霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一八章 手苦番(てくばん)〔一五一八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第59巻 真善美愛 戌の巻 篇:第4篇 六根猩々 よみ(新仮名遣い):ろっこんしょうじょう
章:第18章 手苦番 よみ(新仮名遣い):てくばん 通し章番号:1518
口述日:1923(大正12)年04月02日(旧02月17日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年7月8日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
玉国別一行はバーチルの館に帰って行った。テクは一行の先に立って行進歌に述懐を歌う。一行が戻ってみると、バーチル帰還の村を挙げての祝宴はまだ続いており、人々がそこかしこに酔って転がっている。
奥の間ではバーチルとサーベル姫が、玉国別一行の無事を神前に祈っていた。二人は玉国別たちが無事に帰ってきたことを喜んだ。
テクは滑稽な歌交じりに経緯を語り、一同に笑いを振りまくが、バーチルにたしなめられて祝酒の準備をしに駆けて行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2026-01-15 16:34:13 文字数:3213 OBC :rm5918
愛善世界社版:241頁 八幡書店版:第10輯 570頁 修補版: 校定版:255頁 普及版: 初版: ページ備考:
001玉国別(たまくにわけ)の一行(いつかう)は
002九死(きうし)一生(いつしやう)の危難(きなん)をば
003思(おも)ひもよらぬ神柱(かむばしら)
004初稚姫(はつわかひめ)に救(すく)はれて
005醜(しこ)の岩窟(いはや)を抜(ぬ)け出(いだ)し
006初稚姫(はつわかひめ)に相別(あひわか)れ
007アヅモス山(さん)の南麓(なんろく)に
008甍(いらか)も高(たか)く立並(たちなら)ぶ
009スマの里庄(りしやう)のバーチルが
010館(やかた)を指(さ)して帰(かへ)り行(ゆ)く
011バラモン教(けう)のスパイをば
012勤(つと)めゐたりし大酒豪(だいしゆがう)
013テクは一行(いつかう)の先(さき)に立(た)ち
014足(あし)に力(ちから)を入(い)れ乍(なが)ら
015羽(は)ばたきテクテク歌(うた)ひ行(ゆ)く。
016テク『テルモン山(ざん)の山颪(やまおろし)
017キヨの湖水(こすい)の面(おもて)をば
018ゆたかになでて通(とほ)り行(ゆ)く
019其(その)鼻先(はなさき)はアヅモスの
020山(やま)の麓(ふもと)のバーチルが
021館(やかた)に当(あた)りガヤガヤと
022物騒(ものさわ)がしき今日(けふ)の空(そら)
023老若(らうにやく)男女(なんによ)は勇(いさ)み立(た)ち
024呑(の)めよ唄(うた)への大騒(おほさわ)ぎ
025テクは忽(たちま)ちバーチルの
026家(いへ)の奴(やつこ)となりすまし
027祝(いは)ひを兼(かね)て里人(さとびと)に
028酒(さけ)をすすむる折(をり)もあれ
029バラモン教(けう)の関守(せきもり)と
030古(ふる)く仕(つか)へしチルテルが
031三五教(あななひけう)の神司(かむつかさ)
032一人(ひとり)も残(のこ)らず捉(とら)へむと
033駒(こま)に鞭(むち)打(う)ちシトシトと
034表門(おもてもん)へと進(すす)み来(く)る
035コリヤ叶(かな)はぬと此(この)テクが
036孫呉(そんご)が秘書(ひしよ)をまき拡(ひろ)げ
037長柄(ながえ)の杓(しやく)に甘酒(うまざけ)を
038汲(く)むより早(はや)く鼻(はな)の先(さき)
039プンと嚊(か)がせば麻酔剤(ますゐざい)
040吸収(きふしう)したる其(その)如(ごと)く
041始(はじ)めの権幕(けんまく)どこへやら
042ヒラリと駒(こま)を飛(とび)おりて
043老若(らうにやく)男女(なんによ)の中(なか)に入(い)り
044口汚(くちぎたな)くもガブガブと
045鯨飲(げいいん)馬食(ばしよく)の為体(ていたらく)
046何程(なにほど)威張(ゐば)つたキャプテンも
047酒(さけ)にかけたらもろいもの
048ソロソロ酔(よひ)がまはり出(だ)し
049館(やかた)の離室(はなれ)に隠(かく)したる
050初稚姫(はつわかひめ)のナイスをば
051誘(いざな)ひ来(きた)れ成功(せいこう)すりや
052リューチナントにしてやろと
053酒(さけ)の上(うへ)にてチヨロまかす
054元(もと)より嘘(うそ)とは知(し)り乍(なが)ら
055之(これ)も一興(いつきよう)と勇(いさ)み立(た)ち
056初稚姫(はつわかひめ)の前(まへ)に出(い)で
057軍人(ぐんじん)気取(きど)りで「あります」を
058連発(れんぱつ)したる可笑(をか)しさよ
059初稚姫(はつわかひめ)と思(おも)ひしは
060誠(まこと)の人(ひと)にあらずして
061しまひの果(はて)にや尻尾(しつぽ)出(だ)し
062小牛(こうし)のやうな白狐(びやつこ)と変(な)り
063這(は)い出(い)だしたる怖(おそ)ろしさ
064怪事(くわいじ)百出(ひやくしゆつ)とめどなく
065遂(つひ)には一同(いちどう)穴倉(あなぐら)に
066突(つき)倒(たふ)されて吐息(といき)つく
067折(をり)しも真(まこと)の姫(ひめ)様(さま)が
068猛犬(まうけん)スマート引(ひき)連(つ)れて
069吾(わが)師(し)の君(きみ)を始(はじ)めとし
070チルテル其(その)外(ほか)一同(いちどう)を
071救(すく)はせ玉(たま)ひし有難(ありがた)さ
072あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
073神(かみ)の恵(めぐみ)は忽(たちまち)に
074旭(あさひ)の如(ごと)く輝(かがや)きて
075まだ明(あ)けやらぬ夜(よ)の道(みち)も
076何(なん)とはなしに気分(きぶん)よく
077バーチル館(やかた)へ指(さ)して行(ゆ)く
078こんな騒(さわ)ぎのありしとは
079夢(ゆめ)にも知(し)らぬスマの里(さと)
080集(あつ)まり来(きた)る老若(らうにやく)は
081七日(なぬか)七夜(ななよ)の酒宴(さかもり)に
082胴腰(どうこし)据(す)ゑてガブガブと
083泣(な)いたり笑(わら)うたり怒(おこ)つたり
084牛飲(ぎういん)馬食(ばしよく)の大酒宴(だいしゆえん)
085喉(のど)を鳴(な)らしてゐるだらう
086サア是(これ)からは是(これ)からは
087此(この)テクさまも久(ひさ)しぶりに
088思(おも)ふ存分(ぞんぶん)般若湯(はんにやたう)
089グイグイグイとひつかけて
090一(ひと)つげんをば直(なほ)しませう
091あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
092玉国別(たまくにわけ)の宣伝使(せんでんし)
093其(その)外(ほか)百(もも)の司(つかさ)たち
094向方(むかふ)に見(み)える森蔭(もりかげ)は
095夜目(よめ)には確(しつか)り分(わか)らねど
096正(ただ)しくバーチル神館(かむやかた)
097モウ一息(ひといき)だ膝栗毛(ひざくりげ)に
098鞭(むち)打(う)ち進(すす)み帰(かへ)りませう
099旭(あさひ)は照(て)る共(とも)曇(くも)るとも
100月(つき)は盈(み)つ共(とも)虧(か)くる共(とも)
101お酒(さけ)の味(あぢ)はいつ迄(まで)も
102万劫(まんごふ)未代(まつだい)変(かは)らない
103酒(さけ)程(ほど)笑顔(ゑがほ)のよいものが
104三千(さんぜん)世界(せかい)にあるものか
105笑(わら)ふも泣(な)くも面白(おもしろ)い
106怒(おこ)り狂(くる)ふも一興(いつきよう)だ
107酒(さけ)の上(うへ)にてした事(こと)は
108決(けつ)して世人(よびと)は咎(とが)めない
109よい要口(えうこう)が出来(でき)たもの
110あゝ燗酒(かんざけ)ぢや燗酒(かんざけ)ぢや
111冷酒(れいしゆ)鯛汁(たひじふ)は甘(うま)くない』
112などと下(くだ)らぬ歌(うた)歌(うた)ひ
113勇(いさ)み進(すす)むで表門(おもてもん)を
114潜(くぐ)れば数多(あまた)の老若(らうにやく)が
115夜昼(よるひる)かまはず赤裸(まつぱだか)
116黒(くろ)い体(からだ)を曝(さらし)つつ
117鯖(さば)の鮨(すし)をばつけたよに
118肚(はら)一杯(いつぱい)に膨(ふく)らして
119ゴロリゴロリと高鼾(たかいびき)
120寝言(ねごと)の声(こゑ)や屁(へ)の響(ひびき)
121人形箱(にんぎやうばこ)をぶちあけた
122大乱雑(だいらんざつ)の光景(くわうけい)を
123眺(なが)めてテクは吹(ふ)き出(いだ)し
124アハヽヽハツハ アハヽヽヽ
125面白(おもしろ)うなつてお出(いで)たと
126大玄関(おほげんくわん)を一跨(ひとまた)げ
127ドスンドスンと奥(おく)の間(ま)へ
128勢(いきほひ)込(こ)んで進(すす)み入(い)る。
129 アキス、130カールの両人(りやうにん)は一行(いつかう)が奥(おく)の間(ま)へ進(すす)まむとする途中(とちう)、131畳廊下(たたみらうか)でベツタリ出会(でつくは)した。132テクは見(み)るより、
133テク『サア、134番頭(ばんとう)さまのお帰(かへ)りだ。135早(はや)く酒(さけ)を一斗(いつと)許(ばか)り持(も)つて来(こ)い。136何(なに)をグヅグヅしてゐるのだ。137新番頭(しんばんとう)さまの天晴(あつぱれ)功名(こうみやう)手柄話(てがらばなし)、138汝(きさま)も奥(おく)へ来(き)てトツクリ聞(き)くがよからうぞ』
139アキス『ヘン、140馬鹿(ばか)にすない。141番頭(ばんとう)だなぞと、142勝手(かつて)に定(き)めやがつて、143番犬(ばんけん)のバンタ奴(め)、144汝(きさま)等(たち)が当家(たうけ)の番頭(ばんとう)にならうものなら、145それこそ大変(たいへん)な番狂(ばんぐる)はせだ』
146テク『馬鹿(ばか)云(い)ふな、147俺(おれ)は主人公(しゆじんこう)からチヤンと委任(ゐにん)をうけてるのだ。148バーチル家(け)の家政(かせい)一切(いつさい)は皆(みな)此(この)テクさまの御(ご)支配(しはい)だぞ』
149玉国(たまくに)『コラコラ、150こんな所(とこ)で喧嘩(けんくわ)をしても約(つま)らぬぢやないか』
151テク『ハイ、152心得(こころえ)ました。153アキスの奴(やつ)、154バンタだの番犬(ばんけん)だのと、155余(あま)り失敬(しつけい)なことをいふものですから、156チツと癪(しやく)に障(さは)つたのですよ。157サア、158兎(と)も角(かく)、159今度(こんど)の功名(こうみやう)手柄(てがら)を主人公(しゆじんこう)に報告(はうこく)致(いた)しませう』
160と故意(わざ)とに大手(おほて)を振(ふ)り、161大股(おほまた)にドスン ドスンと四股(しこ)をふみ乍(なが)ら主人(しゆじん)の居間(ゐま)に進(すす)み入(い)る。
162 バーチル、163サーベル姫(ひめ)は164一生(いつしやう)懸命(けんめい)に神前(しんぜん)に向(むか)つて玉国別(たまくにわけ)一行(いつかう)の無事(ぶじ)安全(あんぜん)を祈願(きぐわん)してゐる最中(さいちう)であつた。165玉国別(たまくにわけ)一行(いつかう)も拍手(かしはで)を拍(う)ち166神前(しんぜん)に無事(ぶじ)凱旋(がいせん)せしことを感謝(かんしや)し了(をは)つて席(せき)に着(つ)いた。167夫婦(ふうふ)は拝礼(はいれい)を了(をは)り、168玉国別(たまくにわけ)一行(いつかう)の無事(ぶじ)な顔(かほ)をみて打(うち)喜(よろこ)び、169涙(なみだ)をハラハラと流(なが)し乍(なが)ら、
170バーチル『あ、171先生(せんせい)172能(よ)うまア帰(かへ)つて下(くだ)さいました。173御(お)案(あん)じ申(まをし)て居(を)りました』
174サーベル『あ、175デビス姫(ひめ)様(さま)、176三千彦(みちひこ)様(さま)、177伊太彦(いたひこ)様(さま)、178何(ど)うしてゐられました。179旦那(だんな)様(さま)と大変(たいへん)な心配(しんぱい)を致(いた)しまして、180神(かみ)様(さま)の前(まへ)にしがみついて泣(な)いてお願(ねがひ)をして居(を)りました。181マアお目出(めで)たう厶(ござ)います』
182玉国(たまくに)『ハイ有難(ありがた)う。183いろいろと神(かみ)様(さま)の御(お)試(ため)しに会(あ)つて参(まゐ)りました。184やアもう、185エライ御(ご)心配(しんぱい)をかけ申訳(まをしわけ)が厶(ござ)いませぬ。186マア此(この)通(とほ)り一人(ひとり)の怪我(けが)もなく無事(ぶじ)に帰(かへ)りましたからお喜(よろこ)び下(くだ)さい』
187 夫婦(ふうふ)は一度(いちど)に頭(かしら)を下(さ)げ、188喜(よろこ)びの余(あま)り嬉涙(うれしなみだ)にかきくれてゐる。
189テク『(のり)モウシ モウシ旦那(だんな)様(さま)
190一応(いちおう)お聞(き)きなされませ
191三千彦(みちひこ)司(つかさ)を救(すく)はむと
192玉国別(たまくにわけ)の神司(かむづかさ)
193真純(ますみ)の彦(ひこ)に従(したが)ひて
194先(さき)の番頭(ばんとう)のアンチーを
195案内(あんない)させてスタスタと
196裏道(うらみち)指(さ)して出(い)でて行(ゆ)く
197空(そら)には日輪(にちりん)カンカンと
198輝(かがや)き玉(たま)ひ頭上(てつぺ)から
199火熱(くわねつ)を浴(あ)びせる苦(くる)しさに
200森(もり)の木蔭(こかげ)に立(たち)寄(よ)つて
201玉国別(たまくにわけ)や真純彦(ますみひこ)
202アンチー三人(みたり)を休(やす)ませつ
203此(この)テク奴(やつこ)は只(ただ)一人(ひとり)
204チルテル館(やかた)の裏門(うらもん)へ
205進(すす)むで見(み)ればピツタリと
206戸締(とじま)り厳(きび)しくありければ
207肝玉(きもだま)放(ほ)り出(だ)し表門(おもてもん)
208廻(まは)つて見(み)れば人(ひと)もなし
209事務室(じむしつ)いかにと眺(なが)むれば
210猫(ねこ)の子(こ)一匹(いつぴき)居(を)らばこそ
211天井(てんじやう)に鼠(ねずみ)がチウチウと
212恋(こひ)を争(あらそ)ひ狂(くる)ふ声(こゑ)
213此奴(こいつ)ア不思議(ふしぎ)と裏口(うらぐち)に
214立出(たちい)でみれば離屋(はなれ)の座敷(ざしき)
215初稚姫(はつわかひめ)と云(い)ふナイス
216白(しろ)い面(つら)してニコニコと
217二人(ふたり)の裸(はだか)を前(まへ)におき
218何(なに)か命令(めいれい)下(くだ)し居(ゐ)る
219コリヤ面白(おもしろ)い面白(おもしろ)い
220仔細(しさい)あらむとかけよれば
221豈計(あにはか)らむやチルテルと
222ヘールの二人(ふたり)が角力取(すまふと)り
223勝(か)つたお方(かた)の女房(にようばう)に
224ならうとお化(ばけ)が甘(うま)い事(こと)
225いふた嘘(うそ)をば真(ま)に受(う)けて
226此(この)テク奴(やつこ)も釣(つ)り込(こ)まれ
227ドスンドスンと四股(しこ)ふみならし
228汗(あせ)をタラタラ絞(しぼ)りつつ
229俄(にはか)に変(かは)る力士(すまふとり)
230難(なん)なく二人(ふたり)を投(なげ)付(つ)けて
231地底(ちてい)の洞(ほら)へと投(な)げ込(こ)むだ
232初稚姫(はつわかひめ)はテク奴(やつこ)の
233お手(て)を握(にぎ)らしくれぬかと
234優(やさ)しい顔(かほ)してつめかける
235コリヤ面白(おもしろ)い面白(おもしろ)い
236男(をとこ)と生(うま)れた上(うへ)からは
237一(ひと)つ握手(あくしゆ)しキッスをば
238やつてみようと手(て)を伸(の)ばし
239グツとつかめばこはいかに
240細(ほそ)い腕(かひな)は毛(け)だらけだ
241忽(たちま)ち白狐(びやつこ)となり変(かは)り
242眼(まなこ)を怒(いか)らし睨(にら)みたる
243其(その)権幕(けんまく)の恐(おそ)ろしさ
244あとをも見(み)ずに
245エツサツサ エツサツサ
246スタコラヨイヤサと駆(か)け出(いだ)し
247玉国別(たまくにわけ)の待(ま)ち玉(たま)ふ
248森(もり)の中(なか)をば暗(くら)がりで
249当途(あてど)もなしに走(はし)り入(い)る
250暗(くら)さは暗(くら)し真純彦(ますみひこ)
251胸(むね)に頭(かしら)をうちつけて
252アツと倒(たふ)れた苦(くる)しさよ
253まだまだ先(さき)は長(なが)けれど
254お酒(さけ)を一杯(いつぱい)貰(もら)はねば
255どうやら息(いき)が切(き)れさうだ
256コレコレもうしアンチーさま
257早(はや)くお酒(さけ)をついでくれ
258之(これ)より先(さき)はいはれない
259玉国別(たまくにわけ)や皆(みな)さまの
260一生(いつしやう)の恥(はぢ)になりまする
261言(い)はぬが仏(ほとけ)神心(かみごころ)
262あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
263之(これ)にて中止(ちうし)仕(つかまつ)る
264アハヽヽアツハ、アハヽヽヽ』
265一同(いちどう)『ウツフヽヽヽ』
266バーチル『オイ テク、267芝居(しばゐ)がかりで、268種々(いろいろ)と報告(はうこく)してくれたが、269どうも真相(しんさう)が分(わか)りにくい。270併(しか)し乍(なが)ら皆(みな)さまが無事(ぶじ)に帰(かへ)つて下(くだ)さつたのだから、271こんな嬉(うれ)しい事(こと)はない。272サア彼方(あちら)へ行(い)つて、273充分(じうぶん)酒(さけ)でもあがつて下(くだ)さい。274そして、275アキス、276カール等(など)を、277決(けつ)して揶揄(からか)つてはなりませぬぞ』
278テク『ハイ、279畏(かしこ)まりました。280然(しか)らば御(ご)主人(しゆじん)夫婦(ふうふ)様(さま)、281玉国別(たまくにわけ)一統(いつとう)様(さま)、282一寸(ちよつと)暫時(しばらく)御免(ごめん)を蒙(かうむ)ります。283左様(さやう)ならば』
284といふより早(はや)く酒(さけ)の場(ば)さして駆(か)けて行(ゆ)く。
285(大正一二・四・二 旧二・一七 於皆生温泉浜屋 松村真澄録)
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