霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は従来バージョンをお使い下さい| サブスクのお知らせ

第一章 逆艪(さかろ)〔一五〇一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第59巻 真善美愛 戌の巻 篇:第1篇 毀誉の雲翳 よみ(新仮名遣い):きよのうんえい
章:第1章 逆艪 よみ(新仮名遣い):さかろ 通し章番号:1501
口述日:1923(大正12)年04月01日(旧02月16日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年7月8日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
玉国別一行を湖上に亡き者にしようとしたワックスは、にわかに一変した天候に翻弄され、船頭を失い漂流していた。ワックスは大自在天に願いをかけ、改心して衆生済度のために比丘となり、ハルナの都に出て衆生済度に励むつもりだと無事を祈った。
不思議にも颶風はぴたりと止まった。ワックスはにわかに元気回復し、先ほどの殊勝な気持ちはどこへやら、またしても減らず口を叩きはじめた。仲間たちに自分の祈願の効験を自慢するが、エキスに嵐の中ふるえて神頼みしていた姿をからかわれてしまう。
ワックスたちは船に帆をかけて風の力を借り、三五教の宣伝使たちを追いかけることにした。ワックスは櫓を握ってこぎだし、下らぬ歌を歌って悦に入っている。小さな町にいてデビス姫をものにしようと気張って追いかけていたが、生まれて初めて船に乗って旅行く愉快さと引き比べて思えば馬鹿なことをしていたものだ、などと勝手な感慨にふけっている。
エキスが船漕ぎを変わり、ワックスのこれまでの悪行と失敗をからかう歌を歌った。ワックスは面白くなく、ヘルマンに代わるように命じた。ヘルマンは、三五教の方が女神がやってきて船を与えてくれたりして、よっぽど自分たちより気が利いている、と三五教への傾倒を吐露した。
ワックスはヘルマンの弱きをたしなめて、キヨの港に着きさえすれば、バラモン教の勢力範囲だから三五教徒たちは手もなく捕まえることができるだろうし、そうしてからハルナの都に行けばよい、と諭した。そしてまた自分が櫓を握って船をこぐ。
一行は交代で櫓をこぎ、順風に助けられて、三日目の夕方にキヨの港に安着した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5901
愛善世界社版:7頁 八幡書店版:第10輯 487頁 修補版: 校定版:7頁 普及版: 初版: ページ備考:
001広袤(くわうぼう)千里(せんり)のキヨの(うみ)
002(にはか)天候(てんこう)一変(いつぺん)
003逆巻(さかまく)(なみ)船体(せんたい)
004上下(じやうげ)左右(さいう)奔弄(ほんろう)され
005悪虐(あくぎやく)無道(ぶだう)のワックスも
006肝腎要(かんじんかなめ)機関手(きくわんしゆ)
007逆巻(さかまく)(なみ)(さら)はれて
008(すす)みもならず退(しりぞ)きも
009ならぬ海路(かいろ)(くる)しさに
010()取直(とりなほ)立上(たちあが)
011無性(むしやう)矢鱈(やたら)()()いで
012(いづ)れの(きし)にか辿(たど)らむと
013(こころ)あせれど(うま)れつき
014テルモン(ざん)片隅(かたすみ)
015(とり)なき(さと)蝙蝠(かうもり)
016気取(きど)つて威張(ゐば)りちらしたる
017(その)天罰(てんばつ)(たちま)ちに
018(むく)(きた)りて(うみ)()
019(こころ)(あせ)れば(あせ)(ほど)
020老朽船(らうきうせん)はキリキリと
021(なみ)(おもて)()(まは)
022ワックス(はじ)(さん)(にん)
023(ふね)諸共(もろとも)()(まは)
024方角(はうがく)さへも見失(みうしな)
025逆巻(さかまく)(なみ)(たたか)ひて
026(うん)をば(てん)(まか)しつつ
027ワックス『梵天(ぼんてん)帝釈(たいしやく)自在天(じざいてん)
028大国彦(おほくにひこ)大御神(おほみかみ)
029(まも)らせ(たま)吾々(われわれ)
030この海上(かいじやう)暴風(しけ)()
031(かみ)試練(しれん)(かしこ)みて
032いよいよ改心(かいしん)(つかまつ)
033サットヷ(衆生(しゆじやう)済度(さいど)のそのために
034(この)長髪(ちやうはつ)()りおとし
035(この)()()てて比丘(びく)となり
036ニテヨーデユクタ(常精進)を(はげ)みつつ
037至仁(しじん)至愛(しあい)大神(おほかみ)
038(まこと)(をしへ)(つか)ふべし
039あゝ皇神(すめかみ)皇神(すめかみ)
040(われ)()()(にん)改心(かいしん)
041(あは)れみ(たま)ひて(この)颶風(しけ)
042とめさせ(たま)惟神(かむながら)
043赤心(まごころ)()めて()(まつ)
044悪魔(あくま)如何(いか)(つよ)(とも)
045()(もの)如何(いか)(おほ)くとも
046仮令(たとへ)スマートが(きた)(とも)
047(まこと)(ひと)つのバラモンの
048(をしへ)(みち)()(すく)
049テルモン(ざん)山颪(やまおろし)
050(はや)(をさ)まり吾々(われわれ)
051行手(ゆくて)(さち)(まも)りませ
052(ひとへ)(ねが)(たてまつ)
053テルモン(ざん)聖地(せいち)をば
054(いた)(しもと)(くは)へられ
055追放(つゐはう)された吾々(われわれ)
056最早(もはや)(せん)なし(つき)(くに)
057ハルナの(みやこ)立出(たちい)でて
058(こころ)(そこ)より改良(かいりやう)
059(いのち)(をし)まず(たましひ)
060大黒主(おほくろぬし)(たてまつ)
061一心(いつしん)不乱(ふらん)(かみ)(むね)
062四方(よも)(ひら)かむ()覚悟(かくご)
063(この)(うみ)無事(ぶじ)にキヨ(こう)
064(はな)()(きし)安々(やすやす)
065(すす)ませ(たま)惟神(かむながら)
066(かみ)かけ(ねん)(たてまつ)る』
067一生(いつしやう)懸命(けんめい)(うた)(なが)()(あやつつ)てゐる。068バラモンの大神(おほかみ)がワックスの(ねが)ひを聴許(ちやうきよ)(あそ)ばしたのか、069(あるひ)三五教(あななひけう)大本(おほもと)大神(おほかみ)がお(ゆる)(あそ)ばしたのか、070不思議(ふしぎ)にも颶風(ぐふう)はピタリと()まり、071()るも(おそ)ろしき激浪(げきらう)怒濤(どたう)(やうや)()いで鏡面(きやうめん)(ごと)(しづ)まり、072(なみ)キラキラと日光(につくわう)(かがや)(はじ)めた。073テルモン(ざん)前方(ぜんぱう)(あた)つて、074雲表(うんぺう)(たか)(その)雄姿(ゆうし)(あら)はし、075中腹(ちうふく)(くも)(おび)()めて、076泰然(たいぜん)として(この)湖面(こめん)(なが)めてゐる。077ワックスは大旱(たいかん)水田(すいでん)喜雨(きう)()たるが(ごと)く、078(にはか)元気(げんき)恢復(くわいふく)し、079(かな)はぬ(とき)神頼(かみだの)み、080(ふる)(をのの)いてゐた(たましひ)はどこへやら、081ソロソロ()らず(ぐち)(たた)(はじ)めたり。
082『オイ、083エキス、084ヘルマンの恐喝(きようかつ)先生(せんせい)085六百(ろくぴやく)(ゑん)強奪者(がうだつしや)086(なら)びに睾丸潰(きんたまつぶ)しのエルの(やつ)087(なに)をグヅグヅしてゐやがるのだい。088いいかげんに(あたま)()げぬかい。089仕方(しかた)のない代物(しろもの)だなア。090流石(さすが)颶風(しけ)怒濤(どたう)も、091(この)ワックスさまの()祈願(きぐわん)()つて、092()()ろ。093言下(げんか)(しづ)まり、094ケロリカンとして、095(ゆめ)をみたやうな(つら)をさらしてゐるぢやないか。096本当(ほんたう)にワックスさまの()威勢(ゐせい)といふものは偉大(ゐだい)なものだらう』
097エキス『ヘン、098仰有(おつしや)いますわい。099恐怖心(きようふしん)(おそ)はれ、100ガタガタ(ぶる)ひの大将(たいしやう)()101(あは)れつぽい(こゑ)()して、102哀求(あいきう)歎願(たんぐわん)()かけた(とき)の、103(きさま)()面相(めんさう)つたら、104()にもかけないやうだつたよ。105ああ()(とき)泰然(たいぜん)自若(じじやく)106(うご)かざること山岳(さんがく)(ごと)し、107(てい)の、108吾々(われわれ)態度(たいど)(もつ)て、109運命(うんめい)(てん)(まか)してゐたのだ。110(きさま)(せい)執着(しふちやく)人一倍(ひといちばい)濃厚(のうこう)だから、111こんな(とき)になつて、112醜体(しうたい)(えん)ずるのだ。113(なん)だ、114(をとこ)らしうもない。115(かぎり)ある(せま)(ふね)(うへ)右往(うわう)左往(さわう)(ころ)(まは)りよつて、116(その)みつともなさ、117本当(ほんたう)吾々(われわれ)男子(だんし)面汚(つらよご)しだよ』
118ワックス『コリヤ、119(きさま)(なん)()ふことをほざくのだ。120(また)(ばち)(あた)つて、121今度(こんど)こそ(ふね)転覆(てんぷく)して(しま)ふぞ。122(その)(とき)になつて吠面(ほえづら)かわいても、123ワックスの救主(すくひぬし)()らぬぞよ。124(はや)改心(かいしん)したが(その)(はう)(とく)だぞよ。125改心(かいしん)(いた)さねば、126()(もの)みせてやらうぞよ……と大自在天(だいじざいてん)(さま)()(さと)しにあるのを、127(きさま)()つてゐるだらうなア』
128エキス『そんなことは、129とうの(むかし)御存(ごぞん)じの(この)(はう)さまだ。130オイ、131ワックス、132肝腎要(かんじんかなめ)魔法使(まはふつかひ)取逃(とりに)がし、133どうする(つもり)だい』
134ワックス『どうせ、135(おれ)(たち)(この)海原(うなばら)(わた)らねばならぬのだから、136(また)途中(とちう)()ひついて、137十分(じふぶん)(あぶら)(しぼ)り、138往生(わうじやう)さしてやれば()いのだ』
139エキス『ヘン、140往生(わうじやう)させられるのだらう、141(なん)()つても、142(よわ)きを(くじ)き、143(つよ)きに(したが)ふといふ悪酔会(あくすゐくわい)前会長(ぜんくわいちやう)だからな』
144ワックス『(きさま)()145()いかげんに()きて(この)()操縦(さうじう)せないか。146()つておいたら、147どんな(とこ)漂着(へうちやく)するか()れぬぢやないか』
148エキス『漂着(へうちやく)()つてゐるのだ。149一時(いつとき)(はや)陸地(りくち)()いて、150そこからテクつた(ほう)何程(なにほど)安心(あんしん)だか(わか)らぬワ。151メツタに(やま)溺死(できし)する気遣(きづかひ)はないからのう』
152ワックス『先方(むかふ)(ふね)一直線(いつちよくせん)(はし)つて()きよるなり、153こつちや(やま)()(たに)()え、154難路(なんろ)辿(たど)つて()らうものなら、155何時(いつ)キヨの(みなと)(まで)つくか(わか)らないワ。156(なん)とかして(この)水路(すゐろ)(すす)むことにしたら如何(どう)だ』
157エキス『(なん)としても(はふ)がつかぬぢやないか、158何奴(どいつ)此奴(こいつ)(ふね)操縦(さうじう)する(こと)(めう)()()ない阿呆(あはう)人種(じんしゆ)(ばか)りだからのう』
159エル『オイ、160(その)アホを(この)北風(きたかぜ)にかけて、161一直線(いつちよくせん)()けて(すす)んだら()いぢやないか、162さうすりや(ほね)()つて()(あやつ)必要(ひつえう)もなし、163(かぜ)(かみ)自然(しぜん)先方(むかふ)(わた)してくれるワ』
164ワックス『成程(なるほど)165よい(かんが)へがついた』
166とガラガラと(つな)引張(ひつぱり)()げ、167茶色(ちやいろ)になつた()巻上(まきあ)げた。168(たちま)()(ゆみ)(ごと)(かぜ)(はら)むでサア サア サア サアと(おと)()(なが)ら、169(いきほひ)よく(すべ)()した。170エルは()()(にぎ)覚束(おぼつか)なげに、171(ふね)(かぢ)をとり(なが)ら、172欵乃(ふなうた)(うた)()した。
173エル『(追分(おひわけ)(とら)(せん)()(やぶ)さへ()すに
174 これの湖水(こすゐ)がなぜ()えられぬ。
175安来節(やすきぶし)調(てう)(かみ)(やかた)宝珠(ほつしゆ)(たま)
176 (ぬす)みそこねた(ひと)がある。
177(つき)御空(みそら)にテルモン(やかた)
178 デビスの姿(すがた)(はな)(ゆき)
179(はな)(かを)りを(した)うて()たる
180 (てふ)かあらぬか蛆虫(うじむし)か。
181(ごふ)をワックス家令(かれい)(せがれ)
182 (いま)湖上(こじやう)()いてゐる。
183()いて明志(あかし)のテルモン(やかた)
184 これが(この)()()をさめか。
185琉球節(りうきうぶし)調(てう)(かぜ)(きた)からみ(ふね)(おく)
186 (おく)(かぜ)こそケリナの(いき)よ。
187薬鑵爺(やくくわんおやぢ)()()(わか)
188 デビスのお(ひめ)さまにや()(わか)れ』
189ワックス『コラコラ エルの(やつ)190(なに)(ぬか)すのだ、191せうもない。192(きさま)193チツと(やす)むだらよからう。194(おれ)がこれから、195()(にぎ)つて(ひと)(うた)つてやるのだ』
196エル『(琉球節(りうきうぶし)調(てう)素破(すつぱ)ぬかれたワックスさまは
197 (はら)()つなり(なみ)()つ』
198(うた)(なが)()をパツと(はな)した。199ワックスは手早(てばや)()(にぎ)り、
200ワックス『コラ、201スツテのことで()(なみ)()られるとこだつた。202チツと()をつけぬかい。203此奴(こいつ)()られた以上(いじやう)204(おも)(とこ)(ふね)()けられぬぢやないか。205馬鹿(ばか)だなア』
206エル『ヘン、207マア馬鹿(ばか)になつておかうかい、208悧口(りこう)(もの)(かしこ)(もの)器用(きよう)(もの)になると、209(みな)阿呆(あはう)(ども)道具(だうぐ)使(つか)はれるからなア。210(すこ)(しよ)でも(うま)いと、211あのエルさまに看板(かんばん)()いて(もら)はうとか、212(はし)()()いて(もら)はうとか、213大福帳(だいふくちやう)表紙(へうし)(したた)めて(もら)はうとかぬかしよつて、214阿呆(あはう)(ども)弄物(おもちや)にしられるのだ。215学者(がくしや)智者(ちしや)になるものぢやないワ。216ワックスさま、217(よろ)しく(たの)みます。218随分(ずいぶん)(まへ)さまが()(にぎ)つた(とき)立派(りつぱ)なものだ。219(あし)爪先(つまさき)(まで)(ちから)(はい)つてるやうだ。220最前(さいぜん)船頭(せんどう)のやうに、221自分(じぶん)(にぎ)つた()(つか)()()ばされぬやうになさいませや』
222(はな)(あたま)()()つかき(なが)ら、223船底(ふなぞこ)にゴロリと(よこた)はる。224ワックスは()(にぎ)り、225(ひろ)湖面(こめん)(なが)めて、
226ワックス『(あさひ)(かがや)(かがみ)(うみ)
227 (あく)(かがみ)()せて()く。
228(きよ)真水(まみづ)(ただよ)(うみ)
229 悪酔(あくすゐ)カイ(ふね)()ぐ。
230(あく)(つよ)けりや(ぜん)にも(つよ)
231 (ぜん)(あく)との(うみ)()く。
232(なみ)()(とも)(こころ)()たぬ
233 (こし)のぬけたる阿呆舟(あはうぶね)
234(ふね)(ふね)だが白河(しらかは)夜舟(よぶね)
235 (ゆめ)(うつつ)()(おく)る。
236(うし)睾丸(きんたま)()まれた(やつ)
237 とても()られぬ(たま)(ふね)
238()なぬ(さき)からあわてた(やつ)
239 十字(じふじ)街頭(がいとう)()(まよ)ふ。
240(まよ)うた亡者(まうじや)睾丸(きんたま)(つぶ)
241 阿呆(あはう)()(はう))かけ(この)(うみ)(わた)る。
242(きず)はヅキヅキ(うみ)ボトボトと
243 (なみだ)(なが)して(なみ)(うへ)
244(うへ)にや青雲(あをぐも)(した)には藻草(もぐさ)
245 (なか)()()阿呆(あはう)のエル。
246アハヽヽヽ、247面白(おもしろ)面白(おもしろ)い、248(うま)れてから(はじ)めて(ふね)()つたが、249(なん)愉快(ゆくわい)なものだな。250デビスの(くら)がり(ぶね)()りたい()りたいと(おも)つて、251(いま)(まで)どれ(だけ)マストを()てたり、252白帆(しらほ)をあげて、253きばつたか()れないが、254(いま)となつて(かんが)へてみると、255本当(ほんたう)馬鹿臭(ばかくさ)(やう)だ。256矢張(やつぱり)257人間(にんげん)(ひろ)(ところ)()()ねば駄目(だめ)だな』
258エキス『オイ、259ワックス先生(せんせい)260チツと一服(いつぷく)したら()うだ。261(おれ)(ひと)練習(れんしふ)(ため)に、262(この)(しづ)かな(うみ)で、263()稽古(けいこ)をやつておかぬと、264マサカの(とき)栃麺棒(とちめんぼう)()るからのう』
265ワックス『(なが)海路(かいろ)だから、266(おれ)(いま)から精力(せいりよく)消耗(せうまう)さしてはつまらぬから、267(きさま)櫓権(ろけん)(しばら)掌握(しやうあく)させてやらう。268サア(はや)(にぎ)つたり(にぎ)つたり』
269エキス『ヤ、270有難(ありがた)い、271それなら、272新内閣(しんないかく)総理(そうり)大臣(だいじん)だ。273官海(くわんかい)游泳術(いうえいじゆつ)()れた(この)(はう)だから、274マア()てゐ(たま)へ、275随分(ずいぶん)素晴(すばら)しい技能(ぎのう)発揮(はつき)してお()にかけるから……』
276ワックス『ヘン、277官海(くわんかい)なんて、278馬鹿(ばか)にするない、279(きさま)渡海(とかい)(いや)盗界(たうかい)覇者(はしや)だ。280盗界節(たうかいぶし)でも(うた)うて、281追手(おつて)()韜晦(とうくわい)する(はう)余程(よほど)(しやう)()うてるだらうよ』
282エキス『どうどうと(にぎ)天下(てんか)大権(たいけん)よりも
283 櫓櫂(ろかい)つかんだ面白(おもしろ)さ。
284面白(おもしろ)(あく)(あく)との身魂(みたま)()せて
285 キヨの(うみ)をば(けが)()く。
286(いぬ)()りたる以前(いぜん)のナイス
287 (いま)何処(いづこ)(なみ)(うへ)
288三百(さんびやく)(かね)何時(いつ)しか(わが)(ふところ)
289 (すべ)()でたる(うみ)(うへ)
290(かね)(かたき)浮世(うきよ)()けど
291 (かね)()ければ(わた)れない。
292さり(なが)(うみ)(わた)るにや(かね)ではゆかぬ
293 (ふね)(いのち)守神(まもりがみ)
294(かみ)(やかた)放逐(ほうちく)されて
295 (しり)据場(すゑば)(こま)(やつ)
296金盥(かなだらひ)(しり)(あて)られカンカンと
297 ()らす夏日(なつひ)(その)(あつ)さ。
298(つら)(かは)あつい(ばか)りか(しり)(まで)
299 あつい(をとこ)とほめられた。
300ワックスは(いろ)(よく)との(ふた)つに(はな)
301 ()いて彷徨(さまよ)(うみ)(うへ)
302エキスさま(うま)いエキスふ(あたら)(をとこ)
303 (たこ)のお()けと(ひと)()ふ。
304()いついて鼠泣(ねずみな)きせうと(ゆめ)みた(をとこ)
305 (ねこ)()はれて()()した。
306(ねこ)かぶり薬鑵爺(やくくわんおやぢ)機嫌(きげん)をとりて
307 ()つた甲斐(かひ)なく馬鹿(ばか)にされ。
308肝腎(かんじん)(かね)他人(たにん)にぼつたくられて
309 (しり)にお(かね)(たた)(ばら)ひ。
310天葬式(てんさうしき)()いて(わら)うて(くや)んで(をど)
311 義理泣(ぎりな)(をんな)のホクソ(ゑみ)
312ワックス『コラ、313エキス、314湖上(こじやう)()ぬだの()なぬのと、315ナニ不吉(ふきつ)なことをほざくのだ。316(また)3161颶風(しけ)襲来(しふらい)するぞ。317チツと言霊(ことたま)(つつし)まぬか』
318エキス『()がだるい、(はら)()つ、極道(ごくだう)息子(むすこ)湖上(こじやう)()せば
319 あちら此方(こちら)信天翁(あはうどり)
320信天翁(あはうどり)運上(うんじやう)()らうとワックス()がけ
321 バタバタ(つばさ)()つてゐる。
322ゆすられて、()()()()()しい(かね)
323 (くび)をつなぐと()(なみだ)
324ワックス『オイ、325ヘルマン、326エキスの(やつ)327仕方(しかた)がないから、328(きさま)(ひと)目出度(めでた)(うた)(うた)つて()(なほ)してくれないか』
329ヘルマン『さうだなア、330のり(なほ)さうと()つたつて、331(ほか)空舟(あきぶね)もなし、332矢張(やつぱり)乗続(のりつづ)けるより仕方(しかた)がないぢやないか。333玉国別(たまくにわけ)(うま)乗直(のりなほ)して、334サツサとお(さき)へやつて()きよつたが、335(おれ)(たち)一体(いつたい)行末(ゆくすゑ)(あん)じられて仕方(しかた)がないワ。336最前(さいぜん)から、337(じつ)前途(ぜんと)(あん)じ、338チツと(ばか)憂愁(いうしう)(なみだ)(しづ)みてゐた(ところ)だ。339あーあ。340仕方(しかた)がない、341……寄辺渚(よるべなぎさ)捨小舟(すてをぶね)342どこへ(とり)つく(しま)もなしか……ぢやと()つて、343湖水(こすゐ)投身(とうしん)して魚腹(ぎよふく)(はうむ)られるのも、344(なん)だか()()かないやうだし、345あゝ()うしたら()からうかなア。346(おれ)やモウ()(なか)(いや)になつたのだ。347(なん)とかして三五教(あななひけう)のムニヤ ムニヤ ムニヤ』
348ワックス『ヤ、349(なん)(まを)す、350(きさま)三五教(あななひけう)弟子(でし)になりたいといふのだな』
351ヘルマン『ナアニ、352三五教(あななひけう)(むか)うを()つて(ひと)(をとこ)()てねば世間(せけん)顔出(かほだ)しが出来(でき)ないといふのだ。353玉国別(たまくにわけ)一行(いつかう)には(おれ)(たち)があこ(まで)仕組(しぐ)みて、354(すで)(あだ)(むく)ゐむと、355九分(くぶ)九厘(くりん)(まで)()つた(ところ)へ、356マンヂューシリ菩薩(ぼさつ)か、357アバローキテー・358シュヷラのやうな女神(めがみ)(さま)立派(りつぱ)(ふね)(もつ)(むか)へに()たり、359自分(じぶん)(いぬ)()つて海上(かいじやう)(わた)つて()くといふ(やう)(はな)(わざ)出来(でき)るのだからなア。360(なん)()つても(てき)(なが)(たい)したものだよ』
361ワックス『サア、362そこが魔法使(まはふつかひ)魔法使(まはふつかひ)たる所以(ゆゑん)だ。363正法(しやうはふ)不思議(ふしぎ)なし、364君子(くんし)怪力(くわいりき)乱神(らんしん)(かた)らずといふぢやないか。365キツと邪法(じやはふ)だよ』
366ヘルマン『それでもお(まへ)(やう)微力(びりよく)乱心(らんしん)(くら)べてみたら、367余程(よほど)マシぢやないか。368(おれ)(なん)だか、369あの三五教(あななひけう)とやらが、370(にはか)(すき)に……なつて……は()ぬのだ。371本当(ほんたう)三五教(あななひけう)(かみ)(さま)とバラモン(けう)(かみ)(さま)とは、372正邪(せいじや)善悪(ぜんあく)差別(けじめ)非常(ひじやう)についてゐる(やう)(おも)はれてならないのだ』
373ワックス『どちらが(せい)374どちらが(じや)といふのだ』
375ヘルマン『(じや)(まを)して、376(にはか)判断(はんだん)がつかないワ。377マア()(ところ)(まで)()かねば(わか)らない。378(しか)(なが)安心(あんしん)してくれ、379(おれ)(もと)よりバラモン教徒(けうと)だから、380メツタに外道(げだう)(をしへ)溺没(できぼつ)するやうな無腸漢(むちやうかん)ぢやないからのう。381(しか)(なが)らよく(かんが)へてみよ、382(おれ)(たち)()(にん)はバラモン(けう)のピュリタンぢやないか。383それにも(かかは)らず、384バラモン(やかた)大勢(おほぜい)(まへ)笞刑(ちけい)をうけて放逐(はうちく)されたのだから、385(かみ)(さま)から見放(みはな)されたのかも()れないよ。386さすれば()てる(かみ)もあれば(ひろ)(かみ)もありといふから、387実際(じつさい)()てられたとすれば、388(ひと)無宗教(むしうけう)(この)()()つてゆけないから、389(なん)とか(かんが)へねばなるまい』
390ワックス『ナニ、391心配(しんぱい)するな。392キヨの(みなと)へついたら最後(さいご)393どこもかも(みな)バラモン(けう)勢力(せいりよく)範囲(はんゐ)だから、394三五教(あななひけう)魔法使(まはふつかひ)(うま)捕縛(ほばく)するか、395もしも(ちから)(およ)ばねば関所(せきしよ)密告(みつこく)して手柄(てがら)(あら)はしさへすれば、396(また)立派(りつぱ)なバラモン(けう)のピュリタンとして、397安全(あんぜん)無事(ぶじ)関所(せきしよ)切手(きつて)(もら)ひ、398ハルナの(みやこ)安全(あんぜん)()かうとままだ。399(なん)とマア(ふね)(はや)いことだのう。400これも(まつた)くバラモンの(かみ)(さま)のお(かげ)だよ。401サア、402エル、403そこどけ、404(おれ)(ひと)()(あやつ)つてやらう』
405()(なが)ら、406(かは)(がは)()(にぎ)り、407順風(じゆんぷう)(たす)けられて408都合(つがふ)()くキヨの(みなと)三日目(みつかめ)夕方(ゆふがた)安着(あんちやく)したりける。
409大正一二・四・一 旧二・一六 於皆生温泉浜屋 松村真澄録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki