霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二三章 純潔(じゆんけつ)〔一三八六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第53巻 真善美愛 辰の巻 篇:第4篇 神愛遍満 よみ(新仮名遣い):しんあいへんまん
章:第23章 純潔 よみ(新仮名遣い):じゅんけつ 通し章番号:1386
口述日:1923(大正12)年02月14日(旧12月29日) 口述場所:竜宮館 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月8日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
治国別は城内の庭木に縛られていたハルナを助け出した。ハルナは治国別一行を殿中の王の居間に案内した。刹帝利をはじめ、左守、右守、タルマンは一生懸命に神前に祈願をこらしていた。
ハルナは刹帝利に、治国別一行のおかげで救われたことを報告した。治国別は刹帝利に丁寧にあいさつした。そして、お礼を述べる刹帝利や重臣たちに、厳の霊・瑞の霊の御神力によって悪魔が敗走したのであるから、神様にお礼を申し上げるようにと諭した。
治国別は、テームス峠で修業をしていた折り、神素盞嗚尊の御神勅によってビク国に急ぎ、刹帝利の危難を救うよう命を受けて、急ぎやってきたことを語った。そして祠の森には三五教の国治立大神様のみならず、盤古神王様、大自在天様もお祭りしているので、三五教の教えを聞いてはどうかと一同に勧めた。
刹帝利をはじめタルマンも賛成し、城内一同そろって三五教に帰順することになった。治国別をはじめ、一同は祝いの歌を交わし合った。
そこへヒルナ姫とカルナ姫が駒にまたがって表門に戻ってきた。居間に入ってきた二人を見て刹帝利は涙を流して感謝の意を表した。左守とヒルナは驚喜した。
ヒルナ姫は、シメジ峠で摩利支天が獅子を引き連れてバラモン軍を狼狽させ、そのために逃げてくることができたと経緯を説明した。刹帝利は神の御加護に感謝し、ヒルナ姫とカルナ姫に、宣伝使たちのおかげでベルツの反乱軍を撃退することができたことを語った。
ヒルナ姫は治国別に挨拶し感謝の言葉を述べた。治国別は、ヒルナ姫がベルツを召し捕ったことを知っていた。そこへ、敵の副将・シエールも生捕ったとの報告が入っていた。一同は敵軍の壊滅に沸き立った。
治国別、左守、刹帝利は神に感謝する歌を歌った。ヒルナ姫は涙を抑えながらこれまでの述懐を歌い、大神に感謝をささげた。
これより治国別一行は刹帝利の願いにより三五教の教理や儀式を城内の重役たちに教導し、神殿や教殿を新たに創立した。夏の中ごろになって、一同は鬼春別軍の後を追って、エルサレムを指して進んで行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-03-26 17:41:34 文字数:4573 OBC :rm5323
愛善世界社版:281頁 八幡書店版:第9輯 607頁 修補版: 校定版:290頁 普及版:140頁 初版: ページ備考:
001 治国別(はるくにわけ)は先(ま)づ城内(じやうない)の総(そう)司令官(しれいくわん)たるハルナが敵(てき)の捕虜(ほりよ)となり庭木(にはき)に縛(しば)られて居(ゐ)るのを助(たす)けやり、002ハルナに導(みちび)かれ殿中(でんちう)深(ふか)く王(わう)の居間(ゐま)に通(とほ)された。003此処(ここ)には王(わう)を初(はじ)め、004左守(さもり)、005右守(うもり)、006タルマンが一生(いつしやう)懸命(けんめい)に神前(しんぜん)に祈願(きぐわん)して居(ゐ)た。
007ハルナ『刹帝利(せつていり)様(さま)、008神(かみ)様(さま)のお蔭(かげ)によりまして、009危機(きき)一髪(いつぱつ)の際(さい)、010三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)治国別(はるくにわけ)様(さま)一行(いつかう)に救(すく)はれました。011此(この)方(かた)が治国別(はるくにわけ)様(さま)で厶(ござ)います』
012と紹介(せうかい)する。013王(わう)はまづまづ此方(こちら)へと上座(じやうざ)に治国別(はるくにわけ)を請(しやう)じた。014治国別(はるくにわけ)は此処(ここ)で沢山(たくさん)で厶(ござ)いますと辞退(じたい)して上席(じやうせき)には着(つ)かなかつた。015王(わう)はまアまアと上座(じやうざ)をすすめ乍(なが)ら、
016刹帝利(せつていり)『危急(ききふ)存亡(そんばう)の場合(ばあひ)どうも誠(まこと)に有難(ありがた)う厶(ござ)います、017貴方(あなた)はビクの国(くに)を救(すく)ふ生神(いきがみ)で厶(ござ)います。018此(この)御恩(ごおん)は何時(いつ)になつても決(けつ)して忘(わす)れは致(いた)しませぬ。019サアどうぞ御緩(ごゆつく)りと御(ご)休息(きうそく)下(くだ)さいませ』
020 治国別(はるくにわけ)は叮嚀(ていねい)に首(かうべ)を下(さ)げ、
021治国別『初(はじ)めて御(おん)目(め)に懸(かか)ります。022尊(たふと)き御(おん)身(み)をもつて吾々(われわれ)宣伝使(せんでんし)に御(ご)叮嚀(ていねい)なる御(ご)挨拶(あいさつ)痛(いた)み入(い)りまして厶(ござ)います。023決(けつ)して吾々(われわれ)は貴方(あなた)のお国(くに)を救(すく)ふやうな力(ちから)は厶(ござ)いませぬ。024厳(いづ)の霊(みたま)瑞(みづ)の霊(みたま)の御(ご)神力(しんりき)に依(よ)りまして悪魔(あくま)の敵(てき)が脆(もろ)くも敗走(はいそう)したので厶(ござ)いますから、025何卒(どうぞ)神(かみ)様(さま)にお礼(れい)を仰有(おつしや)つて下(くだ)さいませ』
026刹帝利(せつていり)『ハイ、027何(なん)とも御(お)礼(れい)の申(まを)しやうが厶(ござ)いませぬ。028厳(いづ)の霊様(みたまさま)、029瑞(みづ)の霊様(みたまさま)、030盤古(ばんこ)神王(しんのう)様(さま)有難(ありがた)う厶(ござ)います』
031と合掌(がつしやう)し、032嬉(うれ)し涙(なみだ)を流(なが)して居(ゐ)る。
033左守(さもり)『拙者(せつしや)は王(わう)に仕(つか)ふる左守司(さもりのかみ)キユービツトで厶(ござ)います。034よくまアこの大難(だいなん)を神(かみ)様(さま)と共(とも)にお助(たす)け下(くだ)さいました。035又(また)危(あやふ)き伜(せがれ)の命(いのち)迄(まで)お拾(ひろ)ひ下(くだ)さいまして実(じつ)に感謝(かんしや)に堪(た)えませぬ。036ああ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)』
037と涙(なみだ)にかき曇(くも)る。
038治国別(はるくにわけ)『私(わたくし)はテームス峠(たうげ)に於(おい)て、039神(かみ)様(さま)の修業(しうげふ)を致(いた)して居(を)ります所(ところ)へ、040神(かむ)素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)が現(あら)はれ給(たま)ひ、041「汝(なんぢ)は一(いち)時(じ)も早(はや)く道(みち)を転(てん)じてビクの都(みやこ)へ参(まゐ)り、042刹帝利(せつていり)殿(どの)の危難(きなん)を救(すく)へ」との御(ご)命令(めいれい)、043取(と)るものも取(と)り敢(あへ)ず、044三(さん)人(にん)の弟子(でし)と共(とも)に駆(か)けつけて見(み)れば危急(ききふ)存亡(そんばう)の場合(ばあひ)、045結構(けつこう)な御用(ごよう)をさして頂(いただ)きました』
046左守(さもり)『大神(おほかみ)様(さま)の思召(おぼしめ)し、047貴方(あなた)方(がた)御(ご)一行(いつかう)の御(ご)親切(しんせつ)、048お礼(れい)は言葉(ことば)に尽(つく)せませぬ』
049と嬉(うれ)し涙(なみだ)にまたもや掻(か)き曇(くも)る。
050右守(うもり)『拙者(せつしや)は右守司(うもりのかみ)を勤(つと)めて居(を)りますヱクスと申(まを)すもの、051お礼(れい)は言葉(ことば)に尽(つく)せませぬ。052何卒(どうぞ)今後(こんご)御(お)見捨(みすて)なく御(ご)懇情(こんじやう)をお願(ねが)ひ申(まを)します』
053治国別(はるくにわけ)『お互(たがひ)様(さま)に宜敷(よろし)うお願(ねが)ひ致(いた)しませう』
054タルマン『拙者(せつしや)はウラル教(けう)の宣伝使(せんでんし)で厶(ござ)いまして、055刹帝利(せつていり)様(さま)の御(ご)信任(しんにん)を忝(かたじけ)なうし、056内事(ないじ)の司(つかさ)を兼(か)ねて居(を)りますが、057この危急(ききふ)の場合(ばあひ)に際(さい)し、058神徳(しんとく)足(た)らざる為(ため)に為(な)す所(ところ)もなく困(こま)り果(は)てて居(を)りました。059よくまアお助(たす)け下(くだ)さいました。060どうか私(わたくし)を貴方(あなた)様(さま)のお弟子(でし)にお加(くは)へ下(くだ)さらば実(じつ)に有難(ありがた)う存(ぞん)じます』
061治国別(はるくにわけ)『左様(さやう)で厶(ござ)いますか、062貴方(あなた)はウラル教(けう)の宣伝使(せんでんし)、063御(ご)苦労(くらう)様(さま)で厶(ござ)います。064就(つい)ては貴方(あなた)計(ばか)りではなく、065刹帝利(せつていり)様(さま)も三五教(あななひけう)の教(をしへ)をお聞(き)き遊(あそ)ばしては如何(いかが)で厶(ござ)りませう。066三五教(あななひけう)の祠(ほこら)の森(もり)には、067国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)様(さま)、068盤古(ばんこ)神王(しんのう)様(さま)、069大自在天(だいじざいてん)様(さま)がお祭(まつ)り致(いた)してありますれば、070教(をしへ)の名(な)は変(かは)れども、071神(かみ)様(さま)には少(すこ)しも変(かは)りはありませぬからなア』
072タルマン『何分(なにぶん)宜敷(よろし)くお願(ねが)ひ申(まを)します。073もし刹帝利(せつていり)様(さま)、074如何(いかが)で厶(ござ)いませう』
075刹帝利(せつていり)『申(まを)す迄(まで)もなく治国別(はるくにわけ)様(さま)にお世話(せわ)にならうぢやないか、076イヤ治国別(はるくにわけ)様(さま)何分(なにぶん)よろしくお願(ねが)ひ申(まを)します。077就(つい)ては左守(さもり)、078右守(うもり)を初(はじ)め、079城内(じやうない)一同(いちどう)は揃(そろ)うて貴教(きけう)に帰順(きじゆん)致(いた)しますから、080何卒(なにとぞ)大神(おほかみ)様(さま)にお取(とり)なしをお願(ねが)ひ致(いた)します』
081治国別(はるくにわけ)『ハイ承知(しようち)仕(つかまつ)りました』
082松彦(まつひこ)『お師匠(ししやう)様(さま)、083祝(いはひ)の歌(うた)をさし上(あ)げたら如何(いかが)で厶(ござ)いませうか』
084治国別(はるくにわけ)『如何(いか)にも』
085と云(い)ひ乍(なが)ら、
086治国別(はるくにわけ)『天地(あめつち)の神(かみ)の恵(めぐみ)の深(ふか)くして
087百(もも)の禍(わざはひ)逃(に)げ失(う)せにけり。
088ビクの国(くに)国王(こきし)の永遠(とは)に守(まも)ります
089この神城(かみしろ)は永久(とこしへ)にあれ』
090刹帝利(せつていり)『あら尊(たふと)生(い)ける誠(まこと)の神(かみ)に遇(あ)ひ
091涙(なみだ)こぼるる今日(けふ)の嬉(うれ)しさ。
092治国(はるくに)の別(わけ)の司(つかさ)よビクの国(くに)
093守(まも)らせたまへ千代(ちよ)に八千代(やちよ)に』
094タルマン『三五(あななひ)の神(かみ)の教(をしへ)を目(ま)のあたり
095聞(き)きて心(こころ)も栄(さか)えけるかな。
096皇神(すめかみ)の恵(めぐみ)の露(つゆ)に霑(うるほ)ひて
097ビクトリヤ城(じやう)は生(い)きかへりける』
098左守(さもり)『類(たぐひ)なき神(かみ)の力(ちから)を保(たも)ちます
099治国別(はるくにわけ)の司(つかさ)尊(たふと)し。
100言霊(ことたま)の幸(さち)はふ国(くに)と聞(き)きつれど
101かほど迄(まで)とは思(おも)はざりけり』
102右守(うもり)『なやみはてし今日(けふ)の軍(いくさ)を詳細(まつぶさ)に
103幸(さち)あらしめし君(きみ)ぞ畏(かしこ)き。
104今(いま)よりは心(こころ)改(あらた)め三五(あななひ)の
105畏(かしこ)き道(みち)に仕(つか)へまつらむ』
106ハルナ『大君(おほぎみ)と国(くに)と吾(わが)身(み)を助(たす)けられ
107如何(いか)に報(むく)はむ吾(われ)の身(み)をもて。
108さりながら人(ひと)は神(かみ)の子(こ)神(かみ)の宮(みや)
109いつかは報(むく)いむ君(きみ)の恵(めぐみ)に』
110万公(まんこう)『斎苑(いそ)館(やかた)吾(わが)師(し)の君(きみ)に従(したが)ひて
111功(いさを)を立(た)てし今日(けふ)ぞ嬉(うれ)しき。
112世(よ)の為(ため)に霊(たま)と体(からだ)を捧(ささげ)たる
113吾(わが)身(み)の上(うへ)の楽(たの)しきろかも』
114松彦(まつひこ)『君(きみ)が代(よ)は千代(ちよ)に八千代(やちよ)に常磐木(ときはぎ)の
115松(まつ)の緑(みどり)と栄(さか)えますらむ。
116常磐木(ときはぎ)の松(まつ)に巣(す)ぐへる田鶴(たづ)のごと
117いと清(きよ)らけき刹帝利(せつていり)の君(きみ)』
118竜彦(たつひこ)『立(た)つ鳥(とり)も落(おと)すやうなる此(この)城(しろ)を
119抜(ぬ)かむとしたる人(ひと)の愚(おろ)かさ。
120皇神(すめかみ)のいや永久(とこしへ)に守(まも)ります
121ビクの国王(こきし)を狙(ねら)ふ愚(おろ)かさ』
122刹帝利(せつていり)『皇神(すめかみ)の厳(いづ)の力(ちから)に救(たす)けられ
123今(いま)は心(こころ)も冴(さ)え渡(わた)りける。
124さりながらヒルナの姫(ひめ)は今(いま)いづこ
125さまよひ居(ゐ)るぞ尋(たづ)ねまほしき。
126カルナ姫(ひめ)さぞ今頃(いまごろ)は背(せ)の君(きみ)を
127慕(した)ひて泣(な)かむ野辺(のべ)に山辺(やまべ)に』
128ハルナ『よし妻(つま)は屍(かばね)を野辺(のべ)に晒(さら)すとも
129厭(いと)はざるらむ君(きみ)のためには。
130曲神(まががみ)のベルツの軍(いくさ)逃(に)げ散(ち)りて
131いとも静(しづ)けき城(しろ)の中(なか)かな』
132 かく歌(うた)を取(と)り交(か)はす所(ところ)へ、133表門(おもてもん)に駒(こま)の蹄(ひづめ)の音(おと)勇(いさ)ましく帰(かへ)り来(きた)つたのは、134刹帝利(せつていり)、135ハルナの束(つか)の間(ま)も忘(わす)るる事(こと)能(あた)はざる、136ヒルナ姫(ひめ)、137カルナ姫(ひめ)であつた。138二人(ふたり)はベルツの体(からだ)を門内(もんない)に卸(おろ)し、139守兵(しゆへい)をして之(これ)を守(まも)らせ置(お)き、140馬(うま)を飛(と)びおり、141王(わう)の居間(ゐま)にイソイソとして進(すす)み入(い)つた。142王(わう)は二人(ふたり)の姿(すがた)を見(み)て驚喜(きやうき)し、
143刹帝利(せつていり)『ヤア其方(そなた)はヒルナ姫(ひめ)、144よくまア無事(ぶじ)で帰(かへ)つて来(き)やつた。145まアまア結構(けつこう)々々(けつこう)随分(ずいぶん)骨(ほね)を折(を)らしたなア、146ヤア其方(そなた)はカルナ姫(ひめ)、147よくも今(いま)迄(まで)忍(しの)んで王家(わうけ)の為(ため)、148国(くに)の為(た)め尽(つく)して呉(く)れた。149何(なに)も云(い)はぬ此(こ)の通(とほ)りだ』
150と、151両手(りやうて)を合(あは)して感謝(かんしや)の意(い)を表(へう)したり。152二人(ふたり)は嬉(うれ)し涙(なみだ)をポロポロと流(なが)して其(その)場(ば)に泣(な)き伏(ふ)した。153左守司(さもりのかみ)、154ハルナは気(き)も狂(くる)はむばかりに驚喜(きやうき)し、155立(た)つたり坐(すわ)つたり、156火鉢(ひばち)を提(さげ)て室内(しつない)を右左(みぎひだり)と駆(か)け廻(まは)つて居(ゐ)る。157喜(よろこ)びの極(きよく)に達(たつ)した時(とき)は、158如何(いか)なる賢者(けんじや)と雖(いへど)も度(ど)を失(うしな)ひ狼狽(うろた)へるものである。
159タルマン『左守殿(さもりどの)、160ハルナ殿(どの)、161落(お)ち着(つ)きなされ』
162と注意(ちうい)され、163提(さ)げて居(ゐ)た火鉢(ひばち)をそつと卸(おろ)し、
164ハルナ『貴女(あなた)はヒルナ姫(ひめ)様(さま)、165其方(そなた)はカルナであつたか、166どうして帰(かへ)つて来(き)たか』
167と嬉(うれ)し涙(なみだ)に沈(しづ)む。168カルナは余(あま)りの嬉(うれ)しさに涙(なみだ)をハラハラと流(なが)し俯向(うつむ)いて居(ゐ)る。
169刹帝利(せつていり)『其方(そなた)はどうして帰(かへ)つて来(き)た、170定(さだ)めし難儀(なんぎ)を致(いた)したであらうのう』
171ヒルナ姫(ひめ)『ハイ有難(ありがた)う厶(ござ)います。172シメジ峠(たうげ)の麓(ふもと)迄(まで)参(まゐ)りました所(ところ)、173摩利支天(まりしてん)様(さま)が現(あら)はれて、174数百頭(すうひやくとう)の獅子(しし)となり、175バラモン軍(ぐん)を狼狽(らうばい)させ給(たま)うた為(た)めに、176都合(つがふ)よく逃(に)げ帰(かへ)る事(こと)が出来(でき)ました』
177刹帝利(せつていり)『成程(なるほど)、178神(かみ)様(さま)のお助(たす)けだなア。179ああ有難(ありがた)し有難(ありがた)し惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)。180カルナ其方(そなた)もヒルナと共(とも)に随分(ずいぶん)苦労(くらう)をしたであらうなア。181お前(まへ)等(ら)両人(りやうにん)の心(こころ)は、182私(わたし)もハルナもよく知(し)つて居(ゐ)る。183本当(ほんたう)に貞女(ていぢよ)烈婦(れつぷ)の亀鑑(きかん)だ』
184カルナ姫(ひめ)『ハイ有難(ありがた)う』
185と僅(わづ)かに云(い)つたきり、186これ又(また)嬉(うれ)し涙(なみだ)に袖(そで)を濡(ぬ)らしてゐる。
187刹帝利(せつていり)『ヒルナ其女(そなた)が骨(ほね)を折(を)つて呉(く)れたお蔭(かげ)で、188バラモン軍(ぐん)が退却(たいきやく)して呉(く)れたと思(おも)へば、189ベルツ、190シエールの両人(りやうにん)、191数千(すうせん)の兵(へい)をもつて吾(わが)城(しろ)を囲(かこ)み、192たつた今(いま)三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)治国別(はるくにわけ)様(さま)一行(いつかう)のお蔭(かげ)によつて退却(たいきやく)致(いた)した所(ところ)だ。193どうか治国別(はるくにわけ)様(さま)御(ご)一行(いつかう)にお礼(れい)を申(まを)して呉(く)れ』
194 ヒルナは無言(むごん)の儘(まま)首(くび)を傾(かたむ)け、195次(つ)いで治国別(はるくにわけ)の方(はう)に向(むか)ひ、196恭(うやうや)しく両手(りやうて)を支(つか)へ、
197ヒルナ姫(ひめ)『貴方(あなた)様(さま)の御(ご)援助(ゑんじよ)により、198ビクトリヤ城(じやう)も無事(ぶじ)に保(たも)てました。199有難(ありがた)く感謝(かんしや)を致(いた)します』
200と云(い)ふ声(こゑ)さへもはや涙(なみだ)になつて居(ゐ)る。
201治国別(はるくにわけ)『初(はじ)めてお目(め)にかかります。202貴女(あなた)はヒルナ姫(ひめ)様(さま)で厶(ござ)いましたか、203よく王家(わうけ)の為(た)め国家(こくか)のためお骨折(ほねを)りなさいました。204実(じつ)に感服(かんぷく)致(いた)します。205併(しか)し貴女(あなた)途中(とちう)に於(おい)て何(なに)か拾(ひろ)ひものを遊(あそ)ばしたでせう』
206ヒルナ姫(ひめ)『ハイお察(さつ)しの通(とほ)り敵(てき)の大将(たいしやう)ベルツを生擒(いけど)り、207厳(きび)しく縛(しば)り連(つ)れ帰(かへ)つて参(まゐ)りました』
208治国別(はるくにわけ)『さうで厶(ござ)いませう、209お手柄(てがら)なさいましたねえ』
210刹帝利(せつていり)『何(なに)、211ベルツを生擒(いけどり)にしたと申(まを)すか、212何(なん)と偉(えら)い功名(こうみやう)を現(あら)はして呉(く)れたものだなア、213カルナ姫(ひめ)其女(そなた)もこの手柄(てがら)は半分(はんぶん)は分(わか)つべきものだ。214きつと其女(そなた)には改(あらた)めてお礼(れい)を申(まを)すぞや』
215カルナ姫(ひめ)『勿体(もつたい)ない 臣(しん)が君(きみ)のために働(はたら)くのは当然(たうぜん)で厶(ござ)います。216何卒(どうぞ)お気遣(きづか)ひ下(くだ)さいますな、217其(その)お言葉(ことば)を承(うけたま)はりますれば十分(じふぶん)で厶(ござ)います』
218と又(また)もや嬉(うれ)し涙(なみだ)を絞(しぼ)る。
219 斯(か)かる所(ところ)へカントは走(はし)り来(きた)り、
220カント『申上(まをしあ)げまする、221敵(てき)の副将軍(ふくしやうぐん)、222シエールを生擒(いけどり)まして厶(ござ)いまする』
223刹帝利(せつていり)『何(なに)!シエールを生擒(いけど)つたとな、224ヤ天晴(あつぱれ)々々(あつぱれ)、225後(のち)程(ほど)褒美(ほうび)を遣(つかは)すから逃(に)げないやうに大切(たいせつ)に保護(ほご)して呉(く)れ』
226タルマン『吾(わが)君様(きみさま)、227お目出(めで)たう厶(ござ)います。228これにてビクトリヤ王家(わうけ)も無事(ぶじ)安泰(あんたい)、229ビクの国(くに)も泰平(たいへい)に治(をさ)まりませう』
230左守(さもり)『斯(か)くなるも全(まつた)く神(かみ)様(さま)の御(お)蔭(かげ)で厶(ござ)いまする。231治国別(はるくにわけ)様(さま)、232よくまア来(き)て下(くだ)さいましたなア』
233治国別(はるくにわけ)『皇神(すめかみ)の経綸(しぐみ)の糸(いと)に操(あやつ)られ
234知(し)らず知(し)らずに上(のぼ)り来(き)ましぬ。
235惟神(かむながら)神(かみ)に任(まか)せば何事(なにごと)も
236いと安々(やすやす)と治(をさ)まりてゆく』
237左守(さもり)『いすくはし尊(たふと)き神(かみ)の御恵(みめぐみ)を
238目(ま)のあたり見(み)る吾(われ)ぞ嬉(うれ)しき。
239大君(おほぎみ)も嘸(さぞ)や嬉(うれ)しみ給(たま)ふらむ
240今日(けふ)の戦(いくさ)の治(をさ)まりを見(み)て』
241刹帝利(せつていり)『有難(ありがた)し忝(かたじけ)なしと云(い)ふよりも
242外(ほか)に言葉(ことば)は無(な)かりけるかな』
243 ヒルナ姫(ひめ)は涙(なみだ)を押(おさ)へ歌(うた)ひ出(だ)した。
244ヒルナ姫(ひめ)『千早(ちはや)振(ふ)る古(ふる)き神代(かみよ)を造(つく)らしし
245皇(すめ)大神(おほかみ)の現(あ)れまして
246八十(やそ)の曲津(まがつ)の猛(たけ)り狂(くる)ふ
247ビクトリヤの城(しろ)を
248守(まも)らせたまひ
249傾(かたむ)きかけし城(しろ)の中(なか)を
250もとの如(ごと)くに立(た)て直(なほ)し
251救(すく)はせたまひし嬉(うれ)しさよ
252妾(わらは)は君(きみ)に見出(みい)だされ
253后(きさき)の宮(みや)と任(ま)けられて
254御側(みそば)に近(ちか)く仕(つか)へしが
255右守(うもり)の司(かみ)のベルツ司(つかさ)が
256心(こころ)の中(なか)を計(はか)りかね
257試(た)めして見(み)むと思(おも)ふ中(うち)
258醜(しこ)の魔風(まかぜ)に煽(あふ)られて
259情(なさけ)なや女(をんな)として
260行(ゆ)くべからざる道(みち)を行(ゆ)き
261深(ふか)き罪(つみ)をば重(かさ)ねたる
262其(その)償(つぐな)ひをなさむものと
263バラモン軍(ぐん)の中(なか)に入(い)り
264カルナの姫(ひめ)と諸共(もろとも)に
265千々(ちぢ)に心(こころ)を砕(くだ)きつつ
266素性(すじやう)卑(いや)しき荒男(あらをとこ)
267鬼春別(おにはるわけ)や久米彦(くめひこ)の
268軍(いくさ)の司(つかさ)の心(こころ)を奪(うば)ひ
269縦横(じうわう)無尽(むじん)にあやなして
270君(きみ)の禍(わざはひ)国(くに)の仇(あだ)
271遠(とほ)く追(お)ひそけ奉(たてまつ)り
272尊(たふと)き神(かみ)の御使(みつかひ)に
273守(まも)られ乍(なが)ら漸々(やうやう)に
274都路(みやこぢ)近(ちか)く帰(かへ)り見(み)れば
275俄(にはか)に聞(きこ)ゆる鬨(とき)の声(こゑ)
276唯事(ただごと)ならじと気(き)を焦(いら)ち
277駒(こま)に鞭打(むちう)ちとうとうと
278カルナの姫(ひめ)と諸共(もろとも)に
279馳(は)せ帰(かへ)り見(み)れば道(みち)の辺(べ)に
280いとも無残(むざん)に倒(たふ)れたる
281目(め)に見覚(みおぼ)えの荒男(あらをとこ)
282逃(に)げ往(ゆ)く軍(いくさ)に目(め)も呉(く)れず
283直(ただ)ちに駒(こま)より飛(と)び下(お)りて
284其(その)面(おも)ざしを調(しら)ぶれば
285思(おも)ひがけなきベルツの軍君(いくさぎみ)
286何(なに)はともあれ駒(こま)に乗(の)せ
287帰(かへ)らむものと心(こころ)を定(さだ)め
288帰(かへ)りて見(み)れば御(おん)館(やかた)
289激(はげ)しき軍(いくさ)の痕跡(こんせき)は
290黄金(こがね)の城(しろ)や鉄(くろがね)の壁(かべ)に
291いとありありと現(あら)はれぬ
292唯事(ただごと)ならじと駒(こま)を下(お)り
293ベルツの魔神(まじん)を地(ち)に捨(す)てて
294衛兵(ゑいへい)共(ども)に守(まも)らせ置(お)き
295カルナと共(とも)にいそいそと
296帰(かへ)りて見(み)れば吾(わが)君(きみ)は
297いと健(すこや)かに坐(ましま)しぬ
298其(その)外(ほか)百(もも)の司(つかさ)等(ら)も
299常(つね)に変(かは)らず健(すこやか)に
300君(きみ)のめぐりを取(と)り巻(ま)いて
301左(さ)も嬉(うれ)しげに坐(ましま)しぬ
302ああ有難(ありがた)や有難(ありがた)や
303神(かみ)の恵(めぐみ)と喜(よろこ)びて
304心(こころ)に感謝(かんしや)の折(をり)もあれ
305治国別(はるくにわけ)の神司(かむづかさ)
306現(あら)はれまして吾(わが)君(きみ)の
307軍(いくさ)を救(すく)ひたまひしと
308聞(き)きたる時(とき)の嬉(うれ)しさよ
309ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
310尊(たふと)き神(かみ)の御(おん)前(まへ)に
311罪(つみ)に汚(けが)れしヒルナ姫(ひめ)が
312御前(みまへ)を畏(かしこ)み畏(かしこ)みて
313大御恵(おほみめぐみ)の尊(たふと)さを
314喜(よろこ)び感謝(かんしや)し奉(たてまつ)る
315ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
316神(かみ)の御霊(みたま)の幸倍(さちは)ひて
317これの館(やかた)は永久(とこしへ)に
318ビクの国王(こきし)はいつ迄(まで)も
319寿(ことぶき)長(なが)く栄(さか)えまし
320百(もも)の国人(くにびと)平(たひら)けく
321いと安(やす)らかに栄(さか)ゆべく
322守(まも)らせたまへ大御神(おほみかみ)
323赤心(まごころ)籠(こ)めて願(ね)ぎまつる』
324と歌(うた)ひ終(をは)りける。
325 これより治国別(はるくにわけ)初(はじ)め、326万公(まんこう)、327松彦(まつひこ)、328竜彦(たつひこ)は、329刹帝利(せつていり)の懇情(こんじやう)により、330三五(あななひ)の教理(けうり)や儀式(ぎしき)を城内(じやうない)の重役(ぢうやく)その他(た)に教導(けうだう)し、331神殿(しんでん)や教殿(けうでん)を新(あらた)に創立(さうりつ)し、332夏(なつ)の中(なか)頃(ごろ)一同(いちどう)は鬼春別(おにはるわけ)以下(いか)の跡(あと)を追(おひ)かけエルサレムを指(さ)して進(すす)み行(ゆ)く。
333(大正一二・二・一四 旧一一・一二・二九 於竜宮館 加藤明子録)
334(昭和一〇・六・一二 王仁校正)
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