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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第29巻(辰の巻)
序
総説
端書
第1篇 玉石混来
第1章 アリナの滝
第2章 懸橋御殿
第3章 白楊樹
第4章 野辺の訓戒
第2篇 石心放告
第5章 引懸戻し
第6章 玉の行衛
第7章 牛童丸
第8章 高姫慴伏
第9章 俄狂言
第10章 国治の国
第3篇 神鬼一転
第11章 日出姫
第12章 悔悟の幕
第13章 愛流川
第14章 カーリン丸
第15章 ヨブの入信
第16章 波の響
第4篇 海から山へ
第17章 途上の邂逅
第18章 天祥山
第19章 生霊の頼
第20章 道すがら
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> 第1篇 玉石混来 > 第3章 白楊樹
<<< 懸橋御殿
(B)
(N)
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第三章
白楊樹
(
はくようじゆ
)
〔八二五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第29巻 海洋万里 辰の巻
篇:
第1篇 玉石混来
よみ(新仮名遣い):
ぎょくせきこんらい
章:
第3章 白楊樹
よみ(新仮名遣い):
はくようじゅ
通し章番号:
825
口述日:
1922(大正11)年08月11日(旧06月19日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年9月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
鷹依姫の一行四人は、ウヅの国の櫟が原にようやく辿り着いた。竜国別、テーリスタン、カーリンスの三人は、黄金の玉を錦の袋に収めて、交代で担ぎながらアリナ山の急坂を上り下りしながらこの場所にやってきた。どうしたわけか、玉は一足一足重量を増すがごとくに思えて転倒しそうな気分になってきた。
一行は、白楊樹の陰に足を伸ばして休むことになった。四人は玉を抱えて草の上に眠りについてしまった。折から夜嵐が吹き、白楊樹が弓のようにしなったはずみに、玉の袋を首に掛けていたテーリスタンは白楊樹の枝を抱えてしまい、白楊樹のしなりが元に戻ると、テーリスタンは梢に引き上げられてしまった。
驚いたテーリスタンは足を踏み外して落ちてしまった。三人は驚いて目を覚まし、テーリスタンを介抱する。三人はテーリスタンが首に掛けていた黄金の玉が紛失しているのに気付き、テーリスタンに問いただす。
鷹依姫に責められたテーリスタンは、やはり権謀術数的なやり方をするから神罰が当たったのだ、と言い返す。鷹依姫と言い合っているうちに、カーリンスが白楊樹の梢に錦の袋が引っかかっているのを見つけた。鷹依姫の命でカーリンスが白楊樹に登りかけたが、悲鳴を上げて落ち倒れてしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
櫟ケ原(櫟が原)
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-12-20 17:56:17
OBC :
rm2903
愛善世界社版:
39頁
八幡書店版:
第5輯 479頁
修補版:
校定版:
39頁
普及版:
18頁
初版:
ページ備考:
001
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
002
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
を
始
(
はじ
)
めとし
003
竜国別
(
たつくにわけ
)
やテー、カーの
004
一行
(
いつかう
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
蛸取村
(
たことりむら
)
の
005
山奥
(
やまおく
)
深
(
ふか
)
く
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り
006
アリナの
滝
(
たき
)
の
上流
(
じやうりう
)
に
007
神代
(
かみよ
)
の
昔
(
むかし
)
月照彦
(
つきてるひこ
)
の
008
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
の
現
(
あ
)
れませる
009
鏡
(
かがみ
)
の
池
(
いけ
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
010
身
(
み
)
を
潜
(
ひそ
)
めつつ
黄金
(
わうごん
)
の
011
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
探
(
さぐ
)
らむと
012
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
を
岩窟
(
がんくつ
)
の
013
中
(
なか
)
に
隠
(
かく
)
して
神
(
かみ
)
となし
014
竜国別
(
たつくにわけ
)
は
池
(
いけ
)
の
辺
(
へ
)
に
015
庵
(
いほり
)
を
結
(
むす
)
び
朝夕
(
あさゆふ
)
に
016
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
017
審神者
(
さには
)
の
職
(
しよく
)
を
勤
(
つと
)
めつつ
018
テーリスタンやカーリンス
019
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
を
西
(
にし
)
東
(
ひがし
)
020
北
(
きた
)
や
南
(
みなみ
)
の
国々
(
くにぐに
)
へ
021
言宣
(
ことふ
)
れ
神
(
がみ
)
と
身
(
み
)
をやつし
022
アリナの
滝
(
たき
)
の
上流
(
じやうりう
)
に
023
月照彦
(
つきてるひこ
)
の
現
(
あら
)
はれて
024
何
(
いづ
)
れの
人
(
ひと
)
に
限
(
かぎ
)
りなく
025
玉
(
たま
)
と
名
(
な
)
のつく
物
(
もの
)
あらば
026
到
(
いた
)
りて
神
(
かみ
)
に
献
(
けん
)
ずれば
027
大三災
(
だいさんさい
)
の
風水火
(
ふうすゐくわ
)
028
小三災
(
せうさんさい
)
の
饑病戦
(
きびやうせん
)
029
赦
(
ゆる
)
し
玉
(
たま
)
ひて
其
(
その
)
人
(
ひと
)
に
030
無限
(
むげん
)
無量
(
むりやう
)
の
寿
(
じゆ
)
を
与
(
あた
)
へ
031
五穀
(
ごこく
)
果物
(
くだもの
)
成就
(
ぜうじゆ
)
し
032
無限
(
むげん
)
の
福徳
(
ふくとく
)
授
(
さづ
)
かると
033
善
(
よ
)
い
事
(
こと
)
づくめをふれまはし
034
欲
(
よく
)
に
目
(
め
)
のなき
国人
(
くにびと
)
は
035
玉
(
たま
)
に
善
(
よ
)
く
似
(
に
)
た
円石
(
まるいし
)
や
036
瑪瑙
(
めなう
)
の
玉
(
たま
)
や
しやこ
翡翠
(
ひすゐ
)
037
珊瑚
(
さんご
)
珠玉
(
じゆだま
)
を
持出
(
もちだ
)
して
038
遠
(
とほ
)
き
山野
(
やまの
)
を
打渡
(
うちわた
)
り
039
鏡
(
かがみ
)
の
池
(
いけ
)
の
傍
(
かたはら
)
に
040
供
(
そな
)
へて
帰
(
かへ
)
る
可笑
(
をか
)
しさよ
041
竜国別
(
たつくにわけ
)
は
一々
(
いちいち
)
に
042
目
(
め
)
を
光
(
ひか
)
らして
眺
(
なが
)
むれど
043
一
(
ひと
)
つも
碌
(
ろく
)
な
奴
(
やつ
)
はない
044
偶
(
たまたま
)
黄色
(
きいろ
)
の
玉
(
たま
)
見
(
み
)
れば
045
表面
(
へうめん
)
飾
(
かざ
)
る
金鍍金
(
きんめつき
)
046
ガラクタ
玉
(
だま
)
は
山
(
やま
)
の
如
(
ごと
)
047
積
(
つ
)
み
重
(
かさ
)
なりて
数
(
かず
)
多
(
おほ
)
く
048
日
(
ひ
)
を
重
(
かさ
)
ぬれど
三五
(
あななひ
)
の
049
錦
(
にしき
)
の
宮
(
みや
)
に
納
(
をさ
)
まりし
050
黄金
(
こがね
)
の
玉
(
たま
)
は
影
(
かげ
)
もなし
051
テー、カー
二人
(
ふたり
)
はそろそろと
052
小言
(
こごと
)
八百
(
はつぴやく
)
言
(
い
)
ひ
並
(
なら
)
べ
053
『
鏡
(
かがみ
)
の
池
(
いけ
)
を
後
(
あと
)
にして
054
何処
(
いづこ
)
の
果
(
はて
)
にか
宿替
(
やどがへ
)
し
055
又
(
また
)
更
(
あらた
)
めて
一芝居
(
ひとしばゐ
)
056
打
(
う
)
たうぢやないか』と
両人
(
りやうにん
)
に
057
言挙
(
ことあ
)
げすれば
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
や
058
竜国別
(
たつくにわけ
)
は『
待
(
ま
)
て
暫
(
しば
)
し
059
モウ
一息
(
ひといき
)
の
辛抱
(
しんばう
)
だ
060
堪
(
こら
)
へ
忍
(
しの
)
びは
幸福
(
かうふく
)
の
061
母
(
はは
)
となるぞ』と
両人
(
りやうにん
)
を
062
チヨロまかしつつ
待
(
ま
)
つ
間
(
うち
)
に
063
テーナの
里
(
さと
)
の
酋長
(
しうちやう
)
が
064
黄金
(
こがね
)
の
玉
(
たま
)
を
持出
(
もちい
)
でて
065
玉
(
たま
)
の
輿
(
みこし
)
に
乗
(
の
)
せ
乍
(
なが
)
ら
066
数多
(
あまた
)
の
人数
(
にんず
)
を
引連
(
ひきつ
)
れて
067
アリナの
滝
(
たき
)
や
鏡池
(
かがみいけ
)
068
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
捧
(
ささ
)
げむと
069
風
(
かぜ
)
に
旗
(
はた
)
をば
靡
(
なび
)
かせつ
070
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
るぞ
勇
(
いさ
)
ましき。
071
虚実
(
きよじつ
)
の
程
(
ほど
)
は
知
(
し
)
らねども
072
擬
(
まが
)
ふ
方
(
かた
)
なき
黄金
(
わうごん
)
の
073
玉
(
たま
)
に
喉
(
のど
)
をば
鳴
(
な
)
らせつつ
074
テーナの
里
(
さと
)
の
酋長
(
しうちやう
)
に
075
国玉依別
(
くにたまよりわけ
)
と
名
(
な
)
を
与
(
あた
)
へ
076
暫
(
しばら
)
くアリナの
滝
(
たき
)
の
辺
(
へ
)
に
077
御禊
(
みそぎ
)
の
業
(
わざ
)
を
命
(
めい
)
じおき
078
瑪瑙
(
めなう
)
の
玉
(
たま
)
と
掏
(
す
)
り
替
(
か
)
へて
079
夜陰
(
やいん
)
に
紛
(
まぎ
)
れて
谷川
(
たにがは
)
を
080
遡
(
さかのぼ
)
りつつアリナ
山
(
やま
)
081
峰
(
みね
)
打渉
(
うちわた
)
り
宇都
(
うづ
)
の
国
(
くに
)
082
櫟
(
くぬぎ
)
が
原
(
はら
)
に
四人
(
よにん
)
連
(
づ
)
れ
083
萱
(
かや
)
生茂
(
おひしげ
)
る
大野原
(
おほのはら
)
084
やうやう
辿
(
たど
)
りつきにけり。
085
竜国別
(
たつくにわけ
)
、
086
テーリスタン、
087
カーリンスの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は、
088
代
(
かは
)
る
代
(
がは
)
る
黄金
(
こがね
)
の
玉
(
たま
)
を
錦
(
にしき
)
の
袋
(
ふくろ
)
に
納
(
をさ
)
め、
089
肩
(
かた
)
に
担
(
かつ
)
いでアリナ
山
(
さん
)
の
急坂
(
きふはん
)
を
登
(
のぼ
)
り
降
(
くだ
)
りし
乍
(
なが
)
ら、
090
汗
(
あせ
)
をタラタラ
漸
(
やうや
)
く
茲
(
ここ
)
に
辿
(
たど
)
り
着
(
つ
)
きぬ。
091
どうしたものか、
092
此
(
この
)
玉
(
たま
)
は
一歩
(
ひとあし
)
々々
(
ひとあし
)
重量
(
ぢうりやう
)
を
増
(
ま
)
し、
093
後
(
うしろ
)
から
何者
(
なにもの
)
か
引張
(
ひつぱ
)
る
様
(
やう
)
な
心地
(
ここち
)
し、
094
余程
(
よほど
)
頭
(
あたま
)
を
前
(
まへ
)
に
傾
(
かたむ
)
けて
居
(
を
)
らぬと、
095
玉
(
たま
)
の
重
(
おも
)
みに
引
(
ひ
)
きつけられて、
096
仰向
(
あふむ
)
けに
転倒
(
てんだう
)
する
様
(
やう
)
な
気分
(
きぶん
)
になつた。
097
漸
(
やうや
)
くにして
生命
(
いのち
)
カラガラ
此処
(
ここ
)
までやつて
来
(
き
)
て、
098
最早
(
もはや
)
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
と
白楊樹
(
はくやうじゆ
)
の
蔭
(
かげ
)
に
足
(
あし
)
を
伸
(
の
)
ばして
一休
(
ひとやすみ
)
する
事
(
こと
)
と
為
(
な
)
しぬ。
099
身
(
み
)
の
丈
(
たけ
)
五
(
ご
)
尺
(
しやく
)
計
(
ばか
)
りの
大蜥蜴
(
おほとかげ
)
は
幾百
(
いくひやく
)
ともなく
萱野
(
かやの
)
ケ
原
(
はら
)
を
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
駆巡
(
かけめぐ
)
り、
100
雀
(
すずめ
)
の
様
(
やう
)
な
熊蜂
(
くまばち
)
、
101
虻
(
あぶ
)
は
汗臭
(
あせくさ
)
い
臭
(
にほひ
)
をかいで
寄
(
よ
)
り
来
(
きた
)
り、
102
油蝉
(
あぶらぜみ
)
の
様
(
やう
)
な
金色
(
きんいろ
)
の
糞蠅
(
くそばひ
)
、
103
咫尺
(
しせき
)
も
弁
(
べん
)
ぜざる
程
(
ほど
)
群集
(
ぐんしふ
)
し
来
(
きた
)
り、
104
ブンブンと
唸
(
うな
)
りを
立
(
た
)
てる、
105
其
(
その
)
煩
(
うる
)
ささ。
106
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
萱
(
かや
)
の
穂
(
ほ
)
を
束
(
たば
)
ねて
大麻
(
おほぬさ
)
に
代
(
か
)
へ、
107
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
にて
虻
(
あぶ
)
、
108
蜂
(
はち
)
、
109
金蠅
(
きんばい
)
などを
払
(
はら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
110
日
(
ひ
)
の
暮
(
く
)
れたるに
是非
(
ぜひ
)
なく、
111
玉
(
たま
)
を
抱
(
かか
)
えて、
112
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
草
(
くさ
)
の
上
(
うへ
)
に
横
(
よこ
)
たはり、
113
草臥
(
くたびれ
)
果
(
は
)
てて、
114
舁
(
か
)
いて
放
(
ほ
)
られても
分
(
わか
)
らぬ
迄
(
まで
)
に
熟睡
(
じゆくすい
)
し
居
(
ゐ
)
たりけり。
115
折柄
(
をりから
)
吹
(
ふ
)
き
来
(
く
)
るレコード
破
(
やぶ
)
りの
夜嵐
(
よあらし
)
に、
116
萱草
(
かやぐさ
)
はザワザワと
音
(
おと
)
を
立
(
た
)
て、
117
白楊樹
(
はくようじゆ
)
は
風
(
かぜ
)
を
含
(
ふく
)
んで
弓
(
ゆみ
)
の
如
(
ごと
)
く、
118
大地
(
だいち
)
を
撫
(
な
)
で、
119
虻
(
あぶ
)
、
120
蜂
(
はち
)
、
121
蠅
(
はへ
)
などは、
122
何処
(
どこ
)
へか
吹
(
ふ
)
き
散
(
ち
)
らされて、
123
一匹
(
いつぴき
)
も
居
(
ゐ
)
なくなつて
了
(
しま
)
つた。
124
白楊樹
(
はくようじゆ
)
は
弓
(
ゆみ
)
の
如
(
ごと
)
く
風
(
かぜ
)
に
吹
(
ふ
)
かれて
地
(
ち
)
を
撫
(
な
)
でた
途端
(
とたん
)
に、
125
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
体
(
からだ
)
の
上
(
うへ
)
に
襲
(
おそ
)
ひ
来
(
き
)
たりぬ。
126
テーリスタンは
寝惚
(
ねとぼ
)
けた
儘
(
まま
)
、
127
玉
(
たま
)
の
袋
(
ふくろ
)
を
首
(
くび
)
に
結
(
むす
)
びつけ
乍
(
なが
)
ら、
128
白楊樹
(
はくようじゆ
)
の
枝
(
えだ
)
を、
129
夢現
(
ゆめうつつ
)
になつて
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
りに
抱
(
かか
)
えた。
130
さしもの
暴風
(
ばうふう
)
もピタリと
止
(
や
)
んで、
131
天
(
てん
)
に
冲
(
ちう
)
する
白楊樹
(
はくようじゆ
)
は
元
(
もと
)
の
如
(
ごと
)
く
直立
(
ちよくりつ
)
して
了
(
しま
)
つた。
132
よくよく
見
(
み
)
ればテーリスタンは、
133
白楊樹
(
はくようじゆ
)
の
梢
(
しん
)
に、
134
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
上
(
あげ
)
られてゐた。
135
『アツ』と
驚
(
おどろ
)
く
途端
(
とたん
)
に
足
(
あし
)
ふみ
外
(
はづ
)
し、
136
唸
(
うな
)
りを
立
(
た
)
てて
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
寝
(
ね
)
てゐる
側近
(
そばちか
)
く、
137
図転倒
(
づでんどう
)
と
落下
(
らくか
)
し
来
(
きた
)
り、
138
ウンと
一声
(
ひとこゑ
)
目
(
め
)
の
黒玉
(
くろたま
)
をどつかへ
隠
(
かく
)
して
了
(
しま
)
つて、
139
白玉
(
しろたま
)
計
(
ばか
)
りグルリと
剥
(
む
)
き、
140
大
(
だい
)
の
字
(
じ
)
となつて、
141
手足
(
てあし
)
をピリピリと
震
(
ふる
)
はして
居
(
ゐ
)
る。
142
玉
(
たま
)
を
包
(
つつ
)
んだ
錦
(
にしき
)
の
袋
(
ふくろ
)
は、
143
白楊樹
(
はくようじゆ
)
の
空
(
そら
)
に
引
(
ひ
)
つかかつて
ブラ
つきゐたり。
144
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
驚
(
おどろ
)
いてテーリスタンの
側
(
そば
)
に
駆寄
(
かけよ
)
り『
水
(
みづ
)
よ
水
(
みづ
)
よ』と
叫
(
さけ
)
び
乍
(
なが
)
ら、
145
あたりを
見
(
み
)
れ
共
(
ども
)
、
146
水溜
(
みづたま
)
りはどこにも
無
(
な
)
い。
147
月
(
つき
)
は
淡雲
(
たんうん
)
を
押分
(
おしわ
)
けて、
148
漸
(
やうや
)
く
下界
(
げかい
)
に
光
(
ひかり
)
を
投
(
な
)
げた。
149
あたりを
見
(
み
)
れば
地
(
ち
)
を
赤
(
あか
)
く
染
(
そ
)
めて
苺
(
いちご
)
の
実
(
み
)
がそこら
一面
(
いちめん
)
に
熟
(
じゆく
)
してゐる。
150
竜国別
(
たつくにわけ
)
は
手早
(
てばや
)
く
二三個
(
にさんこ
)
を
むし
り
取
(
と
)
り、
151
歯
(
は
)
をくひしばつて
倒
(
たふ
)
れてゐるテーリスタンの
口
(
くち
)
を
無理
(
むり
)
にこじあけ、
152
苺
(
いちご
)
を
潰
(
つぶ
)
して、
153
其
(
その
)
汁
(
しる
)
を
口中
(
こうちゆう
)
に
入
(
い
)
れた。
154
テーリスタンは
漸
(
やうや
)
くにして
息
(
いき
)
を
吹
(
ふ
)
き
返
(
かへ
)
し、
155
顔
(
かほ
)
をしかめて、
156
腰
(
こし
)
のあたりを
切
(
しき
)
りに
撫
(
な
)
で
廻
(
まは
)
しゐる。
157
カー『おいテー、
158
貴様
(
きさま
)
一体
(
いつたい
)
如何
(
どう
)
したのだ。
159
こんな
所
(
ところ
)
でフンのびたり、
160
心細
(
こころぼそ
)
い
事
(
こと
)
をやつて
呉
(
く
)
れな。
161
ヤアそして
貴様
(
きさま
)
の
首
(
くび
)
にかけて
居
(
を
)
つた
玉袋
(
たまぶくろ
)
は
何処
(
どこ
)
へやつたのだい』
162
テー『どこへやつたのか、
163
根
(
ね
)
つから
覚
(
おぼ
)
えない。
164
何
(
なん
)
でも
俺
(
おれ
)
は
天狗
(
てんぐ
)
にさらはれて、
165
高
(
たか
)
い
所
(
とこ
)
へあげられた
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
たが、
166
ヤツパリ
元
(
もと
)
の
所
(
ところ
)
だつた。
167
大方
(
おほかた
)
夢
(
ゆめ
)
の
中
(
なか
)
の
天狗
(
てんぐ
)
が
取
(
と
)
つて
帰
(
い
)
にやがつたかも
知
(
し
)
れやしないぞ。
168
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
結構
(
けつこう
)
な
黄金
(
こがね
)
の
玉
(
たま
)
だから、
169
天狗
(
てんぐ
)
迄
(
まで
)
が
欲
(
ほ
)
しがると
見
(
み
)
える。
170
小人
(
せうじん
)
玉
(
たま
)
を
抱
(
いだ
)
いて
罪
(
つみ
)
ありとは
此
(
この
)
事
(
こと
)
だなア。
171
あゝ
腰
(
こし
)
が
痛
(
いた
)
い、
172
玉
(
たま
)
所
(
どころ
)
の
騒
(
さわ
)
ぎかい。
173
何
(
なん
)
とかして
呉
(
く
)
れぬと、
174
息
(
いき
)
がつまりさうだ。
175
アイタタ アイタタ』
176
と
顔
(
かほ
)
をしかめて
居
(
ゐ
)
る。
177
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
はビツクリして
顔色
(
かほいろ
)
を
変
(
か
)
へ、
178
鷹依
(
たかより
)
『コレ、
179
テーさま、
180
今迄
(
いままで
)
苦労
(
くらう
)
艱難
(
かんなん
)
して
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れた
黄金
(
こがね
)
の
玉
(
たま
)
を、
181
お
前
(
まへ
)
如何
(
どう
)
したのだ。
182
サア
早
(
はや
)
く
返
(
かへ
)
して
下
(
くだ
)
さい。
183
あの
玉
(
たま
)
を
紛失
(
ふんしつ
)
でもしたら、
184
承知
(
しようち
)
しませぬぞや』
185
テー『そんな
事
(
こと
)
云
(
い
)
つたつて、
186
無
(
な
)
い
袖
(
そで
)
はふれぬぢやありませぬか。
187
何
(
いづ
)
れどつかにアリナの
滝
(
たき
)
でせう。
188
甘
(
うま
)
い
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つて
酋長
(
しうちやう
)
の
家
(
いへ
)
の
宝
(
たから
)
を
何々
(
なになに
)
して
来
(
き
)
たものだから、
189
神罰
(
しんばつ
)
は
覿面
(
てきめん
)
、
190
何々
(
なになに
)
がやつて
来
(
き
)
て
何々
(
なになに
)
したのかも
知
(
し
)
れませぬぜ。
191
お
前
(
まへ
)
さまも
余
(
あま
)
り
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
小言
(
こごと
)
を
云
(
い
)
ふ
資格
(
しかく
)
はありますまい。
192
仮令
(
たとへ
)
泥棒
(
どろぼう
)
に
盗
(
と
)
られた
所
(
ところ
)
で
元々
(
もともと
)
ぢやないか。
193
泥棒
(
どろぼう
)
の
上前
(
うはまへ
)
をはねられたと
思
(
おも
)
へば
済
(
す
)
む
事
(
こと
)
だ。
194
あゝこれで
改心
(
かいしん
)
をして
権謀
(
けんぼう
)
術数
(
じゆつすう
)
的
(
てき
)
の
行方
(
やりかた
)
は
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
り
断念
(
だんねん
)
なされませ。
195
心
(
こころ
)
の
玉
(
たま
)
さへ
光
(
ひか
)
れば、
196
黄金
(
こがね
)
の
玉
(
たま
)
の
三
(
みつ
)
つや
四
(
よ
)
つ
無
(
な
)
くなつたつて、
197
物
(
もの
)
の
数
(
かず
)
でもありませぬ。
198
酋長
(
しうちやう
)
の
奴
(
やつ
)
の
性念玉
(
しやうねんだま
)
が
憑
(
の
)
りうつつてると
見
(
み
)
えて、
199
アリナの
山
(
やま
)
を
渉
(
わた
)
る
時
(
とき
)
にも
随分
(
ずゐぶん
)
後
(
あと
)
から
引張
(
ひつぱ
)
られる
様
(
やう
)
で、
200
重
(
おも
)
たくて、
201
苦
(
くる
)
しくて
仕方
(
しかた
)
がなかつた。
202
此
(
この
)
広
(
ひろ
)
い
高砂島
(
たかさごじま
)
を、
203
あんな
重
(
おも
)
たい
物
(
もの
)
を
持
(
も
)
つて
歩
(
ある
)
かされようものなら、
204
それこそ
吾々
(
われわれ
)
は
息
(
いき
)
ついて
了
(
しま
)
ひますワ。
205
黄金
(
こがね
)
の
玉
(
たま
)
を
紛失
(
ふんしつ
)
したとてさう
悲観
(
ひくわん
)
したものでもありませぬ。
206
つまり
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
から
大難
(
だいなん
)
を
小難
(
せうなん
)
に
祭
(
まつ
)
りかへて、
207
罪業
(
めぐり
)
をとつて
頂
(
いただ
)
いたと
思
(
おも
)
へば、
208
こんな
結構
(
けつこう
)
な
事
(
こと
)
はありませぬ。
209
サアサア
皆様
(
みなさま
)
、
210
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
に
感謝
(
かんしや
)
祈願
(
きぐわん
)
の
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
して
下
(
くだ
)
さい』
211
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
『これテーさま、
212
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
勝手
(
かつて
)
な
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
るのだ。
213
お
前
(
まへ
)
もチツとは
責任
(
せきにん
)
観念
(
かんねん
)
を
持
(
も
)
つたら
如何
(
どう
)
だい。
214
折角
(
せつかく
)
長
(
なが
)
の
海山
(
うみやま
)
を
越
(
こ
)
え、
215
苦労
(
くらう
)
艱難
(
かんなん
)
をしてヤツと
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れた
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
御
(
ご
)
神宝
(
しんぱう
)
を、
216
ムザムザと
紛失
(
ふんしつ
)
しておいて、
217
ようマアそんな
勝手
(
かつて
)
な
事
(
こと
)
が
云
(
い
)
へたものだ。
218
如何
(
どう
)
しても
斯
(
か
)
うしても、
219
其
(
その
)
玉
(
たま
)
を
再
(
ふたた
)
び
発見
(
はつけん
)
する
迄
(
まで
)
は、
220
テーさま、
221
お
前
(
まへ
)
は
仮令
(
たとへ
)
十
(
じふ
)
年
(
ねん
)
でも
百
(
ひやく
)
年
(
ねん
)
でも、
222
ここを
動
(
うご
)
く
事
(
こと
)
はなりませぬぞえ』
223
テー『あゝ
困
(
こま
)
つたなア。
224
お
月様
(
つきさま
)
は
何程
(
なにほど
)
照
(
て
)
つても、
225
肝腎
(
かんじん
)
の
月照彦
(
つきてるひこの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
如何
(
どう
)
して
御座
(
ござ
)
るのか。
226
キツパリとあの
玉
(
たま
)
はどこに
隠
(
かく
)
れて
居
(
ゐ
)
るとか、
227
誰人
(
たれ
)
が
盗
(
と
)
つたとか、
228
知
(
し
)
らして
下
(
くだ
)
さりさうなものだ。
229
アヽ
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
さまに
ボヤ
かれる、
230
腰
(
こし
)
の
骨
(
ほね
)
は
歪
(
ゆが
)
んで
痛
(
いた
)
い
苦
(
くるし
)
い。
231
この
様
(
やう
)
な
蜥蜴原
(
とかげばら
)
に
脛腰
(
すねこし
)
の
立
(
た
)
たぬ
様
(
やう
)
な
目
(
め
)
に
遭
(
あ
)
はされて
如何
(
どう
)
なるものか。
232
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
も
余
(
あんま
)
り
聞
(
きこ
)
えませぬワイ、
233
アンアンアン』
234
とソロソロ
泣
(
な
)
き
出
(
だ
)
したり。
235
鷹依
(
たかより
)
『これテー、
236
何程
(
なにほど
)
泣
(
な
)
いたつて、
237
玉
(
たま
)
は
返
(
かへ
)
つては
来
(
き
)
ませぬぞえ。
238
チトしつかりして、
239
胸
(
むね
)
に
手
(
て
)
を
当
(
あて
)
て
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
なさい。
240
お
前
(
まへ
)
はまだ
本当
(
ほんたう
)
に
目
(
め
)
が
醒
(
さ
)
めぬのだらう』
241
テー『マアさうセチセチ
言
(
い
)
はずに、
242
チツと
計
(
ばか
)
り
猶予
(
いうよ
)
を
与
(
あた
)
へて
下
(
くだ
)
さい。
243
玉
(
たま
)
の
行方
(
ゆくへ
)
は
何処
(
いづく
)
ぞと、
244
沈思
(
ちんし
)
黙考
(
もくかう
)
せなくては、
245
短兵
(
たんぺい
)
急
(
きふ
)
に
吐血
(
とけつ
)
の
起
(
おこ
)
つた
様
(
やう
)
に
請求
(
せいきう
)
されても、
246
早速
(
さつそく
)
に
開
(
あ
)
いた
口
(
くち
)
がすぼまりませぬワイ』
247
鷹依
(
たかより
)
『お
前
(
まへ
)
所
(
どころ
)
か、
248
こつちの
方
(
はう
)
から、
249
余
(
あま
)
りの
事
(
こと
)
で、
250
阿呆
(
あはう
)
らしさが
偉大
(
いつこ
)
うて、
251
開
(
あ
)
いた
口
(
くち
)
が、
252
それこそすぼまりませぬワイナ』
253
カーリンス
空
(
そら
)
を
仰
(
あふ
)
ぎ
見
(
み
)
て、
254
カー『ヤア、
255
月夜
(
つきよ
)
でハツキリは
分
(
わか
)
らぬが、
256
あのポプラの
梢
(
しん
)
に、
257
何
(
なん
)
だかピカピカと
光
(
ひか
)
つて、
258
ブラ
下
(
さが
)
つて
居
(
ゐ
)
る
物
(
もの
)
が
見
(
み
)
えるぢやないか。
259
あれはテツキリ
玉
(
たま
)
の
這入
(
はい
)
つた
錦
(
にしき
)
の
袋
(
ふくろ
)
の
様
(
やう
)
だぞ』
260
竜国別
(
たつくにわけ
)
は
白楊樹
(
はくやうじゆ
)
の
空
(
そら
)
を
眺
(
なが
)
めて、
261
竜国
(
たつくに
)
『ヤア
如何
(
いか
)
にも、
262
あれは
錦
(
にしき
)
の
袋
(
ふくろ
)
だ。
263
おいテー、
264
お
前
(
まへ
)
は
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
にも、
265
あの
様
(
やう
)
な
高
(
たか
)
い
木
(
き
)
の
梢
(
しん
)
へ
袋
(
ふくろ
)
を
括
(
くく
)
りつけ、
266
盗
(
ぬす
)
まれぬ
様
(
やう
)
にと
気
(
き
)
を
利
(
き
)
かした
迄
(
まで
)
はよかつたが、
267
足
(
あし
)
ふみ
外
(
はづ
)
し、
268
真逆
(
まつさか
)
様
(
さま
)
に
墜落
(
つゐらく
)
して
腰
(
こし
)
を
打
(
う
)
ち、
269
目
(
め
)
を
眩
(
ま
)
かして
居
(
ゐ
)
よつたのだなア。
270
アハヽヽヽ。
271
サアこれから
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが、
272
テーさまに
登
(
のぼ
)
つておろして
来
(
き
)
て
貰
(
もら
)
はうかい。
273
あこ
迄
(
まで
)
括
(
くく
)
りつけに
往
(
い
)
た
丈
(
だけ
)
のお
前
(
まへ
)
だから、
274
木登
(
きのぼ
)
りはよく
得手
(
えて
)
て
居
(
を
)
ると
見
(
み
)
える。
275
サア
早
(
はや
)
う
下
(
お
)
ろして
来
(
き
)
てくれ』
276
テー、
277
天空
(
そら
)
を
仰
(
あふ
)
ぎ
見
(
み
)
て、
278
テー『ヤア
如何
(
いか
)
にも
不思議
(
ふしぎ
)
だ。
279
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にかあんな
所
(
ところ
)
へ、
280
誰
(
たれ
)
が
持
(
も
)
つて
登
(
のぼ
)
りよつたのだらう。
281
私
(
わし
)
は
生
(
うま
)
れ
付
(
つ
)
き、
282
木登
(
きのぼ
)
りは
拙劣
(
へた
)
だから、
283
到底
(
たうてい
)
あんな
所
(
ところ
)
へあがれる
気遣
(
きづかひ
)
はないのだ。
284
大方
(
おほかた
)
天狗
(
てんぐ
)
の
奴
(
やつ
)
悪戯
(
いたづら
)
しよつたのであらう。
285
あんな
所
(
ところ
)
へあがるのは、
286
到底
(
たうてい
)
天狗
(
てんぐ
)
でなくては
出来
(
でき
)
るものではありませぬワイ……なア
竜国別
(
たつくにわけ
)
さま、
287
あなた
鎮魂
(
ちんこん
)
して
天狗
(
てんぐ
)
を
呼集
(
よびあつ
)
め、
288
あの
袋
(
ふくろ
)
を
茲
(
ここ
)
へ
持
(
も
)
つて
来
(
く
)
る
様
(
やう
)
にして
下
(
くだ
)
さいなア』
289
竜国
(
たつくに
)
『お
母
(
か
)
アさま、
290
如何
(
どう
)
でせう。
291
合点
(
がてん
)
の
往
(
ゆ
)
かぬ
事
(
こと
)
ぢやありませぬか。
292
テーは
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り、
293
身
(
み
)
の
重
(
おも
)
たい
男
(
をとこ
)
で、
294
あの
様
(
やう
)
な
所
(
ところ
)
へ、
295
能
(
よ
)
うあがり
相
(
さう
)
な
事
(
こと
)
はありませぬ。
296
コリヤ
矢張
(
やつぱり
)
天狗
(
てんぐ
)
の
悪戯
(
いたづら
)
に
間違
(
まちがひ
)
ありませぬよ』
297
鷹依
(
たかより
)
『
此
(
この
)
辺
(
へん
)
には
野天狗
(
のてんぐ
)
が
沢山
(
たくさん
)
に
居
(
ゐ
)
るから、
298
油断
(
ゆだん
)
をする
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
299
これは
何
(
なん
)
とかして、
300
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
し
下
(
お
)
ろして
頂
(
いただ
)
かねば
吾々
(
われわれ
)
は
何時
(
いつ
)
になつても
此処
(
ここ
)
を
離
(
はな
)
れる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
301
……コレ、
302
カー、
303
お
前
(
まへ
)
はチツとばかり
身
(
み
)
が
軽
(
かる
)
さうだ。
304
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
為
(
ため
)
、
305
世界
(
せかい
)
の
為
(
ため
)
の
御
(
お
)
宝
(
たから
)
だから、
306
取
(
と
)
りにあがつても
滅多
(
めつた
)
に
無調法
(
ぶてうはふ
)
はありますまい。
307
私
(
わたし
)
がこれから
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
に
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
願
(
ねがひ
)
をこめるから、
308
お
前
(
まへ
)
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが、
309
一寸
(
ちよつと
)
登
(
のぼ
)
つて
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れまいかなア』
310
カー『さうですな、
311
マア
一寸
(
ちよつと
)
試
(
ためし
)
に
登
(
のぼ
)
れるか
登
(
のぼ
)
れぬか、
312
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
ませう』
313
と、
314
一抱
(
ひとかかへ
)
もある
白楊樹
(
はくようじゆ
)
の
根元
(
ねもと
)
に
立寄
(
たちよ
)
り、
315
木
(
き
)
の
幹
(
みき
)
に
一寸
(
ちよつと
)
手
(
て
)
をかけ『キヤツ』と
悲鳴
(
ひめい
)
をあげて、
316
其
(
その
)
場
(
ば
)
にカーリンスは
打倒
(
うちたふ
)
れ
人事
(
じんじ
)
不省
(
ふせい
)
に
陥
(
おちい
)
りにける。
317
(
大正一一・八・一一
旧六・一九
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 懸橋御殿
(B)
(N)
野辺の訓戒 >>>
霊界物語
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海洋万里(第25~36巻)
>
第29巻(辰の巻)
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【第3章 白楊樹|第29巻|海洋万里|霊界物語|/rm2903】
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