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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第59巻(戌の巻)
序
総説歌
第1篇 毀誉の雲翳
第1章 逆艪
第2章 歌垣
第3章 蜜議
第4章 陰使
第5章 有升
第2篇 厄気悋々
第6章 雲隠
第7章 焚付
第8章 暗傷
第9章 暗内
第10章 変金
第11章 黒白
第12章 狐穴
第3篇 地底の歓声
第13章 案知
第14章 舗照
第15章 和歌意
第16章 開窟
第17章 倉明
第4篇 六根猩々
第18章 手苦番
第19章 猩々舟
第20章 海竜王
第21章 客々舟
第22章 五葉松
第23章 鳩首
第24章 隆光
第25章 歓呼
余白歌
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霊界物語
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真善美愛(第49~60巻)
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第59巻(戌の巻)
> 第2篇 厄気悋々 > 第7章 焚付
<<< 雲隠
(B)
(N)
暗傷 >>>
第七章
焚付
(
たきつけ
)
〔一五〇七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第59巻 真善美愛 戌の巻
篇:
第2篇 厄気悋々
よみ(新仮名遣い):
やっきりんりん
章:
第7章 焚付
よみ(新仮名遣い):
たきつけ
通し章番号:
1507
口述日:
1923(大正12)年04月01日(旧02月16日)
口述場所:
皆生温泉 浜屋
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年7月8日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
チルナ姫は、夫チルテルが初稚姫を自宅に逗留させていることに腹を立て、また部下を使って初稚姫を誘惑しようとした試みが失敗したので荒れている。そこへチルテルが酔って帰宅した。
カンナはチルテルを迎え出て、チルナ姫が荒れているのであまり近づかないようにと忠告した。チルテルは、チルナ姫を焚き付けて家出するように仕向けてくれたら、バーチルの館からさらってきた女を与えようと約束した。
チルテルは女房のチルナ姫の始末をカンナに任せて、自分はさっさと初稚姫の居間を訪ねて行った。初稚姫はチルナ姫を持ちあげて、チルテルをかわしている。
一方カンナは、チルテルが初稚姫以外にも美人を倉庫に隠しているとチルナ姫に告げ、またチルテルが陰でチルナ姫の悪口を行って女たちと笑っていたと焚き付けた。
チルナ姫は計略通り大いに怒りだした。カンナはもう家を出てせいせいしたらよいとチルナ姫をそそのかそうとするが、チルナ姫は逆に、こうなったらどこまでも家を出ず、女どもを全員叩き出さなければ気が済まないと覚悟を決めてしまった。
チルナ姫は暴れはじめ、障子を破り、火鉢を放り投げ、瀬戸物を割り出した。チルテルはこの物音を聞いて血相変えて走ってくると、チルナ姫を殴りつけた。チルナ姫は逆上してチルテルに武者ぶりつき、睾丸を力かぎりに引っ張った。チルテルは唸ってその場に倒れた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm5907
愛善世界社版:
91頁
八幡書店版:
第10輯 517頁
修補版:
校定版:
96頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
チルナ
姫
(
ひめ
)
は
一間
(
ひとま
)
に
入
(
い
)
つて
悋気
(
りんき
)
の
角
(
つの
)
を
生
(
は
)
やしながら、
002
自分
(
じぶん
)
の
髪
(
かみ
)
をひきむしつたり、
003
笄
(
かうがい
)
を
投
(
な
)
げたり、
004
鏡台
(
きやうだい
)
を
引
(
ひ
)
つくり
返
(
かへ
)
したり、
005
室内
(
しつない
)
は
俄
(
にはか
)
に
二百十
(
にひやくとを
)
日
(
か
)
の
嵐
(
あらし
)
が
吹
(
ふ
)
いたやうになつて
居
(
ゐ
)
る。
006
そこへ
一杯
(
いつぱい
)
機嫌
(
きげん
)
で
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
たのは、
007
キャプテンのチルテルであつた。
008
チルテルは
門口
(
かどぐち
)
から
大声
(
おほごゑ
)
を
上
(
あ
)
げ、
009
チルテル『オーイ
女房
(
にようばう
)
、
010
今
(
いま
)
戻
(
もど
)
つたぞや、
011
早
(
はや
)
う
開
(
あ
)
けないか。
012
何
(
なん
)
だ
中
(
なか
)
から
戸
(
と
)
に
突張
(
つつぱり
)
をこうて
居
(
ゐ
)
やがると
見
(
み
)
えて、
013
押
(
お
)
しても
引
(
ひ
)
いても
開
(
あ
)
きやしないわ。
014
あゝこんな
事
(
こと
)
なら、
015
兵士
(
へいし
)
を
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
つたらよかつたに、
016
誰奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
皆
(
みな
)
酒
(
さけ
)
に
喰
(
くら
)
ひ
酔
(
よ
)
つて
ドブ
さつて
仕舞
(
しまひ
)
よつた。
017
今日
(
けふ
)
は
山
(
やま
)
の
神
(
かみ
)
の
面体
(
めんてい
)
に
低気圧
(
ていきあつ
)
が
襲来
(
しふらい
)
して
居
(
ゐ
)
たと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
予期
(
よき
)
して
居
(
ゐ
)
たのだが、
018
これや
又
(
また
)
どうした
事
(
こと
)
だい。
019
オーイ
開
(
あ
)
けぬか、
020
開
(
あ
)
けぬか』
021
と
戸
(
と
)
を
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
握
(
にぎ
)
り
拳
(
こぶし
)
で
叩
(
たた
)
いて
居
(
を
)
る。
022
カンナは
驚
(
おどろ
)
き
急
(
いそ
)
ぎ
戸
(
と
)
を
開
(
あ
)
け、
023
カンナ『あ、
024
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
ようお
帰
(
かへ
)
りなさいませ』
025
チルテル『ウン、
026
あまり
軍務
(
ぐんむ
)
が
忙
(
いそが
)
しいので、
027
つい
遅
(
おそ
)
くなつて、
028
奥
(
おく
)
も
待
(
ま
)
ち
兼
(
か
)
ねたであらうなア』
029
カンナ『ヘエ、
030
あの
奥
(
おく
)
さまですか、
031
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
では
申
(
まを
)
されませぬが、
032
どうも
形勢
(
けいせい
)
が
険悪
(
けんあく
)
なので
容易
(
ようい
)
に
近
(
ちか
)
よる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
033
貴方
(
あなた
)
がお
帰
(
かへ
)
りになつたら、
034
一騒動
(
ひとさうどう
)
が
始
(
はじ
)
まるであらうとビクビクもので
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
ました。
035
何卒
(
どうぞ
)
喧
(
やかま
)
しう
仰有
(
おつしや
)
らずに
036
ソツと
寝間
(
ねま
)
に
這入
(
はい
)
つて
寝
(
やす
)
んで
頂
(
いただ
)
きたいものですなア』
037
チルテル『
何
(
なに
)
、
038
奥
(
おく
)
が
怒
(
おこ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのか。
039
イヤ、
040
そいつは
面白
(
おもしろ
)
い。
041
一
(
ひと
)
つ
怒
(
おこ
)
らして
自分
(
じぶん
)
の
方
(
はう
)
から
飛
(
と
)
び
出
(
で
)
て
呉
(
く
)
れるやうにと
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
たのだ。
042
オイ、
043
カンナ、
044
貴様
(
きさま
)
によい
土産
(
みやげ
)
を
持
(
も
)
つて
帰
(
かへ
)
つた。
045
第一号
(
だいいちがう
)
の
倉庫
(
さうこ
)
に
入
(
い
)
れてある、
046
頗
(
すこぶ
)
る
的
(
てき
)
のナイスだよ。
047
一
(
ひと
)
つ
貴様
(
きさま
)
が
女房
(
かない
)
を
焚付
(
たきつ
)
け
048
自分
(
じぶん
)
から
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
すやうにして
呉
(
く
)
れたら、
049
あのナイスをお
前
(
まへ
)
の
女房
(
にようばう
)
にしてやらうと
050
ソツと
掠奪
(
りやくだつ
)
して
来
(
き
)
たのだ。
051
随分
(
ずいぶん
)
立派
(
りつぱ
)
なものだぞ』
052
カンナ『
遉
(
さすが
)
はキャプテン
様
(
さま
)
、
053
種々
(
いろいろ
)
とお
気
(
き
)
をつけ
下
(
くだ
)
さいまして
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
054
到底
(
たうてい
)
裏
(
うら
)
のナイスは
私
(
わたし
)
達
(
たち
)
の
挺
(
てこ
)
には
合
(
あ
)
ひませぬからな』
055
チルテル『
何
(
なに
)
、
0551
裏
(
うら
)
のナイスにお
前
(
まへ
)
は
056
物
(
もの
)
を
言
(
い
)
つたのか』
057
カンナは
頭
(
あたま
)
をガシガシと
掻
(
か
)
き
乍
(
なが
)
ら、
058
云
(
い
)
ひ
悪
(
にく
)
さうに、
059
カンナ『ハイ、
060
一寸
(
ちよつと
)
序
(
ついで
)
にナイスの
意向
(
いかう
)
を
探
(
さぐ
)
つて
見
(
み
)
ました
所
(
ところ
)
、
061
仲々
(
なかなか
)
偉
(
えら
)
いものですな。
062
テクの
奴
(
やつ
)
、
063
俄
(
にはか
)
中尉
(
ちうゐ
)
だと
威張
(
ゐば
)
つて
出
(
で
)
て
来
(
き
)
ましたが、
064
一耐
(
ひとたま
)
りもなく
言
(
い
)
ひ
込
(
こ
)
められて、
065
不減口
(
へらずぐち
)
を
叩
(
たた
)
いて
遁走
(
とんそう
)
しました。
066
本当
(
ほんたう
)
に、
067
人間
(
にんげん
)
の
挺
(
てこ
)
に
合
(
あ
)
ふナイスでは
厶
(
ござ
)
いませぬわ。
068
そして「キャプテン
様
(
さま
)
にお
目
(
め
)
にかかつて
詳
(
くは
)
しいお
話
(
はなし
)
を
承
(
うけたま
)
はりませう」と
澄
(
す
)
まし
込
(
こ
)
んで
居
(
ゐ
)
るのですもの、
069
お
喜
(
よろこ
)
びなさいませ。
070
屹度
(
きつと
)
脈
(
みやく
)
がありますよ』
071
チルテル『ナイスの
事
(
こと
)
はお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
の
力
(
ちから
)
ではどうする
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ぬ。
072
構
(
かま
)
ふて
呉
(
く
)
れるな、
073
いらいだてをすると
074
却
(
かへつ
)
て
一
(
いち
)
も
取
(
と
)
らず
二
(
に
)
も
取
(
と
)
らずになつて
仕舞
(
しま
)
ふ。
075
ああして
俺
(
おれ
)
の
家
(
うち
)
へ
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
置
(
お
)
いて
呉
(
く
)
れと
云
(
い
)
ふのだから、
076
俺
(
おれ
)
に
思召
(
おぼしめし
)
が
有
(
あ
)
るのに
違
(
ちが
)
ひない。
077
併
(
しか
)
し
俺
(
おれ
)
には
女房
(
にようばう
)
があるから、
078
あのナイスも
遠慮
(
ゑんりよ
)
して
居
(
ゐ
)
るのだ。
079
其処
(
そこ
)
を
それ
080
気
(
き
)
を
利
(
き
)
かさなければ
駄目
(
だめ
)
だからなア。
081
女房
(
にようばう
)
さへ
無
(
な
)
ければ、
082
放
(
ほ
)
つて
置
(
お
)
いても
俺
(
おれ
)
に
靡
(
なび
)
いて
来
(
く
)
るのは
既定
(
きてい
)
の
事実
(
じじつ
)
だ、
083
ウフヽヽヽ』
084
カンナ『
一
(
ひと
)
つそれでは
奮闘
(
ふんとう
)
して
見
(
み
)
ませう。
085
奥
(
おく
)
さまを
怒
(
おこ
)
らせうと
思
(
おも
)
へば、
086
些
(
ちつ
)
とは
旦那
(
だんな
)
の
悪口
(
わるくち
)
も
云
(
い
)
ひますから
予
(
あらかじ
)
め
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
087
チルテル『よし、
088
目的
(
もくてき
)
さへ
達
(
たつ
)
すればよいのだ、
089
手段
(
しゆだん
)
は
選
(
えら
)
ばない。
090
そこはお
前
(
まへ
)
に
任
(
まか
)
して
置
(
お
)
く。
091
甘
(
うま
)
くやつて
呉
(
く
)
れ。
092
併
(
しか
)
し
余
(
あま
)
り
怒
(
おこ
)
らして
自害
(
じがい
)
でもやつて
呉
(
く
)
れると
困
(
こま
)
るよ。
093
其処
(
そこ
)
は
見計
(
みはか
)
らつて、
094
家
(
いへ
)
を
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
す
程度
(
ていど
)
に
計
(
はか
)
らつて
呉
(
く
)
れ』
095
カンナ『よろしい、
096
何
(
なん
)
と
難
(
むつかし
)
い
事
(
こと
)
を
頼
(
たの
)
まれたものだが、
097
一
(
ひと
)
つ
計
(
はか
)
らつて
見
(
み
)
ませう……
奥
(
おく
)
さまのお
心
(
こころ
)
がお
可憐
(
いとし
)
いわい』
098
チルテル『オイ、
099
そんな
気
(
き
)
の
弱
(
よわ
)
い
事
(
こと
)
でどうしてこの
大任
(
たいにん
)
が
果
(
はた
)
せるか。
100
もつと
心
(
こころ
)
を
鬼
(
おに
)
にして
行
(
ゆ
)
かないと
駄目
(
だめ
)
だぞ』
101
カンナ『ハイ、
102
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
だと
云
(
い
)
つたのは
社交
(
しやかう
)
上
(
じやう
)
の
辞令
(
じれい
)
ですよ。
103
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
ながら、
104
おつ
放
(
ぽ
)
り
出
(
で
)
るやうに
尽力
(
じんりよく
)
して
見
(
み
)
ませう、
105
貴方
(
あなた
)
は
離家
(
はなれ
)
へ
行
(
い
)
つて
悠
(
ゆつく
)
りお
楽
(
たの
)
しみなさいませ。
106
さうして
奥
(
おく
)
さまの
部屋
(
へや
)
から
障子
(
しやうじ
)
に
影
(
かげ
)
が
見
(
み
)
えるやうに
仕組
(
しぐ
)
んで
貰
(
もら
)
はなくては
駄目
(
だめ
)
ですよ。
107
成可
(
なるべ
)
くは
抱擁
(
はうよう
)
キッス
握手
(
あくしゆ
)
などの
光景
(
くわうけい
)
が
見
(
み
)
えるやうに
仕組
(
しぐ
)
んで
貰
(
もら
)
い
度
(
た
)
いものですな。
108
私
(
わたし
)
が
オホン
と
大
(
おほ
)
きな
咳払
(
せきばら
)
ひをしたら
握手
(
あくしゆ
)
するのですよ。
109
そうして
甘
(
うま
)
く
写
(
うつ
)
して
貰
(
もら
)
ふのですよ』
110
チルテル『
恰
(
まる
)
で
幻燈屋
(
げんとうや
)
見
(
み
)
たやうな
事
(
こと
)
をするのだなア』
111
カンナ『そこで
現当
(
げんとう
)
利益
(
りやく
)
が
現
(
あら
)
はれるのですもの、
112
エヘヽヽヽ』
113
チルテルはヒヨロヒヨロと
千鳥足
(
ちどりあし
)
にて
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
居間
(
ゐま
)
へ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
114
チルテル『あゝ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
115
随分
(
ずいぶん
)
お
退屈
(
たいくつ
)
で
厶
(
ござ
)
いませうなア。
116
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つてお
話
(
はなし
)
相手
(
あいて
)
にならねば
済
(
す
)
まないと
思
(
おも
)
ふて
居
(
ゐ
)
ましたが、
117
何分
(
なにぶん
)
軍務
(
ぐんむ
)
が
忙
(
いそが
)
しいのでつい
遅
(
おそ
)
くなつて
済
(
す
)
みませぬ』
118
初稚
(
はつわか
)
『どうも、
119
いかい
御
(
ご
)
厄介
(
やつかい
)
になりまして
申訳
(
まをしわけ
)
が
厶
(
ござ
)
いませぬ。
120
大変
(
たいへん
)
な
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
121
随分
(
ずいぶん
)
お
酒
(
さけ
)
を
飲
(
あが
)
つたと
見
(
み
)
えますな』
122
チルテル『イヤ
一寸
(
ちよつと
)
九一升
(
くいつしよう
)
ばかり
引
(
ひ
)
つかけたものだから
123
些
(
ちつ
)
とばかり
酩酊
(
めいてい
)
致
(
いた
)
しました。
124
どうも
済
(
す
)
みませぬがお
茶
(
ちや
)
なりと
一杯
(
いつぱい
)
下
(
くだ
)
さいませぬか、
125
貴女
(
あなた
)
の
柔
(
やはら
)
かいお
手々
(
てて
)
で
汲
(
く
)
んで
頂
(
いただ
)
けば
一層
(
いつそう
)
美味
(
おい
)
しいでせう』
126
初稚
(
はつわか
)
『オホヽヽヽ。
127
何
(
なに
)
御
(
ご
)
冗談
(
じやうだん
)
仰有
(
おつしや
)
います、
128
貴方
(
あなた
)
129
奥様
(
おくさま
)
に
御
(
ご
)
挨拶
(
あいさつ
)
なさいましたか。
130
大変
(
たいへん
)
にお
待
(
ま
)
ち
兼
(
かね
)
の
御
(
ご
)
様子
(
やうす
)
で
厶
(
ござ
)
いましたよ』
131
チルテル『
奥
(
おく
)
さまと
云
(
い
)
へば
奥
(
おく
)
にすつ
込
(
こ
)
んで
居
(
を
)
ればよいものです。
132
あなた
見
(
み
)
てから
家
(
いへ
)
の
嬶
(
かか
)
見
(
み
)
れば
133
千
(
せん
)
里
(
り
)
奥山
(
おくやま
)
古狸
(
ふるだぬき
)
。
134
アハヽヽヽ、
135
いやもう
気
(
き
)
に
喰
(
く
)
はない
女房
(
にようばう
)
ですよ。
136
二
(
ふた
)
つ
目
(
め
)
には
悋気
(
りんき
)
の
角
(
つの
)
を
生
(
はや
)
し、
137
喉笛
(
のどぶえ
)
に
喰
(
くら
)
ひ
付
(
つ
)
くのですもの、
138
あんな
女房
(
にようばう
)
を
持
(
も
)
つた
夫
(
をつと
)
程
(
ほど
)
不幸
(
ふかう
)
なものは
有
(
あ
)
りませぬわい。
139
アハヽヽヽ』
140
初稚
(
はつわか
)
『
何
(
なに
)
を
仰有
(
おつしや
)
います。
141
あんな
貞淑
(
ていしゆく
)
な
奥様
(
おくさま
)
が
何処
(
どこ
)
に
厶
(
ござ
)
いませうか、
142
悋気
(
りんき
)
をなさらないやうな
奥様
(
おくさま
)
だつたら
駄目
(
だめ
)
ですよ。
143
きつと
外
(
ほか
)
に
心
(
こころ
)
を
移
(
うつ
)
して
居
(
ゐ
)
るのです。
144
天
(
てん
)
にも
地
(
ち
)
にも
貴方
(
あなた
)
一人
(
ひとり
)
と
思召
(
おぼしめ
)
すからこそ
145
偶
(
たま
)
には
悋気
(
りんき
)
もなさるのですからな。
146
サア
早
(
はや
)
く
奥様
(
おくさま
)
のお
気
(
き
)
の
安
(
やす
)
まるやうにお
言葉
(
ことば
)
をおかけなさいませ。
147
其
(
その
)
上
(
うへ
)
にて
妾
(
わらは
)
の
傍
(
そば
)
にお
出
(
いで
)
下
(
くだ
)
されば、
148
妾
(
わらは
)
も
奥様
(
おくさま
)
に
対
(
たい
)
し
大変
(
たいへん
)
気
(
き
)
が
楽
(
らく
)
で
厶
(
ござ
)
いますからな』
149
チルテル『
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
足
(
あし
)
が
立
(
た
)
ちませぬ、
150
暫
(
しばら
)
く
此処
(
ここ
)
で
悠
(
ゆつく
)
りさして
下
(
くだ
)
さい。
151
あゝ
苦
(
くる
)
しい
苦
(
くる
)
しい、
152
誰
(
たれ
)
か
胸
(
むね
)
を
擦
(
さす
)
つて
呉
(
く
)
れるものは
無
(
な
)
からうかな。
153
あゝ
苦
(
くる
)
しい
苦
(
くる
)
しい。
154
姫
(
ひめ
)
さま
誠
(
まこと
)
に
済
(
す
)
みませぬが、
155
一寸
(
ちよつと
)
私
(
わたし
)
の
胸
(
むね
)
を
擦
(
さす
)
つて
頂
(
いただ
)
けませぬか』
156
初稚
(
はつわか
)
『そんなら、
157
お
背
(
せな
)
を
擦
(
さす
)
らして
頂
(
いただ
)
きませう』
158
と
故意
(
わざ
)
とに
後
(
あと
)
へ
廻
(
まは
)
り
背
(
せな
)
を
擦
(
さす
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
159
一方
(
いつぱう
)
カンナはチルナ
姫
(
ひめ
)
の
居間
(
ゐま
)
に
慌
(
あわ
)
ただしく
駆
(
か
)
け
入
(
い
)
り、
160
カンナ『もし、
161
奥様
(
おくさま
)
』
162
と
小声
(
こごゑ
)
になつて、
163
『
御
(
ご
)
用心
(
ようじん
)
なさいませ。
164
タヽ
大変
(
たいへん
)
で
厶
(
ござ
)
いますよ。
165
貴方
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
は
今日
(
けふ
)
も
二人
(
ふたり
)
の
美人
(
びじん
)
に
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
かれ、
166
目
(
め
)
を
細
(
ほそ
)
うしてゐらつしやいました。
167
さうして
其
(
その
)
お
歌
(
うた
)
が
気
(
き
)
に
喰
(
く
)
はないのです。
168
私
(
わたし
)
は
成可
(
なるべ
)
く
家
(
いへ
)
の
中
(
なか
)
に
浪風
(
なみかぜ
)
が
立
(
た
)
たないやうに、
169
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
の
事
(
こと
)
は
奥様
(
おくさま
)
の
耳
(
みみ
)
に
入
(
い
)
らないやうにして
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
何度
(
なんど
)
も
包
(
つつ
)
んで
居
(
ゐ
)
ましたが、
170
もう
包
(
つつ
)
んで
居
(
を
)
られぬやうになりました。
171
奥様
(
おくさま
)
がお
可哀
(
かあい
)
さうで
耐
(
たま
)
らないやうになりました。
172
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
許
(
ばか
)
りの
部下
(
ぶか
)
ではない。
173
奥様
(
おくさま
)
の
為
(
ため
)
にも
部下
(
ぶか
)
ですからなア。
174
奥様
(
おくさま
)
から
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
遊
(
あそ
)
ばすやう、
175
そつとお
知
(
し
)
らせ
致
(
いた
)
します』
176
チルナ『
何
(
なに
)
、
177
あの
裏
(
うら
)
の
初稚姫
(
はつわかひめ
)
とか
云
(
い
)
ふ
女
(
をんな
)
の
外
(
ほか
)
にまだよい
女
(
をんな
)
が
出来
(
でき
)
て
居
(
ゐ
)
るのかい』
178
カンナ『ヘエヘエ、
179
奥様
(
おくさま
)
はお
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
ですな。
180
ほんたうに、
181
お
可哀
(
かあい
)
さうだわい。
182
先
(
ま
)
づ
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
の
歌
(
うた
)
を
御
(
ご
)
紹介
(
せうかい
)
致
(
いた
)
しませう。
183
決
(
けつ
)
して、
184
お
腹
(
はら
)
を
立
(
た
)
てて
下
(
くだ
)
さいますなよ。
185
家
(
うち
)
の
嬶
(
かか
)
見
(
み
)
れば
見
(
み
)
る
程
(
ほど
)
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つ
186
蛸
(
たこ
)
のお
化
(
ばけ
)
か
古狸
(
ふるだぬき
)
。
187
と
云
(
い
)
ふやうな
歌
(
うた
)
を
歌
(
うた
)
つていらつしやるのですよ。
188
貴方
(
あなた
)
のやうな
美人
(
びじん
)
を、
189
蛸
(
たこ
)
のお
化
(
ばけ
)
だの
古狸
(
ふるだぬき
)
だのと
仰有
(
おつしや
)
るのですからな。
190
女
(
をんな
)
に
呆
(
はう
)
けると、
191
蜥蜴
(
とかげ
)
のやうな
顔
(
かほ
)
した
女
(
をんな
)
でも
天女
(
てんによ
)
のやうに
見
(
み
)
えると
見
(
み
)
えますな』
192
チルナは
身
(
み
)
を
慄
(
ふる
)
はし
乍
(
なが
)
ら、
193
キリキリキリと
歯
(
は
)
を
噛
(
か
)
み、
194
髪
(
かみ
)
をパツと
逆立
(
さかだ
)
てた。
195
カンナ『まだまだ
奥様
(
おくさま
)
こんな
事
(
こと
)
で
怒
(
おこ
)
つてはいけませぬ。
196
もつと
凄
(
すご
)
い
文句
(
もんく
)
がありますよ。
197
何
(
なん
)
でも
女
(
をんな
)
の
名
(
な
)
は
忘
(
わす
)
れましたが、
198
彼女
(
あいつ
)
はキーチャンの
果
(
はて
)
かも
知
(
し
)
れませぬが、
199
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
を
捉
(
つか
)
まへて
歌
(
うた
)
ひやがつたのが
気
(
き
)
に
喰
(
く
)
はぬのです。
200
私
(
わたし
)
はその
歌
(
うた
)
を
聞
(
き
)
くと
歯
(
は
)
がガチガチ
鳴
(
な
)
り
出
(
だ
)
しました。
201
嬶
(
かか
)
は
叩
(
たた
)
き
出
(
だ
)
せ
子
(
こ
)
は○○○○○
202
後
(
あと
)
の
女房
(
にようばう
)
にや
私
(
わし
)
が
行
(
ゆ
)
く。
203
てな
事
(
こと
)
を
吐
(
ぬか
)
しやがるのですよ。
204
業
(
ごふ
)
が
沸
(
わ
)
くの
沸
(
わ
)
かぬのと、
205
私
(
わたし
)
が
奥様
(
おくさま
)
だつたら
矢庭
(
やには
)
に
胸倉
(
むなぐら
)
をグツと
取
(
と
)
り、
206
髻
(
たぶさ
)
を
掴
(
つか
)
むで
引
(
ひき
)
ずり
廻
(
まは
)
してやるのですけれどな。
207
夫
(
それ
)
に
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
は、
208
エヘヽヽ、
209
オホヽヽ、
210
と
顔
(
かほ
)
の
相好
(
さうがう
)
崩
(
くづ
)
して
笑
(
わら
)
つていらつしやるのですもの。
211
家
(
うち
)
の
嬶
(
かか
)
白粉
(
おしろい
)
おとした
素顔
(
すがほ
)
を
見
(
み
)
たら
212
胸
(
むね
)
がむかむか
嘔吐
(
へど
)
が
出
(
で
)
る。
213
と
214
ヘヽヽヽ。
215
こんな
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
るのですよ。
216
どうしても
逃
(
に
)
げて
帰
(
かへ
)
らにや
女房
(
にようばう
)
の
奴
(
やつ
)
を
217
竹
(
たけ
)
に
糞
(
ふん
)
つけ
突
(
つ
)
いて
出
(
だ
)
す。
218
あた
汚
(
きたな
)
い、
219
奥様
(
おくさま
)
、
220
竹
(
たけ
)
の
先
(
さき
)
に
糞
(
ふん
)
つけて
突
(
つ
)
き
出
(
だ
)
してやらうと
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
は
歌
(
うた
)
つていらつしやいましたよ。
221
実
(
じつ
)
に
私
(
わたし
)
が
聞
(
き
)
いても
フンガイ
の
至
(
いた
)
りですワ』
222
チルナ『アヽ
口惜
(
くちをし
)
い、
223
残念
(
ざんねん
)
や
残念
(
ざんねん
)
や、
224
どうしてこの
恨
(
うらみ
)
を
晴
(
は
)
らしてよからうかなア。
225
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
はそんな
情
(
なさ
)
けない
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
る
人
(
ひと
)
ぢやない、
226
女
(
をんな
)
が
悪
(
わる
)
いのだ。
227
其
(
その
)
女
(
をんな
)
は
何処
(
どこ
)
に
居
(
を
)
る。
228
其
(
その
)
女
(
をんな
)
を
探
(
さが
)
し
出
(
だ
)
し
敵
(
かたき
)
を
討
(
う
)
つてやらねばなりませぬ』
229
と
血相
(
けつさう
)
変
(
か
)
へて
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
る。
230
カンナは
大手
(
おほで
)
を
拡
(
ひろ
)
げて
立
(
た
)
ち
塞
(
ふさ
)
がり、
231
カンナ『まアまアお
待
(
ま
)
ちなさいませ。
232
血相
(
けつさう
)
かへて
何
(
な
)
んの
事
(
こと
)
ですか。
233
敵
(
かたき
)
なら
私
(
わたし
)
が
討
(
う
)
つて
上
(
あ
)
げます。
234
そして
貴女
(
あなた
)
はまだお
目出度
(
めでた
)
いですな。
235
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
を
贔屓
(
ひいき
)
して
居
(
ゐ
)
らつしやるが、
236
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
は
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
も
私
(
わたし
)
を
呼
(
よ
)
んで、
237
「あんな
嬶
(
かかあ
)
は
見
(
み
)
るのも
嫌
(
いや
)
だ。
238
何
(
なん
)
とかして
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
す
分別
(
ふんべつ
)
は
無
(
な
)
からうか」と
仰有
(
おつしや
)
いましたが、
239
「これはしたり、
240
こんな
事
(
こと
)
をなさつては
人道
(
じんだう
)
に
外
(
はづ
)
れます」とお
諫
(
いさ
)
め
申
(
まを
)
したら、
241
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
はプリンと
怒
(
おこ
)
つてハツキリ
私
(
わたし
)
には
物
(
もの
)
を
言
(
い
)
うて
下
(
くだ
)
さらぬのですもの、
242
ホントに
困
(
こま
)
つて
了
(
しま
)
ひますワ。
243
チルナ
姫
(
ひめ
)
散
(
ち
)
るな
散
(
ち
)
るなと
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
は
244
可愛
(
かあい
)
がつたが
馬鹿
(
ばか
)
らしや。
245
早
(
はや
)
く
散
(
ち
)
れ
花
(
はな
)
は
桜木
(
さくらぎ
)
人
(
ひと
)
は
武士
(
ぶし
)
246
早
(
はや
)
く
散
(
ち
)
れ
散
(
ち
)
れチルナ
姫
(
ひめ
)
。
247
家
(
うち
)
の
嬶
(
かか
)
なぜにあれ
程
(
ほど
)
強太
(
しぶと
)
いか
248
私
(
わし
)
の
嫌
(
きら
)
ふのが
分
(
わか
)
らないか
249
扨
(
さ
)
てもうるさい
ボテ
嬶
(
かか
)
よ。
250
奥山
(
おくやま
)
の
狸
(
たぬき
)
狐
(
きつね
)
の
化
(
ば
)
けたやうな
251
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
るたびゾツとする。
252
夫
(
それ
)
よりも
裏
(
うら
)
の
離
(
はな
)
れの
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
253
私
(
わし
)
の
女房
(
にようばう
)
にやよく
似合
(
にあ
)
ふ。
254
とか
何
(
なん
)
とか
云
(
い
)
つて、
255
それはそれは
甚
(
えら
)
い
権幕
(
けんまく
)
ですよ。
256
奥
(
おく
)
さまよく
考
(
かんが
)
へて
御覧
(
ごらん
)
なさい。
257
貴方
(
あなた
)
のやうな
容色
(
きりやう
)
をして
258
嫌
(
いや
)
がられる
所
(
ところ
)
へ
居
(
を
)
らなくても
好
(
よ
)
いぢやありませぬか、
259
オツホン
。
260
あれあれ
261
あの
障子
(
しやうじ
)
の
影
(
かげ
)
を
御覧
(
ごらん
)
なさい。
262
背
(
せな
)
を
擦
(
さす
)
つて
居
(
を
)
るのは
女
(
をんな
)
でせう。
263
あんな
所
(
ところ
)
を
見
(
み
)
せつけられて
264
貴女
(
あなた
)
ノメノメとよくこんな
所
(
ところ
)
に
居
(
を
)
られますな』
265
チルナ『
私
(
わたし
)
は
此
(
この
)
家
(
うち
)
をどこ
迄
(
まで
)
も
出
(
で
)
ませぬよ。
266
夫
(
をつと
)
が
女
(
をんな
)
を
入
(
い
)
れて
私
(
わたし
)
を
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
さうとすれば
尚更
(
なほさら
)
のこと、
267
此処
(
ここ
)
に
頑張
(
ぐわんば
)
つて
居
(
を
)
つて
邪魔
(
じやま
)
してやるのです。
268
それが
女
(
をんな
)
の
意地
(
いぢ
)
ですもの。
269
此
(
この
)
家
(
や
)
を
出
(
で
)
るや
否
(
いな
)
や
夫婦
(
ふうふ
)
気取
(
きど
)
りになつて
暮
(
くら
)
されては
詰
(
つま
)
らないもの。
270
エヽ
好
(
す
)
かない
阿魔
(
あま
)
ツ
女
(
ちよ
)
だな。
271
人
(
ひと
)
の
大事
(
だいじ
)
の
主人
(
しゆじん
)
を
何
(
なん
)
と
思
(
おも
)
つて
大胆
(
だいたん
)
至極
(
しごく
)
にもあんな
事
(
こと
)
をするのだらう。
272
これお
前
(
まへ
)
、
273
些
(
すこ
)
し
退
(
の
)
いてお
呉
(
く
)
れ。
274
ちと
暴
(
あば
)
れますから
怪我
(
けが
)
をしても
知
(
し
)
らないよ』
275
と、
276
障子
(
しやうじ
)
をバリバリ、
277
火鉢
(
ひばち
)
を
窓
(
まど
)
の
外
(
そと
)
へカンカラカラ。
278
瀬戸物
(
せともの
)
の
割
(
わ
)
れる
音
(
おと
)
ケンケラケン、
279
ガチヤ ガチヤ ガチヤ ガタガタガタ、
280
四股
(
しこ
)
踏
(
ふ
)
む
音
(
おと
)
ドンドンドン、
281
ドスンドスンドスン。
282
カンナ『もしもし
奥様
(
おくさま
)
、
283
そんなお
乱暴
(
らんばう
)
な
事
(
こと
)
をして
貰
(
もら
)
つては、
284
後
(
あと
)
の
奥
(
おく
)
さまが
厶
(
ござ
)
るぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか』
285
チルナ『エヽ
構
(
かま
)
ふてお
呉
(
く
)
れな、
286
此
(
この
)
部屋
(
へや
)
は
私
(
わたし
)
の
自由
(
じいう
)
だ、
287
叩
(
たた
)
き
壊
(
こは
)
さうと、
2871
どうならうと、
288
皆
(
みな
)
さまのお
世話
(
せわ
)
にはなりませぬよ』
289
ガタガタ、
290
ドスンドスン、
291
バリバリバリ。
292
此
(
この
)
物音
(
ものおと
)
に
驚
(
おどろ
)
いてチルテルは、
293
チルテル『コラ
何
(
なに
)
をさらす』
294
と
血相
(
けつさう
)
変
(
か
)
へて
走
(
はし
)
り
来
(
きた
)
り、
295
チルナの
髻
(
たぶさ
)
をグイと
鷲掴
(
わしづか
)
み、
296
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
に
拳骨
(
げんこつ
)
を
固
(
かた
)
めて
三
(
みつ
)
つ
四
(
よ
)
つ
撲
(
なぐ
)
りつけた。
297
チルナは
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
逆上
(
のぼせ
)
あがり、
298
金切声
(
きんきりごゑ
)
を
出
(
だ
)
して、
299
チルナ『エヽ
悪性爺
(
あくしやうおやぢ
)
奴
(
め
)
、
300
チルナが
臨終
(
いまわ
)
の
別
(
わか
)
れ、
301
死物狂
(
しにものぐる
)
ひだ』
302
と
武者
(
むしや
)
振
(
ぶ
)
りつき、
303
睾丸
(
きんたま
)
をグツと
握
(
にぎ
)
り
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
りに
引
(
ひ
)
つ
張
(
ぱ
)
つた。
304
チルテルはウンと
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
倒
(
たふ
)
れける。
305
(
大正一二・四・一
旧二・一六
於皆生温泉浜屋
加藤明子
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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(B)
(N)
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