霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第64巻(卯の巻)下
序文
総説
第1篇 復活転活
第1章 復活祭
第2章 逆襲
第3章 草居谷底
第4章 誤霊城
第5章 横恋慕
第2篇 鬼薊の花
第6章 金酒結婚
第7章 虎角
第8章 擬侠心
第9章 狂怪戦
第10章 拘淫
第3篇 開花落花
第11章 狂擬怪
第12章 開狂式
第13章 漆別
第14章 花曇
第15章 騒淫ホテル
第4篇 清風一過
第16章 誤辛折
第17章 茶粕
第18章 誠と偽
第19章 笑拙種
第20章 猫鞍干
第21章 不意の官命
第22章 帰国と鬼哭
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は
従来バージョン
をお使い下さい|
サブスク
のお知らせ
霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第64巻(卯の巻)下
> 第4篇 清風一過 > 第19章 笑拙種
<<< 誠と偽
(B)
(N)
猫鞍干 >>>
第一九章
笑拙種
(
せうせつだね
)
〔一八二五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第64巻下 山河草木 卯の巻下
篇:
第4篇 清風一過
よみ(新仮名遣い):
せいふういっか
章:
第19章 笑拙種
よみ(新仮名遣い):
しょうせつだね
通し章番号:
1825
口述日:
1925(大正14)年08月21日(旧07月2日)
口述場所:
丹後由良 秋田別荘
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年11月7日
概要:
舞台:
橄欖山の祠の前
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2017-11-26 20:17:41
OBC :
rm64b19
愛善世界社版:
257頁
八幡書店版:
第11輯 592頁
修補版:
校定版:
261頁
普及版:
63頁
初版:
ページ備考:
001
ブラバーサ、
002
マリヤの
両人
(
りやうにん
)
は、
003
キリスト
再臨
(
さいりん
)
の
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
からむ
事
(
こと
)
を
祈願
(
きぐわん
)
すべく、
004
手
(
て
)
を
携
(
たづさ
)
へて、
005
早朝
(
さうてう
)
より
橄欖山
(
かんらんさん
)
の
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
に
端坐
(
たんざ
)
して
祈願
(
きぐわん
)
をこらしてゐる。
006
そこへヤコブ、
007
サロメの
両人
(
りやうにん
)
が
無我
(
むが
)
の
声
(
こゑ
)
といふ
歌
(
うた
)
を
唄
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
登
(
のぼ
)
り
来
(
きた
)
り、
008
ブラバーサの
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て、
009
サロメは、
010
サロメ
『ヤ、
011
これはこれは
神縁
(
しんえん
)
浅
(
あさ
)
からずとみえて、
012
又
(
また
)
此
(
この
)
聖地
(
せいち
)
でお
目
(
め
)
にかかりましたワ。
013
何
(
ど
)
うで
厶
(
ござ
)
います、
014
其
(
その
)
後
(
ご
)
の
御
(
ご
)
消息
(
せうそく
)
は。
015
一度
(
いちど
)
御
(
お
)
訪
(
たづ
)
ね
致
(
いた
)
したいと
思
(
おも
)
つてゐましたが、
016
貴方
(
あなた
)
にお
別
(
わか
)
れしてから、
017
アーメニヤ
方面
(
はうめん
)
へヤコブさまと、
018
世間
(
せけん
)
がうるさいものですから
転居
(
てんきよ
)
して
居
(
を
)
りました。
019
先
(
ま
)
づ
御
(
ご
)
壮健
(
さうけん
)
なお
顔
(
かほ
)
を
拝
(
はい
)
し、
020
何
(
なに
)
よりお
目出度
(
めでた
)
う
存
(
ぞん
)
じます』
021
ブラバーサは、
022
ブラバーサ
『ヤア、
023
お
珍
(
めづら
)
しう
厶
(
ござ
)
います。
024
サロメさま、
025
其
(
その
)
後
(
ご
)
は
打絶
(
うちた
)
えて
御
(
ご
)
無沙汰
(
ぶさた
)
を
致
(
いた
)
しました。
026
先
(
ま
)
づ
先
(
ま
)
づ
貴女
(
あなた
)
も
御
(
ご
)
壮健
(
さうけん
)
で
何
(
なに
)
よりで
厶
(
ござ
)
います。
027
何時
(
いつ
)
やらもエルサレムの
書店
(
しよてん
)
で、
028
貴女
(
あなた
)
のお
書
(
かき
)
になつた「
鳳凰
(
ほうわう
)
天
(
てん
)
に
摶
(
う
)
つ」といふ
小説
(
せうせつ
)
を
拝見
(
はいけん
)
致
(
いた
)
しまして、
029
親
(
した
)
しく
貴女
(
あなた
)
にお
目
(
め
)
にかかつた
様
(
やう
)
な
思
(
おも
)
ひが
致
(
いた
)
しましたよ。
030
中々
(
なかなか
)
御
(
お
)
上手
(
じやうず
)
になられましたね』
031
サロメ
『ハイ、
032
お
恥
(
はづ
)
かしう
厶
(
ござ
)
います。
033
どうも
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
不景気
(
ふけいき
)
で
書物
(
しよもつ
)
が
売
(
うれ
)
ないので、
034
どこの
書店主
(
しよてんしゆ
)
もコボして
居
(
を
)
ります。
035
いつもだつたら
随分
(
ずゐぶん
)
沢山
(
たくさん
)
の
原稿料
(
げんかうれう
)
もくれるのですけれど、
036
ホンの
鼻糞
(
はなくそ
)
許
(
ばか
)
りよりくれないので、
037
原稿
(
げんかう
)
稼
(
かせ
)
ぎも
約
(
つま
)
りませぬワ』
038
マリヤ
『サロメさま、
039
ヤコブさま、
040
久
(
ひさ
)
しうお
目
(
め
)
にかかりませぬ。
041
貴女
(
あなた
)
の
小説
(
せうせつ
)
を
拝見
(
はいけん
)
致
(
いた
)
しましたが、
042
マリヤが
考
(
かんが
)
へますに、
043
あの
材料
(
ざいれう
)
はどうやら
橄欖山
(
かんらんざん
)
を
中心
(
ちうしん
)
として
取
(
と
)
られた
様
(
やう
)
で
厶
(
ござ
)
いますな』
044
サロメ
『ハイ、
045
実
(
じつ
)
ア、
046
貴女
(
あなた
)
とブラバーサさまのローマンスを
骨子
(
こつし
)
とし、
047
私
(
わたし
)
とヤコブさまの
苦労話
(
くらうばなし
)
をそこへ
拵
(
こしら
)
へてみたのですが、
048
中々
(
なかなか
)
思
(
おも
)
ふ
様
(
やう
)
には
行
(
ゆ
)
かないのですもの、
049
本当
(
ほんたう
)
にお
恥
(
はづか
)
しう
厶
(
ござ
)
いますワ』
050
マリヤ
『サロメさま、
051
私
(
わたし
)
やブラバーサさまを
材料
(
ざいれう
)
にするなぞと、
052
殺生
(
せつしやう
)
ですワ』
053
サロメ
『そら
御
(
お
)
互
(
たがひ
)
様
(
さま
)
ですよ。
054
ブラバーサさまだつて、
055
日下
(
ひのした
)
開山
(
かいざん
)
をお
出
(
だ
)
しになつたでせう。
056
私
(
わたし
)
あれを
読
(
よ
)
んで、
057
顔
(
かほ
)
がパツと
赤
(
あか
)
くなり、
058
ヤコブさまにどれ
程
(
ほど
)
気兼
(
きがね
)
したか
知
(
し
)
れませぬワ、
059
ホヽヽヽ』
060
ヤコブ
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
061
一流
(
いちりう
)
の
文士
(
ぶんし
)
許
(
ばか
)
りがよつてゐられるのだから、
062
いつも
吾々
(
われわれ
)
は
槍玉
(
やりだま
)
に
上
(
あ
)
げられるのですよ。
063
私
(
わたし
)
も
筆
(
ふで
)
さへ
立
(
た
)
たば、
064
マリヤさまとブラバーサさまのお
安
(
やす
)
うない
御
(
ご
)
関係
(
くわんけい
)
を
素破抜
(
すつぱぬ
)
きたいのですけれどなア、
065
アハヽヽヽ。
066
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
此
(
この
)
姫神
(
ひめがみ
)
さまがマ
一度
(
いちど
)
橄欖山
(
かんらんざん
)
へ
登
(
のぼ
)
り、
067
小説
(
せうせつ
)
の
材料
(
ざいれう
)
を
拵
(
こしら
)
へたいと
御
(
ご
)
託宣
(
たくせん
)
遊
(
あそ
)
ばすものですから、
068
何
(
なに
)
か
可
(
い
)
い
種
(
たね
)
がないかと、
069
はるばるアーメニヤからやつて
参
(
まゐ
)
りました。
070
今朝
(
けさ
)
の
六
(
ろく
)
時
(
じ
)
にエルサレム
駅
(
えき
)
に
安着
(
あんちやく
)
し、
071
有明家
(
ありあけや
)
で
一寸
(
ちよつと
)
一服
(
いつぷく
)
して、
072
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
へ
登
(
のぼ
)
つたとこで
厶
(
ござ
)
います』
073
マリヤ
『ヤ、
074
険呑
(
けんのん
)
険呑
(
けんのん
)
、
075
モウ マリヤの
事
(
こと
)
なんか、
076
書
(
か
)
かない
様
(
やう
)
に
願
(
ねが
)
ひますよ』
077
サロメ
『
新聞
(
しんぶん
)
記者
(
きしや
)
だつて、
078
口止料
(
くちどめれう
)
が
要
(
い
)
るでせう。
079
サロメに
対
(
たい
)
して
幾
(
いく
)
ら
出
(
だ
)
しますか』
080
マリヤ
『これは
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
りました。
081
嘘
(
うそ
)
八百万
(
はつぴやくまん
)
円
(
ゑん
)
許
(
ばか
)
り
進上
(
しんじやう
)
致
(
いた
)
しませう。
082
ホヽヽヽ』
083
ヤコブ
『オイ、
084
姫神
(
ひめがみ
)
さま』
085
サロメ
『
厭
(
いや
)
ですよ、
086
ヤコブさま、
087
姫神
(
ひめがみ
)
さまなんて。
088
なぜサロメといつて
下
(
くだ
)
さらぬのですか』
089
ヤコブ
『ソンならサロメさま』
090
サロメ
『
さま
なぞと、
091
ソンナ
事
(
こと
)
厭
(
いや
)
ですよ』
092
ヤコブ
『ソンナラ
橄欖山
(
かんらんざん
)
で
宜
(
よろ
)
しいかな』
093
サロメ
『ソラ サロメの
雅号
(
ががう
)
ですよ』
094
マリヤは、
095
マリヤ
『ホヽヽヽ、
096
お
仲
(
なか
)
の
好
(
よ
)
い
事
(
こと
)
、
097
丸切
(
まるき
)
り
一幅
(
いつぷく
)
の
小説
(
せうせつ
)
みた
様
(
やう
)
だワ。
098
あの
紅葉
(
もみぢ
)
山人
(
やまひと
)
の
金色
(
きんいろ
)
夜叉
(
よまた
)
を、
099
私
(
わたし
)
読
(
よ
)
みましたが、
100
随分
(
ずゐぶん
)
面白
(
おもしろ
)
いですね、
101
恋
(
こひ
)
に
破
(
やぶ
)
れて、
102
金
(
かね
)
に
勝
(
か
)
つといふ
仕組
(
しぐみ
)
ですもの』
103
サロメは、
104
サロメ
『ありや、
105
紅葉
(
もみぢ
)
山人
(
やまひと
)
ぢやなくて
紅葉
(
こうえふ
)
山人
(
さんじん
)
とよむのですよ。
106
そしてあの
小説
(
せうせつ
)
の
名
(
な
)
は
金色
(
こんじき
)
夜叉
(
やしや
)
といふ
方
(
はう
)
が
穏当
(
おんたう
)
だと
思
(
おも
)
ひますワ』
107
マリヤ
『
著者
(
ちよしや
)
の
名義
(
めいぎ
)
や
書物
(
しよもつ
)
の
読方
(
よみかた
)
位
(
ぐらゐ
)
は、
108
何程
(
なにほど
)
無学
(
むがく
)
なマリヤだつて
存
(
ぞん
)
じてをりますが、
109
一寸
(
ちよつと
)
洒落
(
しやれ
)
に
言
(
い
)
つて
見
(
み
)
た
許
(
ばか
)
しですワ、
110
オホヽヽヽ』
111
ブラバーサ
『
貴方
(
あなた
)
は
今日
(
けふ
)
、
112
有明家
(
ありあけや
)
で
一服
(
いつぷく
)
して
来
(
き
)
たといはれましたが、
113
有明家
(
ありあけや
)
には
綾子
(
あやこ
)
といふ
大変
(
たいへん
)
な
美人
(
びじん
)
が
居
(
を
)
りますよ。
114
あの
綾子
(
あやこ
)
を
主人公
(
しゆじんこう
)
として、
115
一
(
ひと
)
つ
小説
(
せうせつ
)
を
仕組
(
しぐ
)
まれたら
大変
(
たいへん
)
面白
(
おもしろ
)
い
物
(
もの
)
が
出来
(
でき
)
るでせう。
116
一
(
いち
)
時
(
じ
)
は
幽霊
(
いうれい
)
小説
(
せうせつ
)
や
霊界
(
れいかい
)
の
消息
(
せうそく
)
を
幾分
(
いくぶん
)
加味
(
かみ
)
したものが
流行
(
りうかう
)
しましたが、
117
現今
(
げんこん
)
では
艶
(
つや
)
つぽい
恋物語
(
こひものがたり
)
が
一般
(
いつぱん
)
の
気
(
き
)
に
向
(
む
)
く
様
(
やう
)
ですね。
118
人心
(
じんしん
)
は
非常
(
ひじやう
)
に
悪化
(
あくくわ
)
し、
119
真心
(
まごころ
)
の
土台
(
どだい
)
が
動揺
(
どうえう
)
し、
120
生活難
(
せいくわつなん
)
の
叫
(
さけ
)
びが
盛
(
さか
)
んなる
今日
(
こんにち
)
では、
121
一層
(
いつそう
)
の
事
(
こと
)
、
122
肩
(
かた
)
の
凝
(
こ
)
らない、
123
面白
(
おもしろ
)
い、
124
恋愛
(
れんあい
)
を
加味
(
かみ
)
した
読物
(
よみもの
)
が
時代
(
じだい
)
に
能
(
よ
)
く
向
(
む
)
く
様
(
やう
)
です』
125
サロメ
『ブラバーサ
様
(
さま
)
、
126
私
(
わたし
)
もさう
考
(
かんが
)
へまして、
127
実
(
じつ
)
は
材料
(
ざいれう
)
の
蒐集
(
しうしふ
)
に、
128
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りでやつて
参
(
まゐ
)
りましたのよ』
129
かく
話
(
はなし
)
してゐる
所
(
ところ
)
へ、
130
有明家
(
ありあけや
)
の
綾子
(
あやこ
)
が
一人
(
ひとり
)
の
箱屋
(
はこや
)
をつれて、
131
しなしなと
登
(
のぼ
)
つて
来
(
き
)
た。
132
ブラバーサは
一目
(
ひとめ
)
見
(
み
)
るより、
133
ブラバーサ
『もし、
134
サロメさま、
135
的
(
てき
)
さまがやつて
来
(
き
)
ましたよ。
136
頗
(
すこぶ
)
る
尤物
(
いうぶつ
)
でせうがな』
137
サロメ
『
成程
(
なるほど
)
、
138
あれ
位
(
くらゐ
)
な
美人
(
びじん
)
だつたら、
139
余程
(
よほど
)
もてるでせう。
140
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らヤコブさまやブラバーサさまに、
141
あゝいふ
美人
(
びじん
)
を
見
(
み
)
せるのは
目
(
め
)
の
毒
(
どく
)
ですワ、
142
ねえマリヤさま』
143
マリヤ
『そらさうですね、
144
併
(
しか
)
しあの
綾子
(
あやこ
)
といふ
女
(
をんな
)
は
評判
(
ひやうばん
)
の
酒
(
さけ
)
くらひで、
145
酔
(
よ
)
つたが
最後
(
さいご
)
、
146
前後
(
ぜんご
)
を
忘
(
わす
)
れて
醜体
(
しうたい
)
を
現
(
あら
)
はすのださうです。
147
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
義理固
(
ぎりがた
)
い
事
(
こと
)
はエルサレム
第一
(
だいいち
)
との
評判
(
ひやうばん
)
ですワ』
148
サロメ
『
綾子
(
あやこ
)
に
付
(
つ
)
いて
何
(
なに
)
か
御
(
お
)
聞
(
きき
)
及
(
およ
)
びの
事
(
こと
)
が
厶
(
ござ
)
いましたら、
149
サロメに
聞
(
き
)
かして
下
(
くだ
)
さいませぬか』
150
マリヤ
『
大
(
おほ
)
いに
厶
(
ござ
)
いますよ。
151
日出島
(
ひのでじま
)
から
来
(
き
)
てゐる、
152
守宮別
(
やもりわけ
)
さまとの
関係
(
くわんけい
)
に
付
(
つ
)
いて
面白
(
おもしろ
)
いローマンスがあるさうです。
153
守宮別
(
やもりわけ
)
といふ
男
(
をとこ
)
、
154
女
(
をんな
)
にかけたら
仕方
(
しかた
)
のない
人物
(
じんぶつ
)
で、
155
三角
(
さんかく
)
関係
(
くわんけい
)
はまだ
愚
(
おろ
)
か、
156
四角
(
しかく
)
関係
(
くわんけい
)
の
実演
(
じつえん
)
をやつてゐるさうですワ』
157
サロメ
『ヤ、
158
そりや
面白
(
おもしろ
)
いでせう。
159
サロメも
一
(
ひと
)
つ
探索
(
たんさく
)
してみませうかなア』
160
ヤコブ
『どうやら、
161
あの
綾子
(
あやこ
)
も
此
(
この
)
祠
(
ほこら
)
へ
参
(
まゐ
)
る
様子
(
やうす
)
ですから、
162
吾々
(
われわれ
)
は
傍
(
そば
)
の
樹蔭
(
こかげ
)
に
控
(
ひか
)
えようぢやありませぬか』
163
とヤコブは
樹蔭
(
こかげ
)
に
忍
(
しの
)
び
入
(
い
)
る。
164
『
宜
(
よろ
)
しかろ』と、
165
一同
(
いちどう
)
は
十間
(
じつけん
)
許
(
ばか
)
り
隔
(
へだた
)
つた
橄欖樹
(
かんらんじゆ
)
の、
166
コンモリとした
樹蔭
(
こかげ
)
に
立寄
(
たちよ
)
り、
167
橄欖
(
かんらん
)
の
梢
(
こずゑ
)
を
折
(
を
)
つて
敷物
(
しきもの
)
となし、
168
此処
(
ここ
)
に
尻
(
しり
)
を
卸
(
おろ
)
した。
169
有明家
(
ありあけや
)
の
綾子
(
あやこ
)
は
何
(
なん
)
の
気
(
き
)
もなく、
170
あたり
憚
(
はばか
)
らず、
171
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
に
祈願
(
きぐわん
)
をこめ
出
(
だ
)
した。
172
綾子
『
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
、
173
私
(
わたし
)
は
大変
(
たいへん
)
な
罪
(
つみ
)
を
重
(
かさ
)
ねまして
厶
(
ござ
)
います。
174
どうぞ
許
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さいませ。
175
ぢやと
申
(
まを
)
しまして、
176
どうしてもあの
男
(
をとこ
)
を
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
る
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませぬ。
177
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らあの
男
(
をとこ
)
には
五十
(
ごじふ
)
の
坂
(
さか
)
をこえた
熱心
(
ねつしん
)
な
恋女
(
こひをんな
)
が
二人
(
ふたり
)
も
厶
(
ござ
)
いますから、
178
到底
(
たうてい
)
妾
(
わたくし
)
は
楯
(
たて
)
つく
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
179
又
(
また
)
楯
(
たて
)
ついて
人
(
ひと
)
を
困
(
こま
)
らせ、
180
自分
(
じぶん
)
が
勝利
(
しようり
)
を
得
(
え
)
ようとは
思
(
おも
)
ひませぬが、
181
何卒
(
なにとぞ
)
々々
(
なにとぞ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
女
(
をんな
)
が
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
から
解合
(
とけあ
)
うて、
182
守宮別
(
やもりわけ
)
さまを
保護
(
ほご
)
致
(
いた
)
しますやう、
183
さうして
妾
(
わたくし
)
はどこ
迄
(
まで
)
も
守宮別
(
やもりわけ
)
に
見捨
(
みす
)
てられぬやう
願
(
ねが
)
ひます。
184
そして
父
(
ちち
)
のヤクは
怪我
(
けが
)
を
致
(
いた
)
しまして、
185
カトリック
僧院
(
そうゐん
)
ホテルに
寝
(
ね
)
てゐますが、
186
之
(
これ
)
も
早
(
はや
)
くおかげを
頂
(
いただ
)
いて
元
(
もと
)
の
健全
(
けんぜん
)
な
身体
(
からだ
)
になります
様
(
やう
)
、
187
御
(
お
)
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します。
188
又
(
また
)
あやめのお
花
(
はな
)
さまも、
189
今
(
いま
)
御
(
ご
)
入院中
(
にふゐんちう
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
190
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
御
(
ご
)
全快
(
ぜんくわい
)
遊
(
あそ
)
ばす
様
(
やう
)
、
191
妾
(
わたくし
)
の
為
(
ため
)
にお
花
(
はな
)
さまはあの
様
(
やう
)
な
目
(
め
)
にお
会
(
あ
)
ひになつたので
厶
(
ござ
)
います。
192
又
(
また
)
守宮別
(
やもりわけ
)
さまの
心
(
こころ
)
を
迷
(
まよ
)
はしたのも
妾
(
わたくし
)
の
罪
(
つみ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
193
どうぞ
之
(
これ
)
もお
許
(
ゆる
)
し
願
(
ねが
)
ひます』
194
と
祈願
(
きぐわん
)
してゐる
所
(
ところ
)
へ、
195
入院
(
にふゐん
)
して
苦
(
くる
)
しみてる
筈
(
はず
)
のお
花
(
はな
)
が
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
元気
(
げんき
)
よい
勢
(
いきほ
)
ひで、
196
ステッキをつき
乍
(
なが
)
らあわただしく
登
(
のぼ
)
り
来
(
きた
)
り、
197
綾子
(
あやこ
)
が
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
祈願
(
きぐわん
)
してゐる
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て……
何
(
なん
)
だか
不思議
(
ふしぎ
)
な
女
(
をんな
)
がゐるワイ………と
首
(
くび
)
をひねつて
考
(
かんが
)
へてゐたが、
198
有明家
(
ありあけや
)
の
綾子
(
あやこ
)
といふ
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
つたので、
199
クワツと
逆上
(
のぼ
)
せ
上
(
あが
)
り、
200
首筋
(
くびすぢ
)
に
手
(
て
)
をかけ、
201
猫
(
ねこ
)
をつまみたやうにひつさげ、
202
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
の
拳骨
(
げんこつ
)
を
固
(
かた
)
めてポカンポカンと
打据
(
うちす
)
ゑ、
203
お花
『コーラ、
204
淫売女
(
ばいた
)
め、
205
ようもようも、
206
人
(
ひと
)
の
夫
(
をつと
)
を
寝取
(
ねと
)
りよつたな。
207
汝
(
きさま
)
の
為
(
ため
)
に
頭
(
あたま
)
を
傷
(
きず
)
つけ、
208
私
(
わたし
)
は
病院
(
びやうゐん
)
へやられたのだ。
209
ヤツトの
事
(
こと
)
で
全快
(
ぜんくわい
)
し、
210
お
礼
(
れい
)
参
(
まゐ
)
りに
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば、
211
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
だい。
212
此
(
この
)
スベタめ、
213
私
(
わたし
)
を
祈
(
いの
)
り
殺
(
ころ
)
さうと
思
(
おも
)
つて……
図太
(
づぶと
)
い
女
(
あま
)
だ。
214
さ、
215
どうぢや、
216
守宮別
(
やもりわけ
)
を
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
るか、
217
返答
(
へんたふ
)
を
致
(
いた
)
せ』
218
綾子
(
あやこ
)
はビツクリして、
219
綾子
『どうぞお
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ。
220
私
(
わたし
)
が
悪
(
わる
)
かつたので
厶
(
ござ
)
います』
221
お花
『ヘン、
222
悪
(
わる
)
かつたで
事
(
こと
)
がすむと
思
(
おも
)
ふか。
223
男泥棒
(
をとこどろぼう
)
め、
224
盗猫
(
どろねこ
)
め、
225
サ、
226
ここであやまり
証文
(
しようもん
)
を
書
(
か
)
け』
227
綾子
『ハイ、
228
仰
(
おほせ
)
に
従
(
したが
)
ひ、
229
如何
(
いか
)
様
(
やう
)
共
(
とも
)
致
(
いた
)
します。
230
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
鉛筆
(
えんぴつ
)
が
厶
(
ござ
)
いませぬから、
231
又
(
また
)
後
(
ご
)
して
書
(
か
)
かして
頂
(
いただ
)
きませう』
232
お花
『エ、
233
甘
(
うま
)
い
事
(
こと
)
をいふな、
234
ここに
万年筆
(
まんねんひつ
)
がある、
235
紙
(
かみ
)
も
貸
(
かし
)
てやる。
236
お
前
(
まへ
)
の
手
(
て
)
で
判然
(
はつき
)
りと
書
(
か
)
け。
237
立派
(
りつぱ
)
に……
守宮別
(
やもりわけ
)
さまとは
関係
(
くわんけい
)
致
(
いた
)
しませぬ……といふ
事
(
こと
)
を
書
(
か
)
きさへすりや、
238
褒美
(
はうび
)
として
金
(
かね
)
を
百
(
ひやく
)
両
(
りやう
)
やる。
239
どうぢや、
240
得心
(
とくしん
)
だらうの』
241
綾子
『
仮令
(
たとへ
)
百万
(
ひやくまん
)
両
(
りやう
)
貰
(
もら
)
ひましたつて、
242
コンナ
事
(
こと
)
は
金
(
かね
)
づくでは
書
(
か
)
きたくはありませぬ。
243
余
(
あま
)
りお
前
(
まへ
)
さまの
心
(
こころ
)
が
可哀相
(
かあいさう
)
だから、
244
書
(
か
)
いて
上
(
あ
)
げようかと
思
(
おも
)
つてゐるのですよ』
245
お花
『ナニツ、
246
此
(
この
)
淫売女
(
ばいた
)
奴
(
め
)
、
247
へらず
口
(
ぐち
)
を
叩
(
たた
)
くな。
248
わづか
一
(
いち
)
円
(
ゑん
)
や
二
(
に
)
円
(
ゑん
)
の
金
(
かね
)
で
転
(
ころ
)
ぶぢやないか』
249
木蔭
(
こかげ
)
に
潜
(
ひそ
)
みて
見
(
み
)
てゐた
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は、
250
見
(
み
)
るに
見兼
(
みか
)
ねバラバラと
側
(
そば
)
により、
251
ブラバーサ
『ヤ、
252
貴方
(
あなた
)
はお
花
(
はな
)
さまぢやありませぬか。
253
かかる
聖場
(
せいぢやう
)
で
人
(
ひと
)
を
擲
(
なぐ
)
つたり、
254
ソンナ
乱暴
(
らんばう
)
な
事
(
こと
)
をなさつては
可
(
い
)
けませぬよ』
255
お花
『
誰
(
たれ
)
かと
思
(
おも
)
へば、
256
お
前
(
まへ
)
は
女惚
(
をんなのろ
)
けのブラブラぢやないか。
257
コンナ
所
(
ところ
)
へ
出
(
で
)
て
来
(
く
)
る
幕
(
まく
)
ぢやない、
258
すつ
込
(
こ
)
んでゐなさい。
259
何
(
なん
)
ぢや、
260
ヤコブにサロメ、
261
マリヤ、
262
ホヽヽヽ、
263
色
(
いろ
)
とぼけのガラクタ
許
(
ばか
)
りが、
264
ようマア
寄
(
よ
)
つたものだなア』
265
マリヤは、
266
マリヤ
『もしお
花
(
はな
)
さま、
267
貴女
(
あなた
)
も
色呆
(
いろとぼ
)
けぢやありませぬか。
268
此
(
この
)
喧嘩
(
けんくわ
)
も
元
(
もと
)
は
色
(
いろ
)
からでせう』
269
お花
『ヘン、
270
構
(
かま
)
うて
下
(
くだ
)
さるな。
271
此奴
(
こいつ
)
ア
大事
(
だいじ
)
の
大事
(
だいじ
)
の
私
(
わたし
)
の
夫
(
をつと
)
を
寝取
(
ねと
)
つた、
272
男泥棒
(
をとこどろばう
)
だから、
273
今
(
いま
)
談判
(
だんぱん
)
をしてゐる
所
(
ところ
)
だ。
274
門外漢
(
もんぐわいかん
)
のお
前
(
まへ
)
さま
達
(
たち
)
が
容喙
(
ようかい
)
する
所
(
ところ
)
ぢやない。
275
すつ
込
(
こ
)
んで
下
(
くだ
)
さい』
276
ヤコブ
『お
花
(
はな
)
さま、
277
貴女
(
あなた
)
は
独身者
(
どくしんもの
)
と
聞
(
き
)
いてをつたのに、
278
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
に
夫
(
をつと
)
を
有
(
も
)
つたのですかい。
279
何
(
なん
)
と
人間
(
にんげん
)
といふ
者
(
もの
)
は
妙
(
めう
)
な
者
(
もの
)
ですな』
280
お
花
(
はな
)
は
腮
(
あご
)
を
二三寸
(
にさんずん
)
前
(
まへ
)
へつき
出
(
だ
)
し
乍
(
なが
)
ら、
281
お花
『ヤコブ
様
(
さま
)
、
282
妙
(
めう
)
でせうがな。
283
女
(
をんな
)
に
男
(
をとこ
)
、
284
男
(
をとこ
)
に
女
(
をんな
)
、
285
両方
(
りやうはう
)
から
引
(
ひ
)
つついて、
286
天地
(
てんち
)
の
神業
(
しんげふ
)
を
勤
(
つと
)
めるのは、
287
開闢
(
かいびやく
)
以来
(
いらい
)
の
法則
(
はふそく
)
ですよ。
288
お
前
(
まへ
)
さまだつて、
289
サロメさまに
現
(
うつ
)
つをぬかしたぢやないか。
290
ブラバーサだつて、
291
マリヤに
首
(
くび
)
つ
丈
(
たけ
)
はまつて、
292
女房
(
にようばう
)
の
有
(
あ
)
る
身
(
み
)
で
居
(
ゐ
)
乍
(
なが
)
ら
呆
(
とぼ
)
けてゐるのだないか。
293
此
(
この
)
お
花
(
はな
)
が
守宮別
(
やもりわけ
)
を
夫
(
をつと
)
に
持
(
も
)
つたつて、
294
何
(
なに
)
がそれ
程
(
ほど
)
不思議
(
ふしぎ
)
なのだい』
295
ヤコブ
『
不思議
(
ふしぎ
)
ですがな。
296
守宮別
(
やもりわけ
)
さまは
貴方
(
あなた
)
のお
師匠
(
ししやう
)
さまの
夫
(
をつと
)
ぢやないか。
297
弟子
(
でし
)
のお
前
(
まへ
)
さまが
師匠
(
ししやう
)
の
夫
(
をつと
)
を
横領
(
わうりやう
)
するといふやうな、
298
不人情
(
ふにんじやう
)
な
事
(
こと
)
が
何処
(
どこ
)
にありますか』
299
お花
『ヘン、
300
放
(
ほう
)
つといて
下
(
くだ
)
さい。
301
之
(
これ
)
には
深
(
ふか
)
い
訳
(
わけ
)
があるのだ。
302
お
前
(
まへ
)
さま
達
(
たち
)
の
知
(
し
)
つたこつちやない。
303
此
(
この
)
問題
(
もんだい
)
は
当人
(
たうにん
)
と
当人
(
たうにん
)
でなければ
分
(
わか
)
らないのだ。
304
いらぬ
御
(
お
)
節介
(
せつかい
)
をするより、
305
サロメさまとしつぽり
意茶
(
いちや
)
つきなさい。
306
それがお
前
(
まへ
)
さまの
性
(
しやう
)
に
合
(
あ
)
ふとりますわいな、
307
イヒヽヽヽ』
308
と
小面
(
こづら
)
憎相
(
にくさう
)
に
又
(
また
)
腮
(
あご
)
をしやくつて
見
(
み
)
せる。
309
綾子
(
あやこ
)
は
此
(
この
)
間
(
ま
)
にお
花
(
はな
)
の
隙
(
すき
)
を
伺
(
うかが
)
ひ、
310
逸早
(
いちはや
)
く
箱屋
(
はこや
)
と
共
(
とも
)
に、
311
木蔭
(
こかげ
)
へ
身
(
み
)
を
隠
(
かく
)
して
了
(
しま
)
つた。
312
お
花
(
はな
)
は
綾子
(
あやこ
)
の
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えなくなつたのに
気
(
き
)
がつき、
313
お花
『ヤア、
314
すべた
奴
(
め
)
、
315
何処
(
どつか
)
に
逃
(
に
)
げよつた。
316
生首
(
なまくび
)
引抜
(
ひきぬ
)
かねばおかぬ……』
317
と
地団太
(
ぢだんだ
)
ふみ
乍
(
なが
)
ら、
318
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
止
(
とど
)
むるのもふり
放
(
はな
)
し、
319
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
、
320
髪
(
かみ
)
ふり
乱
(
みだ
)
し、
321
西坂
(
にしざか
)
をトントントンと
地響
(
ぢひびき
)
うたせ
乍
(
なが
)
ら
降
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
322
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
一度
(
いちど
)
に
岩石
(
がんせき
)
でも
砕
(
くだ
)
けた
様
(
やう
)
な
調子
(
てうし
)
で『ワハツハヽヽヽ』と
笑
(
わら
)
ひこける。
323
橄欖山
(
かんらんざん
)
の
木
(
き
)
の
茂
(
しげ
)
みから
山鳩
(
やまばと
)
が『ウツフ ウツフ、
324
ウツフヽヽヽ』と
啼
(
な
)
いてゐる。
325
(
大正一四・八・二一
旧七・二
於由良海岸秋田別荘
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 誠と偽
(B)
(N)
猫鞍干 >>>
霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第64巻(卯の巻)下
> 第4篇 清風一過 > 第19章 笑拙種
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第19章 笑拙種|第64巻下|山河草木|霊界物語|/rm64b19】
合言葉「みろく」を入力して下さい→