霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第九章 俄(にはか)狂言(きやうげん)〔八三一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第29巻 海洋万里 辰の巻 篇:第2篇 石心放告 よみ(新仮名遣い):せきしんほうこく
章:第9章 俄狂言 よみ(新仮名遣い):にわかきょうげん 通し章番号:831
口述日:1922(大正11)年08月12日(旧06月20日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
国玉依別は、高姫が人事不省に陥ったので、人を呼んで懸橋御殿に運び、玉竜姫と共に何くれと介抱をなした。高姫はようやく正気に復した。
常彦と春彦は高姫に、鏡の池の神様に楯突いて人事不省になったのを、懸橋御殿の奉仕者たちが助けてくれたのだと説明し、神様に反抗しないようにと、また国玉依別と玉竜姫にお礼を言うようにと諭した。
しかし高姫は自分を助けてくれた人たちの前で、理屈をこねて自分が窮地に陥ったことを否定し、いかに日の出神の生き宮が偉大であるかを吹聴した。常彦と春彦はあきれてしまい、国玉依別らに、高姫はのぼせているから気にしないようにと説明した。
高姫は国玉依別に玉を渡すように居丈高に要求した。一同は呆れてしまい、ただ高姫の顔を打ち眺めている。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-12-26 22:27:16 文字数:3930 OBC :rm2909
愛善世界社版:134頁 八幡書店版:第5輯 514頁 修補版: 校定版:135頁 普及版:62頁 初版: ページ備考:
001神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
002善(ぜん)と悪(あく)とを立別(たてわ)ける
003此(この)世(よ)を造(つく)りし神直日(かむなほひ)
004心(こころ)も広(ひろ)き大直日(おほなほひ)
005唯(ただ)何事(なにごと)も人(ひと)の世(よ)は
006直日(なほひ)に見直(みなほ)し聞直(ききなほ)し
007過(あやま)ちあれば宣(の)り直(なほ)す
008三五教(あななひけう)の神(かみ)の道(みち)
009神(かみ)の恵(めぐみ)の大八洲(おほやしま)
010彦(ひこの)命(みこと)の又(また)の御名(みな)
011月照彦(つきてるひこ)の神霊(しんれい)は
012随時(ずいじ)随所(ずいしよ)に現(あら)はれて
013三五教(あななひけう)の神司(かむづかさ)
014信徒(まめひと)等(たち)は云(い)ふも更(さら)
015四方(よも)の民草(たみくさ)悉(ことごと)く
016恵(めぐみ)の露(つゆ)にうるほひつ
017心(こころ)の雲(くも)を吹(ふ)き払(はら)ひ
018晴(は)れ渡(わた)りたる大空(おほぞら)に
019天(あめ)の御柱(みはしら)つき固(かた)め
020掃(は)き浄(きよ)めたる村肝(むらきも)の
021心(こころ)の土(つち)に惟神(かむながら)
022国(くに)の御柱(みはしら)つき固(かた)め
023千代(ちよ)に八千代(やちよ)に神人(しんじん)の
024身魂(みたま)を永遠(とは)に助(たす)けむと
025現(あら)はれますぞ尊(たふと)けれ。
026皇(すめ)大神(おほかみ)の御恵(みめぐ)みも
027アリナの滝(たき)の上流(じやうりう)に
028誠(まこと)を映(うつ)す鏡池(かがみいけ)
029堅磐(かきは)常磐(ときは)の岩窟(がんくつ)に
030神(かみ)の御言(みこと)を蒙(かうむ)りて
031夜(よる)なきヒルの神(かみ)の国(くに)
032テーナの里(さと)の酋長(しうちやう)の
033誠(まこと)アールやアルナ姫(ひめ)
034桃上彦(ももがみひこ)の昔(むかし)より
035三五教(あななひけう)の御教(みをしへ)を
036今(いま)に伝(つた)へて奉(ほう)じたる
037尊(たふと)き血筋(ちすぢ)の酋長(しうちやう)は
038家(いへ)の宝(たから)と大切(たいせつ)に
039親(おや)の代(だい)より守(まも)り居(ゐ)る
040黄金(こがね)の玉(たま)を取出(とりいだ)し
041鏡(かがみ)の池(いけ)に納(をさ)めむと
042数多(あまた)の里人(さとびと)引率(いんそつ)し
043遠(とほ)き山坂(やまさか)打渉(うちわた)り
044心(こころ)も清(きよ)き白旗(しらはた)に
045玉献上(たまけんじやう)と書(か)き記(しる)し
046珍(うづ)の御輿(みこし)を新造(しんざう)し
047黄金(こがね)の玉(たま)を納(をさ)めつつ
048縦笛(たてぶえ)横笛(よこぶえ)吹(ふ)き鳴(な)らし
049天然(てんねん)自然(しぜん)の石(いし)の鉦(かね)
050磬盤(けいばん)法螺貝(ほらがひ)鳴(な)らし立(た)て
051谷(たに)を飛(と)び越(こ)え川(かは)渡(わた)り
052山鳥(やまどり)の尾(を)のしだり尾(を)の
053長々(ながなが)しくもヒルの国(くに)
054テルの国(くに)をば跋渉(ばつせう)し
055漸(やうや)く此処(ここ)に安着(あんちやく)し
056鷹依姫(たかよりひめ)や竜国別(たつくにわけ)の
057神(かみ)の司(つかさ)の目(め)の前(まへ)に
058恭(うやうや)しくも捧(ささ)げつつ
059誠(まこと)か嘘(うそ)か知(し)らね共(ども)
060鷹依姫(たかよりひめ)の神懸(かむがか)り
061仰(あふ)せの儘(まま)を畏(かしこ)みて
062正直(しやうぢき)一途(いちづ)の酋長(しうちやう)は
063国玉依別(くにたまよりわけ)、玉竜姫(たまたつひめ)の
064神(かみ)の命(みこと)と夫婦(ふうふ)連(づれ)
065御名(みな)を賜(たま)はり千丈(せんぢやう)の
066滝(たき)の麓(ふもと)に御禊(みそぎ)して
067一日(ひとひ)一夜(ひとよ)を明(あ)かしつつ
068アリナの滝(たき)を後(あと)にして
069鏡(かがみ)の池(いけ)に往(い)て見(み)れば
070豈(あに)図(はか)らむや鷹依姫(たかよりひめ)の
071神(かみ)の命(みこと)を始(はじ)めとし
072三人(みたり)の司(つかさ)は雲(くも)と消(き)え
073行方(ゆくへ)も白木(しらき)の玉筥(たまばこ)に
074種々(いろいろ)様々(さまざま)神(かみ)の旨(むね)
075書(か)きしるしたる嬉(うれ)しさに
076アール、アルナの両人(りやうにん)は
077草(くさ)の庵(いほり)を永久(とこしへ)の
078住家(すみか)と定(さだ)め池(いけ)の辺(べ)に
079朝(あさ)な夕(ゆふ)なに神言(かみごと)を
080声(こゑ)高(たか)らかに宣(の)りつつも
081四方(よも)の国(くに)より詣(まう)で来(く)る
082善男(ぜんなん)善女(ぜんぢよ)を三五(あななひ)の
083誠(まこと)の道(みち)に導(みちび)きつ
084神(かみ)の御稜威(みいづ)も日(ひ)に月(つき)に
085輝(かがや)き渡(わた)り身(み)を容(い)るる
086所(ところ)なき迄(まで)諸人(もろびと)の
087姿(すがた)埋(うづ)まる谷(たに)の底(そこ)
088是非(ぜひ)なく茲(ここ)に信徒(まめひと)は
089大峡(おほがひ)小峡(こがひ)の木(き)を伐(き)りて
090山(やま)と山(やま)とに架(か)け渡(わた)し
091八尋(やひろ)の殿(との)を築(きづ)きあげ
092黄金(こがね)の玉(たま)を奉斎(ほうさい)し
093国玉依別(くにたまよりわけ)、玉竜姫(たまたつひめ)の
094神(かみ)の司(つかさ)は勇(いさ)み立(た)ち
095懸橋(かけはし)御殿(ごてん)に現(あら)はれて
096教(をしへ)を開(ひら)く折柄(をりから)に
097玉(たま)に心(こころ)を奪(と)られたる
098三五教(あななひけう)の高姫(たかひめ)が
099自転倒(おのころ)嶋(じま)を後(あと)にして
100太平洋(たいへいやう)を打渡(うちわた)り
101テルの湊(みなと)に安着(あんちやく)し
102常彦(つねひこ)、春彦(はるひこ)伴(ともな)ひて
103金剛(こんがう)不壊(ふゑ)の如意(によい)宝珠(ほつしゆ)
104其(その)他(た)の玉(たま)の所在(ありか)をば
105アリナの滝(たき)を目当(めあて)とし
106現(あら)はれ来(きた)り村肝(むらきも)の
107心(こころ)の善悪(よしあし)映(うつ)すてふ
108鏡(かがみ)の池(いけ)の前(まへ)に立(た)ち
109相(あひ)も変(かは)らぬ減(へ)らず口(ぐち)
110傍若(ばうじやく)無人(ぶじん)に罵(ののし)れば
111数千(すうせん)年(ねん)の沈黙(ちんもく)を
112破(やぶ)つて鳴(な)りだす池(いけ)の面(おも)
113ブクブクブクと泡(あわ)だして
114ウンウンウンと唸(うな)り声(ごゑ)
115月照彦(つきてるひこ)の神霊(しんれい)と
116名乗(なの)らせ玉(たま)ひて五十韻(ごじふゐん)
117珍(うづ)の言霊(ことたま)並(なら)べつつ
118高姫(たかひめ)一同(いちどう)を訓戒(くんかい)し
119身魂(みたま)を救(すく)ひ助(たす)けむと
120計(はか)り玉(たま)ひし尊(たふと)さよ
121自負心(じふしん)強(つよ)き高姫(たかひめ)は
122持(も)つて生(うま)れた能弁(のうべん)に
123負(まけ)ず劣(おと)らず五十韻(ごじふゐん)
124アオウエイよりワヲウヱヰ
125只(ただ)一言(ひとこと)も洩(も)らさずに
126一々(いちいち)神(かみ)に口答(くちごた)へ
127月照彦(つきてるひこ)とは詐(いつは)りぞ
128ドン亀(かめ)、鼈(すつぽん)、蟹神(かにがみ)と
129頭(あたま)ごなしにけなしつつ
130言葉(ことば)の鉾(ほこ)を常彦(つねひこ)や
131春彦(はるひこ)の上(うへ)に相転(あひてん)じ
132生宮(いきみや)気取(きど)りで諄々(じゆんじゆん)と
133脱線(だつせん)だらけの託宣(たくせん)を
134まくし立(た)つれば池中(いけなか)の
135声(こゑ)は益々(ますます)高(たか)くなり
136大地(だいち)の震動(しんどう)恐(おそ)ろしく
137流石(さすが)頑固(ぐわんこ)の高姫(たかひめ)も
138色(いろ)青(あを)ざめて慴伏(せふふく)し
139歯(は)をかみしめて黒血(くろち)をば
140吐(は)きつつ爰(ここ)に平伏(へいふく)し
141次第(しだい)々々(しだい)に息(いき)の根(ね)は
142細(ほそ)りて遂(つひ)に玉(たま)の緒(を)の
143生命(いのち)の糸(いと)も細(ほそ)り行(ゆ)く。
144あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
145善悪(ぜんあく)邪正(じやせい)を明(あきら)かに
146心(こころ)に映(うつ)す鏡池(かがみいけ)
147底(そこ)ひも知(し)れぬ神界(しんかい)の
148深(ふか)き心(こころ)ぞ尊(たふ)とけれ
149あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
150御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ。
151 懸橋(かけはし)御殿(ごてん)の神前(しんぜん)に朝(あさ)な夕(ゆふ)なに奉仕(ほうし)する三五教(あななひけう)の神司(かむづかさ)、152テーナの里(さと)の酋長(しうちやう)アール、153アルナの夫婦(ふうふ)は、154月照彦(つきてるひこの)神(かみ)より、155国玉依別(くにたまよりわけの)命(みこと)、156玉竜姫(たまたつひめの)命(みこと)と名(な)を賜(たま)ひ、157朝(あさ)な夕(ゆふ)なに真心(まごころ)を籠(こ)めて、158教(をしへ)を伝(つた)へつつありしが、159茲(ここ)に三五教(あななひけう)の高姫(たかひめ)が鏡(かがみ)の池(いけ)に現(あら)はれて、160堆(うづたか)く供(そな)へ奉(まつ)れる諸々(もろもろ)の玉(たま)を持帰(もちかへ)らむとするを、161鏡(かがみ)の池(いけ)及(およ)び狭依彦(さよりひこ)の宮(みや)に仕(つか)へたる国(くに)と玉(たま)との神主(かむぬし)は驚(おどろ)いて、162懸橋(かけはし)御殿(ごてん)に急報(きふはう)し、163教主(けうしゆ)夫婦(ふうふ)と諸共(もろとも)に此(この)場(ば)に現(あら)はれ、164高姫(たかひめ)一行(いつかう)に向(むか)ひ、165来意(らいい)を尋(たづ)ぬる折(をり)しも、166傲慢(ごうまん)不遜(ふそん)の高姫(たかひめ)は、167鏡(かがみ)の池(いけ)の神霊(しんれい)が威力(ゐりよく)に打(う)たれて打倒(うちたふ)れ、168殆(ほとん)ど人事(じんじ)不省(ふせい)となりければ、169国(くに)、170玉(たま)、171竜(たつ)、172別(わけ)などの神司(かむづかさ)と共(とも)に、173常彦(つねひこ)、174春彦(はるひこ)を伴(ともな)ひ、175懸橋(かけはし)御殿(ごてん)に担(かつ)ぎ入(い)れ、176水(みづ)よ薬(くすり)よと介抱(かいほう)をなし、177天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し、178一(ひと)二(ふた)三(み)四(よ)五(いつ)六(むゆ)七(なな)八(や)九(ここの)十(たり)の神示(しんじ)の反魂歌(はんこんか)を奏上(そうじやう)し、179漸(やうや)くにして高姫(たかひめ)は正気(しやうき)に復(かへ)り、180稍(やや)安心(あんしん)の胸(むね)を撫(な)で下(を)ろしたり。
181因(ちなみ)に云(い)ふ。182アール、183アルナの夫婦(ふうふ)は其(その)実(じつ)、184鷹依姫(たかよりひめ)、185竜国別(たつくにわけ)の故意(こい)を以(もつ)て、186月照彦(つきてるひこ)の神示(しんじ)と偽(いつは)り、187国玉依別(くにたまよりわけ)、188玉竜姫(たまたつひめ)の名(な)を与(あた)へたれ共(ども)、189やはり惟神(かむながら)の摂理(せつり)に依(よ)つて神(かみ)より斯(かく)の如(ごと)く行(おこな)はしめられたるものにして、190決(けつ)して鷹依姫(たかよりひめ)、191竜国別(たつくにわけ)の悪戯(いたづら)にあらず、192全(まつた)く神意(しんい)に依(よ)りて、193両人(りやうにん)は夫婦(ふうふ)に神命(しんめい)[※校定版・八幡版では「神名」に直している。]を与(あた)へた事(こと)と、194神界(しんかい)より見(み)れば確(たし)かになつて居(ゐ)るのである。
195 高姫(たかひめ)はキヨロキヨロと四辺(あたり)を見(み)まはし、196木(き)の香(か)かをれる新(あたら)しき殿内(でんない)に吾身(わがみ)のある事(こと)を訝(いぶ)かり、197首(くび)を切(しき)りに振(ふ)り乍(なが)ら、198元来(ぐわんらい)の負惜(まけをし)み強(つよ)き性質(せいしつ)とて……ここは何処(いづこ)ぞ……と問(と)ひ尋(たづ)ぬる事(こと)を恥(はぢ)の様(やう)に思(おも)ひ、199荐(しき)りに考(かんが)へ込(こ)んで居(ゐ)る。200常彦(つねひこ)、201春彦(はるひこ)は高姫(たかひめ)の左右(さゆう)に寄(よ)り添(そ)ひ、
202常彦、春彦『モシ高姫(たかひめ)さま、203お気(き)が付(つ)きましたか。204余(あま)り貴女(あなた)は自我(じが)を立通(たてとほ)しなさるものだから、205とうとう池(いけ)の神(かみ)様(さま)に戒(いまし)められ、206人事(じんじ)不省(ふせい)に陥(おちい)り、207殆(ほとん)ど息(いき)の根(ね)も絶(た)えむとする所(ところ)、208御(ご)親切(しんせつ)にも、209此(この)御殿(ごてん)の主人(あるじ)、210国玉依別(くにたまよりわけ)様(さま)、211玉竜姫(たまたつひめ)様(さま)の御(ご)介抱(かいほう)と御(ご)祈念(きねん)に依(よ)り、212生命(いのち)を助(たす)けてお貰(もら)ひなされたのですから、213サア早(はや)く神(かみ)様(さま)と、214お二人(ふたり)に御(お)礼(れい)を申(まを)しなさいませ』
215高姫(たかひめ)『妾(わたし)がいつ……人事(じんじ)不省(ふせい)などと、216汚(けが)らはしい、217死(し)にかけました。218そんな屁泥(へどろ)い高姫(たかひめ)ぢや御座(ござ)いませぬぞえ。219お前(まへ)は神界(しんかい)の事(こと)が分(わか)らぬから、220日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)が、221池(いけ)の底(そこ)の神(かみ)の正体(しやうたい)を審神(さには)する為(ため)、222肉(にく)の宮(みや)を一寸(ちよつと)立出(たちい)で、223幽界(いうかい)探険(たんけん)に往(い)て居(を)つたのですよ。224それだから、225心(こころ)の盲(めくら)と云(い)ふのですよ。226ヘン……阿呆(あはう)らしい。227神(かみ)の生宮(いきみや)は万劫(まんがふ)末代(まつだい)生(い)き通(とほ)し、228アタ汚(けが)らはしい、229人事(じんじ)不省(ふせい)に陥(おちい)つたなどと、230お前(まへ)等(ら)と同(おな)じように人間(にんげん)扱(あつか)ひをして貰(もら)ふと、231チツと困(こま)りますぞえ。232コレコレお前(まへ)は国依別(くによりわけ)、233玉治別(たまはるわけ)、234竜国別(たつくにわけ)と云(い)つたぢやないか。235何時(いつ)の間(ま)にやらこんな所(ところ)へ魁(さきがけ)してやつて来(き)て、236世間(せけん)をごまかさうと思(おも)つて、237国(くに)と玉(たま)とが一(ひと)つになつて国玉依別(くにたまよりわけ)だとか、238玉竜姫(たまたつひめ)だのと、239そんなカラクリをしたつて駄目(だめ)です。240キツとそんな名前(なまへ)がついてる以上(いじやう)は、241此(この)館(やかた)に国(くに)、242玉(たま)、243竜(たつ)の宣伝使(せんでんし)が潜(ひそ)んでるに違(ちがひ)ない。244又(また)言依別(ことよりわけ)も隠(かく)れて居(を)るだらう。245モウ斯(こ)うなつたら百年目(ひやくねんめ)だ。246サア女(をんな)の一心(いつしん)岩(いは)でも通(とほ)す。247金剛(こんがう)不壊(ふゑ)の如意(によい)宝珠(ほつしゆ)其(その)他(た)の神宝(しんぱう)を撿(あらた)めて、248自転倒(おのころ)嶋(じま)の聖地(せいち)へ持(も)つて帰(かへ)らねばおきませぬぞえ。249コレコレ国玉依別(くにたまよりわけ)とやら、250お前(まへ)は国(くに)や玉(たま)や竜(たつ)の、251蔭(かげ)から糸(いと)を引(ひ)く操(あやつ)り人形(にんぎやう)だらう。252そんなこたア、253チヤンと、254此(この)高姫(たかひめ)の黒(くろ)い眼(め)で睨(にら)んだら一分(いちぶ)一厘(いちりん)間違(まちが)ひはありませぬぞや。255ここに三五教(あななひけう)の神館(かむやかた)を、256お前(まへ)さま等(ら)が寄(よ)つて集(たか)つて建(た)てたやうに思(おも)つて居(ゐ)るが、257国治立(くにはるたちの)命(みこと)の御(お)指図(さしづ)で、258日(ひ)の出神(でのかみ)が片腕(かたうで)となり、259竜宮(りうぐう)さまの御(お)手伝(てつだひ)ひで出来上(できあが)つたのですよ。260日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)だからチヤンと分(わか)つてる。261ここの神司(かむづかさ)はそれが分(わか)つて居(ゐ)ますかな』
262常彦(つねひこ)『ナント徹底(てつてい)的(てき)にどしぶとい婆(ばば)だなア、263これ丈(だけ)お世話(せわ)になつておき乍(なが)らヨーモ ヨーモ、264こんな憎(にく)たれ口(ぐち)が叩(たた)けたものだ。265喃(のう)春彦(はるひこ)、266穴(あな)でもあつたらモグリ込(こ)みたいやうな気(き)がするぢやないか』
267春彦(はるひこ)『開(あ)いた口(くち)がすぼまりませぬワイ』
268と云(い)つた限(き)り、269余(あま)りの事(こと)に呆(あき)れ果(は)ててポカンとしてゐる。
270常彦(つねひこ)『イヤもうし、271国玉依別(くにたまよりわけ)御(ご)夫婦(ふうふ)様(さま)、272かくの通(とほ)りの没分暁漢(わからずや)で御座(ござ)いますから、273自転倒(おのころ)嶋(じま)の聖地(せいち)に於(おい)ても、274皆(みな)の者(もの)が腫物(はれもの)にさはるやうに取扱(とりあつか)つて居(を)るので御座(ござ)います。275吾々(われわれ)だつてこんな腫物(はれもの)に従(つ)いて来(き)たい事(こと)は御座(ござ)いませぬが、276気違(きちがひ)を一人(ひとり)おつ放(ぱな)しておきますと、277どんな事(こと)を致(いた)すやら分(わか)りませぬ。278虎(とら)を野(の)に放(はな)つやうな危険(きけん)で御座(ござ)いますから、279吾々(われわれ)両人(りやうにん)は世界(せかい)の為(ため)に犠牲(ぎせい)となつて、280精神(せいしん)病者(びやうしや)看護人(かんごにん)の積(つも)りで、281はるばるとやつて参(まゐ)りました。282何(いづ)れ癲狂院(てんきやうゐん)代物(しろもの)ですから、283必(かなら)ず必(かなら)ず御(お)心(こころ)にさえて下(くだ)さいますな。284何卒(なにとぞ)神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)に見直(みなほ)し聞直(ききなほ)し下(くだ)さいまして、285高姫(たかひめ)の無礼(ぶれい)をお赦(ゆる)し下(くだ)さいませ』
286と気(き)の毒(どく)さうに述(の)べ立(た)てる。287国玉依別(くにたまよりわけ)は、
288国玉依別『実(じつ)にお気(き)の毒(どく)ですなア。289決(けつ)して決(けつ)して気(き)にはかけて居(を)りませぬ。290あなた方(がた)こそ、291本当(ほんたう)に御(ご)苦労(くらう)お察(さつ)し申(まを)します』
292高姫(たかひめ)『コレ常(つね)、293天教山(てんけうざん)より現(あ)れませる日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)を、294天教山(てんけうざん)代物(しろもの)とは何(なん)だい。295余(あんま)り無礼(ぶれい)ぢやないか。296宣(の)り直(なほ)しなさい』
297常彦(つねひこ)『癲狂院(てんきやうゐん)に現(あ)れませる、298鼻高姫(はなたかひめの)命(みこと)か、299天教山(てんけうざん)に現(あら)はれませる木(こ)の花姫(はなひめの)神(かみ)のお使(つかい)、300日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)様(さま)か、301但(ただし)は二世(にせ)か三代(さんだい)か、302男(をとこ)か女(をんな)か、303凡夫(ぼんぷ)の吾々(われわれ)にはテンと判断(はんだん)が付(つ)きませぬワイ。304アハヽヽヽ』
305高姫(たかひめ)『アヽさうだらうさうだらう。306テンと判断(はんだん)がつかぬと云(い)ふのは道理(だうり)ぢや。307偽(いつは)らざるお前(まへ)の告白(こくはく)だ。308此(この)日(ひ)の出神(でのかみ)の正体(しやうたい)が、309お前(まへ)達(たち)に分(わか)るやうな事(こと)なら、310此(この)高姫(たかひめ)も万里(ばんり)の波(なみ)を越(こ)えて、311こんな所(ところ)迄(まで)来(き)は致(いた)しませぬわいな。312お前(まへ)のやうな没分暁漢(わからずや)が世界(せかい)にウヨウヨして居(ゐ)るから、313実地(じつち)の行(おこな)ひを見(み)せて改心(かいしん)させる為(ため)に神(かみ)の御用(ごよう)で来(き)て居(ゐ)るのだぞえ。314サアこれから肝腎要(かんじんかなめ)の言依別(ことよりわけ)の盗(ぬす)み出(だ)した宝玉(ほうぎよく)を受取(うけと)つて帰(かへ)りませう。315お前(まへ)もここ迄(まで)従(つ)いて来(き)たのだから、316玉(たま)のお供(とも)位(くらい)はさしてあげるぞえ。317有難(ありがた)く思(おも)ひなさい。318……コレコレ茲(ここ)の宮番(みやばん)夫婦(ふうふ)、319早(はや)く玉(たま)を渡(わた)す手続(てつづき)を一刻(いつこく)も早(はや)くしなされや。320グヅグヅしてゐなさると、321神界(しんかい)の規則(きそく)に照(てら)し、322根(ね)の国(くに)底(そこ)の国(くに)の制敗(せいばい)[*御校正本のママ]に会(あ)はさねばなりませぬぞえ』
323 国玉依別(くにたまよりわけ)は藪(やぶ)から棒(ぼう)の高姫(たかひめ)の言葉(ことば)に何(なに)が何(なに)やら合点(がつてん)行(ゆ)かず、
324国玉依別『ヘー』
325と云(い)つたきり、326穴(あな)のあく程(ほど)、327高姫(たかひめ)の顔(かほ)を打(うち)守(まも)つて居(ゐ)る。328国(くに)、329玉(たま)、330竜(たつ)、331別(わけ)、332依(より)の幹部(かんぶ)を始(はじ)め、333常彦(つねひこ)、334春彦(はるひこ)迄(まで)が高姫(たかひめ)の顔(かほ)をジツと打眺(うちなが)め舌(した)を巻(ま)き居(ゐ)たりける。
335(大正一一・八・一二 旧六・二〇 松村真澄録)
336(昭和一〇・六・八 王仁校正)
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