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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第29巻(辰の巻)
序
総説
端書
第1篇 玉石混来
第1章 アリナの滝
第2章 懸橋御殿
第3章 白楊樹
第4章 野辺の訓戒
第2篇 石心放告
第5章 引懸戻し
第6章 玉の行衛
第7章 牛童丸
第8章 高姫慴伏
第9章 俄狂言
第10章 国治の国
第3篇 神鬼一転
第11章 日出姫
第12章 悔悟の幕
第13章 愛流川
第14章 カーリン丸
第15章 ヨブの入信
第16章 波の響
第4篇 海から山へ
第17章 途上の邂逅
第18章 天祥山
第19章 生霊の頼
第20章 道すがら
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海洋万里(第25~36巻)
>
第29巻(辰の巻)
> 第3篇 神鬼一転 > 第15章 ヨブの入信
<<< カーリン丸
(B)
(N)
波の響 >>>
第一五章 ヨブの
入信
(
にふしん
)
〔八三七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第29巻 海洋万里 辰の巻
篇:
第3篇 神鬼一転
よみ(新仮名遣い):
しんきいってん
章:
第15章 ヨブの入信
よみ(新仮名遣い):
よぶのにゅうしん
通し章番号:
837
口述日:
1922(大正11)年08月12日(旧06月20日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年9月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
高姫に対して憤っていた船客の一人は、ヨブという名前で、去年船中で鷹依姫一行が海中に没したのを見て、高姫に対して非常な怒りを覚えたことを明かした。そして、今高姫の高潔な姿を見て、弟子になりたいと申し出た。
高姫は一度断るが、ヨブは熱心に頼み込んだ。常彦と春彦も賛成し、ヨブは高姫に同道することになった。それにあたって高姫は、執着心を去るために必要最低限の路銀のみ携帯するように言い渡した。
ヨブは、船中に居た同郷の島の知人に手持ちの路銀のほとんどを与え、貧しい人たちに施すようにと頼んだ。知人たちは後に故郷に戻ると、ヨブから預かった金を島の貧しい人たちに残らず与えた。
高姫たちは、ヨブの無欲に感心し、常彦はヨブの入信を祝う歌を歌った。そこにはかつての高姫の所業も歌いこまれていたが、船中の人々はそれを聞いて、かえって高姫一行の公平無私な態度に感歎した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
ニユージランド(ニュージーランド)
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-01-02 18:19:15
OBC :
rm2915
愛善世界社版:
216頁
八幡書店版:
第5輯 545頁
修補版:
校定版:
222頁
普及版:
101頁
初版:
ページ備考:
001
高姫
(
たかひめ
)
の
偽
(
いつは
)
らざる
告白
(
こくはく
)
に
船客
(
せんきやく
)
の
一人
(
ひとり
)
は、
002
今迄
(
いままで
)
の
憤怒
(
ふんぬ
)
の
情
(
じやう
)
は
何処
(
どこ
)
へやら
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せ、
003
今度
(
こんど
)
は
全
(
まつた
)
く
高姫
(
たかひめ
)
に
対
(
たい
)
する
同情者
(
どうじやうしや
)
となつて
了
(
しま
)
つた。
004
丙
(
へい
)
は
高姫
(
たかひめ
)
に
向
(
むか
)
ひ、
005
丙
(ヨブ)
『
私
(
わたし
)
はカーリン
島
(
じま
)
(
今
(
いま
)
のフオークランド)のヨブと
云
(
い
)
ふ
者
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
います。
006
去年
(
きよねん
)
の
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
、
007
此
(
この
)
カーリン
丸
(
まる
)
に
乗
(
の
)
り、
008
ゼムの
港
(
みなと
)
に
往来
(
ゆきき
)
する
途中
(
とちう
)
、
009
最前
(
さいぜん
)
話
(
はな
)
しました
様
(
やう
)
な、
010
親子
(
おやこ
)
主従
(
しゆじゆう
)
の
溺死
(
できし
)
を
目撃
(
もくげき
)
し、
011
夫
(
それ
)
から
何
(
なん
)
となく
憐
(
あは
)
れを
催
(
もよほ
)
し、
012
能
(
よ
)
く
探
(
さぐ
)
つて
見
(
み
)
れば、
013
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
の
高姫
(
たかひめ
)
さまから
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
されて、
014
ここまで
遥々
(
はるばる
)
やつて
来
(
き
)
た
憐
(
あは
)
れな
人
(
ひと
)
だと
聞
(
き
)
いてから、
015
おのれ
高姫
(
たかひめ
)
見
(
み
)
つけ
次第
(
しだい
)
素首
(
そつくび
)
抜
(
ぬ
)
かずにおくものかと、
016
親
(
おや
)
の
仇敵
(
かたき
)
ででもあるかの
様
(
やう
)
に、
017
力瘤
(
ちからこぶ
)
を
入
(
い
)
れて
憤怒
(
ふんぬ
)
の
情
(
じやう
)
に
堪
(
た
)
へ
兼
(
か
)
ねてゐましたが、
018
今
(
いま
)
御
(
ご
)
本人
(
ほんにん
)
の
高姫
(
たかひめ
)
さまに
出会
(
であ
)
ひ、
019
聞
(
き
)
くと
見
(
み
)
るとは
大変
(
たいへん
)
な
違
(
ちが
)
ひ、
020
あなたの
潔白
(
けつぱく
)
なる
御
(
ご
)
精神
(
せいしん
)
には、
021
此
(
この
)
ヨブも
感嘆
(
かんたん
)
致
(
いた
)
しました。
022
話
(
はなし
)
と
云
(
い
)
ふものは
両方
(
りやうはう
)
聞
(
き
)
かねば
一方
(
いつぱう
)
計
(
ばか
)
り
聞
(
き
)
いては
分
(
わか
)
らぬものです。
023
どうぞ
高姫
(
たかひめ
)
さま、
024
不思議
(
ふしぎ
)
な
御縁
(
ごえん
)
で
此
(
この
)
船
(
ふね
)
の
中
(
なか
)
でお
目
(
め
)
にかかりました。
025
これを
機
(
しほ
)
に
私
(
わたし
)
を
貴女
(
あなた
)
の
御
(
お
)
弟子
(
でし
)
にして
下
(
くだ
)
さいませぬか。
026
私
(
わたし
)
は
両親
(
りやうしん
)
もあり、
027
兄
(
あに
)
も
妹
(
いもうと
)
も
御座
(
ござ
)
いますが、
028
幸
(
さいは
)
ひ
部屋住
(
へやずみ
)
の
身
(
み
)
で
何処
(
どこ
)
まで
行
(
い
)
つても、
029
神
(
かみ
)
さまの
為
(
ため
)
なら
親兄妹
(
おやきやうだい
)
も
何
(
なに
)
も
申
(
まを
)
しませぬ。
030
どうぞ
私
(
わたし
)
を
何処
(
どこ
)
までもお
供
(
とも
)
をさして
下
(
くだ
)
さいませ。
031
又
(
また
)
路銀
(
ろぎん
)
に
御
(
お
)
困
(
こま
)
りなら、
032
二
(
に
)
年
(
ねん
)
や
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
の
路銀
(
ろぎん
)
は
丁度
(
ちやうど
)
ここに
携帯
(
けいたい
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りますから、
033
どうぞお
供
(
とも
)
にお
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
します』
034
高姫
(
たかひめ
)
『それは
誠
(
まこと
)
に
結構
(
けつこう
)
な
思召
(
おぼしめ
)
しで
御座
(
ござ
)
いますが、
035
まだ
貴方
(
あなた
)
には
執着心
(
しふちやくしん
)
がありますから、
036
到底
(
たうてい
)
御
(
ご
)
辛抱
(
しんばう
)
は
出来
(
でき
)
ますまい。
037
又
(
また
)
御縁
(
ごえん
)
がありましたら、
038
其
(
その
)
時
(
とき
)
に
御
(
お
)
世話
(
せわ
)
になりませう。
039
併
(
しか
)
しどうぞ
三五
(
あななひ
)
の
道
(
みち
)
の
信者
(
しんじや
)
におなり
下
(
くだ
)
さいませ』
040
ヨブ『
私
(
わたし
)
は
素
(
もと
)
より
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
で
御座
(
ござ
)
いますよ。
041
別
(
べつ
)
に
教会
(
けうくわい
)
とか、
042
教典
(
けうてん
)
とか
又
(
また
)
は
経文
(
きやうもん
)
とか、
043
形式
(
けいしき
)
的
(
てき
)
の
道
(
みち
)
は
踏
(
ふ
)
んで
居
(
を
)
りませぬが、
044
誠
(
まこと
)
の
宗教
(
しうけう
)
は
決
(
けつ
)
して
教会
(
けうくわい
)
や
儀式
(
ぎしき
)
などから
生
(
うま
)
れるものでは
御座
(
ござ
)
りませぬ。
045
どうぞ
左様
(
さやう
)
な
結構
(
けつこう
)
なお
道
(
みち
)
を
世界
(
せかい
)
に
宣伝
(
せんでん
)
し、
046
同
(
おな
)
じ
人間
(
にんげん
)
と
生
(
うま
)
れて、
047
一生
(
いつしやう
)
を
暮
(
くら
)
すならば、
048
世界
(
せかい
)
の
人民
(
じんみん
)
を
助
(
たす
)
け、
049
喜
(
よろこ
)
ばれて
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
過
(
す
)
ごし
度
(
た
)
う
御座
(
ござ
)
います。
050
どうぞお
気
(
き
)
に
入
(
い
)
りますまいが、
051
貴女
(
あなた
)
のお
弟子
(
でし
)
にして
下
(
くだ
)
さいませ』
052
高姫
(
たかひめ
)
『
一寸
(
ちよつと
)
御
(
ご
)
様子
(
やうす
)
を
見
(
み
)
れば、
053
随分
(
ずゐぶん
)
あなたは
新
(
あたら
)
しい
学問
(
がくもん
)
をしてゐるお
方
(
かた
)
のやうだ。
054
余程
(
よほど
)
お
悧巧
(
りかう
)
な
方
(
かた
)
とみえますから、
055
到底
(
たうてい
)
私
(
わたし
)
のやうな
無学
(
むがく
)
文盲
(
もんまう
)
な
昔人間
(
むかしにんげん
)
の
云
(
い
)
ふことはお
気
(
き
)
に
入
(
い
)
りますまいから……』
056
ヨブ『
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
は
学問
(
がくもん
)
や
智慧
(
ちゑ
)
で
分
(
わか
)
るものではありませぬ。
057
私
(
わたし
)
は
貴女
(
あなた
)
の
言心行
(
げんしんかう
)
一致
(
いつち
)
の
誠
(
まこと
)
に
感心
(
かんしん
)
をしたので
御座
(
ござ
)
います。
058
今
(
いま
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
口
(
くち
)
と
心
(
こころ
)
と
行
(
おこな
)
ひと
全然
(
すつかり
)
反対
(
はんたい
)
な
者
(
もの
)
ばかり、
059
どうぞ
誠
(
まこと
)
の
人
(
ひと
)
を
見
(
み
)
つけて、
060
世界
(
せかい
)
の
為
(
ため
)
に
尽
(
つく
)
し
度
(
た
)
いと、
061
寝
(
ね
)
ても
醒
(
さ
)
めても
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
祈願
(
きぐわん
)
を
籠
(
こ
)
めてゐました。
062
今日
(
けふ
)
も
今日
(
けふ
)
とて
大悪人
(
だいあくにん
)
と
思
(
おも
)
ひつめてゐた、
063
貴女
(
あなた
)
の
言心行
(
げんしんかう
)
一致
(
いつち
)
の
執着心
(
しふちやくしん
)
のない
信仰心
(
しんかうしん
)
の
強
(
つよ
)
いのを
実地
(
じつち
)
拝見
(
はいけん
)
致
(
いた
)
しまして、
064
何
(
なん
)
とも
愉快
(
ゆくわい
)
でたまりませぬ。
065
貴女
(
あなた
)
の
弟子
(
でし
)
になることが
出来
(
でき
)
ませねば、
066
せめて
荷持
(
にもち
)
になりと
連
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ。
067
此
(
この
)
宇都
(
うづ
)
の
国
(
くに
)
から
巴留
(
はる
)
の
国
(
くに
)
(
現今
(
げんこん
)
のブラジル)の
海岸
(
かいがん
)
は、
068
私
(
わたし
)
は
詳
(
くは
)
しく
存
(
ぞん
)
じてゐますから、
069
どうぞ
道案内
(
みちあんない
)
旁
(
かたがた
)
御
(
お
)
供
(
とも
)
をさして
下
(
くだ
)
さる
様
(
やう
)
に
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
します』
070
高姫
(
たかひめ
)
『
私
(
わたし
)
一量見
(
いちれうけん
)
では
参
(
まゐ
)
りませぬ。
071
ここに
同行
(
どうかう
)
致
(
いた
)
してをります
常彦
(
つねひこ
)
、
072
春彦
(
はるひこ
)
の
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
を
伺
(
うかが
)
ひまして、
073
其
(
その
)
上
(
うへ
)
で
御
(
ご
)
返事
(
へんじ
)
を
致
(
いた
)
しませう。
074
……なア
常彦
(
つねひこ
)
、
075
春彦
(
はるひこ
)
、
076
あなたも
今
(
いま
)
お
聞
(
き
)
きの
通
(
とほ
)
り、
077
此
(
この
)
方
(
かた
)
の
仰有
(
おつしや
)
ること
如何
(
どう
)
思
(
おも
)
はれますか。
078
どうぞ
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
を
腹蔵
(
ふくざう
)
なく
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
で
仰
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
079
常彦
(
つねひこ
)
『それは
誠
(
まこと
)
に
結構
(
けつこう
)
だと
思
(
おも
)
ひます。
080
……なア
春彦
(
はるひこ
)
、
081
お
前
(
まへ
)
も
賛成
(
さんせい
)
だらう』
082
春彦
(
はるひこ
)
『
私
(
わたし
)
もズツト
賛成
(
さんせい
)
です。
083
ヨブさまがここへ
加
(
くは
)
はつて
下
(
くだ
)
されば、
084
丁度
(
ちやうど
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
一霊
(
いちれい
)
とし、
085
吾々
(
われわれ
)
が
四魂
(
しこん
)
となつて、
086
御用
(
ごよう
)
を
致
(
いた
)
しますのに、
087
大変
(
たいへん
)
な
好都合
(
かうつがふ
)
で
御座
(
ござ
)
います』
088
高姫
(
たかひめ
)
『あゝ
御
(
お
)
二人
(
ふたり
)
共
(
とも
)
御
(
ご
)
同意
(
どうい
)
下
(
くだ
)
さいましたか、
089
それは
誠
(
まこと
)
に
喜
(
よろこ
)
ばしいこつて
御座
(
ござ
)
います。
090
……モシモシ ヨブ
様
(
さま
)
、
091
お
聞
(
きき
)
の
通
(
とほ
)
りで
御座
(
ござ
)
いますから、
092
どうぞ
宜
(
よろ
)
しくお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
093
ヨブ『ハイ
早速
(
さつそく
)
の
御
(
お
)
聞済
(
ききず
)
み、
094
これに
越
(
こ
)
したる
悦
(
よろこび
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ。
095
どうぞ
末永
(
すえなが
)
く
御
(
お
)
使
(
つか
)
ひの
程
(
ほど
)
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
します』
096
高姫
(
たかひめ
)
『
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らあなた
最前
(
さいぜん
)
路銀
(
ろぎん
)
を
沢山
(
たくさん
)
持
(
も
)
つてると
仰
(
あふ
)
せられましたが、
097
吾々
(
われわれ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
は
余
(
あま
)
り
沢山
(
たくさん
)
の
路銀
(
ろぎん
)
は
必要
(
ひつえう
)
が
御座
(
ござ
)
いませぬ。
098
どうぞ
夫
(
それ
)
を
難儀
(
なんぎ
)
な
人
(
ひと
)
に、
099
ゼムの
港
(
みなと
)
へ
御
(
ご
)
上陸
(
じやうりく
)
になつたら
分
(
わ
)
けてお
上
(
あ
)
げ
下
(
くだ
)
さい。
100
さうでないと
誠
(
まこと
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
を
頂
(
いただ
)
けもせず、
101
本当
(
ほんたう
)
の
御用
(
ごよう
)
も
勤
(
つと
)
まりませぬ。
102
身魂
(
みたま
)
の
因縁
(
いんねん
)
性来
(
しやうらい
)
で、
103
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御用
(
ごよう
)
が
出来
(
でき
)
るので
御座
(
ござ
)
いますから、
104
宣伝使
(
せんでんし
)
として
決
(
けつ
)
してお
金
(
かね
)
なんか
必要
(
ひつえう
)
が
御座
(
ござ
)
いませぬ、
105
野
(
の
)
に
寝
(
ね
)
たり、
106
山
(
やま
)
に
臥
(
ね
)
たり、
107
辻堂
(
つじだう
)
に
寝
(
ね
)
たり、
108
種々
(
いろいろ
)
修業
(
しうげふ
)
致
(
いた
)
して、
109
世界
(
せかい
)
の
人民
(
じんみん
)
に
安心
(
あんしん
)
立命
(
りつめい
)
を
与
(
あた
)
へ、
110
天下
(
てんか
)
泰平
(
たいへい
)
の
祈願
(
きぐわん
)
を
致
(
いた
)
すのが
宣伝使
(
せんでんし
)
の
職責
(
しよくせき
)
で
御座
(
ござ
)
いますから……
夫
(
それ
)
とも
綾
(
あや
)
の
聖地
(
せいち
)
とか、
111
波斯
(
フサ
)
の
国
(
くに
)
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
の
御
(
ご
)
普請
(
ふしん
)
とかにお
献
(
ささ
)
げ
下
(
くだ
)
さるのなら
結構
(
けつこう
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
112
併
(
しか
)
し
其
(
その
)
お
金
(
かね
)
は
如何
(
どう
)
して
御
(
お
)
手
(
て
)
にお
入
(
い
)
れ
遊
(
あそ
)
ばしたのですか。
113
まだお
年
(
とし
)
も
若
(
わか
)
いし、
114
お
金
(
かね
)
の
儲
(
まう
)
かる
塩梅
(
あんばい
)
も
御座
(
ござ
)
いませぬが、
115
大方
(
おほかた
)
両親
(
りやうしん
)
の
財産
(
ざいさん
)
でも
分
(
わ
)
けてお
頂
(
いただ
)
きになつたのでせう』
116
ヨブ『ハイ、
117
御
(
お
)
察
(
さつ
)
しの
通
(
とほ
)
り、
118
両親
(
りやうしん
)
から
各自
(
かくじ
)
に
財産
(
ざいさん
)
の
分配
(
ぶんぱい
)
を
受
(
うけ
)
て
居
(
を
)
りまする。
119
夫
(
それ
)
だから
決
(
けつ
)
して
怪
(
あや
)
しき
金
(
かね
)
でも、
120
盗
(
ぬす
)
んだ
物
(
もの
)
でも
御座
(
ござ
)
いませぬから、
121
そんならどうか
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
普請
(
ふしん
)
にお
使
(
つか
)
ひ
下
(
くだ
)
さいませぬか』
122
高姫
(
たかひめ
)
『あなたが
汗脂
(
あせあぶら
)
を
絞
(
しぼ
)
つて
苦労
(
くらう
)
の
塊
(
かたまり
)
で
蓄
(
た
)
めたお
金
(
かね
)
なら、
123
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
もお
喜
(
よろこ
)
びでせうが、
124
親譲
(
おやゆづ
)
りの
財産
(
ざいさん
)
で、
125
自分
(
じぶん
)
の
手
(
て
)
も
汚
(
よご
)
さず、
126
懐
(
ふところ
)
にしたお
金
(
かね
)
は
苦労
(
くらう
)
が
しゆん
でゐませぬから、
127
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
上
(
あ
)
げしても
御
(
お
)
喜
(
よろこ
)
びにはなりませぬ。
128
どうぞそれは
慈善
(
じぜん
)
的
(
てき
)
に、
129
難儀
(
なんぎ
)
な
人
(
ひと
)
にお
与
(
あた
)
へ
下
(
くだ
)
さいませ。
130
世界
(
せかい
)
の
人民
(
じんみん
)
は
皆
(
みな
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
尊
(
たふと
)
い
霊
(
れい
)
の
宿
(
やど
)
つたお
子様
(
こさま
)
で
御座
(
ござ
)
いますから、
131
言
(
い
)
はば
人民
(
じんみん
)
同志
(
どうし
)
は
兄弟
(
けうだい
)
も
同様
(
どうやう
)
、
132
兄弟
(
けうだい
)
を
大切
(
たいせつ
)
にするのは、
133
親神
(
おやがみ
)
様
(
さま
)
は
大変
(
たいへん
)
お
喜
(
よろこ
)
びで
御座
(
ござ
)
いますからなア』
134
ヨブ『イヤ
能
(
よ
)
く
分
(
わか
)
りました。
135
左様
(
さやう
)
ならば
其
(
その
)
考
(
かんが
)
へに
致
(
いた
)
します。
136
金銭
(
きんせん
)
などは
実
(
じつ
)
のところ
煩
(
うるさ
)
くて
堪
(
たま
)
らないのですが、
137
これが
無
(
な
)
くては
旅
(
たび
)
も
出来
(
でき
)
ませぬので、
138
せう
事
(
こと
)
なしに
重
(
おも
)
たいものを
腹
(
はら
)
に
巻
(
ま
)
いて
歩
(
ある
)
いて
居
(
を
)
ります』
139
船客
(
せんきやく
)
の
一人
(
ひとり
)
甲
(
かふ
)
は
此
(
この
)
話
(
はな
)
しを
聞
(
き
)
いて
側
(
そば
)
に
寄
(
よ
)
り
来
(
きた
)
り、
140
甲『モシモシ ヨブさま、
141
あなたは
愈
(
いよいよ
)
此
(
この
)
方
(
かた
)
のお
弟子
(
でし
)
になる
積
(
つも
)
りですか』
142
ヨブ『お
察
(
さつ
)
しの
通
(
とほ
)
りです。
143
どうぞ
国
(
くに
)
へお
帰
(
かへ
)
りになつた
時
(
とき
)
には、
144
私
(
わたし
)
の
両親
(
りやうしん
)
始
(
はじ
)
め
兄弟
(
けうだい
)
親類
(
しんるゐ
)
、
145
村中
(
むらぢう
)
の
方々
(
かたがた
)
に
宜
(
よろ
)
しく
云
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
146
甲『ハイ
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
147
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
今
(
いま
)
承
(
うけたま
)
はれば、
148
あなたは
所持金
(
しよぢきん
)
を
一切
(
いつさい
)
慈善
(
じぜん
)
的
(
てき
)
に
難儀
(
なんぎ
)
なものに
施
(
ほどこ
)
すと
云
(
い
)
はれましたなア。
149
同
(
おな
)
じ
人
(
ひと
)
を
助
(
たす
)
けるのならば、
150
カーリン
島
(
たう
)
にも
沢山
(
たくさん
)
な
難儀
(
なんぎ
)
な
人民
(
じんみん
)
が
居
(
を
)
りますから、
151
国
(
くに
)
を
立
(
た
)
つたお
土産
(
みやげ
)
に
島人
(
しまびと
)
の
難渋
(
なんじふ
)
なものにお
与
(
あた
)
へになつては
如何
(
どう
)
です』
152
ヨブ『あゝさう
願
(
ねが
)
ひませうか』
153
甲『オイ、
154
ヤコブ、
155
お
前
(
まへ
)
も
一緒
(
いつしよ
)
にヨブさまから
今
(
いま
)
お
金
(
かね
)
を
受取
(
うけと
)
つたら
証人
(
しようにん
)
になつて
呉
(
く
)
れ、
156
若
(
も
)
し
間違
(
まちが
)
うと
困
(
こま
)
るからなア』
157
ヨブ『タールさまの
正直
(
しやうぢき
)
正道
(
しやうだう
)
のあなた、
158
決
(
けつ
)
して
間違
(
まちが
)
ひはありますまい。
159
最早
(
もはや
)
あなたのお
手
(
て
)
に
渡
(
わた
)
した
以上
(
いじやう
)
は、
160
私
(
わたし
)
のお
金
(
かね
)
ではありませぬ、
161
あなたの
御
(
ご
)
自由
(
じいう
)
になさつたらいいのです。
162
別
(
べつ
)
にヤコブさまを、
163
七
(
しち
)
むづかしい、
164
証人
(
しようにん
)
なんかに
立
(
た
)
てる
必要
(
ひつえう
)
はありますまい。
165
併
(
しか
)
しヤコブさまが
同意
(
どうい
)
して
下
(
くだ
)
さらば、
166
お
二人
(
ふたり
)
に
分
(
わ
)
けて
預
(
あづか
)
つて
貰
(
もら
)
ひませう』
167
ヤコブ『どちらなりと、
168
あなたの
御意
(
ぎよい
)
に
従
(
したが
)
ひます』
169
ヨブは
懐
(
ふところ
)
より
沢山
(
たくさん
)
の
小判
(
こばん
)
を
取出
(
とりだ
)
し、
170
其
(
その
)
一部分
(
いちぶぶん
)
は
まさか
の
用意
(
ようい
)
と
後
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
し、
171
九分
(
くぶ
)
迄
(
まで
)
両人
(
りやうにん
)
に
托
(
たく
)
し、
172
ヨブ『どうぞ
難渋
(
なんじふ
)
な
人
(
ひと
)
に、
173
お
前
(
まへ
)
さまから
与
(
あた
)
へて
下
(
くだ
)
さい。
174
決
(
けつ
)
してヨブの
金
(
かね
)
だとは
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいますな。
175
人
(
ひと
)
に
施
(
ほどこ
)
す
時
(
とき
)
は、
176
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
にて
施
(
ほどこ
)
すのを、
177
左
(
ひだり
)
の
手
(
て
)
に
知
(
し
)
れない
様
(
やう
)
にせよ……との
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
示
(
しめ
)
しも
御座
(
ござ
)
いますから、
178
どうぞ
其
(
その
)
お
積
(
つも
)
りでお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
179
両人
(
りやうにん
)
は
感心
(
かんしん
)
し
乍
(
なが
)
ら、
180
其
(
その
)
金
(
かね
)
を
受取
(
うけと
)
り
帰国
(
きこく
)
の
後
(
のち
)
、
181
ヨブの
依頼
(
たより
)
の
如
(
ごと
)
く、
182
数多
(
あまた
)
の
貧
(
まづ
)
しき
人々
(
ひとびと
)
に、
183
一文
(
いちもん
)
も
残
(
のこ
)
らず
正直
(
しやうぢき
)
に
与
(
あた
)
へて
了
(
しま
)
つた。
184
高姫
(
たかひめ
)
、
185
常彦
(
つねひこ
)
、
186
春彦
(
はるひこ
)
もヨブの
恬淡
(
てんたん
)
無欲
(
むよく
)
なるに
感
(
かん
)
じ
入
(
い
)
り、
187
大
(
おほい
)
に
其
(
その
)
行為
(
かうゐ
)
を
賞揚
(
しやうやう
)
した。
188
常彦
(
つねひこ
)
は
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り、
189
歌
(
うた
)
を
謡
(
うた
)
つてヨブの
入信
(
にふしん
)
を
祝
(
しゆく
)
した。
190
常彦
(
つねひこ
)
『
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
191
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立別
(
たてわ
)
ける
192
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
193
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
194
只
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
195
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し
196
過
(
あやま
)
りあれば
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
す
197
三五教
(
あななひけう
)
の
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
198
高姫司
(
たかひめつかさ
)
が
今迄
(
いままで
)
は
199
正邪
(
せいじや
)
の
道
(
みち
)
に
踏
(
ふ
)
み
迷
(
まよ
)
ひ
200
我情
(
がじやう
)
我欲
(
がよく
)
を
立通
(
たてとほ
)
し
201
下
(
しも
)
を
虐
(
しひた
)
げ
上
(
かみ
)
押
(
おさ
)
へ
202
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
系統
(
ひつぽう
)
と
203
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
を
204
真向
(
まつかう
)
上段
(
じやうだん
)
に
振翳
(
ふりかざ
)
し
205
三五教
(
あななひけう
)
の
人々
(
ひとびと
)
を
206
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
威喝
(
ゐかつ
)
して
207
鳥
(
とり
)
なき
里
(
さと
)
の
蝙蝠
(
かうもり
)
と
208
成
(
な
)
りすましたる
愚
(
おろか
)
さよ
209
心
(
こころ
)
の
暗
(
やみ
)
はいや
深
(
ふか
)
く
210
黒白
(
あやめ
)
も
分
(
わ
)
かぬ
黒姫
(
くろひめ
)
が
211
黄金
(
こがね
)
の
玉
(
たま
)
を
紛失
(
ふんしつ
)
し
212
心
(
こころ
)
痛
(
いた
)
むる
折柄
(
をりから
)
に
213
高姫司
(
たかひめつかさ
)
が
嗅
(
か
)
ぎつけて
214
悪鬼
(
あくき
)
のやうな
顔色
(
がんしよく
)
で
215
小言
(
こごと
)
八百
(
はつぴやく
)
並
(
なら
)
べ
立
(
た
)
て
216
黒姫
(
くろひめ
)
さまを
始
(
はじ
)
めとし
217
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
や
竜国別
(
たつくにわけ
)
の
218
教
(
のり
)
の
司
(
つかさ
)
やテー、カーの
219
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
司
(
つかさ
)
を
無残
(
むざん
)
にも
220
綾
(
あや
)
の
聖地
(
せいち
)
を
追
(
お
)
ひ
出
(
いだ
)
し
221
海洋
(
かいやう
)
万里
(
ばんり
)
の
竜宮島
(
りうぐうじま
)
222
高砂島
(
たかさごじま
)
迄
(
まで
)
追
(
お
)
ひ
出
(
いだ
)
し
223
自分
(
じぶん
)
も
玉
(
たま
)
を
紛失
(
ふんしつ
)
し
224
再
(
ふたた
)
び
心
(
こころ
)
の
暗雲
(
やみくも
)
に
225
包
(
つつ
)
まれ
聖地
(
せいち
)
を
後
(
あと
)
にして
226
南洋
(
なんやう
)
諸島
(
しよたう
)
や
高砂
(
たかさご
)
の
227
島
(
しま
)
に
又
(
また
)
もや
渡
(
わた
)
り
来
(
き
)
て
228
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふゑ
)
の
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
229
紫玉
(
むらさきだま
)
や
黄金
(
わうごん
)
の
230
珍
(
うづ
)
の
宝玉
(
ほうぎよく
)
麻邇
(
まに
)
の
玉
(
たま
)
231
言依別
(
ことよりわけ
)
の
教主
(
けうしゆ
)
等
(
ら
)
が
232
着服
(
ちやくふく
)
なして
海外
(
かいぐわい
)
へ
233
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
し
三五
(
あななひ
)
の
234
神
(
かみ
)
の
元
(
もと
)
なる
厳御魂
(
いづみたま
)
235
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
に
楯
(
たて
)
をつき
236
謀叛
(
むほん
)
を
企
(
たく
)
むに
違
(
ちが
)
ひない
237
こりや
斯
(
こ
)
うしては
居
(
を
)
られぬと
238
夜叉
(
やしや
)
のやうなる
勢
(
いきほひ
)
で
239
霊界
(
あのよ
)
現世
(
このよ
)
の
瀬戸
(
せと
)
の
海
(
うみ
)
240
馬関
(
ばくわん
)
海峡
(
かいけふ
)
アンボイナ
241
ニユージランドやオセアニヤ
242
高砂島
(
たかさごじま
)
の
奥
(
おく
)
までも
243
探
(
さぐ
)
り
探
(
さぐ
)
りて
鏡池
(
かがみいけ
)
244
懸橋
(
かけはし
)
御殿
(
ごてん
)
に
侵入
(
しんにふ
)
し
245
又
(
また
)
もうるさい
玉騒
(
たまさわ
)
ぎ
246
月照彦
(
つきてるひこ
)
の
化身
(
けしん
)
等
(
ら
)
に
247
散々
(
さんざん
)
脂
(
あぶら
)
を
絞
(
しぼ
)
られて
248
命
(
いのち
)
からがら
逃
(
に
)
げ
出
(
いだ
)
し
249
アリナの
峰
(
みね
)
を
乗
(
の
)
り
越
(
こ
)
えて
250
アルゼンチンの
大野原
(
おほのはら
)
251
櫟
(
くぬぎ
)
ケ
原
(
はら
)
の
真中
(
まんなか
)
に
252
ポプラの
茂
(
しげ
)
みを
宿
(
やど
)
となし
253
一夜
(
いちや
)
を
明
(
あ
)
かす
其
(
その
)
中
(
うち
)
に
254
木
(
こ
)
の
花姫
(
はなひめ
)
の
化身
(
けしん
)
なる
255
日
(
ひ
)
の
出姫
(
でのひめ
)
の
深遠
(
しんゑん
)
な
256
神示
(
しんじ
)
を
受
(
う
)
けて
改心
(
かいしん
)
し
257
執着心
(
しふちやくしん
)
を
払拭
(
ふつしき
)
し
258
生
(
うま
)
れ
赤子
(
あかご
)
になりければ
259
隙
(
すき
)
を
覘
(
ねら
)
つて
憑
(
つ
)
いてゐた
260
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
の
悪狐
(
あくこ
)
奴
(
め
)
が
261
ゐたたまらずに
肉体
(
にくたい
)
を
262
後
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
して
雲
(
くも
)
に
乗
(
の
)
り
263
常世
(
とこよ
)
の
空
(
そら
)
に
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く
264
それから
後
(
のち
)
の
高姫
(
たかひめ
)
は
265
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
か
266
木
(
こ
)
の
花姫
(
はなひめ
)
の
再来
(
さいらい
)
か
267
たとへ
方
(
がた
)
なき
善良
(
ぜんりやう
)
の
268
忽
(
たちま
)
ち
身魂
(
みたま
)
となり
変
(
かは
)
り
269
昨日
(
きのふ
)
の
鬼
(
おに
)
は
今日
(
けふ
)
の
神
(
かみ
)
270
実
(
げ
)
にも
尊
(
たつと
)
き
神柱
(
かむばしら
)
271
心
(
こころ
)
の
空
(
そら
)
につき
固
(
かた
)
め
272
アイルの
激
(
はげ
)
しき
荒河
(
あらかは
)
を
273
神
(
かみ
)
の
造
(
つく
)
りし
鰐
(
わに
)
の
橋
(
はし
)
274
易々
(
やすやす
)
渡
(
わた
)
りて
玉
(
たま
)
の
湖
(
こ
)
の
275
畔
(
ほとり
)
に
漸
(
やうや
)
く
辿
(
たど
)
りつき
276
高姫司
(
たかひめつかさ
)
を
始
(
はじ
)
めとし
277
常彦
(
つねひこ
)
、
春彦
(
はるひこ
)
諸共
(
もろとも
)
に
278
椰子樹
(
やしじゆ
)
の
森
(
もり
)
に
横
(
よこ
)
たはり
279
一夜
(
いちや
)
を
明
(
あ
)
かし
目
(
め
)
を
醒
(
さ
)
まし
280
あたりキヨロキヨロ
見廻
(
みまは
)
せば
281
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
や
竜国別
(
たつくにわけ
)
の
282
教
(
のり
)
の
司
(
つかさ
)
やテー、カーの
283
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
姿
(
すがた
)
を
刻
(
きざ
)
みたる
284
石
(
いし
)
を
眺
(
なが
)
めて
拝礼
(
はいれい
)
し
285
悔悟
(
くわいご
)
の
涙
(
なみだ
)
せきあへず
286
ここに
全
(
まつた
)
く
改心
(
かいしん
)
の
287
開悟
(
かいご
)
の
花
(
はな
)
は
満開
(
まんかい
)
し
288
森羅
(
しんら
)
万象
(
ばんしやう
)
悉
(
ことごと
)
く
289
至善
(
しぜん
)
至楽
(
しらく
)
の
光景
(
くわうけい
)
と
290
変
(
かは
)
りたるこそ
面白
(
おもしろ
)
き
291
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
三人
(
みたり
)
は
玉
(
たま
)
の
湖
(
こ
)
の
292
錦
(
にしき
)
の
魚
(
うを
)
に
教
(
をし
)
へられ
293
経
(
たて
)
と
緯
(
よこ
)
との
経綸
(
けいりん
)
を
294
隈
(
くま
)
なく
悟
(
さと
)
りやうやうに
295
アルの
港
(
みなと
)
に
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
296
折
(
をり
)
よく
船
(
ふね
)
は
出帆
(
しゆつぱん
)
の
297
間際
(
まぎは
)
なりしを
幸
(
さいは
)
ひに
298
嬉
(
うれ
)
しく
乗
(
の
)
りて
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
に
299
胸
(
むね
)
凪
(
な
)
ぎ
渡
(
わた
)
る
海
(
うみ
)
の
上
(
うへ
)
300
タールや、ヤコブ、ヨブさまの
301
世間話
(
せけんばなし
)
に
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
き
302
聞
(
き
)
くともなしに
聞
(
き
)
き
居
(
を
)
れば
303
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
や
竜国別
(
たつくにわけ
)
の
304
教
(
のり
)
の
司
(
つかさ
)
の
一行
(
いつかう
)
が
305
大和田中
(
おほわだなか
)
に
落
(
お
)
ち
入
(
い
)
りて
306
みまかり
玉
(
たま
)
ひし
物語
(
ものがたり
)
307
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
胸
(
むね
)
に
轟
(
とどろ
)
きつ
308
涙
(
なみだ
)
を
抑
(
おさ
)
へて
聞
(
き
)
く
中
(
うち
)
に
309
高姫
(
たかひめ
)
さまの
物語
(
ものがたり
)
310
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
が
一行
(
いつかう
)
の
311
奇禍
(
きくわ
)
にあひしも
其
(
その
)
元
(
もと
)
を
312
詳
(
くは
)
しく
探
(
さぐ
)
れば
高姫
(
たかひめ
)
が
313
我情
(
がじやう
)
我慢
(
がまん
)
の
結果
(
けつくわ
)
ぞと
314
聞
(
き
)
いて
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
胸
(
むね
)
痛
(
いた
)
め
315
如何
(
いかが
)
ならむと
思
(
おも
)
ふうち
316
身魂
(
みたま
)
も
清
(
きよ
)
き
高姫
(
たかひめ
)
は
317
打
(
う
)
つて
変
(
かは
)
つて
正直
(
しやうぢき
)
に
318
おのが
前非
(
ぜんぴ
)
を
告白
(
こくはく
)
し
319
捨身
(
しやしん
)
の
覚悟
(
かくご
)
をなし
玉
(
たま
)
ふ
320
其
(
その
)
雄々
(
をを
)
しさにヨブさまも
321
日頃
(
ひごろ
)
の
怒
(
いか
)
りは
氷解
(
ひようかい
)
し
322
打
(
う
)
つて
変
(
かは
)
つた
機嫌顔
(
きげんがほ
)
323
不言
(
ふげん
)
実行
(
じつかう
)
の
行動
(
かうどう
)
に
324
感
(
かん
)
じ
玉
(
たま
)
ひて
高姫
(
たかひめ
)
が
325
御弟子
(
みでし
)
にならむと
請
(
こ
)
ひ
玉
(
たま
)
ふ
326
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
327
神
(
かみ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
幸
(
さち
)
はひて
328
高姫
(
たかひめ
)
さまの
今日
(
けふ
)
の
胸
(
むね
)
329
旭
(
あさひ
)
の
如
(
ごと
)
く
澄
(
す
)
みわたり
330
照
(
て
)
り
輝
(
かがや
)
くぞ
雄々
(
をを
)
しけれ
331
高姫
(
たかひめ
)
さまの
改心
(
かいしん
)
が
332
若
(
も
)
しや
遅
(
おく
)
れてゐたならば
333
カーリン
丸
(
まる
)
の
船中
(
せんちう
)
で
334
ヨブに
素首
(
そつくび
)
引抜
(
ひきぬ
)
かれ
335
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
悲
(
かな
)
しき
長旅
(
ながたび
)
の
336
何
(
なん
)
と
詮術
(
せんすべ
)
波
(
なみ
)
の
上
(
うへ
)
337
泣
(
な
)
けど
叫
(
さけ
)
べど
甲斐
(
かひ
)
もなく
338
悲
(
かな
)
しき
別
(
わか
)
れせしならむ
339
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
340
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
341
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
342
誠一
(
まことひと
)
つは
身
(
み
)
を
救
(
すく
)
ふ
343
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
344
只一筋
(
ただひとすぢ
)
に
是
(
こ
)
れからは
345
脇目
(
わきめ
)
もふらず
進
(
すす
)
みなむ
346
神
(
かみ
)
は
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
を
守
(
まも
)
ります
347
神
(
かみ
)
の
御旨
(
みむね
)
に
叶
(
かな
)
ひなば
348
如何
(
いか
)
なる
事
(
こと
)
か
恐
(
おそ
)
れむや
349
茲
(
ここ
)
に
常彦
(
つねひこ
)
謹
(
つつし
)
みて
350
高姫
(
たかひめ
)
さまの
御
(
ご
)
改心
(
かいしん
)
351
入信
(
にふしん
)
されたヨブさまの
352
目出度
(
めでた
)
き
今日
(
けふ
)
の
生日
(
いくひ
)
をば
353
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
み
祝
(
ほ
)
ぎまつる
354
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
355
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
356
と
歌
(
うた
)
ひ
終
(
をは
)
り、
357
腰
(
こし
)
を
下
(
おろ
)
した。
358
高姫
(
たかひめ
)
を
始
(
はじ
)
め、
359
ヨブ
其
(
その
)
他
(
た
)
の
船中
(
せんちう
)
の
人々
(
ひとびと
)
は
常彦
(
つねひこ
)
が
現在
(
げんざい
)
高姫
(
たかひめ
)
を
前
(
まへ
)
におき、
360
露骨
(
ろこつ
)
に
其
(
その
)
経路
(
けいろ
)
を
語
(
かた
)
りたる
公平
(
こうへい
)
無私
(
むし
)
の
態度
(
たいど
)
に
感嘆
(
かんたん
)
の
舌
(
した
)
を
巻
(
ま
)
くのであつた。
361
(
大正一一・八・一二
旧六・二〇
松村真澄
録)
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