霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一四章 (をんな)(ちから)〔一三七七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第53巻 真善美愛 辰の巻 篇:第2篇 貞烈亀鑑 よみ(新仮名遣い):ていれつきかん
章:第14章 女の力 よみ(新仮名遣い):おんなのちから 通し章番号:1377
口述日:1923(大正12)年02月13日(旧12月28日) 口述場所:教主殿 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月8日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
久米彦は、最初はカルナ姫がヒルナ姫の侍女ということで劣ったように思って鬼春別と争ったが、こういう経緯があって二人で自室に戻って話してみると、カルナ姫はどう劣っているようにも見えず、魅力のとりことなってしまった。
カルナ姫は久米彦を口説いて、平和の世を作るためのバラモン軍なら、戦が収まった以上は、捕虜にしたビク国の王や重臣たちを解放するべきだと吹き込んだ。
久米彦はカルナ姫の容色と弁舌に巻き込まれて、何事もカルナ姫の言とあれば利害得失を考えずに喜んで聴き従うようになってしまっていた。久米彦は、鬼春別にかけあって捕虜を解放することを約束した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5314
愛善世界社版:157頁 八幡書店版:第9輯 561頁 修補版: 校定版:163頁 普及版:79頁 初版: ページ備考:
001 久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)は、002不性(ふしよう)不精(ぶしよう)ながらもカルナ(ひめ)(わが)事務室(じむしつ)引入(ひきい)れ、003葡萄酒(ぶだうしゆ)()して(たがひ)につぎ(かは)し、004軍旅(ぐんりよ)()さを(なぐさ)めて()る。005(すべ)陣中(ぢんちう)(をんな)(かげ)()きをもつて、006如何(いか)なるお多福(かめ)(いへど)も、007(をんな)()へば軍人(ぐんじん)(のど)()らし、008唯一(ゆゐいつ)慰安(ゐあん)として尊重(そんちよう)するものである。009久米彦(くめひこ)はヒルナ(ひめ)見較(みくら)べてこのカルナがどこともなく(おと)つて()るやうに(おも)ひ、010(なん)だか鬼春別(おにはるわけ)(ひけ)()つたやうな心持(こころもち)がして、011(をんな)争奪(さうだつ)抜剣(ばつけん)(まで)して大騒(おほさわ)ぎをやつて()たが、012事務室(じむしつ)(かへ)つて()二人(ふたり)差向(さしむか)ひ、013(たがひ)意見(いけん)(かた)()つて()ると、014贔屓(ひいき)()らねども(べつ)にヒルナ(ひめ)何処(どこ)(ひと)(おと)つたやうにも()えない、015(いな)(かへつ)(やさし)みがあり品格(ひんかく)(そな)はり、016どこともなく(すぐ)れて()るやうに(おも)はれて()た。017久米彦(くめひこ)(うつつ)になつて(あな)のあく(ほど)カルナの(やさ)しき(かほ)凝視(みつ)笑壺(ゑつぼ)()つて()る。
018カルナ(ひめ)『もし将軍(しやうぐん)(さま)019不思議(ふしぎ)御縁(ごえん)貴方(あなた)のお(そば)にお(つか)へするようになりましたのは、020(まつた)(かみ)(さま)のお()(あは)せで(ござ)いませうねえ』
021久米彦(くめひこ)『ウン、022さうだなア、023(まへ)のやうな(あい)らしいナイスとこんな関係(くわんけい)になるとは、024(さすが)(おれ)(ゆめ)にも(おも)はなかつたよ。025(じつ)にお(まへ)平和(へいわ)女神(めがみ)だ、026唯一(ゆゐいつ)慰安者(ゐあんしや)だ。027否々(いないな)唯一(ゆゐいつ)救世主(きうせいしゆ)だ。028益良雄(ますらを)(こころ)()かし(かがや)かし、029英雄(えいゆう)をして益々(ますます)英雄(えいゆう)ならしむるものは、030矢張(やつぱり)女性(ぢよせい)(ちから)だ』
031カルナ(ひめ)(なん)()つても(をんな)()(よわ)いもので(ござ)います。032どうしても(をとこ)には隷属(れいぞく)すべきものですなア。033何程(なにほど)恋愛(れんあい)神聖論(しんせいろん)をまくし()てて()つても、034(をとこ)(ちから)にはやつぱり(をんな)一歩(いつぽ)(ゆづ)らなくてはなりませぬわ。035(しか)(なが)(をんな)男子(だんし)服従(ふくじゆう)すべきものだと()つても程度(ていど)問題(もんだい)(ござ)いまして、036理想(りさう)()はない(をとこ)()ふのは生涯(しやうがい)不幸(ふかう)(ござ)いますからな、037どうかして自分(じぶん)意志(いし)とピツタリ()つた(をとこ)()ひたいものと、038現代(げんだい)(をんな)(こぞ)つて希望(きばう)(いた)して()ります』
039久米彦(くめひこ)如何(いか)にも其方(そなた)()(とほ)りだ。040(をとこ)のデヴアイン・イドムは(をんな)のデヴアイン・ラブに和合(わがふ)し、041(をんな)聖愛(せいあい)(をとこ)聖智(せいち)和合(わがふ)した夫婦(ふうふ)でなければ、042(しん)夫婦(ふうふ)とは()へないものだ』
043カルナ(ひめ)左様(さやう)(ござ)います。044意志(いし)投合(とうがふ)した夫婦(ふうふ)(くらゐ)()(なか)愉快(ゆくわい)なものは(ござ)いませぬなア。045(とき)将軍(しやうぐん)(さま)戦争(せんそう)がお()きで(ござ)いますか』
046久米彦(くめひこ)『イヤ戦争(せんそう)(ごと)殺伐(さつばつ)なものは(こころ)(そこ)から()かないのだ』
047カルナ(ひめ)『それならお(たづ)(いた)しますが、048将軍(しやうぐん)(さま)何故(なぜ)(こころ)にない軍人(ぐんじん)におなり(あそ)ばしたので(ござ)います。049(その)(てん)(わらは)には(ちつ)とも合点(がてん)(まゐ)りませぬわ』
050久米彦(くめひこ)『イヤ(じつ)拙者(せつしや)もバラモン(けう)宣伝(せんでん)将軍(しやうぐん)で、051(かみ)仁慈(じんじ)(をしへ)()くものだ。052(この)(たび)大黒主(おほくろぬし)(さま)命令(めいれい)によつて、053()むを()出陣(しゆつぢん)(いた)したのだ。054(じつ)軍人(ぐんじん)なんぞはつまらないものだよ』
055カルナ(ひめ)貴方(あなた)(いま)宣伝使(せんでんし)だつたと(おほ)せられましたねえ』
056久米彦(くめひこ)『ウン(その)(とほ)りだ』
057カルナ(ひめ)『それなら貴方(あなた)(ひと)(たす)けるのをもつて唯一(ゆゐいつ)天職(てんしよく)(あそ)ばすのでせうねえ』
058久米彦(くめひこ)『それや(その)(とほ)りだ。059()うして戦争(せんそう)(いた)すのも(けつ)して(たみ)(くる)しむるためではない、060天国(てんごく)浄土(じやうど)地上(ちじやう)建設(けんせつ)せむためだ』
061カルナ(ひめ)『それでも貴方(あなた)(ひき)ゆる軍隊(ぐんたい)民家(みんか)()(ひと)殺戮(さつりく)し、062ビクトリヤ(じやう)(まで)(ほろぼ)し、063(わう)(さま)(とりこ)となさつたではありませぬか。064ミロクの()建設(けんせつ)する(どころ)か、065(わらは)(あさ)(かんが)へより()れば貴方(あなた)破壊者(はくわいしや)としか()えませぬがなア』
066久米彦(くめひこ)『アハハハ、067建設(けんせつ)のための破壊(はくわい)だ。068破壊(はくわい)のための破壊(はくわい)ではない。069そこをよく(かんが)へねば英雄(えいゆう)心事(しんじ)(わか)らないよ』
070カルナ(ひめ)貴方(あなた)のお言葉(ことば)(はた)して(しん)ならば、071ビクトリヤ(じやう)一旦(いつたん)破壊(はくわい)されたる(うへ)(また)建設(けんせつ)なさるのでせうなア』
072久米彦(くめひこ)(もつと)もだ、073直様(すぐさま)建設(けんせつ)(こころ)み、074国民(こくみん)塗炭(とたん)(くる)しみより(すく)ひ、075至治(しち)泰平(たいへい)()()たす(かんが)へだ』
076カルナ(ひめ)『そんなら貴方(あなた)は、077ビクトリヤ(じやう)刹帝利(せつていり)従臣(じうしん)などを捕虜(ほりよ)になさつたさうですが、078(たたか)ひが(をさ)まつた以上(いじやう)屹度(きつと)解放(かいはう)なさるでせうなア』
079久米彦(くめひこ)勿論(もちろん)(こと)だ。080(しか)(なが)刹帝利(せつていり)(その)(ほか)従臣(じゆうしん)()かして()けば、081(また)もや何時(いつ)復讐戦(ふくしうせん)(いた)すやら()れないから、082()(どく)(なが)(わう)遠島(ゑんたう)(おく)るか、083末代(まつだい)牢獄(らうごく)()()むか(いた)さねばなるまい、084これも天下(てんか)万民(ばんみん)(ため)だ』
085 カルナ(ひめ)はハツと(おどろ)いたやうな()りをしてウン仰向(あふむ)けに(たふ)れて仕舞(しま)つた。086久米彦(くめひこ)(おどろ)いて()(おこ)(かほ)(みづ)(そそ)いだり、087耳許(みみもと)(くち)をよせて、088オーイ オーイと()びかけて()る。089カルナ(ひめ)故意(わざ)(いき)()まつて()るやうな(ふり)(よそほ)ひ、090(しばら)くして()(ひら)四辺(あたり)をキヨロキヨロ見廻(みまは)(なが)ら、
091カルナ(ひめ)『アア(えら)(ゆめ)()()りました。092貴方(あなた)久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)(さま)093ようマア無事(ぶじ)()(くだ)さいました。094(わらは)本当(ほんたう)(こは)(ゆめ)()たのですよ』
095 久米彦(くめひこ)はこの言葉(ことば)(なん)だか()にかかり、096言葉(ことば)()はしくカルナに(むか)ひ、
097久米彦(くめひこ)『ああカルナ(ひめ)098(まへ)気絶(きぜつ)して()たのだよ。099まアまア結構(けつこう)々々(けつこう)100(しか)(なが)(こは)(ゆめ)()たとはどんな(ゆめ)だつた、101(ひと)()かして()れないか』
102カルナ(ひめ)『ハイ、103申上(まをしあ)()きは山々(やまやま)なれど、104(ゆめ)(こと)(ござ)いますから、105()(わる)くしてはなりませぬから、106これ(ばか)りは申上(まをしあ)げますまい』
107久米彦(くめひこ)『これカルナ(ひめ)108さうじらすものではない。109(なん)でも(かま)はないから()つて()よ』
110カルナ(ひめ)『キツトお()にさへて(くだ)さいますなや、111(ゆめ)(ござ)いますからな』
112久米彦(くめひこ)『エエどうしてどうして(ゆめ)なんかを()にさへるやうな馬鹿(ばか)があるか、113(はや)()つて()よ』
114カルナ(ひめ)『そんなら申上(まをしあ)げます、115(わらは)気絶(きぜつ)(いた)しましてから随分(ずいぶん)時間(じかん)()つたでせうなア』
116久米彦(くめひこ)(なに)117(いま)(まへ)卒倒(そつたう)したので直様(すぐさま)118(みづ)をかけて介抱(かいほう)したのだ。119()二分(にぶん)(さん)分間(ぷんかん)(くらゐ)のものだよ』
120カルナ(ひめ)『そんな道理(だうり)(ござ)いますまい、121(わらは)(すくな)くとも、122五六(ごろく)時間(じかん)はかかつたやうに(おも)ひます』
123久米彦(くめひこ)『それやお(まへ)124気絶(きぜつ)してお(まへ)精霊(せいれい)霊界(れいかい)()つたのだらう。125霊界(れいかい)想念(さうねん)世界(せかい)だから、126延長(えんちやう)作用(さよう)によつて五六(ごろく)時間(じかん)だつたと(おも)うたのだらう。127実際(じつさい)二三(にさん)分間(ぷんかん)だ。128サア(はや)()つて()やれ』
129カルナ(ひめ)(わらは)何処(どこ)ともなく雑草(ざつさう)原野(げんや)(ただ)一人(ひとり)トボトボ(まゐ)りました。130さうすると(あめ)八衢(やちまた)()関所(せきしよ)(ござ)いまして、131そこには(しろ)(かほ)をした守衛(しゆゑい)と、132(あか)(かほ)をした守衛(しゆゑい)とが厳然(げんぜん)として()(ひか)らして()りました。133そこへ不思議(ふしぎ)(こと)には鬼春別(おにはるわけ)(さま)134貴方(あなた)(さま)()両人(りやうにん)軍服(ぐんぷく)(いか)めしくお()しになり、135八衢(やちまた)(もん)(くぐ)らうとなさつた(とき)に、136(あか)守衛(しゆゑい)は「(しばら)()て」と呼止(よびと)めました。137さうすると両将軍(りやうしやうぐん)()()まり、138拙者(せつしや)はバラモン(ぐん)統率者(とうそつしや)139鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)だ、140久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)だ」と、141(それ)(それ)(えら)元気(げんき)(おほ)せになりました。142さうする(うち)牛頭(ごづ)馬頭(めづ)沢山(たくさん)冥官(めいくわん)(あら)はれ(きた)り、143貴方(あなた)(がた)高手(たかて)小手(こて)(いまし)一々(いちいち)罪悪(ざいあく)調(しらべ)(いた)しました。144(わらは)(その)(そば)(ふる)(ふる)()いて()ると、145()貴方(あなた)(さま)から訊問(じんもん)(はじ)まりました。146貴方(あなた)随分(ずいぶん)(をんな)(もてあそ)びなさいましたなア。147さうして斎苑(いそ)(やかた)進軍(しんぐん)なさつた(こと)や、148ビクトリヤ(わう)軍隊(ぐんたい)()けて捕虜(ほりよ)となし(くるし)めたことや、149数多(あまた)従臣(じゆうしん)(しば)()(くる)しめた(こと)や、150民家(みんか)()き、151()(ひと)(ころ)しなさつた(こと)調(しら)()げられましたよ。152貴方(あなた)一々(いちいち)(その)(とほ)りで(ござ)います」と、153大地(だいち)(かしら)()()()つて()られました。154(おそ)ろしい(かほ)をした冥官(めいくわん)は、155(ふし)だらけの(むち)をもつて頭部(とうぶ)156面部(めんぶ)157臀部(でんぶ)(きら)ひなく、158()()ゑます、159貴方(あなた)は、160悲鳴(ひめい)をあげて(さけ)んで()られます。161それはそれは(なん)とも()はれない惨酷(むごたらし)()()はされて()ましたよ。162それから(はかり)にかけられ、163(いよいよ)地獄行(ぢごくゆき)(きま)つた(とき)貴方(あなた)失望(しつばう)したお(かほ)164(わたし)()るも()()(どく)(ぞん)じました。165さうすると(しろ)守衛(しゆゑい)(なか)(はい)つて、166「この(をとこ)(いま)(まで)罪悪(ざいあく)(おか)して()たけれど、167肉体(にくたい)はまだ現界(げんかい)()るのだから、168(いま)地獄(ぢごく)(おと)(わけ)には()かぬ。169命数(めいすう)つきて霊界(れいかい)()るまで()つがよい」との(こと)(ござ)いました。170そこで貴方(あなた)非常(ひじやう)冥官(めいかん)(むか)つてお(わび)なさいました。171そして(その)条件(でうけん)は「ビクトリヤ(わう)をお(たす)(まを)し、172(その)()従臣(じゆうしん)解放(かいはう)し、173刹帝利(せつていり)(さま)(もと)王位(わうゐ)()ゑ、174自分(じぶん)はビクトリヤ(わう)忠良(ちうりやう)なる臣下(しんか)として(つか)へますから」と仰有(おつしや)いましたら、175冥官(めいくわん)(たちま)(かほ)(やはら)げ、176(なんぢ)(はた)して改心(かいしん)(いた)すならば、177今度(こんど)()(とき)地獄往(ぢごくゆ)きを(ゆる)して、178(はな)()(みの)天国(てんごく)(つか)はす(ほど)に、179もしこの(やく)(そむ)いたならば(つるぎ)地獄(ぢごく)(おと)すぞよ」と、180(それ)(それ)(きび)しい()(わた)しで(ござ)いました。181(わたし)()()もあられぬ(おも)ひで(ふる)(をのの)いて()ると、182どこともなしに貴方(あなた)(こゑ)(とほ)(とほ)(はう)から(きこ)えて()たと(おも)つたら()()めました。183やつぱり(ゆめ)(ござ)いました。184(なん)不思議(ふしぎ)(ゆめ)では(ござ)いませぬか』
185久米彦(くめひこ)(なん)不思議(ふしぎ)(こと)()ふぢやないか、186自分(じぶん)精霊(せいれい)何時(いつ)()にか八衢(やちまた)()つて()たと()える。187いやそれが事実(じじつ)かも()れない、188(こま)つた(こと)ぢやなア』
189カルナ(ひめ)『どうぞ()にして(くだ)さいますな、190(ゆめ)(こと)(ござ)いますからな、191(しか)しあんな(こと)本当(ほんたう)なら最愛(さいあい)(をつと)()(うへ)192(かな)しい(こと)(ござ)います』
193()(そで)()差俯向(さしうつむ)いて()()した。194久米彦(くめひこ)双手(もろて)()(ふか)(いき)()らし思案(しあん)()れて()る。195カルナは心中(しんちう)()()ましたりと(よろこ)びながら()あらぬ(てい)に、
196カルナ(ひめ)『もし将軍(しやうぐん)(さま)197貴方(あなた)大層(たいそう)(かほ)(いろ)(わる)くなつたぢや(ござ)いませぬか、198(わらは)(ゆめ)(なか)()たお(かほ)とそつくりで(ござ)います。199仕様(しやう)もない(ゆめ)(こと)申上(まをしあげ)まして、200()気分(きぶん)(わる)くしてどうも相済(あひす)みませぬ。201(ゆる)(くだ)さいませ』
202(また)もや泣声(なきごゑ)になる。
203久米彦(くめひこ)『イヤ(おれ)(ちつ)(かんが)へなくちやならぬ。204(まへ)(ゆめ)はきつと正夢(まさゆめ)だ。205あまり(いきほひ)(じやう)じて、206部下(ぶか)(やつ)(あま)乱暴(らんばう)をやり()ぎたと()える。207(しか)部下(ぶか)罪悪(ざいあく)将軍(しやうぐん)責任(せきにん)だ。208(つみ)将軍(しやうぐん)()はねばならぬ。209(こま)つた(こと)ぢやなア』
210 カルナはどこ(まで)()()くつもりで、
211カルナ(ひめ)『もし将軍(しやうぐん)(さま)212貴方(あなた)堂々(だうだう)たる三軍(さんぐん)指揮者(しきしや)213かやうな夢問題(ゆめもんだい)()心配(しんぱい)なさるには(およ)びますまい、214将軍(しやうぐん)職責(しよくせき)として(ある)場合(ばあひ)には民家(みんか)()き、215(ひと)(ころ)し、216(しろ)(ほふ)るのは()むを()ないぢや(ござ)いませぬか。217こんな(こと)心配(しんぱい)しておいでなさつては、218将軍(しやうぐん)として役目(やくめ)(つと)まりますまい』
219久米彦(くめひこ)『お(まへ)(ゆめ)()てから(にはか)鼻息(はないき)(あら)くなつたぢやないか、220(めう)だなア。221(おれ)はお(まへ)(はなし)()いて(にはか)未来(みらい)(おそ)ろしくなつた。222これや(ひと)(かんが)へねばなるまい、223(しか)(なが)(わが)(あたま)(うへ)には鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)(ひか)へて()る。224何程(なにほど)久米彦(くめひこ)(ぜん)()ちかへり、225刹帝利(せつていり)(たす)けむと(いた)しても、226上官(じやうくわん)(くび)(よこ)()つたが最後(さいご)227到底(たうてい)駄目(だめ)だ。228ああ()くに()かれぬ板挟(いたばさ)みとなつた。229どうしたら(この)解決(かいけつ)がつくだらうかなア』
230(また)もや思案(しあん)(しづ)む。
231カルナ(ひめ)貴方(あなた)さう()心配(しんぱい)には(およ)ばぬぢや(ござ)いませぬか、232()決心(けつしん)さへ()まればその(くらゐ)(こと)(なん)でも(ござ)いますまい。233鬼春別(おにはるわけ)(さま)(わらは)主人(しゆじん)(つま)()つて()られますから、234(わらは)よりヒルナ(さま)申上(まをしあ)げ、235ヒルナ(さま)より将軍(しやうぐん)(さま)申上(まをしあ)げるようにすれば、236比較(ひかく)(てき)この問題(もんだい)解決(かいけつ)(はや)いでせう。237それより(ほか)方法(はうはふ)(ござ)いますまいなア』
238心配(しんぱい)さうに故意(わざ)(くび)(かたむ)ける。
239久米彦(くめひこ)(さすが)はカルナ(ひめ)だ。240よい(ところ)()がついた。241そんならこの問題(もんだい)其方(そなた)一任(いちにん)する(こと)にしようかなア。242(しか)(なが)拙者(せつしや)鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)何処(どこ)ともなしに意志(いし)疎隔(そかく)して()最中(さいちう)だから、243何程(なにほど)ヒルナ(さま)諫言(かんげん)(いへど)容易(ようい)()くまい。244ああ心配(しんぱい)(こと)出来(でき)()たものだなア』
245 カルナは久米彦(くめひこ)(かほ)()て、246(やや)(うれ)()打笑(うちわら)ひ、
247カルナ(ひめ)『アア貴方(あなた)のお(かほ)(にはか)(かがや)いて()ました。248(なん)とまアよいお(かほ)だこと、249やつぱり貴方(あなた)(みたま)(ひかり)(あらは)れて()たので(ござ)いますなア。250人間(にんげん)(かほ)(こころ)索引(さくいん)だと()ひますから、251(こころ)悪心(あくしん)あれば悪相(あくさう)(しやう)じ、252善心(ぜんしん)あれば、253善美(ぜんび)(さう)(げん)ずるものだと()きましたが、254(いま)貴方(あなた)のお(かほ)変相(へんさう)によつて、255的確(てきかく)聖哲(せいてつ)言葉(ことば)認識(にんしき)(いた)しました。256ああ益々(ますます)(うるは)しきお(かほ)になられますよ。257ああどうして(わらは)はかかる(たふと)(うつく)しい(をつと)()うたのだらうか、258盤古(ばんこ)神王(しんのう)(さま)259大自在天(だいじざいてん)(さま)260有難(ありがた)(ぞん)じます。261何卒(なにとぞ)(わらは)()夫婦(ふうふ)貴神(あなた)(しづ)まります高天原(たかあまはら)に、262霊肉(れいにく)(とも)にお(たす)(くだ)さいまして、263現世(げんせ)未来(みらい)も、264久米彦(くめひこ)(さま)(むつま)じく(くら)せますやう(ひとへ)にお(ねが)申上(まをしあ)げます』
265(まこと)しやかに祈願(きぐわん)する。266久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)はすつかりカルナ(ひめ)容色(ようしよく)弁舌(べんぜつ)巻込(まきこ)まれ、267最早(もはや)何事(なにごと)もカルナ(ひめ)(げん)とあれば、268利害(りがい)得失(とくしつ)(かんが)へず、269正邪(せいじや)区別(くべつ)(わきま)へず、270(よろこ)んで聴従(ちやうじう)するやうになつて()た。271(じつ)(をんな)魔力(まりよく)()ふものは(おそ)るべきものである。272武骨(ぶこつ)一片(いつぺん)のバラモンの名将軍(めいしやうぐん)も、273美人(びじん)一瞥(いちべつ)()つては(じつ)一耐(ひとたま)りもなく(まゐ)つて仕舞(しま)うたのである。274ああ男子(だんし)たるものは(こころ)(ひそ)めて、275(をんな)注意(ちうい)せなくてはならぬものである。276(をんな)(ぞく)魔物(まもの)()ふ、277金城(きんじやう)鉄壁(てつぺき)をただ片頬(かたほほ)(ゑくぼ)(くつが)へし、278(やなぎ)(まゆ)279(すず)(まなこ)田畑(たはた)()み、280家倉(いへくら)()()ばし、281(をとこ)(いのち)()り、282さしもに威儀(ゐぎ)堂々(だうだう)たる将軍(しやうぐん)(はじ)め、283数千(すうせん)軍隊(ぐんたい)必死(ひつし)努力(どりよく)も、284容易(ようい)にメチヤメチヤに(こは)すものである。285()青年(せいねん)諸氏(しよし)よ、286敬愛(けいあい)なる大本(おほもと)信徒(しんと)よ、287(この)物語(ものがたり)()んでよく(かへり)み、288虚偽(きよぎ)(てき)恋愛(れんあい)身心(しんしん)(とろ)かし、289一生(いつしやう)(あやま)(こと)なきやう注意(ちうい)されむ(こと)(のぞ)次第(しだい)である。290ああ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
291大正一二・二・一三 旧一一・一二・二八 於教主殿 加藤明子録)
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