霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一五章 ヨブの入信(にふしん)〔八三七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第29巻 海洋万里 辰の巻 篇:第3篇 神鬼一転 よみ(新仮名遣い):しんきいってん
章:第15章 ヨブの入信 よみ(新仮名遣い):よぶのにゅうしん 通し章番号:837
口述日:1922(大正11)年08月12日(旧06月20日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
高姫に対して憤っていた船客の一人は、ヨブという名前で、去年船中で鷹依姫一行が海中に没したのを見て、高姫に対して非常な怒りを覚えたことを明かした。そして、今高姫の高潔な姿を見て、弟子になりたいと申し出た。
高姫は一度断るが、ヨブは熱心に頼み込んだ。常彦と春彦も賛成し、ヨブは高姫に同道することになった。それにあたって高姫は、執着心を去るために必要最低限の路銀のみ携帯するように言い渡した。
ヨブは、船中に居た同郷の島の知人に手持ちの路銀のほとんどを与え、貧しい人たちに施すようにと頼んだ。知人たちは後に故郷に戻ると、ヨブから預かった金を島の貧しい人たちに残らず与えた。
高姫たちは、ヨブの無欲に感心し、常彦はヨブの入信を祝う歌を歌った。そこにはかつての高姫の所業も歌いこまれていたが、船中の人々はそれを聞いて、かえって高姫一行の公平無私な態度に感歎した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ:ニユージランド(ニュージーランド) データ凡例: データ最終更新日:2022-01-02 18:19:15 OBC :rm2915
愛善世界社版:216頁 八幡書店版:第5輯 545頁 修補版: 校定版:222頁 普及版:101頁 初版: ページ備考:
001 高姫(たかひめ)(いつは)らざる告白(こくはく)船客(せんきやく)一人(ひとり)は、002今迄(いままで)憤怒(ふんぬ)(じやう)何処(どこ)へやら()()せ、003今度(こんど)(まつた)高姫(たかひめ)(たい)する同情者(どうじやうしや)となつて(しま)つた。004(へい)高姫(たかひめ)(むか)ひ、
005(ヨブ)(わたし)はカーリン(じま)(いま)のフオークランド)のヨブと()(もの)御座(ござ)います。006去年(きよねん)(この)(ごろ)007(この)カーリン(まる)()り、008ゼムの(みなと)往来(ゆきき)する途中(とちう)009最前(さいぜん)(はな)しました(やう)な、010親子(おやこ)主従(しゆじゆう)溺死(できし)目撃(もくげき)し、011(それ)から(なん)となく(あは)れを(もよほ)し、012()(さぐ)つて()れば、013自転倒(おのころ)(じま)高姫(たかひめ)さまから()()されて、014ここまで遥々(はるばる)やつて()(あは)れな(ひと)だと()いてから、015おのれ高姫(たかひめ)()つけ次第(しだい)素首(そつくび)()かずにおくものかと、016(おや)仇敵(かたき)ででもあるかの(やう)に、017力瘤(ちからこぶ)()れて憤怒(ふんぬ)(じやう)()()ねてゐましたが、018(いま)()本人(ほんにん)高姫(たかひめ)さまに出会(であ)ひ、019()くと()るとは大変(たいへん)(ちが)ひ、020あなたの潔白(けつぱく)なる()精神(せいしん)には、021(この)ヨブも感嘆(かんたん)(いた)しました。022(はなし)()ふものは両方(りやうはう)()かねば一方(いつぱう)(ばか)()いては(わか)らぬものです。023どうぞ高姫(たかひめ)さま、024不思議(ふしぎ)御縁(ごえん)(この)(ふね)(なか)でお()にかかりました。025これを(しほ)(わたし)貴女(あなた)()弟子(でし)にして(くだ)さいませぬか。026(わたし)両親(りやうしん)もあり、027(あに)(いもうと)御座(ござ)いますが、028(さいは)部屋住(へやずみ)()何処(どこ)まで()つても、029(かみ)さまの(ため)なら親兄妹(おやきやうだい)(なに)(まを)しませぬ。030どうぞ(わたし)何処(どこ)までもお(とも)をさして(くだ)さいませ。031(また)路銀(ろぎん)()(こま)りなら、032()(ねん)(さん)(ねん)路銀(ろぎん)丁度(ちやうど)ここに携帯(けいたい)(いた)して()りますから、033どうぞお(とも)にお(ねがひ)(いた)します』
034高姫(たかひめ)『それは(まこと)結構(けつこう)思召(おぼしめ)しで御座(ござ)いますが、035まだ貴方(あなた)には執着心(しふちやくしん)がありますから、036到底(たうてい)()辛抱(しんばう)出来(でき)ますまい。037(また)御縁(ごえん)がありましたら、038(その)(とき)()世話(せわ)になりませう。039(しか)しどうぞ三五(あななひ)(みち)信者(しんじや)におなり(くだ)さいませ』
040ヨブ『(わたし)(もと)より三五教(あななひけう)信者(しんじや)御座(ござ)いますよ。041(べつ)教会(けうくわい)とか、042教典(けうてん)とか(また)経文(きやうもん)とか、043形式(けいしき)(てき)(みち)()んで()りませぬが、044(まこと)宗教(しうけう)(けつ)して教会(けうくわい)儀式(ぎしき)などから(うま)れるものでは御座(ござ)りませぬ。045どうぞ左様(さやう)結構(けつこう)なお(みち)世界(せかい)宣伝(せんでん)し、046(おな)人間(にんげん)(うま)れて、047一生(いつしやう)(くら)すならば、048世界(せかい)人民(じんみん)(たす)け、049(よろこ)ばれて(この)()()ごし()御座(ござ)います。050どうぞお()()りますまいが、051貴女(あなた)のお弟子(でし)にして(くだ)さいませ』
052高姫(たかひめ)一寸(ちよつと)()様子(やうす)()れば、053随分(ずゐぶん)あなたは(あたら)しい学問(がくもん)をしてゐるお(かた)のやうだ。054余程(よほど)悧巧(りかう)(かた)とみえますから、055到底(たうてい)(わたし)のやうな無学(むがく)文盲(もんまう)昔人間(むかしにんげん)()ふことはお()()りますまいから……』
056ヨブ『(まこと)(みち)学問(がくもん)智慧(ちゑ)(わか)るものではありませぬ。057(わたし)貴女(あなた)言心行(げんしんかう)一致(いつち)(まこと)感心(かんしん)をしたので御座(ござ)います。058(いま)()(なか)(くち)(こころ)(おこな)ひと全然(すつかり)反対(はんたい)(もの)ばかり、059どうぞ(まこと)(ひと)()つけて、060世界(せかい)(ため)(つく)()いと、061()ても()めても(かみ)(さま)祈願(きぐわん)()めてゐました。062今日(けふ)今日(けふ)とて大悪人(だいあくにん)(おも)ひつめてゐた、063貴女(あなた)言心行(げんしんかう)一致(いつち)執着心(しふちやくしん)のない信仰心(しんかうしん)(つよ)いのを実地(じつち)拝見(はいけん)(いた)しまして、064(なん)とも愉快(ゆくわい)でたまりませぬ。065貴女(あなた)弟子(でし)になることが出来(でき)ませねば、066せめて荷持(にもち)になりと()れて()つて(くだ)さいませ。067(この)宇都(うづ)(くに)から巴留(はる)(くに)現今(げんこん)のブラジル)の海岸(かいがん)は、068(わたし)(くは)しく(ぞん)じてゐますから、069どうぞ道案内(みちあんない)(かたがた)()(とも)をさして(くだ)さる(やう)()(ねがひ)(いた)します』
070高姫(たかひめ)(わたし)一量見(いちれうけん)では(まゐ)りませぬ。071ここに同行(どうかう)(いた)してをります常彦(つねひこ)072春彦(はるひこ)()意見(いけん)(うかが)ひまして、073(その)(うへ)()返事(へんじ)(いた)しませう。074……なア常彦(つねひこ)075春彦(はるひこ)076あなたも(いま)()きの(とほ)り、077(この)(かた)仰有(おつしや)ること如何(どう)(おも)はれますか。078どうぞ()意見(いけん)腹蔵(ふくざう)なく(いま)此処(ここ)(おつしや)つて(くだ)さいませ』
079常彦(つねひこ)『それは(まこと)結構(けつこう)だと(おも)ひます。080……なア春彦(はるひこ)081(まへ)賛成(さんせい)だらう』
082春彦(はるひこ)(わたし)もズツト賛成(さんせい)です。083ヨブさまがここへ(くは)はつて(くだ)されば、084丁度(ちやうど)(かみ)(さま)一霊(いちれい)とし、085吾々(われわれ)四魂(しこん)となつて、086御用(ごよう)(いた)しますのに、087大変(たいへん)好都合(かうつがふ)御座(ござ)います』
088高姫(たかひめ)『あゝ()二人(ふたり)(とも)()同意(どうい)(くだ)さいましたか、089それは(まこと)(よろこ)ばしいこつて御座(ござ)います。090……モシモシ ヨブ(さま)091(きき)(とほ)りで御座(ござ)いますから、092どうぞ(よろ)しくお(ねが)(いた)します』
093ヨブ『ハイ早速(さつそく)()聞済(ききず)み、094これに()したる(よろこび)御座(ござ)いませぬ。095どうぞ末永(すえなが)()使(つか)ひの(ほど)()(ねがひ)(いた)します』
096高姫(たかひめ)(しか)(なが)らあなた最前(さいぜん)路銀(ろぎん)沢山(たくさん)()つてると(あふ)せられましたが、097吾々(われわれ)宣伝使(せんでんし)(あま)沢山(たくさん)路銀(ろぎん)必要(ひつえう)御座(ござ)いませぬ。098どうぞ(それ)難儀(なんぎ)(ひと)に、099ゼムの(みなと)()上陸(じやうりく)になつたら()けてお()(くだ)さい。100さうでないと(まこと)()神徳(しんとく)(いただ)けもせず、101本当(ほんたう)御用(ごよう)(つと)まりませぬ。102身魂(みたま)因縁(いんねん)性来(しやうらい)で、103(かみ)(さま)御用(ごよう)出来(でき)るので御座(ござ)いますから、104宣伝使(せんでんし)として(けつ)してお(かね)なんか必要(ひつえう)御座(ござ)いませぬ、105()()たり、106(やま)()たり、107辻堂(つじだう)()たり、108種々(いろいろ)修業(しうげふ)(いた)して、109世界(せかい)人民(じんみん)安心(あんしん)立命(りつめい)(あた)へ、110天下(てんか)泰平(たいへい)祈願(きぐわん)(いた)すのが宣伝使(せんでんし)職責(しよくせき)御座(ござ)いますから……(それ)とも(あや)聖地(せいち)とか、111波斯(フサ)(くに)斎苑(いそ)(やかた)()普請(ふしん)とかにお(ささ)(くだ)さるのなら結構(けつこう)御座(ござ)いますが、112(しか)(その)(かね)如何(どう)して()()にお()(あそ)ばしたのですか。113まだお(とし)(わか)いし、114(かね)(まう)かる塩梅(あんばい)御座(ござ)いませぬが、115大方(おほかた)両親(りやうしん)財産(ざいさん)でも()けてお(いただ)きになつたのでせう』
116ヨブ『ハイ、117()(さつ)しの(とほ)り、118両親(りやうしん)から各自(かくじ)財産(ざいさん)分配(ぶんぱい)(うけ)()りまする。119(それ)だから(けつ)して(あや)しき(かね)でも、120(ぬす)んだ(もの)でも御座(ござ)いませぬから、121そんならどうか(かみ)(さま)()普請(ふしん)にお使(つか)(くだ)さいませぬか』
122高姫(たかひめ)『あなたが汗脂(あせあぶら)(しぼ)つて苦労(くらう)(かたまり)()めたお(かね)なら、123(かみ)(さま)もお(よろこ)びでせうが、124親譲(おやゆづ)りの財産(ざいさん)で、125自分(じぶん)()(よご)さず、126(ふところ)にしたお(かね)苦労(くらう)しゆんでゐませぬから、127(かみ)(さま)にお()げしても()(よろこ)びにはなりませぬ。128どうぞそれは慈善(じぜん)(てき)に、129難儀(なんぎ)(ひと)にお(あた)(くだ)さいませ。130世界(せかい)人民(じんみん)(みな)(かみ)(さま)(たふと)(れい)宿(やど)つたお子様(こさま)御座(ござ)いますから、131()はば人民(じんみん)同志(どうし)兄弟(けうだい)同様(どうやう)132兄弟(けうだい)大切(たいせつ)にするのは、133親神(おやがみ)(さま)大変(たいへん)(よろこ)びで御座(ござ)いますからなア』
134ヨブ『イヤ()(わか)りました。135左様(さやう)ならば(その)(かんが)へに(いた)します。136金銭(きんせん)などは(じつ)のところ(うるさ)くて(たま)らないのですが、137これが()くては(たび)出来(でき)ませぬので、138せう(こと)なしに(おも)たいものを(はら)()いて(ある)いて()ります』
139 船客(せんきやく)一人(ひとり)(かふ)(この)(はな)しを()いて(そば)()(きた)り、
140甲『モシモシ ヨブさま、141あなたは(いよいよ)(この)(かた)のお弟子(でし)になる(つも)りですか』
142ヨブ『お(さつ)しの(とほ)りです。143どうぞ(くに)へお(かへ)りになつた(とき)には、144(わたし)両親(りやうしん)(はじ)兄弟(けうだい)親類(しんるゐ)145村中(むらぢう)方々(かたがた)(よろ)しく()つて(くだ)さいませ』
146甲『ハイ承知(しようち)(いた)しました。147(しか)(なが)(いま)(うけたま)はれば、148あなたは所持金(しよぢきん)一切(いつさい)慈善(じぜん)(てき)難儀(なんぎ)なものに(ほどこ)すと()はれましたなア。149(おな)(ひと)(たす)けるのならば、150カーリン(たう)にも沢山(たくさん)難儀(なんぎ)人民(じんみん)()りますから、151(くに)()つたお土産(みやげ)島人(しまびと)難渋(なんじふ)なものにお(あた)へになつては如何(どう)です』
152ヨブ『あゝさう(ねが)ひませうか』
153甲『オイ、154ヤコブ、155(まへ)一緒(いつしよ)にヨブさまから(いま)(かね)受取(うけと)つたら証人(しようにん)になつて()れ、156()間違(まちが)うと(こま)るからなア』
157ヨブ『タールさまの正直(しやうぢき)正道(しやうだう)のあなた、158(けつ)して間違(まちが)ひはありますまい。159最早(もはや)あなたのお()(わた)した以上(いじやう)は、160(わたし)のお(かね)ではありませぬ、161あなたの()自由(じいう)になさつたらいいのです。162(べつ)にヤコブさまを、163(しち)むづかしい、164証人(しようにん)なんかに()てる必要(ひつえう)はありますまい。165(しか)しヤコブさまが同意(どうい)して(くだ)さらば、166二人(ふたり)()けて(あづか)つて(もら)ひませう』
167ヤコブ『どちらなりと、168あなたの御意(ぎよい)(したが)ひます』
169 ヨブは(ふところ)より沢山(たくさん)小判(こばん)取出(とりだ)し、170(その)一部分(いちぶぶん)まさか用意(ようい)(あと)(のこ)し、171九分(くぶ)(まで)両人(りやうにん)(たく)し、
172ヨブ『どうぞ難渋(なんじふ)(ひと)に、173(まへ)さまから(あた)へて(くだ)さい。174(けつ)してヨブの(かね)だとは()つて(くだ)さいますな。175(ひと)(ほどこ)(とき)は、176(みぎ)()にて(ほどこ)すのを、177(ひだり)()()れない(やう)にせよ……との(かみ)(さま)()(しめ)しも御座(ござ)いますから、178どうぞ(その)(つも)りでお(ねが)(いた)します』
179 両人(りやうにん)感心(かんしん)(なが)ら、180(その)(かね)受取(うけと)帰国(きこく)(のち)181ヨブの依頼(たより)(ごと)く、182数多(あまた)(まづ)しき人々(ひとびと)に、183一文(いちもん)(のこ)らず正直(しやうぢき)(あた)へて(しま)つた。
184 高姫(たかひめ)185常彦(つねひこ)186春彦(はるひこ)もヨブの恬淡(てんたん)無欲(むよく)なるに(かん)()り、187(おほい)(その)行為(かうゐ)賞揚(しやうやう)した。188常彦(つねひこ)()(あが)り、189(うた)(うた)つてヨブの入信(にふしん)(しゆく)した。
190常彦(つねひこ)(かみ)(おもて)(あら)はれて
191(ぜん)(あく)とを立別(たてわ)ける
192(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
193(こころ)(ひろ)大直日(おほなほひ)
194(ただ)何事(なにごと)(ひと)()
195直日(なほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)
196(あやま)りあれば()(なほ)
197三五教(あななひけう)(かみ)(みち)
198高姫司(たかひめつかさ)今迄(いままで)
199正邪(せいじや)(みち)()(まよ)
200我情(がじやう)我欲(がよく)立通(たてとほ)
201(しも)(しひた)(かみ)(おさ)
202変性(へんじやう)男子(なんし)系統(ひつぽう)
203()出神(でのかみ)生宮(いきみや)
204真向(まつかう)上段(じやうだん)振翳(ふりかざ)
205三五教(あななひけう)人々(ひとびと)
206(あさ)(ゆふ)なに威喝(ゐかつ)して
207(とり)なき(さと)蝙蝠(かうもり)
208()りすましたる(おろか)さよ
209(こころ)(やみ)はいや(ふか)
210黒白(あやめ)()かぬ黒姫(くろひめ)
211黄金(こがね)(たま)紛失(ふんしつ)
212(こころ)(いた)むる折柄(をりから)
213高姫司(たかひめつかさ)()ぎつけて
214悪鬼(あくき)のやうな顔色(がんしよく)
215小言(こごと)八百(はつぴやく)(なら)()
216黒姫(くろひめ)さまを(はじ)めとし
217鷹依姫(たかよりひめ)竜国別(たつくにわけ)
218(のり)(つかさ)やテー、カーの
219()(にん)(つかさ)無残(むざん)にも
220(あや)聖地(せいち)()(いだ)
221海洋(かいやう)万里(ばんり)竜宮島(りうぐうじま)
222高砂島(たかさごじま)(まで)()(いだ)
223自分(じぶん)(たま)紛失(ふんしつ)
224(ふたた)(こころ)暗雲(やみくも)
225(つつ)まれ聖地(せいち)(あと)にして
226南洋(なんやう)諸島(しよたう)高砂(たかさご)
227(しま)(また)もや(わた)()
228金剛(こんがう)不壊(ふゑ)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)
229紫玉(むらさきだま)黄金(わうごん)
230(うづ)宝玉(ほうぎよく)麻邇(まに)(たま)
231言依別(ことよりわけ)教主(けうしゆ)()
232着服(ちやくふく)なして海外(かいぐわい)
233姿(すがた)(かく)三五(あななひ)
234(かみ)(もと)なる厳御魂(いづみたま)
235変性(へんじやう)男子(なんし)(たて)をつき
236謀叛(むほん)(たく)むに(ちが)ひない
237こりや()うしては()られぬと
238夜叉(やしや)のやうなる(いきほひ)
239霊界(あのよ)現世(このよ)瀬戸(せと)(うみ)
240馬関(ばくわん)海峡(かいけふ)アンボイナ
241ニユージランドやオセアニヤ
242高砂島(たかさごじま)(おく)までも
243(さぐ)(さぐ)りて鏡池(かがみいけ)
244懸橋(かけはし)御殿(ごてん)侵入(しんにふ)
245(また)もうるさい玉騒(たまさわ)
246月照彦(つきてるひこ)化身(けしん)()
247散々(さんざん)(あぶら)(しぼ)られて
248(いのち)からがら()(いだ)
249アリナの(みね)()()えて
250アルゼンチンの大野原(おほのはら)
251(くぬぎ)(はら)真中(まんなか)
252ポプラの(しげ)みを宿(やど)となし
253一夜(いちや)()かす(その)(うち)
254()花姫(はなひめ)化身(けしん)なる
255()出姫(でのひめ)深遠(しんゑん)
256神示(しんじ)()けて改心(かいしん)
257執着心(しふちやくしん)払拭(ふつしき)
258(うま)赤子(あかご)になりければ
259(すき)(ねら)つて()いてゐた
260金毛(きんまう)九尾(きうび)悪狐(あくこ)()
261ゐたたまらずに肉体(にくたい)
262(あと)(のこ)して(くも)()
263常世(とこよ)(そら)()げて()
264それから(のち)高姫(たかひめ)
265()出神(でのかみ)生宮(いきみや)
266()花姫(はなひめ)再来(さいらい)
267たとへ(がた)なき善良(ぜんりやう)
268(たちま)身魂(みたま)となり(かは)
269昨日(きのふ)(おに)今日(けふ)(かみ)
270()にも(たつと)神柱(かむばしら)
271(こころ)(そら)につき(かた)
272アイルの(はげ)しき荒河(あらかは)
273(かみ)(つく)りし(わに)(はし)
274易々(やすやす)(わた)りて(たま)()
275(ほとり)(やうや)辿(たど)りつき
276高姫司(たかひめつかさ)(はじ)めとし
277常彦(つねひこ)春彦(はるひこ)諸共(もろとも)
278椰子樹(やしじゆ)(もり)(よこ)たはり
279一夜(いちや)()かし()()まし
280あたりキヨロキヨロ見廻(みまは)せば
281鷹依姫(たかよりひめ)竜国別(たつくにわけ)
282(のり)(つかさ)やテー、カーの
283()(にん)姿(すがた)(きざ)みたる
284(いし)(なが)めて拝礼(はいれい)
285悔悟(くわいご)(なみだ)せきあへず
286ここに(まつた)改心(かいしん)
287開悟(かいご)(はな)満開(まんかい)
288森羅(しんら)万象(ばんしやう)(ことごと)
289至善(しぜん)至楽(しらく)光景(くわうけい)
290(かは)りたるこそ面白(おもしろ)
291(われ)()三人(みたり)(たま)()
292(にしき)(うを)(をし)へられ
293(たて)(よこ)との経綸(けいりん)
294(くま)なく(さと)りやうやうに
295アルの(みなと)()()れば
296(をり)よく(ふね)出帆(しゆつぱん)
297間際(まぎは)なりしを(さいは)ひに
298(うれ)しく()りて(いま)此処(ここ)
299(むね)()(わた)(うみ)(うへ)
300タールや、ヤコブ、ヨブさまの
301世間話(せけんばなし)(はな)()
302()くともなしに()()れば
303鷹依姫(たかよりひめ)竜国別(たつくにわけ)
304(のり)(つかさ)一行(いつかう)
305大和田中(おほわだなか)()()りて
306みまかり(たま)ひし物語(ものがたり)
307(われ)()(むね)(とどろ)きつ
308(なみだ)(おさ)へて()(うち)
309高姫(たかひめ)さまの物語(ものがたり)
310鷹依姫(たかよりひめ)一行(いつかう)
311奇禍(きくわ)にあひしも(その)(もと)
312(くは)しく(さぐ)れば高姫(たかひめ)
313我情(がじやう)我慢(がまん)結果(けつくわ)ぞと
314()いて(われ)()(むね)(いた)
315如何(いかが)ならむと(おも)ふうち
316身魂(みたま)(きよ)高姫(たかひめ)
317()つて(かは)つて正直(しやうぢき)
318おのが前非(ぜんぴ)告白(こくはく)
319捨身(しやしん)覚悟(かくご)をなし(たま)
320(その)雄々(をを)しさにヨブさまも
321日頃(ひごろ)(いか)りは氷解(ひようかい)
322()つて(かは)つた機嫌顔(きげんがほ)
323不言(ふげん)実行(じつかう)行動(かうどう)
324(かん)(たま)ひて高姫(たかひめ)
325御弟子(みでし)にならむと()(たま)
326あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
327(かみ)御霊(みたま)(さち)はひて
328高姫(たかひめ)さまの今日(けふ)(むね)
329(あさひ)(ごと)()みわたり
330()(かがや)くぞ雄々(をを)しけれ
331高姫(たかひめ)さまの改心(かいしん)
332()しや(おく)れてゐたならば
333カーリン(まる)船中(せんちう)
334ヨブに素首(そつくび)引抜(ひきぬ)かれ
335(われ)()(かな)しき長旅(ながたび)
336(なん)詮術(せんすべ)(なみ)(うへ)
337()けど(さけ)べど甲斐(かひ)もなく
338(かな)しき(わか)れせしならむ
339朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
340(つき)()つとも()くるとも
341仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
342誠一(まことひと)つは()(すく)
343(まこと)(みち)御教(みをしへ)
344只一筋(ただひとすぢ)()れからは
345脇目(わきめ)もふらず(すす)みなむ
346(かみ)(われ)()(まも)ります
347(かみ)御旨(みむね)(かな)ひなば
348如何(いか)なる(こと)(おそ)れむや
349(ここ)常彦(つねひこ)(つつし)みて
350高姫(たかひめ)さまの()改心(かいしん)
351入信(にふしん)されたヨブさまの
352目出度(めでた)今日(けふ)生日(いくひ)をば
353(よろこ)(いさ)()ぎまつる
354あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
355御霊(みたま)(さち)はひましませよ』
356(うた)(をは)り、357(こし)(おろ)した。358高姫(たかひめ)(はじ)め、359ヨブ(その)()船中(せんちう)人々(ひとびと)常彦(つねひこ)現在(げんざい)高姫(たかひめ)(まへ)におき、360露骨(ろこつ)(その)経路(けいろ)(かた)りたる公平(こうへい)無私(むし)態度(たいど)感嘆(かんたん)(した)()くのであつた。
361大正一一・八・一二 旧六・二〇 松村真澄録)
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