霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第59巻(戌の巻)
序
総説歌
第1篇 毀誉の雲翳
第1章 逆艪
第2章 歌垣
第3章 蜜議
第4章 陰使
第5章 有升
第2篇 厄気悋々
第6章 雲隠
第7章 焚付
第8章 暗傷
第9章 暗内
第10章 変金
第11章 黒白
第12章 狐穴
第3篇 地底の歓声
第13章 案知
第14章 舗照
第15章 和歌意
第16章 開窟
第17章 倉明
第4篇 六根猩々
第18章 手苦番
第19章 猩々舟
第20章 海竜王
第21章 客々舟
第22章 五葉松
第23章 鳩首
第24章 隆光
第25章 歓呼
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は
従来バージョン
をお使い下さい|
サブスク
のお知らせ
霊界物語
>
真善美愛(第49~60巻)
>
第59巻(戌の巻)
> 第2篇 厄気悋々 > 第8章 暗傷
<<< 焚付
(B)
(N)
暗内 >>>
第八章
暗傷
(
あんしやう
)
〔一五〇八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第59巻 真善美愛 戌の巻
篇:
第2篇 厄気悋々
よみ(新仮名遣い):
やっきりんりん
章:
第8章 暗傷
よみ(新仮名遣い):
あんしょう
通し章番号:
1508
口述日:
1923(大正12)年04月01日(旧02月16日)
口述場所:
皆生温泉 浜屋
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年7月8日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
デビス姫を救出しにチルテル屋敷に忍び込んで来た三千彦・伊太彦は、この夫婦喧嘩に出くわし、見過ごしもならず気を失っているチルテルに鎮魂をかけて蘇生させた。
逆上しているチルナ姫は、夫婦喧嘩に割って入った二人の宣伝使に怒りを向けて、立ち去るようにと矛先を向けた。
チルテルとカンナは救ってくれた二人に感謝の言葉をかけ、奥で休息するようにと勧めた。しかしチルテルとカンナは、三五教の宣伝使たちを捕縛しようと企んでいた。三千彦と伊太彦は二人の企みを察知し、カンナに案内されて行く途中でカンナの腕を締め上げた。
カンナはデビス姫の居場所を白状し、三千彦たちを倉庫に案内して姫を解放した。デビス姫の無残な様子に怒った三千彦はカンナを縛り上げて、倉庫に入れて錠を下ろした。二人はデビス姫を労わりながらチルテルの館を去って行った。
一方チルナ姫は、もうこうなったらチルテルの女癖をハルナの都に逐一報告すると言って出て行こうとする。チルナ姫に家出して欲しかったチルテルも、さすがにハルナの都に報告されては自分の地位が危ないと、チルナ姫を縛って倉庫に監禁してしまった。
チルナ姫は暗い倉庫で縛られているカンナにつまずいた。てっきりチルテルが隠している別の女だろうと勘違いしたチルナ姫は、逆上してカンナの太ももに噛みついた。カンナは悲鳴を上げて自分はカンナだと誤解を解こうとするが、チルナ姫は聞き入れずに噛みつき続ける。
カンナは痛さに悲鳴を上げた勢いで、手をくくった綱が切れた。やむを得ずカンナはチルナ姫を殴って気絶させた。足の綱をほどいたカンナは、チルナ姫に活を入れて起こした。
やっとチルナ姫の誤解が解けた。カンナは、ここの隠されていたデビス姫はチルテルのお使いと思しき男たちが連れ出してしまったと答えた。そしてチルナ姫に太ももをひどく噛まれたことに不平をこぼした。
チルナ姫は、もともと初稚姫を館に連れてきたのはカンナだから、天罰が当たったのだと言い返し、自分は夫を取られてしまったと嘆いた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2017-05-06 15:53:29
OBC :
rm5908
愛善世界社版:
104頁
八幡書店版:
第10輯 522頁
修補版:
校定版:
109頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
夫婦
(
ふうふ
)
の
中
(
なか
)
に
咲
(
さ
)
き
匂
(
にほ
)
ふ
002
花
(
はな
)
は
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
チルナ
姫
(
ひめ
)
003
家庭
(
かてい
)
平和
(
へいわ
)
の
実
(
み
)
を
結
(
むす
)
び
004
千代
(
ちよ
)
も
八千代
(
やちよ
)
も
偕老
(
かいらう
)
の
005
其
(
その
)
楽
(
たの
)
しみを
共
(
とも
)
になし
006
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
安
(
やす
)
く
渡
(
わた
)
らむと
007
神
(
かみ
)
に
願
(
ねがひ
)
を
掛巻
(
かけまく
)
も
008
心
(
こころ
)
許
(
ゆる
)
さぬチルナ
姫
(
ひめ
)
009
思
(
おも
)
はぬ
風
(
かぜ
)
の
吹
(
ふき
)
廻
(
まは
)
し
010
二世
(
にせ
)
を
契
(
ちぎ
)
つた
吾
(
わが
)
夫
(
つま
)
の
011
チルテル
司
(
つかさ
)
は
醜神
(
しこがみ
)
に
012
清
(
きよ
)
き
霊
(
みたま
)
も
曇
(
くも
)
らされ
013
恋
(
こひ
)
の
膚
(
とりこ
)
となりはてて
014
彼方
(
あなた
)
此方
(
こなた
)
の
女
(
をみな
)
をば
015
弄
(
もてあそ
)
びしと
聞
(
き
)
くよりも
016
チルナの
姫
(
ひめ
)
は
驚
(
おどろ
)
きて
017
忽
(
たちま
)
ち
悋気
(
りんき
)
の
角
(
つの
)
はやし
018
所在
(
あらゆる
)
手道具
(
てだうぐ
)
打
(
うち
)
くだき
019
障子
(
しやうじ
)
や
襖
(
ふすま
)
をかき
破
(
やぶ
)
り
020
半狂乱
(
はんきやうらん
)
の
為体
(
ていたらく
)
021
チルテル、カンナの
企
(
たく
)
みたる
022
焚付薬
(
たきつけぐすり
)
が
利
(
き
)
きすぎて
023
思
(
おも
)
ひもよらぬ
失態
(
しつたい
)
を
024
演出
(
えんしゆつ
)
したりと
驚
(
おどろ
)
きて
025
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
居間
(
ゐま
)
を
去
(
さ
)
り
026
矢庭
(
やには
)
に
此処
(
ここ
)
へ
飛込
(
とびこ
)
みて
027
チルナの
姫
(
ひめ
)
の
髻
(
たぶさ
)
をば
028
左手
(
ゆんで
)
にグツとわし
掴
(
づか
)
み
029
蠑螺
(
さざえ
)
のやうな
拳
(
こぶし
)
をば
030
固
(
かた
)
めて
振上
(
ふりあ
)
げクワン クワンと
031
三
(
み
)
つ
四
(
よ
)
つ
打
(
う
)
てばチルナ
姫
(
ひめ
)
032
怒
(
いか
)
り
狂
(
くる
)
ひてしがみ
付
(
つ
)
き
033
チルテル
司
(
つかさ
)
の
股
(
また
)
くらに
034
ブラブラさがる
茶袋
(
ちやぶくろ
)
を
035
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
握
(
にぎ
)
りしめ
036
力
(
ちから
)
をこめて
引
(
ひつ
)
たくる
037
何条
(
なんでう
)
以
(
もつ
)
て
堪
(
たま
)
るべき
038
アツと
一声
(
ひとこゑ
)
悶絶
(
もんぜつ
)
し
039
泡
(
あわ
)
をふきつつ
大
(
だい
)
の
字
(
じ
)
に
040
倒
(
たふ
)
れて
身体
(
からだ
)
をビリビリと
041
慄
(
ふる
)
はせ
居
(
ゐ
)
たる
可笑
(
をか
)
しさよ
042
流石
(
さすが
)
のチルナも
驚
(
おどろ
)
いて
043
水
(
みづ
)
よ
薬
(
くすり
)
と
気
(
き
)
を
焦
(
いら
)
ち
044
カンナの
司
(
つかさ
)
を
叱
(
しか
)
り
付
(
つ
)
け
045
泣声
(
なきごゑ
)
絞
(
しぼ
)
り
狼狽
(
うろた
)
へる
046
デビスの
姫
(
ひめ
)
の
後
(
あと
)
逐
(
お
)
うて
047
伺
(
うかが
)
ひ
来
(
きた
)
りし
三千彦
(
みちひこ
)
や
048
伊太彦
(
いたひこ
)
二人
(
ふたり
)
は
此
(
この
)
態
(
てい
)
を
049
遥
(
はるか
)
に
眺
(
なが
)
めて
飛来
(
とびきた
)
り
050
矢庭
(
やには
)
に
座敷
(
ざしき
)
へ
這
(
は
)
ひ
上
(
あが
)
り
051
双手
(
もろて
)
を
組
(
く
)
んで
一
(
ひと
)
二
(
ふた
)
三
(
み
)
四
(
よ
)
052
五
(
いつ
)
六
(
む
)
つ
七
(
なな
)
八
(
や
)
九
(
ここの
)
十
(
たり
)
053
百
(
もも
)
千
(
ち
)
万
(
よろづ
)
と
数歌
(
かずうた
)
を
054
歌
(
うた
)
ひ
上
(
あ
)
ぐればウンウンと
055
苦
(
くる
)
しき
声
(
こゑ
)
を
張上
(
はりあ
)
げて
056
面
(
かほ
)
を
顰
(
しか
)
めて
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
り
057
四辺
(
あたり
)
をキヨロキヨロ
見廻
(
みまは
)
して
058
アフンと
許
(
ばか
)
り
呆
(
あき
)
れゐる
059
チルナの
姫
(
ひめ
)
は
両人
(
りやうにん
)
を
060
見
(
み
)
るより
早
(
はや
)
く
怒
(
いか
)
り
立
(
た
)
ち
061
夫婦
(
めをと
)
喧嘩
(
げんくわ
)
の
最中
(
さいちう
)
へ
062
断
(
ことわ
)
りもなく
飛込
(
とびこ
)
むで
063
構立
(
かまひだて
)
する
奴
(
やつ
)
は
誰
(
だれ
)
064
了見
(
れうけん
)
ならぬ
一時
(
いつとき
)
も
065
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立去
(
たちさ
)
れと
066
悋気
(
りんき
)
の
怒
(
いか
)
りの
矛先
(
ほこさき
)
を
067
夫
(
つま
)
の
危急
(
ききふ
)
を
救
(
すく
)
ひたる
068
二人
(
ふたり
)
の
司
(
つかさ
)
にふり
向
(
む
)
ける
069
心
(
こころ
)
紊
(
みだ
)
れしチルナ
姫
(
ひめ
)
070
見
(
み
)
る
人
(
ひと
)
毎
(
ごと
)
に
吾
(
わが
)
敵
(
てき
)
と
071
心
(
こころ
)
をひがむぞ
是非
(
ぜひ
)
なけれ
072
チルテル、カンナは
三千彦
(
みちひこ
)
の
073
姿
(
すがた
)
見
(
み
)
るより
手
(
て
)
を
合
(
あは
)
せ
074
危急
(
ききふ
)
の
場合
(
ばあひ
)
能
(
よ
)
くもマア
075
御
(
お
)
助
(
たす
)
けなさつて
下
(
くだ
)
さつた
076
先
(
ま
)
づ
先
(
ま
)
づ
奥
(
おく
)
で
御
(
ご
)
休息
(
きうそく
)
077
遊
(
あそ
)
ばしませと
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
078
心
(
こころ
)
汚
(
きたな
)
きチルテルは
079
カンナに
向
(
む
)
かつて
目配
(
めくば
)
せし
080
此
(
この
)
両人
(
りやうにん
)
を
逸早
(
いちはや
)
く
081
捉
(
とら
)
へて
庫
(
くら
)
につき
込
(
こ
)
めと
082
眼
(
まなこ
)
で
知
(
し
)
らす
厭
(
いや
)
らしさ
083
三千彦
(
みちひこ
)
伊太彦
(
いたひこ
)
両人
(
りやうにん
)
は
084
二人
(
ふたり
)
の
心
(
こころ
)
を
察
(
さつ
)
すれど
085
デビスの
姫
(
ひめ
)
の
所在
(
ありか
)
をば
086
探
(
さぐ
)
らむものと
思
(
おも
)
ふより
087
素知
(
そし
)
らぬ
面
(
かほ
)
を
装
(
よそほ
)
ひつ
088
カンナの
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひて
089
暗
(
やみ
)
の
庭先
(
にはさき
)
トボトボと
090
隙
(
すき
)
を
窺
(
うかが
)
ひ
跟
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
く
091
三千彦
(
みちひこ
)
つつと
立止
(
たちと
)
まり
092
カンナの
腕
(
うで
)
をグツと
取
(
と
)
り
093
汝
(
なんぢ
)
は
此
(
この
)
家
(
や
)
の
使人
(
つかひびと
)
094
バラモン
教
(
けう
)
のリューチナント
095
カンナと
申
(
まを
)
す
奴
(
やつ
)
であらう
096
デビスの
姫
(
ひめ
)
を
隠
(
かく
)
したは
097
此
(
この
)
家
(
や
)
の
主
(
あるじ
)
チルテルの
098
全
(
まつた
)
く
指図
(
さしづ
)
によるものと
099
早
(
はや
)
くも
吾
(
われ
)
は
悟
(
さと
)
りしぞ
100
いと
速
(
すみやか
)
に
所在
(
ありか
)
をば
101
完全
(
うまら
)
に
委曲
(
つばら
)
に
告
(
つ
)
げまつれ
102
違背
(
ゐはい
)
に
及
(
およ
)
ばば
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
103
汝
(
なんぢ
)
が
命
(
いのち
)
を
奪
(
うば
)
ふべし
104
返答
(
へんたふ
)
如何
(
いか
)
にとせめかくる
105
流石
(
さすが
)
のカンナも
困
(
こま
)
りはて
106
身
(
み
)
をブルブルと
慄
(
ふる
)
はせて
107
ハイハイ
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
します
108
命
(
いのち
)
許
(
ばか
)
りはお
助
(
たす
)
けと
109
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
せて
涙
(
なみだ
)
ぐみ
110
二人
(
ふたり
)
を
伴
(
ともな
)
ひ
第一
(
だいいち
)
の
111
倉庫
(
さうこ
)
の
表
(
おもて
)
を
押開
(
おしあ
)
けて
112
中
(
なか
)
に
立入
(
たちい
)
りデビス
姫
(
ひめ
)
113
厳
(
きび
)
しき
縄
(
なわ
)
を
解
(
と
)
き
乍
(
なが
)
ら
114
二人
(
ふたり
)
に
向
(
むか
)
ひ
丁寧
(
ていねい
)
に
115
モウシ モウシ
宣伝使
(
せんでんし
)
116
此処
(
ここ
)
に
居
(
ゐ
)
られる
御
(
ご
)
婦人
(
ふじん
)
は
117
貴方
(
あなた
)
のお
尋
(
たづ
)
ね
遊
(
あそ
)
ばした
118
デビス
姫
(
ひめ
)
で
厶
(
ござ
)
りませう
119
私
(
わたし
)
は
宅
(
うち
)
に
不在番
(
るすばん
)
を
120
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
つた
其
(
その
)
為
(
ため
)
に
121
其
(
その
)
経緯
(
いきさつ
)
は
知
(
し
)
りませぬ
122
先
(
ま
)
づ
先
(
ま
)
づお
査
(
しら
)
べなさりませ
123
云
(
い
)
へば
三千彦
(
みちひこ
)
伊太彦
(
いたひこ
)
は
124
四辺
(
あたり
)
に
心
(
こころ
)
を
配
(
くば
)
りつつ
125
伊太彦
(
いたひこ
)
外
(
そと
)
に
待
(
ま
)
たせおき
126
三千彦
(
みちひこ
)
一人
(
ひとり
)
倉
(
くら
)
の
中
(
なか
)
127
明
(
あか
)
りを
灯
(
とぼ
)
して
入
(
いり
)
見
(
み
)
れば
128
口
(
くち
)
にははます
猿轡
(
さるぐつわ
)
129
手足
(
てあし
)
を
縛
(
しば
)
り
土
(
つち
)
の
上
(
へ
)
に
130
いとも
無残
(
むざん
)
に
寝
(
ね
)
させける
131
三千彦
(
みちひこ
)
見
(
み
)
るより
腹
(
はら
)
を
立
(
た
)
て
132
姫
(
ひめ
)
の
縛
(
いましめ
)
解
(
と
)
き
乍
(
なが
)
ら
133
直
(
ただち
)
にカンナを
縛
(
しば
)
り
上
(
あ
)
げ
134
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
倒
(
たふ
)
しデビス
姫
(
ひめ
)
を
135
労
(
いた
)
はり
乍
(
なが
)
ら
倉
(
くら
)
の
外
(
そと
)
へ
136
漸
(
やうや
)
く
救
(
すく
)
ひ
出
(
いだ
)
しけり
137
茲
(
ここ
)
に
三千彦
(
みちひこ
)
倉
(
くら
)
の
戸
(
と
)
を
138
ピシヤリと
閉
(
し
)
めて
錠
(
ぢやう
)
おろし
139
姫
(
ひめ
)
を
労
(
いたは
)
り
慰
(
なぐさ
)
めつ
140
闇
(
やみ
)
に
紛
(
まぎ
)
れてスタスタと
141
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
後
(
あと
)
に
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く。
[
※
この続きは第14章へ
]
142
ヘールは
夜
(
よる
)
の
巡視
(
じゆんし
)
を
了
(
を
)
へて
館
(
やかた
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
見
(
み
)
ると、
143
チルナ
姫
(
ひめ
)
は
髪
(
かみ
)
ふり
乱
(
みだ
)
し、
144
血相
(
けつさう
)
変
(
か
)
へて
坐
(
すわ
)
つてゐる。
145
チルテルは
真青
(
まつさを
)
な
面
(
かほ
)
して
睾丸
(
きんたま
)
を
押
(
おさ
)
へ、
146
ウンウンと
唸
(
うな
)
つてゐる。
147
ヘールはつかつかと
傍
(
そば
)
に
近付
(
ちかづ
)
き、
148
ヘール『ヤア、
149
貴方
(
あなた
)
はキャプテンの
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
150
奥様
(
おくさま
)
、
151
啻
(
ただ
)
ならぬ
此
(
この
)
御
(
ご
)
様子
(
やうす
)
、
152
何者
(
なにもの
)
が
襲来
(
しふらい
)
致
(
いた
)
しましたか』
153
チルナ『お
前
(
まへ
)
はヘール、
154
能
(
よ
)
う
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さつた。
155
チルテルさまは
本当
(
ほんたう
)
に
毒性
(
どくしやう
)
な
人
(
ひと
)
だよ。
156
私
(
わたし
)
を
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
して、
157
裏
(
うら
)
の
離室
(
はなれ
)
に
居
(
を
)
る
女性
(
あまつちよ
)
や、
158
其
(
その
)
他
(
ほか
)
沢山
(
たくさん
)
の
女
(
をんな
)
を
引入
(
ひきい
)
れ、
159
勝手
(
かつて
)
気儘
(
きまま
)
の
生活
(
せいくわつ
)
を
送
(
おく
)
らうとなさるのだから、
160
こんなことがハルナの
都
(
みやこ
)
へ
聞
(
きこ
)
えやうものなら、
161
それこそ
御
(
おん
)
身
(
み
)
の
終
(
をは
)
り、
162
妾
(
わたし
)
は
最早
(
もはや
)
覚悟
(
かくご
)
を
定
(
きめ
)
ました。
163
此
(
この
)
家
(
や
)
を
追出
(
おひだ
)
される
代
(
かは
)
りに、
164
ハルナの
都
(
みやこ
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
一伍
(
いちぶ
)
一什
(
しじふ
)
を
申上
(
まをしあ
)
げ、
165
主人
(
しゆじん
)
の
目
(
め
)
を
覚
(
さま
)
さねばおきませぬ。
166
ヘール
殿
(
どの
)
、
167
後
(
あと
)
を
確
(
しつか
)
り
頼
(
たの
)
みますよ。
168
妾
(
わらは
)
は
之
(
これ
)
からお
暇
(
いとま
)
を
致
(
いた
)
します』
169
ヘール『モシモシ
一寸
(
ちよつと
)
お
待
(
ま
)
ち
下
(
くだ
)
さい。
170
余
(
あま
)
り
仲
(
なか
)
が
良
(
よ
)
すぎるので、
171
そんな
喧嘩
(
けんくわ
)
が
始
(
はじ
)
まるのです。
172
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
は
何時
(
いつ
)
も
貴女
(
あなた
)
を
偉
(
えら
)
い
女房
(
にようばう
)
だ、
173
美
(
うつく
)
しい
者
(
もの
)
だ、
174
優
(
やさ
)
しい
者
(
もの
)
だと
褒
(
ほ
)
めて
居
(
ゐ
)
られますよ』
175
チルナ『エーお
前
(
まへ
)
は
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
と
肚
(
はら
)
を
合
(
あは
)
し、
176
妾
(
わらは
)
を
追出
(
おひだ
)
す
所存
(
しよぞん
)
であらうがな。
177
何
(
なに
)
もかもカンナから
聞
(
き
)
いてあるのだよ。
178
そんな
一
(
いち
)
時
(
じ
)
逃
(
のが
)
れの
追従
(
つゐしよう
)
を
食
(
く
)
ふやうなチルナぢや
厶
(
ござ
)
いませぬ。
179
左様
(
さやう
)
なら、
180
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
181
スベタ
女
(
をんな
)
とお
楽
(
たの
)
しみなさい』
182
と
血相
(
けつさう
)
かへて
飛出
(
とびだ
)
さうとする。
183
飛出
(
とびで
)
て
欲
(
ほ
)
しかつたチルテルも、
184
こんなことをハルナの
都
(
みやこ
)
に
報告
(
はうこく
)
されては
大変
(
たいへん
)
だ、
185
一層
(
いつそ
)
のこと
永久
(
えいきう
)
に
庫
(
くら
)
の
中
(
なか
)
へ
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
んでおくに
限
(
かぎ
)
ると
決心
(
けつしん
)
し、
186
痛
(
いた
)
さを
堪
(
こら
)
へて、
187
チルテル『ヤア、
188
ヘール、
189
女房
(
にようばう
)
は
発狂
(
はつきやう
)
致
(
いた
)
し、
190
此
(
この
)
俺
(
おれ
)
の
睾丸
(
きんたま
)
を
握
(
にぎ
)
つて
殺
(
ころ
)
さうと
致
(
いた
)
した
謀殺
(
ぼうさつ
)
未遂
(
みすゐ
)
犯人
(
はんにん
)
だ。
191
サア
早
(
はや
)
くふん
縛
(
じば
)
つて、
192
第一号
(
だいいちがう
)
の
倉庫
(
さうこ
)
へ
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
むでくれ。
193
之
(
これ
)
はチルテルの
命令
(
めいれい
)
ぢやない、
194
キャプテンの
申付
(
まをしつけ
)
だぞ』
195
ヘール『ハア』
196
とゐずまゐを
直
(
なほ
)
し、
197
矢庭
(
やには
)
にチルナ
姫
(
ひめ
)
の
後
(
うしろ
)
にまはり、
198
ヘール『
謀殺
(
ぼうさつ
)
未遂
(
みすゐ
)
の
大罪人
(
だいざいにん
)
、
199
バラモン
軍
(
ぐん
)
の
関守
(
せきもり
)
兼
(
けん
)
キャプテンの
命
(
めい
)
に
仍
(
よ
)
つて
捕縛
(
ほばく
)
する。
200
神妙
(
しんめう
)
に
縄
(
なは
)
にかかれ』
201
と
云
(
い
)
ひ
放
(
はな
)
ち、
202
チルナ
姫
(
ひめ
)
の
細腕
(
ほそうで
)
をグツと
後
(
うしろ
)
へ
廻
(
まは
)
し、
203
捕縄
(
ほじよう
)
を
以
(
もつ
)
て
縛
(
しば
)
り
上
(
あ
)
げ、
204
ヘール『きりきり
歩
(
あゆ
)
め』
205
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
第一
(
だいいち
)
倉庫
(
さうこ
)
を
指
(
さ
)
して
引摺
(
ひきず
)
り
行
(
ゆ
)
く。
206
ヘール『ハハア、
207
此処
(
ここ
)
はデビス
姫
(
ひめ
)
とか
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
が、
208
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
んである
倉庫
(
さうこ
)
だ。
209
女同志
(
をんなどうし
)
二人
(
ふたり
)
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
みておけば、
210
随分
(
ずいぶん
)
悋気
(
りんき
)
の
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
くことだらう。
211
イヤ
面白
(
おもしろ
)
い
喧嘩
(
けんくわ
)
が
始
(
はじ
)
まるだらう』
212
と
呟
(
つぶや
)
き
乍
(
なが
)
ら、
213
ガラガラと
戸
(
と
)
を
開
(
あ
)
け
無理
(
むり
)
に
押込
(
おしこ
)
み、
214
ピシヤリと
戸
(
と
)
を
締
(
し
)
め
錠
(
ぢやう
)
をおろしておく。
215
此
(
この
)
錠
(
ぢやう
)
は
小
(
ちひ
)
さい
穴
(
あな
)
に
一寸
(
ちよつと
)
した
石
(
いし
)
を
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
めば、
216
それで
中
(
なか
)
から
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
焦
(
あせ
)
つても
開
(
あ
)
かない。
217
外
(
そと
)
からは
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
に
開
(
あ
)
くやうになつてゐる。
218
つまり
倉庫
(
さうこ
)
とは
云
(
い
)
ふものの、
219
監禁室
(
かんきんしつ
)
である。
220
チルナ
姫
(
ひめ
)
はヘールに
押込
(
おしこ
)
まれた
途端
(
とたん
)
にヒヨロ ヒヨロとして、
221
カンナがふん
縛
(
じば
)
られて
倒
(
たふ
)
れてゐる
上
(
うへ
)
にパツタリとこけ
込
(
こ
)
むだ。
222
真暗
(
まつくら
)
がりである。
223
何人
(
なにびと
)
か
見当
(
けんたう
)
がつかぬ。
224
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
今
(
いま
)
ヘールが
独言
(
ひとりごと
)
にデビス
姫
(
ひめ
)
だとか
云
(
い
)
ひよつた。
225
大方
(
おほかた
)
其
(
その
)
女
(
をんな
)
であらう、
226
此奴
(
こいつ
)
もヤツパリ
仇
(
かたき
)
の
片割
(
かたわ
)
れだ、
227
斯様
(
かやう
)
な
女
(
をんな
)
をチルテルの
爺
(
おやぢ
)
が
隠
(
かく
)
まひおき、
228
チヨコ チヨコ
密会
(
みつくわい
)
をして
居
(
ゐ
)
るのだらう、
229
エー
残念
(
ざんねん
)
だ、
230
何
(
なん
)
とかして
懲
(
こら
)
してやりたいが、
231
斯
(
か
)
う
手
(
て
)
を
縛
(
しば
)
られては
何
(
ど
)
うすることも
出来
(
でき
)
ない……と
小声
(
こごゑ
)
で
呟
(
つぶや
)
き
乍
(
なが
)
ら、
232
カンナの
太腿
(
ふともも
)
にガブリと
かぶ
り
付
(
つ
)
いた。
233
カンナは
吃驚
(
びつくり
)
して、
234
『アイタヽ、
235
痛
(
いた
)
い
痛
(
いた
)
い』
236
チルナ『エー、
237
極道
(
ごくだう
)
女
(
をんな
)
奴
(
め
)
、
238
チツとは
痛
(
いた
)
いぞ、
239
モツと
かぶ
つてやらうか』
240
と
又
(
また
)
かぶ
りつく。
241
カンナ『モシモシ
私
(
わたし
)
は
女
(
をんな
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬ。
242
カンナといふ
男
(
をとこ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
243
どうぞ
怺
(
こら
)
へて
下
(
くだ
)
さいませ。
244
かう
手足
(
てあし
)
を
縛
(
しば
)
られては
動
(
うご
)
くことも
出来
(
でき
)
ませぬ』
245
チルナ『エー、
246
図々
(
づうづう
)
しい、
247
男
(
をとこ
)
の
声色
(
こわいろ
)
を
使
(
つか
)
つたつて、
248
そんなことに
誤魔化
(
ごまくわ
)
されるチルナ
姫
(
ひめ
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬぞえ。
249
大化者
(
おほばけもの
)
奴
(
め
)
、
250
能
(
よ
)
うマア
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
に
悪知恵
(
わるぢゑ
)
をつけ、
251
妾
(
わらは
)
をこんな
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
はしよつたナ。
252
妾
(
わらは
)
は
死物狂
(
しにものぐるひ
)
、
253
汝
(
そなた
)
の
肉
(
にく
)
を
皆
(
みな
)
咬
(
か
)
み
切
(
き
)
つてやらねば
了見
(
れうけん
)
ならぬ、
254
覚悟
(
かくご
)
しや』
255
カンナ『モシモシ
256
貴女
(
あなた
)
は
奥様
(
おくさま
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか。
257
私
(
わたし
)
はカンナで
厶
(
ござ
)
いますよ』
258
チルナ『エー、
259
そんな
嘘
(
うそ
)
を
言
(
い
)
つても
承知
(
しようち
)
を
致
(
いた
)
さぬぞや。
260
カンナはこんな
所
(
ところ
)
に
居
(
ゐ
)
る
筈
(
はず
)
がない。
261
お
前
(
まへ
)
はデビスに
間違
(
まちが
)
ひなからうがな』
262
カンナ『
滅相
(
めつさう
)
な、
263
私
(
わたし
)
の
声
(
こゑ
)
をお
聞
(
きき
)
になつても
分
(
わか
)
るぢやありませぬか』
264
チルナ『エー、
265
何
(
なに
)
をツベコベと
云
(
い
)
ふのだい。
266
耳
(
みみ
)
がワンワンして、
267
声
(
こゑ
)
が
聞分
(
ききわけ
)
られるやうな
場合
(
ばあひ
)
かい、
268
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
269
お
前
(
まへ
)
はデビスに
違
(
ちが
)
ひない。
270
思
(
おも
)
ひ
知
(
し
)
つたがよからうぞや』
271
と
又
(
また
)
かぶ
る。
272
カンナは、
273
カンナ『
痛
(
いた
)
い!
痛
(
いた
)
い
痛
(
いた
)
い
痛
(
いた
)
い』
274
と
悲鳴
(
ひめい
)
をあげる。
275
其
(
その
)
勢
(
いきほひ
)
に
手
(
て
)
をくくつた
綱
(
つな
)
はプツリと
切
(
き
)
れた。
276
カンナは
直様
(
すぐさま
)
かぶ
りついてゐる
女
(
をんな
)
の
髻
(
たぶさ
)
を
片手
(
かたて
)
に
持
(
も
)
ち、
277
片手
(
かたて
)
に
拳骨
(
げんこつ
)
を
固
(
かた
)
めて、
278
力
(
ちから
)
の
限
(
かぎ
)
り
殴
(
なぐ
)
りつけた。
279
キヤツと
一声
(
ひとこゑ
)
、
280
後
(
あと
)
は
何
(
なに
)
も
聞
(
きこ
)
えなくなり、
281
かぶ
りついても
来
(
こ
)
ぬ。
282
カンナは
直
(
ただち
)
に
足
(
あし
)
の
縛
(
いましめ
)
を
解
(
と
)
き、
283
暗
(
くら
)
がりを
探
(
さぐ
)
つて、
284
チルナの
縛
(
いましめ
)
を
解
(
と
)
き
背中
(
せなか
)
を
三
(
み
)
つ
四
(
よ
)
つ
殴
(
なぐ
)
りつけた。
285
「ウーン」と
息
(
いき
)
吹
(
ふき
)
返
(
かへ
)
した。
286
されど
真暗
(
まつくら
)
がりで
互
(
たがひ
)
の
顔
(
かほ
)
は
鼻
(
はな
)
を
摘
(
つ
)
まんでも
分
(
わか
)
らない。
287
チルナは
死武者
(
しにむしや
)
になつて、
2871
這
(
は
)
ひまはり、
288
カンナが
面
(
つら
)
を
顰
(
しか
)
めて
傷所
(
きずしよ
)
を
撫
(
な
)
でてゐる
其
(
その
)
手
(
て
)
がフツと
触
(
さは
)
つたので、
289
チルナ『エー
此
(
この
)
スベタ
女
(
をんな
)
奴
(
め
)
』
290
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
291
グツと
太腿
(
ふともも
)
を
掻
(
か
)
き
むし
つてやらうと、
292
手
(
て
)
を
差伸
(
さしの
)
べた
途端
(
とたん
)
に、
293
種茄子
(
たねなす
)
のやうな
形
(
かたち
)
した
物
(
もの
)
が
手
(
て
)
に
触
(
さは
)
つた。
294
チルナ『あゝヤツパリお
前
(
まへ
)
は
男
(
をとこ
)
であつたか、
295
何者
(
なにもの
)
ぢや』
296
カンナ『
私
(
わたし
)
はカンナで
厶
(
ござ
)
います。
297
奥様
(
おくさま
)
に
暗
(
くら
)
がりで、
298
三四
(
さんし
)
ケ
所
(
しよ
)
も
太腿
(
ふともも
)
の
肉
(
にく
)
を
咬
(
かみ
)
とられ、
299
何
(
ど
)
うも
痛
(
いた
)
くて
辛抱
(
しんばう
)
が
出来
(
でき
)
ませぬ。
300
酷
(
ひど
)
いことをなされますなア』
301
チルナ『そりやお
前
(
まへ
)
、
302
時
(
とき
)
の
災難
(
さいなん
)
と
諦
(
あきら
)
めるより
仕方
(
しかた
)
がないぢやないか。
303
妾
(
わたし
)
の
横面
(
よこづら
)
を
大変
(
たいへん
)
、
304
お
前
(
まへ
)
も
殴
(
なぐ
)
りつけたのだから、
305
互
(
たがひ
)
に
恨
(
うらみ
)
は
帳消
(
ちやうけ
)
しとして、
306
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
此処
(
ここ
)
を
逃出
(
にげだ
)
す
工夫
(
くふう
)
をしようぢやないか』
307
カンナ『
逃出
(
にげだ
)
さうと
云
(
い
)
つても、
308
かう
足
(
あし
)
に
重傷
(
ぢうしやう
)
を
負
(
お
)
うては
動
(
うご
)
きが
取
(
と
)
れませぬ。
309
そして
此
(
この
)
錠前
(
ぢやうまへ
)
は
中
(
なか
)
からは
何
(
ど
)
うしても
開
(
あ
)
けられないのです。
310
壁
(
かべ
)
には
太
(
ふと
)
い
鉄線
(
てつせん
)
が
碁盤
(
ごばん
)
の
目
(
め
)
の
如
(
ごと
)
く
張
(
は
)
つてありますから、
311
到底
(
たうてい
)
駄目
(
だめ
)
でせう』
312
チルナ『ここにデビス
姫
(
ひめ
)
とかが
縛
(
しば
)
つて
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
むであるといふことだから、
313
一
(
ひと
)
つ
探
(
さぐ
)
つてみて
仇
(
かたき
)
を
討
(
う
)
つから、
314
お
前
(
まへ
)
さま
315
それなつと
見
(
み
)
て、
3151
気
(
き
)
を
慰
(
なぐさ
)
めなされ。
316
あゝ
腹立
(
はらだ
)
たしい、
317
何
(
ど
)
こにすつ
込
(
こ
)
んでゐるのだな。
318
オイ、
319
デビス、
320
声
(
こゑ
)
を
立
(
た
)
てぬか。
321
何程
(
なんぼ
)
黙
(
だま
)
つて
居
(
を
)
つても
昼
(
ひる
)
になればチツと
明
(
あか
)
くなるから、
322
所在
(
ありか
)
を
見付
(
みつ
)
け、
323
成敗
(
せいばい
)
を
致
(
いた
)
すぞや。
324
今
(
いま
)
素直
(
すなほ
)
に
此処
(
ここ
)
に
居
(
を
)
りますと
申
(
まを
)
せば
腕
(
うで
)
の
一本
(
いつぽん
)
位
(
ぐらゐ
)
で
堪
(
こら
)
へてやる』
325
カンナ『モシ、
326
奥
(
おく
)
さま、
327
其
(
その
)
デビスは
私
(
わたし
)
と
入替
(
いれかへ
)
に
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
のお
使
(
つかひ
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て
連
(
つ
)
れ
出
(
だ
)
して
了
(
しま
)
ひました。
328
大方
(
おほかた
)
今頃
(
いまごろ
)
は
其
(
その
)
女
(
をんな
)
を
看護婦
(
かんごふ
)
代用
(
だいよう
)
にしてゐられるでせうよ。
329
アイタヽヽ、
330
あゝ
痛
(
いた
)
い
痛
(
いた
)
い、
331
本当
(
ほんたう
)
にエライこと
かぶ
られて、
332
太腿
(
ふともも
)
が
三所
(
みとこ
)
も
四所
(
よとこ
)
も
赤
(
あか
)
い
口
(
くち
)
をあけて
欠伸
(
あくび
)
をしてゐるやうだ。
333
本当
(
ほんたう
)
に
酷
(
ひど
)
い
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
はしましたなア』
334
チルナ『ホツホヽヽヽ、
335
常平生
(
つねへいぜい
)
から
旦那
(
だんな
)
さまを
咬
(
そその
)
かし、
336
初稚
(
はつわか
)
などと
云
(
い
)
ふ
女
(
をんな
)
を
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
たのも、
337
元
(
もと
)
を
糺
(
ただ
)
せばお
前
(
まへ
)
ぢやないか。
338
つまり
云
(
い
)
へば
自業
(
じごふ
)
自得
(
じとく
)
だよ。
339
マア
天罰
(
てんばつ
)
が
当
(
あた
)
つたと
思
(
おも
)
うて
辛抱
(
しんばう
)
しなさい。
340
お
前
(
まへ
)
は
太腿
(
ふともも
)
の
三片
(
みきれ
)
や
四片
(
よきれ
)
取
(
と
)
られたとて
夫
(
そ
)
れ
程
(
ほど
)
苦
(
くる
)
しいのか。
341
妾
(
わたし
)
は
大事
(
だいじ
)
の
大事
(
だいじ
)
の
夫
(
をつと
)
の
身体
(
からだ
)
を
全体
(
まるくち
)
取
(
と
)
られたでないか、
342
あゝ
残念
(
ざんねん
)
やなア、
343
ウンウンウンウン』
344
倉
(
くら
)
の
隅
(
すみ
)
から
猫
(
ねこ
)
の
様
(
やう
)
な
劫
(
ごふ
)
経
(
へ
)
た
大
(
おほ
)
きい
鼠
(
ねずみ
)
が、
345
『クウクウクウクウ、
346
チウチウチウチウ、
347
ガタガタガタガタ、
348
ゴトゴトゴトゴトゴト』
349
と
厭
(
いや
)
らしい
音
(
おと
)
を
立
(
た
)
ててゐる。
350
(
大正一二・四・一
旧二・一六
於皆生温泉浜屋
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 焚付
(B)
(N)
暗内 >>>
霊界物語
>
真善美愛(第49~60巻)
>
第59巻(戌の巻)
> 第2篇 厄気悋々 > 第8章 暗傷
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第8章 暗傷|第59巻|真善美愛|霊界物語|/rm5908】
合言葉「みろく」を入力して下さい→