(かむづかさ)の前(まへ)に報告(はうこく)の為(ため)に走(はし)つて行(ゆ)く。055池(いけ)の中(なか)より、
056声『アヽヽ、057綾(あや)の聖地(せいち)をあとにして、058玉(たま)の所在(ありか)を尋(たづ)ねむと、059執着心(しふちやくしん)の魔(ま)につかれ、060ここまで出(で)て来(き)たうろたへ宣伝使(せんでんし)。
061イヽヽ、062意久地(いくぢ)なしの常彦(つねひこ)、063春彦(はるひこ)を力(ちから)と致(いた)し、064海原(うなばら)を渡(わた)り、065漸(やうや)うここまでやつて来(き)た意地悪(いぢわる)同志(どうし)の三人(さんにん)連(づれ)のイカサマ宣伝使(せんでんし)。
066ウヽヽ、067うろたへ騒(さわ)いで南洋(なんやう)諸島(しよたう)はまだ愚(おろか)、068高砂島(たかさごじま)まで、069小(ちい)さき意地(いぢ)と欲(よく)とに絡(から)まれて、070ド迷(まよ)ひ来(きた)る高姫(たかひめ)のデモ宣伝使(せんでんし)。
071エヽヽ、072遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)もなく人(ひと)の門戸(もんこ)を叩(たた)き、073沓島(くつじま)の鍵(かぎ)を盗(ぬす)み出(だ)し、074如意(によい)宝珠(ほつしゆ)の玉(たま)を呑(の)み込(こ)み、075ウラナイ教(けう)を立(た)てて三五教(あななひけう)の瑞(みづ)の御霊(みたま)に刃向(はむか)ひたる没分暁漢(わからづや)の宣伝使(せんでんし)。
076オヽヽ、077大江山(おほえやま)の山麓(さんろく)魔窟(まくつ)ケ原(はら)に土窟(どくつ)を作(つく)り、078又(また)庵(いほり)を結(むす)び、079庵(いほり)の火事(くわじ)を起(おこ)してうろたへ騒(さわ)いだ肝(きも)の小(ちい)さい、080口(くち)許(ばか)り立派(りつぱ)なデモ宣伝使(せんでんし)。
081カヽヽ、082烏(からす)の鳴(な)かぬ日(ひ)があつても、083玉(たま)に執着心(しふちやくしん)の離(はな)れた日(ひ)のない執念深(しふねんぶか)き、084高(たか)、085黒(くろ)、086二人(ふたり)の宣伝使(せんでんし)。
087キヽヽ、088鬼城山(きじやうざん)の木常姫(こつねひめ)の再来(さいらい)、089金毛(きんまう)九尾(きうび)の悪狐(あくこ)に憑依(ひようい)された外面(げめん)如(によ)菩薩(ぼさつ)、090内心(ないしん)如(によ)夜叉(やしや)のイカサマ宣伝使(せんでんし)。
091クヽヽ、092国依別(くによりわけ)の偽(にせ)天狗(てんぐ)に誑(たぶら)かされ、093三人(さんにん)連(づれ)にて竹生島(ちくぶしま)迄(まで)玉(たま)捜(さが)しに参(まゐ)り、094よい恥(はぢ)を曬(さら)して、095スゴスゴ聖地(せいち)へ帰(かへ)つて来(き)た高(たか)、096黒(くろ)、097宣伝使(せんでんし)。
098ケヽヽ、099見当(けんたう)の取(と)れぬ仕組(しぐみ)ぢやと申(まを)して、100行(ゆき)つまる度(たび)に逃(に)げを張(は)るズルイ宣伝使(せんでんし)。
101コヽヽ、102小面(こづら)憎(にく)い程(ほど)自我心(じがしん)の強(つよ)い、103困(こま)り者(もの)の宣伝使(せんでんし)。104今日(こんにち)限(かぎ)り直日(なほひ)の身魂(みたま)に立帰(たちかへ)り、105我(が)を折(を)らねば、106其(その)方(はう)の思惑(おもわく)は何時(いつ)になつても成就(じやうじゆ)致(いた)さぬのみか、107万劫(まんがふ)末代(まつだい)の恥(はぢ)を曬(さら)さねばならぬぞよ』
108高姫(たかひめ)『あゝゝ、109何(いづ)れの水神(すゐじん)さまか知(し)りませぬが、110こう見(み)えても私(わたし)は日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)、111水神(すゐじん)さま位(くらゐ)に御(ご)意見(いけん)を受(う)けるやうな高姫(たかひめ)とは一寸(ちよつと)違(ちが)ひますワイ。
112いゝゝ、113意見(いけん)がましい事(こと)を云(い)つて威張(ゐば)らうと思(おも)つても、114いつかな いつかな其(その)様(やう)なイカサマ宣示(せんじ)はいつになつても、115聞(き)きませぬぞや。
116うゝゝ、117うさんな声(こゑ)を出(だ)して、118ウヨウヨと水(みづ)の中(なか)から泡(あわ)を吹(ふ)くよりも、119天晴(あつぱ)れと正体(しやうたい)を現(あら)はして言(い)ひなされ。120日(ひ)の出神(でのかみ)が審神(さには)をして、121善(ぜん)か悪(あく)かを調(しら)べて改心(かいしん)さして上(あ)げませうぞや。
122えゝゝ、123得体(えたい)の知(し)れぬ神(かみ)の云(い)ふ事(こと)は、124高姫(たかひめ)の耳(みみ)には這入(はい)りませぬぞや。
125おゝゝ、126鬼(おに)でも蛇(じや)でも悪魔(あくま)でも、127誠一(まことひと)つの生粋(きつすゐ)の大和(やまと)魂(だましひ)で改心(かいしん)させる此(この)高姫(たかひめ)で厶(ござ)いますぞ。128余(あま)り見違(みちがひ)をして下(くだ)さるなや。
129かゝゝ、130かけ構(かま)へのないことを、131傍(かたはら)から干渉(かんせう)して貰(もら)ふと癇癪玉(かんしやくだま)が破裂(はれつ)致(いた)しますぞ。
132きゝゝ、133鬼城山(きじやうざん)だの、134金毛(きんまう)九尾(きうび)だのと何(なに)を証拠(しようこ)に、135そんな悪口(あくこう)雑言(ざふごん)を仰有(おつしや)るのです。
136くゝゝ、137苦労(くらう)なしのヤクザ神(かみ)では誠(まこと)のお仕組(しぐみ)は分(わか)りませぬぞや。
138けゝゝ、139気(け)もない間(うち)から世界(せかい)の事(こと)を神(かみ)、140仏事(ぶつじ)、141人民(じんみん)に説(と)いてきかす変性(へんじやう)男子(なんし)の系統(ひつぽう)の生宮(いきみや)で御座(ござ)いますぞ。142見当違(けんたうちが)ひをして下(くだ)さるな。
143こゝゝ、144ここまで言(い)うたら、145お前(まへ)も曲津(まがつ)か何(なに)か知(し)らねど、146チツとは合点(がてん)がいつたでせう。147今後(こんご)はこんな馬鹿(ばか)な真似(まね)はなさらぬが宜(よろ)しいぞや』
148 池(いけ)の中(なか)より、
149声『サヽヽ、150逆理窟(さかりくつ)計(ばか)りこねまはす、151探女(さぐめ)醜女(しこめ)の宣伝使(せんでんし)、152サアサア今日(けふ)よりサツパリと了見(れうけん)を直(なほ)し、153月照彦(つきてるひこの)神(かみ)の命令(めいれい)を奉(ほう)ずるか、154さなくば其(その)方(はう)の職名(しよくめい)を剥奪(はくだつ)せうか』
155高姫(たかひめ)『さゝゝ、156何(なん)ぼなつと、157勝手(かつて)に喋(しやべ)つておきなされ。158審神(さには)の随一(ずゐいつ)と聞(きこ)えたる此(この)高姫(たかひめ)、159指一本(ゆびいつぽん)さへる者(もの)は、160神々(かみがみ)にも人民(じんみん)にも御座(ござ)いませぬぞえ』
161 池(いけ)の中(なか)より、
162声『シヽヽ、163渋(しぶ)とい執着心(しふちやくしん)のどこ迄(まで)も取(と)れぬ、164負(ま)けぬ気(き)の強(つよ)い女(をんな)だのう。165何程(なにほど)言(い)うても、166其(その)方(はう)の耳(みみ)は死人(しにん)も同様(どうやう)だ。167叱(しか)つてもたらしても、168どうにも斯(か)うにも仕様(しやう)のない厄介者(やつかいもの)だ』
169高姫(たかひめ)『しゝゝ、170知(し)りませぬワイナ。171お前(まへ)こそしぶといぢやないか。172これ丈(だけ)誠一筋(まことひとすぢ)の神(かみ)の生宮(いきみや)が分(わか)らぬやうなことで、173エラソウに知(し)つた顔(かほ)をなさるな。174百(ひやく)八十一(はちじふいち)通(とほ)りの神(かみ)様(さま)の階級(かいきふ)の中(うち)でも、175第三番(だいさんばん)目(め)の日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)で御座(ござ)いますぞ。176お前(まへ)さまは百八十(ひやくはちじふ)段(だん)以下(いか)の神(かみ)様(さま)だから、177こんな池(いけ)の底(そこ)に何時(いつ)までもひつ込(こ)んで……ヘン月照彦(つきてるひこ)なんて、178愛想(あいさう)が尽(つ)きますワイ。179大方(おほかた)運(うん)がつきてる彦(ひこ)だろ。180オホヽヽヽ』
181 池(いけ)の中(なか)より、
182声『スヽヽ、183すつたもんだと理窟(りくつ)計(ばか)りこねまはし、184そこら中(ぢう)を飛(とび)まはり、185法螺(ほら)をふきまはし、186玉(たま)に現(うつつ)を抜(ぬ)かす、187玉抜(たまぬけ)宣伝使(せんでんし)。188チツと胸(むね)に手(て)を当(あ)てて考(かんが)へたらどうだ』
189高姫(たかひめ)『すゝゝ、190好(す)かんたらしい。191いい加減(かげん)に水(みづ)の中(なか)で庇(へ)こいたやうな事(こと)を云(い)うておきなさい。192こつちの方(はう)から愛想(あいさう)が月照彦(つきてるひこ)だ。193何程(なにほど)月(つき)がエロウても日(ひ)の出神(でのかみ)の日(ひ)に叶(かな)ふまい。194日(ひ)は表(おもて)、195月(つき)は裏(うら)ぢやぞえ。196そんな事(こと)を云(い)ふのなら、197モツト外(ほか)の没分暁漢(わからずや)の人民(じんみん)に言(い)つたが宜(よろ)しい。198酸(す)いも甘(あま)いも透(す)きとほつた程(ほど)知(し)りぬいた高姫(たかひめ)に向(むか)つて言(い)ふのは、199チツと天地(てんち)が逆(さか)さまになつて居(を)る様(やう)なものですよ』
200常彦(つねひこ)『コレコレ高姫(たかひめ)さま、201余(あんま)りぢやありませぬか。202神(かみ)様(さま)に向(むか)つて何(なん)と云(い)ふ御(ご)無礼(ぶれい)な事(こと)を仰有(おつしや)るのです。203チツと心得(こころえ)なさい』
204高姫(たかひめ)『エーお前(まへ)は常(つね)か、205こんな所(ところ)へ口嘴(くちばし)を出(だ)すとこぢやない。206すつ込(こ)んで居(ゐ)なさい』
207 池(いけ)の中(なか)より、
208声『セヽヽ、209先生顔(せんせいがほ)を致(いた)して、210何時(いつ)もエラソウに申(まを)して居(を)るが、211牛童丸(うしどうまる)の牛(うし)に乗(の)つて、212常彦(つねひこ)、213春彦(はるひこ)がアリナの滝(たき)へ先(さき)へ参(まゐ)ると申(まを)した時(とき)には、214随分(ずゐぶん)せつなかつたであらうのう。215せんぐりせんぐり屁理窟(へりくつ)を並(なら)べて、216ようマア良心(りやうしん)に恥(はづか)しいとは思(おも)はぬか。217雪隠虫(せつちんむし)の高上(たかあ)がり奴(め)』
218高姫(たかひめ)『せゝゝ、219精出(せいだ)して、220何(なん)なつと仰有(おつしや)れ。221そんな事(こと)聞(き)いて居(ゐ)る様(やう)な暇人(ひまじん)ぢや御座(ござ)いませぬワイ。222三千(さんぜん)世界(せかい)の立替(たてかへ)立直(たてなほ)しの御(ご)神業(しんげふ)に対(たい)し、223千騎(せんき)一騎(いつき)の此(この)場合(ばあひ)、224チツト改心(かいしん)して、225お前(まへ)さまも池(いけ)の底(そこ)にカブリ付(つ)いて居(を)らずに、226私(わたし)の尻(しり)へついて、227世界(せかい)の為(ため)に活動(くわつどう)なさつたらどうだ。228神(かみ)、229仏事(ぶつじ)、230人民(じんみん)、231餓鬼(がき)、232虫(むし)ケラまで助(たす)ける神(かみ)だぞえ』
233 池(いけ)の中(なか)より、
234声『ソヽヽ、235そんな事(こと)は其(その)方(はう)に聞(き)かいでも、236よく分(わか)つて居(ゐ)る。237どこ迄(まで)も改心(かいしん)を致(いた)さねば神(かみ)は止(や)むを得(え)ず、238そぐり立(た)ててツツボへ落(おと)してやらうか』
239高姫(たかひめ)『そゝゝ、240ソリヤ何(なに)を吐(ぬか)すのだ。241うるささを怺(こら)へて相手(あひて)になつて居(ゐ)れば、242どこ迄(まで)も伸(の)し上(あが)つて、243粗相(そさう)な事(こと)を申(まを)す厄雑神(やくざがみ)、244大方(おほかた)池(いけ)の中(なか)に居(を)る神(かみ)だから、245ドン亀(かめ)か、246スツポンがめ、247ズ蟹(かに)の劫(がふ)経(へ)た奴(やつ)だろ。248其奴(そいつ)が神(かみ)の真似(まね)して、249昔(むかし)の月照彦(つきてるひこ)さまの芝居(しばゐ)をしてをるのだろ。250グヅグヅ申(まを)すと此(この)団子石(だんごいし)を池(いけ)の中(なか)へ放(ほ)り込(こ)んでやらうか』
251 池(いけ)の中(なか)より、
252声『タヽヽ、253玉(たま)盗(ぬす)みの高姫(たかひめ)、254又(また)玉(たま)を隠(かく)されて、255玉(たま)騒(さわ)ぎを致(いた)す魂抜(たまぬけ)女(をんな)、256其(その)方(はう)の尋(たづ)ねる玉(たま)は自転倒(おのころ)島(じま)の中心地(ちうしんち)に隠(かく)してあるぞえ。257其(その)方(はう)が改心(かいしん)さへ致(いた)せば麻邇(まに)の玉(たま)の所在(ありか)が知(し)らして貰(もら)へるのだが、258まだ中々(なかなか)其(その)方(はう)へ教(をし)へてやる所(ところ)へは行(ゆ)かぬワイ。259早(はや)く魂(たま)を研(みが)いて改心(かいしん)を致(いた)せよ』
260高姫(たかひめ)『たゝゝ、261叩(たた)くな叩(たた)くな頬桁(ほほげた)を、262高天原(たかあまはら)の神司(かむづかさ)、263誰(たれ)が何(なん)と云(い)つても、264日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)に楯(たて)つかうと思(おも)うても駄目(だめ)だから、265お前(まへ)こそ改心(かいしん)を致(いた)し、266高姫(たかひめ)の申(まを)す事(こと)を神妙(しんめう)に聞(き)きなされ。267玉(たま)の所在(ありか)は自転倒(おのころ)島(じま)の中心(ちうしん)にあるなんて、268……ヘン知(し)らぬ者(もの)の半分(はんぶん)も知(し)らぬ癖(くせ)に、269何(なに)を云(い)ふのだ。270此(こ)んな池(いけ)の中(なか)にすつ込(こ)んでゐるスツポンのお化(ばけ)に、271そんな事(こと)が分(わか)つて堪(たま)るものかい』
272 池(いけ)の中(なか)より、
273声『チヽヽ、274血筋(ちすぢ)だ系統(ひつぽう)だと申(まを)して、275それを鼻(はな)にかけ、276威張(ゐば)りちらすものだから、277お山(やま)の大将(たいしやう)おれ一人(ひとり)式(しき)だ。278誰一人(たれひとり)として其(その)方(はう)の力(ちから)になる者(もの)は一人(ひとり)もあるまいがな。
279ツヽヽ、280月照彦(つきてるひこの)神(かみ)が申(まを)す事(こと)、281心(こころ)の波(なみ)を静(しづ)めてよつく承(うけたま)はれ。282其(その)方(はう)の心(こころ)の海(うみ)の波(なみ)さへ静(しづ)まらば、283真如(しんによ)の月(つき)は皎々(かうかう)として、284心(こころ)の空(そら)に照(て)りわたり、285玉(たま)の所在(ありか)位(くらゐ)は一目(ひとめ)に見(み)え透(す)き、286天晴(あつぱ)れ神界(しんかい)の御用(ごよう)が出来(でき)るやうになるのだ。
287テヽヽ、288天狗(てんぐ)の様(やう)に鼻(はな)許(ばか)り高(たか)くして、289天狗(てんぐ)の鼻(はな)の高姫(たかひめ)と皆(みな)の者(もの)が譏(そし)つてゐるが、290気(き)がつかぬか。291天地(てんち)の道理(だうり)をチツとは弁(わきま)へて見(み)よ。
292トヽヽ、293トボケ面(づら)して遠(とほ)い国(くに)迄(まで)玉(たま)捜(さが)しにウロツキ廻(まは)り、294何時(いつ)も失敗(しつぱい)計(ばか)り致(いた)して居(を)るではないか』
295高姫(たかひめ)『ちちち、296近(ちか)くの者(もの)より遠(とほ)くから分(わか)りてくる仕組(しぐみ)だ。297燈台(とうだい)下暗(もとくら)がりと云(い)ふことを、298お前(まへ)さまは井中(せいちう)の蛙(かはず)……ではない…スツポンだから、299世間(せけん)が分(わか)らぬので、300そんな時代(じだい)遅(おく)れのことを云(い)ふのだよ。
301つゝゝ、302月並式(つきなみしき)のそんな屁理窟(へりくつ)を並(なら)べたつて、303聞(き)くやうな者(もの)は広(ひろ)い世界(せかい)に一人(ひとり)もありませぬぞえ。
304てゝゝ、305テンで物(もの)にならぬ天地(てんち)顛倒(てんどう)のお前(まへ)の世迷言(よまひごと)。
306とゝゝ、307トンボリ返(かへ)りを打(う)たねばならぬことが出(で)て来(き)ますぞや。308チト日(ひ)の出神(でのかみ)の御(ご)託宣(たくせん)を聞(き)きなさい。309途方(とはう)もない訳(わけ)の分(わか)らぬ、310トツボケ神(かみ)だな』
311 池(いけ)の中(なか)より、
312声『ナヽヽ、313男子(なんし)の系統(ひつぽう)を楯(たて)に取(と)り、314何(なん)でもかでも無理(むり)を押(お)し通(とほ)し、315人(ひと)に難題(なんだい)を吹(ふ)つかけ、316何遍(なんべん)も何遍(なんべん)も人(ひと)に生命(いのち)を助(たす)けられて、317反対(はんたい)に不足(ふそく)を申(まを)す難錯者(なんさくもの)。
318ニヽヽ、319西(にし)東(ひがし)北(きた)南(みなみ)と駆(かけ)まはり、320憎(うら)まれ口(ぐち)の限(かぎ)りを尽(つく)し、321二進(につち)も三進(さつち)もゆかぬ様(やう)になつては改心(かいしん)を標榜(へうぼう)し、322又(また)しても執着心(しふちやくしん)の悪魔(あくま)に縛(しば)られて、323悪(あく)に逆転(ぎやくてん)し、
324ヌヽヽ、325糠喜(ぬかよろこ)びばかり致(いた)して、326一度(いちど)も満足(まんぞく)に思惑(おもわく)の立(た)つた事(こと)はあるまいがな。
327ネヽヽ、328年(ねん)が年中(ねんぢう)、329日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)を楯(たて)に取(と)り、330ねぢけ曲(まが)つた小理窟(こりくつ)を云(い)うて、331人(ひと)を困(こま)らす奸佞(かんねい)邪智(じやち)の其(その)方(はう)の行方(やりかた)。
332ノヽヽ、333野天狗(のてんぐ)に脅(おびや)かされ、334安眠(あんみん)も能(よ)うせず、335テル街道(かいだう)をスタスタと痛(いた)い足(あし)を引(ひき)ずつてここまで出(で)て来(き)た口(くち)の大(おほ)きい、336肝(きも)の小(ちい)さいデモ宣伝使(せんでんし)。
337ハヽヽ、338早(はや)く改心(かいしん)致(いた)さぬと、339誰(たれ)も相手(あひて)がなくなるぞよ。
340ヒヽヽ、341日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)も、342世界(せかい)の人民(じんみん)がウンザリして居(ゐ)るぞよ。343モウそんな黴(かび)の生(は)えたコケおどしは使(つか)はぬが能(よ)からう。
344フヽヽ、345古臭(ふるくさ)つた文句(もんく)を百万(ひやくまん)ダラ並(なら)べて新(あたら)しがつてゐる其(その)方(はう)の心根(こころね)が愛(いと)しいワイ。
346ヘヽヽ、347下手(へた)に魔誤付(まごつ)くと命(いのち)がなくなるぞよ。
348ホヽヽ、349時鳥(ほととぎす)喉(のど)から血(ち)を吐(は)きもつて、350国治立(くにはるたちの)命(みこと)は其(その)方(はう)の慢心(まんしん)を朝夕(あさゆふ)直(なほ)したいと思(おも)つて御(ご)苦労(くらう)を遊(あそ)ばして御座(ござ)るぞよ。
351マヽヽ、352曲津(まがつ)の容物(いれもの)となつて居乍(ゐなが)ら、353誠(まこと)の日(ひ)の出神(でのかみ)ぢやと思(おも)うて見(み)たり、354時(とき)には疑(うたが)つて見(み)たりし乍(なが)ら、355どこ迄(まで)も日(ひ)の出神(でのかみ)でつつぱらうと致(いた)す横着者(わうちやくもの)。
356ミヽヽ、357蚯蚓(みみづ)の這(は)うた様(やう)な文字(もんじ)を列(つら)ねて、358長(なが)たらしい日(ひ)の出神(でのかみ)の筆先(ふでさき)だと申(まを)して、359紙(かみ)食(く)ひ虫(むし)の墨(すみ)泥棒(どろぼう)をいたし、360世界(せかい)の経済界(けいざいかい)を紊(みだ)す身(み)の程(ほど)知(し)らず奴(め)。
361ムヽヽ、362昔(むかし)の昔(むかし)の去(さ)る昔(むかし)、363まだも昔(むかし)のその昔(むかし)、364ま一(ひと)つ昔(むかし)のまだ昔(むかし)、365大先祖(おほせんぞ)の根本(こつぽん)の、366誠一(まことひと)つの生粋(きつすゐ)の大和(やまと)魂(だましひ)の御(おん)種(たね)、367変性(へんじやう)男子(なんし)の系統(ひつぽう)、368日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)とは、369能(よ)うも云(い)へたものぢやぞよ。
370メヽヽ、371冥土(めいど)の鬼(おに)迄(まで)が愛想(あいさう)をつかし、372腹(はら)を抱(かか)へて、373其(その)方(はう)の脱線(だつせん)振(ぶ)りを笑(わら)つてゐるぞよ。
374モヽヽ、375百千万(ももちよろづ)の身魂(みたま)の借銭(しやくせん)を、376日日(ひにち)毎日(まいにち)つみ重(かさ)ね、377地獄(ぢごく)行(ゆ)きの用意(ようい)許(ばか)り致(いた)してをる其(その)方(はう)、378今(いま)の間(うち)に神(かみ)の申(まを)すことを聞(き)いて、379心(こころ)を洗(あら)ひ替(か)へ立直(たてなほ)さぬと、380未来(みらい)が恐(おそ)ろしいぞよ。
381ヤヽヽ、382ヤツサモツサと朝(あさ)から晩(ばん)迄(まで)、383騒(さわ)ぎまはり、
384イヽヽ、385意久地(いくぢ)を立通(たてとほ)し、386威張(ゐば)り散(ち)らし、387己(おのれ)一了見(いちれうけん)で教主(けうしゆ)の意見(いけん)も聞(き)かず、388可愛相(かあいさう)に黒姫(くろひめ)や鷹依姫(たかよりひめ)、389竜国別(たつくにわけ)、390テーリスタン、391カーリンスに対(たい)し、392国外(こくぐわい)に放逐(はうちく)致(いた)した横暴(わうばう)極(きは)まる其(その)方(はう)の行方(やりかた)。
393ユヽヽ、394雪(ゆき)と墨(すみ)と程(ほど)違(ちが)つてゐる瑞(みづ)の御霊(みたま)を、395酢(す)につけ味噌(みそ)につけ悪(わる)く申(まを)し、396自分(じぶん)の勢力(せいりよく)を植付(うゑつ)けようと致(いた)す横着者(わうちやくもの)。
397エヽヽ、398エライ慢心(まんしん)を致(いた)したものぢやのう。
399ヨヽヽ、400世(よ)の中(なか)に吾(われ)程(ほど)エライ者(もの)はない様(やう)に申(まを)して独(ひと)り燥(はしや)いでも、401世(よ)の中(なか)は割(わり)とは広(ひろ)いぞよ。402お前(まへ)の云(い)ふやうな事(こと)は二十(にじつ)世紀(せいき)の豆人間(まめにんげん)の没分暁漢(わからずや)の中(うち)には、403一人(ひとり)や二人(ふたり)は一度(いちど)や二度(にど)は聞(き)いて呉(く)れるであらうが、404四五遍(しごへん)聞(き)くと、405誰(たれ)も彼(か)れも内兜(うちかぶと)をみすかし、406愛想(あいさう)をつかして逃(に)げて了(しま)うぞよ。
407ラヽヽ、408楽(らく)な道(みち)へ行(ゆ)きよると道(みち)がテンと行(ゆ)き当(あた)つて、409後戻(あともど)りを致(いた)さねばならぬ変性(へんじやう)女子(によし)の行方(やりかた)を見(み)よれ、410人(ひと)の苦労(くらう)で徳(とく)を取(と)らうと致(いた)し、411楽(らく)な方(はう)を行(ゆ)きよるから、412あの通(とほ)りだと、413自分(じぶん)が後(あと)から潰(つぶ)しに廻(まは)つておいては、414愉快相(ゆくわいさう)にふれ歩(ある)く、415悪垂(あくた)れ婆(ばば)の宣伝使(せんでんし)。
416リヽヽ、417悧巧相(りかうさう)な事(こと)ばかり申(まを)して居(を)るが、418テンで理窟(りくつ)にも何(なん)にも、419お前(まへ)の云(い)ふ事(こと)はなつて居(を)らぬぢやないか。
420ルヽヽ、421留守(るす)の家(うち)へ剛情(がうじやう)ばつて押入(おしい)らうとし、422生田(いくた)の森(もり)に玉能姫(たまのひめ)に剣突(けんつく)をくわされて往生(わうじやう)致(いた)したヘボ宣伝使(せんでんし)。
423レヽヽ、424連木(れんぎ)で腹(はら)を切(き)れと云(い)ふやうな、425脅(おど)し文句(もんく)を並(なら)べて信者(しんじや)を引込(ひきこ)まうと致(いた)しても、426そんな事(こと)を食(く)ふやうな馬鹿者(ばかもの)は此(この)広(ひろ)い世界(せかい)に只(ただ)の一人(ひとり)もありはせぬぞよ。
427ロヽヽ、428碌(ろく)でもない真似(まね)をするよりも、429一時(いつとき)も早(はや)く聖地(せいち)へ立帰(たちかへ)り、430改心(かいしん)致(いた)して神妙(しんめう)に神(かみ)の御用(ごよう)を致(いた)すがよからう。
431ワヽヽ、432分(わか)り切(き)つたる団子(だんご)理窟(りくつ)を並(なら)べて、433人(ひと)を煙(けぶり)に巻(ま)く
434ヰヽヽ、435イカサマ宣伝使(せんでんし)。436そこら中(ぢう)を
437ウヽヽ、438ウロつき廻(まは)つて、439いつも糞(ばば)をたれ
440ヱヽヽ、441枝(えだ)の神(かみ)と知(し)らずに、442根本(こつぽん)の日(ひ)の出神(でのかみ)ぢやと誤解(ごかい)を致(いた)し
443ヲヽヽ、444おめも恐(おそ)れも致(いた)さず、445世界(せかい)を股(また)にかけて、446法螺(ほら)吹(ふ)きまはる、447ガラクタ宣伝使(せんでんし)、448口(くち)の悪(わる)い神(かみ)ぢやと申(まを)すであらうが、449昔(むかし)からスツポンに尻(しり)を抜(ぬ)かれた様(やう)だと云(い)ふ事(こと)があらうがな。450其(その)方(はう)が池(いけ)の底(そこ)のスツポンと認(みと)めた此(この)方(はう)が、451其(その)方(はう)が悪事(あくじ)の一切(いつさい)をスツポ抜(ぬ)いてやりたぞよ。452ウヽヽ、453ブルブルブルブル』
454高姫(たかひめ)『なゝゝ、455何(なん)でも碌(ろく)な奴(やつ)ぢやないと思(おも)うて居(を)つたら、456とうとう鼈(すつぽん)ぢやと白状(はくじやう)致(いた)しよつた。
457にゝゝ、458二(に)人(にん)の家来(けらい)共(ども)、459此(この)高姫(たかひめ)の眼力(がんりき)を見(み)て感心(かんしん)したであらうなア。
460ぬゝゝ、461抜(ぬ)かつた面付(つらつき)では到底(たうてい)こんな時(とき)に出会(でつくは)したら、462到底(たうてい)審神(さには)は出来(でき)ませぬぞえ。
463ねゝゝ、464熱心(ねつしん)にお筆先(ふでさき)を研究(けんきう)なさいと云(い)ふのは、465斯(こ)う云(い)ふ時(とき)に間(ま)に合(あは)す為(ため)ぢやぞえ。466常公(つねこう)、467春公(はるこう)、468どうだえ、469分(わか)つたかなア。
470のゝゝ、471野天狗(のてんぐ)の生宮(いきみや)に仕(し)られておつてはサツパリ駄目(だめ)ですよ。
472はゝゝ、473早(はや)く改心(かいしん)致(いた)して、474高姫(たかひめ)の云(い)ふ通(とほ)りにしなさいや。
475ひゝゝ、476日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)に間違(まちが)ひないぞえ。
477ふゝゝ、478不足(ふそく)があるなら、479何(なん)ぼなつと仰有(おつしや)れ、480どんな事(こと)でも説(と)き聞(き)かして、481得心(とくしん)さして上(あ)げる。
482へゝゝ、483返答(へんたふ)は如何(どう)だえ、484常公(つねこう)、485春公(はるこう)。
486ほゝゝ、487呆(はう)け面(づら)して何(なに)うつそりして居(を)るのだ。488池(いけ)の底(そこ)のスツポン神(がみ)がそれ程(ほど)恐(おそ)ろしいのかい。
489まゝゝ、490まさかの時(とき)の杖(つゑ)となり、491力(ちから)となるのは誠(まこと)信仰(しんかう)の力(ちから)ぢやぞえ。
492みゝゝ、493身欲(みよく)信心(しんじん)計(ばか)り致(いた)して居(を)ると、494肝腎(かんじん)の時(とき)になりて、495アフンと致(いた)さねばならぬぞえ。
496むゝゝ、497昔(むかし)からの根本(こつぽん)の因縁(いんねん)を知(し)つた者(もの)は、498此(この)広(ひろ)い世界(せかい)に高姫(たかひめ)丈(だけ)よりないのだから、499今日(けふ)からスツパリと心(こころ)を立直(たてなほ)して、500絶対(ぜつたい)に服従(ふくじゆう)するのだよ。
501めゝゝ、502めつたに神(かみ)は嘘(うそ)は申(まを)さぬぞえ。503これが違(ちが)うたら、504神(かみ)は此(この)世(よ)に居(を)らぬぞえ。505世(よ)の変(かは)り目(め)、506世界(せかい)の事(こと)を人民(じんみん)に説(と)いてきかさねばならぬから、507此(この)高姫(たかひめ)は昔(むかし)からの尊(たふと)い因縁(いんねん)があつて筆先(ふでさき)を書(か)かせ、508口(くち)で言(い)はせ、509人民(じんみん)を改心(かいしん)さす役(やく)に、510神(かみ)がお使(つか)ひ遊(あそ)ばして御座(ござ)るのだ。511しつかり聞(き)いておきなされや。
512メヽヽ、513目(め)から鼻(はな)迄(まで)つきぬけるやうな、514先(さき)の見(み)えすく神(かみ)の生宮(いきみや)、515メツタに間違(まちがひ)はありませぬぞえ。
516もゝゝ、517盲碌神(まうろくがみ)を誠(まこと)の神(かみ)と信(しん)じて盲従(まうじゆう)して居(を)ると、518取返(とりかへ)しのならぬ事(こと)が出来(でき)ますぞえ。
519やゝゝ、520大和(やまと)魂(だましひ)の生粋(きつすゐ)の身魂(みたま)の申(まを)す事(こと)に一事(ひとこと)でも横槍(よこやり)を入(い)れて見(み)よれ、521其(その)場(ば)で見(み)せしめを致(いた)すとお筆(ふで)に現(あら)はれて居(を)るぞえ。
522ゐゝゝ、523幾(いく)ら云(い)ひ聞(き)かしても、524生(うま)れ付(つき)の魂(たま)が悪(わる)いのだから、525云(い)ひごたへがないけれど、526云(い)ふは云(い)はぬにいやまさる。527お前(まへ)が可愛相(かあいさう)だから、528チツト計(ばか)り改心(かいしん)の為(ため)に言(い)うておくぞえ。
529ゆゝゝ、530幽霊(いうれい)のやうにあちらへブラブラ、531此方(こちら)へブラブラと能(よ)う気(き)の変(かは)る、532落(おち)つかぬ身魂(みたま)では到底(たうてい)三千(さんぜん)世界(せかい)の御(ご)神業(しんげふ)の一端(いつたん)に加(くは)へて貰(もら)ふ事(こと)は六(むつ)かしいから、533余程(よほど)腹帯(はらおび)をしつかりしめなされ。
534ゑゝゝ、535えぐたらしい、536高姫(たかひめ)の言葉(ことば)と思(おも)はずに、537大慈(だいじ)大悲(だいひ)の大神(おほかみ)様(さま)の救(すく)ひの言葉(ことば)だと有難(ありがた)く思(おも)つて戴(いただ)きなさい。
538よゝゝ、539余程(よつぽど)お前(まへ)は身魂(みたま)が曇(くも)つて居(ゐ)るから、540一寸(ちよつと)やソツとに研(みが)きかけが致(いた)さぬので、541此(この)高姫(たかひめ)も骨(ほね)が折(を)れるぞえ。
542らゝゝ、543楽(らく)の方(はう)へ行(ゆ)かうとお前(まへ)はするから、544牛童丸(うしどうまる)とやらに気(き)を引(ひ)かれて、545牛(うし)に乗(の)せられたのだよ。
546りゝゝ、547理窟(りくつ)云(い)ふのは今日(けふ)限(かぎ)り止(や)めなされや。548これ丈(だけ)、549神力(しんりき)を受(う)けた能弁家(のうべんか)の高姫(たかひめ)に対(たい)しては、550何(なん)と云(い)うても駄目(だめ)だからなア。
551るゝゝ、552累卵(るゐらん)の如(ごと)く危(あやふ)くなつた此(この)暗雲(やみくも)の世(よ)の中(なか)を、553万劫(まんがふ)末代(まつだい)潰(つぶ)れぬ松(まつ)の世(よ)に立直(たてなほ)さねばならぬ神界(しんかい)の御用(ごよう)だから、554並(なみ)や大抵(たいてい)の艱難(かんなん)や苦労(くらう)では勤(つと)め上(あが)りませぬぞえ。
555れゝゝ、556蓮華(れんげ)の花(はな)はあの汚(きたな)い泥(どろ)の中(なか)から、557パツと一度(いちど)に開(ひら)いて、558香(かう)ばしい香(にほひ)を現(あら)はすぢやないか。559それに能(よ)く似(に)た身魂(みたま)は誰(たれ)ぢやと思(おも)うて居(ゐ)なさる。
560ろゝゝ、561論(ろん)より証拠(しようこ)、562池(いけ)の中(なか)のスツポン神(がみ)でもへこました、563此(この)高姫(たかひめ)さまの事(こと)ぢやぞえ。
564わゝゝ、565吾身(わがみ)良(よ)かれの信心(しんじん)許(ばか)り致(いた)して居(を)ると、566神(かみ)の御(ご)きかんに叶(かな)はぬ事(こと)が出来(でき)て、567ジリジリ舞(まひ)を致(いた)して逆(さか)トンボリを打(う)たねばならぬ事(こと)が出来(でき)るから、568早(はや)く改心(かいしん)なされよ。
569ゐゝゝ、570威張(ゐば)りちらして、571意地(いぢ)くね悪(わる)く、572国依別(くによりわけ)から玉(たま)の所在(ありか)をきかして貰(もら)ひ乍(なが)ら、573いつ迄(まで)もイチヤイチヤと申(まを)して、574日(ひ)の出神(でのかみ)に報告(はうこく)せぬ様(やう)ないけ好(す)かない、575奴根性(どこんじやう)は綺麗(きれい)サツパリと立直(たてなほ)して、576これから素直(すなほ)に白状(はくじやう)するのだぞえ。
577うゝゝ、578売言葉(うりことば)に買言葉(かひことば)と云(い)ふ様(やう)に、579此(この)高姫(たかひめ)が一口(ひとくち)お気(き)に入(い)らぬ事(こと)を申(もう)せば、580すぐに何(なん)だかんだと小理窟(こりくつ)を申(まを)すが、581これから其(その)態度(たいど)をスツクリと改(あらた)めなされや。
582ゑゝゝ、583偉相(えらさう)に云(い)ふぢやなけれど、584誰(たれ)が何(なん)と云(い)つても、585ヤツパリ日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)に楯(たて)つく者(もの)は、586此(この)広(ひろ)い世界(せかい)に一人(ひとり)もなからうがな。
587をゝゝ、588お前(まへ)も、589今日(けふ)が善(ぜん)になるか、590悪(あく)になるかの境目(さかひめ)だ。591善(ぜん)になりたければ、592国依別(くによりわけ)から聞(き)かして貰(もら)つた玉(たま)の所在(ありか)をチヤツと言(い)ひなされ。593渋(しぶ)とう致(いた)すと万劫(まんがふ)末代(まつだい)帳面(ちやうめん)につけておきますぞえ。594常彦(つねひこ)はこれこれの事(こと)を致(いた)し、595神(かみ)に叛(そむ)いた悪人(あくにん)だと、596日(ひ)の出神(でのかみ)の筆先(ふでさき)に末代(まつだい)書残(かきのこ)しますぞや』
597常彦(つねひこ)『アハヽヽヽ、598黙(だま)つて聞(き)いて居(を)れば、599随分(ずゐぶん)あなたも池(いけ)の中(なか)の神(かみ)の真似(まね)が上手(じやうづ)ですな。600とうとう五十音(ごじふおん)を並(なら)べなさつた。601それ程(ほど)の頬桁(ほほげた)を持(も)つて居(を)れば、602世界中(せかいぢう)に阿呆(あほ)らしうて、603一人(ひとり)も楯突(たてつ)く者(もの)はありませぬワ。604ウツフヽヽヽ、605……のう春彦(はるひこ)、606お前(まへ)も感心(かんしん)しただらうのう』
607春彦(はるひこ)『イヤもう、608ズツトズツト感心(かんしん)しました。609ホンに能(よ)うまはる口車(くちぐるま)だなア。610……時(とき)に高姫(たかひめ)さま、611これ丈(だけ)沢山(たくさん)のお玉(たま)がつみ上(あ)げてあるのに、612目的(もくてき)の御(お)宝(たから)はないやうですな』
613高姫(たかひめ)『ここはホンの露店(ろてん)だから、614どうで良(よ)い物(もの)はこんな所(ところ)に雨曬(あまざら)しにしてあるものか。615キツと懸橋(かけはし)御殿(ごてん)の中(なか)に隠(かく)してあるにきまつてゐる。616これから高姫(たかひめ)が懸橋(かけはし)御殿(ごてん)へ行(い)つて取調(とりしら)べて来(く)るのだ』
617 池(いけ)の中(なか)より、
618『ブクブクブクブク』
619と泡立(あわた)ち上(あが)り、620大(おほ)きな声(こゑ)で、
621声『アツハヽヽ、622阿呆(あほ)らしい、623そんな物(もの)があつてたまるかい。
624イヒヽヽ、625何時(いつ)までも何時(いつ)までも執念深(しふねんぶか)い婆(ばば)アだなア。
626ウフヽヽ、627うるさい婆(ばば)アだ。628モウいゝ加減(かげん)に此処(ここ)を立退(たちの)かぬか』
629高姫(たかひめ)『エー、630やかましいワイナ。631スツポンはスツポンらしくスツ込(こ)んでゐなさい。632オヽヽお前(まへ)達(たち)の嘴(くち)を容(い)れる所(ところ)ぢやありませぬぞえ』
633常彦(つねひこ)『モシモシ高姫(たかひめ)さま、634いゝ加減(かげん)にしておきなさらぬかいな。635神(かみ)様(さま)に怒(おこ)られたら仕方(しかた)がありませぬで』
636高姫(たかひめ)『怒(いか)る勿(なか)れと云(い)ふ神界(しんかい)の律法(りつぽふ)がチヤンとありますワイナ。637ここで怒(おこ)る様(やう)な神(かみ)なら、638それこそ悪神(あくがみ)ですよ』
639常彦(つねひこ)『さうすると、640貴女(あなた)はヤツパリ、641悪神(あくがみ)ですか』
642 高姫(たかひめ)は目(め)を釣(つ)り上(あ)げ面(つら)をふくらし、
643高姫(たかひめ)『コレ、644常彦(つねひこ)、645何(なん)と云(い)ふ事(こと)を仰有(おつしや)る。646私(わたし)がどこが悪神(あくがみ)だ。647モウ了見(れうけん)しませぬぞえ』
648と胸倉(むなぐら)をグツと掴(つか)む。
649常彦(つねひこ)『それだから悪神(あくがみ)ぢやと云(い)ふのですよ。650直(すぐ)に怒(おこ)るぢやありませぬか』
651高姫(たかひめ)『私(わたし)がどこに怒(おこ)りました。652チート体(からだ)を急(きふ)に動(うご)かしたり、653声(こゑ)を高(たか)うした丈(だけ)の事(こと)ぢやありませぬか。654これでもお前(まへ)の目(め)から見(み)ると怒(おこ)つたやうに見(み)えますかな』
655春彦(はるひこ)『アハヽヽヽ』
656高姫(たかひめ)『コレ春彦(はるひこ)、657何(なに)が可笑(をか)しいのだ。658チト心得(こころえ)なされ』
659春彦(はるひこ)『アハヽヽヽ、660イヒヽヽヽ、661ウフヽヽヽ、662エヘヽヽヽ、663オホヽヽヽ、664怒(おこ)つた怒(おこ)つた。665面白(おもしろ)い面白(おもしろ)い。666恐(おそ)ろしい御(ご)立腹(りつぷく)だ』
667高姫(たかひめ)『コレ春彦(はるひこ)、668シツカリしなさらぬかいな。669池(いけ)の底(そこ)のスツポン神(がみ)の世迷言(よまいごと)が伝染(でんせん)しかけましたよ』
670春彦(はるひこ)『タヽヽヽヽ、671高姫(たかひめ)さまの世迷言(よまいごと)が、672チヽヽチツと計(ばか)り伝染(でんせん)致(いた)しました、673ウフヽヽヽ』
674 斯(か)かる所(ところ)へ、675国(くに)、676玉(たま)の両人(りやうにん)は国玉依別(くにたまよりわけ)の神司(かむづかさ)を守(まも)りつつ、677此(この)場(ば)に現(あら)はれた。
678国玉依別(くにたまよりわけ)『お前(まへ)さまは何処(どこ)の方(かた)か知(し)りませぬが、679此(この)鏡(かがみ)の池(いけ)へお参(まゐ)りになるのならば、680一応(いちおう)懸橋(かけはし)御殿(ごてん)に伺(うかが)つた上(うへ)の事(こと)にして下(くだ)さらぬと、681池(いけ)の底(そこ)の神(かみ)様(さま)が、682大変(たいへん)に御(ご)立腹(りつぷく)遊(あそ)ばしては困(こま)りますから、683チト心得(こころえ)て下(くだ)されや』
684高姫(たかひめ)『お前(まへ)は懸橋(かけはし)御殿(ごてん)とやらの神司(かむづかさ)だと、685今(いま)仰有(おつしや)つたが、686此(この)池(いけ)の底(そこ)の神(かみ)が、687それ程(ほど)恐(おそ)ろしいのかい。688此奴(こいつ)アお前(まへ)、689偉相(えらさう)に月照彦(つきてるひこの)神(かみ)だなんて言(い)つて居(を)るが、690池(いけ)の底(そこ)の劫(がふ)を経(へ)たスツポンのお化(ば)けだよ。691いゝ加減(かげん)に迷信(めいしん)しておきなさい。692これから懸橋(かけはし)御殿(ごてん)へ行(い)つて、693天地(てんち)の道理(だうり)を、694昔(むかし)の根本(こつぽん)から説(と)いて聞(き)かして上(あ)げませうぞ。695コレ御覧(ごらん)なさい。696今(いま)此(この)石(いし)を一(ひと)つ池(いけ)の底(そこ)へぶち込(こ)んで見(み)ませうか。697キツとスツポンが浮上(うきあが)つて来(き)ますよ』
698国玉依(くにたまより)『何(な)んと云(い)ふ乱暴(らんばう)なことを、699お前(まへ)さまは宣伝使(せんでんし)であり乍(なが)ら言(い)ふのですか。700チツと御(ご)無礼(ぶれい)ではありませぬか』
701高姫(たかひめ)『マア論(ろん)より証拠(しようこ)だ。702御覧(ごらん)なさい』
703と言(い)ひ乍(なが)ら、704堆(うづたか)く積(つ)みあげたる玉(たま)の形(かたち)したる石(いし)を右手(めて)に握(と)り、705ドブンと計(ばか)り投(な)げ込(こ)んだ。706忽(たちま)ち池(いけ)の底(そこ)より烈(はげ)しき唸(うな)り声(ごゑ)、707大地(だいち)は大地震(だいぢしん)の如(ごと)く震(ふる)ひ出(だ)し、708高姫(たかひめ)は真青(まつさを)な顔(かほ)になり、709ビリビリと慄(ふる)ひ乍(なが)ら、710叶(かな)はぬ時(とき)の神頼(かみだの)みと云(い)つた様(やう)に、711一生(いつしやう)懸命(けんめい)に両手(りやうて)を合(あは)せ、712其(その)場(ば)に平太張(へたば)つて了(しま)つた。713国玉依別(くにたまよりわけ)を始(はじ)め、714国(くに)、715玉(たま)の従者(じゆうしや)並(ならび)に常彦(つねひこ)、716春彦(はるひこ)は平気(へいき)の平左(へいざ)で、717此(この)音響(おんきやう)を音楽(おんがく)を聞(き)く様(やう)な心持(こころもち)で、718愉快気(ゆくわいげ)に両手(りやうて)を合(あは)し感謝(かんしや)し居(ゐ)たり。719高姫(たかひめ)は益々(ますます)慄(ふる)ひ出(だ)し、720歯(は)を喰(く)ひ締(し)め、721歯(は)の間(あい)から赤(あか)い血(ち)をにじり出(だ)し、722慄(ふる)ひ戦(をのの)き居(ゐ)たりける。
723(大正一一・八・一一 旧六・一九 松村真澄録)
724(昭和一〇・六・八 王仁校正)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→