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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第53巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 毘丘取颪
第1章 春菜草
第2章 蜉蝣
第3章 軟文学
第4章 蜜語
第5章 愛縁
第6章 気縁
第7章 比翼
第8章 連理
第9章 蛙の腸
第2篇 貞烈亀鑑
第10章 女丈夫
第11章 艶兵
第12章 鬼の恋
第13章 醜嵐
第14章 女の力
第15章 白熱化
第3篇 兵権執着
第16章 暗示
第17章 奉還状
第18章 八当狸
第19章 刺客
第4篇 神愛遍満
第20章 背進
第21章 軍議
第22章 天祐
第23章 純潔
余白歌
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真善美愛(第49~60巻)
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第53巻(辰の巻)
> 第2篇 貞烈亀鑑 > 第14章 女の力
<<< 醜嵐
(B)
(N)
白熱化 >>>
第一四章
女
(
をんな
)
の
力
(
ちから
)
〔一三七七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第53巻 真善美愛 辰の巻
篇:
第2篇 貞烈亀鑑
よみ(新仮名遣い):
ていれつきかん
章:
第14章 女の力
よみ(新仮名遣い):
おんなのちから
通し章番号:
1377
口述日:
1923(大正12)年02月13日(旧12月28日)
口述場所:
教主殿
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年3月8日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
久米彦は、最初はカルナ姫がヒルナ姫の侍女ということで劣ったように思って鬼春別と争ったが、こういう経緯があって二人で自室に戻って話してみると、カルナ姫はどう劣っているようにも見えず、魅力のとりことなってしまった。
カルナ姫は久米彦を口説いて、平和の世を作るためのバラモン軍なら、戦が収まった以上は、捕虜にしたビク国の王や重臣たちを解放するべきだと吹き込んだ。
久米彦はカルナ姫の容色と弁舌に巻き込まれて、何事もカルナ姫の言とあれば利害得失を考えずに喜んで聴き従うようになってしまっていた。久米彦は、鬼春別にかけあって捕虜を解放することを約束した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm5314
愛善世界社版:
157頁
八幡書店版:
第9輯 561頁
修補版:
校定版:
163頁
普及版:
79頁
初版:
ページ備考:
001
久米彦
(
くめひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
は、
002
不性
(
ふしよう
)
不精
(
ぶしよう
)
ながらもカルナ
姫
(
ひめ
)
を
吾
(
わが
)
事務室
(
じむしつ
)
に
引入
(
ひきい
)
れ、
003
葡萄酒
(
ぶだうしゆ
)
を
出
(
だ
)
して
互
(
たがひ
)
につぎ
交
(
かは
)
し、
004
軍旅
(
ぐんりよ
)
の
憂
(
う
)
さを
慰
(
なぐさ
)
めて
居
(
ゐ
)
る。
005
総
(
すべ
)
て
陣中
(
ぢんちう
)
は
女
(
をんな
)
の
影
(
かげ
)
無
(
な
)
きをもつて、
006
如何
(
いか
)
なるお
多福
(
かめ
)
と
雖
(
いへど
)
も、
007
女
(
をんな
)
と
云
(
い
)
へば
軍人
(
ぐんじん
)
は
喉
(
のど
)
を
鳴
(
な
)
らし、
008
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
慰安
(
ゐあん
)
として
尊重
(
そんちよう
)
するものである。
009
久米彦
(
くめひこ
)
はヒルナ
姫
(
ひめ
)
と
見較
(
みくら
)
べてこのカルナがどこともなく
劣
(
おと
)
つて
居
(
を
)
るやうに
思
(
おも
)
ひ、
010
何
(
なん
)
だか
鬼春別
(
おにはるわけ
)
に
負
(
ひけ
)
を
取
(
と
)
つたやうな
心持
(
こころもち
)
がして、
011
女
(
をんな
)
の
争奪
(
さうだつ
)
に
抜剣
(
ばつけん
)
迄
(
まで
)
して
大騒
(
おほさわ
)
ぎをやつて
居
(
ゐ
)
たが、
012
事務室
(
じむしつ
)
に
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
て
二人
(
ふたり
)
差向
(
さしむか
)
ひ、
013
互
(
たがひ
)
に
意見
(
いけん
)
を
語
(
かた
)
り
合
(
あ
)
つて
見
(
み
)
ると、
014
贔屓
(
ひいき
)
か
知
(
し
)
らねども
別
(
べつ
)
にヒルナ
姫
(
ひめ
)
と
何処
(
どこ
)
が
一
(
ひと
)
つ
劣
(
おと
)
つたやうにも
見
(
み
)
えない、
015
否
(
いな
)
却
(
かへつ
)
て
優
(
やさし
)
みがあり
品格
(
ひんかく
)
が
備
(
そな
)
はり、
016
どこともなく
優
(
すぐ
)
れて
居
(
ゐ
)
るやうに
思
(
おも
)
はれて
来
(
き
)
た。
017
久米彦
(
くめひこ
)
は
現
(
うつつ
)
になつて
穴
(
あな
)
のあく
程
(
ほど
)
カルナの
優
(
やさ
)
しき
顔
(
かほ
)
を
凝視
(
みつ
)
め
笑壺
(
ゑつぼ
)
に
入
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
018
カルナ
姫
(
ひめ
)
『もし
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
、
019
不思議
(
ふしぎ
)
な
御縁
(
ごえん
)
で
貴方
(
あなた
)
のお
傍
(
そば
)
にお
仕
(
つか
)
へするようになりましたのは、
020
全
(
まつた
)
く
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
引
(
ひ
)
き
合
(
あは
)
せで
厶
(
ござ
)
いませうねえ』
021
久米彦
(
くめひこ
)
『ウン、
022
さうだなア、
023
お
前
(
まへ
)
のやうな
愛
(
あい
)
らしいナイスとこんな
関係
(
くわんけい
)
になるとは、
024
遉
(
さすが
)
の
俺
(
おれ
)
も
夢
(
ゆめ
)
にも
思
(
おも
)
はなかつたよ。
025
実
(
じつ
)
にお
前
(
まへ
)
は
平和
(
へいわ
)
の
女神
(
めがみ
)
だ、
026
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
慰安者
(
ゐあんしや
)
だ。
027
否々
(
いないな
)
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
だ。
028
益良雄
(
ますらを
)
の
心
(
こころ
)
を
生
(
い
)
かし
輝
(
かがや
)
かし、
029
英雄
(
えいゆう
)
をして
益々
(
ますます
)
英雄
(
えいゆう
)
ならしむるものは、
030
矢張
(
やつぱり
)
女性
(
ぢよせい
)
の
力
(
ちから
)
だ』
031
カルナ
姫
(
ひめ
)
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
女
(
をんな
)
は
気
(
き
)
の
弱
(
よわ
)
いもので
厶
(
ござ
)
います。
032
どうしても
男
(
をとこ
)
には
隷属
(
れいぞく
)
すべきものですなア。
033
何程
(
なにほど
)
恋愛
(
れんあい
)
神聖論
(
しんせいろん
)
をまくし
立
(
た
)
てて
居
(
を
)
つても、
034
男
(
をとこ
)
の
力
(
ちから
)
にはやつぱり
女
(
をんな
)
は
一歩
(
いつぽ
)
を
譲
(
ゆづ
)
らなくてはなりませぬわ。
035
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
女
(
をんな
)
は
男子
(
だんし
)
に
服従
(
ふくじゆう
)
すべきものだと
云
(
い
)
つても
程度
(
ていど
)
の
問題
(
もんだい
)
で
厶
(
ござ
)
いまして、
036
理想
(
りさう
)
の
合
(
あ
)
はない
男
(
をとこ
)
に
添
(
そ
)
ふのは
生涯
(
しやうがい
)
の
不幸
(
ふかう
)
で
厶
(
ござ
)
いますからな、
037
どうかして
自分
(
じぶん
)
の
意志
(
いし
)
とピツタリ
合
(
あ
)
つた
男
(
をとこ
)
と
添
(
そ
)
ひたいものと、
038
現代
(
げんだい
)
の
女
(
をんな
)
は
挙
(
こぞ
)
つて
希望
(
きばう
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ります』
039
久米彦
(
くめひこ
)
『
如何
(
いか
)
にも
其方
(
そなた
)
の
云
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
りだ。
040
男
(
をとこ
)
のデヴアイン・イドムは
女
(
をんな
)
のデヴアイン・ラブに
和合
(
わがふ
)
し、
041
女
(
をんな
)
の
聖愛
(
せいあい
)
は
男
(
をとこ
)
の
聖智
(
せいち
)
と
和合
(
わがふ
)
した
夫婦
(
ふうふ
)
でなければ、
042
真
(
しん
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
とは
云
(
い
)
へないものだ』
043
カルナ
姫
(
ひめ
)
『
左様
(
さやう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
044
意志
(
いし
)
投合
(
とうがふ
)
した
夫婦
(
ふうふ
)
位
(
くらゐ
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
愉快
(
ゆくわい
)
なものは
厶
(
ござ
)
いませぬなア。
045
時
(
とき
)
に
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
は
戦争
(
せんそう
)
がお
好
(
す
)
きで
厶
(
ござ
)
いますか』
046
久米彦
(
くめひこ
)
『イヤ
戦争
(
せんそう
)
の
如
(
ごと
)
き
殺伐
(
さつばつ
)
なものは
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
から
好
(
す
)
かないのだ』
047
カルナ
姫
(
ひめ
)
『それならお
尋
(
たづ
)
ね
致
(
いた
)
しますが、
048
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
は
何故
(
なぜ
)
心
(
こころ
)
にない
軍人
(
ぐんじん
)
におなり
遊
(
あそ
)
ばしたので
厶
(
ござ
)
います。
049
其
(
その
)
点
(
てん
)
が
妾
(
わらは
)
には
些
(
ちつ
)
とも
合点
(
がてん
)
が
参
(
まゐ
)
りませぬわ』
050
久米彦
(
くめひこ
)
『イヤ
実
(
じつ
)
は
拙者
(
せつしや
)
もバラモン
教
(
けう
)
の
宣伝
(
せんでん
)
将軍
(
しやうぐん
)
で、
051
神
(
かみ
)
の
仁慈
(
じんじ
)
の
教
(
をしへ
)
を
説
(
と
)
くものだ。
052
此
(
この
)
度
(
たび
)
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
の
命令
(
めいれい
)
によつて、
053
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
出陣
(
しゆつぢん
)
致
(
いた
)
したのだ。
054
実
(
じつ
)
に
軍人
(
ぐんじん
)
なんぞはつまらないものだよ』
055
カルナ
姫
(
ひめ
)
『
貴方
(
あなた
)
は
今
(
いま
)
宣伝使
(
せんでんし
)
だつたと
仰
(
おほ
)
せられましたねえ』
056
久米彦
(
くめひこ
)
『ウン
其
(
その
)
通
(
とほ
)
りだ』
057
カルナ
姫
(
ひめ
)
『それなら
貴方
(
あなた
)
は
人
(
ひと
)
を
助
(
たす
)
けるのをもつて
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
天職
(
てんしよく
)
と
遊
(
あそ
)
ばすのでせうねえ』
058
久米彦
(
くめひこ
)
『それや
其
(
その
)
通
(
とほ
)
りだ。
059
斯
(
か
)
うして
戦争
(
せんそう
)
を
致
(
いた
)
すのも
決
(
けつ
)
して
民
(
たみ
)
を
苦
(
くる
)
しむるためではない、
060
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
を
地上
(
ちじやう
)
に
建設
(
けんせつ
)
せむためだ』
061
カルナ
姫
(
ひめ
)
『それでも
貴方
(
あなた
)
の
率
(
ひき
)
ゆる
軍隊
(
ぐんたい
)
は
民家
(
みんか
)
を
焼
(
や
)
き
人
(
ひと
)
を
殺戮
(
さつりく
)
し、
062
ビクトリヤ
城
(
じやう
)
迄
(
まで
)
も
滅
(
ほろぼ
)
し、
063
王
(
わう
)
様
(
さま
)
を
虜
(
とりこ
)
となさつたではありませぬか。
064
ミロクの
世
(
よ
)
を
建設
(
けんせつ
)
する
所
(
どころ
)
か、
065
妾
(
わらは
)
の
浅
(
あさ
)
き
考
(
かんが
)
へより
見
(
み
)
れば
貴方
(
あなた
)
は
破壊者
(
はくわいしや
)
としか
見
(
み
)
えませぬがなア』
066
久米彦
(
くめひこ
)
『アハハハ、
067
建設
(
けんせつ
)
のための
破壊
(
はくわい
)
だ。
068
破壊
(
はくわい
)
のための
破壊
(
はくわい
)
ではない。
069
そこをよく
考
(
かんが
)
へねば
英雄
(
えいゆう
)
の
心事
(
しんじ
)
は
分
(
わか
)
らないよ』
070
カルナ
姫
(
ひめ
)
『
貴方
(
あなた
)
のお
言葉
(
ことば
)
が
果
(
はた
)
して
真
(
しん
)
ならば、
071
ビクトリヤ
城
(
じやう
)
を
一旦
(
いつたん
)
破壊
(
はくわい
)
されたる
上
(
うへ
)
は
又
(
また
)
建設
(
けんせつ
)
なさるのでせうなア』
072
久米彦
(
くめひこ
)
『
尤
(
もつと
)
もだ、
073
直様
(
すぐさま
)
建設
(
けんせつ
)
を
試
(
こころ
)
み、
074
国民
(
こくみん
)
を
塗炭
(
とたん
)
の
苦
(
くる
)
しみより
救
(
すく
)
ひ、
075
至治
(
しち
)
泰平
(
たいへい
)
の
世
(
よ
)
を
来
(
き
)
たす
考
(
かんが
)
へだ』
076
カルナ
姫
(
ひめ
)
『そんなら
貴方
(
あなた
)
は、
077
ビクトリヤ
城
(
じやう
)
の
刹帝利
(
せつていり
)
や
従臣
(
じうしん
)
などを
捕虜
(
ほりよ
)
になさつたさうですが、
078
戦
(
たたか
)
ひが
治
(
をさ
)
まつた
以上
(
いじやう
)
は
屹度
(
きつと
)
解放
(
かいはう
)
なさるでせうなア』
079
久米彦
(
くめひこ
)
『
勿論
(
もちろん
)
の
事
(
こと
)
だ。
080
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
刹帝利
(
せつていり
)
其
(
その
)
他
(
ほか
)
の
従臣
(
じゆうしん
)
を
生
(
い
)
かして
置
(
お
)
けば、
081
又
(
また
)
もや
何時
(
いつ
)
復讐戦
(
ふくしうせん
)
を
致
(
いた
)
すやら
知
(
し
)
れないから、
082
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
乍
(
なが
)
ら
王
(
わう
)
を
遠島
(
ゑんたう
)
に
送
(
おく
)
るか、
083
末代
(
まつだい
)
牢獄
(
らうごく
)
に
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
むか
致
(
いた
)
さねばなるまい、
084
これも
天下
(
てんか
)
万民
(
ばんみん
)
の
為
(
ため
)
だ』
085
カルナ
姫
(
ひめ
)
はハツと
驚
(
おどろ
)
いたやうな
振
(
ふ
)
りをして
ウン
と
仰向
(
あふむ
)
けに
倒
(
たふ
)
れて
仕舞
(
しま
)
つた。
086
久米彦
(
くめひこ
)
は
驚
(
おどろ
)
いて
抱
(
だ
)
き
起
(
おこ
)
し
顔
(
かほ
)
に
水
(
みづ
)
を
注
(
そそ
)
いだり、
087
耳許
(
みみもと
)
に
口
(
くち
)
をよせて、
088
オーイ オーイと
呼
(
よ
)
びかけて
居
(
ゐ
)
る。
089
カルナ
姫
(
ひめ
)
は
故意
(
わざ
)
と
息
(
いき
)
の
止
(
と
)
まつて
居
(
ゐ
)
るやうな
振
(
ふり
)
を
装
(
よそほ
)
ひ、
090
暫
(
しばら
)
くして
目
(
め
)
を
開
(
ひら
)
き
四辺
(
あたり
)
をキヨロキヨロ
見廻
(
みまは
)
し
乍
(
なが
)
ら、
091
カルナ
姫
(
ひめ
)
『アア
偉
(
えら
)
い
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
て
居
(
を
)
りました。
092
貴方
(
あなた
)
は
久米彦
(
くめひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
、
093
ようマア
無事
(
ぶじ
)
で
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さいました。
094
妾
(
わらは
)
は
本当
(
ほんたう
)
に
怖
(
こは
)
い
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
たのですよ』
095
久米彦
(
くめひこ
)
はこの
言葉
(
ことば
)
が
何
(
なん
)
だか
気
(
き
)
にかかり、
096
言葉
(
ことば
)
急
(
せ
)
はしくカルナに
向
(
むか
)
ひ、
097
久米彦
(
くめひこ
)
『ああカルナ
姫
(
ひめ
)
、
098
お
前
(
まへ
)
は
気絶
(
きぜつ
)
して
居
(
ゐ
)
たのだよ。
099
まアまア
結構
(
けつこう
)
々々
(
けつこう
)
、
100
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
怖
(
こは
)
い
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
たとはどんな
夢
(
ゆめ
)
だつた、
101
一
(
ひと
)
つ
聞
(
き
)
かして
呉
(
く
)
れないか』
102
カルナ
姫
(
ひめ
)
『ハイ、
103
申上
(
まをしあ
)
げ
度
(
た
)
きは
山々
(
やまやま
)
なれど、
104
夢
(
ゆめ
)
の
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
105
お
気
(
き
)
を
悪
(
わる
)
くしてはなりませぬから、
106
これ
計
(
ばか
)
りは
申上
(
まをしあ
)
げますまい』
107
久米彦
(
くめひこ
)
『これカルナ
姫
(
ひめ
)
、
108
さうじらすものではない。
109
何
(
なん
)
でも
構
(
かま
)
はないから
云
(
い
)
つて
見
(
み
)
よ』
110
カルナ
姫
(
ひめ
)
『キツトお
気
(
き
)
にさへて
下
(
くだ
)
さいますなや、
111
夢
(
ゆめ
)
で
厶
(
ござ
)
いますからな』
112
久米彦
(
くめひこ
)
『エエどうしてどうして
夢
(
ゆめ
)
なんかを
気
(
き
)
にさへるやうな
馬鹿
(
ばか
)
があるか、
113
早
(
はや
)
く
云
(
い
)
つて
見
(
み
)
よ』
114
カルナ
姫
(
ひめ
)
『そんなら
申上
(
まをしあ
)
げます、
115
妾
(
わらは
)
が
気絶
(
きぜつ
)
致
(
いた
)
しましてから
随分
(
ずいぶん
)
時間
(
じかん
)
が
経
(
た
)
つたでせうなア』
116
久米彦
(
くめひこ
)
『
何
(
なに
)
、
117
今
(
いま
)
お
前
(
まへ
)
が
卒倒
(
そつたう
)
したので
直様
(
すぐさま
)
、
118
水
(
みづ
)
をかけて
介抱
(
かいほう
)
したのだ。
119
先
(
ま
)
づ
二分
(
にぶん
)
か
三
(
さん
)
分間
(
ぷんかん
)
位
(
くらゐ
)
のものだよ』
120
カルナ
姫
(
ひめ
)
『そんな
道理
(
だうり
)
は
厶
(
ござ
)
いますまい、
121
妾
(
わらは
)
は
少
(
すくな
)
くとも、
122
五六
(
ごろく
)
時間
(
じかん
)
はかかつたやうに
思
(
おも
)
ひます』
123
久米彦
(
くめひこ
)
『それやお
前
(
まへ
)
、
124
気絶
(
きぜつ
)
してお
前
(
まへ
)
の
精霊
(
せいれい
)
が
霊界
(
れいかい
)
に
行
(
い
)
つたのだらう。
125
霊界
(
れいかい
)
は
想念
(
さうねん
)
の
世界
(
せかい
)
だから、
126
延長
(
えんちやう
)
の
作用
(
さよう
)
によつて
五六
(
ごろく
)
時間
(
じかん
)
だつたと
思
(
おも
)
うたのだらう。
127
実際
(
じつさい
)
は
二三
(
にさん
)
分間
(
ぷんかん
)
だ。
128
サア
早
(
はや
)
う
云
(
い
)
つて
見
(
み
)
やれ』
129
カルナ
姫
(
ひめ
)
『
妾
(
わらは
)
は
何処
(
どこ
)
ともなく
雑草
(
ざつさう
)
の
原野
(
げんや
)
を
唯
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
トボトボ
参
(
まゐ
)
りました。
130
さうすると
天
(
あめ
)
の
八衢
(
やちまた
)
と
云
(
い
)
ふ
関所
(
せきしよ
)
が
厶
(
ござ
)
いまして、
131
そこには
白
(
しろ
)
い
顔
(
かほ
)
をした
守衛
(
しゆゑい
)
と、
132
赤
(
あか
)
い
顔
(
かほ
)
をした
守衛
(
しゆゑい
)
とが
厳然
(
げんぜん
)
として
目
(
め
)
を
光
(
ひか
)
らして
居
(
を
)
りました。
133
そこへ
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
には
鬼春別
(
おにはるわけ
)
様
(
さま
)
、
134
貴方
(
あなた
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
が
軍服
(
ぐんぷく
)
厳
(
いか
)
めしくお
越
(
こ
)
しになり、
135
八衢
(
やちまた
)
の
門
(
もん
)
を
潜
(
くぐ
)
らうとなさつた
時
(
とき
)
に、
136
赤
(
あか
)
の
守衛
(
しゆゑい
)
は「
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
て」と
呼止
(
よびと
)
めました。
137
さうすると
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
は
立
(
た
)
ち
止
(
ど
)
まり、
138
「
拙者
(
せつしや
)
はバラモン
軍
(
ぐん
)
の
統率者
(
とうそつしや
)
、
139
鬼春別
(
おにはるわけ
)
将軍
(
しやうぐん
)
だ、
140
久米彦
(
くめひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
だ」と、
141
夫
(
それ
)
は
夫
(
それ
)
は
偉
(
えら
)
い
元気
(
げんき
)
で
仰
(
おほ
)
せになりました。
142
さうする
中
(
うち
)
に
牛頭
(
ごづ
)
馬頭
(
めづ
)
の
沢山
(
たくさん
)
の
冥官
(
めいくわん
)
が
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
143
貴方
(
あなた
)
方
(
がた
)
を
高手
(
たかて
)
小手
(
こて
)
に
縛
(
いまし
)
め
一々
(
いちいち
)
罪悪
(
ざいあく
)
の
調
(
しらべ
)
を
致
(
いた
)
しました。
144
妾
(
わらは
)
は
其
(
その
)
傍
(
そば
)
で
慄
(
ふる
)
ひ
慄
(
ふる
)
ひ
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
ると、
145
先
(
ま
)
づ
貴方
(
あなた
)
様
(
さま
)
から
訊問
(
じんもん
)
が
始
(
はじ
)
まりました。
146
貴方
(
あなた
)
も
随分
(
ずいぶん
)
女
(
をんな
)
を
弄
(
もてあそ
)
びなさいましたなア。
147
さうして
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
へ
進軍
(
しんぐん
)
なさつた
事
(
こと
)
や、
148
ビクトリヤ
王
(
わう
)
を
軍隊
(
ぐんたい
)
を
向
(
む
)
けて
捕虜
(
ほりよ
)
となし
苦
(
くるし
)
めたことや、
149
数多
(
あまた
)
の
従臣
(
じゆうしん
)
を
縛
(
しば
)
り
上
(
あ
)
げ
苦
(
くる
)
しめた
事
(
こと
)
や、
150
民家
(
みんか
)
を
焼
(
や
)
き、
151
且
(
か
)
つ
人
(
ひと
)
を
殺
(
ころ
)
しなさつた
事
(
こと
)
が
調
(
しら
)
べ
上
(
あ
)
げられましたよ。
152
貴方
(
あなた
)
は
一々
(
いちいち
)
「
其
(
その
)
通
(
とほ
)
りで
厶
(
ござ
)
います」と、
153
大地
(
だいち
)
に
頭
(
かしら
)
を
下
(
さ
)
げ
詫
(
わ
)
び
入
(
い
)
つて
居
(
を
)
られました。
154
怖
(
おそ
)
ろしい
顔
(
かほ
)
をした
冥官
(
めいくわん
)
は、
155
節
(
ふし
)
だらけの
鞭
(
むち
)
をもつて
頭部
(
とうぶ
)
、
156
面部
(
めんぶ
)
、
157
臀部
(
でんぶ
)
の
嫌
(
きら
)
ひなく、
158
打
(
う
)
ち
据
(
す
)
ゑます、
159
貴方
(
あなた
)
は、
160
悲鳴
(
ひめい
)
をあげて
叫
(
さけ
)
んで
居
(
を
)
られます。
161
それはそれは
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
はれない
惨酷
(
むごたらし
)
い
目
(
め
)
に
遇
(
あ
)
はされて
居
(
ゐ
)
ましたよ。
162
それから
衡
(
はかり
)
にかけられ、
163
愈
(
いよいよ
)
地獄行
(
ぢごくゆき
)
と
定
(
きま
)
つた
時
(
とき
)
の
貴方
(
あなた
)
の
失望
(
しつばう
)
したお
顔
(
かほ
)
、
164
私
(
わたし
)
は
見
(
み
)
るも
御
(
お
)
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
に
存
(
ぞん
)
じました。
165
さうすると
白
(
しろ
)
の
守衛
(
しゆゑい
)
が
仲
(
なか
)
に
入
(
はい
)
つて、
166
「この
男
(
をとこ
)
は
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
罪悪
(
ざいあく
)
を
犯
(
おか
)
して
来
(
き
)
たけれど、
167
肉体
(
にくたい
)
はまだ
現界
(
げんかい
)
に
居
(
ゐ
)
るのだから、
168
今
(
いま
)
地獄
(
ぢごく
)
に
堕
(
おと
)
す
訳
(
わけ
)
には
往
(
ゆ
)
かぬ。
169
命数
(
めいすう
)
つきて
霊界
(
れいかい
)
に
来
(
く
)
るまで
待
(
ま
)
つがよい」との
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いました。
170
そこで
貴方
(
あなた
)
は
非常
(
ひじやう
)
に
冥官
(
めいかん
)
に
向
(
むか
)
つてお
詫
(
わび
)
なさいました。
171
そして
其
(
その
)
条件
(
でうけん
)
は「ビクトリヤ
王
(
わう
)
をお
助
(
たす
)
け
申
(
まを
)
し、
172
其
(
その
)
他
(
た
)
の
従臣
(
じゆうしん
)
を
解放
(
かいはう
)
し、
173
刹帝利
(
せつていり
)
様
(
さま
)
を
元
(
もと
)
の
王位
(
わうゐ
)
に
据
(
す
)
ゑ、
174
自分
(
じぶん
)
はビクトリヤ
王
(
わう
)
の
忠良
(
ちうりやう
)
なる
臣下
(
しんか
)
として
仕
(
つか
)
へますから」と
仰有
(
おつしや
)
いましたら、
175
冥官
(
めいくわん
)
は
忽
(
たちま
)
ち
顔
(
かほ
)
を
柔
(
やはら
)
げ、
176
「
汝
(
なんぢ
)
果
(
はた
)
して
改心
(
かいしん
)
致
(
いた
)
すならば、
177
今度
(
こんど
)
来
(
く
)
る
時
(
とき
)
地獄往
(
ぢごくゆ
)
きを
赦
(
ゆる
)
して、
178
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
き
実
(
みの
)
る
天国
(
てんごく
)
に
遣
(
つか
)
はす
程
(
ほど
)
に、
179
もしこの
約
(
やく
)
に
背
(
そむ
)
いたならば
剣
(
つるぎ
)
の
地獄
(
ぢごく
)
に
落
(
おと
)
すぞよ」と、
180
夫
(
それ
)
は
夫
(
それ
)
は
厳
(
きび
)
しい
云
(
い
)
ひ
渡
(
わた
)
しで
厶
(
ござ
)
いました。
181
私
(
わたし
)
は
身
(
み
)
も
世
(
よ
)
もあられぬ
思
(
おも
)
ひで
慄
(
ふる
)
ひ
戦
(
をのの
)
いて
居
(
ゐ
)
ると、
182
どこともなしに
貴方
(
あなた
)
の
声
(
こゑ
)
が
遠
(
とほ
)
い
遠
(
とほ
)
い
方
(
はう
)
から
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
たと
思
(
おも
)
つたら
目
(
め
)
が
醒
(
さ
)
めました。
183
やつぱり
夢
(
ゆめ
)
で
厶
(
ござ
)
いました。
184
何
(
なん
)
と
不思議
(
ふしぎ
)
な
夢
(
ゆめ
)
では
厶
(
ござ
)
いませぬか』
185
久米彦
(
くめひこ
)
『
何
(
なん
)
と
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふぢやないか、
186
自分
(
じぶん
)
の
精霊
(
せいれい
)
は
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
八衢
(
やちまた
)
に
往
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
たと
見
(
み
)
える。
187
いやそれが
事実
(
じじつ
)
かも
知
(
し
)
れない、
188
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
ぢやなア』
189
カルナ
姫
(
ひめ
)
『どうぞ
気
(
き
)
にして
下
(
くだ
)
さいますな、
190
夢
(
ゆめ
)
の
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いますからな、
191
併
(
しか
)
しあんな
事
(
こと
)
が
本当
(
ほんたう
)
なら
最愛
(
さいあい
)
の
夫
(
をつと
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
、
192
悲
(
かな
)
しい
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
います』
193
と
目
(
め
)
に
袖
(
そで
)
を
当
(
あ
)
て
差俯向
(
さしうつむ
)
いて
泣
(
な
)
き
出
(
だ
)
した。
194
久米彦
(
くめひこ
)
は
双手
(
もろて
)
を
組
(
く
)
み
深
(
ふか
)
い
息
(
いき
)
を
洩
(
も
)
らし
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
れて
居
(
ゐ
)
る。
195
カルナは
心中
(
しんちう
)
に
仕
(
し
)
済
(
す
)
ましたりと
喜
(
よろこ
)
びながら
左
(
さ
)
あらぬ
態
(
てい
)
に、
196
カルナ
姫
(
ひめ
)
『もし
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
、
197
貴方
(
あなた
)
は
大層
(
たいそう
)
お
顔
(
かほ
)
の
色
(
いろ
)
が
悪
(
わる
)
くなつたぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか、
198
妾
(
わらは
)
の
夢
(
ゆめ
)
の
中
(
なか
)
で
見
(
み
)
たお
顔
(
かほ
)
とそつくりで
厶
(
ござ
)
います。
199
仕様
(
しやう
)
もない
夢
(
ゆめ
)
の
事
(
こと
)
を
申上
(
まをしあげ
)
まして、
200
御
(
ご
)
気分
(
きぶん
)
を
悪
(
わる
)
くしてどうも
相済
(
あひす
)
みませぬ。
201
お
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
202
と
又
(
また
)
もや
泣声
(
なきごゑ
)
になる。
203
久米彦
(
くめひこ
)
『イヤ
俺
(
おれ
)
も
些
(
ちつ
)
と
考
(
かんが
)
へなくちやならぬ。
204
お
前
(
まへ
)
の
夢
(
ゆめ
)
はきつと
正夢
(
まさゆめ
)
だ。
205
あまり
勢
(
いきほひ
)
に
乗
(
じやう
)
じて、
206
部下
(
ぶか
)
の
奴
(
やつ
)
が
余
(
あま
)
り
乱暴
(
らんばう
)
をやり
過
(
す
)
ぎたと
見
(
み
)
える。
207
併
(
しか
)
し
部下
(
ぶか
)
の
罪悪
(
ざいあく
)
は
将軍
(
しやうぐん
)
の
責任
(
せきにん
)
だ。
208
罪
(
つみ
)
は
将軍
(
しやうぐん
)
が
負
(
お
)
はねばならぬ。
209
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
ぢやなア』
210
カルナはどこ
迄
(
まで
)
も
気
(
き
)
を
引
(
ひ
)
くつもりで、
211
カルナ
姫
(
ひめ
)
『もし
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
、
212
貴方
(
あなた
)
は
堂々
(
だうだう
)
たる
三軍
(
さんぐん
)
の
指揮者
(
しきしや
)
、
213
かやうな
夢問題
(
ゆめもんだい
)
に
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさるには
及
(
およ
)
びますまい、
214
将軍
(
しやうぐん
)
は
職責
(
しよくせき
)
として
或
(
ある
)
場合
(
ばあひ
)
には
民家
(
みんか
)
を
焼
(
や
)
き、
215
人
(
ひと
)
を
殺
(
ころ
)
し、
216
城
(
しろ
)
を
屠
(
ほふ
)
るのは
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ないぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか。
217
こんな
事
(
こと
)
に
心配
(
しんぱい
)
しておいでなさつては、
218
将軍
(
しやうぐん
)
として
役目
(
やくめ
)
が
勤
(
つと
)
まりますまい』
219
久米彦
(
くめひこ
)
『お
前
(
まへ
)
は
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
てから
俄
(
にはか
)
に
鼻息
(
はないき
)
が
荒
(
あら
)
くなつたぢやないか、
220
妙
(
めう
)
だなア。
221
俺
(
おれ
)
はお
前
(
まへ
)
の
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
いて
俄
(
にはか
)
に
未来
(
みらい
)
が
怖
(
おそ
)
ろしくなつた。
222
これや
一
(
ひと
)
つ
考
(
かんが
)
へねばなるまい、
223
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
吾
(
わが
)
頭
(
あたま
)
の
上
(
うへ
)
には
鬼春別
(
おにはるわけ
)
将軍
(
しやうぐん
)
が
控
(
ひか
)
へて
居
(
ゐ
)
る。
224
何程
(
なにほど
)
久米彦
(
くめひこ
)
が
善
(
ぜん
)
に
立
(
た
)
ちかへり、
225
刹帝利
(
せつていり
)
を
助
(
たす
)
けむと
致
(
いた
)
しても、
226
上官
(
じやうくわん
)
が
首
(
くび
)
を
横
(
よこ
)
に
振
(
ふ
)
つたが
最後
(
さいご
)
、
227
到底
(
たうてい
)
駄目
(
だめ
)
だ。
228
ああ
引
(
ひ
)
くに
引
(
ひ
)
かれぬ
板挟
(
いたばさ
)
みとなつた。
229
どうしたら
此
(
この
)
解決
(
かいけつ
)
がつくだらうかなア』
230
と
又
(
また
)
もや
思案
(
しあん
)
に
沈
(
しづ
)
む。
231
カルナ
姫
(
ひめ
)
『
貴方
(
あなた
)
さう
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
には
及
(
およ
)
ばぬぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか、
232
御
(
ご
)
決心
(
けつしん
)
さへ
定
(
き
)
まればその
位
(
くらゐ
)
の
事
(
こと
)
は
何
(
なん
)
でも
厶
(
ござ
)
いますまい。
233
鬼春別
(
おにはるわけ
)
様
(
さま
)
は
妾
(
わらは
)
の
主人
(
しゆじん
)
を
妻
(
つま
)
に
持
(
も
)
つて
居
(
を
)
られますから、
234
妾
(
わらは
)
よりヒルナ
様
(
さま
)
に
申上
(
まをしあ
)
げ、
235
ヒルナ
様
(
さま
)
より
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
に
申上
(
まをしあ
)
げるようにすれば、
236
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
この
問題
(
もんだい
)
は
解決
(
かいけつ
)
が
早
(
はや
)
いでせう。
237
それより
外
(
ほか
)
方法
(
はうはふ
)
は
厶
(
ござ
)
いますまいなア』
238
と
心配
(
しんぱい
)
さうに
故意
(
わざ
)
と
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
ける。
239
久米彦
(
くめひこ
)
『
遉
(
さすが
)
はカルナ
姫
(
ひめ
)
だ。
240
よい
所
(
ところ
)
に
気
(
き
)
がついた。
241
そんならこの
問題
(
もんだい
)
は
其方
(
そなた
)
に
一任
(
いちにん
)
する
事
(
こと
)
にしようかなア。
242
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
拙者
(
せつしや
)
は
鬼春別
(
おにはるわけ
)
将軍
(
しやうぐん
)
と
何処
(
どこ
)
ともなしに
意志
(
いし
)
が
疎隔
(
そかく
)
して
居
(
を
)
る
最中
(
さいちう
)
だから、
243
何程
(
なにほど
)
ヒルナ
様
(
さま
)
の
諫言
(
かんげん
)
と
雖
(
いへど
)
も
容易
(
ようい
)
に
聞
(
き
)
くまい。
244
ああ
心配
(
しんぱい
)
な
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
て
来
(
き
)
たものだなア』
245
カルナは
久米彦
(
くめひこ
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
て、
246
稍
(
やや
)
嬉
(
うれ
)
し
気
(
げ
)
に
打笑
(
うちわら
)
ひ、
247
カルナ
姫
(
ひめ
)
『アア
貴方
(
あなた
)
のお
顔
(
かほ
)
は
俄
(
にはか
)
に
輝
(
かがや
)
いて
来
(
き
)
ました。
248
何
(
なん
)
とまアよいお
顔
(
かほ
)
だこと、
249
やつぱり
貴方
(
あなた
)
の
霊
(
みたま
)
に
光
(
ひかり
)
が
顕
(
あらは
)
れて
来
(
き
)
たので
厶
(
ござ
)
いますなア。
250
人間
(
にんげん
)
の
顔
(
かほ
)
は
心
(
こころ
)
の
索引
(
さくいん
)
だと
云
(
い
)
ひますから、
251
心
(
こころ
)
に
悪心
(
あくしん
)
あれば
悪相
(
あくさう
)
を
生
(
しやう
)
じ、
252
善心
(
ぜんしん
)
あれば、
253
善美
(
ぜんび
)
の
相
(
さう
)
を
現
(
げん
)
ずるものだと
聞
(
き
)
きましたが、
254
今
(
いま
)
貴方
(
あなた
)
のお
顔
(
かほ
)
の
変相
(
へんさう
)
によつて、
255
的確
(
てきかく
)
に
聖哲
(
せいてつ
)
の
言葉
(
ことば
)
を
認識
(
にんしき
)
致
(
いた
)
しました。
256
ああ
益々
(
ますます
)
麗
(
うるは
)
しきお
顔
(
かほ
)
になられますよ。
257
ああどうして
妾
(
わらは
)
はかかる
尊
(
たふと
)
い
美
(
うつく
)
しい
夫
(
をつと
)
に
添
(
そ
)
うたのだらうか、
258
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんのう
)
様
(
さま
)
、
259
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
、
260
有難
(
ありがた
)
う
存
(
ぞん
)
じます。
261
何卒
(
なにとぞ
)
妾
(
わらは
)
等
(
ら
)
夫婦
(
ふうふ
)
を
貴神
(
あなた
)
の
鎮
(
しづ
)
まります
高天原
(
たかあまはら
)
に、
262
霊肉
(
れいにく
)
共
(
とも
)
にお
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さいまして、
263
現世
(
げんせ
)
も
未来
(
みらい
)
も、
264
久米彦
(
くめひこ
)
様
(
さま
)
と
睦
(
むつま
)
じく
暮
(
くら
)
せますやう
偏
(
ひとへ
)
にお
願
(
ねが
)
ひ
申上
(
まをしあ
)
げます』
265
と
誠
(
まこと
)
しやかに
祈願
(
きぐわん
)
する。
266
久米彦
(
くめひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
はすつかりカルナ
姫
(
ひめ
)
の
容色
(
ようしよく
)
と
弁舌
(
べんぜつ
)
に
巻込
(
まきこ
)
まれ、
267
最早
(
もはや
)
何事
(
なにごと
)
もカルナ
姫
(
ひめ
)
の
言
(
げん
)
とあれば、
268
利害
(
りがい
)
得失
(
とくしつ
)
を
考
(
かんが
)
へず、
269
正邪
(
せいじや
)
の
区別
(
くべつ
)
も
弁
(
わきま
)
へず、
270
喜
(
よろこ
)
んで
聴従
(
ちやうじう
)
するやうになつて
来
(
き
)
た。
271
実
(
じつ
)
に
女
(
をんな
)
の
魔力
(
まりよく
)
と
云
(
い
)
ふものは
怖
(
おそ
)
るべきものである。
272
武骨
(
ぶこつ
)
一片
(
いつぺん
)
のバラモンの
名将軍
(
めいしやうぐん
)
も、
273
美人
(
びじん
)
の
一瞥
(
いちべつ
)
に
会
(
あ
)
つては
実
(
じつ
)
に
一耐
(
ひとたま
)
りもなく
参
(
まゐ
)
つて
仕舞
(
しま
)
うたのである。
274
ああ
男子
(
だんし
)
たるものは
心
(
こころ
)
を
潜
(
ひそ
)
めて、
275
女
(
をんな
)
に
注意
(
ちうい
)
せなくてはならぬものである。
276
女
(
をんな
)
は
俗
(
ぞく
)
に
魔物
(
まもの
)
と
云
(
い
)
ふ、
277
金城
(
きんじやう
)
鉄壁
(
てつぺき
)
をただ
片頬
(
かたほほ
)
の
靨
(
ゑくぼ
)
に
覆
(
くつが
)
へし、
278
柳
(
やなぎ
)
の
眉
(
まゆ
)
、
279
鈴
(
すず
)
の
眼
(
まなこ
)
に
田畑
(
たはた
)
を
呑
(
の
)
み、
280
家倉
(
いへくら
)
を
跳
(
は
)
ね
飛
(
と
)
ばし、
281
男
(
をとこ
)
の
命
(
いのち
)
を
取
(
と
)
り、
282
さしもに
威儀
(
ゐぎ
)
堂々
(
だうだう
)
たる
将軍
(
しやうぐん
)
を
初
(
はじ
)
め、
283
数千
(
すうせん
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
の
必死
(
ひつし
)
の
努力
(
どりよく
)
も、
284
容易
(
ようい
)
にメチヤメチヤに
壊
(
こは
)
すものである。
285
世
(
よ
)
の
青年
(
せいねん
)
諸氏
(
しよし
)
よ、
286
敬愛
(
けいあい
)
なる
大本
(
おほもと
)
の
信徒
(
しんと
)
よ、
287
此
(
この
)
物語
(
ものがたり
)
を
読
(
よ
)
んでよく
顧
(
かへり
)
み、
288
虚偽
(
きよぎ
)
的
(
てき
)
恋愛
(
れんあい
)
に
身心
(
しんしん
)
を
蘯
(
とろ
)
かし、
289
一生
(
いつしやう
)
を
誤
(
あやま
)
る
事
(
こと
)
なきやう
注意
(
ちうい
)
されむ
事
(
こと
)
を
望
(
のぞ
)
む
次第
(
しだい
)
である。
290
ああ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
291
(
大正一二・二・一三
旧一一・一二・二八
於教主殿
加藤明子
録)
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