霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一章 アリナの滝(たき)〔八二三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第29巻 海洋万里 辰の巻 篇:第1篇 玉石混来 よみ(新仮名遣い):ぎょくせきこんらい
章:第1章 アリナの滝 よみ(新仮名遣い):ありなのたき 通し章番号:823
口述日:1922(大正11)年08月11日(旧06月19日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
黒姫が紛失した黄金の玉を探しに旅に出た鷹依姫、竜国別、テーリスタン、カーリンスは、四人連れとなって南米の高砂島へやってきた。テルの港に着いた一行は、道を南にとり、その昔狭依彦が三五教を開いた旧跡・アリナの滝の上流にある鏡の池の岩窟にやってきた。
一行はそこに居を構え、鷹依姫は岩窟の奥に身を潜め、竜国別は岩窟の外に庵を結び、鏡の池の神勅だと偽って玉のありかを探る計画を立てた。
テーリスタンとカーリンスを巡礼姿となして周辺の国に遣わし、鏡の池に月照彦神が現れて、玉を献上すれば厚い神徳が得られると触れて廻った。高砂島の住民は二人の宣伝を信じて、玉を持って鏡の池に列をなした。
一年ほどで幾百もの玉が集まったが、一行が求める黄金の玉は見つからなかった。ヒルの国のアールという男は、先祖代々より秘蔵した黄金の玉を月照彦神に献上しようと、夜に日を継いでやってきた。
鷹依姫ら四人は、岩窟のほとりで苦労話にふけっている。そこへアールの一行が黄金の玉献上との旗を押し立ててやってきたのを見て、鷹依姫は慌てて岩窟の奥に姿を隠した。竜国別以下は威儀を正して鏡の池の前に端座平伏した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-12-18 19:32:14 文字数:4739 OBC :rm2901
愛善世界社版:13頁 八幡書店版:第5輯 469頁 修補版: 校定版:13頁 普及版:6頁 初版: ページ備考:
001千早(ちはや)振(ふ)る遠(とほ)き神代(かみよ)の其(その)昔(むかし)
002支那(チヤイナ)、西蔵(チベツト)、印度(ツキ)の国(くに)
003三国(みくに)に跨(またが)る青雲(せいうん)の
004山(やま)に鎮(しづ)まる八王神(やつわうがみ)
005神(かみ)の心(こころ)も澄(す)み渡(わた)る
006神澄彦(かむずみひこ)や八頭(やつがしら)
007吾妻彦(あづまのひこ)[※青雲山の八頭神は「吾妻彦」であるが、この章では、御校正本・愛世版は「吾妻別」になっている。→「青雲山の八頭神「吾妻彦」」を見よ]の神司(かむつかさ)
008黄金(こがね)の玉(たま)を黄金(わうごん)の
009宮(みや)に納(をさ)めて玉守彦(たまもりひこ)の
010神(かみ)の司(つかさ)に守(まも)らせし
011神世(かみよ)を造(つく)る珍宝(うづたから)
012ウラルの彦(ひこ)に狙(ねら)はれて
013遂(つひ)に危(あやふ)くなりければ
014玉守彦(たまもりひこ)を始(はじ)めとし
015朝日(あさひ)輝(かがや)く吾妻彦(あづまひこ)
016玉(たま)を御輿(みこし)に納(をさ)めつつ
017黄金山(わうごんさん)下(か)に現(あ)れませる
018埴安彦(はにやすひこ)や三葉彦(みつばひこ)
019埴安姫(はにやすひめ)の御(おん)許(もと)に
020送(おく)り来(きた)りて暫(しばら)くは
021宝(たから)の倉(くら)に納(をさ)めつつ
022時(とき)の至(いた)るを待(ま)つ間(うち)に
023黄金(こがね)の玉(たま)は何時(いつ)しかに
024唸(うな)りを立(た)てて竜門(りうもん)の
025玉(たま)と釜(かま)とに別(わか)れつつ
026頻(しき)りに不思議(ふしぎ)のありければ
027埴安彦(はにやすひこ)は神勅(しんちよく)を
028伺(うかが)ひまつり桶伏(をけぶせ)の
029山(やま)に再(ふたた)び埋蔵(まいざう)し
030朝(あさ)な夕(ゆふ)なに村肝(むらきも)の
031心(こころ)を配(くば)り守(まも)り居(ゐ)る
032時(とき)しもあれやバラモンの
033神(かみ)の司(つかさ)の蜈蚣姫(むかでひめ)
034いろいろ雑多(ざつた)と計略(はかりごと)
035めぐらし遂(つひ)に黄金(わうごん)の
036珍(うづ)の宝(たから)を盗(ぬす)み出(だ)し
037三国(みくに)ケ岳(だけ)の岩窟(がんくつ)に
038納(をさ)めゐたるを三五(あななひ)の
039神(かみ)の司(つかさ)の国依別(くによりわけ)や
040玉治別(たまはるわけ)の一行(いつかう)に
041玉(たま)の所在(ありか)を嗅出(かぎだ)され
042再(ふたた)び玉(たま)は桶伏(をけぶせ)の
043山(やま)の麓(ふもと)に千木(ちぎ)高(たか)く
044築(きづ)きあがりし綾錦(あやにしき)
045貴(うづ)の都(みやこ)に納(をさ)まりて
046三五教(あななひけう)の神司(かむづかさ)
047高山彦(たかやまひこ)の妻(つま)として
048仕(つか)へ奉(まつ)りし黒姫(くろひめ)に
049玉(たま)の保管(ほくわん)を命(めい)じつつ
050言依別(ことよりわけ)の大教主(だいけうしゆ)
051神(かみ)の教(をしへ)を遠近(をちこち)に
052伝(つた)へゐませる時(とき)もあれ
053日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)と
054自(みづか)ら名乗(なの)る高姫(たかひめ)や
055黒姫(くろひめ)達(たち)の心意気(こころいき)
056甚(はなは)だ怪(あや)しくなりければ
057言依別(ことよりわけ)は神前(しんぜん)に
058進(すす)みて祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し
059玉照彦(たまてるひこ)や玉照姫(たまてるひめ)の
060珍(うづ)の命(みこと)の手(て)を通(と)ふし
061国治立(くにはるたち)の御(おん)前(まへ)に
062請(こ)ひのみまつり伺(うかが)へば
063『高姫(たかひめ)、黒姫(くろひめ)両人(りやうにん)の
064心(こころ)の空(そら)は定(さだ)まらず
065又(また)もや玉(たま)を呑(の)み込(こ)みて
066ウラナイ教(けう)を恢復(くわいふく)し
067此(この)世(よ)を紊(みだ)す虞(おそれ)あり
068言依別(ことよりわけ)は今(いま)の間(ま)に
069金剛(こんがう)不壊(ふゑ)の如意(によい)宝珠(ほつしゆ)
070紫色(むらさきいろ)の宝玉(ほうぎよく)や
071黄金(こがね)の玉(たま)を取出(とりいだ)し
072私(ひそ)かに隠(かく)しおくべし』と
073いと厳(おごそ)かに宣(の)り玉(たま)ふ。
074言依別(ことよりわけ)は意(い)を決(けつ)し
075高姫(たかひめ)、黒姫(くろひめ)両人(りやうにん)が
076生命(いのち)の綱(つな)と朝夕(あさゆふ)に
077頼(たの)みて守(まも)る神宝(しんぱう)を
078神(かみ)の神言(みこと)に従(したが)ひて
079何時(いつ)の間(ま)にかは取出(とりいだ)し
080錦(にしき)の宮(みや)の奥深(おくふか)く
081納(をさ)めおきしと知(し)らずして
082松(まつ)の根元(ねもと)に黒姫(くろひめ)は
083夜(よ)な夜(よ)な通(かよ)ひて玉(たま)の番(ばん)
084隠(かく)せし場所(ばしよ)の何(なん)となく
085心(こころ)にかかり黒姫(くろひめ)は
086ソツと唐櫃(からと)を押開(おしあ)けて
087中(なか)をつくづく眺(なが)むれば
088金光(きんくわう)眩(まばゆ)き宝玉(ほうぎよく)は
089空(むな)しく消(き)えて玉(たま)無(な)しの
090唐櫃(からと)の姿(すがた)に仰天(ぎやうてん)し
091四尾(よつを)の峰(みね)の山麓(さんろく)に
092薄(うす)き氷(こほり)の張(は)り詰(つ)めし
093小池(おいけ)にザンブと飛込(とびこ)みて
094生命(いのち)を棄(す)てむとなしけるが
095窺(うかが)ひ寄(よ)つたる従僕(じゆうぼく)の
096テーリスタンやカーリンス
097バサリと聞(きこ)えた水音(みなおと)に
098コリヤ大変(たいへん)と玉(たま)の緒(を)の
099生命(いのち)を的(まと)に厳寒(げんかん)の
100空(そら)をも厭(いと)はず池中(いけなか)に
101飛(と)び込(こ)み水底(みなそこ)かひくぐり
102黒姫司(くろひめつかさ)を救(すく)ひあげ
103やうやう館(やかた)に連(つ)れ帰(かへ)り
104生命(いのち)を助(たす)けた黒姫(くろひめ)に
105無理(むり)難題(なんだい)を浴(あ)びせられ
106困(こま)り入(い)つたる折柄(をりから)に
107高姫司(たかひめつかさ)の耳(みみ)に入(い)り
108竜国別(たつくにわけ)や鷹依姫(たかよりひめ)の
109神(かみ)の司(つかさ)を始(はじ)めとし
110テーリスタンやカーリンス
111黒姫(くろひめ)五(ご)人(にん)に打向(うちむか)ひ
112『黄金(こがね)の玉(たま)の所在(ありか)をば
113どこどこまでも捜(さが)し出(だ)し
114錦(にしき)の宮(みや)に持帰(もちかへ)り
115其(その)責任(せきにん)を果(はた)す迄(まで)
116再(ふたた)び聖地(せいち)に帰(かへ)るな』と
117いとも厳(きび)しき命令(めいれい)に
118涙(なみだ)を呑(の)んで五人(ごにん)連(づ)れ
119高山彦(たかやまひこ)や黒姫(くろひめ)は
120大海原(おほうなばら)に漂(ただよ)へる
121一(ひと)つ島(じま)なる竜宮(りうぐう)へ
122玉(たま)の所在(ありか)を探(さぐ)らむと
123出(い)で行(ゆ)く後(あと)に鷹依姫(たかよりひめ)の
124神(かみ)の司(つかさ)は竜国別(たつくにわけ)の
125神(かみ)の命(みこと)やテー、カーの
126三人(みたり)を伴(ともな)ひ高砂(たかさご)の
127テルの港(みなと)に安着(あんちやく)し
128南(みなみ)を指(さ)して進(すす)み行(ゆ)く。
129あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
130御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ。
131 黒姫(くろひめ)は私(ひそ)かに高山彦(たかやまひこ)を伴(ともな)ひ、132竜宮(りうぐう)の一(ひと)つ島(じま)に黄金(こがね)の玉(たま)の所在(ありか)を探(さぐ)らむと、133聖地(せいち)を後(あと)に出(い)で行(ゆ)きたることは、134既(すで)に如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(酉(とり)の巻(まき))に述(の)べた通(とほ)りである。
135 又(また)テーリスタンやカーリンスは亜弗利加(アフリカ)の筑紫洲(つくしじま)へ、136玉(たま)の所在(ありか)を探(さが)すべく決心(けつしん)して、137聖地(せいち)を出発(しゆつぱつ)したるが、138途中(とちう)にてつくづく考(かんが)ふるに、139広袤(くわうぼう)数千(すうせん)里(り)の筑紫(つくし)の島(しま)に、140一人(ひとり)や二人(ふたり)出(で)かけた所(ところ)で、141雲(くも)を掴(つか)むよりも便(たよ)りなき話(はなし)と俄(にはか)に心機(しんき)一転(いつてん)し、142鷹依姫(たかよりひめ)、143竜国別(たつくにわけ)の後(あと)に従(したが)ひ、144一行(いつかう)四(よ)人(にん)、145運(うん)を天(てん)に任(まか)して、146南米(なんべい)(高砂島(たかさごじま))へ玉(たま)の所在(ありか)を探(さぐ)らむと、147数百(すうひやく)日(にち)の間(あひだ)、148海上(かいじやう)をさまよひ、149大小(だいせう)無数(むすう)の島々(しまじま)を、150残(のこ)る隈(くま)なく探索(たんさく)し、151漸(やうや)くにしてテルの港(みなと)に安着(あんちやく)し、152夫(それ)より一行(いつかう)四(よ)人(にん)は路(みち)を南(みなみ)に取(と)り、153昔(むかし)猿世彦(さるよひこ)が狭依彦(さよりひこの)神(かみ)となりて、154三五教(あななひけう)を開(ひら)きたる旧跡(きうせき)、155蛸取村(たことりむら)の山奥(やまおく)、156アリナの滝(たき)の上流(じやうりう)、157鏡(かがみ)の池(いけ)の岩窟(がんくつ)に巣(す)を構(かま)へ、158鷹依姫(たかよりひめ)は岩窟(がんくつ)の中(なか)に深(ふか)く潜(ひそ)みて姿(すがた)を隠(かく)し、159竜国別(たつくにわけ)は岩窟(がんくつ)の外(そと)に庵(いほり)を結(むす)び、160日夜(にちや)鏡(かがみ)の池(いけ)の神勅(しんちよく)を請(こ)うと称(しよう)し、161玉(たま)の所在(ありか)を居乍(ゐなが)らにして探(さぐ)るべく計画(けいくわく)を立(た)てたりける。
162 其(その)方法(はうはふ)はテーリスタンやカーリンスをテルの国(くに)や珍(うづ)の国(くに)、163ヒルの国(くに)、164ハルまでも巡礼姿(じゆんれいすがた)となつて巡回(じゆんくわい)せしめ、165……此(この)度(たび)テルの国(くに)の鏡(かがみ)の池(いけ)の岩窟(がんくつ)に月照彦(つきてるひこの)神(かみ)現(あら)はれ給(たま)ひ、166如何(いか)なる玉(たま)にても鏡(かがみ)の池(いけ)に献上(けんじやう)する者(もの)は、167富貴(ふうき)を与(あた)へ長寿(ちやうじゆ)を守(まも)り、168盗難(たうなん)、169風難(ふうなん)、170水難(すゐなん)、171火難(くわなん)、172剣(つるぎ)の難(なん)まで免(のが)れしめ玉(たま)ふ。173何人(なにびと)に依(よ)らず、174玉(たま)を所持(しよぢ)する人(ひと)は一日(ひとひ)も早(はや)く、175アリナの滝(たき)の鏡(かがみ)の池(いけ)に持参(ぢさん)せば、176福徳(ふくとく)円満(ゑんまん)、177子孫(しそん)長久(ちやうきう)の基(もとゐ)を開(ひら)き、178遂(つひ)には天下(てんか)の覇権(はけん)を握(にぎ)る神徳(しんとく)を与(あた)へらるべし。179特(とく)に黄金色(こがねいろ)の玉(たま)は、180最(もつと)も大神(おほかみ)の喜(よろこ)び給(たま)ふ所(ところ)なり……と両人(りやうにん)は東西(とうざい)南北(なんぽく)に手分(てわ)けして宣伝(せんでん)に廻(まは)つた。
181 比較(ひかく)的(てき)質朴(しつぼく)なる高砂島(たかさごじま)の人間(にんげん)は、182テー、183カーの宣伝(せんでん)を真(ま)に受(う)け、184玉(たま)らしき物(もの)は、185先(さき)を争(あらそ)うて、186遠(とほ)き山坂(やまさか)を越(こ)え、187遥々(はるばる)とアリナの滝(たき)の上流(じやうりう)、188鏡(かがみ)の池(いけ)に持参(ぢさん)し、189神徳(しんとく)を蒙(かうむ)らむと参来集(まゐきつど)ふ者(もの)踵(きびす)を接(せつ)した。190幾百(いくひやく)とも知(し)れぬ玉(たま)は一(いち)年(ねん)ならずして集(あつ)まつた。191され共(ども)何(いづ)れも珍(めづ)らしき石(いし)の玉(たま)や、192丸(まる)き団子(だんご)石玉(いしだま)にて鷹依姫(たかよりひめ)や竜国別(たつくにわけ)の尋(たづ)ね求(もと)むる黄金(こがね)の玉(たま)は一(ひと)つも集(あつ)まらざりける。
193 時(とき)にヒルの国(くに)のアールと云(い)ふ男(をとこ)、194先祖(せんぞ)代々(だいだい)より、195神宝(しんぱう)として秘蔵(ひざう)したる黄金色(こがねいろ)の玉(たま)を取出(とりだ)し、196恭(うやうや)しく柳筥(やなぎばこ)に納(をさ)め、197美(うる)はしき御輿(みこし)を造(つく)り、198里人(さとびと)に担(かつ)がせ乍(なが)ら、199数十旒(すうじふりう)の旗(はた)を押立(おした)て、200法螺貝(ほらがひ)を吹(ふ)き、201磬盤(けいばん)を叩(たた)き、202横笛(よこぶえ)、203縦笛(たてぶえ)等(とう)にて、204長(なが)き道中(だうちう)をねり歩(あゆ)き乍(なが)ら、205アリナの滝(たき)の月照彦(つきてるひこの)神(かみ)に献上(けんじやう)せむと、206夜(よ)を日(ひ)についで長途(ちやうと)の旅(たび)をつづけ、207漸(やうや)く蛸取村(たことりむら)に安着(あんちやく)し、208茲(ここ)に暫(しば)し止(とど)まつて、209七日(なぬか)七夜(ななよ)の御禊(みそぎ)をなし、210改(あらた)めて祭服(さいふく)を着(ちやく)し、211鏡(かがみ)の池(いけ)に献上(けんじやう)することとなりける。
212 テーリスタン、213カーリンスは一(ひと)わたり、214高砂島(たかさごじま)の目星(めぼし)き地点(ちてん)を宣伝(せんでん)し終(をは)り、215漸(やうや)くアリナの滝(たき)に帰(かへ)つて、216竜国別(たつくにわけ)、217鷹依姫(たかよりひめ)と共(とも)に、218黄金(こがね)の玉(たま)の集(あつ)まり来(きた)ることを、219指折(ゆびを)り数(かぞ)へて待(ま)ちつつありき。
220 又(また)鷹依姫(たかよりひめ)は岩窟(がんくつ)の奥深(おくふか)く身(み)を忍(しの)び、221竹筒(たけづつ)を口(くち)に当(あ)て、222ド拍子(びやうし)の抜(ぬ)けた声(こゑ)にて神示(しんじ)を伝(つた)へる生神(いきがみ)様(さま)となり、223竜国別(たつくにわけ)は神勅(しんちよく)を伺(うかが)ふ審神者(さには)の職(しよく)を勤(つと)め、224国人(くにびと)をうまく誤魔化(ごまくわ)し、225玉(たま)の収集(しうしふ)に全力(ぜんりよく)を尽(つく)してゐたり。
226 今日(けふ)は朝(あさ)から何人(たれ)も来(き)さうにないので、227鷹依姫(たかよりひめ)も気(き)を許(ゆる)し、228竜国別(たつくにわけ)、229テーリスタン、230カーリンスと鏡(かがみ)の池(いけ)の傍(かたはら)の庵(いほり)に集(あつ)まり、231懇談会(こんだんくわい)を開(ひら)きゐたり。
232鷹依姫(たかよりひめ)『わしも年(とし)がよつてから聖地(せいち)を離(はな)れ、233はるばるとこんな遠(とほ)いテルの国(くに)までやつて来(き)て、234窮屈(きうくつ)な岩窟(がんくつ)の中(なか)に身(み)をかくし、235虫(むし)には咬(か)まれ、236蟹(かに)には脛(すね)を挟(はさ)まれ、237いろいろと辛抱(しんぼう)して、238歯(は)の抜(ぬ)けた口(くち)を無理(むり)にすぼめて、239こんな重(おも)たい竹筒(たけづつ)を吹(ふ)かされ、240丸(まる)つきり野師(やし)の様(やう)な所作(しよさ)をして、241玉集(たまあつ)めをせなきやならぬと思(おも)へば、242いくら神界(しんかい)の為(ため)、243世界(せかい)の為(ため)とは言(い)へ、244情無(なさけな)うなつてきた。245玉(たま)は山(やま)の如(ごと)くに集(あつ)まつたけれども、246一(ひと)つも黄金(こがね)の玉(たま)は出(で)て来(こ)ず、247団子石(だんごいし)に毛(け)の生(は)えた様(やう)な、248ヤクザ石(いし)ばつかりで、249目的(もくてき)の宝玉(ほうぎよく)は一(ひと)つも集(あつ)まらず、250……あゝヤツパリ此(この)島(しま)には、251黄金(こがね)の玉(たま)は来(き)て居(を)らぬと見(み)えまするワイ。252わしも何時迄(いつまで)もこんな窮屈(きうくつ)な真似(まね)は叶(かな)ひませぬから、253一(ひと)つ代(かは)つて貰(もら)つて、254わしは外(そと)へ出(で)て働(はたら)かして貰(もら)はう。255モ一度(いちど)宣伝(せんでん)して見(み)たら、256集(あつ)まつて来(く)るかも知(し)れぬ。257人間(にんげん)は欲(よく)の皮(かは)が厚(あつ)いから、258黄金(きん)の登(のぼ)り竜(りう)、259下(くだ)り竜(りう)の現(あら)はれた、260あのお宝(たから)は、261有(あ)つても容易(ようい)に手放(てばな)しするものではない。262それには一(ひと)つ宣伝(せんでん)の方法(はうはふ)を替(か)へて、263出(だ)す様(やう)に致(いた)さねばなりますまい。264中(なか)には随分(ずゐぶん)珍(めづら)しい玉(たま)も集(よ)つてゐるが、265どうも神政(しんせい)成就(じやうじゆ)のお宝(たから)に比(くら)べては雲泥(うんでい)の相違(さうゐ)だ。266アヽすまじきものは宮仕(みやづか)へだ』
267と太(ふと)い息(いき)を漏(もら)して首(くび)を傾(かたむ)け、268グニヤリとなる。
269竜国別(たつくにわけ)『お母(か)アさま、270お歎(なげ)きは御尤(ごもつと)もなれど、271これ丈(だけ)玉(たま)の多(おほ)い高砂島(たかさごじま)、272初(はじ)まりは団子石(だんごいし)の様(やう)な玉(たま)計(ばか)り集(あつ)まつて居(を)つたが、273段々(だんだん)と数(かず)は減(へ)つて来(き)た代(かは)りに、274一日(いちにち)々々(いちにち)立派(りつぱ)な玉(たま)が此(この)通(とほ)り集(あつ)まつて来(く)ることを思(おも)へば、275モウ暫(しばら)く此処(ここ)で御(ご)辛抱(しんばう)下(くだ)さいませ。276私(わたくし)が中(なか)へ這入(はい)つて、277あなたは外(そと)で審神者(さには)の役(やく)をして貰(もら)ふのは易(やす)いことですが、278何程(なんぼ)竹筒(たけづつ)を通(とほ)して物(もの)を言(い)つても、279竜国別(たつくにわけ)の声(こゑ)は熱心(ねつしん)な信者(しんじや)が能(よ)く聞分(ききわ)けるであらうし、280又(また)今迄(いままで)姿(すがた)を見(み)せた事(こと)のない、281年寄(としよ)りのお前(まへ)さまが審神者(さには)となり、282此(この)竜国別(たつくにわけ)の姿(すがた)が見(み)えなくなつたら、283それこそ疑(うたがひ)の種(たね)を播(ま)き、284千仭(せんじん)の功(こう)を一簣(いつき)に虧(か)く様(やう)な事(こと)が出来(でき)ても詰(つま)りませぬから、285モウ暫(しばら)くの所(ところ)、286何程(なんぼ)御(ご)窮屈(きうくつ)でも御(ご)辛抱(しんばう)下(くだ)さいませ。287大蛇(をろち)や猛獣(まうじう)の猛(たけ)び狂(くる)ふ此(この)山国(やまぐに)や、288大沙漠(だいさばく)を渡(わた)る事(こと)を思(おも)へば、289何程(なんぼ)窮屈(きうくつ)でも、290穴(あな)の中(なか)で涼(すず)しい目(め)をして、291辛抱(しんぼう)して下(くだ)さる方(はう)が何程(なんぼ)能(よ)いか分(わか)りませぬ』
292鷹依(たかより)『アヽそんなら、293お前(まへ)の言(い)ふ通(とほ)り、294モウ暫(しばら)く辛抱(しんぼう)致(いた)して見(み)ようかなア』
295竜国(たつくに)『どうぞ御(ご)苦労(くらう)ですが、296暫(しばら)く、297さうして居(を)つて下(くだ)さいませ。298キツト前途(ぜんと)有望(いうばう)だと信(しん)じますから……。299オイ、300テーリスタン、301お前(まへ)も永々(ながなが)と御(ご)苦労(くらう)だつたが、302随分(ずいぶん)宣伝(せんでん)に骨(ほね)が折(を)れただらうなア。303……カーリンス、304お前(まへ)も中々(なかなか)の骨折(ほねをり)だつた。305お前(まへ)の往(い)つた方(はう)も、306テーの行(い)つた方(はう)も、307余程(よほど)よく宣伝(せんでん)が行(ゆ)き渡(わた)つたと見(み)えて随分(ずゐぶん)、308珍(ウヅ)の国(くに)や、309ヒルの国(くに)、310カルの国(くに)あたりから、311種々(いろいろ)の玉(たま)を供(そな)へに来(き)たよ。312まだ一人(ひとり)も出(で)て来(こ)ぬのは、313ハルの国(くに)だ。314ヒヨツとしたらハルの国(くに)にあるかも知(し)れない。315併(しか)しあの国(くに)はブラジル山(やま)と云(い)ふ大(おほ)きな山(やま)があり、316アマゾン河(がは)と云(い)ふ広大(くわうだい)な流(なが)れがあつたり、317大沙漠(だいさばく)もあるから、318何程(なんぼ)熱心(ねつしん)な者(もの)だとて、319一寸(ちよつと)此処(ここ)までワザワザ玉(たま)を納(をさ)めに来(く)るものはなからう、320モウ一寸(ちよつと)辛抱(しんぼう)しても来(こ)なかつたら、321ハルの国(くに)へ宿替(やどが)へして、322モウ一芝居(ひとしばゐ)打(う)たうぢやないか』
323テー『さうですな、324随分(ずゐぶん)山(やま)の如(ごと)く玉(たま)が集(よ)つて来(き)ましたが、325世(よ)の中(なか)には欲呆(よくぼ)けや、326迷信家(めいしんか)が沢山(たくさん)あると見(み)えますわい。327アハヽヽヽ』
328カー『身魂(みたま)相応(さうおう)の玉(たま)を持(も)つて来(く)ると見(み)えて、329随分(ずゐぶん)ヤクザ玉(たま)ばかり集(よ)つたものだ。330高姫玉(たかひめだま)や黒姫玉(くろひめだま)、331高山玉(たかやまだま)に杓子(しやくし)のお玉(たま)、332狸(たぬき)の睾丸(きんたま)、333瓢六玉(へうろくだま)、334団子玉(だんごだま)などは沢山(たくさん)集(あつ)まつて来(き)たが、335肝腎(かんじん)の黄金(こがね)の玉(たま)はまだ根(ね)つからお出(い)で遊(あそ)ばさぬ。336何程(なんぼ)毎日(まいにち)、337あゝ惟神(かむながら)御玉幸(みたまさち)はひましませ……とか、338玉(たま)ちはひませ……とか云(い)つて拝(をが)んでも、339根(ね)つから神(かみ)様(さま)は肝腎(かんじん)の御(ご)性念玉(しやうねんだま)を集(あつ)めては下(くだ)さらず、340わしも肝玉(きもだま)がひしげる様(やう)な恐(こわ)い目(め)にあうたり、341睾丸(きんたま)が縮(ちぢ)み上(あ)がる様(やう)な苦労(くらう)をして、342随分(ずゐぶん)頭(あたま)の脳味噌(なうみそ)を絞(しぼ)つて見(み)たが、343タマで目的(もくてき)の黄金玉(わうごんだま)は集(あつ)まり来(きた)らず、344玉々(たまたま)黄色(きいろ)い色(いろ)がして居(ゐ)ると思(おも)へば、345土玉(つちだま)で、346少(すこ)しひねくつてをると砕(くだ)けて了(しま)ふ様(やう)なフヌケ玉(だま)許(ばか)り、347これ丈(だけ)苦労(くらう)艱難(かんなん)しても玉(たま)の悪(わる)い奴(やつ)許(ばか)りより集(よ)つて来(こ)ぬかと思(おも)へば、348わしも癇癪玉(かんしやくだま)が破裂(はれつ)しさうだ。349本当(ほんたう)に遠(とほ)い山坂(やまさか)や谷川(たにがは)を駆(か)けめぐり、350こんな張合(はりあひ)のない事(こと)では、351たまらぬぢやありませぬか。352なア竜国別(たつくにわけ)さま』
353竜国(たつくに)『さう気投(きな)げをせずに、354モウちつと辛抱(しんばう)して呉(く)れ。355チツとは結構(けつこう)なことが出(で)て来(く)るよ。356黄金(こがね)の玉(たま)を手(て)に入(い)れるが最後(さいご)、357俺(おれ)達(たち)は聖地(せいち)へ帰(かへ)り、358高姫(たかひめ)の頑固者(ぐわんこもの)に頭(あたま)を下(さ)げさせ、359アツと云(い)はして、360天晴(あつぱれ)三五教(あななひけう)の柱石(ちうせき)となり、361巾(はば)を利(き)かして大神業(だいしんげふ)に参加(さんか)するのを楽(たのし)みに、362モウ暫(しばら)く忍耐(にんたい)して、363モウ一働(ひとはたら)き働(はたら)いて呉(く)れ』
364カー『忍耐(にんたい)は幸福(かうふく)の母(はは)、365鷹依姫(たかよりひめ)は竜国別(たつくにわけ)の母(はは)、366瑞(みづ)の御霊(みたま)は世界(せかい)の母(はは)だ。367……母(はは)に別(わか)れて幼子(をさなご)が、368遠(とほ)き山路(やまぢ)を打渉(うちわた)り、369艱難(かんなん)して此処(ここ)まで尋(たづ)ね来(き)たものを、370聞(きこ)えませぬと取(と)り付(つ)いて、371涙(なみだ)先立(さきだ)つ恨(うら)み声(ごゑ)、372チンチリチンぢや』
373テー『コリヤコリヤ、374そんな気楽(きらく)な事(こと)所(どころ)かい。375チツと確(しつか)りと智慧(ちゑ)をめぐらし、376モウ一活動(ひとくわつどう)やらねばならぬ、377肝腎要(かんじんかなめ)の性念場(しやうねんば)だぞ』
378 斯(か)く云(い)ふ折(をり)しも、379俄(にはか)に聞(きこ)ゆる縦笛(たてぶえ)、380横笛(よこぶえ)、381法螺貝(ほらがい)、382磬盤(けいばん)を叩(たた)く音(おと)頻(しき)りに聞(きこ)え、383『黄金(こがね)の玉(たま)献上(けんじやう)』と云(い)ふ旗(はた)幾十(いくじふ)となく木(こ)の間(ま)に見(み)えつ隠(かく)れつ、384翩翻(へんぽん)として谷風(たにかぜ)に吹(ふ)かれ乍(なが)ら登(のぼ)つて来(く)る。
385 鷹依姫(たかよりひめ)は竹筒(たけづつ)を右手(みぎて)に握(にぎ)つたまま、386慌(あわた)だしく岩窟内(がんくつない)に姿(すがた)を隠(かく)した。387竜国別(たつくにわけ)は威儀(ゐぎ)を正(ただ)して鏡(かがみ)の池(いけ)の前(まへ)に端坐(たんざ)し、388両手(りやうて)を合(あは)せて天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)してゐる。389テー、390カー両人(りやうにん)は行儀(ぎやうぎ)よく竜国別(たつくにわけ)の後(うしろ)に平伏(へいふく)して一生(いつしやう)懸命(けんめい)に鏡(かがみ)の池(いけ)を拝(をが)み居(ゐ)る。
391(大正一一・八・一一 旧六・一九 松村真澄録)
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