霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 悔悟(くわいご)の幕(まく)〔八三四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第29巻 海洋万里 辰の巻 篇:第3篇 神鬼一転 よみ(新仮名遣い):しんきいってん
章:第12章 悔悟の幕 よみ(新仮名遣い):かいごのまく 通し章番号:834
口述日:1922(大正11)年08月12日(旧06月20日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
常彦、春彦、竜、玉の四人は高姫に追いつけず、アリナ山の山頂で夜を過ごした。丑三時に東の空に俄かに黒雲が起こり、大きな怪物が降ってくるのが見えた。
四人が指差し眺めていると、麗しい女神が中空に現れると、金毛九尾の悪狐が北方の常世の国の方面に逃げて行くのが見えた。その後に、空中を錦の袋が櫟ケ原に落ちていくのが見えた。
一行は夜が明けると高姫を追いかけ始め、日の暮れごろにようやく櫟ケ原の柏楊樹の下に端座している高姫のところに着いた。高姫は心魂開け、真如の日月が心の空に輝いて天眼通力を得て四人が後を追って来ているのを知り、端座して祝詞を上げながら待っていた。
高姫の様子がすっかり打って変わって高慢なところが消えているので、常彦と春彦は驚いて声をかけた。高姫は女神の戒めにあって改心した経緯を一行に話した。そして竜と玉に、黄金の玉を国玉依別に返却するようにと依頼した。
高姫の改心に常彦と春彦は涙を流し、実は自分たちは杢助の内命によって高姫を改心させようとお供になって着いて来たことを明かした。
竜と玉は黄金の玉を懸橋御殿に持って帰った。高姫一行は日の出姫が示した行路を取って大原野を越えて海岸線を北上し、アマゾン河をさかのぼる旅に出ることになった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-12-29 17:24:23 文字数:3593 OBC :rm2912
愛善世界社版:174頁 八幡書店版:第5輯 529頁 修補版: 校定版:178頁 普及版:81頁 初版: ページ備考:
001 常彦(つねひこ)、002春彦(はるひこ)は後(あと)より追(お)つかけ来(きた)りし玉(たま)、003竜(たつ)の二人(ふたり)と共(とも)に、004アリナの高山(かうざん)を漸(やうや)く登(のぼ)り、005到底(たうてい)、006高姫(たかひめ)に追付(おひつ)く可(べか)らざるを断念(だんねん)し、007高山(かうざん)の頂(いただ)きにて息(いき)を休(やす)め、008其(その)夜(よ)を明(あ)かした。
009 丑満(うしみつ)頃(ごろ)と覚(おぼ)しき時(とき)、010東(ひがし)の空(そら)をフト眺(なが)むれば、011俄(にはか)に黒雲(くろくも)起(おこ)り、012満天(まんてん)の星(ほし)は一(ひと)つも残(のこ)らず姿(すがた)を隠(かく)し、013追々(おひおひ)風(かぜ)は烈(はげ)しく峰(みね)の尾(を)の上(へ)を吹(ふ)き捲(まく)り、014四(よ)人(にん)は眠(ねむ)りもならず、015其(その)雲(くも)を怪(あや)しみ眺(なが)めつつあつた。016忽(たちま)ち東(ひがし)の天(てん)に黒雲(くろくも)の中(なか)より、017輪廓(りんくわく)明(あきら)かなる白髪(はくはつ)の大怪物(だいくわいぶつ)現(あら)はれ来(きた)り、018地上(ちじやう)に向(むか)つて降(くだ)る姿(すがた)が見(み)えた。019四(よ)人(にん)は『アレヨアレヨ』と指(さ)し、020眺(なが)めてゐた。021暫(しばら)くあつて容色(ようしよく)端麗(たんれい)なる女神(めがみ)又(また)もや空中(くうちう)に現(あら)はるるよと見(み)る間(ま)に、022見(み)るも恐(おそ)ろしき金毛(きんまう)九尾(きうび)白面(はくめん)の悪狐(あくこ)は暗(やみ)を照(て)らし乍(なが)ら、023北方(ほくぱう)常世国(とこよのくに)の空(そら)を目(め)がけて走(はし)り行(ゆ)く。024四(よ)人(にん)は奇異(きゐ)の思(おも)ひに打(う)たれ、025目(め)も放(はな)たず東天(とうてん)を眺(なが)めて居(ゐ)た。026不思議(ふしぎ)や空中(くうちう)に錦(にしき)の袋(ふくろ)、027あたりを照(て)らし乍(なが)らこれ又(また)フワリフワリと櫟(くぬぎ)が原(はら)の上(うへ)に落下(らくか)するのを見(み)た。
028 漸(やうや)くにして東天(とうてん)五色(ごしき)の雲(くも)に色(いろ)どられ、029天津(あまつ)日(ひ)は悠々(いういう)として昇(のぼ)らせ給(たま)うた。030四(よ)人(にん)は直(ただち)に天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し終(をは)つて、031木々(きぎ)の果実(このみ)を朝飯(あさめし)の代(かは)りにむしり喰(くら)ひ、032宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひ乍(なが)ら、033足(あし)に任(まか)せて、034高姫(たかひめ)の所在(ありか)を探(さぐ)らむと下(くだ)り行(ゆ)く。
035 漸(やうや)くにして日(ひ)の暮(く)るる頃(ころ)、036櫟(くぬぎ)ケ原(はら)の高姫(たかひめ)が端坐(たんざ)せる白楊樹(はくようじゆ)の下(もと)に辿(たど)り着(つ)いた。037高姫(たかひめ)は心魂(しんこん)開(ひら)け、038真如(しんによ)の日月(じつげつ)心(こころ)の空(そら)に輝(かがや)き、039天眼通(てんがんつう)力(りき)を得(え)て、040四(よ)人(にん)の後(あと)を追(お)ひ来(きた)る事(こと)を知(し)り、041茲(ここ)に端坐(たんざ)して祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し乍(なが)ら、042一行(いつかう)を待(ま)つてゐたのである。
043鏡(かがみ)の池(いけ)の神霊(しんれい)と
044現(あら)はれませる月照彦(つきてるひこ)の
045神(かみ)の命(みこと)の戒(いまし)めに
046天狗(てんぐ)の鼻(はな)の高姫(たかひめ)は
047高(たか)い鼻(はな)をばめしやがれて
048忽(たちま)ち身体(しんたい)震動(しんどう)し
049人事(じんじ)不省(ふせい)に陥(おちい)りつ
050懸橋(かけはし)御殿(ごてん)にかきこまれ
051国玉依別(くにたまよりわけ)始(はじ)めとし
052数多(あまた)の神(かみ)の司(つかさ)等(ら)に
053水(みづ)よ薬(くすり)よ祝詞(のりと)よと
054手(て)あつき介抱(かいほう)に息(いき)を吹(ふ)き
055感謝(かんしや)するかと思(おも)ひきや
056又(また)もや例(れい)の逆理窟(さかりくつ)
057教主(けうしゆ)夫婦(ふうふ)も驚(おどろ)いて
058愛想(あいそ)をつかし別館(べつくわん)に
059早々(さうさう)姿(すがた)を隠(かく)しける
060後(あと)に高姫(たかひめ)傲然(ごうぜん)と
061御殿(ごてん)に近(ちか)く仕(つか)へたる
062国(くに)、玉(たま)、竜(たつ)の宣伝使(せんでんし)
063向(むか)ふに廻(まは)して減(へ)らず口(ぐち)
064いろは匂(にほ)へど散(ち)りぬるを
065四十八(しじふや)文字(もじ)で世(よ)の中(なか)の
066一切(いつさい)万事(ばんじ)高姫(たかひめ)が
067解決(かいけつ)すると法螺(ほら)を吹(ふ)き
068金剛(こんがう)不壊(ふゑ)の如意(によい)宝珠(ほつしゆ)
069麻邇(まに)の宝(たから)を国依別(くによりわけ)の
070教司(をしへつかさ)や玉治別(たまはるわけ)
071言依別(ことよりわけ)の教主(けうしゆ)等(ら)が
072広(ひろ)き御殿(ごてん)を拵(こしら)へて
073三千(さんぜん)世界(せかい)の神宝(しんぱう)を
074隠(かく)してゐるに違(ちがひ)ない
075高姫(たかひめ)ここへ来(き)た上(うへ)は
076最早(もはや)逃(のが)れぬ百年目(ひやくねんめ)
077綺麗(きれい)サツパリ渡(わた)せよと
078無理(むり)難題(なんだい)を吹(ふ)きかける
079常彦(つねひこ)、春彦(はるひこ)其(その)外(ほか)の
080御殿(ごてん)に仕(つか)ふる司(つかさ)等(ら)も
081猜疑(さいぎ)の深(ふか)き高姫(たかひめ)に
082顔(かほ)見合(みあは)せて当惑(たうわく)し
083一(いち)時(じ)も早(はや)く此(この)場(ば)をば
084出発(た)つて欲(ほ)しいと促(うなが)せば
085高姫(たかひめ)眼(まなこ)を怒(いか)らして
086悪言(あくげん)暴語(ぼうご)を連発(れんぱつ)し
087遂(つひ)には清(きよ)き神殿(しんでん)に
088阿修羅(あしゆら)王(わう)の如(ごと)駆上(かけあが)り
089扉(とびら)に両手(りやうて)をかくる折(をり)
090鏡(かがみ)の池(いけ)の守護神(まもりがみ)
091狭依(さより)の彦(ひこ)が現(あら)はれて
092高姫司(たかひめつかさ)の首筋(くびすぢ)を
093グツと掴(つか)んで階段(かいだん)の
094真下(ました)にきびしく投(な)げつける
095流石(さすが)の高姫(たかひめ)目(め)をまはし
096半死(はんし)半生(はんしやう)の有様(ありさま)を
097以後(いご)の見(み)せしめ捨(す)ておけと
098常彦(つねひこ)、春彦(はるひこ)両人(りやうにん)は
099国(くに)、玉(たま)、依(より)や竜(たつ)などの
100神(かみ)の司(つかさ)の親切(しんせつ)を
101暫(しば)しとどめて別館(べつくわん)に
102到(いた)りて神酒(みき)を頂戴(ちやうだい)し
103世間話(せけんばなし)に耽(ふけ)る折(をり)
104御殿(ごてん)に怪(あや)しき叫(さけ)び声(ごゑ)
105何事(なにごと)ならむと一同(いちどう)は
106駆(かけ)より見(み)れば此(こ)は如何(いか)に
107大(だい)の男(をとこ)は高姫(たかひめ)を
108手玉(てだま)に取(と)つてさいなみつ
109其(その)儘(まま)姿(すがた)を隠(かく)しける
110高姫(たかひめ)驚(おどろ)き立上(たちあが)り
111玄関口(げんくわんぐち)に立出(たちい)でて
112手早(てばや)く草鞋(わらぢ)を足(あし)にかけ
113アリナの山(やま)の急坂(きふはん)を
114矢(や)を射(い)る如(ごと)く逃(に)げて行(ゆ)く
115高姫(たかひめ)やうやう大野原(おほのはら)
116芒(すすき)の茂(しげ)り白楊樹(はくようじゆ)
117並(なら)びて立(た)てる櫟(くぬぎ)ケ原(はら)の
118大木(おほき)の根元(ねもと)に辿(たど)り着(つ)き
119草臥(くたびれ)果(は)てて腰(こし)おろし
120前後(ぜんご)も知(し)らず眠入(ねい)りけり。
121高姫(たかひめ)夜中(よなか)に目(め)を醒(さ)まし
122耳(みみ)をすませばコハ如何(いか)に
123獅子(しし)狼(おほかみ)や虎(とら)熊(くま)の
124幾百千(いくひやくせん)とも限(かぎり)なく
125声(こゑ)を揃(そろ)へて唸(うな)るよな
126身(み)の毛(け)もよだつ物凄(ものすご)さ
127黒雲(くろくも)四方(よも)に塞(ふさ)がりて
128足許(あしもと)さへも見(み)えかぬる
129暗(やみ)の帳(とばり)を押(おし)あけて
130現(あら)はれ出(い)でたる白髪(はくはつ)の
131雲(くも)つく許(ばか)りの大男(おほをとこ)
132耳(みみ)まで裂(さ)けた大口(おほぐち)に
133血(ち)をにじませて進(すす)み寄(よ)り
134アハヽヽヽと大笑(おほわら)ひ
135時節(じせつ)は待(ま)たねばならぬもの
136生々(いきいき)したる人間(にんげん)の
137肉(にく)を食(く)ひたい食(く)ひたいと
138今迄(いままで)飢(う)ゑて居(ゐ)た爺(おやぢ)
139天(てん)の恵(めぐみ)か有難(ありがた)や
140此(この)高姫(たかひめ)は年(とし)を老(と)り
141少(すこ)しく肉(にく)は固(かた)けれど
142腹(はら)の空(す)いたる吾身(わがみ)には
143決(けつ)して不味(まづ)うはあるまいぞ
144あゝ有難(ありがた)や有難(ありがた)や
145これから頂戴(ちやうだい)致(いた)しませうと
146高姫司(たかひめつかさ)の前(まへ)に寄(よ)り
147グツと髻(たぶさ)を握(にぎ)りしめ
148笑(わら)うた時(とき)の厭(いや)らしさ
149廿日鼠(はつかねずみ)が大猫(おほねこ)に
150掴(つか)まへられた時(とき)のよに
151身(み)をビリビリと震(ふる)はして
152戦(をのの)く折(をり)しも嚠喨(りうりやう)と
153天津(あまつ)御空(みそら)に音楽(おんがく)の
154響(ひび)き聞(きこ)えて一道(いちだう)の
155光明(くわうみやう)大地(だいち)を射照(ゐて)らせば
156さも恐(おそ)ろしき怪物(くわいぶつ)は
157煙(けぶり)と消(き)えて美(うる)はしき
158女神(めがみ)の姿(すがた)忽然(こつぜん)と
159笑(ゑみ)を湛(たた)へて出現(しゆつげん)し
160種々(いろいろ)雑多(ざつた)と天地(あめつち)の
161真(まこと)の道理(だうり)を高姫(たかひめ)に
162諭(さと)し玉(たま)へば頑強(ぐわんきやう)な
163高姫司(たかひめつかさ)も村肝(むらきも)の
164心(こころ)の底(そこ)より悔悟(くわいご)して
165玉(たま)に対(たい)する執着(しふちやく)の
166迷(まよ)ひは爰(ここ)に速川(はやかは)の
167清(きよ)き流(なが)れに落(おと)しける
168あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
169御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ。
170 常彦(つねひこ)、171春彦(はるひこ)外(ほか)二人(ふたり)は高姫(たかひめ)の今迄(いままで)の如(ごと)き高慢面(かうまんづら)に引替(ひきか)へ、172極(きは)めて温順(おんじゆん)な顔色(かほいろ)となり、173行儀(ぎやうぎ)よくつつましやかに、174芝生(しばふ)の上(うへ)に端坐(たんざ)して、175小声(こごゑ)に祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し居(ゐ)る姿(すがた)を眺(なが)めて、176案(あん)に相違(さうゐ)し乍(なが)ら、
177常彦(つねひこ)『モシモシ高姫(たかひめ)さま、178如何(どう)で御座(ござ)いました。179貴女(あなた)のお姿(すがた)を見失(みうしな)つては大変(たいへん)だと、180吾々(われわれ)はお後(あと)を、181一生(いつしやう)懸命(けんめい)に附(つ)けて走(はし)つて参(まゐ)りましたが、182何(なに)を言(い)つても、183アリナの高山(かうざん)……とうとう貴女(あなた)の御(ご)健脚(けんきやく)には追(お)ひ付(つ)き得(え)ず、184峰(みね)の尾(を)の上(へ)で、185とうとう往生(わうじやう)致(いた)し、186一夜(ひとよ)を明(あ)かして、187漸(やうや)く此処(ここ)に参(まゐ)りました。188ようマア待(ま)つてゐて下(くだ)さいました。189アヽ、190これで肩(かた)の重荷(おもに)が下(お)りた様(やう)で御座(ござ)います』
191高姫(たかひめ)『常彦(つねひこ)に春彦(はるひこ)、192鏡(かがみ)の池(いけ)のお役人(やくにん)様(さま)、193嶮(けは)しき道(みち)を遥々(はるばる)と、194能(よ)うマア来(き)て下(くだ)さいました。195私(わたくし)もおかげで、196長(なが)い夢(ゆめ)が醒(さ)めました。197只今(ただいま)の高姫(たかひめ)は昨日(きのふ)迄(まで)の様(やう)な、198自我心(じがしん)の強(つよ)い、199猜疑心(さいぎしん)の深(ふか)い、200高慢坊(かうまんばう)の高姫(たかひめ)では御座(ござ)いませぬ。201スツカリと神(かみ)様(さま)の訓戒(くんかい)を受(う)けて改心(かいしん)を致(いた)しましたから、202どうぞ御(ご)安心(あんしん)をして下(くだ)さいませ。203さうして茲(ここ)に御座(ござ)います此(この)錦(にしき)の袋(ふくろ)に這入(はい)つて居(を)る黄金(こがね)の玉(たま)は、204テーナの里(さと)から国玉依別(くにたまよりわけ)の教主(けうしゆ)がワザワザ持(も)つて来(こ)られた御(ご)神宝(しんぱう)で御座(ござ)います。205どうぞ玉公(たまこう)、206竜公(たつこう)、207あなた御(ご)苦労(くらう)ですが、208此(この)お宝(たから)を鏡(かがみ)の池(いけ)の懸橋(かけはし)御殿(ごてん)へお供(とも)をしてお帰(かへ)り遊(あそ)ばし、209国玉依別(くにたまよりわけ)様(さま)に御(ご)神殿(しんでん)へ納(をさ)めて戴(いただ)いて下(くだ)さいませ。210此(この)お宝(たから)は夜前(やぜん)まで白楊樹(はくようじゆ)の梢(しん)に引(ひつ)かかつてあつたので御座(ござ)いますが、211天教山(てんけうざん)の日(ひ)の出姫(でひめの)神(かみ)様(さま)が御(ご)神力(しんりき)に依(よ)りて、212無事(ぶじ)に私(わたくし)の前(まへ)に降(ふ)つて来(こ)られた、213大切(たいせつ)な神界(しんかい)の御(ご)神宝(しんぱう)で御座(ござ)います。214一寸(ちよつと)御覧(ごらん)なさいませ。215金色(こんじき)燦爛(さんらん)として目(め)の眩(まばゆ)き計(ばか)りの御光(ごくわう)がさして居(を)ります』
216とニコニコし乍(なが)ら、217錦(にしき)の袋(ふくろ)の紐(ひも)を解(と)き、218四(よ)人(にん)の前(まへ)に玉(たま)を現(あら)はして見(み)せた。219四(よ)人(にん)は稀代(きたい)の神宝(しんぱう)に肝(きも)を潰(つぶ)し、220只(ただ)茫然(ばうぜん)として舌(した)を巻(ま)き、221目(め)を見張(みは)り、222少時(しばし)無言(むごん)の儘(まま)感歎(かんたん)を続(つづ)けてゐる。223暫(しばら)くあつて常彦(つねひこ)は口(くち)を尖(とが)らせ乍(なが)ら、
224常彦『高姫(たかひめ)様(さま)、225貴女(あなた)は今迄(いままで)寝(ね)ても醒(さ)めても、226玉々(たまたま)と玉(たま)気違(きちがひ)の様(やう)に仰有(おつしや)つて御座(ござ)つたが、227こんな結構(けつこう)な玉(たま)が手(て)に入(い)つた以上(いじやう)は、228さぞ御(ご)満足(まんぞく)と思(おも)ひの外(ほか)、229玉公(たまこう)や竜公(たつこう)にお渡(わた)しなさると云(い)ふ其(その)見上(みあ)げたお心(こころ)は、230私(わたし)も感心(かんしん)しましたが、231心機(しんき)一転(いつてん)も余(あんま)り早(はや)いぢやありませぬか』
232高姫(たかひめ)『イヤ早(はや)い所(どころ)ぢや御座(ござ)りませぬ。233妾(わたし)の改心(かいしん)が丁度(ちやうど)十二(じふに)年(ねん)遅(おく)れました。234それが為(ため)に聖地(せいち)の方々(かたがた)に対(たい)し、235いろいろの御(ご)迷惑(めいわく)をかけ、236神業(しんげふ)のお邪魔(じやま)を致(いた)し、237大神(おほかみ)様(さま)に対(たい)しても申訳(まをしわけ)のない御(ご)無礼(ぶれい)計(ばか)りを致(いた)しました。238妾(わたし)の様(やう)な身魂(みたま)の曇(くも)つた神界(しんかい)の邪魔者(じやまもの)を、239神(かみ)様(さま)はお気(き)の長(なが)い、240改心(かいしん)さして使(つか)うてやらうと思召(おぼしめ)して、241能(よ)うマア茲(ここ)まで辛抱(しんばう)して下(くだ)されたと思(おも)へば、242妾(わたし)は勿体(もつたい)なうて、243お詫(わび)の申様(まをしやう)も、244御(お)礼(れい)の致(いた)し様(やう)も分(わか)りませぬ。245是(これ)から妾(わたし)は此(この)櫟(くぬぎ)ケ原(はら)を東(ひがし)へ渡(わた)り、246いろいろと神(かみ)様(さま)の為(ため)に苦労(くらう)を致(いた)し、247今迄(いままで)の深(ふか)い罪(つみ)を除(と)つて貰(もら)ひ、248アマゾン川(がは)を溯(さかのぼ)り、249鷹依姫(たかよりひめ)様(さま)や竜国別(たつくにわけ)様(さま)、250あわよくば、251言依別(ことよりわけ)様(さま)にも面会(めんくわい)し、252今迄(いままで)の深(ふか)い罪(つみ)のお詫(わび)を致(いた)した上(うへ)、253自転倒(おのころ)島(じま)へ帰(かへ)り、254御(ご)神業(しんげふ)の一端(いつたん)に奉仕(ほうし)する妾(わたし)の考(かんが)へ、255……コレ常彦(つねひこ)、256春彦(はるひこ)、257お前(まへ)も妾(わたし)に従(つ)いてこれから先(さき)は真面目(まじめ)に御用(ごよう)を勤(つと)め上(あ)げて下(くだ)されや』
258 常彦(つねひこ)涙(なみだ)を流(なが)しながら、
259常彦(つねひこ)『ハイ有難(ありがた)う、260能(よ)うそこ迄(まで)なつて下(くだ)さいました。261今(いま)になつて白状(はくじやう)致(いた)しますが、262実(じつ)の所(ところ)吾々(われわれ)両人(りやうにん)は杢助(もくすけ)様(さま)の内々(ないない)の御(お)頼(たの)みで、263貴女(あなた)のお供(とも)に参(まゐ)り、264徹底(てつてい)的(てき)に改心(かいしん)をして頂(いただ)かねばならない使命(しめい)を受(う)けて来(き)て居(を)つたので御座(ござ)います。265アヽそれを承(うけたま)はつて、266私(わたくし)も何(なん)となく嬉(うれ)し涙(なみだ)が澪(こぼ)れます。267……なア春彦(はるひこ)、268有難(ありがた)いぢやないか』
269春彦(はるひこ)『ウン有難(ありがた)いなア』
270と云(い)つた限(き)り、271涙(なみだ)を隠(かく)して俯(うつ)むいて居(ゐ)る。
272 これより玉(たま)、273竜(たつ)の両人(りやうにん)は錦(にしき)の袋(ふくろ)に納(をさ)めたる黄金(こがね)の宝玉(ほうぎよく)を高姫(たかひめ)の手(て)より受取(うけと)り、274三(さん)人(にん)に別(わか)れを告(つ)げて、275アリナ山(さん)を越(こ)え、276懸橋(かけはし)の御殿(ごてん)に立帰(たちかへ)り、277教主(けうしゆ)夫婦(ふうふ)を始(はじ)め、278役員(やくゐん)信徒(しんと)の前(まへ)にこれを据(す)ゑ、279御禊(みそぎ)を修(しう)し、280教主(けうしゆ)自(みづか)ら斎主(さいしゆ)となり、281神殿(しんでん)に奉按(ほうあん)する事(こと)となつた。282これより懸橋(かけはし)の御殿(ごてん)の神徳(しんとく)は益々(ますます)四方(よも)に輝(かがや)き、283遂(つひ)には高砂島(たかさごじま)の西半部(せいはんぶ)を風靡(ふうび)する事(こと)となつた。
284 又(また)高姫(たかひめ)は常彦(つねひこ)、285春彦(はるひこ)と共(とも)に、286大蜥蜴(おほとかげ)や蜈蚣(むかで)、287蛇(へび)、288蜂(はち)、289虻(あぶ)などの群(むら)がれる原野(げんや)を越(こ)え、290アルの港(みなと)を指(さ)して進(すす)み、291それより海岸(かいがん)伝(つた)ひに、292便船(びんせん)に乗(じやう)じ、293ゼムの港(みなと)に上陸(じやうりく)し、294又(また)もやチンの港(みなと)よりアマゾン川(がは)の河口(かはぐち)に出(い)でて、295船(ふね)を溯(さかのぼ)らせ、296玉(たま)の森林(しんりん)に進(すす)む事(こと)となつた。297此(この)間(あひだ)の道中(だうちう)の記事(きじ)は別項(べつかう)に述(の)ぶる考(かんが)へであります。
298(大正一一・八・一二 旧六・二〇 松村真澄録)
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