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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第64巻(卯の巻)下
序文
総説
第1篇 復活転活
第1章 復活祭
第2章 逆襲
第3章 草居谷底
第4章 誤霊城
第5章 横恋慕
第2篇 鬼薊の花
第6章 金酒結婚
第7章 虎角
第8章 擬侠心
第9章 狂怪戦
第10章 拘淫
第3篇 開花落花
第11章 狂擬怪
第12章 開狂式
第13章 漆別
第14章 花曇
第15章 騒淫ホテル
第4篇 清風一過
第16章 誤辛折
第17章 茶粕
第18章 誠と偽
第19章 笑拙種
第20章 猫鞍干
第21章 不意の官命
第22章 帰国と鬼哭
余白歌
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霊界物語
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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第64巻(卯の巻)下
> 第1篇 復活転活 > 第1章 復活祭
<<< 総説
(B)
(N)
逆襲 >>>
第一章
復活祭
(
ふくくわつさい
)
〔一八〇七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第64巻下 山河草木 卯の巻下
篇:
第1篇 復活転活
よみ(新仮名遣い):
ふっかつてんかつ
章:
第1章 復活祭
よみ(新仮名遣い):
ふっかつさい
通し章番号:
1807
口述日:
1925(大正14)年08月19日(旧06月30日)
口述場所:
丹後由良 秋田別荘
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年11月7日
概要:
舞台:
僧院ホテル
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-05-24 23:19:20
OBC :
rm64b01
愛善世界社版:
7頁
八幡書店版:
第11輯 497頁
修補版:
校定版:
7頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
十二
(
じふに
)
日
(
にち
)
は
聖師
(
せいし
)
ウズンバラ・チヤンダーの
降誕日
(
かうたんび
)
に
相当
(
さうたう
)
するので、
002
ブラバーサは
草庵
(
さうあん
)
を
立
(
た
)
つて
其
(
その
)
吉辰
(
きつしん
)
を
祝
(
しゆく
)
すべく、
003
橄欖山
(
かんらんざん
)
の
聖地
(
せいち
)
に
参詣
(
さんけい
)
して、
004
熱烈
(
ねつれつ
)
なる
祈祷
(
きたう
)
を
捧
(
ささ
)
げ
了
(
をは
)
り、
005
今日
(
けふ
)
は
常
(
つね
)
よりも
緊張
(
きんちやう
)
した
気分
(
きぶん
)
で、
006
且
(
か
)
つ
敬虔
(
けいけん
)
な
態度
(
たいど
)
で
山
(
やま
)
を
下
(
くだ
)
り、
007
アメリカンコロニーにも
立寄
(
たちよ
)
り、
008
聖師
(
せいし
)
に
会
(
あ
)
つて
神徳談
(
しんとくばなし
)
を
交換
(
かうくわん
)
し、
009
日没前
(
にちぼつぜん
)
袂
(
たもと
)
を
別
(
わか
)
ち、
010
帰途
(
きと
)
カトリックの
僧院
(
そうゐん
)
ホテルに
立寄
(
たちよ
)
つた。
011
恰
(
あたか
)
も
当日
(
たうじつ
)
は
聖
(
せい
)
キリストの
復活祭
(
ふくくわつさい
)
で
全
(
ぜん
)
基督
(
キリスト
)
教会
(
けうくわい
)
は
之
(
これ
)
を
大聖日
(
だいせいじつ
)
として
一斉
(
いつせい
)
になる
祈祷
(
きたう
)
が
捧
(
ささ
)
げらるるのである。
012
旧教
(
きうけう
)
も
新教
(
しんけう
)
も
何
(
いづ
)
れの
教派
(
けうは
)
を
問
(
と
)
はず、
013
最
(
もつと
)
も
栄
(
さか
)
えある
福音
(
ふくいん
)
として
此
(
こ
)
の
聖日
(
せいじつ
)
を
迎
(
むか
)
へるのである。
014
そして
旧教
(
きうけう
)
の
方面
(
はうめん
)
から
見
(
み
)
ると
当年
(
たうねん
)
は
聖年
(
せいねん
)
に
当
(
あた
)
つて
居
(
ゐ
)
るが、
015
その
聖年中
(
せいねんちう
)
の
復活祭
(
ふくくわつさい
)
として
乙丑
(
きのとうし
)
の
四
(
し
)
月
(
ぐわつ
)
十二
(
じふに
)
日
(
にち
)
を
最
(
もつと
)
も
祝福
(
しゆくふく
)
する
事
(
こと
)
に
成
(
な
)
つてゐる。
016
大体
(
だいたい
)
カトリック
教会
(
けうくわい
)
では
三
(
さん
)
月
(
ぐわつ
)
第三回
(
だいさんくわい
)
目
(
め
)
の
水曜日
(
すいえうび
)
から
聖年
(
せいねん
)
は
四旬節
(
しじゆんせつ
)
に
入
(
い
)
つてゐるのである。
017
祈
(
いの
)
りと、
018
断食
(
だんじき
)
と、
019
苦行
(
くぎやう
)
との
節
(
せつ
)
が
初
(
はじ
)
まるのである。
020
即
(
すなは
)
ち
祈
(
いの
)
り、
021
苦行
(
くぎやう
)
、
022
断食
(
だんじき
)
等
(
とう
)
の
犠牲
(
ぎせい
)
がこの
四旬節
(
しじゆんせつ
)
に
行
(
おこな
)
はれる。
023
そして
四
(
し
)
月
(
ぐわつ
)
に
入
(
い
)
ると
五日
(
いつか
)
から
十二
(
じふに
)
日
(
にち
)
の
復活祭
(
ふくくわつさい
)
まで
是
(
これ
)
を
大週
(
たいしう
)
又
(
また
)
は
聖週
(
せいしう
)
として
五日
(
いつか
)
を
聖
(
きよ
)
き
枝
(
えだ
)
の
主日
(
しゆのひ
)
、
024
又
(
また
)
は
棕櫚
(
しゆろ
)
の
主日
(
しゆのひ
)
と
云
(
い
)
ふのである。
025
『
弟子
(
でし
)
たち
往
(
ゆ
)
きてイエスの
命
(
めい
)
じ
給
(
たま
)
ひし
如
(
ごと
)
くに
為
(
な
)
し、
026
牝驢馬
(
めろば
)
とその
子
(
こ
)
とを
引
(
ひ
)
き
来
(
き
)
たり、
027
己
(
おの
)
が
衣服
(
いふく
)
を
其
(
その
)
上
(
うへ
)
に
敷
(
し
)
き、
028
イエスをこれにのせたるに、
029
群集
(
ぐんしふ
)
夥
(
おびただ
)
しく
己
(
おの
)
が
衣服
(
いふく
)
を
道
(
みち
)
に
敷
(
し
)
き、
030
ある
人々
(
ひとびと
)
は
樹
(
き
)
の
枝
(
えだ
)
を
切
(
き
)
りて
道
(
みち
)
に
敷
(
し
)
きたり。
031
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
ち
従
(
したが
)
へる
群集
(
ぐんしふ
)
呼
(
よ
)
ばはりて、
032
ダヴイドの
裔
(
すゑ
)
にホザンナ、
033
主
(
しゆ
)
の
名
(
な
)
によりて
来
(
き
)
たるものは
祝
(
しゆく
)
せられ
給
(
たま
)
へ。
034
いと
高
(
たか
)
きところまでホザンナを
言
(
い
)
ひ
居
(
を
)
れり』
035
即
(
すなは
)
ちイエスがエルサレムに
入
(
はい
)
つた
時
(
とき
)
、
036
人々
(
ひとびと
)
は
道
(
みち
)
に
着物
(
きもの
)
や
木
(
き
)
の
枝
(
えだ
)
を
敷
(
し
)
いて
歓迎
(
くわんげい
)
した
其
(
その
)
日
(
ひ
)
なのであるが、
037
四五
(
しご
)
日
(
にち
)
を
経
(
へ
)
てそれ
等
(
ら
)
の
人
(
ひと
)
達
(
たち
)
は
其
(
そ
)
のイエスを
十字架
(
じふじか
)
にかけたのである。
038
九日
(
ここのか
)
は
聖
(
せい
)
の
木曜
(
もくえう
)
でイエスが
死没
(
しぼつ
)
の
前夜
(
ぜんや
)
、
039
弟子
(
でし
)
を
集
(
あつ
)
めて
最後
(
さいご
)
の
晩餐
(
ばんさん
)
を
催
(
もよほ
)
し
聖体
(
せいたい
)
の
秘蹟
(
ひせき
)
を
定
(
さだ
)
めた
日
(
ひ
)
である。
040
この
日
(
ひ
)
司教座
(
しけうざ
)
の
在
(
あ
)
る
聖堂
(
せいだう
)
では
聖香油
(
せいかうゆ
)
を
造
(
つく
)
ることに
成
(
な
)
つてゐる。
041
十日
(
とをか
)
は
聖
(
せい
)
の
金曜
(
きんえう
)
であつて、
042
イエスが
十字架
(
じふじか
)
に
上
(
のぼ
)
り
死刑
(
しけい
)
に
処
(
しよ
)
せられた
日
(
ひ
)
である。
043
米国
(
べいこく
)
あたりでは
午後
(
ごご
)
一
(
いち
)
時
(
じ
)
から
三
(
さん
)
時
(
じ
)
まで、
044
即
(
すなは
)
ち
其
(
その
)
刑
(
けい
)
の
執行
(
しつかう
)
時間
(
じかん
)
を、
045
皆
(
みな
)
店
(
みせ
)
を
閉
(
と
)
ぢ
商売
(
しやうばい
)
を
休
(
やす
)
む
習慣
(
しふくわん
)
の
所
(
ところ
)
もあると
云
(
い
)
ふことである。
046
十一
(
じふいち
)
日
(
にち
)
は
聖
(
せい
)
の
土曜
(
どえう
)
で
復活
(
ふくくわつ
)
の
光明
(
くわうみやう
)
が
仄
(
ほの
)
かに
刺
(
さ
)
した
日
(
ひ
)
である。
047
さうして、
048
十二
(
じふに
)
日
(
にち
)
の
復活
(
ふくくわつ
)
大祝日
(
だいしゆくじつ
)
となるのである。
049
『おそるること
勿
(
なか
)
れ。
050
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
は
十字架
(
じふじか
)
につけられ
給
(
たま
)
ひしナザレのイエスをたづぬれどもかれは
復活
(
ふくくわつ
)
し
給
(
たま
)
ひて、
051
ここにはましまさず』
052
そして
此
(
こ
)
の
聖週
(
せいしう
)
が
終
(
をは
)
つても、
053
十三
(
じふさん
)
日
(
にち
)
を
復活
(
ふくくわつ
)
第二
(
だいに
)
の
主日
(
しゆのひ
)
となし、
054
『
汝
(
なんぢ
)
指
(
ゆび
)
をここに
入
(
い
)
れて、
055
我
(
わが
)
手
(
て
)
を
見
(
み
)
よ。
056
手
(
て
)
を
延
(
の
)
べて
我
(
わ
)
が
脇
(
わきばら
)
に
入
(
い
)
れよ。
057
不信者
(
ふしんじや
)
とならずして
信者
(
しんじや
)
となれよ。
058
トマス
答
(
こた
)
へて、
059
「
主
(
しゆ
)
よ、
060
わが
神
(
かみ
)
よ」と
言
(
い
)
ひしかば、
061
イエスこれに
言
(
い
)
ひけるは、
062
トマス
汝
(
なんぢ
)
はわれを
見
(
み
)
しによりて
信
(
しん
)
じたるか。
063
見
(
み
)
ずして
信
(
しん
)
ぜし
人々
(
ひとびと
)
こそ
福
(
さいはひ
)
なれ』
064
そして
十四日
(
じふよつか
)
をその
第三
(
だいさん
)
の
主日
(
しゆのひ
)
とするのである。
065
『
我
(
われ
)
は
又
(
また
)
この
檻
(
をり
)
に
属
(
ぞく
)
せざる
他
(
た
)
の
羊
(
ひつじ
)
をもてり。
066
かれ
等
(
ら
)
をも
引
(
ひ
)
き
来
(
きた
)
らざるべからず。
067
さて
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
我
(
わが
)
声
(
こゑ
)
をきき、
068
かくて
一
(
ひと
)
つの
檻
(
をり
)
、
069
一
(
ひと
)
つの
牧者
(
ぼくしや
)
とならむ』
070
これらの
教
(
をしへ
)
を
各教会
(
かくけうくわい
)
に
於
(
おい
)
て
一斉
(
いつせい
)
に
説
(
と
)
かれて
居
(
ゐ
)
るのである。
071
ブラバーサが
立寄
(
たちよ
)
つた
僧院
(
そうゐん
)
ホテルの
別室
(
べつしつ
)
には
数多
(
あまた
)
のカトリック
教徒
(
けうと
)
が
集
(
あつ
)
まつて、
072
此
(
こ
)
の
聖日
(
せいじつ
)
を
祝
(
しゆく
)
すべく、
073
復活祭
(
ふくくわつさい
)
第一
(
だいいち
)
の
主日
(
しゆのひ
)
の
祭典
(
さいてん
)
や
祈祷
(
きたう
)
を
行
(
おこな
)
つてゐた。
074
ブラバーサはルートバハーの
聖師
(
せいし
)
の
生誕日
(
せいたんび
)
に
当
(
あた
)
つて、
075
此
(
こ
)
の
僧院
(
そうゐん
)
に
厳粛
(
げんしゆく
)
なる
儀式
(
ぎしき
)
が
行
(
おこな
)
はれてゐる
事
(
こと
)
を
何
(
なん
)
となく
嬉
(
うれ
)
しく、
076
且
(
か
)
つ
神縁
(
しんえん
)
の
絡
(
から
)
まれたる
不思議
(
ふしぎ
)
さに
感歎
(
かんたん
)
しながら、
077
式
(
しき
)
の
終
(
をは
)
るを
待
(
ま
)
ち、
078
末座
(
まつざ
)
に
敬虔
(
けいけん
)
な
態度
(
たいど
)
で
祈祷
(
きたう
)
を
拝
(
ささ
)
げ、
079
感慨
(
かんがい
)
無量
(
むりやう
)
の
面持
(
おももち
)
であつた。
080
ホスビース・ノートルダム・フランスのこの
加特力
(
カトリック
)
僧院
(
そうゐん
)
ホテルを
経営
(
けいえい
)
してゐる
司教
(
しけう
)
テルブソンは、
081
先途
(
せんと
)
に
立
(
た
)
つて
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
三拝
(
さんぱい
)
し、
082
一同
(
いちどう
)
の
信者
(
しんじや
)
と
異口
(
いく
)
同音
(
どうおん
)
に
左
(
さ
)
の
讃美歌
(
さんびか
)
を
唄
(
うた
)
ふた。
083
一
084
御祖
(
みおや
)
はあれまし
道
(
みち
)
を
説
(
と
)
けり
085
なやみに
住
(
す
)
む
人
(
ひと
)
求
(
ま
)
ぎて
来
(
き
)
たれ
086
智慧
(
さとり
)
のみはしら
世
(
よ
)
に
降
(
くだ
)
れり
087
よはき
人々
(
ひとびと
)
よ
来
(
き
)
たりまなべ。
088
二
089
伊都
(
いづ
)
の
大神
(
おほかみ
)
は
世
(
よ
)
に
降
(
くだ
)
れり
090
よろづの
人々
(
ひとびと
)
来
(
き
)
たりたのめ
091
身魂
(
みたま
)
をきよむる
神
(
かみ
)
の
清水
(
しみづ
)
092
汚
(
けが
)
されし
人
(
ひと
)
は
来
(
き
)
たりすすげ。
093
三
094
美都
(
みづ
)
の
大神
(
おほかみ
)
世
(
よ
)
に
出
(
い
)
でます
095
なやめる
人々
(
ひとびと
)
来
(
き
)
たりたのめ
096
生命
(
いのち
)
の
御親
(
みおや
)
は
世
(
よ
)
に
降
(
くだ
)
れり
097
つみにしみし
人
(
ひと
)
求
(
ま
)
ぎて
生
(
い
)
きよ。
098
四
099
美都
(
みづ
)
の
御柱
(
みはしら
)
は
世
(
よ
)
に
生
(
うま
)
れぬ
100
うへした
諸共
(
もろとも
)
来
(
き
)
たり
斎
(
いつ
)
け
101
天地
(
あめつち
)
のはしら
御世
(
みよ
)
に
降
(
くだ
)
る
102
すべてのものみな
勇
(
いさ
)
みうたへ。
103
一同
(
いちどう
)
美声
(
びせい
)
を
揃
(
そろ
)
へて
四辺
(
しへん
)
の
空気
(
くうき
)
を
清
(
きよ
)
めたる
讃美歌
(
さんびか
)
の
奉唱
(
ほうしやう
)
も
無事
(
ぶじ
)
終了
(
しうれう
)
し、
104
司教
(
しけう
)
のテルブソンはさも
荘重
(
さうちよう
)
な
声
(
こゑ
)
にて
一場
(
いちぢやう
)
の
演説
(
えんぜつ
)
を
試
(
こころ
)
みた。
105
テルブソン
『
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
様
(
さま
)
、
106
今日
(
こんにち
)
は
吾々
(
われわれ
)
信者
(
しんじや
)
に
採
(
と
)
つて
最
(
もつと
)
も
慶
(
けい
)
すべき
吉辰
(
きつしん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
107
メシヤの
復活
(
ふくくわつ
)
あそばされて、
108
天国
(
てんごく
)
の
福音
(
ふくいん
)
を
世界
(
せかい
)
の
同胞
(
どうはう
)
に
垂
(
た
)
れさせ
給
(
たま
)
ひました
主
(
しゆ
)
の
日
(
ひ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
109
就
(
つい
)
ては
主
(
しゆ
)
の
御
(
お
)
約束
(
やくそく
)
遊
(
あそ
)
ばした
聖地
(
せいち
)
エルサレムへ
御
(
ご
)
再臨
(
さいりん
)
の
時期
(
じき
)
も
追々
(
おひおひ
)
と
近
(
ちか
)
づいた
様
(
やう
)
に
拝
(
はい
)
せられ、
110
吾々
(
われわれ
)
は
実
(
じつ
)
に
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
より
選
(
えら
)
まれたるピュリタンとして、
111
此
(
この
)
上
(
うへ
)
の
光栄
(
くわうえい
)
は
在
(
あ
)
るまいと
思
(
おも
)
ひます。
112
皆様
(
みなさま
)
、
113
主
(
しゆ
)
は「
我
(
わ
)
が
来
(
きた
)
るは
平和
(
へいわ
)
を
出
(
いだ
)
さむ
為
(
ため
)
では
無
(
な
)
い。
114
刃
(
やいば
)
を
出
(
いだ
)
さむ
為
(
ため
)
に
来
(
きた
)
れり」と
仰
(
おほ
)
せられてゐるでは
在
(
あ
)
りませぬか。
115
吾々
(
われわれ
)
は
主
(
しゆ
)
再臨
(
さいりん
)
の
好時期
(
かうじき
)
に
生
(
うま
)
れたものですから、
116
余程
(
よほど
)
の
覚悟
(
かくご
)
を
致
(
いた
)
さなくては
成
(
な
)
りますまい。
117
現代人
(
げんだいじん
)
の
多数
(
たすう
)
は
宗教
(
しうけう
)
の
力
(
ちから
)
に
依
(
よ
)
つて、
118
或
(
あるひ
)
は
絶対
(
ぜつたい
)
的
(
てき
)
信仰
(
しんかう
)
の
力
(
ちから
)
に
依
(
よ
)
つて、
119
真善美
(
しんぜんび
)
の
行為
(
かうゐ
)
を
現
(
あら
)
はし、
120
家庭
(
かてい
)
の
円満
(
ゑんまん
)
を
企画
(
きくわく
)
し、
121
自己
(
じこ
)
の
人格
(
じんかく
)
を
向上
(
かうじやう
)
し、
122
社会
(
しやくわい
)
国家
(
こくか
)
を
益
(
えき
)
せむものと
焦慮
(
せうりよ
)
してゐる
様
(
やう
)
で
厶
(
ござ
)
いますが
然
(
しか
)
し
私
(
わたくし
)
は
思
(
おも
)
ふ、
123
ソンナ
怪智
(
けち
)
くさい
考
(
かんが
)
へを
以
(
もつ
)
て
信仰
(
しんかう
)
が
得
(
え
)
られませうか。
124
刃
(
やいば
)
を
出
(
いだ
)
す
覚悟
(
かくご
)
が
無
(
な
)
くては
再臨
(
さいりん
)
のキリストに
救
(
すく
)
はる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ますまい。
125
信仰
(
しんかう
)
の
為
(
ため
)
ならば、
126
地位
(
ちゐ
)
も、
127
財産
(
ざいさん
)
も、
128
親
(
おや
)
兄弟
(
きやうだい
)
も、
129
知己
(
ちき
)
も、
130
朋友
(
ほういう
)
も
一切
(
いつさい
)
捨
(
す
)
てる
覚悟
(
かくご
)
が
無
(
な
)
くては
駄目
(
だめ
)
です。
131
信仰
(
しんかう
)
を
味
(
あぢ
)
はつて
家庭
(
かてい
)
を
円満
(
ゑんまん
)
にしようとか、
132
人格
(
じんかく
)
を
向上
(
かうじやう
)
させやうとか
云
(
い
)
ふやうな
功利心
(
こうりしん
)
や
自己愛
(
じこあい
)
の
精神
(
せいしん
)
では
堂
(
どう
)
して
宇宙大
(
うちうだい
)
に
開放
(
かいはう
)
された、
133
真
(
まこと
)
の
生
(
い
)
ける
信仰
(
しんかう
)
を
得
(
え
)
る
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませうか。
134
自分
(
じぶん
)
は
世
(
よ
)
の
終
(
をは
)
りまで
悪魔
(
あくま
)
だ、
135
地獄
(
ぢごく
)
行
(
ゆ
)
きだ、
136
一生涯
(
いつしやうがい
)
世間
(
せけん
)
の
人間
(
にんげん
)
に
歓
(
よろこ
)
ばれない。
137
かうした
悲痛
(
ひつう
)
な
絶望
(
ぜつばう
)
的
(
てき
)
な
決心
(
けつしん
)
が
無
(
な
)
くては、
138
此
(
こ
)
の
洪大
(
こうだい
)
無辺
(
むへん
)
にして、
139
有難
(
ありがた
)
い
尊
(
たふと
)
い
大宇宙
(
だいうちう
)
の
真理
(
しんり
)
、
140
真
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
触
(
ふ
)
れる
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませうか。
141
某
(
ぼう
)
聖者
(
せいじや
)
が
地獄
(
ぢごく
)
一定
(
いちぢやう
)
と
曰
(
い
)
はれたのは
此処
(
ここ
)
にある。
142
某
(
ぼう
)
聖者
(
せいじや
)
は
世
(
よ
)
を
終
(
をは
)
るまで
悪人
(
あくにん
)
たる
事
(
こと
)
を
覚悟
(
かくご
)
されてゐた。
143
主
(
しゆ
)
イエス・キリストも
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
とあれば
何事
(
なにごと
)
も
敢
(
あへ
)
て
辞
(
じ
)
さないと
曰
(
い
)
ふ
覚悟
(
かくご
)
を
持
(
も
)
つて
居
(
を
)
られたのであります。
144
一切
(
いつさい
)
の
囚
(
とら
)
はれより、
145
一切
(
いつさい
)
の
欲望
(
よくばう
)
より、
146
一切
(
いつさい
)
の
執着
(
しふちやく
)
より、
147
真
(
しん
)
に
離
(
はな
)
れ
去
(
さ
)
つた
時
(
とき
)
、
148
それは
真
(
しん
)
に
胸中
(
きようちう
)
無一物
(
むいちぶつ
)
、
149
空
(
くう
)
の
空
(
くう
)
であり
無
(
む
)
の
無
(
む
)
である。
150
その
時
(
とき
)
の
心境
(
しんきやう
)
こそは
鏡
(
かがみ
)
の
如
(
ごと
)
く
晴
(
は
)
れ
渡
(
わた
)
り、
151
澄
(
す
)
み
切
(
き
)
り、
152
総
(
すべ
)
ての
事象
(
じしやう
)
は
如実
(
によじつ
)
にその
心境
(
しんきやう
)
に
移
(
うつ
)
り
来
(
きた
)
る。
153
その
時
(
とき
)
こそは
真
(
しん
)
に
絶対
(
ぜつたい
)
の
自由
(
じいう
)
と
平安
(
へいあん
)
と、
154
幸福
(
かうふく
)
は
立
(
たち
)
どころに
与
(
あた
)
へられ、
155
さうして
過去
(
くわこ
)
の
一切
(
いつさい
)
の
経験
(
けいけん
)
は
一
(
ひと
)
つの
偉大
(
ゐだい
)
なる
力
(
ちから
)
となつて、
156
現在
(
げんざい
)
の
一点
(
いつてん
)
に
躍動
(
やくどう
)
するものであります。
157
即
(
すなは
)
ちこの
瞬間
(
しゆんかん
)
の
一点
(
いつてん
)
を
踏
(
ふ
)
みしめ
踏
(
ふ
)
みしめ
凝乎
(
じつ
)
と
足許
(
あしもと
)
を
見極
(
みきは
)
めて
精進
(
せうじん
)
するやうになれば、
158
そこに
所愛
(
しよあい
)
の
創造
(
さうざう
)
があり、
159
進化
(
しんくわ
)
があるのです。
160
私
(
わたし
)
は
平素
(
へいそ
)
この
精神
(
せいしん
)
を
以
(
もつ
)
て
信仰
(
しんかう
)
生活
(
せいくわつ
)
を
終始
(
しうし
)
して
居
(
ゐ
)
るのです。
161
私
(
わたし
)
はこの
僧院
(
そうゐん
)
の
司教
(
しけう
)
として
斯
(
かか
)
る
信仰
(
しんかう
)
を
持
(
ぢ
)
し、
162
聖
(
せい
)
キリストの
再臨
(
さいりん
)
を
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
るのですが、
163
世間
(
せけん
)
の
一般
(
いつぱん
)
からは
外道
(
げだう
)
悪魔
(
あくま
)
の
様
(
やう
)
に
批評
(
ひへう
)
されてゐます。
164
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
斯
(
かか
)
る
暗黒
(
あんこく
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
にも
私
(
わたし
)
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
ブラバーサ
様
(
さま
)
の
知己
(
ちき
)
あることを
光栄
(
くわうえい
)
と
存
(
ぞん
)
じて
居
(
を
)
ります。
165
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
キリスト
再臨
(
さいりん
)
の
間近
(
まぢか
)
く
迫
(
せま
)
つた
今日
(
こんにち
)
、
166
総
(
すべ
)
ての
因習
(
いんしふ
)
を
捨
(
す
)
て
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
愛
(
あい
)
に
向
(
むか
)
つて
猛進
(
まうしん
)
せなくては
成
(
な
)
りませぬ。
167
善
(
ぜん
)
だとか
悪
(
あく
)
だとか
天国
(
てんごく
)
地獄
(
ぢごく
)
などに
囚
(
とら
)
はれて
居
(
ゐ
)
ない
私
(
わたし
)
は
皆
(
みな
)
さまに
向
(
むか
)
つて
何
(
なに
)
も
申上
(
まをしあ
)
げる
原料
(
げんれう
)
も
持説
(
ぢせつ
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬ。
168
故
(
ゆゑ
)
に
今日
(
こんにち
)
は
主
(
しゆ
)
の
復活
(
ふくくわつ
)
聖日
(
せいじつ
)
を
祝福
(
しゆくふく
)
し
皆
(
みな
)
さまと
共
(
とも
)
に
神
(
かみ
)
を
讃美
(
さんび
)
し
奉
(
まつ
)
ることに
止
(
とど
)
めておきます。
169
アーメン』
170
と
合唱
(
がつしやう
)
し
降壇
(
かうだん
)
した。
171
拍手
(
はくしゆ
)
の
声
(
こゑ
)
は
急霰
(
きふさん
)
の
如
(
ごと
)
く
僧院
(
そうゐん
)
ホテルの
内外
(
ないぐわい
)
に
響
(
ひび
)
き
渡
(
わた
)
つた。
172
次
(
つぎ
)
にスバツフオード
聖師
(
せいし
)
は
立
(
た
)
つて
一場
(
いちぢやう
)
の
演説
(
えんぜつ
)
を
試
(
こころ
)
みた。
173
スバッフォード
『
皆様
(
みなさま
)
今日
(
けふ
)
は
実
(
じつ
)
に
有難
(
ありがた
)
い
主
(
しゆ
)
イエス・キリストの
復活
(
ふくくわつ
)
あそばされた
聖年
(
せいねん
)
聖日
(
せいじつ
)
で
厶
(
ござ
)
いまして、
174
吾々
(
われわれ
)
は
斯
(
こ
)
の
立派
(
りつぱ
)
な
僧院
(
そうゐん
)
におきまして、
175
兄弟
(
きやうだい
)
姉妹
(
しまい
)
と
共
(
とも
)
に
主
(
しゆ
)
の
日
(
ひ
)
を
讃美
(
さんび
)
し
祝福
(
しゆくふく
)
することの
光栄
(
くわうえい
)
を
感謝
(
かんしや
)
せずには
居
(
ゐ
)
られないので
厶
(
ござ
)
います。
176
吾々
(
われわれ
)
兄弟
(
きやうだい
)
姉妹
(
しまい
)
は、
177
この
目出度
(
めでた
)
き
聖日
(
せいじつ
)
をして
意義
(
いぎ
)
あるものたらしめねば
成
(
な
)
りませぬ。
178
そして
伝統
(
でんとう
)
的
(
てき
)
ブルジョア
的
(
てき
)
宗教
(
しうけう
)
や、
179
伝説
(
でんせつ
)
や
口碑
(
こうひ
)
に
因
(
よ
)
つて
飾
(
かざ
)
られたる
既成
(
きせい
)
宗教
(
しうけう
)
の
殻
(
から
)
を
脱
(
ぬ
)
いで、
180
時代
(
じだい
)
を
指導
(
しだう
)
するに
足
(
た
)
る
宗教
(
しうけう
)
の
運動
(
うんどう
)
に
生
(
い
)
きなくては
成
(
な
)
りませぬ。
181
吾々
(
われわれ
)
の
団体
(
だんたい
)
は
創設
(
さうせつ
)
以来
(
いらい
)
数十
(
すうじふ
)
年
(
ねん
)
の
日子
(
につし
)
を
経過
(
けいくわ
)
いたしました。
182
そして
聖
(
せい
)
キリストの
再臨
(
さいりん
)
を
待望
(
たいばう
)
して
参
(
まゐ
)
りました。
183
やがて
待
(
ま
)
ち
焦
(
こが
)
れたるメシヤの
御
(
ご
)
再臨
(
さいりん
)
も
近
(
ちか
)
い
事
(
こと
)
と
考
(
かんが
)
へさして
頂
(
いただ
)
いて
居
(
を
)
ります。
184
今度
(
こんど
)
顕
(
あら
)
はれたまふ
主
(
しゆ
)
エス・キリストは
時代
(
じだい
)
相応
(
さうおう
)
の
理
(
り
)
に
依
(
よ
)
つて
屹度
(
きつと
)
英雄
(
えいゆう
)
的
(
てき
)
色彩
(
しきさい
)
を
濃厚
(
のうこう
)
に
持
(
も
)
つて
御
(
お
)
降
(
くだ
)
りになる
事
(
こと
)
と
信
(
しん
)
じます。
185
熟々
(
つらつら
)
現代
(
げんだい
)
の
世相
(
せさう
)
を
視
(
み
)
れば
一方
(
いつぱう
)
には
文学
(
ぶんがく
)
を
恥
(
は
)
ぢて
武勇
(
ぶゆう
)
を
好
(
この
)
むもの、
186
一方
(
いつぱう
)
には
文学
(
ぶんがく
)
に
耽溺
(
たんでき
)
して
武備
(
ぶび
)
撤回
(
てつくわい
)
を
主唱
(
しゆしやう
)
するもの、
187
仁義
(
じんぎ
)
の
士
(
し
)
を
賤
(
いや
)
しみ
且
(
か
)
つ
愚者
(
ぐしや
)
扱
(
あつか
)
ひを
為
(
な
)
し、
188
権謀
(
けんぼう
)
術数
(
じゆつすう
)
に
長
(
ちやう
)
じたるものを
紳士
(
しんし
)
と
崇
(
あが
)
め、
189
治獄
(
ぢごく
)
の
吏
(
り
)
を
貴
(
たつと
)
み、
190
悪法
(
あくはふ
)
を
施行
(
しかう
)
し、
191
正言
(
せいげん
)
真語
(
しんご
)
を
唱
(
とな
)
ふるものを
以
(
もつ
)
て
誹謗者
(
ひばうしや
)
と
看做
(
みな
)
して
獄
(
ごく
)
に
投
(
とう
)
じ、
192
奸邪
(
かんじや
)
を
重用
(
ぢうよう
)
して
政事
(
まつりごと
)
の
枢機
(
すうき
)
に
列
(
れつ
)
せしめ、
193
過
(
あやま
)
ちを
防遏
(
ばうあつ
)
せむとするものは
之
(
これ
)
を
妖言者
(
えうげんしや
)
と
貶
(
けな
)
し、
194
流言
(
りうげん
)
浮説者
(
ふせつしや
)
として
圧迫
(
あつぱく
)
を
加
(
くは
)
へ、
195
先聖
(
せんせい
)
の
法服
(
はふふく
)
世
(
よ
)
に
用
(
もち
)
ひられず、
196
忠良
(
ちうりやう
)
功言
(
こうげん
)
皆
(
みな
)
胸中
(
きようちう
)
に
欝
(
うつ
)
し、
197
誉諛
(
よゆ
)
の
声
(
こゑ
)
は
日夜
(
にちや
)
耳
(
みみ
)
に
満
(
み
)
ち、
198
虚栄
(
きよえい
)
と
美食心
(
びしよくこころ
)
を
薫
(
くん
)
じ、
199
実行
(
じつかう
)
なく、
200
口説
(
こうぜつ
)
のみ
盛
(
さか
)
んにして、
201
社会
(
しやくわい
)
の
滅亡
(
めつぼう
)
眼前
(
がんぜん
)
に
迫
(
せま
)
るの
心地
(
ここち
)
が
致
(
いた
)
します。
202
斯
(
か
)
かる
時代
(
じだい
)
に
際
(
さい
)
して
一大
(
いちだい
)
英雄
(
えいゆう
)
即
(
すなは
)
ち
救世主
(
きうせいしゆ
)
の
降臨
(
かうりん
)
が
無
(
な
)
かつたならば、
203
最早
(
もはや
)
世
(
よ
)
は
暗黒
(
あんこく
)
より
道
(
みち
)
はないでせう。
204
神的
(
しんてき
)
英雄
(
えいゆう
)
なるものは
国家
(
こくか
)
又
(
また
)
は
社会
(
しやくわい
)
の
実体
(
じつたい
)
とも
曰
(
い
)
ふべきものであつて、
205
国家
(
こくか
)
も
社会
(
しやくわい
)
も
要
(
えう
)
するに
英雄
(
えいゆう
)
理想
(
りさう
)
の
具現
(
ぐげん
)
の
形式
(
けいしき
)
であります。
206
凡
(
すべ
)
て
英雄
(
えいゆう
)
の
無
(
な
)
き
国家
(
こくか
)
社会
(
しやくわい
)
は
精霊
(
せいれい
)
の
脱出
(
だつしゆつ
)
した
人間
(
にんげん
)
の
屍体
(
したい
)
も
同様
(
どうやう
)
であります。
207
精神
(
せいしん
)
の
脱出
(
だつしゆつ
)
した
人間
(
にんげん
)
の
肉体
(
にくたい
)
が
恣意
(
しい
)
なる
五欲
(
ごよく
)
の
乱起
(
らんき
)
によつて
自
(
みづか
)
らの
破滅
(
はめつ
)
に
終
(
をは
)
るが
如
(
ごと
)
く
之
(
これ
)
を
大統
(
だいとう
)
する
神雄
(
しんゆう
)
聖者
(
せいじや
)
の
欠如
(
けつじよ
)
は、
208
常
(
つね
)
に
国運
(
こくうん
)
の
衰弱
(
すゐじやく
)
、
209
否
(
いな
)
死滅
(
しめつ
)
も
同様
(
どうやう
)
であらうと
思
(
おも
)
ひます。
210
今日
(
こんにち
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
文化
(
ぶんくわ
)
の
低下
(
ていか
)
せしにもあらず、
211
生産
(
せいさん
)
の
減少
(
げんせう
)
にもあらず、
212
僧侶
(
そうりよ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
の
尠
(
すくな
)
きにもあらず、
213
兵備
(
へいび
)
の
整
(
ととの
)
はざるにもあらず、
214
然
(
しか
)
るに
昨日
(
さくじつ
)
の
隆盛
(
りうせい
)
も
今日
(
こんにち
)
の
沈衰
(
ちんすゐ
)
、
215
径庭
(
けいてい
)
かくの
如
(
ごと
)
く
甚
(
はなは
)
だしきものは
何
(
ど
)
の
理由
(
りいう
)
ぞ。
216
要
(
えう
)
するに
国家
(
こくか
)
社会
(
しやくわい
)
本来
(
ほんらい
)
の
意義
(
いぎ
)
を
体得
(
たいとく
)
した
大統
(
だいとう
)
的
(
てき
)
偉材
(
ゐざい
)
の
欠乏
(
けつぼう
)
せるが
為
(
ため
)
で
厶
(
ござ
)
いませう。
217
故
(
ゆゑ
)
に
私
(
わたし
)
は
民衆
(
みんしう
)
的
(
てき
)
力
(
ちから
)
をば
信
(
しん
)
ずることは
出来
(
でき
)
ませぬ。
218
独
(
ひと
)
り
神雄
(
しんゆう
)
的
(
てき
)
聖
(
せい
)
救世主
(
きうせいしゆ
)
の
出現
(
しゆつげん
)
を
待
(
ま
)
つのみで
厶
(
ござ
)
います。
219
主
(
しゆ
)
エス・キリストが
山上
(
さんじやう
)
に
訓
(
くん
)
を
垂
(
た
)
れさせ
玉
(
たま
)
ふや、
220
群集
(
ぐんしふ
)
は
其
(
そ
)
の
教
(
をしへ
)
に
驚
(
おどろ
)
き、
221
孔子
(
こうし
)
の
春秋
(
しゆんじう
)
を
作
(
つく
)
つて
発表
(
はつぺう
)
するや、
222
乱臣
(
らんしん
)
賊子
(
ぞくし
)
をして
悚懼
(
しようく
)
せしめたでは
厶
(
ござ
)
いませぬか。
223
そは
主
(
しゆ
)
キリストや
孔子
(
こうし
)
は
所謂
(
いはゆる
)
学者
(
がくしや
)
等
(
ら
)
の
如
(
ごと
)
くならずして、
224
権威
(
けんゐ
)
あるものの
如
(
ごと
)
くであつたからでありませう。
225
今
(
いま
)
や
世界
(
せかい
)
の
民
(
たみ
)
は
自
(
みづか
)
ら
驚
(
おどろ
)
かむことを
求
(
もと
)
めつつあります。
226
今日
(
こんにち
)
の
人民
(
じんみん
)
は
既
(
すで
)
に
自分
(
じぶん
)
等
(
ら
)
が
不平
(
ふへい
)
の
代弁者
(
だいべんしや
)
の
饒舌
(
ぜうぜつ
)
に
倦
(
う
)
み
果
(
は
)
てて
居
(
を
)
ります。
227
今日
(
こんにち
)
の
人民
(
じんみん
)
が
鶴首
(
くわくしゆ
)
して
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
るものは、
228
金切声
(
かなきりごゑ
)
を
搾
(
しぼ
)
つて
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
自身
(
じしん
)
の
窮状
(
きうじやう
)
を
説明
(
せつめい
)
するものでは
無
(
な
)
くて、
229
神
(
かみ
)
の
如
(
ごと
)
き
威厳
(
ゐげん
)
を
以
(
もつ
)
て
其
(
そ
)
の
進路
(
しんろ
)
を
指
(
さ
)
すものの
出現
(
しゆつげん
)
であります。
230
神
(
かみ
)
に
於
(
おい
)
てはその
言
(
い
)
ふ
所
(
ところ
)
は
即
(
すなは
)
ち
行
(
おこな
)
ふ
所
(
ところ
)
となるのであります。
231
徒
(
いたづら
)
に
民
(
たみ
)
と
共
(
とも
)
に
叫
(
さけ
)
び、
232
民
(
たみ
)
と
共
(
とも
)
に
躍
(
をど
)
る
如
(
ごと
)
きは
是
(
こ
)
れ
雪上
(
せつじやう
)
更
(
さら
)
に
霜
(
しも
)
を
加
(
くは
)
ふるの
類
(
るゐ
)
であつて、
233
吾々
(
われわれ
)
真
(
しん
)
に
天下
(
てんか
)
の
重
(
おも
)
きを
以
(
もつ
)
て
任
(
にん
)
ずる
信者
(
しんじや
)
諸士
(
しよし
)
の
深
(
ふか
)
く
恥
(
はづ
)
る
所
(
ところ
)
なのであります。
234
何卒
(
なにとぞ
)
吾
(
わ
)
が
敬愛
(
けいあい
)
なる
神
(
かみ
)
の
御子
(
みこ
)
たちよ、
235
民衆
(
みんしう
)
の
煽動
(
せんどう
)
に
乗
(
じやう
)
ずること
無
(
な
)
く
隠忍
(
いんにん
)
自重
(
じちよう
)
して
以
(
もつ
)
て
神雄
(
しんゆう
)
偉人
(
ゐじん
)
としての
聖
(
せい
)
キリストの
再臨
(
さいりん
)
を
待
(
ま
)
たうぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか。
236
アーメン』
237
と
結
(
むす
)
んで
演壇
(
えんだん
)
を
降
(
くだ
)
る。
238
急霰
(
きふさん
)
の
如
(
ごと
)
き
拍手
(
はくしゆ
)
の
声
(
こゑ
)
に
満堂
(
まんだう
)
揺
(
ゆる
)
がむ
許
(
ばか
)
りの
光景
(
くわうけい
)
であつた。
239
ブラバーサは
壇上
(
だんじやう
)
に
悠々
(
いういう
)
と
立上
(
たちあが
)
り、
240
暗祈
(
あんき
)
黙祷
(
もくたう
)
の
後
(
のち
)
、
241
聴衆
(
ちやうしう
)
一般
(
いつぱん
)
に
向
(
むか
)
つて
敬意
(
けいい
)
を
表
(
へう
)
し、
242
コツプの
水
(
みづ
)
を
一杯
(
いつぱい
)
グイと
呑干
(
のみほ
)
し
乍
(
なが
)
ら、
243
咳一咳
(
がいいちがい
)
して
曰
(
いは
)
く、
244
ブラバーサ
『
皆様
(
みなさま
)
、
245
今日
(
けふ
)
は
実
(
じつ
)
に
目出度
(
めでた
)
き
主
(
しゆ
)
の
復活日
(
ふくくわつび
)
で
厶
(
ござ
)
いまして、
246
地球
(
ちきう
)
上
(
じやう
)
の
人民
(
じんみん
)
は、
247
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
の
嫌
(
きら
)
ひなく、
248
此
(
この
)
聖日
(
せいじつ
)
を
欣仰
(
きんかう
)
せない
者
(
もの
)
は
厶
(
ござ
)
いますまい。
249
殊
(
こと
)
に
吾々
(
われわれ
)
御
(
お
)
互
(
たがひ
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
寵児
(
ちようじ
)
として、
250
親
(
した
)
しく
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
任
(
つか
)
へさして
頂
(
いただ
)
いて
居
(
を
)
りまする
点
(
てん
)
からしても、
251
特
(
とく
)
に
讃仰
(
さんかう
)
せねばならないと
存
(
ぞん
)
じます。
252
思想界
(
しさうかい
)
の
悪潮流
(
あくてうりう
)
は
世界
(
せかい
)
に
氾濫
(
はんらん
)
し、
253
今
(
いま
)
や
地上
(
ちじやう
)
の
神
(
かみ
)
の
国
(
くに
)
は
破滅
(
はめつ
)
せむとするの
勢
(
いきほ
)
ひで
厶
(
ござ
)
います。
254
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
暗黒
(
あんこく
)
の
帳
(
とばり
)
を
開
(
ひら
)
いて、
255
明晃々
(
めいくわうくわう
)
たる
日出
(
ひので
)
の
御代
(
みよ
)
を
来
(
きた
)
すべく、
256
吾々
(
われわれ
)
は
努力
(
どりよく
)
せなくてはなりませぬ』
257
斯
(
か
)
く
論
(
ろん
)
じ
来
(
きた
)
る
折
(
をり
)
、
258
聴衆
(
ちやうしう
)
の
中
(
なか
)
よりやをら
身
(
み
)
を
起
(
おこ
)
し、
259
満面
(
まんめん
)
朱
(
しゆ
)
を
濺
(
そそ
)
ぎ
乍
(
なが
)
ら、
260
ツカツカと
壇上
(
だんじやう
)
に
上
(
のぼ
)
つて
来
(
き
)
た
婆
(
ばば
)
アは、
261
日出島
(
ひのでじま
)
からやつて
来
(
き
)
たお
寅
(
とら
)
であつた。
262
お
寅
(
とら
)
はブラバーサに
向
(
むか
)
ひ、
263
お寅
『コレ、
264
お
前
(
まへ
)
はブラバーサぢやないか。
265
今
(
いま
)
聞
(
き
)
いてをれば、
266
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
日出
(
ひので
)
の
御代
(
みよ
)
になる
様
(
やう
)
、
267
吾々
(
われわれ
)
は
努力
(
どりよく
)
せねばならぬと
云
(
い
)
つたぢやないか。
268
日出
(
ひので
)
の
御代
(
みよ
)
にするのは、
269
日出国
(
ひのでのくに
)
の
天職
(
てんしよく
)
ぢやぞえ。
270
そして
日出
(
ひので
)
の
島
(
しま
)
から
現
(
あら
)
はれた
此
(
この
)
日出
(
ひので
)
の
神
(
かみ
)
が
本当
(
ほんたう
)
の
世界
(
せかい
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
だ。
271
日出
(
ひので
)
の
神
(
かみ
)
の
因縁
(
いんねん
)
が
聞
(
き
)
きたければ、
272
此
(
この
)
御
(
ご
)
本尊
(
ほんぞん
)
に
聞
(
き
)
いたが
一番
(
いちばん
)
近道
(
ちかみち
)
だ。
273
ひつこみてゐなさい。
274
ヘン、
275
偉相
(
えらさう
)
に、
276
宣伝使
(
せんでんし
)
面
(
づら
)
をさげて、
277
何
(
なん
)
のこつちやいなア。
278
コレ
皆
(
みな
)
さま、
279
こんなバチ
者
(
もの
)
に
耳
(
みみ
)
をかす
必要
(
ひつえう
)
はありませぬ。
280
誠
(
まこと
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
日出
(
ひので
)
の
神
(
かみ
)
は
此
(
この
)
お
寅
(
とら
)
で
厶
(
ござ
)
いますぞや。
281
第一
(
だいいち
)
此
(
この
)
ブラバーサなぞは、
282
面
(
つら
)
からしてなつてゐないぢやありませぬか。
283
梟鳥
(
ふくろどり
)
のやうな
目玉
(
めだま
)
をして、
284
土左衛門
(
どざゑもん
)
のやうに
青
(
あを
)
ぶくれた
面
(
つら
)
して、
285
此
(
この
)
ザマつて、
286
厶
(
ござ
)
いますまい』
287
聴衆
(
ちやうしう
)
の
中
(
なか
)
より、
288
『お
寅
(
とら
)
婆
(
ばば
)
ア、
289
退却
(
たいきやく
)
だ
退却
(
たいきやく
)
だ、
290
引
(
ひき
)
ずりおろせ』
291
と
叫
(
さけ
)
ぶ
者
(
もの
)
がある。
292
又
(
また
)
一方
(
いつぱう
)
よりは、
293
『ブラバーサ
聖師
(
せいし
)
、
294
確
(
しつか
)
り
頼
(
たの
)
みます』
295
と
叫
(
さけ
)
ぶ
者
(
もの
)
もあつた。
296
お
寅
(
とら
)
はクワツと
怒
(
いか
)
り、
297
聴衆
(
ちやうしう
)
を
睨
(
ね
)
めつけ
乍
(
なが
)
ら、
298
お寅
『ヘン
盲
(
めくら
)
聾
(
つんぼ
)
と
云
(
い
)
つても
余
(
あんま
)
りぢやないか。
299
これでは
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
も
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
ぢやわい。
300
警鐘
(
けいしよう
)
乱打
(
らんだ
)
の
声
(
こゑ
)
も
雷霆
(
らいてい
)
叱咤
(
しつた
)
の
響
(
ひび
)
きも、
301
耳
(
みみ
)
に
這入
(
はい
)
らぬといふ
御
(
ご
)
連中
(
れんちう
)
の
多
(
おほ
)
い
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だから、
302
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
立替
(
たてかへ
)
立直
(
たてなほ
)
しを
双肩
(
そうけん
)
に
担
(
にな
)
うた
此
(
この
)
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
の
神
(
かみ
)
も、
303
本当
(
ほんたう
)
に
迷惑
(
めいわく
)
を
致
(
いた
)
しますわい。
304
此
(
この
)
ブラバーサといふ
立派
(
りつぱ
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
は、
305
お
前
(
まへ
)
さま
方
(
がた
)
遠国
(
ゑんごく
)
の
事
(
こと
)
で
何
(
なに
)
も
知
(
し
)
らぬだらうが、
306
今
(
いま
)
此
(
この
)
お
寅
(
とら
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
が
素性
(
すじやう
)
をあかし、
307
皆
(
みな
)
さまのお
目
(
め
)
をさましてあげませう。
308
ウズンバラチヤンダーなどと
申
(
まを
)
す
偽
(
にせ
)
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
の
頤使
(
いし
)
に
甘
(
あま
)
んじ、
309
キリスト
再臨
(
さいりん
)
の
先駆
(
せんく
)
だなどと
自惚
(
うぬぼれ
)
して、
310
ぬつけりこと
此
(
この
)
聖地
(
せいち
)
に
参
(
まゐ
)
り、
311
あらう
事
(
こと
)
か、
312
あるまい
事
(
こと
)
か、
313
神聖
(
しんせい
)
にして
冒
(
おか
)
す
可
(
べか
)
らざる、
314
オリブ
山
(
ざん
)
の
聖場
(
せいぢやう
)
に
於
(
おい
)
て、
315
夫
(
そ
)
れは
夫
(
そ
)
れはいふに
云
(
い
)
はれぬ、
316
とくに
説
(
と
)
かれぬ、
317
話
(
はなし
)
にも
杭
(
くひ
)
にもかからぬ、
318
面白
(
おもしろ
)
い
怪体
(
けたい
)
な
乱痴気
(
らんちき
)
騒
(
さわ
)
ぎを
遊
(
あそ
)
ばすといふ
大紳士
(
だいしんし
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
319
ホヽヽヽヽ。
320
余
(
あま
)
り
可笑
(
をか
)
しうて
臍
(
へそ
)
が
茶
(
ちや
)
を
沸
(
わか
)
しますぞや。
321
ここ
迄
(
まで
)
いふたら、
322
大抵
(
たいてい
)
のお
歴々
(
れきれき
)
方
(
がた
)
は
略
(
ほぼ
)
肯
(
うなづ
)
かれませう、
323
アメリカンコロニーの
牛耳
(
ぎうじ
)
をとつてゐるといふマリヤさまと、
324
それはそれは、
325
ヘン……もう
後
(
あと
)
はいひますまい。
326
同席
(
どうせき
)
するも
汚
(
けが
)
らはしい。
327
ブラバーサさま、
328
良心
(
りやうしん
)
があるならとつとと
退却
(
たいきやく
)
なされませ。
329
ようマアぬつけりことこんな
所
(
ところ
)
へ、
330
横柄
(
わうへい
)
な
面
(
つら
)
をして
上
(
あが
)
られたものだな。
331
早
(
はや
)
くシオン
山
(
ざん
)
の
隠処
(
かくれが
)
へでもひつ
込
(
こ
)
んでゐなさい。
332
日出
(
ひので
)
の
国人
(
くにびと
)
の
可
(
よ
)
い
面
(
つら
)
よごしだよ』
333
ブラバーサはやをら
身
(
み
)
を
起
(
おこ
)
し
群衆
(
ぐんしう
)
に
対
(
むか
)
ひ、
334
ブラバーサ
『
皆
(
みな
)
さま、
335
私
(
わたし
)
は
折角
(
せつかく
)
の
此
(
この
)
聖日
(
せいじつ
)
に
当
(
あた
)
りまして、
336
皆様
(
みなさま
)
と
共
(
とも
)
に
主
(
しゆ
)
の
日
(
ひ
)
を
祝
(
しゆく
)
し
奉
(
まつ
)
り、
337
尚
(
なほ
)
将来
(
しやうらい
)
の
御
(
ご
)
相談
(
さうだん
)
を
致
(
いた
)
したいと
存
(
ぞん
)
じましたが、
338
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
く
邪魔
(
じやま
)
が
這入
(
はい
)
りましては、
339
お
話
(
はなし
)
する
訳
(
わけ
)
にもゆかず、
340
又
(
また
)
皆様
(
みなさま
)
も
喧嘩
(
けんくわ
)
をお
聞
(
き
)
きにお
出
(
い
)
でなさつたのぢや
厶
(
ござ
)
いませぬから、
341
私
(
わたし
)
は
一寸
(
ちよつと
)
控
(
ひか
)
えますから、
342
どうかお
寅
(
とら
)
さまの
演説
(
えんぜつ
)
を
聞
(
き
)
いて
上
(
あ
)
げて
下
(
くだ
)
さいませ。
343
匹夫
(
ひつぷ
)
の
言
(
げん
)
にも
得
(
う
)
る
所
(
ところ
)
ありといふ
事
(
こと
)
もありますし、
344
まして
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
を
統一
(
とういつ
)
し、
345
且
(
かつ
)
改良
(
かいりやう
)
するといふ
大責任
(
だいせきにん
)
を
自覚
(
じかく
)
して
厶
(
ござ
)
る
御
(
お
)
方
(
かた
)
ださうで
厶
(
ござ
)
いますから……』
346
お寅
『そら、
347
何
(
な
)
アんーと
仰有
(
おつしや
)
る、
348
匹夫
(
ひつぷ
)
の
言
(
げん
)
とは
誰
(
たれ
)
の
事
(
こと
)
だ。
349
大方
(
おほかた
)
蛙
(
かへる
)
は
口
(
くち
)
から
自分
(
じぶん
)
の
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つてるのだらうな。
350
匹夫
(
ひつぷ
)
といへば
男
(
をとこ
)
のこと。
351
此
(
この
)
お
寅
(
とら
)
は、
352
淑女
(
しゆくぢよ
)
否
(
いな
)
神女
(
しんぢよ
)
だ。
353
神女
(
しんぢよ
)
と
匹夫
(
ひつぷ
)
と
混同
(
こんどう
)
するやうな
事
(
こと
)
で、
354
どうして
宣伝使
(
せんでんし
)
が
勤
(
つと
)
まりますか』
355
ブラバーサは
耳
(
みみ
)
にもかけず、
356
サツサと
降壇
(
かうだん
)
し、
357
聴衆
(
ちやうしう
)
の
中
(
なか
)
に
交
(
まじ
)
つて、
358
ハンケチで
汗
(
あせ
)
をふいてゐる。
359
お
寅
(
とら
)
は
勝誇
(
かちほこ
)
つた
面持
(
おももち
)
にて、
360
稍
(
やや
)
反
(
そ
)
り
身
(
み
)
になり
乍
(
なが
)
ら、
361
コツプの
水
(
みづ
)
を
二三杯
(
にさんばい
)
つづけさまにグウグウとひつかけ、
362
余
(
あま
)
りあわてて、
363
水
(
みづ
)
が
気管支
(
きくわんし
)
の
中
(
なか
)
へ
浸入
(
しんにふ
)
し、
364
コホンコホンと
咳払
(
せきばらひ
)
止
(
や
)
まず、
365
目
(
め
)
から
一杯
(
いつぱい
)
涙
(
なみだ
)
をこぼし、
366
卓
(
テーブル
)
にもたれて、
367
しやがんで
了
(
しま
)
つた。
368
そこへ
守宮別
(
やもりわけ
)
はお
寅
(
とら
)
の
演説
(
えんぜつ
)
を
補
(
おぎな
)
はむと、
369
ヅブ
六
(
ろく
)
に
酔
(
よ
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
370
ヒヨロリヒヨロリと
登壇
(
とうだん
)
し、
371
守宮別
『
皆
(
みな
)
さま、
372
お
寅
(
とら
)
さまは、
373
中途
(
ちゆうと
)
に
負傷
(
ふしやう
)
を
致
(
いた
)
しましたので、
374
拙者
(
せつしや
)
が
代
(
かは
)
つて
代理
(
だいり
)
を
勤
(
つと
)
めます。
375
どうぞ
不悪
(
あしからず
)
思召
(
おぼしめ
)
し
下
(
くだ
)
さいませ。
376
私
(
わたし
)
は
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
から
案内役
(
あんないやく
)
として、
377
お
寅
(
とら
)
さまに
頼
(
たの
)
まれ
参
(
まゐ
)
つて
来
(
き
)
た
者
(
もの
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
378
別
(
べつ
)
にお
寅
(
とら
)
さまの
説
(
せつ
)
を
信
(
しん
)
じたのでもなければ、
379
神格
(
しんかく
)
に
感動
(
かんどう
)
したのでもありませぬ。
380
付
(
つ
)
いてはブラバーサ
君
(
くん
)
に
対
(
たい
)
しても
同様
(
どうやう
)
の
考
(
かんが
)
へを
持
(
も
)
つてをります。
381
とに
角
(
かく
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
偽
(
にせ
)
救世主
(
きうせいしゆ
)
、
382
偽
(
にせ
)
キリスト、
383
偽
(
にせ
)
予言者
(
よげんしや
)
の
横行
(
わうかう
)
濶歩
(
くわつぽ
)
する
最中
(
さいちう
)
ですから、
384
どれがホン
物
(
もの
)
か
偽者
(
にせもの
)
か、
385
一寸
(
ちよつと
)
判断
(
はんだん
)
に
苦
(
くるし
)
まざるを
得
(
え
)
ませぬ。
386
キリストといふ
事
(
こと
)
は
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
の
国
(
くに
)
の
言葉
(
ことば
)
でいへば、
387
……
油
(
あぶら
)
をそそぐ
者
(
もの
)
……とかいひますが、
388
油
(
あぶら
)
を
注
(
そそ
)
ぐ
事
(
こと
)
に
付
(
つ
)
いて
最
(
もつと
)
も
堪能
(
たんのう
)
なのは
此
(
この
)
お
寅
(
とら
)
さまですよ。
389
喧嘩
(
けんくわ
)
の
火
(
ひ
)
が
燃
(
も
)
え
盛
(
さか
)
つてる
所
(
ところ
)
へ、
390
薪
(
たきぎ
)
を
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
み
油
(
あぶら
)
を
注
(
そそ
)
ぐやうな
事
(
こと
)
を
得意
(
とくい
)
で
為
(
なさ
)
います。
391
それで
火
(
ひ
)
の
勢
(
いきほひ
)
が
益々
(
ますます
)
強
(
つよ
)
くなるので、
392
それで
火
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
と
自称
(
じしよう
)
して
厶
(
ござ
)
るのであります。
393
ヤソといふ
事
(
こと
)
はイエスともいひ、
394
イエスは
癒
(
い
)
やすといふ
事
(
こと
)
にもなり、
395
要
(
えう
)
するに
薬
(
くすり
)
といふ
事
(
こと
)
です。
396
くすりは
ヤク
となる、
397
ヤク
は
薬師
(
やくし
)
如来
(
によらい
)
です。
398
ヤツコスです。
399
それで
薬
(
くすり
)
の
最
(
もつとも
)
秀
(
すぐ
)
れた
物
(
もの
)
は
酒
(
さけ
)
です。
400
これ
位
(
ぐらゐ
)
効験
(
かうけん
)
のある
神
(
かみ
)
は
世界
(
せかい
)
に
厶
(
ござ
)
いますまい。
401
一口
(
ひとくち
)
のみてもすぐに
頬
(
ほほ
)
にホンノリと
赤味
(
あかみ
)
が
出
(
で
)
て
来
(
く
)
る。
402
二口
(
ふたくち
)
三口
(
みくち
)
と
呑
(
の
)
めばのむ
程
(
ほど
)
心
(
こころ
)
が
浮
(
う
)
いて、
403
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が
面白
(
おもしろ
)
くなつて
参
(
まゐ
)
ります。
404
つまり
天国
(
てんごく
)
が
忽
(
たちま
)
ち
出現
(
しゆつげん
)
するのです。
405
それに
何
(
なん
)
ぞや、
406
禁酒
(
きんしゆ
)
禁煙
(
きんえん
)
だとかキリストの
信者
(
しんじや
)
はいつてゐますが、
407
これ
位
(
くらゐ
)
矛盾
(
むじゆん
)
した
事
(
こと
)
は
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
厶
(
ござ
)
いますまい』
408
などとヘベレケに
酔
(
よ
)
ふて
酒宣伝
(
さけせんでん
)
をやつてゐる。
409
其
(
その
)
間
(
ま
)
にお
寅
(
とら
)
は
喉
(
のど
)
の
調子
(
てうし
)
が
直
(
なほ
)
つたとみえ
頭
(
かしら
)
を
擡
(
もた
)
げ、
410
守宮別
(
やもりわけ
)
の
側
(
そば
)
にゐるのを
見
(
み
)
て、
411
百万
(
ひやくまん
)
の
味方
(
みかた
)
を
得
(
え
)
た
如
(
ごと
)
き
気分
(
きぶん
)
になり、
412
お寅
『
皆
(
みな
)
さま
此
(
この
)
方
(
かた
)
は
守宮別
(
やもりわけ
)
といひまして、
413
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
の
島
(
しま
)
切
(
き
)
つての
聖人
(
せいじん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
414
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
少
(
すこ
)
し
許
(
ばか
)
り
今日
(
けふ
)
は
聖日
(
せいじつ
)
を
祝
(
しゆく
)
する
為
(
ため
)
に、
415
お
神酒
(
みき
)
をあがつてゐられますから、
416
チツト
許
(
ばか
)
り
脱線
(
だつせん
)
の
気味
(
きみ
)
があるかも
知
(
し
)
れませぬが、
417
脱線
(
だつせん
)
する
様
(
やう
)
な
人間
(
にんげん
)
でないと
正当
(
せいたう
)
な
事
(
こと
)
は
分
(
わか
)
りませぬ。
418
御覧
(
ごらん
)
なさい、
419
汽車
(
きしや
)
でさへ
余
(
あま
)
り
勢
(
いきほひ
)
よく
走
(
はし
)
ると、
420
勢
(
いきほひ
)
が
余
(
あま
)
つて
脱線
(
だつせん
)
するでせう。
421
さうだから
其
(
その
)
積
(
つも
)
りで
聞
(
き
)
いて
貰
(
もら
)
はんと、
422
取違
(
とりちがひ
)
されると
困
(
こま
)
りますから、
423
一寸
(
ちよつと
)
御
(
ご
)
注意
(
ちうい
)
を
与
(
あた
)
へておきます』
424
聴衆
(
ちやうしう
)
は
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
よりワイワイと
騒
(
さわ
)
ぎ
立
(
た
)
ち、
425
「
引
(
ひ
)
きずりおとせ……
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
せ」と
呶鳴
(
どな
)
り
出
(
だ
)
したり。
426
演説
(
えんぜつ
)
を
聞
(
きき
)
に
来
(
き
)
てゐた、
427
回々教
(
フイフイけう
)
の
信者
(
しんじや
)
トンク、
428
テク、
429
ツーロの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
矢庭
(
やには
)
に
壇上
(
だんじやう
)
に
駆上
(
かけあが
)
り、
430
トンクはお
寅
(
とら
)
をかたげ、
431
テク、
432
ツーロは
守宮別
(
やもりわけ
)
をかたげて、
433
ヨイシヨヨイシヨと
囃
(
はや
)
し
立
(
た
)
て
乍
(
なが
)
ら、
434
僧院
(
そうゐん
)
ホテルの
裏口
(
うらぐち
)
より
何処
(
いづこ
)
ともなく
駆出
(
かけだ
)
して
了
(
しま
)
ふた。
435
之
(
これ
)
よりブラバーサは
再
(
ふたたび
)
壇上
(
だんじやう
)
に
立
(
た
)
ち、
436
救世主
(
きうせいしゆ
)
の
再臨
(
さいりん
)
に
関
(
くわん
)
する
演説
(
えんぜつ
)
や、
437
世界
(
せかい
)
共通語
(
きやうつうご
)
の
必要
(
ひつえう
)
なる
所以
(
ゆゑん
)
を
説
(
と
)
き、
438
次
(
つい
)
でマリヤの
簡単
(
かんたん
)
なる
演説
(
えんぜつ
)
あり、
439
神前
(
しんぜん
)
に
拝礼
(
はいれい
)
を
了
(
をは
)
り、
440
茶菓
(
さくわ
)
の
饗応
(
きやうおう
)
あつて
目出度
(
めでた
)
く
此
(
この
)
聖日祭
(
せいじつさい
)
を
閉
(
と
)
づる
事
(
こと
)
になつた。
441
(
大正一四・八・一九
旧六・三〇
於丹後由良秋田別荘
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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