霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 開狂式(かいきやうしき)〔一八一八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第64巻下 山河草木 卯の巻下 篇:第3篇 開花落花 よみ(新仮名遣い):かいからっか
章:第12章 開狂式 よみ(新仮名遣い):かいきょうしき 通し章番号:1818
口述日:1925(大正14)年08月20日(旧07月1日) 口述場所:丹後由良 秋田別荘 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年11月7日
概要: 舞台:僧院ホテルの座敷 あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]: 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2017-11-26 19:02:12 文字数:3497 OBC :rm64b12
愛善世界社版:162頁 八幡書店版:第11輯 556頁 修補版: 校定版:165頁 普及版:63頁 初版: ページ備考:
001 守宮別(やもりわけ)、002お花(はな)、003ヤクの三(さん)人(にん)は、004僧院(そうゐん)ホテルの立派(りつぱ)なる座敷(ざしき)を、005三間(みま)ぶつ通(とほ)しに借(か)り切(き)り、006奥(おく)の間(ま)には、007新(しん)ウラナイ教(けう)の御(ご)本尊(ほんぞん)、008シオンの娘(むすめ)、009木花(このはな)咲耶姫(さくやひめ)を奉斎(ほうさい)し、010その生宮(いきみや)として、011アヤメのお花(はな)は天晴(あつぱれ)教主(けうしゆ)となり済(す)ますこととした。012発起者(ほつきしや)は夫婦(ふうふ)主従(しゆじう)〆(しめ)て三(さん)人(にん)、013先(ま)づ祭典(さいてん)も無事(ぶじ)に済(す)み、014直会(なほらひ)の酒宴(しゆえん)に移(うつ)つた。015守宮別(やもりわけ)は新宗教(しんしうけう)創立(さうりつ)を祝(しゆく)する為(た)め、016酒(さけ)に酔(よ)つ払(ぱら)つた怪(あや)しい口元(くちもと)から、017祝歌(しゆくか)を歌(うた)ふ。
018守宮別『天(てん)も清浄(しやうじやう)地(ち)も清浄(しやうじやう)
019清浄(しやうじやう)無垢(むく)の御(ご)霊体(れいたい)
020アヤメの君(きみ)は今(いま)此処(ここ)に
021三千(さんぜん)世界(せかい)の救世主(きうせいしゆ)
022世界(せかい)に名高(なだか)き神(かみ)の山(やま)
023シオンの娘(むすめ)木(こ)の花(はな)の
024咲耶(さくや)の姫(ひめ)と現(あ)れまして
025浮瀬(うきせ)に沈(しづ)む民草(たみぐさ)を
026愛(あい)と善(ぜん)との神徳(しんとく)に
027御霊(みたま)を包(つつ)み信真(しんしん)の
028光(ひかり)を世界(せかい)に輝(かがや)かし
029天(あま)の岩戸(いはと)を開(ひら)かむと
030現(あら)はれ玉(たま)ひし尊(たふと)さよ
031扨(さ)ても世界(せかい)の初(はじ)まりは
032神(かむ)伊邪那岐(いざなぎ)の大御神(おほみかみ)
033神(かむ)伊邪那美(いざなみ)の大御神(おほみかみ)
034夫婦(ふうふ)の神(かみ)が現(あ)れまして
035天(あめ)の御柱(みはしら)国柱(くにばしら)
036見立(みた)て玉(たま)ひて汝(な)は右(みぎ)へ
037廻(めぐ)らせ給(たま)へ吾(あ)は左(ひだり)
038廻(めぐ)り合(あ)はむと宣(の)り給(たま)ひ
039婚(とつぎ)の業(わざ)を初(はじ)めまし
040諸多(あまた)の御子(みこ)を生(う)み生(う)みて
041生(う)みの果(は)てには山川(やまかは)や
042草木(くさき)の神(かみ)迄(まで)造(つく)りまし
043遂(つひ)には光明(くわうみやう)赫々(かくかく)と
044輝(かがや)き渡(わた)る大(おほ)日婁女(ひるめ)
045天照(あまて)る神(かみ)を生(う)み給(たま)ひ
046広(ひろ)き世界(せかい)に神国(しんこく)を
047立(た)てさせ給(たま)ひし古事(ふるごと)に
048習(なら)ひまつりて吾々(われわれ)は
049那岐(なぎ)那美(なみ)二尊(にそん)にかたどつて
050アヤメの君(きみ)と盃(さかづき)を
051いとり交(かは)しつ神(かみ)の為(た)め
052世人(よびと)の為(た)めに聖場(せいじやう)を
053これの聖地(せいち)につき堅(かた)め
054百(もも)の人草(ひとぐさ)草木(くさき)迄(まで)
055救(すく)はむ為(た)めのこの祭(まつり)
056あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
057アヤメの君(きみ)があればこそ
058ヤクの奴(やつこ)が居(を)ればこそ
059守宮別(やもりわけ)の太柱(ふとばしら)
060添(そ)ふて居(を)りやこそ今日(けふ)のよな
061誠(まこと)に誠(まこと)に結構(けつこう)な
062新宗教(しんしうけう)の創立(さうりつ)が
063完全(くわんぜん)無欠(むけつ)に出来(でき)たのだ
064もしもお寅(とら)が居(を)つたなら
065一(いち)から百(ひやく)迄(まで)蕪(かぶら)から
066菜種(なたね)の屑(くづ)に至(いた)るまで
067ごてごてごてとさし出口(でぐち)
068日(ひ)の出(で)の神(かみ)の生宮(いきみや)を
069振(ふ)り廻(まは)されて吾々(われわれ)は
070一生(いつしやう)頭(あたま)が上(あが)らない
071これを思(おも)へば此間(こなひだ)の
072喧嘩(けんくわ)は却(かへつ)て吾々(われわれ)の
073大幸福(だいかうふく)となつたやうだ
074昔(むかし)の古(ふる)い諺(ことわざ)に
075人間(にんげん)万事(ばんじ)塞翁(さいをう)の
076馬(うま)の糞(くそ)とはよく云(い)つた
077わいがの烈(はげ)しい女神(めがみ)さま
078何程(なにほど)御(ご)神業(しんげふ)と云(い)つたとて
079鼻持(はなもち)ならず好物(かうぶつ)の
080酒(さけ)さへ味(あぢ)が悪(わる)くなる
081シオンの娘(むすめ)と現(あ)れませる
082アヤメのお花(はな)の教主(けうしゆ)さま
083わいがもとべらも有(あ)りはせぬ
084頭(あたま)に霜(しも)は見(み)ゆれども
085却(かへつ)て雅趣(がしゆ)を添(そ)へるよだ
086これも全(まつた)く神(かみ)さまの
087水(みづ)も漏(もら)さぬ御(おん)仕組(しぐみ)
088守宮別(やもりわけ)も二三十(にさんじふ)年(ねん)
089若返(わかがへ)りたる心地(ここち)する
090あゝ有難(ありがた)い有難(ありがた)い
091何(なに)より彼(か)より第一(だいいち)に
092命(いのち)の水(みづ)の酒(さけ)呑(の)みて
093昔(むかし)の綺麗(きれい)なナイスをば
094座右(ざう)に侍(はべ)らし優姿(やさすがた)
095梅花(ばいくわ)のやうな唇(くちびる)の
096間(あひ)からチヨイチヨイ現(あら)はれる
097象牙(ざうげ)のやうな歯(は)の光(ひかり)
098瑪瑙(めなう)のやうな爪(つめ)の色(いろ)
099梅花(ばいくわ)のやうな頬(ほほ)の艶(つや)
100天地(てんち)の幸福(かうふく)一身(いつしん)に
101独占(どくせん)したやうな気(き)がしよる
102エヘヽヽヽヽエヘヽヽヽ
103コンナ所(ところ)をお寅(とら)奴(め)が
104一寸(ちよつと)覗(のぞ)いた事(こと)ならば
105嘸(さぞ)や泣(な)くだろ怒(おこ)るだろ
106二人(ふたり)の髻(たぶさ)をひつ掴(つか)み
107金切声(かなきりごゑ)を張(は)り上(あ)げて
108近所(きんじよ)合壁(がつぺき)大騒動(おほさうだう)
109燗徳利(かんどつくり)は宙(ちう)に舞(ま)ひ
110お膳(ぜん)や茶碗(ちやわん)はがちやがちやと
111木端(こつぱ)微塵(みじん)に潰滅(くわいめつ)し
112嵐(あらし)の跡(あと)の花(はな)の山(やま)
113見(み)る影(かげ)も無(な)き惨状(さんじやう)を
114現出(げんしゆつ)するに違(ちが)ひない
115あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
116御霊(みたま)の恩頼(ふゆ)を願(ね)ぎまつる』
117お花『オホヽヽヽ、118遉(さすが)はこちの人(ひと)、119何(なん)とまア当意(たうい)即妙(そくめう)の結構(けつこう)なお歌(うた)だ事(こと)。120傍(そば)に聞(き)いて居(ゐ)ても胸(むね)がすき、121頭(あたま)がせいせいとして来(き)ますわ。122なぜ又(また)旦那(だんな)さまはコンナ知恵(ちゑ)を持(も)つて居(ゐ)ながら、123今迄(いままで)隠(かく)して居(ゐ)たのですか。124鼠(ねずみ)とる猫(ねこ)は爪(つめ)隠(かく)すとは能(よ)く云(い)つたものだなア。125アヤメのお花(はな)の一身(いつしん)に対(たい)しては、126本当(ほんたう)に旦那(だんな)さまは好(い)い掘(ほ)り出(だ)しものだよ』
127守宮別『これこれ肉宮(にくみや)さま、128縁起(えんぎ)の悪(わる)い、129放出(ほりだ)し者(もの)だなどと云(い)つて貰(もら)ひますまいぞや。130二(ふた)つ目(め)には気(き)に入(い)らぬと云(い)ふて放(ほ)り出(だ)されては耐(たま)らないからな』
131お花『ホヽヽヽヽ。132妾(わたし)は決(けつ)して放(ほ)り出(だ)しませぬよ。133旦那(だんな)さまの方(はう)から放(ほ)り出(で)ないやうに頼(たの)みますわ』
134守宮別『よし、135そのだんは安心(あんしん)して呉(く)れ。136棚池(たないけ)の生洲(いけす)の鼬(いたち)がついたやうなものだ。137命(いのち)のない所(とこ)迄(まで)離(はな)れつこは無(な)いからな』
138お花『あれ程(ほど)大切(たいせつ)にして居(を)られたお寅(とら)さまでさへも、139弊履(へいり)を捨(す)つるが如(ごと)くに思(おも)ひ切(き)つて素知(そし)らぬ顔(かほ)をして厶(ござ)るのだもの。140第二(だいに)のお寅(とら)さまにしられちや耐(たま)りませぬからね』
141守宮別『そこ迄(まで)心配(しんぱい)しては際限(さいげん)がない。142俺(おれ)がお前(まへ)を愛(あい)する程度(ていど)といふものは、143丸切(まるき)り砂糖(さたう)の固(かたま)りに蟻(あり)がついたやうなものだよ。144も一(ひと)つ違(ちが)つたら、145蛙(かへる)を狙(ねら)ふ蛇(へび)のやうなものだ、146どこ迄(まで)も徹底(てつてい)的(てき)にくつついて行(ゆ)くのだからなア』
147お花『ホヽヽヽ、148砂糖(さたう)に蟻(あり)がついたなぞと、149余(あま)り有難(ありがた)くもありませぬわ』
150守宮別『それでもお花(はな)、151いや女房(にようばう)、152生宮(いきみや)さま、153有難(ありがた)いよ。154甘(あま)いものはありがたがる、155えぐいものや苦(にが)いものはありがたがらぬ、156と云(い)ふ事(こと)があらうがな』
157お花『旦那(だんな)さまは、158妾(わたし)を余程(よほど)甘(あま)いと見縊(みく)びつて厶(ござ)るのですな。159砂糖(さたう)に譬(たとへ)るとは余(あんま)りですわ』
160守宮別『それやお花(はな)は甘(あま)いよ、161花(はな)と云(い)ふ奴(やつ)みな甘(あま)い蜜(みつ)を持(も)つて居(ゐ)るので、162蜜蜂(みつばち)やドカ蜂(ばち)がブンブンと喰(くら)ひつくぢやないか。163俺(おれ)だつてお花(はな)の蜜(みつ)を吸(す)ひたくなるのは当然(たうぜん)だよ。164お花(はな)は砂糖(さたう)でもあり、165砂糖(さたう)よりまだ甘(あま)い佐渡(さど)の土(つち)を持(も)つて居(ゐ)るから、166尚(な)ほ俺(おれ)が好(す)きなのだよ。167エヘヽヽヽ』
168お花『又(また)しても又(また)しても佐渡(さど)の土(つち)だナンテ、169旧(ふる)めかしい文句(もんく)を云(い)ふて下(くだ)さいますな。170ホヽヽヽヽ』
171守宮別『これ肉宮(にくみや)さま。172今日(けふ)は創立(さうりつ)の祝(いは)ひだから、173肝腎(かんじん)の生宮(いきみや)さまから宣言歌(せんげんか)を歌(うた)つて貰(もら)ひ度(た)いものですな』
174お花『なんだか衒(て)れくさくて歌(うた)へませぬわ』
175守宮別『ヘン、176何(なに)を云(い)ふのだい。177矢張(やつぱ)り結婚(けつこん)すると、178娘(むすめ)のやうに恥(はづ)かしさが分(わか)るのかいな。179非(ひ)が蛇(じや)でも、180蟻(あり)が鯛(たひ)でも、181芋虫(いもむし)が鯨(くぢら)でも、182山(やま)の芋(いも)が鰻(うなぎ)になつても、183笹(ささ)の葉(は)が鰌(どぢやう)になつても、184今日(けふ)許(ばか)りは宣言歌(せんげんか)をお謡(うた)ひなさらにや駄目(だめ)ですよ。185その歌(うた)をつけとめて置(お)いて印刷屋(いんさつや)へ廻(まは)し、186ビラを作(つく)つて自動車(じどうしや)に乗(の)り、187市中(しちう)へバラ撒(ま)かねばならぬからな』
188お花『ナントまア。189救世主(きうせいしゆ)にならうと思(おも)へば気(き)の張(は)る事(こと)だわい。190ソンナラ シオンの娘(むすめ)、191木(こ)の花姫(はなひめ)の生宮(いきみや)が宣言歌(せんげんか)を謡(うた)ひませう。192一言(ひとこと)も漏(も)れなくつけとめて下(くだ)されや』
193守宮別『エ、194宜(よろ)しい。195承(うけたま)はりました。196分(わか)つて居(ゐ)る。197併(しか)し乍(なが)ら、198ヤクさまの方(はう)が余程(よほど)筆(ふで)が達者(たつしや)だからなア。199ヤク、200お前(まへ)が一(ひと)つ筆記役(ひつきやく)になつて呉(く)れないか』
201ヤク『ハイ謹(つつし)みて御用(ごよう)承(うけたま)はりませう』
202守宮別『ウンよしよし、203アこれで謡(うた)ひ役(やく)に、204聞(き)き役(やく)、205書(か)き役(やく)と、206三拍子(さんびやうし)揃(そろ)ふた。207目出度(めでた)い目出度(めでた)い、208サア生宮(いきみや)様(さま)、
209歌(うた)ひなされやお歌(うた)ひなされ
210 歌(うた)ふて御(ご)器量(きりやう)は下(さが)りやせぬ
211あーコリヤコリヤ』
212と謡(うた)ふて立(た)ち上(あが)り踊(をど)り始(はじ)める。213アヤメのお花(はな)は日(ひ)の丸(まる)の扇(あふぎ)を両手(りやうて)に持(も)ち、214長(なが)い裾(すそ)を引(ひ)きずつて、215すらすらとお手(て)のものの踊(をどり)を始(はじ)め出(だ)したり。
216お花『此処(ここ)は世界(せかい)の中心(ちうしん)地点(ちてん)
217暗(やみ)の世界(せかい)もパレスチナの
218珍(うづ)の都(みやこ)のエルサレム
219三千(さんぜん)世界(せかい)の梅(うめ)の花(はな)
220一度(いちど)に開(ひら)く時(とき)は来(き)て
221前代(ぜんだい)未聞(みもん)の救世主(きうせいしゆ)
222シオンの娘(むすめ)木花(このはな)の
223咲耶(さくや)の姫(ひめ)が再臨(さいりん)し
224アヤメのお花(はな)の肉体(にくたい)を
225自由(じいう)自在(じざい)に使用(しよう)して
226お寅(とら)婆(ば)さまやブラバーサ
227訳(わけ)の分(わか)らぬ宣伝使(せんでんし)
228瞬(またた)く間(うち)に打(たた)きつけ
229至粋(しすゐ)至純(しじゆん)の聖道(せいだう)を
230開(ひら)くも尊(たふと)き今日(けふ)の宵(よひ)
231花(はな)も匂(にほ)へよ蝶(てふ)も舞(ま)へ
232千歳(ちとせ)の鶴(つる)も舞(ま)ひ込(こ)めよ
233亀(かめ)も這(は)ひ込(こ)んで万歳(ばんざい)を
234祝(ことほ)ぎまつれ神(かみ)の家(いへ)
235やがて独立(どくりつ)宗教(しうけう)の
236大看板(だいかんばん)を掲(かか)げつつ
237三千(さんぜん)世界(せかい)の民衆(みんしう)に
238歓喜(くわんき)の雨(あめ)を濺(そそ)ぎかけ
239正真(しやうしん)正銘(しやうめい)の救世主(きうせいしゆ)
240生神(いきがみ)さまと謡(うた)はるる
241其(その)暁(あかつき)も近(ちか)づいた
242竜宮海(りうぐうかい)の乙姫(おとひめ)も
243今日(こんにち)限(かぎ)り暇(ひま)呉(く)れて
244三十二(さんじふに)相(さう)又(また)三相(さんさう)
245具備(ぐび)し給(たま)へる木(こ)の花(はな)の
246姫(ひめ)の尊(みこと)の肉(にく)の宮(みや)
247アヤメのお花(はな)が今(いま)茲(ここ)に
248シオンの娘(むすめ)と現(あら)はれて
249三千(さんぜん)世界(せかい)の隅々(すみずみ)も
250漏(もら)さず落(おと)さず救(すく)ひ行(ゆ)く
251実(げ)にも目出度(めでた)き今日(けふ)の日(ひ)は
252天(てん)澄(す)み渡(わた)り地(ち)の上(うへ)は
253春(はる)の青草(あをぐさ)萠(も)え出(い)でて
254開闢(かいびやく)以来(いらい)の救(すく)ひ主(ぬし)
255大降臨(だいかうりん)を待(ま)つ如(ごと)し
256思(おも)へば思(おも)へば有難(ありがた)や
257喜(よろこ)び祝(いは)へ百(もも)の人(ひと)
258慕(した)ひまつれよ救世主(きうせいしゆ)
259アヤメのお花(はな)の肉宮(にくみや)を。
260ホヽヽヽヽ、261どうかこれ位(くらゐ)で耐(こ)らへて頂戴(ちやうだい)な。262何(なん)だか恥(はづ)かしくて後(あと)が続(つづ)きませぬもの』
263守宮別『妙々(めうめう)。264天晴(あつぱれ)々々(あつぱれ)。265天下(てんか)の救世主(きうせいしゆ)だなア。266ヤク、267お前(まへ)も感心(かんしん)しただらう。268お寅(とら)さまに比(くら)べて、269どちらが立派(りつぱ)だと思(おも)ふか』
270ヤク『それやさうですな、271本当(ほんたう)にさうですよ』
272守宮別『そりやさうですな、273では分(わか)らぬぢやないか、274どちらが優(すぐ)れて居(ゐ)るかと問(と)ふて居(ゐ)るのだ』
275ヤク『ヘエヘエ、276それやもう、277テンで段(だん)が違(ちが)ひますわい、278比(くら)べものになりませぬがな』
279お花『これこれヤクさま、280どちらが優(すぐ)れて居(ゐ)ると云(い)ふのだい』
281ヤク『ハイ、282何(なん)と云(い)つても、283かんと云(い)つても何(なん)ですな。284それや矢張(やつぱ)り、285優(すぐ)れて居(ゐ)る方(はう)が優(すぐ)れて居(ゐ)ますなア』
286お花『怪体(けつたい)な事(こと)云(い)ふ男(をとこ)だな。287ハツキリ云(い)ひなさらぬかいな』
288ヤク『御(ご)本人(ほんにん)の前(まへ)ですもの、289大抵(たいてい)にして御(ご)推量(すいりやう)下(くだ)さいな』
290 お花(はな)は自分(じぶん)が褒(ほ)められて居(ゐ)るのだと思(おも)ひ、291満面(まんめん)に笑(ゑみ)を湛(たた)へ、292目(め)を細(ほそ)め、293横目(よこめ)でヤクの顔(かほ)を一寸(ちよつと)見(み)ながら、
294お花『ホヽヽヽ、295遉(さすが)はヤクさまは目(め)が高(たか)いわい。296それでこそ守宮別(やもりわけ)さまの添(そ)へ柱(ばしら)、297確(しつか)り頼(たの)みますぞや』
298 直会(なほらひ)の式(しき)も漸(やうや)く終了(しうれう)し、299お花(はな)が郵便局(ゆうびんきよく)から出(だ)して来(き)た三千(さんぜん)円(ゑん)の現金(げんなま)を懐中(くわいちう)しながら、300新宗教(しんしうけう)独立(どくりつ)の運動(うんどう)をして来(く)ると云(い)ひ残(のこ)し、301守宮別(やもりわけ)は漂然(へうぜん)としてホテルを立(た)ち出(い)で、302タゴールの館(やかた)へは行(ゆ)かず、303駅前(えきまへ)の青楼(せいろう)さして登(のぼ)り行(ゆ)く。
304(大正一四・八・二〇 旧七・一 於由良秋田別荘 加藤明子録)
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