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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第59巻(戌の巻)
序
総説歌
第1篇 毀誉の雲翳
第1章 逆艪
第2章 歌垣
第3章 蜜議
第4章 陰使
第5章 有升
第2篇 厄気悋々
第6章 雲隠
第7章 焚付
第8章 暗傷
第9章 暗内
第10章 変金
第11章 黒白
第12章 狐穴
第3篇 地底の歓声
第13章 案知
第14章 舗照
第15章 和歌意
第16章 開窟
第17章 倉明
第4篇 六根猩々
第18章 手苦番
第19章 猩々舟
第20章 海竜王
第21章 客々舟
第22章 五葉松
第23章 鳩首
第24章 隆光
第25章 歓呼
余白歌
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(B)
(N)
五葉松 >>>
第二一章
客々舟
(
きやつきやぶね
)
〔一五二一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第59巻 真善美愛 戌の巻
篇:
第4篇 六根猩々
よみ(新仮名遣い):
ろっこんしょうじょう
章:
第21章 客々舟
よみ(新仮名遣い):
きゃっきゃぶね
通し章番号:
1521
口述日:
1923(大正12)年04月03日(旧02月18日)
口述場所:
皆生温泉 浜屋
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年7月8日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
伊太彦は宣伝歌を朗々と歌い、自分の猩々ヶ島での活躍を滑稽交じりに織り交ぜる。猩々たちは拍子を取る。舟は数万の魚族に送られて南を指して帰って行く。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm5921
愛善世界社版:
268頁
八幡書店版:
第10輯 579頁
修補版:
校定版:
284頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
猩々王
(
しやうじやうわう
)
の
肉体
(
にくたい
)
の
002
亡
(
ほろ
)
びし
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
るよりも
003
海竜王
(
さあがらりうわう
)
は
雀踊
(
こをどり
)
し
004
猩々島
(
しやうじやうじま
)
に
駆
(
か
)
け
上
(
のぼ
)
り
005
小猿
(
こざる
)
の
群
(
むれ
)
を
悉
(
ことごと
)
く
006
呑
(
の
)
み
喰
(
くら
)
はむと
蜒々
(
えんえん
)
と
007
体
(
からだ
)
も
太
(
ふと
)
く
弥長
(
いやなが
)
く
008
島
(
しま
)
のかための
岩石
(
がんせき
)
に
009
三周
(
みまは
)
り
四周
(
よまは
)
り
巻
(
ま
)
きつきて
010
大
(
おほ
)
きな
口
(
くち
)
を
開
(
あ
)
け
乍
(
なが
)
ら
011
一
(
ひと
)
つも
残
(
のこ
)
さず
丸呑
(
まるの
)
みに
012
なさむものぞと
控
(
ひか
)
へ
居
(
ゐ
)
る
013
数多
(
あまた
)
の
猩々
(
しやうじやう
)
は
驚
(
おどろ
)
いて
014
狼狽
(
うろた
)
へ
騒
(
さわ
)
ぎキヤツキヤツと
015
悲鳴
(
ひめい
)
をあげてヤッコスや
016
ハール、サボールの
前
(
まへ
)
に
寄
(
よ
)
り
017
救
(
すく
)
ひを
乞
(
こ
)
へば
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
018
猩々
(
しやうじやう
)
よりか
身
(
み
)
の
大事
(
だいじ
)
019
仮令
(
たとへ
)
悪竜
(
あくりう
)
に
喰
(
く
)
はるるも
020
能
(
あた
)
ふ
限
(
かぎ
)
りの
抵抗
(
ていかう
)
を
021
試
(
こころ
)
み
其
(
その
)
身
(
み
)
の
万一
(
まんいち
)
を
022
僥倖
(
げうかう
)
せむと
磯端
(
いそばた
)
の
023
石
(
いし
)
を
掴
(
つか
)
んでバラバラと
024
悪竜
(
あくりう
)
目蒐
(
めが
)
けて
打
(
う
)
ちつける
025
三百
(
さんびやく
)
有余
(
いうよ
)
の
猩々
(
しやうじやう
)
は
026
猿
(
さる
)
の
人真似
(
ひとまね
)
各自
(
めいめい
)
に
027
石
(
いし
)
を
手
(
て
)
にして
投
(
な
)
げつける
028
流石
(
さすが
)
の
悪竜
(
あくりう
)
も
面喰
(
めんくら
)
ひ
029
少時
(
しばし
)
躊
(
ためら
)
ふ
折
(
をり
)
もあれ
030
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
031
伊太彦
(
いたひこ
)
司
(
つかさ
)
が
現
(
あら
)
はれて
032
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
033
厳
(
いづ
)
の
言霊
(
ことたま
)
一
(
ひ
)
二
(
ふ
)
三
(
み
)
四
(
よつ
)
034
五
(
いつ
)
六
(
むゆ
)
七
(
なな
)
八
(
や
)
九
(
ここの
)
十
(
たり
)
035
百
(
もも
)
千
(
ち
)
万
(
よろづ
)
の
声
(
こゑ
)
共
(
とも
)
に
036
打
(
うち
)
出
(
だ
)
す
言霊
(
ことたま
)
石
(
いし
)
の
玉
(
たま
)
037
見
(
み
)
る
見
(
み
)
る
竜
(
りう
)
の
体
(
からだ
)
より
038
黒煙
(
こくえん
)
濛々
(
もうもう
)
立
(
たち
)
昇
(
のぼ
)
り
039
硬
(
かた
)
き
鱗
(
うろこ
)
の
間
(
あひだ
)
より
040
紅蓮
(
ぐれん
)
の
舌
(
した
)
を
吐
(
は
)
き
出
(
いだ
)
し
041
その
極熱
(
ごくねつ
)
に
堪
(
た
)
へかねて
042
海竜王
(
さあがらりうわう
)
は
岩山
(
いはやま
)
を
043
下
(
くだ
)
りてバツサリ
海中
(
かいちう
)
に
044
姿
(
すがた
)
隠
(
かく
)
せし
嬉
(
うれ
)
しさよ
045
ヤッコス、ハール、サボールは
046
ハツと
胸
(
むね
)
をば
撫
(
な
)
で
下
(
お
)
ろし
047
伊太彦
(
いたひこ
)
司
(
つかさ
)
の
率
(
ひき
)
ゐたる
048
二十
(
にじふ
)
の
船
(
ふね
)
に
打
(
うち
)
向
(
むか
)
ひ
049
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
せて
感涙
(
かんるい
)
に
050
咽
(
むせ
)
びかへるぞ
憐
(
あは
)
れなれ
051
数多
(
あまた
)
の
猩々
(
しやうじやう
)
は
掌
(
て
)
を
合
(
あは
)
せ
052
伊太彦
(
いたひこ
)
司
(
つかさ
)
に
打
(
うち
)
向
(
むか
)
ひ
053
キヤツキヤツキヤツと
鬨
(
とき
)
の
声
(
こゑ
)
054
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
に
泣
(
な
)
き
叫
(
さけ
)
ぶ
055
忽
(
たちま
)
ち
湖水
(
こすゐ
)
は
湧
(
わ
)
き
返
(
かへ
)
り
056
熱湯
(
ねつとう
)
の
如
(
ごと
)
くなり
変
(
かは
)
り
057
大小
(
だいせう
)
無数
(
むすう
)
の
鱗族
(
うろくづ
)
は
058
皆
(
みな
)
水面
(
すいめん
)
にポカポカと
059
腹
(
はら
)
を
覆
(
かや
)
して
浮
(
うか
)
び
居
(
ゐ
)
る
060
伊太彦
(
いたひこ
)
之
(
これ
)
を
憐
(
あは
)
れみて
061
忽
(
たちま
)
ち
天地
(
てんち
)
の
大神
(
おほかみ
)
に
062
向
(
むか
)
つて
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
063
一
(
ひと
)
二
(
ふた
)
三
(
み
)
四
(
よ
)
五
(
いつ
)
つ
六
(
む
)
つ
064
七
(
なな
)
八
(
や
)
九
(
ここの
)
つ
十
(
たり
)
百
(
もも
)
千
(
ち
)
065
万
(
よろづ
)
の
声
(
こゑ
)
に
千万
(
ちよろづ
)
の
066
海
(
うみ
)
に
浮
(
うか
)
びし
鱗族
(
うろくづ
)
は
067
忽
(
たちま
)
ち
元気
(
げんき
)
恢復
(
くわいふく
)
し
068
溌溂
(
はつらつ
)
として
撥
(
は
)
ね
廻
(
まは
)
り
069
一同
(
いちどう
)
首
(
かうべ
)
を
並
(
なら
)
べつつ
070
感謝
(
かんしや
)
の
意
(
い
)
をば
表
(
へう
)
しける
071
神
(
かみ
)
の
使
(
つかひ
)
の
伊太彦
(
いたひこ
)
は
072
島
(
しま
)
に
残
(
のこ
)
りし
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
073
神
(
かみ
)
の
御子
(
みこ
)
をば
相救
(
あひすく
)
ひ
074
天王
(
てんわう
)
の
森
(
もり
)
の
眷族
(
けんぞく
)
と
075
仕
(
つか
)
へまつりし
数百
(
すうひやく
)
の
076
猩々
(
しやうじやう
)
の
命
(
いのち
)
を
救済
(
きうさい
)
し
077
海
(
うみ
)
に
浮
(
うか
)
べる
鱗族
(
うろくづ
)
の
078
生命
(
せいめい
)
までも
救
(
すく
)
ひつつ
079
真善
(
しんぜん
)
美愛
(
びあい
)
の
神業
(
しんげふ
)
を
080
最
(
い
)
と
極端
(
きよくたん
)
に
発揮
(
はつき
)
して
081
心
(
こころ
)
も
勇
(
いさ
)
む
波
(
なみ
)
の
上
(
うへ
)
082
天津
(
あまつ
)
神
(
かみ
)
等
(
たち
)
国津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
083
三五教
(
あななひけう
)
を
守
(
まも
)
ります
084
百
(
もも
)
のエンゼル
神使
(
かみつかひ
)
085
その
外
(
ほか
)
海
(
うみ
)
の
神々
(
かみがみ
)
に
086
感謝
(
かんしや
)
の
祝詞
(
のりと
)
を
捧
(
ささ
)
げつつ
087
科戸
(
しなど
)
の
風
(
かぜ
)
に
送
(
おく
)
られて
088
心
(
こころ
)
いそいそ
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く
089
かかる
例
(
ためし
)
はあら
尊
(
たふ
)
と
090
天地
(
あめつち
)
開
(
ひら
)
けし
初
(
はじ
)
めより
091
又
(
また
)
と
世界
(
せかい
)
に
荒波
(
あらなみ
)
の
092
上
(
うへ
)
漕
(
こ
)
ぎ
渡
(
わた
)
る
神
(
かみ
)
の
船
(
ふね
)
093
実
(
げ
)
にも
目出度
(
めでた
)
き
次第
(
しだい
)
なり
094
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
095
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましまして
096
この
物語
(
ものがたり
)
詳細
(
まつぶさ
)
に
097
水
(
みづ
)
も
洩
(
も
)
らさずスクスクと
098
述
(
の
)
べさせ
玉
(
たま
)
へと
瑞月
(
ずゐげつ
)
が
099
畳
(
たたみ
)
の
波
(
なみ
)
に
浮
(
うか
)
びたる
100
長方形
(
ちやうはうけい
)
の
方舟
(
はこぶね
)
に
101
横
(
よこ
)
たはりつつ
舵
(
かぢ
)
をとり
102
敷島
(
しきしま
)
煙草
(
たばこ
)
のマストより
103
歪
(
ゆが
)
まぬ
煙
(
けぶり
)
を
吹
(
ふ
)
き
乍
(
なが
)
ら
104
四
(
し
)
月
(
ぐわつ
)
三日
(
みつか
)
も
北村
(
きたむら
)
の 北村隆光
105
隆
々
(
りうりう
)
光
(
ひか
)
る
朝日影
(
あさひかげ
)
106
背
(
せな
)
に
浴
(
あ
)
びつつ
述
(
の
)
べて
行
(
ゆ
)
く
107
伯耆
(
はうき
)
の
国
(
くに
)
の
米子駅
(
よなごえき
)
108
一
(
いち
)
里
(
り
)
半
(
なかば
)
を
隔
(
へだ
)
てたる
109
名
(
な
)
さへ
目出
(
めで
)
たき
皆生村
(
かいけむら
)
110
浜屋
(
はまや
)
旅館
(
りよくわん
)
の
二階
(
にかい
)
の
間
(
ま
)
111
生
(
い
)
きた
神代
(
かみよ
)
の
引
(
ひき
)
うつし
112
処女
(
しよぢよ
)
の
著作
(
ちよさく
)
の
物語
(
ものがたり
)
113
諄々
(
じゆんじゆん
)
ここに
述
(
の
)
べて
行
(
ゆ
)
く
114
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
115
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
116
只
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
117
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
せ
聞
(
き
)
き
直
(
なほ
)
せ
118
身
(
み
)
の
過
(
あやま
)
ちは
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
す
119
三五教
(
あななひけう
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
120
三十万
(
さんじふまん
)
年
(
ねん
)
末
(
すゑ
)
の
世
(
よ
)
に
121
生
(
うま
)
れ
出
(
い
)
でたる
瑞月
(
ずゐげつ
)
が
122
雲霧
(
くもきり
)
分
(
わ
)
けて
朦
(
おぼろ
)
げに
123
宣
(
の
)
べ
伝
(
つた
)
へ
行
(
ゆ
)
く
物語
(
ものがたり
)
124
脱線
(
だつせん
)
誤謬
(
ごびう
)
は
多
(
おほ
)
くとも
125
広
(
ひろ
)
き
心
(
こころ
)
に
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
し
126
許
(
ゆる
)
させ
玉
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
127
神
(
かみ
)
のまにまに
述
(
の
)
べ
進
(
すす
)
む
128
そも
瑞月
(
ずゐげつ
)
が
此
(
この
)
里
(
さと
)
に
129
一行
(
いつかう
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
来
(
きた
)
りしゆ
130
例
(
ためし
)
もあらぬ
豊漁
(
ほうれふ
)
と
131
里
(
さと
)
の
男女
(
なんによ
)
が
囁
(
ささや
)
くを
132
聞
(
き
)
くともなしに
聞
(
き
)
き
居
(
を
)
れば
133
大本教
(
おほもとけう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
134
此
(
この
)
地
(
ち
)
に
来
(
きた
)
りませしより
135
この
神徳
(
しんとく
)
を
村人
(
むらびと
)
が
136
頂
(
いただ
)
きたりと
口々
(
くちぐち
)
に
137
語
(
かた
)
り
居
(
ゐ
)
るこそ
床
(
ゆか
)
しけれ
138
日本海
(
につぽんかい
)
に
連
(
つら
)
なりし
139
夜見
(
よみ
)
の
浜辺
(
はまべ
)
の
波
(
なみ
)
清
(
きよ
)
く
140
日本国
(
につぽんごく
)
の
要
(
かなめ
)
ぞと
141
海底
(
かいてい
)
深
(
ふか
)
く
湧
(
わ
)
き
出
(
い
)
でし
142
簸野川上
(
ひのかはかみ
)
の
大山
(
だいせん
)
は
143
清
(
きよ
)
き
姿
(
すがた
)
を
天空
(
てんくう
)
に
144
雪
(
ゆき
)
の
衣
(
ころも
)
を
被
(
かぶ
)
りつつ
145
海
(
うみ
)
を
覗
(
のぞ
)
いた
水鏡
(
みづかがみ
)
146
天
(
てん
)
も
清浄
(
しやうじやう
)
地
(
ち
)
も
清浄
(
しやうじやう
)
147
松
(
まつ
)
の
林
(
はやし
)
も
海水
(
かいすい
)
も
148
人
(
ひと
)
の
身魂
(
みたま
)
の
六根
(
ろくこん
)
も
149
皆
(
みな
)
清浄
(
しやうじやう
)
と
清
(
きよ
)
めつつ
150
猩々島
(
しやうじやうじま
)
の
物語
(
ものがたり
)
151
心
(
こころ
)
勇
(
いさ
)
みて
宣
(
の
)
り
伝
(
つた
)
ふ
152
波
(
なみ
)
は
太平
(
たいへい
)
の
鼓
(
つづみ
)
うち
153
清
(
きよ
)
めの
湖
(
うみ
)
は
塵
(
ちり
)
もなく
154
竜宮海
(
りうぐうかい
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
が
155
数多
(
あまた
)
の
魚族
(
ぎよぞく
)
に
送
(
おく
)
らせつ
156
方舟
(
はこぶね
)
ならぬ
猩々舟
(
しやうじやうぶね
)
157
幾百万
(
いくひやくまん
)
とも
限
(
かぎ
)
りなく
158
大小
(
だいせう
)
無数
(
むすう
)
の
鱗族
(
うろくづ
)
が
159
ピンピンシヤンシヤン
撥
(
は
)
ね
乍
(
なが
)
ら
160
神船
(
みふね
)
を
押
(
お
)
して
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
161
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
162
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ。
163
伊太彦
(
いたひこ
)
は
声
(
こゑ
)
も
清
(
きよ
)
らかに
歌
(
うた
)
ふ。
164
猩々
(
しやうじやう
)
は
声
(
こゑ
)
を
揃
(
そろ
)
へて
拍子
(
ひやうし
)
をとる。
165
伊太彦
(
いたひこ
)
『
天津
(
あまつ
)
御空
(
みそら
)
の
影
(
かげ
)
映
(
うつ
)
す
166
塵
(
ちり
)
もとどめぬキヨの
湖
(
うみ
)
167
二十
(
にじふ
)
の
船
(
ふね
)
を
相並
(
あひなら
)
べ
168
猩々
(
しやうじやう
)
の
島
(
しま
)
に
立
(
たち
)
向
(
むか
)
ひ
169
天王
(
てんのう
)
の
森
(
もり
)
の
眷族
(
けんぞく
)
を
170
三百
(
さんびやく
)
三十三
(
さんじふさん
)
人
(
にん
)
と
171
人一
(
にんいち
)
化九
(
ばけきう
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
172
漸
(
やうや
)
く
救
(
すく
)
ひ
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く
173
キヤツキヤツキヤツキヤツ キヤツキヤツキヤツ
174
ドンドコ ドンドコ ドコドコドン
175
波
(
なみ
)
も
静
(
しづか
)
に
治
(
をさ
)
まりて
176
一直線
(
いつちよくせん
)
に
水平
(
すいへい
)
の
177
上
(
うへ
)
辷
(
すべ
)
り
行
(
ゆ
)
く
此
(
この
)
船
(
ふね
)
は
178
天津
(
あまつ
)
御国
(
みくに
)
の
助
(
たす
)
け
舟
(
ぶね
)
179
処女
(
しよぢよ
)
の
航路
(
かうろ
)
に
猩々隊
(
しやうじやうたい
)
180
二十
(
にじふ
)
の
船
(
ふね
)
に
満載
(
まんさい
)
し
181
酒
(
さけ
)
の
鏡
(
かがみ
)
を
抜
(
ぬ
)
き
放
(
はな
)
ち
182
勝手
(
かつて
)
次第
(
しだい
)
に
飲
(
の
)
み
乍
(
なが
)
ら
183
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
の
光景
(
くわうけい
)
を
184
今
(
いま
)
目
(
ま
)
のあたり
眺
(
なが
)
めつつ
185
人
(
ひと
)
も
獣
(
けもの
)
も
化物
(
ばけもの
)
も
186
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
む
今日
(
けふ
)
の
空
(
そら
)
187
実
(
げ
)
にも
目出度
(
めでた
)
き
次第
(
しだい
)
也
(
なり
)
188
キヤツキヤツキヤツキヤツ キヤツキヤツキヤツ
189
ドンドコ ドンドコ ドコドコドン
190
三五教
(
あななひけう
)
に
仕
(
つか
)
へてゆ
191
此
(
この
)
伊太彦
(
いたひこ
)
は
行先
(
ゆくさき
)
で
192
瓢軽者
(
へうきんもの
)
だ
狼狽者
(
あわてもの
)
193
出洒張
(
でしやばり
)
者
(
もの
)
と
笑
(
わら
)
はれて
194
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
に
195
軽蔑
(
けいべつ
)
されて
居
(
ゐ
)
たけれど
196
誰
(
たれ
)
憚
(
はばか
)
らぬ
今日
(
けふ
)
こそは
197
一人
(
ひとり
)
舞台
(
ぶたい
)
の
艦長
(
かんちやう
)
さま
198
何程
(
なにほど
)
大
(
おほ
)
きいと
云
(
い
)
つたとて
199
牛
(
うし
)
の
尻尾
(
しつぽ
)
になるよりも
200
鶏
(
とり
)
の
頭
(
あたま
)
になるがよい
201
凱旋
(
がいせん
)
将軍
(
しやうぐん
)
伊太彦
(
いたひこ
)
が
202
此
(
この
)
武者振
(
むしやぶり
)
を
逸早
(
いちはや
)
く
203
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
や
真純彦
(
ますみひこ
)
204
三千彦
(
みちひこ
)
夫婦
(
ふうふ
)
に
知
(
し
)
らせ
度
(
た
)
い
205
あゝ
勇
(
いさ
)
ましや
勇
(
いさ
)
ましや
206
今日
(
けふ
)
は
天地
(
てんち
)
も
殊更
(
ことさら
)
に
207
清
(
きよ
)
く
涼
(
すず
)
しく
広
(
ひろ
)
く
見
(
み
)
ゆ
208
キヤツキヤツキヤツキヤツ キヤツキヤツキヤツ
209
ドンドコ ドンドコ ドコドコドン
210
人
(
ひと
)
には
一度
(
いちど
)
は
添
(
そ
)
ふて
見
(
み
)
よ
211
馬
(
うま
)
には
必
(
かなら
)
ず
乗
(
の
)
つて
見
(
み
)
よ
212
何処
(
どこ
)
の
何処
(
いづく
)
に
何
(
ど
)
んな
人
(
ひと
)
が
213
隠
(
かく
)
してあるか
知
(
し
)
れないと
214
三五教
(
あななひけう
)
の
筆先
(
ふでさき
)
に
215
明瞭
(
はつき
)
り
現
(
あら
)
はれ
居
(
を
)
りまする
216
誰様
(
どなた
)
の
事
(
こと
)
かと
思
(
おも
)
ふたら
217
一行
(
いつかう
)
の
中
(
なか
)
の
沓取
(
くつとり
)
と
218
自分
(
じぶん
)
でさへも
信
(
しん
)
じたる
219
此
(
この
)
伊太彦
(
いたひこ
)
の
事
(
こと
)
だつた
220
真純
(
ますみ
)
の
彦
(
ひこ
)
や
三千彦
(
みちひこ
)
が
221
何程
(
なにほど
)
偉
(
えら
)
いと
云
(
い
)
つたとて
222
三百
(
さんびやく
)
有余
(
いうよ
)
の
団体
(
だんたい
)
の
223
頭
(
かしら
)
となつて
権力
(
けんりよく
)
を
224
振
(
ふ
)
り
廻
(
まは
)
したる
事
(
こと
)
はない
225
俺
(
おれ
)
の
身魂
(
みたま
)
は
何
(
なん
)
として
226
清浄
(
しやうじやう
)
のものであつただろ
227
キヤツキヤツキヤツキヤツ キヤツキヤツキヤツ
228
ドンドコ ドンドコ ドコドコドン
229
いや
待
(
ま
)
て
暫
(
しば
)
し
待
(
ま
)
て
暫
(
しば
)
し
230
三百
(
さんびやく
)
人
(
にん
)
の
頭
(
かしら
)
ぢやと
231
何程
(
なにほど
)
メートル
上
(
あ
)
げたとて
232
あンな
顔
(
かほ
)
した
人間
(
にんげん
)
を
233
統率
(
とうそつ
)
したとて
偉
(
えら
)
さうに
234
威張
(
ゐば
)
れた
道理
(
だうり
)
ぢやない
程
(
ほど
)
に
235
人
(
ひと
)
の
面
(
つら
)
した
奴
(
やつ
)
ならば
236
乞食
(
こじき
)
でも
泥棒
(
どろばう
)
でも
構
(
かま
)
やせぬ
237
頭
(
かしら
)
になつたら
面白
(
おもしろ
)
い
238
一寸
(
ちよつと
)
此奴
(
こいつ
)
は
閉口
(
へいこう
)
だ
239
とは
云
(
い
)
ふものの
魂
(
たましひ
)
は
240
矢張
(
やつぱ
)
り
人
(
ひと
)
に
優
(
すぐ
)
れたる
241
猩々
(
しやうじやう
)
さまと
云
(
い
)
ふからは
242
チツとは
誇
(
ほこ
)
つてもよいだらう
243
こんな
事
(
こと
)
迄
(
まで
)
考
(
かんが
)
へりや
244
俄
(
にはか
)
に
力
(
ちから
)
が
落
(
お
)
ちて
来
(
き
)
た
245
大
(
おほ
)
きな
顔
(
かほ
)
してベラベラと
246
誇
(
ほこ
)
る
訳
(
わけ
)
にはゆくまいぞ
247
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
が
248
汝
(
なれ
)
が
身魂
(
みたま
)
の
相応
(
さうおう
)
ぢやと
249
選
(
えり
)
て
迎
(
むか
)
へにやつたぞと
250
もしも
一言
(
ひとこと
)
仰有
(
おつしや
)
らば
251
それこそサツパリ
水
(
みづ
)
の
泡
(
あわ
)
252
真純
(
ますみ
)
の
彦
(
ひこ
)
や
三千彦
(
みちひこ
)
や
253
デビスの
姫
(
ひめ
)
に
殊更
(
ことさら
)
に
254
馬鹿
(
ばか
)
にされるに
違
(
ちが
)
ひない
255
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
阿呆
(
あほ
)
らしや
256
阿呆
(
あほ
)
と
云
(
い
)
はれる
悲
(
かな
)
しさに
257
せめてはマストを
裸
(
はだか
)
にし
258
阿帆
(
あほ
)
の
帆
(
ほ
)
をば
巻
(
ま
)
き
下
(
おろ
)
し
259
腕
(
うで
)
の
力
(
ちから
)
で
漕
(
こ
)
ぎ
帰
(
かへ
)
る
260
俺
(
おれ
)
の
勇気
(
ゆうき
)
はこんなもの
261
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
262
神
(
かみ
)
のまにまに
任
(
まか
)
します
263
キヤツキヤツキヤツキヤツ キヤツキヤツキヤツ
264
ドンドコ ドンドコ ドコドコドン。
265
(
都々逸
(
どどいつ
)
調
(
てう
)
)
浪
(
なみ
)
も
静
(
しづ
)
まるキヨメの
湖
(
うみ
)
に
266
瑞
(
みづ
)
の
御魂
(
みたま
)
の
水鏡
(
みづかがみ
)
。
267
水鏡
(
みづかがみ
)
、チヨイと
覗
(
のぞ
)
けばアラ
不思議
(
ふしぎ
)
268
俺
(
おれ
)
の
面
(
つら
)
まで
皺
(
しわ
)
が
寄
(
よ
)
る。
269
その
筈
(
はず
)
ぢや、
波
(
なみ
)
の
上
(
うへ
)
漕
(
こ
)
ぐ
此
(
この
)
船
(
ふね
)
は
270
板
(
いた
)
と
板
(
いた
)
との
継
(
つ
)
ぎ
合
(
あは
)
せ。
271
年並
(
としなみ
)
も
寄
(
よ
)
らぬ
姿
(
すがた
)
に
波
(
なみ
)
が
打
(
う
)
つ
272
人並
(
ひとなみ
)
勝
(
すぐ
)
れた
吾
(
わが
)
ちから』
273
と
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
274
長柄
(
ながえ
)
の
杓
(
しやく
)
で
酒
(
さけ
)
をグイグイひつかけつつ
275
数万
(
すうまん
)
の
魚族
(
ぎよぞく
)
に
送
(
おく
)
られて
南
(
みなみ
)
をさして
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
276
(
大正一二・四・三
旧二・一八
於皆生温泉浜屋
北村隆光
録)
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