霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第七章 牛童丸(うしどうまる)〔八二九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第29巻 海洋万里 辰の巻 篇:第2篇 石心放告 よみ(新仮名遣い):せきしんほうこく
章:第7章 牛童丸 よみ(新仮名遣い):うしどうまる 通し章番号:829
口述日:1922(大正11)年08月11日(旧06月19日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
高姫は疲れて細谷川の川べりで休息し、一夜を明かすことになった。常彦と春彦は後から遅れて追いかけてきた。
里の童が牛を川に入れた後、その背に乗って横笛を吹きながら帰っていく。常彦はその牛にぶつかってしまった。そのひょうしに牛は驚き、童は背から落ちてしまった。童子は子供らしからぬ権幕で常彦を怒鳴りつけた。
常彦は謝るが、童子は怒って春彦にも謝罪を要求する。そのうちに童子は、自分が誰だか言い当てたら赦してやると謎を言い出した。常彦は高砂島にたびたび出現する童子神・牛童丸様ではないか、と答えた。
童子は、牛童丸は何神の化身か知っているか、と謎を続ける。牛童丸は百姓の神・大歳の神だと明かし、春彦を呼んで横笛でひっぱたいた。そして二人に牛を与えると、高姫が休んでいる場所を教え、牛に乗ってアリナの滝まで行くようにと伝えると、姿を消した。
二人は牛を連れて、牛童丸が教えてくれた高姫が寝ているところにやってきた。高姫は目を覚まし、常彦と春彦を見るとまた憎まれ口をたたき出した。常彦は、牛童丸に玉の詳細を聞かされたと言って牛に乗って先に行こうとする。
高姫は慌てて引きとめ、三人は腹の探りあいをひとしきりした後、牛を返して街道に出た。七日をかけてようやく、蛸取村の海岸に出たときには、すでに日は沈んでいた。三人は月に向かって天津祝詞を奏上し、夜中もアリナの滝に向かって歩いていく。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-12-24 17:26:50 OBC :rm2907
愛善世界社版:97頁 八幡書店版:第5輯 500頁 修補版: 校定版:98頁 普及版:44頁 初版: ページ備考:
001 高姫(たかひめ)長途(ちやうと)(たび)(おも)()つて()()し、002(のど)(かは)き、003身体(からだ)(つか)れ、004()むを()ず、005路傍(ろばう)樹蔭(こかげ)()(よこ)たへ、006細谷川(ほそたにがは)(のど)をうるほし、007蔓苺(つるいちご)むしつて()ひ、008一夜(いちや)をここに(あか)さむと、009小声(こごゑ)になつて、010天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)しゐたり。
011 常彦(つねひこ)012春彦(はるひこ)二人(ふたり)十丁(じつちやう)(ばか)(おく)れた(まま)013一生(いつしやう)懸命(けんめい)身体(からだ)をはすかひに、014(あま)(ひろ)からぬテルの街道(かいだう)(みなみ)(みなみ)へと(はし)つて()く。015(さと)(わらべ)夕暮(ゆふぐれ)(うし)(かは)()れ、016(その)()(またが)つて、017横笛(よこぶえ)()(なが)(かへ)つて()く。018常彦(つねひこ)一生(いつしやう)懸命(けんめい)吾前(わがまへ)(うし)()ることも()がつかず、019ドスンと(うし)(しり)頭突(づづき)()つて()つた。020(うし)(おどろ)いて()(あが)り、021()()つてゐた(わらべ)(たちま)地上(ちじやう)顛落(てんらく)し、022ムクムク起上(おきあが)り、023(うし)(つな)をグツと()(なが)ら、
024童児(どうじ)『オイ、025どこの(やつ)()らぬが()をつけぬかい。026貴様(きさま)目玉(めだま)節穴(ふしあな)か』
027と、028(ちい)さき(わらべ)()大胆(だいたん)にも(だい)(をとこ)(むか)つて呶鳴(どな)りつけたる。
029常彦(つねひこ)『これはこれは(まこと)()(くれ)(こと)()ひ、030チツと()()きましたので、031(うし)尻餅(しりもち)()きました。032どうぞ()勘弁(かんべん)(くだ)さりませ』
033童児(どうじ)『コリヤ(あやま)つて(こと)()むと(おも)ふか。034(ひと)牛々(ぎうぎう)()(やう)()()はしやがつて、035(ただ)一言(ひとこと)(ことわ)(くらゐ)(この)()(にげ)ようとしても、036(もう)(かな)はぬぞ。037オイ、038そこに一寸(ちよつと)平太(へた)れ!』
039常彦(つねひこ)『ハイ、040そんなら平太(へた)りますワ。041どうぞこれで勘忍(かんにん)して(くだ)さい』
042童児(どうじ)『お(まへ)(ばか)りでは()かぬ。043一人(ひとり)蜥蜴(とかげ)のような(かほ)した(やつ)044そいつも(すわ)れ!』
045春彦(はるひこ)『なんとマア、046()つぽけなザマして、047大人(おとな)(むか)御託(ごうたく)をほざく(やつ)だなア。048(おれ)(べつ)突当(つきあた)つたのぢやない。049俺迄(おれまで)(あやま)つてたまるかい』
050童児(どうじ)『お(まへ)同類(どうるゐ)だ。051グヅグヅ()ふと(うし)にケシをかけ突殺(つきころ)してやろか。052(おれ)身体(からだ)()つこうても、053(おれ)家来(けらい)(うし)大分(だいぶ)(おほ)きいぞ』
054常彦(つねひこ)(うし)(うし)055童児(どうじ)さま、056モウいゝ加減(かげん)了見(れうけん)して(くだ)さいなア』
057童児(どうじ)(おれ)正体(しやうたい)(たれ)ぢやと(おも)うてるか。058それを(あて)たら(ゆる)してやらう』
059常彦(つねひこ)『ハイ、060(たし)かにお(まへ)牛童丸(うしどうまる)さまぢや御座(ござ)いませぬか。061高砂島(たかさごじま)には、062えてしては、063牛童丸(うしどうまる)()(かみ)さまが(あらは)れて、064(うし)()つて横笛(よこぶえ)()いてゐられると()ふことを()きました』
065童児(どうじ)牛童丸(うしどうまる)何神(なにがみ)化神(けしん)か、066()つて()るだらうなア』
067常彦(つねひこ)『ハイ、068()つて()ります。069御年村(みとせむら)百姓(ひやくしやう)070自称(じしよう)(うしとら)金神(こんじん)さま……とは(ちが)ひますか』
071童児(どうじ)(わたし)百姓(ひやくしやう)(かみ)だ。072大歳(おほとし)(かみ)化身(けしん)だよ』
073春彦(はるひこ)『ハアそれで常彦(つねひこ)があなたの(うし)にぶつかり、074背中(せなか)から童児(どうじ)大歳(おほとし)(かみ)さまですか、075アハヽヽヽ。076(ただし)()つこいザマして、077(おほ)きな人間(にんげん)をオウドシの(かみ)さまだらう』
078童児(どうじ)『お(まへ)春彦(はるひこ)()(をとこ)だなア、079一寸(ちよつと)ここへ()い。080(まへ)にやりたい(もの)がある』
081春彦(はるひこ)『ハイ有難(ありがた)う。082()すことなら、083(した)()すのも、084()()すのも(いや)だが、085(もら)(こと)なら、086(いぬ)葬連(さうれん)でも、087(うし)(ほね)でも(いただ)きます』
088子供(こども)だと(おも)ひ、089からかひ半分(はんぶん)童児(どうじ)(まへ)にすり()つた。090童児(どうじ)横笛(よこぶえ)逆手(さかて)()ち、091春彦(はるひこ)横面(よこづら)目蒐(めが)けて、092(うし)背中(せなか)から、
093牛童(うしどう)大歳(おほとし)(かみ)横笛(よこぶえ)(もつ)て、094(まへ)横面(よこづら)(ちから)一杯(いつぱい)春彦(はるひこ)だよ』
095(くび)がいがむ(ほど)(たた)きつけ、
096牛童(うしどう)『モ(ひと)つやらうか』
097平然(へいぜん)として(わら)つて()る。
098春彦(はるひこ)『モウモウ沢山(たくさん)御座(ござ)います。099随分(ずゐぶん)(まへ)さまは(ちひ)さい(くせ)に、100エライ(ちから)だな。101これ(だけ)(うで)があれば、102(だい)(をとこ)(とら)まへて嘲弄(てうろう)するのも無理(むり)はないワイ。103それだから(かみ)さまが何程(なにほど)(ちい)さい(もの)でも(あなど)ることはならぬ、104どんな結構(けつこう)(かた)()けて御座(ござ)るか()れぬぞよ……と仰有(おつしや)つたのだ。105……オイ常彦(つねひこ)106モウいゝ加減(かげん)にこらへて(もら)つて、107()かうぢやないか』
108常彦(つねひこ)『さうだな。109……(うし)(うし)牛童丸(うしどうまる)(さま)110そんならこれでお(わか)(いた)します』
111牛童(うしどう)()()て、112(まへ)(たち)両人(りやうにん)にモ(ひと)(おほ)きな(もの)をやりたいのだ』
113春彦(はるひこ)『イヤもう結構(けつこう)御座(ござ)います。114モウあれで沢山(たくさん)御座(ござ)います。115(この)(うへ)(いただ)きますと、116(かさ)(だい)()んで(しま)ひます』
117牛童(うしどう)『イヤ心配(しんぱい)するな。118(この)(うし)をお(まへ)にやるから、119アリナの(たき)(まで)()つて()け。120大変(たいへん)(あし)草疲(くたび)れてゐる(やう)だから……。121そして高姫(たかひめ)はこれから十丁(じつちやう)(ばか)(みなみ)()くと、122小川(をがは)がある。123(その)小川(をがは)(ひだり)にとつて十間(じつけん)(ばか)りのぼると、124そこに高姫(たかひめ)(やす)んで()るから、125(この)(うし)()つて、126(かは)をバサバサと(のぼ)つて()け。127左様(さやう)なら……』
128()ふかと()れば、129最早(もはや)童児(どうじ)姿(すがた)()えなくなり()たり。
130常彦(つねひこ)『オイ春彦(はるひこ)131どうだ。132(おれ)突当(つきあた)つた(ばか)りで、133こんな結構(けつこう)乗物(のりもの)頂戴(ちやうだい)したぢやないか。134サア()れから二人共(ふたりとも)(この)(うし)背中(せなか)(またが)つて()かうぢやないか』
135春彦(はるひこ)『お(まへ)結構(けつこう)だが、136(おれ)横笛(よこぶえ)でなぐられ、137(いた)くて仕方(しかた)がないワ』
138常彦(つねひこ)『ナニ、139(かみ)(めぐみ)(むち)だよ。140牛童丸(うしどうまる)(さま)になぐられたのだから、141余程(よほど)貴様(きさま)光栄(くわうゑい)だ。142これが高姫(たかひめ)にでも(なぐ)られたのだつたら、143それこそ(はら)()つてたまらぬけれど、144(なに)しろ(かみ)(さま)が、145春彦(はるひこ)モウ(わか)れるのか、146おなぐ()しいと()つて、147(なぐ)(あそ)ばしたのだよ。148サア(はや)()らう。149(うし)()()(いま)(こひ)しき……と()つて、150(いま)一番(いちばん)結構(けつこう)かも()れぬぞ。151据膳(すえぜん)()はぬは(をとこ)(うち)ぢやない。152サア(はや)()つたり()つたり』
153春彦(はるひこ)『コシカ(たうげ)弥次(やじ)154与太(よた)(ゆめ)(やう)(また)(うし)()つて、155(うし)(やつ)から小言(こごと)をきかされるやうな(こと)はあろまいかな』
156常彦(つねひこ)心配(しんぱい)するな』
157()(なが)ら、158ヒラリと(せな)(またが)つた。159春彦(はるひこ)(うし)(つな)()(なが)ら、160(みなみ)(みなみ)へと(すす)み、161(つひ)童児(どうじ)(をし)へた細谷川(ほそたにがは)(ひだり)()り、162(かは)(さかのぼ)りて、163高姫(たかひめ)(やす)んでゐる二三間(にさんげん)(そば)まで(すす)み、164『オウオウ』……と(うし)(せい)し、165ヒラリと()()り、
166春彦(はるひこ)『モシモシ(もう)さま、167エライ()苦労(くらう)御座(ござ)いました。168モウどうぞお(かへ)(くだ)さいませ』
169(うし)『ウン ウン ウン ウウー』
170(やま)もはぢける(やう)(こゑ)()して(うな)()てる。171高姫(たかひめ)はウツラウツラ夢路(ゆめぢ)辿(たど)つてゐたが、172(この)(こゑ)(おどろ)いて()()まし、173巨大(きよだい)(うし)両側(りやうがは)常彦(つねひこ)174春彦(はるひこ)二人(ふたり)()つてゐるを()て、
175高姫(たかひめ)『お(まへ)(つね)176(はる)二人(ふたり)ぢやないか。177(なん)だ、178そんな(おほ)きな(もの)()つぱつて()て……(また)道中(だうちう)百姓(ひやくしやう)(たから)何々(なになに)して()たのだらう。179どこ(まで)泥棒(どろぼう)根性(こんじやう)(なほ)らぬと()えるワイ。180さうぢやから(この)高姫(たかひめ)がお(まへ)(やう)(もの)()れて(ある)くと、181神徳(しんとく)がおちると()うたのだよ。182エヽ(けが)らはしい、183トツトと(かへ)つて()れ。184ツユー ツユー ツユー』
185(つばき)()()して、186二人(ふたり)にかける真似(まね)をする。
187常彦(つねひこ)高姫(たかひめ)さま、188心機(しんき)一転(いつてん)もそこまで()けば、189徹底(てつてい)したものですなア。190モウ(わたし)はお(まへ)さまになんにも()ひませぬ。191(たま)所在(ありか)もお(まへ)さまの(こころ)見抜(みぬ)いた(うへ)()らしてあげたいと(おも)つてゐたが、192さう(ねこ)()のやうにクレクレクレと(かは)るお(かた)険呑(けんのん)だから、193これきり秘密(ひみつ)()ひませぬから、194()(つも)りでゐて(くだ)さい』
195高姫(たかひめ)『オイ(つね)196ソラ(なに)()ふのだい。197(だい)それた()出神(でのかみ)生宮(いきみや)(むか)つて、198()うてやるの、199()うてやらぬのもあるものか。200(わし)()らぬやうな(かほ)して()()いて()れば、201エラソウに(おん)()せて、202序文(じよぶん)総論(そうろん)(ばか)りを(なら)べ、203肝腎(かんじん)中味(なかみ)(みづ)(なか)()()いたやうな(つか)まへ(どころ)のないことを()ふのだらう。204()出神(でのかみ)(さま)から、205(たま)所在(ありか)はチヤンと()いたのだ。206モウお(まへ)さまに(よう)はない、207一生(いつしやう)(たの)みませぬ。208トツトと(わし)()にかからぬ(ところ)()つてお()れ』
209常彦(つねひこ)高姫(たかひめ)さま、210さう啖呵(たんか)()るものぢやありませぬよ。211(くさ)(なは)にも(また)取得(とりえ)()つて、212(わたし)にでも(たの)まねばならぬことが、213たつた(いま)()()ますから、214(あま)りエラソウなことは()はぬが(よろ)しからうぜ』
215高姫(たかひめ)『エヽうるさい』
216常彦(つねひこ)『そんなら、217(この)(うし)()つて、218一口(ひとくち)(いち)(りやう)の、219ア、220リ、221ナーへお(さき)失礼(しつれい)(いた)しますワ。222(わたし)途中(とちう)牛童丸(うしどうまる)さまに一伍(いちぶ)一什(しじふ)(をし)へられ、223(まへ)さまのここに()ることも、224チヤンと()らして(もら)ひ、225結構(けつこう)四足(よつあし)乗物(のりもの)まで頂戴(ちやうだい)して()たのだから、226一寸(ちよつと)草疲(くたび)れはせぬ。227モウ十日(とをか)(ばか)りアリナーまでかかるけれど、228これで()つて()けば三日(みつか)(ばか)りで()ける。229……ぢやお(さき)へ、230高姫(たかひめ)さま……アバヨ』
231 (また)もや(うし)(また)がらうとする。232高姫(たかひめ)はコリヤ大変(たいへん)と、233(あわただ)しく起上(おきあが)り、234常彦(つねひこ)(こし)をグツと引掴(ひつつか)み、
235高姫(たかひめ)()つたり()つたり常彦(つねひこ)236(わし)(わる)かつた。237さう(はら)()てて(くだ)さるな。238一寸(ちよつと)(まへ)如何(どう)()ふか()らぬと(おも)つて()()いて()たのだよ』
239常彦(つねひこ)(また)何時(いつ)もの筆法(ひつぱふ)ですかな。240(その)()()ひませぬワ。241……サア春彦(はるひこ)242(まへ)()つて()れ。243……高姫(たかひめ)さま、244(さき)へ、245如意(によい)宝珠(ほつしゆ)246(その)()()神宝(しんぱう)(いただ)いて(かへ)ります。247アリヨース』
248高姫(たかひめ)『コレ常公(つねこう)249春公(はるこう)250()てと()つたら、251()ちなさつたら如何(どう)ぢや、252さう高姫(たかひめ)(きら)つたものぢやないぜ』
253(まる)()をワザと(ほそ)うし、254おチヨボ(ぐち)(つく)つて機嫌(きげん)をとる。255月夜(つきよ)でスツカリは(わか)らねど、256言葉(ことば)()(かた)から、257スタイルでそれと(うなづ)かれた。
258高姫(たかひめ)『モウ(うし)(かへ)つて(もら)つたら如何(いかが)です。259(かへつ)修業(しうげう)にならぬかも()れませぬで』
260常彦(つねひこ)『アヽさうだなア。261そんなら(もう)さま、262モウ(かへ)つて(くだ)さい』
263 (うし)常彦(つねひこ)一言(いちごん)(あわ)(ごと)(その)()()()せけり。264高姫(たかひめ)()れを()て、265(やや)安心(あんしん)(むね)()(おろ)し、266ソロソロ(また)(つよ)いことを()ひかけた。
267高姫(たかひめ)何程(なにほど)(まへ)(あし)達者(たつしや)でも、268(わし)には()いて()られますまい。269それだから慢心(まんしん)はなさるなと始終(しじう)教訓(けうくん)してゐるのだよ』
270常彦(つねひこ)(また)高姫(たかひめ)さまは弱味(よわみ)をつけ()んで、271そんなことを仰有(おつしや)る。272アヽこんな(こと)なら、273(うし)(かへ)つて(もら)ふのぢやなかつたに。274……モシモシ(もう)さま、275一遍(いつぺん)こちらへ(かへ)りて(くだ)さい。276そして牛童丸(うしどうまる)仰有(おつしや)つた(やう)に、277アリナの(たき)(まで)()れて()つて(くだ)さいな』
278当途(あてど)もなく(さけ)んだ。279()べど(さけ)べど(なし)(つぶて)(なに)音沙汰(おとさた)もない。
280常彦(つねひこ)『アヽ折角(せつかく)(もう)さまに(たす)けて(もら)うたと(おも)へば、281明日(あす)(また)(すな)つぽこりの(みち)を、282親譲(おやゆづ)りの交通(かうつう)機関(きくわん)(あぶら)でもかけてテクらねばならぬかいな。283……(うし)()()(いま)(こひ)しき……と()(うた)(こころ)が、284(いま)事実(じじつ)となつて()たワイ』
285高姫(たかひめ)『オツホヽヽヽ、286そら御覧(ごらん)287(おご)平家(へいけ)(ひさ)しからず、288……と()つて、289何時迄(いつまで)(やなぎ)(した)(どぢやう)()りませぬぞや。290(まへ)のやうな(ひと)()れてゆくのは手足(てあし)(まと)ひだが仕方(しかた)がない。291そんならドツと張込(はりこ)んで、292(とも)(ゆる)してあげよう。293サアゆつくりと此処(ここ)(やす)みなさい』
294春彦(はるひこ)『そんな(こと)()つて、295(おれ)(たち)がグウグウ(やす)んでる(あひだ)に、296ソツと高姫(たかひめ)さまが()()し、297(さき)()つて、298(たま)をスツカリ()つてしまはつしやるのだなからうかな』
299常彦(つねひこ)『ウン、300まさか、301そんなこともなさるまいかい。302()(かく)(わし)()いて()るのは(また)(ほか)にあるのぢやから、303さう心配(しんぱい)したものぢやないワイ』
304高姫(たかひめ)『お(まへ)(たち)はそれだから()かぬと()ふのぢや。305(こころ)(うたが)ふといふ(こと)神界(しんかい)大変(たいへん)(つみ)ですよ。306(うたがひ)()らして、307綺麗(きれい)さつぱりと改心(かいしん)なされ、308改心(かいしん)出来(でき)ねば()(とも)(ゆる)しませぬぞや』
309常彦(つねひこ)『ハイ改心(かいしん)(いた)します』
310高姫(たかひめ)春彦(はるひこ)もさうだらうな』
311春彦(はるひこ)(もつと)左様(さやう)御座(ござ)います』
312 ()(はなし)(ところ)大杉(おほすぎ)(えだ)(しん)から何者(なにもの)とも()れず、
313高姫(たかひめ)々々(たかひめ)314常彦(つねひこ)コツコ、315(はる)ヒコツココ』
316梟鳥(ふくろどり)のような(こゑ)でなき()した。
317 高姫(たかひめ)うす気味(きみ)(わる)くなり、318スゴスゴと()()ちて、319(もと)()(みち)逃出(にげだ)した。320二人(ふたり)薄気味(うすきみ)(わる)高姫(たかひめ)(あと)(したが)ひ、321テルの街道(かいだう)()て、322(さん)(にん)一生(いつしやう)懸命(けんめい)(みなみ)(みなみ)へと(ねむ)()(にはか)にさまし、323トボトボと(あゆ)()く。
324 (くさ)(しとね)木株(きかぶ)(まくら)芭蕉(ばせう)()むしつて夜具(やぐ)代用(だいよう)(なが)ら、325七日(なぬか)(ばか)りを()(やうや)く、326猿世彦(さるよひこ)奇蹟(きせき)(のこ)した蛸取村(たことりむら)海岸(かいがん)()た。327(この)(とき)(すで)()西山(せいざん)(ぼつ)し、328二日(ふつか)(つき)西方(せいはう)(なみ)(うへ)(ちか)()いた(やう)()えてゐる。329(さん)(にん)(つき)(むか)つて合掌(がつしやう)し、330天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、331(あま)数歌(かずうた)をうたひ(なが)ら、332夜中(やちう)をも(くつ)せず、333アリナの(たき)目当(めあ)にトボトボと(すす)()く。
334大正一一・八・一一 旧六・一九 松村真澄録)
335(昭和一〇・六・七 王仁校正)

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