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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第64巻(卯の巻)下
序文
総説
第1篇 復活転活
第1章 復活祭
第2章 逆襲
第3章 草居谷底
第4章 誤霊城
第5章 横恋慕
第2篇 鬼薊の花
第6章 金酒結婚
第7章 虎角
第8章 擬侠心
第9章 狂怪戦
第10章 拘淫
第3篇 開花落花
第11章 狂擬怪
第12章 開狂式
第13章 漆別
第14章 花曇
第15章 騒淫ホテル
第4篇 清風一過
第16章 誤辛折
第17章 茶粕
第18章 誠と偽
第19章 笑拙種
第20章 猫鞍干
第21章 不意の官命
第22章 帰国と鬼哭
余白歌
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霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第64巻(卯の巻)下
> 第4篇 清風一過 > 第17章 茶粕
<<< 誤辛折
(B)
(N)
誠と偽 >>>
第一七章
茶粕
(
ちやかす
)
〔一八二三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第64巻下 山河草木 卯の巻下
篇:
第4篇 清風一過
よみ(新仮名遣い):
せいふういっか
章:
第17章 茶粕
よみ(新仮名遣い):
ちゃかす
通し章番号:
1823
口述日:
1925(大正14)年08月21日(旧07月2日)
口述場所:
丹後由良 秋田別荘
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年11月7日
概要:
舞台:
御霊城
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
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:
備考:
タグ:
有明屋(有明家)
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-05-25 10:39:31
OBC :
rm64b17
愛善世界社版:
229頁
八幡書店版:
第11輯 581頁
修補版:
校定版:
232頁
普及版:
63頁
初版:
ページ備考:
001
ブラバーサの
親切
(
しんせつ
)
を
罵詈
(
ばり
)
と
叱咤
(
しつた
)
を
以
(
もつ
)
て
報
(
むく
)
ひ、
002
箒
(
はうき
)
で
掃出
(
はきだ
)
さむ
許
(
ばか
)
りの
待遇
(
たいぐう
)
をして
追返
(
おひかへ
)
した。
003
その
翌日
(
よくじつ
)
、
004
狭苦
(
せまくる
)
しい
霊城
(
れいじやう
)
の
日
(
ひ
)
の
丸
(
まる
)
の
掛軸
(
かけぢく
)
の
前
(
まへ
)
に、
005
オコリが
直
(
なほ
)
つたやうな
調子
(
てうし
)
でお
寅
(
とら
)
はチョコナンと
坐
(
すわ
)
り、
006
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
始
(
はじ
)
めたり。
007
(祝詞)『
小北
(
こぎた
)
の
山
(
やま
)
を
始
(
はじ
)
めエルサレムの
霊城
(
れいじやう
)
に
神
(
かみ
)
つまります、
008
底津
(
そこつ
)
岩根
(
いはね
)
の
大弥勒
(
おほみろく
)
の
大神
(
おほかみ
)
、
009
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
もちて、
010
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
、
011
寅子姫
(
とらこひめの
)
命
(
みこと
)
、
012
つまらぬ
餓鬼
(
がき
)
を
腹立
(
はらた
)
ち
連
(
れん
)
の、
013
ヤクザ
身魂
(
みたま
)
の
為
(
ため
)
に、
014
身禊払
(
みそぎはら
)
ひ
玉
(
たま
)
はむとして、
015
現
(
あら
)
はれませる
荒井戸
(
あらゐど
)
の
四柱
(
よはしら
)
の
大神
(
おほかみ
)
、
016
もろもろの
曲事
(
まがこと
)
罪
(
つみ
)
穢
(
けがれ
)
を
払
(
はら
)
ひ
玉
(
たま
)
へ
清
(
きよ
)
め
玉
(
たま
)
へ、
017
ブラバーサ、
018
お
花
(
はな
)
の
悪魔
(
あくま
)
を
退
(
しりぞ
)
け
玉
(
たま
)
へと
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
の
由
(
よし
)
を、
019
天
(
てん
)
の
大神
(
おほかみ
)
地
(
ち
)
の
大神
(
おほかみ
)
、
020
底津
(
そこつ
)
岩根
(
いはね
)
の
神
(
かみ
)
達
(
たち
)
共
(
とも
)
に、
021
徳利
(
とくり
)
聞
(
きこ
)
し
召
(
め
)
せと
畏
(
かしこ
)
みも
申
(
まを
)
す。
022
ミロク
成就
(
じやうじゆ
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
023
上義姫
(
じやうぎひめ
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
024
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日出
(
ひのでの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
025
大広木
(
おほひろき
)
正宗彦
(
まさむねひこの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
、
026
木曽
(
きそ
)
義仲姫
(
よしなかひめの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
、
027
朝日
(
あさひ
)
の
豊阪昇
(
とよさかのぼ
)
り
姫
(
ひめの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
、
028
岩根
(
いはね
)
木根
(
きね
)
立彦
(
たちひこの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
、
029
天
(
あめ
)
の
岩倉放
(
いはくらはな
)
ち
彦
(
ひこの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
、
030
厳
(
いづ
)
の
千別彦
(
ちわきひこの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
、
031
四方
(
よも
)
の
国中彦
(
くになかひこの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
、
032
荒
(
あら
)
ぶる
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
、
033
貞子姫
(
さだこひめの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
、
034
言上姫
(
ことじやうひめの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
、
035
その
外
(
ほか
)
世
(
よ
)
に
落
(
お
)
ちて
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
遊
(
あそ
)
ばした
神々
(
かみがみ
)
様
(
さま
)
、
036
一時
(
いつとき
)
も
早
(
はや
)
く
世
(
よ
)
にお
出
(
で
)
まし
下
(
くだ
)
さいまして、
037
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
、
038
万民
(
ばんみん
)
安堵
(
あんど
)
の
神世
(
かみよ
)
が
立
(
た
)
ちますやう、
039
偏
(
ひとへ
)
にお
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
します。
040
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
041
ポンポンポンポンと
四拍手
(
しはくしゆ
)
し
終
(
をは
)
り、
042
お寅
『これトンクさま、
043
もうお
茶
(
ちや
)
が
沸
(
わ
)
いただらうな』
044
トンク
『ハイ、
045
夜前
(
やぜん
)
から
沸
(
わ
)
いて
居
(
を
)
りますよ』
046
お寅
『さうかいな、
047
ソンナラ
一寸
(
ちよつと
)
、
048
ここへ
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
ておくれ。
049
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りで
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
にお
祝詞
(
のりと
)
をあげたものだから、
050
喉
(
のど
)
が
渇
(
ひつ
)
ついて
仕方
(
しかた
)
がない。
051
あんまり
熱
(
あつ
)
いと
舌
(
した
)
をやけどするから、
052
そこは
飲
(
の
)
みかげんにして、
053
トツトと
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
ておくれや』
054
トンク
『ハイ、
055
今
(
いま
)
持
(
も
)
つて
参
(
さん
)
じます。
056
オイ、
057
テクの
奴
(
やつ
)
、
058
早
(
はや
)
く
土瓶
(
どびん
)
をかけぬかい』
059
テク
『
土瓶
(
どびん
)
をかけと
云
(
い
)
つたつて、
060
夕
(
ゆふ
)
べの
騒
(
さわ
)
ぎで、
061
天
(
てん
)
にも
地
(
ち
)
にも
掛替
(
かけがへ
)
のない
土瓶
(
どびん
)
君
(
くん
)
、
062
切腹
(
せつぷく
)
して
了
(
しま
)
つたぢやないか』
063
トンク
『エー、
064
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かぬ、
065
今
(
いま
)
の
中
(
うち
)
に、
066
それ
表
(
おもて
)
の
瀬戸物
(
せともの
)
屋
(
や
)
へ
行
(
い
)
つて
買
(
か
)
つて
来
(
く
)
るのだ。
067
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
なら
白湯
(
さゆ
)
の
沸
(
わ
)
いたのがあつたら、
068
白湯
(
さゆ
)
ぐち
買
(
か
)
つて
来
(
く
)
ればいいぢやないか。
069
サアサア、
070
ソツトソツト、
071
足音
(
あしおと
)
を
忍
(
しの
)
ばせて』
072
テクは
小便
(
せうべん
)
しに
行
(
ゆ
)
くやうな
顔
(
かほ
)
してソツと
表
(
おもて
)
へ
出
(
で
)
て
了
(
しま
)
つた。
073
お寅
『これこれ、
074
何
(
なに
)
を
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
してゐるのだい。
075
早
(
はや
)
くお
茶
(
ちや
)
をおくれと
云
(
い
)
ふのに』
076
トンク
『ハイ、
077
今
(
いま
)
差上
(
さしあ
)
げます。
078
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さいや』
079
お寅
『
何
(
なん
)
とまア、
080
早速
(
さつそく
)
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
はぬ
男
(
をとこ
)
だこと。
081
あまりの
愚図
(
ぐづ
)
で、
082
可笑
(
をか
)
しうて
臍
(
へそ
)
がお
茶
(
ちや
)
を
沸
(
わ
)
かしますぞや』
083
トンク
『
私
(
わたし
)
だつて
夕
(
ゆふ
)
べの
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
と、
084
ブラバーサとの
掛合
(
かけあひ
)
を
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
つて、
085
臍
(
へそ
)
が
夕
(
ゆふべ
)
から
茶
(
ちや
)
を
沸
(
わ
)
かして
居
(
を
)
りますよ。
086
本当
(
ほんたう
)
にブラバーサの
態
(
ざま
)
つたら、
087
なかつたぢやありませぬか』
088
トンクは
話
(
はなし
)
を
横道
(
よこみち
)
へ
外
(
そ
)
らし、
089
一寸
(
ちよつと
)
でも
暇
(
ひま
)
を
入
(
い
)
れて、
090
テクが
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
る
時間
(
じかん
)
を
保
(
たも
)
とうとして
居
(
ゐ
)
る。
091
お
寅
(
とら
)
はブラバーサの
攻撃
(
こうげき
)
らしい
事
(
こと
)
をトンクが
云
(
い
)
つたので、
092
喉
(
のど
)
の
渇
(
かわ
)
いたのも
忘
(
わす
)
れて
了
(
しま
)
ひ、
093
お寅
『そら、
094
さうだろ。
095
お
前
(
まへ
)
だつてのう、
096
トンク、
097
あの
態
(
ざま
)
を
見
(
み
)
たら
臍
(
へそ
)
がお
茶
(
ちや
)
を
沸
(
わ
)
かす
所
(
どころ
)
か、
098
睾玉
(
きんたま
)
まで
洋行
(
やうかう
)
するだらう』
099
トンク
『ヘーヘー、
100
そらさうですとも。
101
肝
(
きも
)
が
潰
(
つぶ
)
れて、
102
おつたまげる
所
(
どころ
)
か
睾丸
(
きんたま
)
はまひ
上
(
あが
)
る、
103
お
へそ
は
腹
(
はら
)
がやける
程
(
ほど
)
、
104
熱
(
あつ
)
い
茶
(
ちや
)
を
沸
(
わ
)
かします。
105
イヤ、
106
モウ、
107
茶々
(
ちやちや
)
無茶
(
むちや
)
で
厶
(
ござ
)
いましたわい。
108
チヤンチヤラ
可笑
(
をか
)
しい。
109
何程
(
なにほど
)
偉
(
えら
)
さうに
云
(
い
)
つても
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
の
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれたら、
110
丁度
(
ちやうど
)
猫
(
ねこ
)
の
傍
(
そば
)
へ
鼠
(
ねずみ
)
が
来
(
き
)
たやうなものですが、
111
ニャーん
とも
チュ
のおろしやうが
厶
(
ござ
)
いませぬわい。
112
エー、
113
テクの
奴
(
やつ
)
、
114
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かない
野郎
(
やらう
)
だな。
115
土瓶
(
どびん
)
を
折角
(
せつかく
)
買
(
か
)
つて
来
(
き
)
た
処
(
ところ
)
で
湯
(
ゆ
)
が
沸
(
わ
)
く
間
(
ま
)
が
五分
(
ごふん
)
や
十分
(
じつぷん
)
かかるだらうし、
116
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つてごまかしておかうかな』
117
と
口
(
くち
)
の
中
(
なか
)
で
呟
(
つぶや
)
いてゐる。
118
お寅
『これこれトンクさま、
119
今
(
いま
)
小
(
ちひ
)
さい
声
(
こゑ
)
で
云
(
い
)
つた
事
(
こと
)
、
120
いま
一度
(
いちど
)
、
121
云
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
122
ごまかすとは、
123
ソラ、
124
誰
(
たれ
)
をごまかすのだい』
125
トンク
『ヘー、
126
何
(
なん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
127
ブラバーサも
立派
(
りつぱ
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
だと
威張
(
ゐば
)
つてゐますが、
128
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
の
鼻
(
はな
)
の
息
(
いき
)
に、
129
もろくも
散
(
ち
)
つた
処
(
ところ
)
を
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
ますと、
130
籾粕
(
もみかす
)
か
胡麻
(
ごま
)
かす
か、
131
かるい
代物
(
しろもの
)
だなア……、
132
とこのやうに
云
(
い
)
ふたのですわい』
133
お寅
『ホヽヽヽ、
134
籾粕
(
もみかす
)
ぢやのうて、
135
揉
(
も
)
み
消
(
け
)
すのだらう。
136
胡麻粕
(
ごまかす
)
ぢや
無
(
な
)
うて、
137
うまい
事
(
こと
)
生宮
(
いきみや
)
を、
138
ごまかす
積
(
つも
)
りだらうがな。
139
ソンナ
嘘
(
うそ
)
を
喰
(
く
)
ふやうな
生宮
(
いきみや
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬぞや』
140
トンク
『イエイエ、
141
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して、
142
勿体
(
もつたい
)
ない、
143
大弥勒
(
おほみろく
)
様
(
さま
)
の
生宮
(
いきみや
)
を、
144
ごまかすなぞと、
145
人民
(
じんみん
)
の
分際
(
ぶんざい
)
として、
146
そんな
大
(
だい
)
それた
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ますものか。
147
第一
(
だいいち
)
、
148
私
(
わたし
)
の
頭
(
あたま
)
が
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
悪潮流
(
あくていりう
)
に、
149
もみにもみ
潰
(
つぶ
)
され、
150
悪者
(
わるもの
)
共
(
ども
)
に、
151
ごまかされ、
152
脳髄
(
なうずゐ
)
が、
153
ひつからびて、
154
カスカスになつてゐますもの、
155
どうして
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
のやうに
当意
(
たうい
)
即妙
(
そくめう
)
の
智慧
(
ちゑ
)
が
出
(
で
)
ますものかい』
156
お寅
『これ、
157
トンク、
158
早
(
はや
)
くお
茶
(
ちや
)
を、
159
おくれぬかいな』
160
トンク
『ハイ
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
161
実
(
じつ
)
の
処
(
ところ
)
は
土瓶
(
どびん
)
の
奴
(
やつ
)
、
162
あの、
163
何
(
なん
)
です。
164
ブラバーサの
態度
(
たいど
)
に
呆
(
あき
)
れたものと
見
(
み
)
えまして、
165
腮
(
あご
)
を
外
(
はづ
)
し、
166
腹
(
はら
)
迄
(
まで
)
破
(
やぶ
)
つて、
167
てこね
て
居
(
ゐ
)
るのですよ。
168
それだから、
169
最
(
もつと
)
も
新
(
あたら
)
しい、
170
真新
(
まつさら
)
な、
171
清新
(
せいしん
)
な
土器
(
どき
)
を
買
(
か
)
つて
来
(
き
)
て、
172
今日
(
けふ
)
の
初水
(
はつみづ
)
を
沸
(
わ
)
かし、
173
進
(
しん
)
ぜ
度
(
た
)
いと
存
(
ぞん
)
じまして、
174
今
(
いま
)
テクに
買
(
か
)
ひにやつた
所
(
ところ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
175
どうぞ
一寸
(
ちよつと
)
、
176
お
待
(
ま
)
ち
下
(
くだ
)
さいませ』
177
お寅
『いかにも、
178
そりや
結構
(
けつこう
)
だ、
179
いい
処
(
ところ
)
へ
気
(
き
)
がついた。
180
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
のお
飲
(
あが
)
り
遊
(
あそ
)
ばす
土瓶
(
どびん
)
と、
181
トンク、
182
テクの
奴連中
(
やつこれんちう
)
と、
183
今迄
(
いままで
)
のやうに
一
(
ひと
)
つの
土瓶
(
どびん
)
で
茶
(
ちや
)
を
沸
(
わ
)
かして
居
(
を
)
つたのが
間違
(
まちがひ
)
だ。
184
今日
(
けふ
)
から
新
(
あたら
)
しくなつて、
185
イヤ
誠
(
まこと
)
に
結構
(
けつこう
)
だ。
186
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
もさぞ
御
(
ご
)
満足
(
まんぞく
)
遊
(
あそ
)
ばすだらう』
187
トンク
『それに、
188
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
、
189
よう
考
(
かんが
)
へて
御覧
(
ごらん
)
なさい。
190
半狂人
(
はんきちがひ
)
の
曲彦
(
まがひこ
)
や、
191
お
花
(
はな
)
さまが
使
(
つか
)
つてゐた
土瓶
(
どびん
)
ですもの。
192
夕
(
ゆふ
)
べの
騒
(
さわ
)
ぎで、
193
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
のお
臂
(
いど
)
を
使
(
つか
)
ひ、
194
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
がお
土瓶
(
どびん
)
様
(
さま
)
を、
195
滅茶
(
メチヤ
)
々々
(
メチヤ
)
にお
割
(
わ
)
り
遊
(
あそ
)
ばしたのだと、
196
私
(
わたし
)
はこのやうに、
197
おかげを
頂
(
いただ
)
かして
貰
(
もら
)
ひますわ』
198
お寅
『
成程
(
なるほど
)
、
199
お
前
(
まへ
)
の
云
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
り、
200
妾
(
わし
)
の
聞
(
き
)
く
通
(
とほ
)
り、
201
チツとも
間違
(
まちがひ
)
ありますまい。
202
ホヽヽヽ』
203
かかる
処
(
ところ
)
へ、
204
テクは
青土瓶
(
あをどびん
)
をひつ
下
(
さ
)
げて
帰
(
かへ
)
り、
205
テク
『イヤ、
206
これはこれは、
207
お
早
(
はや
)
う
厶
(
ござ
)
います。
208
サアお
茶
(
ちや
)
が
沸
(
わ
)
きました。
209
どうぞお
飲
(
あが
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
210
お寅
『これテクさま、
211
新
(
さら
)
の
土瓶
(
どびん
)
を
買
(
か
)
つて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さつて
誠
(
まこと
)
に
結構
(
けつこう
)
だが、
212
湯
(
ゆ
)
を
沸
(
わ
)
かすのなら、
213
何
(
なん
)
だよ、
214
初
(
はじ
)
めてだから、
215
あまり
熱
(
あつ
)
いお
湯
(
ゆ
)
を
沸
(
わ
)
かすと、
216
お
尻
(
しり
)
が
割
(
わ
)
れますぞや。
217
そして
燻
(
くす
)
べぬやうにせないと、
218
直
(
すぐ
)
お
前
(
まへ
)
の
顔
(
かほ
)
のやうに
真黒
(
まつくろ
)
になるからな。
219
上等
(
じやうとう
)
の
炭火
(
すみび
)
で
沸
(
わ
)
かして
下
(
くだ
)
さいや』
220
テク
『ヘー、
221
瀬戸物
(
せともの
)
屋
(
や
)
の
爺
(
おやぢ
)
、
222
仲々
(
なかなか
)
気
(
き
)
の
利
(
き
)
いた
奴
(
やつ
)
で、
223
新
(
さら
)
の
土瓶
(
どびん
)
で
湯
(
ゆ
)
を
沸
(
わ
)
かすのは
仲々
(
なかなか
)
むつかしい、
224
商売柄
(
しやうばいがら
)
、
225
一
(
ひと
)
つ
教
(
をし
)
へてあげませう、
226
と
云
(
い
)
ひましてな、
227
それはそれは
立派
(
りつぱ
)
な
唐木
(
からき
)
で
作
(
つく
)
つた
角火鉢
(
かくひばち
)
の
上
(
うへ
)
に、
228
ソツとのせて、
229
上等
(
じやうとう
)
のお
茶
(
ちや
)
をチヨツトつまみ、
230
ガタガタガタと
沸
(
わ
)
かして
呉
(
く
)
れました。
231
本当
(
ほんたう
)
に
飲
(
の
)
み
加減
(
かげん
)
ださうで
厶
(
ござ
)
いますよ』
232
お寅
『そりや
仲々
(
なかなか
)
気
(
き
)
が
利
(
き
)
いてゐる。
233
サア
一
(
ひと
)
つこのコツプについで
下
(
くだ
)
さい』
234
テク
『ハイ、
235
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました』
236
と
路地口
(
ろぢぐち
)
でソツと
垂
(
た
)
れ
込
(
こ
)
んでゐた
小便
(
せうべん
)
の
汁
(
しる
)
を
七分
(
しちぶ
)
許
(
ばか
)
りついで、
237
恭
(
うやうや
)
しく
手盆
(
てぼん
)
に
乗
(
の
)
せ、
238
おち
付
(
つ
)
き
払
(
はら
)
つてお
寅
(
とら
)
の
前
(
まへ
)
につき
出
(
だ
)
す。
239
お
寅
(
とら
)
は
喉
(
のど
)
が
渇
(
かわ
)
いてゐるので、
240
小便
(
せうべん
)
とは
気
(
き
)
が
付
(
つ
)
かず、
241
飛
(
と
)
びつくやうにして、
242
グイグイグイと
飲
(
の
)
み
終
(
をは
)
り、
243
お寅
『ハ、
244
何
(
なん
)
だか、
245
妙
(
めう
)
な
香
(
にほひ
)
がするぢやないか』
246
テク
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
247
土瓶
(
どびん
)
が
新
(
さら
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
248
薬
(
くすり
)
の
香
(
にほひ
)
がチツトは
出
(
で
)
るさうです。
249
どうです、
250
も
一杯
(
いつぱい
)
、
251
つぎませうか』
252
お寅
『イヤ、
253
もう
結構
(
けつこう
)
だ、
254
とは
云
(
い
)
ふものの、
255
コンナ
結構
(
けつこう
)
なお
土瓶
(
どびん
)
のお
新
(
さら
)
のお
茶
(
ちや
)
をお
粗末
(
そまつ
)
にお
取扱
(
とりあつかひ
)
する
御
(
お
)
訳
(
わけ
)
にはお
行
(
ゆ
)
き
申
(
まを
)
さぬから、
256
も
一杯
(
いつぱい
)
ついで
下
(
くだ
)
さい』
257
テク
『ヘー
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました』
258
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
又
(
また
)
もやコツプに
今度
(
こんど
)
は
九分
(
くぶ
)
五厘
(
ごりん
)
迄
(
まで
)
注
(
つ
)
いで
見
(
み
)
た。
259
お寅
『ホヽヽヽヽ、
260
何
(
なん
)
と、
261
色
(
いろ
)
よう
出
(
で
)
てゐること、
262
エー
今日
(
けふ
)
は
御
(
ご
)
褒美
(
ほうび
)
に
大弥勒
(
おほみろく
)
の
太柱
(
ふとばしら
)
、
263
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
のお
下
(
さが
)
りを、
264
お
前
(
まへ
)
にも
飲
(
の
)
まして
上
(
あ
)
げやう。
265
結構
(
けつこう
)
な
結構
(
けつこう
)
なお
茶
(
ちや
)
様
(
さま
)
ぢやぞえ。
266
サア、
267
テクさま、
268
頂
(
いただ
)
いて
下
(
くだ
)
さい。
269
滅多
(
めつた
)
に
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
の
口
(
くち
)
のついたお
茶碗
(
ちやわん
)
で
頂
(
いただ
)
くと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬよ』
270
テク
『イヤ、
271
もう
沢山
(
たくさん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
272
今日
(
けふ
)
は
何
(
なん
)
だか
腹
(
はら
)
が
張
(
は
)
つて
居
(
を
)
りますので、
273
水気
(
みづけ
)
は
一切
(
いつさい
)
、
274
欲
(
ほ
)
しくは
厶
(
ござ
)
いませぬ』
275
お寅
『このお
茶
(
ちや
)
さまはな、
276
御
(
ご
)
供水
(
くすい
)
も
同然
(
どうぜん
)
だ。
277
生宮
(
いきみや
)
が
頂
(
いただ
)
けと
云
(
い
)
つたら、
278
反
(
そむ
)
く
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬぞや』
279
テク
『どうか、
280
おかげを、
281
トンクに
譲
(
ゆづ
)
つてやつて
下
(
くだ
)
さいませぬか』
282
トンクは、
283
テクの
奴
(
やつ
)
どうも
怪
(
あや
)
しい、
284
途中
(
とちう
)
で
小便
(
せうべん
)
でもこいておきやがつたのぢやあるまいかと、
285
やや
疑
(
うたが
)
ひ
初
(
はじ
)
めてゐた
最中
(
さいちう
)
なので、
286
トンク
『ヤー、
287
俺
(
おれ
)
も
結構
(
けつこう
)
だ。
288
今日
(
けふ
)
は
水気
(
みづけ
)
一切
(
いつさい
)
飲
(
の
)
み
度
(
た
)
くない。
289
テク、
290
お
前
(
まへ
)
が
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
から
頂
(
いただ
)
かして
貰
(
もら
)
つたのだから
一滴
(
ひとしづく
)
もこぼさず、
291
御
(
お
)
神徳
(
かげ
)
だ、
292
グツと、
293
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つてやつておき
玉
(
たま
)
へ。
294
俺
(
おれ
)
としては、
295
どうも、
296
何々
(
なになに
)
ぢや、
297
マア
自業
(
じごう
)
自得
(
じとく
)
だ。
298
サアサア
頂
(
いただ
)
いた
頂
(
いただ
)
いた』
299
お寅
『これほど
結構
(
けつこう
)
なお
茶
(
ちや
)
様
(
さま
)
が、
300
お
気
(
き
)
に
入
(
い
)
らぬのかいな。
301
ソンナラ
仕方
(
しかた
)
がない、
302
このお
茶
(
ちや
)
さまは、
303
下
(
さ
)
げて、
304
あげる。
305
イヤ、
306
お
茶
(
ちや
)
さまは
放
(
ほ
)
かしなさい。
307
そして、
308
土瓶
(
どびん
)
を
灰
(
はひ
)
でスツクリ
中
(
なか
)
から
外
(
そと
)
迄
(
まで
)
柄
(
え
)
迄
(
まで
)
、
309
研
(
みが
)
いておくのだよ』
310
テク
『ハイ、
311
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました』
312
と
匆々
(
さうさう
)
に
裏口
(
うらぐち
)
の
溝溜
(
どぶたま
)
りへ
鼻
(
はな
)
に
皺寄
(
しわよ
)
せ
乍
(
なが
)
ら
打
(
ぶ
)
ちあけ、
313
灰
(
はい
)
と
水
(
みづ
)
と
笹
(
ささら
)
[
※
校定版では「簓(ささら)」という文字に直している。
]
とで
大
(
だい
)
清潔法
(
せいけつはふ
)
を
行
(
おこな
)
ひ、
314
チヤンと
走
(
はし
)
りの
棚
(
たな
)
に
安置
(
あんち
)
しておいた。
315
お寅
『これ、
316
テク、
317
トンクの
両人
(
りやうにん
)
、
318
俄
(
には
)
かに、
319
干瓢
(
かんぺう
)
が
欲
(
ほ
)
しくなつたから、
320
町
(
まち
)
へ
出
(
で
)
て
一斤
(
いつきん
)
程
(
ほど
)
買
(
か
)
つて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいな』
321
テク
『ハイ、
322
エー、
323
私
(
わたし
)
一人
(
ひとり
)
お
使
(
つかひ
)
に
参
(
まゐ
)
ります。
324
お
気
(
き
)
に
入
(
い
)
りのトンクは、
325
どうかお
側
(
そば
)
に
於
(
おい
)
てやつて
下
(
くだ
)
さい』
326
お寅
『イヤイヤお
前
(
まへ
)
のやうな
口穢
(
くちぎたな
)
いものは、
327
一人
(
ひとり
)
やると、
328
道
(
みち
)
で
干瓢
(
かんぺう
)
をしがみて
了
(
しま
)
ふから
目方
(
めかた
)
が
減
(
へ
)
つて
大変
(
たいへん
)
な
損害
(
そんがい
)
だ。
329
口近
(
くちちか
)
いものはヤツパリ
行儀
(
ぎやうぎ
)
のよい、
330
トンクに
買
(
か
)
つて
来
(
き
)
て
貰
(
もら
)
はう。
331
その
代
(
かは
)
りにお
前
(
まへ
)
は
一寸
(
ちよつと
)
使
(
つかひ
)
に
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
332
エルサレムのお
宮
(
みや
)
へ、
333
私
(
わたし
)
の
病気
(
びやうき
)
が
本復
(
ほんぷく
)
したのでお
礼詣
(
れいまゐ
)
りにだよ』
334
テクとトンクは『ハイハイ』と
二
(
ふた
)
つ
返事
(
へんじ
)
で
小銭
(
こぜに
)
を、
335
引
(
ひ
)
ツつかみ
立
(
た
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
336
干瓢
(
かんぺう
)
はツヒ
近
(
ちか
)
くの
店
(
みせ
)
にあるので、
337
十分
(
じつぷん
)
たたぬ
間
(
ま
)
にトンクは
一斤
(
いつきん
)
程
(
ほど
)
買求
(
かひもと
)
めて
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
338
トンク
『
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
、
339
えらう
遅
(
おそ
)
うなつて
済
(
す
)
みませぬ』
340
お寅
『おそい
所
(
どころ
)
か、
341
お
前
(
まへ
)
は
夏
(
なつ
)
の
牡丹餅
(
ぼたもち
)
だよ。
342
本当
(
ほんたう
)
に
足
(
あし
)
が
早
(
はや
)
いぢやないか。
343
使
(
つかひ
)
歩
(
ある
)
きは、
344
お
前
(
まへ
)
に
限
(
かぎ
)
るよ。
345
今日
(
けふ
)
は、
346
この
生宮
(
いきみや
)
が
干瓢
(
かんぺう
)
を
煮
(
た
)
いて
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
供
(
そな
)
へをしたり、
347
お
前
(
まへ
)
にも
頂
(
いただ
)
かしたいから
手
(
て
)
づから、
348
お
料理
(
れうり
)
をしませう。
349
テクの
奴
(
やつ
)
、
350
エルサレムのお
宮
(
みや
)
へ
詣
(
まゐ
)
れと
云
(
い
)
つておいたのに、
351
又
(
また
)
どこに、
352
外
(
そ
)
れて
行
(
ゆ
)
くか
分
(
わか
)
らないから、
353
お
前
(
まへ
)
、
354
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが
一寸
(
ちよつと
)
調
(
しら
)
べて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さらないか』
355
トンク
『
成程
(
なるほど
)
、
356
委細
(
ゐさい
)
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました』
357
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く、
358
窮屈
(
きうくつ
)
の
皺苦茶
(
しわくちや
)
婆
(
ばば
)
アの
小言
(
こごと
)
を
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
るより、
359
外
(
そと
)
の
空気
(
くうき
)
に
触
(
ふ
)
れた
方
(
はう
)
が
面白
(
おもしろ
)
いと、
360
匆々
(
さうさう
)
に
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く。
361
その
後
(
あと
)
でお
寅
(
とら
)
は
干瓢
(
かんぺう
)
に
鰹
(
かつを
)
のだしを
入
(
い
)
れ、
362
グツグツと
膨
(
ふく
)
れる
処
(
ところ
)
迄
(
まで
)
煮
(
た
)
き
上
(
あ
)
げ、
363
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にもお
供
(
そな
)
へをし、
364
自分
(
じぶん
)
とトンクとの
分
(
ぶん
)
をしまひおき、
365
あとの
残
(
のこ
)
つた
干瓢
(
かんぺう
)
を、
366
暫
(
しば
)
らく
水
(
みづ
)
に
浸
(
ひた
)
し、
367
甘味
(
あまみ
)
をぬいて
了
(
しま
)
ひ、
368
再
(
ふたた
)
び
土瓶
(
どびん
)
の
中
(
なか
)
へつツ
込
(
こ
)
み、
369
シスセーナをやつて、
370
再
(
ふたた
)
び
火鉢
(
ひばち
)
に
土瓶
(
どびん
)
をかけ、
371
グツグツグツとたぎらし、
372
テクの
膳
(
ぜん
)
を
出
(
だ
)
して、
373
皿
(
さら
)
に
一杯
(
いつぱい
)
盛
(
も
)
つておいた。
374
暫
(
しばら
)
くすると、
375
トンク、
376
テクは
怖
(
こは
)
さうに
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
377
トンク
『もし
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
、
378
エー
途中
(
とちう
)
でテクに
出会
(
であ
)
ひまして、
379
無事
(
ぶじ
)
に
帰
(
かへ
)
りまして
厶
(
ござ
)
います』
380
お寅
『アヽそれはそれは
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
千万
(
せんばん
)
、
381
さア
腹
(
はら
)
が
減
(
へ
)
つただらう、
382
朝御飯
(
あさごはん
)
を
食
(
あが
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
383
私
(
わたし
)
もお
前
(
まへ
)
さまと
一緒
(
いつしよ
)
に
御飯
(
ごはん
)
を
食
(
あが
)
らうと
思
(
おも
)
つて、
384
空腹
(
すきばら
)
をかかへて
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
つたのだよ』
385
トンク
『それはそれは。
386
炊事
(
すゐじ
)
迄
(
まで
)
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
にさせまして、
387
オイ、
388
テク、
389
頂
(
いただ
)
かうぢやないか。
390
大弥勒
(
おほみろく
)
様
(
さま
)
のお
手
(
て
)
づからの
御
(
ご
)
料理
(
れうり
)
だ。
391
コンナ
光栄
(
くわうえい
)
は、
392
滅多
(
めつた
)
にあるまいぞ』
393
お寅
『
今日
(
けふ
)
は
生宮
(
いきみや
)
が
炊事
(
すゐじ
)
をするけれど、
394
明日
(
あす
)
からはトンクさまに
願
(
ねが
)
ひますよ』
395
トンク
『はい、
396
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました』
397
と
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
食卓
(
しよくたく
)
を
囲
(
かこ
)
み、
398
干瓢
(
かんぺう
)
の
副食物
(
ふくしよくぶつ
)
で、
399
朝飯
(
あさはん
)
をパクつき
初
(
はじ
)
めた。
400
トンク
『
何
(
なん
)
とマア、
401
干瓢
(
かんぺう
)
の
味
(
あぢ
)
がいいぢやありませぬか。
402
何
(
なん
)
ともかとも
知
(
し
)
れぬ
味
(
あぢ
)
が
致
(
いた
)
しますワ』
403
テク
『ン、
404
うまいな、
405
然
(
しか
)
し、
406
チツと
臭
(
くさ
)
いぢやないか』
407
トンク
『
何
(
なに
)
、
408
臭
(
くさ
)
いのが
価値
(
ねうち
)
だ、
409
鰹
(
かつを
)
の
煮
(
に
)
だし
の
香
(
かをり
)
だよ』
410
テク
『さうだらうかな』
411
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
412
お
寅
(
とら
)
もトンクも、
413
甘
(
うま
)
さうに
喰
(
く
)
つてゐるので、
414
自分
(
じぶん
)
も
怪
(
あや
)
しいと
思
(
おも
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
415
一切
(
ひとき
)
れも
残
(
のこ
)
さず
平
(
たひら
)
げて
了
(
しま
)
つた。
416
お寅
『ホヽヽヽヽ、
417
これテク、
418
どうだつたい。
419
お
前
(
まへ
)
には
特別
(
とくべつ
)
の
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
が
与
(
あた
)
へてあるのだよ。
420
最前
(
さいぜん
)
の
返礼
(
へんれい
)
にな。
421
チツと
許
(
ばか
)
り、
422
お
報
(
むく
)
いしたのだから、
423
悪
(
わる
)
う
思
(
おも
)
つて
下
(
くだ
)
さるなや、
424
ホヽヽヽヽ』
425
テクは
小田
(
をだ
)
の
蛙
(
かへる
)
の、
426
泣
(
な
)
きそこねたやうな
面
(
つら
)
をし
乍
(
なが
)
ら、
427
ダマリ
込
(
こ
)
んで
了
(
しま
)
つた。
428
そこへスタスタ
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
たのはツーロであつた。
429
ツーロ
『
御免
(
ごめん
)
なさい。
430
えらう
遅
(
おそ
)
くなつて
済
(
す
)
みませぬ。
431
只今
(
ただいま
)
かへりました。
432
ヤア、
433
トンク、
434
テクお
前
(
まへ
)
は、
435
もう
帰
(
かへ
)
つてゐるのかい』
436
トンク『
貴様
(
きさま
)
、
437
どこへ
行
(
い
)
つて
居
(
を
)
つたのだい。
438
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
は
大変
(
たいへん
)
に
立腹
(
りつぷく
)
して
厶
(
ござ
)
つたぞ。
439
まるで
鉄砲玉
(
てつぱうだま
)
のやうな
奴
(
やつ
)
だな。
440
出
(
で
)
たら
帰
(
かへ
)
る
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
らないのだから、
441
困
(
こま
)
つたものだよ』
442
ツーロ
『ナニ、
443
大変
(
たいへん
)
暇
(
ひま
)
がいつて、
444
すまなかつたが、
445
その
代
(
かは
)
り
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
し、
446
ドツサリとお
土産
(
みやげ
)
を
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
たのだ。
447
お
釈迦
(
しやか
)
様
(
さま
)
でも
御存
(
ごぞん
)
じないやうな、
448
秘密
(
ひみつ
)
を
探
(
さぐ
)
つて
来
(
き
)
たのだからなア』
449
お寅
『これ、
450
ツーロ、
451
妾
(
わし
)
におみやげとは、
452
ドンナ
事
(
こと
)
ぢやいな。
453
大方
(
おほかた
)
お
花
(
はな
)
と
大広木
(
おほひろき
)
さまとの
秘密
(
ひみつ
)
でも
探
(
さぐ
)
つて
来
(
き
)
たのだらう』
454
ツーロ
『イヤ、
455
御
(
ご
)
賢察
(
けんさつ
)
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
ります。
456
私
(
わたし
)
も
実
(
じつ
)
は、
457
ヤクの
後
(
あと
)
をおつかけて
参
(
まゐ
)
りました
所
(
ところ
)
、
458
行衛
(
ゆくゑ
)
が
知
(
し
)
れないので
申訳
(
まをしわけ
)
がないと
存
(
ぞん
)
じ、
459
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
アメリカン・コロニーの
食客
(
しよくきやく
)
をやつてゐましたが、
460
大広木
(
おほひろき
)
正宗
(
まさむね
)
さまとお
花
(
はな
)
さまとが、
461
カトリックの
僧院
(
そうゐん
)
ホテルで
新
(
しん
)
ウラナイ
教
(
けう
)
を
立
(
た
)
てられると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
き、
462
ソツと
見
(
み
)
に
行
(
い
)
つた
処
(
ところ
)
、
463
ヤクの
奴
(
やつ
)
、
464
階子段
(
はしごだん
)
の
下
(
した
)
に
大
(
だい
)
の
字
(
じ
)
になつて、
465
フンのびてゐるぢやありませぬか。
466
大勢
(
おほぜい
)
のボーイがよつて、
467
ワイワイ
騒
(
さわ
)
いでゐる、
468
医者
(
いしや
)
が
出
(
で
)
て
来
(
く
)
る、
469
大変
(
たいへん
)
な
騒動
(
さうだう
)
でしたよ』
470
お寅
『
何
(
なん
)
と、
471
マア
天罰
(
てんばつ
)
と
云
(
い
)
ふものは、
472
恐
(
おそ
)
ろしいものだな。
473
此
(
この
)
生宮
(
いきみや
)
の
面態
(
めんてい
)
を
泥箒
(
どろばうき
)
でなぐつた
報
(
むく
)
ひだらうよ。
474
それで
一寸
(
ちよつと
)
、
475
溜飲
(
りういん
)
が
下
(
さが
)
りました。
476
どうも
神
(
かみ
)
さまと
云
(
い
)
ふものは、
477
偉
(
えら
)
いものだわい。
478
そしてお
花
(
はな
)
や
大広木
(
おほひろき
)
正宗
(
まさむね
)
さまの
様子
(
やうす
)
は
聞
(
き
)
いて
来
(
こ
)
なかつたかい』
479
ツーロ
『ヘーヘー、
480
聞
(
き
)
くの
聞
(
き
)
かぬのつて、
481
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
が
起
(
おこ
)
つて
居
(
を
)
ります。
482
守宮別
(
やもりわけ
)
の
大広木
(
おほひろき
)
さまはお
花
(
はな
)
さまと
結婚式
(
けつこんしき
)
を
挙
(
あ
)
げ、
483
新宗教
(
しんしうけう
)
を
樹
(
た
)
てやうとして
厶
(
ござ
)
つた
所
(
ところ
)
へ、
484
有明屋
(
ありあけや
)
の
綾子
(
あやこ
)
と
云
(
い
)
ふ
白首
(
しらくび
)
が
会
(
あ
)
ひに
来
(
き
)
たものですから、
485
お
花
(
はな
)
さまと
大喧嘩
(
おほけんくわ
)
が
起
(
おこ
)
り、
486
大広木
(
おほひろき
)
さまは
種茄子
(
たねなす
)
を
引張
(
ひつぱ
)
られて
目
(
め
)
をまかすやら、
487
お
花
(
はな
)
さまは
頭
(
あたま
)
を
殴
(
なぐ
)
られて
発熱
(
はつねつ
)
し、
488
囈言
(
うさごと
)
許
(
ばか
)
り
云
(
い
)
ふので、
489
博愛
(
はくあい
)
病院
(
びやうゐん
)
へ
入院
(
にふゐん
)
しました』
490
お寅
『ホヽヽヽ、
491
何
(
なん
)
とマア
神
(
かみ
)
さまは
偉
(
えら
)
いお
方
(
かた
)
だな。
492
誠
(
まこと
)
さへ
守
(
まも
)
りて
居
(
を
)
りたら
神
(
かみ
)
が
敵
(
かたき
)
を
打
(
う
)
つてやるぞよと、
493
いつも
日出
(
ひので
)
さまが
仰有
(
おつしや
)
るが、
494
ヤツパリ
悪
(
あく
)
は
善
(
ぜん
)
には
叶
(
かな
)
ひますまいがな、
495
然
(
しか
)
し
有明屋
(
ありあけや
)
の
綾子
(
あやこ
)
と
云
(
い
)
ふ
女
(
をんな
)
、
496
気
(
き
)
の
利
(
き
)
いた
奴
(
やつ
)
だ。
497
蹴爪
(
けづめ
)
の
生
(
は
)
えたお
花
(
はな
)
と
喧嘩
(
けんくわ
)
するなぞと、
498
本当
(
ほんたう
)
に
末頼
(
すゑたの
)
もしい。
499
ドーレ、
500
それでは、
501
守宮別
(
やもりわけ
)
さまの
御
(
お
)
見舞
(
みまひ
)
に
行
(
ゆ
)
かねばなるまい。
502
所在
(
ありか
)
が
分
(
わか
)
つた
以上
(
いじやう
)
は、
503
一刻
(
いつこく
)
も
猶予
(
いうよ
)
は
出来
(
でき
)
ぬ。
504
トンク、
505
テク、
506
お
前
(
まへ
)
は
神妙
(
しんめう
)
にお
留守
(
るす
)
をしてゐて
下
(
くだ
)
さい。
507
必
(
かなら
)
ず
小便茶
(
せうべんちや
)
なぞを
沸
(
わ
)
かしてはなりませぬぞや。
508
これツーロ、
509
案内
(
あんない
)
しておくれ』
510
ツーロ
『ハイ、
511
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました』
512
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く。
513
お
寅
(
とら
)
はダン
尻
(
じり
)
をプリンプリンと
中空
(
ちうくう
)
に、
514
ブかつかせ
乍
(
なが
)
ら、
515
表街道
(
おもてかいだう
)
へ
出
(
で
)
て、
516
ツーロと
共
(
とも
)
に
自動車
(
じどうしや
)
を
雇
(
やと
)
ひ、
517
カトリックの
僧院
(
そうゐん
)
ホテルを
指
(
さ
)
して
急
(
いそ
)
ぎ
行
(
ゆ
)
く。
518
(
大正一四・八・二一
旧七・二
北村隆光
録)
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