霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一七章 倉明(くらあき)〔一五一七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第59巻 真善美愛 戌の巻 篇:第3篇 地底の歓声 よみ(新仮名遣い):ちていのかんせい
章:第17章 倉明 よみ(新仮名遣い):くらあき 通し章番号:1517
口述日:1923(大正12)年04月02日(旧02月17日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年7月8日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
倉庫の中では、閉じ込められたカンナとチルナ姫が嘆きの述懐を歌っている。そこへ初稚姫が一同を引きつれて二人を解放しにやってきた。
チルナ姫は憎い初稚姫を見て飛び掛かるが、初稚姫は体をかわし、落ち着くようにと声をかけた。初稚姫の様子が館に逗留していたときと違っているのに気が付いたチルナ姫は謝罪した。チルテルは自分も初稚姫に救われて改心したことをチルナ姫に告げた。
ワックスたちも改心の情を表し、三千彦たちに詫びを述べた。玉国別は初稚姫に礼を述べた。初稚姫は、神の命の真心を力となして進むように玉国別に諭すと、一同に目礼してスマートを従え、足早に館の門を出た。イクとサールは遅れを取っては大変と姫の後を追っていく。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:0000-00-00 00:00:00 文字数:3068 OBC :rm5917
愛善世界社版:225頁 八幡書店版:第10輯 565頁 修補版: 校定版:238頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 第一(だいいち)倉庫(さうこ)の中(なか)には002カンナ、003チルナの両人(りやうにん)が互(たがひ)に悲歎(ひたん)の涙(なみだ)に暮(く)れ乍(なが)ら004世(よ)を果敢(はか)なみて述懐(じゆつくわい)を歌(うた)つて居(ゐ)る。
 
005チルナ姫(ひめ)『恋(こ)ひ慕(した)ふ吾(わが)背(せ)の君(きみ)は曲神(まがかみ)に
006カンナ…………『襲(おそ)はれ玉(たま)ひし事(こと)の悲(かな)しさ。
007チルナ姫(ひめ)『暗(くら)がりの倉(くら)に情(つれ)なく投(な)げ込(こ)まれ
008カンナ…………『乾(かわ)く由(よし)なき吾(わが)涙(なみだ)かな。
009チルナ姫(ひめ)『初稚(はつわか)の姫(ひめ)と称(とな)ふる曲神(まがかみ)は
010カンナ…………『此(この)世(よ)を乱(みだ)す人鬼(ひとおに)ならめ。
011チルナ姫(ひめ)『何時(いつ)の日(ひ)かこれの鉄門(かなど)や開(ひら)かれむ
012カンナ…………『頼(たよ)り無(な)き身(み)を悶(もだ)え苦(くる)しむ。
013チルナ姫(ひめ)『飢(う)ゑ喝(かわ)く此(この)苦(くる)しみを如何(いか)にせむ
014カンナ…………『唾(つばき)さへ出(で)ぬ二人(ふたり)の身(み)の上(うへ)。
015チルナ姫(ひめ)『悲(かな)しさは涙(なみだ)となりて溢(あふ)れけり
016カンナ…………『世(よ)の荒波(あらなみ)に揉(も)まれし身(み)には。
017チルナ姫(ひめ)『大空(おほぞら)に月日(つきひ)は清(きよ)く輝(かがや)けど
018カンナ…………『心(こころ)の空(そら)を黒雲(くろくも)包(つつ)めり。
019チルナ姫(ひめ)『如何(いか)にしてこれの鉄門(かなど)を開(ひら)かむと
020カンナ…………『あせれど最早(もはや)力(ちから)尽(つ)きぬる。
021チルナ姫(ひめ)『此(この)上(うへ)は只(ただ)大神(おほかみ)に願(ね)ぎ奉(まつ)り
022カンナ…………『救(すく)はるる時(とき)を待(ま)つばかりなり。
023チルナ姫(ひめ)『恋雲(こひぐも)に深(ふか)く包(つつ)まれ身(み)の光(ひかり)
024カンナ…………『隠(かく)して一人(ひとり)吾(われ)は苦(くる)しむ。
025チルナ姫(ひめ)『背(せ)の君(きみ)は女(をんな)に心(こころ)とられましぬ
026カンナ…………『吾(われ)も変(かは)らず迷(まよ)ひ苦(くる)しむ。
027カンナ『デビス姫(ひめ)娶(めと)らむものと村肝(むらきも)の
028チルナ姫(ひめ)………『心(こころ)砕(くだ)きし人(ひと)の憐(あは)れさ。
029カンナ『太腿(ふともも)に噛(かぶ)りつかれた苦(くる)しさを
030チルナ姫(ひめ)………『思(おも)ひやるだに涙(なみだ)ぐまるる。
031カンナ『チルナ姫(ひめ)暗(やみ)に紛(まぎ)れて吾(わが)腿(もも)に
032チルナ姫(ひめ)………『獅噛(しが)みついたる事(こと)の悔(くる)しさ。
033カンナ『惟神(かむながら)神(かみ)の御前(みまへ)に罪(つみ)を悔(く)い
034チルナ姫(ひめ)………『詫(わ)びつ恨(うら)みつ泣(な)き渡(わた)るかな。
035カンナ『バラモンの皇(すめ)大神(おほかみ)は吾(わが)身(み)をば
036チルナ姫(ひめ)………『救(すく)ひまさずやいとど悲(かな)しき。
037チルナ姫(ひめ)『月(つき)に村雲(むらくも)花(はな)には嵐(あらし)
038吹(ふ)き荒(すさ)むなる世(よ)の中(なか)に
039花(はな)を翳(かざ)して永久(とこしへ)に
040此(この)世(よ)を安(やす)く渡(わた)らむと
041祈(いの)りし事(こと)も水(みづ)の泡(あわ)
042初稚姫(はつわかひめ)と云(い)ふナイス
043現(あら)はれ来(きた)りて吾(わが)夫(つま)の
044清(きよ)き心(こころ)を濁(にご)らせつ
045心(こころ)にもなき枉業(まがわざ)を
046尽(つく)させ玉(たま)ふ恨(うら)めしさ
047吾(わが)背(せ)の君(きみ)はバラモンの
048キヨの関所(せきしよ)を預(あづか)りて
049ハルナの都(みやこ)へ攻(せ)め寄(よ)する
050三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)
051一人(ひとり)も残(のこ)さず引捕(ひつと)らへ
052地底(ちてい)に深(ふか)く穿(うが)ちたる
053その岩窟(がんくつ)に投(な)げ込(こ)みて
054此(この)世(よ)の災(わざはひ)払(はら)はむと
055誠心(まことごころ)を捧(ささ)げつつ
056朝(あさ)な夕(ゆふ)なに大神(おほかみ)に
057感謝(かんしや)祈願(きぐわん)の太祝詞(ふとのりと)
058宣(の)らせ玉(たま)ひし折(をり)もあれ
059木花(このはな)散(ち)らす夜嵐(よあらし)に
060吹(ふ)き捲(まく)られて妹(いも)と背(せ)の
061道(みち)を誤(あやま)り玉(たま)ひつつ
062妾(わらは)の身(み)をば館(やかた)より
063追放(つゐはう)せむとなし玉(たま)ふ
064その曲業(まがわざ)ぞ悲(かな)しけれ
065吾(わが)背(せ)の君(きみ)の迷(まよ)ひをば
066覚(さ)まし呉(く)れむと心(こころ)にも
067なき偽(いつは)りを構(かま)へつつ
068半狂乱(はんきやうらん)を装(よそほ)ひて
069戸障子(としやうじ)手道具(てだうぐ)悉(ことごと)く
070打折(うちを)り砕(くだ)き警告(けいこく)を
071与(あた)へし事(こと)の仇(あだ)となり
072忽(たちま)ち手足(てあし)を縛(しば)られて
073無慙(むざん)や暗(くら)き倉(くら)の中(なか)
074投(な)げ入(い)れられし悲(かな)しさよ
075これも全(まつた)くリュウチナント
076カンナの司(つかさ)の待遇(もてな)しが
077面白(おもしろ)なかりし其(その)為(ため)と
078一度(いちど)は怨(うら)み居(ゐ)たりしが
079カンナの司(つかさ)も今(いま)ここに
080吾(われ)等(ら)と共(とも)に苦(くる)しめる
081姿(すがた)を見(み)るより同情(どうじやう)の
082涙(なみだ)に濡(ぬ)れて吾(わが)怨(うら)み
083春野(はるの)の雪(ゆき)と消(き)えにけり
084あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
085神(かみ)の恵(めぐ)みの幸(さち)はひて
086一日(ひとひ)も早(はや)く片時(かたとき)も
087吾(われ)等(ら)二人(ふたり)の身魂(みたま)をば
088広(ひろ)きに救(すく)ひ玉(たま)へかし
089偏(ひとへ)に願(ねが)ひ奉(たてまつ)る
090梵天(ぼんてん)帝釈(たいしやく)自在天(じざいてん)
091大国彦(おほくにひこ)の大御神(おほみかみ)
092大国彦(おほくにひこ)の神柱(かむばしら)
093御前(みまへ)に慎(つつし)み鹿児自(かごじ)物(もの)
094膝(ひざ)折伏(をりふ)せて願(ね)ぎ奉(まつ)る。
095天地(あめつち)に神(かみ)は在(ま)さずや居(ゐ)まさずや
096この願(ね)ぎ事(ごと)も聞(きこ)し召(め)さずや。
097村肝(むらきも)の心(こころ)の暗(やみ)の戸(と)打(うち)開(あ)けて
098救(すく)はせ玉(たま)へ大御神(おほみかみ)等(たち)』
099カンナ『バラモン教(けう)の神柱(かむばしら)
100ハルナの都(みやこ)に在(あ)れませる
101大黒主(おほくろぬし)の命令(みこと)もて
102リュウチナントに任(にん)ぜられ
103チルテル司(つかさ)に従(したが)ひて
104己(おの)が務(つと)めを忠実(ちうじつ)に
105仕(つか)へまつりし此(この)カンナ
106如何(いか)なる悪魔(あくま)の魅(みい)りしか
107思(おも)ひも寄(よ)らぬ災難(さいなん)に
108不遇(ふぐう)を喞(かこ)つ今日(けふ)の身(み)は
109あるにあられぬ悩(なや)みなり
110チルテルキャプテンに頼(たの)まれて
111チルナの姫(ひめ)の御(おん)前(まへ)に
112心(こころ)にあらぬ偽(いつは)りを
113図(づ)う図(づ)うしくも並(なら)べ立(た)て
114清(きよ)き心(こころ)を曇(くも)らせて
115姫(ひめ)の災(わざはひ)招(まね)きたる
116その罪悪(ざいあく)を省(かへり)みて
117いと恐(おそ)ろしくなりにけり
118暗(やみ)の中(なか)とは云(い)ひ乍(なが)ら
119吾(わが)太腿(ふともも)を峻烈(しゆんれつ)に
120噛(か)み切(き)り玉(たま)ひし其(その)痛(いた)さ
121無念(むねん)の歯噛(はが)みなし乍(なが)ら
122怨(うら)みを晴(は)らし呉(く)れむずと
123拳(こぶし)を固(かた)めて二(ふた)つ三(み)つ
124尊(たふと)き面(おもて)を殴(なぐ)りしは
125悔(くや)むで返(かへ)らぬ過失(あやまち)ぞ
126事(こと)の起(おこ)りは此(この)カンナ
127物(もの)の黒白(あやめ)も分(わか)らずに
128欲(よく)に迷(まよ)ひし其(その)為(ため)ぞ
129許(ゆる)させ玉(たま)へチルナ姫(ひめ)
130人(ひと)は神(かみ)の子(こ)神(かみ)の宮(みや)
131もとより鬼(おに)の子(こ)でもない
132大蛇(をろち)の腹(はら)に生(うま)れたる
133蛇(じや)でもなければ曲(まが)でない
134何(いづ)れも神(かみ)の分霊(わけみたま)
135水晶魂(すいしやうだま)の持主(もちぬし)よ
136さはさり乍(なが)ら大空(おほぞら)の
137月日(つきひ)も暫(しば)し黒雲(くろくも)に
138包(つつ)まれ姿(すがた)を隠(かく)す如(ごと)
139吾(わが)魂(たましひ)も何時(いつ)しかに
140悪魔(あくま)の虜(とりこ)となり果(は)てて
141思(おも)はぬ不覚(ふかく)をとりました
142かうなり行(ゆ)くも己(おの)が身(み)の
143犯(をか)せし罪(つみ)の報(むく)ひぞや
144チルテルさまや姫(ひめ)様(さま)を
145最早(もは)や少(すこ)しも怨(うら)まない
146梵天(ぼんてん)帝釈(たいしやく)自在天(じざいてん)
147二人(ふたり)の悩(なや)みを逸早(いちはや)く
148救(すく)はせ玉(たま)へ惟神(かむながら)
149黒白(あやめ)も分(わ)かぬ暗(やみ)の中(なか)
150双手(もろて)を合(あは)せ真心(まごころ)を
151捧(ささ)げて祈(いの)り奉(たてまつ)る』
152 斯(か)く歌(うた)ふ折(をり)しも俄(にはか)に四辺(あたり)騒(さわ)がしく、153数十(すうじふ)人(にん)の足音(あしおと)が聞(きこ)えて来(き)た。154二人(ふたり)は耳(みみ)をすまして何者(なにもの)の襲来(しふらい)なるかと暫(しば)し様子(やうす)を窺(うかが)つて居(ゐ)た。155忽(たちま)ち、1551ガチヤリと戸(と)を開(ひら)く音(おと)、156見(み)れば初稚姫(はつわかひめ)初(はじ)めチルテル其(その)外(ほか)沢山(たくさん)な宣伝使(せんでんし)や兵士(へいし)が立(た)つて居(ゐ)る。157チルナ姫(ひめ)は矢庭(やには)に倉(くら)を飛(と)び出(だ)し、158初稚姫(はつわかひめ)目蒐(めが)けて夜叉(やしや)の如(ごと)く飛(と)びついた。159初稚姫(はつわかひめ)はヒラリと体(たい)を躱(かは)し、
160初稚姫(はつわかひめ)『三五(あななひ)の誠(まこと)の道(みち)を伝(つた)へ行(ゆ)く
161吾(われ)は初稚姫(はつわかひめ)の神(かみ)ぞや。
162チルナ姫(ひめ)妾(わらは)の姿(すがた)を見誤(みあやま)り
163怨(うら)み玉(たま)ふか心(こころ)もとなや』
164チルナ姫(ひめ)『よく見(み)れば何処(どこ)とはなしに御(おん)姿(すがた)
165変(かは)らせ玉(たま)ひぬ許(ゆる)させ玉(たま)へ』
166チルテル『いと恋(こ)やの妻(つま)の命(みこと)よ心(こころ)せよ
167吾(われ)も初稚姫(はつわかひめ)に救(すく)はれしぞや』
168チルナ姫(ひめ)『背(せ)の君(きみ)に刃向(はむか)ひまつりし吾(わが)罪(つみ)を
169赦(ゆる)し玉(たま)はれ神(かみ)の心(こころ)に』
170チルテル『吾(わが)胸(むね)に巣(すぐ)へる曲(まが)に誘(いざな)はれ
171思(おも)はぬ罪(つみ)を犯(をか)しけるかな。
172今日(けふ)よりは心(こころ)の駒(こま)を立(た)て直(なほ)し
173チルナの姫(ひめ)を厚(あつ)く愛(めで)なむ』
174チルナ姫(ひめ)『有難(ありがた)し其(そ)の宣(の)り言(ごと)を聞(き)く上(うへ)は
175仮令(たとへ)死(し)すとも怨(うら)まざらまし』
176カンナ『チルテルの司(つかさ)よ清(きよ)く許(ゆる)しませ
177罪(つみ)に溺(おぼ)れし吾(わが)魂(たましひ)を』
178玉国別(たまくにわけ)『皇神(すめかみ)の恵(めぐ)みの露(つゆ)に霑(うるほ)ひて
179吾(われ)人(ひと)ともに勇(いさ)みけるかな』
180三千彦(みちひこ)『日影(ひかげ)なき地底(ちてい)の洞(ほら)に落(おと)されて
181心(こころ)砕(くだ)きし事(こと)の果敢(はか)なさ。
182初稚姫(はつわかひめ)神(かみ)の命(みこと)があれまして
183吾(われ)等(ら)が命(いのち)を救(すく)ひ玉(たま)ひぬ。
184何時(いつ)の世(よ)か此(この)御恵(みめぐみ)を忘(わす)るべき
185弥勒(みろく)の御世(みよ)の末(すゑ)の末(すゑ)まで』
186ワックス『テルモンの神(かみ)の館(やかた)に色々(いろいろ)の
187枉(まが)企(たく)みたる吾(われ)はワックス。
188今(いま)こそは誠心(まことごころ)に帰(かへ)りけり
189許(ゆる)させ玉(たま)へ三千彦(みちひこ)の君(きみ)』
190三千彦(みちひこ)『村肝(むらきも)の心(こころ)の花(はな)の咲(さ)きぬれば
191世(よ)に憎(にく)むべき人(ひと)はあらまし』
192ヘルマン『如何(いか)にして己(おの)が犯(をか)せし罪科(つみとが)を
193詫(わ)びむと思(おも)ふ心(こころ)苦(くる)しさ。
194デビス姫(ひめ)の清(きよ)き身魂(みたま)を曇(くも)らせし
195吾(われ)は此(この)世(よ)の魔神(まがみ)なりしか』
196エキス『五百笞(いほむち)の戒(いまし)め受(う)けて遙々(はるばる)と
197来(きた)りて此処(ここ)に夢(ゆめ)は覚(さ)めけり』
198エル『三千彦(みちひこ)の厚(あつ)き情(なさけ)の御(お)計(はか)らひ
199仇(あだ)に返(かへ)せし吾(わが)身(み)の嘆(うた)てさ。
200三千彦(みちひこ)の情(なさ)けの盥(たらひ)なかりせば
201吾(わが)身体(からたま)の如何(いか)で保(たも)たむ。
202海山(うみやま)の恵(めぐ)みを受(う)けし身(み)ながらに
203仇(あだ)と狙(ねら)ひし事(こと)の苦(くる)しさ』
204イク『初稚姫(はつわかひめ)神(かみ)の命(みこと)の後(あと)になり
205前(さき)になりつつ進(すす)み来(き)にけり』
206サール『キヨ港(みなと)関守館(せきもりやかた)に尋(たづ)ね来(き)て
207思(おも)はぬ人(ひと)に巡(めぐ)り合(あ)ひしよ』
208テク『いざさらばバーチル主(ぬし)の館(やかた)へと
209急(いそ)いで行(ゆ)かむ皆(みな)の人(ひと)等(たち)』
210チルテル『今(いま)暫(しば)し館(やかた)の中(なか)を片(かた)づけて
211後(のち)に行(ゆ)くべし先(さき)に出(い)でませ』
212初稚姫(はつわかひめ)『いざさらば吾(われ)はこれより皇神(すめかみ)の
213宣(の)りのまにまに別(わか)れ行(ゆ)かなむ』
214玉国別(たまくにわけ)『今(いま)暫(しば)し待(ま)たせ玉(たま)へよ初稚姫(はつわかひめ)
215君(きみ)の恵(めぐ)みに報(むく)ゆ術(すべ)なき』
216初稚姫(はつわかひめ)『玉国別(たまくにわけ)神(かみ)の命(みこと)の真心(まごころ)を
217力(ちから)となして進(すす)み行(ゆ)くべし』
218 斯(か)く歌(うた)ひ乍(なが)ら一同(いちどう)に目礼(もくれい)し、219スマートを従(したが)へ足許(あしもと)早(はや)く館(やかた)の門(もん)を出(い)づるや、220忽(たちま)ち姿(すがた)は霞(かすみ)と消(き)えさせ玉(たま)ふた。221初稚姫(はつわかひめ)はスマートの背(せな)に跨(またが)り木(こ)の間(ま)を潜(くぐ)つてハルナの都(みやこ)へと急(いそ)がれたのである。222イク、223サールの両人(りやうにん)は折角(せつかく)追(お)つついた姫(ひめ)様(さま)に見捨(みす)てられては大変(たいへん)と、224両人(りやうにん)は取(と)る物(もの)も取(と)り敢(あへ)ず、225トントントンと地響(ぢひび)き打(う)たせ226水晶(すいしやう)の宝玉(はうぎよく)を片手(かたて)に固(かた)く握(にぎ)り乍(なが)ら追(お)つて行(ゆ)く。
227(大正一二・四・二 旧二・一七 於皆生温泉浜屋 北村隆光録)
228(昭和九・一二・一 王仁校正)
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