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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第67巻(午の巻)
序文
総説
第1篇 美山梅光
第1章 梅の花香
第2章 思想の波
第3章 美人の腕
第4章 笑の座
第5章 浪の皷
第2篇 春湖波紋
第6章 浮島の怪猫
第7章 武力鞘
第8章 糸の縺れ
第9章 ダリヤの香
第10章 スガの長者
第3篇 多羅煩獄
第11章 暗狐苦
第12章 太子微行
第13章 山中の火光
第14章 獣念気
第15章 貂心暴
第16章 酒艶の月
第17章 晨の驚愕
第4篇 山色連天
第18章 月下の露
第19章 絵姿
第20章 曲津の陋呵
第21章 針灸思想
第22章 憧憬の美
余白歌
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霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第67巻(午の巻)
> 第2篇 春湖波紋 > 第6章 浮島の怪猫
<<< 浪の皷
(B)
(N)
武力鞘 >>>
第六章
浮島
(
うきしま
)
の
怪猫
(
くわいべう
)
〔一七〇八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第67巻 山河草木 午の巻
篇:
第2篇 春湖波紋
よみ(新仮名遣い):
しゅんこはもん
章:
第6章 浮島の怪猫
よみ(新仮名遣い):
うきしまのかいびょう
通し章番号:
1708
口述日:
1924(大正13)年12月27日(旧12月2日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年8月19日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2018-05-03 17:03:25
OBC :
rm6706
愛善世界社版:
75頁
八幡書店版:
第12輯 57頁
修補版:
校定版:
75頁
普及版:
68頁
初版:
ページ備考:
001
波切丸
(
なみきりまる
)
は
万波
(
ばんぱ
)
洋々
(
やうやう
)
たる
湖面
(
こめん
)
を、
002
西南
(
せいなん
)
を
指
(
さ
)
して、
003
船舷
(
ふなばた
)
に
皷
(
つづみ
)
を
打
(
う
)
ち
乍
(
なが
)
ら、
004
いともゆるやかに
進
(
すす
)
んでゐる。
005
天気
(
てんき
)
清朗
(
せいらう
)
にして
春
(
はる
)
の
陽気
(
やうき
)
漂
(
ただよ
)
ひ、
006
或
(
あるひ
)
は
白
(
しろ
)
く
或
(
あるひ
)
は
黒
(
くろ
)
く
或
(
あるひ
)
は
赤
(
あか
)
き
翼
(
つばさ
)
を
拡
(
ひろ
)
げた
海鳥
(
かいてう
)
が、
007
或
(
あるひ
)
は
百羽
(
ひやくぱ
)
、
008
千羽
(
せんば
)
と
群
(
むれ
)
をなし、
009
怪
(
あや
)
しげな
声
(
こゑ
)
を
絞
(
しぼ
)
つて
中空
(
ちうくう
)
を
翔
(
かけ
)
めぐり、
010
或
(
あるひ
)
は
波間
(
なみま
)
に
悠然
(
いうぜん
)
として、
011
浮
(
う
)
きつ
沈
(
しづ
)
みつ、
012
魚
(
うを
)
を
漁
(
あさ
)
つてゐる。
013
アンボイナは
七八
(
しちはつ
)
尺
(
しやく
)
の
大翼
(
たいよく
)
を
拡
(
ひろ
)
げて
一文字
(
いちもんじ
)
に
空中
(
くうちう
)
滑走
(
くわつそう
)
をやつてゐる。
014
其
(
その
)
長閑
(
のどか
)
さは
天国
(
てんごく
)
の
楽園
(
らくゑん
)
に
遊
(
あそ
)
ぶの
思
(
おも
)
ひがあつた。
015
前方
(
ぜんぱう
)
につき
当
(
あた
)
つたハルの
湖水
(
こすい
)
第一
(
だいいち
)
の、
016
岩
(
いは
)
のみを
以
(
もつ
)
て
築
(
きづ
)
かれた
高山
(
かうざん
)
がある。
017
国人
(
くにびと
)
は
此
(
この
)
島山
(
しまやま
)
を
称
(
しよう
)
して
浮島
(
うきしま
)
の
峰
(
みね
)
と
称
(
とな
)
へてゐる。
018
一名
(
いちめい
)
夜光
(
やくわう
)
の
岩山
(
いはやま
)
ともいふ。
019
船
(
ふね
)
は
容赦
(
ようしや
)
もなく
此
(
この
)
岩山
(
いはやま
)
の
一
(
いち
)
浬
(
かいり
)
許
(
ばか
)
り
手前
(
てまへ
)
迄
(
まで
)
進
(
すす
)
んで
来
(
き
)
た。
020
船客
(
せんきやく
)
は
何
(
いづ
)
れも
此
(
この
)
岩島
(
いはしま
)
に
向
(
むか
)
つて、
021
一斉
(
いつせい
)
に
視線
(
しせん
)
を
投
(
な
)
げ、
022
此
(
この
)
島
(
しま
)
に
関
(
くわん
)
する
古来
(
こらい
)
の
伝説
(
でんせつ
)
や
由緒
(
ゆいしよ
)
について、
023
口々
(
くちぐち
)
に
批評
(
ひひやう
)
を
試
(
こころ
)
みてゐる。
024
甲
(
かふ
)
『
皆
(
みな
)
さま、
025
御覧
(
ごらん
)
なさい。
026
前方
(
ぜんぱう
)
に
雲
(
くも
)
を
凌
(
しの
)
いで
屹立
(
きつりつ
)
してゐる、
027
あの
岩島
(
いはじま
)
は、
028
ハルの
湖
(
うみ
)
第一
(
だいいち
)
の
高山
(
かうざん
)
で、
029
いろいろの
神秘
(
しんぴ
)
を
蔵
(
ざう
)
してゐる
霊山
(
れいざん
)
ですよ。
030
昔
(
むかし
)
は
夜光
(
やくわう
)
の
岩山
(
いはやま
)
と
云
(
い
)
つて、
031
岩
(
いは
)
の
頂辺
(
てつぺん
)
に
日月
(
じつげつ
)
の
如
(
ごと
)
き
光
(
ひかり
)
が
輝
(
かがや
)
き、
032
月
(
つき
)
のない
夜
(
よ
)
の
航海
(
かうかい
)
には
燈明台
(
とうみやうだい
)
として
尊重
(
そんちよう
)
されたものです。
033
あのスツクと
雲
(
くも
)
を
抜
(
ぬき
)
出
(
で
)
た
山容
(
さんよう
)
の
具合
(
ぐあひ
)
といひ、
034
全山
(
ぜんざん
)
岩
(
いは
)
を
以
(
もつ
)
て
固
(
かた
)
められた
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふえ
)
の
容姿
(
ようし
)
といひ、
035
万古
(
ばんこ
)
不動
(
ふどう
)
の
霊山
(
れいざん
)
です。
036
此
(
この
)
湖水
(
こすい
)
を
渡
(
わた
)
る
者
(
もの
)
は
此
(
この
)
山
(
やま
)
を
見
(
み
)
なくつちや、
037
湖水
(
こすい
)
を
渡
(
わた
)
つたといふ
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないのです』
038
乙
(
おつ
)
『
成程
(
なるほど
)
、
039
見
(
み
)
れば
見
(
み
)
る
程
(
ほど
)
立派
(
りつぱ
)
な
山
(
やま
)
ですな。
040
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
041
今
(
いま
)
でも
夜
(
よる
)
になると、
042
昔
(
むかし
)
と
同
(
おな
)
じやうに
光明
(
くわうみやう
)
を
放
(
はな
)
つてゐるのですか』
043
甲
(
かふ
)
『
此
(
この
)
湖水
(
こすい
)
をハルの
湖
(
うみ
)
といふ
位
(
くらゐ
)
ですもの、
044
暗
(
やみ
)
がなかつたのです。
045
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らだんだん
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が
曇
(
くも
)
つた
勢
(
せい
)
か、
046
年
(
とし
)
と
共
(
とも
)
に
光
(
ひかり
)
がうすらぎ、
047
今
(
いま
)
では
殆
(
ほと
)
んど
光
(
ひか
)
らなくなつたのです。
048
そして
湖水
(
こすい
)
の
中心
(
ちうしん
)
に
聳
(
そび
)
え
立
(
た
)
つてゐたのですが、
049
いつの
間
(
ま
)
にやら、
050
其
(
その
)
中心
(
ちうしん
)
から
東
(
ひがし
)
へ
移
(
うつ
)
つて
了
(
しま
)
つたといふ
事
(
こと
)
です。
051
万古
(
ばんこ
)
不動
(
ふどう
)
の
岩山
(
いはやま
)
も
根
(
ね
)
がないと
見
(
み
)
えて
浮島
(
うきじま
)
らしく、
052
余
(
あま
)
り
西風
(
にしかぜ
)
が
烈
(
はげ
)
しかつたと
見
(
み
)
えて、
053
チクチクと
中心
(
ちうしん
)
から
東
(
ひがし
)
へ
寄
(
よ
)
つたといふ
事
(
こと
)
です』
054
乙
(
おつ
)
『
成程
(
なるほど
)
文化
(
ぶんくわ
)
は
東漸
(
とうぜん
)
するとかいひますから、
055
文化風
(
ぶんくわかぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いたのでせう。
056
併
(
しか
)
し
日月
(
じつげつ
)
星辰
(
せいしん
)
何
(
いづ
)
れも
皆
(
みな
)
西
(
にし
)
へ
西
(
にし
)
へと
移
(
うつ
)
つて
行
(
ゆ
)
くのに、
057
あの
岩山
(
いはやま
)
に
限
(
かぎ
)
つて、
058
東
(
ひがし
)
へ
移
(
うつ
)
るとは
少
(
すこ
)
し
天地
(
てんち
)
の
道理
(
だうり
)
に
反
(
はん
)
してゐるぢやありませぬか。
059
浮草
(
うきぐさ
)
のやうに
風
(
かぜ
)
に
従
(
したが
)
つて
浮動
(
ふどう
)
する
様
(
やう
)
な
島
(
しま
)
ならば、
060
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
岩
(
いは
)
で
固
(
かた
)
めてあつても、
061
何時
(
いつ
)
沈没
(
ちんぼつ
)
するか
知
(
し
)
れませぬから、
062
うつかり
近寄
(
ちかよ
)
るこた
出来
(
でき
)
ますまい』
063
甲
(
かふ
)
『あの
山
(
やま
)
の
頂
(
いただ
)
きを
御覧
(
ごらん
)
なさい。
064
殆
(
ほと
)
んど
枯死
(
こし
)
せむとする
様
(
やう
)
なひねくれた、
065
ちつぽけな
樹木
(
じゆもく
)
が
岩
(
いは
)
の
空隙
(
くうげき
)
に
僅
(
わづ
)
かに
命脈
(
めいみやく
)
を
保
(
たも
)
つてゐるでせう。
066
山
(
やま
)
高
(
たか
)
きが
故
(
ゆゑ
)
に
尊
(
たふと
)
からず、
067
樹木
(
じゆもく
)
あるを
以
(
もつ
)
て
尊
(
たふと
)
しとす……とかいつて、
068
何程
(
なにほど
)
高
(
たか
)
い
山
(
やま
)
でも
役
(
やく
)
に
立
(
た
)
たぬガラクタ
岩
(
いは
)
で
固
(
かた
)
められ、
069
肝心
(
かんじん
)
の
樹木
(
じゆもく
)
がなくては、
070
山
(
やま
)
の
山
(
やま
)
たる
資格
(
しかく
)
はありますまい。
071
せめて
燈明台
(
とうみやうだい
)
にでもなりや、
072
山
(
やま
)
としての
価値
(
かち
)
も
保
(
たも
)
てるでせうが、
073
大
(
おほ
)
きな
面積
(
めんせき
)
を
占領
(
せんりやう
)
して、
074
何一
(
なにひと
)
つ
芸能
(
げいのう
)
のない
岩山
(
いはやま
)
ではサツパリ
話
(
はなし
)
になりますまい。
075
それも
昔
(
むかし
)
の
様
(
やう
)
に
暗夜
(
やみよ
)
を
照
(
てら
)
し
往来
(
わうらい
)
の
船
(
ふね
)
を
守
(
まも
)
つて
076
安全
(
あんぜん
)
に
彼岸
(
ひがん
)
に
達
(
たつ
)
せしむる
働
(
はたら
)
きがあるのなれば、
0761
岩山
(
いはやま
)
も
結構
(
けつこう
)
ですが、
077
今日
(
けふ
)
となつては
最早
(
もはや
)
無用
(
むよう
)
の
長物
(
ちやうぶつ
)
ですな。
078
昔
(
むかし
)
はあの
山
(
やま
)
の
頂
(
いただ
)
きに
特
(
とく
)
に
目立
(
めだ
)
つて、
079
仁王
(
にわう
)
の
如
(
ごと
)
く
直立
(
ちよくりつ
)
してゐる
大岩石
(
だいがんせき
)
を、
080
アケハルの
岩
(
いは
)
と
称
(
とな
)
へ、
081
国
(
くに
)
の
守
(
まも
)
り
神
(
がみ
)
様
(
さま
)
として、
082
国民
(
こくみん
)
が
尊敬
(
そんけい
)
してゐたのです。
083
それが
今日
(
こんにち
)
となつては、
084
少
(
すこ
)
しも
光
(
ひかり
)
がなく、
085
おまけに
其
(
その
)
岩
(
いは
)
に、
086
縦
(
たて
)
に
大
(
おほ
)
きなヒビが
入
(
い
)
つて、
087
何時
(
いつ
)
破壊
(
はくわい
)
するか
分
(
わか
)
らないやうになり、
088
今
(
いま
)
は
大黒岩
(
おほくろいは
)
と
人
(
ひと
)
が
呼
(
よ
)
んで
居
(
を
)
ります。
089
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
之
(
これ
)
を
見
(
み
)
ても、
090
此
(
この
)
ままでは
続
(
つづ
)
くものではありますまい。
091
天
(
てん
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
地
(
ち
)
に
不思議
(
ふしぎ
)
を
現
(
あら
)
はして
世
(
よ
)
の
推移
(
すゐい
)
をお
示
(
しめ
)
しになると
云
(
い
)
ひますから、
092
之
(
これ
)
から
推考
(
すゐかう
)
すれば、
093
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
天下
(
てんか
)
も
余
(
あま
)
り
長
(
なが
)
くはありますまいな』
094
乙
(
おつ
)
『あの
岩山
(
いはやま
)
には
何
(
なに
)
か
猛獣
(
まうじう
)
でも
棲
(
す
)
んでゐるでせうか』
095
甲
(
かふ
)
『
妙
(
めう
)
な
怪物
(
くわいぶつ
)
が
沢山
(
たくさん
)
棲息
(
せいそく
)
してゐるといふ
事
(
こと
)
です。
096
そして
其
(
その
)
動物
(
どうぶつ
)
は
足
(
あし
)
に
水
(
みづ
)
かきがあり、
097
水上
(
すいじやう
)
を
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
に
游泳
(
いうえい
)
したり、
098
山
(
やま
)
を
駆
(
か
)
け
登
(
のぼ
)
る
事
(
こと
)
の
速
(
はや
)
さといつたら、
099
丸
(
まる
)
切
(
き
)
り、
100
風船
(
ふうせん
)
を
飛翔
(
ひしよう
)
したやうなものだ……との
事
(
こと
)
です。
101
昔
(
むかし
)
は
日
(
ひ
)
の
神
(
かみ
)
102
月
(
つき
)
の
神
(
かみ
)
二柱
(
ふたはしら
)
が、
103
天上
(
てんじやう
)
より
御
(
ご
)
降臨
(
かうりん
)
になり
104
八百万
(
やほよろづの
)
神
(
かみ
)
を
集
(
つど
)
ひて、
1041
日月
(
じつげつ
)
の
如
(
ごと
)
き
光明
(
くわうみやう
)
を
放
(
はな
)
ち、
105
此
(
この
)
湖水
(
こすい
)
は
素
(
もと
)
より、
106
印度
(
つき
)
の
国
(
くに
)
一体
(
いつたい
)
を
照臨
(
せうりん
)
し、
107
妖邪
(
えうじや
)
の
気
(
き
)
を
払
(
はら
)
ひ、
108
天下
(
てんか
)
万民
(
ばんみん
)
を
安息
(
あんそく
)
せしめ、
109
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神体
(
しんたい
)
として、
110
国人
(
くにびと
)
があの
岩山
(
いはやま
)
を
尊敬
(
そんけい
)
してゐたのですが、
111
追々
(
おひおひ
)
と
世
(
よ
)
は
澆季
(
げうき
)
末法
(
まつぽふ
)
となり、
112
何時
(
いつ
)
しか
其
(
その
)
光明
(
くわうみやう
)
も
光
(
ひかり
)
を
失
(
うしな
)
ひ、
113
今
(
いま
)
や
全
(
まつた
)
く
虎
(
とら
)
とも
狼
(
おほかみ
)
とも
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
とも
大蛇
(
だいじや
)
とも
形容
(
けいよう
)
し
難
(
がた
)
い
怪獣
(
くわいじう
)
が
棲息所
(
せいそくしよ
)
となつてゐるさうです。
114
それだから
吾々
(
われわれ
)
人間
(
にんげん
)
が、
115
其
(
その
)
島
(
しま
)
に
一歩
(
いつぽ
)
でも
踏
(
ふ
)
み
入
(
い
)
れやうものなら、
116
忽
(
たちま
)
ち
狂悪
(
きやうあく
)
なる
怪獣
(
くわいじう
)
の
爪牙
(
さうが
)
にかかつて、
117
血
(
ち
)
は
吸
(
す
)
はれ、
118
肉
(
にく
)
は
喰
(
く
)
はれ
骨
(
ほね
)
は
焼
(
や
)
かれて
亡
(
ほろ
)
びると
云
(
い
)
つて
恐
(
こは
)
がり、
119
誰
(
たれ
)
も
寄
(
よ
)
りつかないのです。
120
風波
(
ふうは
)
が
悪
(
わる
)
くつて、
121
もしも
船
(
ふね
)
があの
岩島
(
いはじま
)
にブツかからうものなら、
122
それこそ
寂滅
(
じやくめつ
)
為楽
(
ゐらく
)
、
123
再
(
ふたた
)
び
生
(
い
)
きて
還
(
かへ
)
る
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないので、
124
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
では、
125
秘々
(
ひそびそ
)
とあの
島
(
しま
)
を
悪魔島
(
あくまたう
)
と
云
(
い
)
つてゐます。
126
併
(
しか
)
し
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
でそんな
事
(
こと
)
言
(
い
)
はうものなら、
127
怪物
(
くわいぶつ
)
が
其
(
その
)
声
(
こゑ
)
を
聞
(
きき
)
付
(
つ
)
けて、
128
どんな
わざ
をするか
分
(
わか
)
らぬといふ
事
(
こと
)
ですから、
129
誰
(
たれ
)
も
彼
(
かれ
)
も
憚
(
はばか
)
つて、
130
大黒岩
(
おほくろいは
)
に
関
(
くわん
)
する
話
(
はなし
)
を
口
(
くち
)
を
閉
(
と
)
じて
安全
(
あんぜん
)
無事
(
ぶじ
)
を
祈
(
いの
)
つてゐるのです。
131
あの
島
(
しま
)
がある
為
(
ため
)
に、
132
少
(
すこ
)
し
暴風
(
ばうふう
)
の
時
(
とき
)
は
大変
(
たいへん
)
な
大波
(
おほなみ
)
を
起
(
おこ
)
し、
133
小
(
ちひ
)
さい
舟
(
ふね
)
は
何時
(
いつ
)
も
覆没
(
ふくぼつ
)
の
難
(
なん
)
に
会
(
あ
)
ふのですからなア。
134
何
(
なん
)
とかして、
135
天
(
てん
)
の
大
(
おほ
)
きな
工匠
(
こうしやう
)
がやつて
来
(
き
)
て
大鉄槌
(
だいてつつい
)
を
振
(
ふる
)
ひ、
136
打
(
うち
)
砕
(
くだ
)
いて、
137
吾々
(
われわれ
)
の
安全
(
あんぜん
)
を
守
(
まも
)
つてくれる、
138
大神将
(
だいしんしやう
)
が
現
(
あら
)
はれ
相
(
さう
)
なものですな』
139
乙
(
おつ
)
『
何
(
なん
)
と、
140
権威
(
けんゐ
)
のある
岩山
(
いはやま
)
ぢやありませぬか。
141
つまり
此
(
この
)
湖面
(
こめん
)
に
傲然
(
がうぜん
)
と
突
(
つ
)
つ
立
(
た
)
つて、
142
所在
(
あらゆる
)
島々
(
しまじま
)
を
睥睨
(
へいげい
)
し、
143
こわ
持
(
も
)
てに
持
(
も
)
ててゐるのですな』
144
甲
(
かふ
)
『あの
岩山
(
いはやま
)
は
時々
(
ときどき
)
大鳴動
(
だいめいどう
)
を
起
(
おこ
)
し、
145
噴煙
(
ふんえん
)
を
吐
(
は
)
き
散
(
ち
)
らし、
146
湖面
(
こめん
)
を
暗
(
やみ
)
に
包
(
つつ
)
んで
了
(
しま
)
ふ
事
(
こと
)
があるのですよ。
147
其
(
その
)
噴煙
(
ふんえん
)
には
一種
(
いつしゆ
)
の
毒瓦斯
(
どくガス
)
が
含有
(
がんいう
)
してゐますから、
148
其
(
その
)
煙
(
けぶり
)
に
襲
(
おそ
)
はれた
者
(
もの
)
は
忽
(
たちま
)
ち
禿頭病
(
とくとうびやう
)
になり、
149
或
(
あるひ
)
は
眼病
(
がんびやう
)
を
煩
(
わづら
)
ひ、
150
耳
(
みみ
)
は
聞
(
きこ
)
えなくなり、
151
舌
(
した
)
は
動
(
うご
)
かなくなるといふ
事
(
こと
)
です。
152
そして
肚
(
はら
)
のすく
事
(
こと
)
、
153
咽喉
(
のど
)
の
渇
(
かは
)
く
事
(
こと
)
、
154
一通
(
ひととほ
)
りぢやないさうです。
155
そんな
魔風
(
まかぜ
)
に、
156
折
(
をり
)
あしく
出会
(
でつくは
)
した
者
(
もの
)
は
可
(
い
)
い
災難
(
さいなん
)
ですよ』
157
乙
(
おつ
)
『
丸
(
まる
)
つ
切
(
き
)
り
蚰蜒
(
げぢげぢ
)
か、
158
蛇蝎
(
だかつ
)
の
様
(
やう
)
な
恐
(
おそ
)
ろしい
厭
(
いや
)
らしい
岩山
(
いはやま
)
ですな。
159
なぜ
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
さまは
人民
(
じんみん
)
を
愛
(
あい
)
する
心
(
こころ
)
より、
160
湖上
(
こじやう
)
の
大害物
(
だいがいぶつ
)
を
除
(
とりの
)
けて
下
(
くだ
)
さらぬのでせうか。
161
あつて
益
(
えき
)
なく、
162
なければ
大変
(
たいへん
)
、
163
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
の
航海
(
かうかい
)
が
出来
(
でき
)
て
便利
(
べんり
)
だのに、
164
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は、
165
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
と
雖
(
いへど
)
、
166
或
(
ある
)
程度
(
ていど
)
迄
(
まで
)
は
自由
(
じいう
)
にならないと
見
(
み
)
えますな』
167
甲
(
かふ
)
『
何事
(
なにごと
)
も
時節
(
じせつ
)
の
力
(
ちから
)
ですよ。
168
金輪
(
こんりん
)
奈落
(
ならく
)
の
地底
(
ちてい
)
からつき
出
(
で
)
てをつたといふ、
169
あの
大高
(
おほたか
)
の
岩山
(
いはやま
)
が、
170
僅
(
わづ
)
かの
風
(
かぜ
)
位
(
ぐらゐ
)
に
動揺
(
どうえう
)
して、
171
東
(
ひがし
)
へ
東
(
ひがし
)
へと
流
(
なが
)
れ
移
(
うつ
)
る
様
(
やう
)
になつたのですから、
172
最早
(
もはや
)
其
(
その
)
根底
(
こんてい
)
はグラついてゐるのでせう。
173
一
(
ひと
)
つレコード
破
(
やぶ
)
りの
大地震
(
だいぢしん
)
でも
勃発
(
ぼつぱつ
)
したら、
174
手
(
て
)
もなく、
175
湖底
(
こてい
)
に
沈
(
しづ
)
んで
了
(
しま
)
ふでせう。
176
オ、
177
アレアレ
御覧
(
ごらん
)
なさい。
178
頂上
(
ちやうじやう
)
の
夫婦岩
(
めうといは
)
が、
179
何
(
なん
)
だか
怪
(
あや
)
しく
動
(
うご
)
き
出
(
だ
)
したぢやありませぬか』
180
乙
(
おつ
)
『
風
(
かぜ
)
も
吹
(
ふ
)
かないのに、
181
千引
(
ちびき
)
の
岩
(
いは
)
が
自動
(
じどう
)
するといふ
道理
(
だうり
)
もありますまい。
182
舟
(
ふね
)
が
動
(
うご
)
くので
岩
(
いは
)
が
動
(
うご
)
くやうに
見
(
み
)
えるのでせう』
183
甲
(
かふ
)
『ナニ、
184
さうではありますまい。
185
舟
(
ふね
)
が
動
(
うご
)
いて
岩
(
いは
)
が
動
(
うご
)
くやうに
見
(
み
)
えるのなれば、
186
浮島
(
うきじま
)
全部
(
ぜんぶ
)
が
動
(
うご
)
かねばなりますまい。
187
他
(
ほか
)
に
散在
(
さんざい
)
してゐる
大小
(
だいせう
)
無数
(
むすう
)
の
島々
(
しまじま
)
も、
188
同
(
おな
)
じ
様
(
やう
)
に
動
(
うご
)
かねばなりますまい。
189
岩山
(
いはやま
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
に
限
(
かぎ
)
つて
動
(
うご
)
き
出
(
だ
)
すのは、
190
ヤツパリ
船
(
ふね
)
の
動揺
(
どうえう
)
の
作用
(
さよう
)
でもなければ、
191
変視
(
へんし
)
幻視
(
げんし
)
の
作用
(
さよう
)
でもありますまい。
192
キツと
之
(
これ
)
は
何
(
なに
)
かの
前兆
(
ぜんてう
)
でせうよ』
193
乙
(
おつ
)
『そう
承
(
うけたま
)
はれば、
194
いかにも
動
(
うご
)
いて
居
(
を
)
ります。
195
あれあれ、
196
そろそろ
夫婦岩
(
めうといは
)
が
頂
(
いただ
)
きの
方
(
はう
)
から
下
(
した
)
の
方
(
はう
)
へ
向
(
むか
)
つて
歩
(
ある
)
き
初
(
はじ
)
めたぢやありませぬか』
197
甲
(
かふ
)
『
成程
(
なるほど
)
妙
(
めう
)
だ。
198
段々
(
だんだん
)
下
(
くだ
)
つて
来
(
く
)
るぢやありませぬか。
199
岩
(
いは
)
かと
思
(
おも
)
へば
虎
(
とら
)
が
這
(
は
)
うてゐる
様
(
やう
)
に
見
(
み
)
え
出
(
だ
)
して
来
(
き
)
たぢやありませぬか』
200
乙
(
おつ
)
『いかにも
大虎
(
おほとら
)
です
哩
(
わい
)
。
201
アレアレ
全山
(
ぜんざん
)
が
動揺
(
どうえう
)
し
出
(
だ
)
しました。
202
此奴
(
こいつ
)
ア
沈没
(
ちんぼつ
)
でもせうものなら、
203
それ
丈
(
だけ
)
水量
(
みづかさ
)
がまさり、
204
大波
(
おほなみ
)
が
起
(
おこ
)
つて、
205
吾々
(
われわれ
)
の
船
(
ふね
)
も
大変
(
たいへん
)
な
影響
(
えいきやう
)
をうけるでせう。
206
危
(
あぶ
)
ない
事
(
こと
)
になつて
来
(
き
)
たものですワイ』
207
かく
話
(
はな
)
す
内
(
うち
)
、
208
波切丸
(
なみきりまる
)
は
浮島
(
うきじま
)
の
岩山
(
いはやま
)
の
間近
(
まぢか
)
に
進
(
すす
)
んだ。
209
島
(
しま
)
の
周囲
(
しうゐ
)
は
何
(
なん
)
となく
波
(
なみ
)
が
高
(
たか
)
い。
210
虎
(
とら
)
と
見
(
み
)
えた
岩
(
いは
)
の
変化
(
へんげ
)
は
磯端
(
いそばた
)
に
下
(
くだ
)
つて
来
(
き
)
た。
211
よくよく
見
(
み
)
れば
牛
(
うし
)
の
様
(
やう
)
な
虎猫
(
とらねこ
)
である。
212
虎猫
(
とらねこ
)
は
波切丸
(
なみきりまる
)
を
目
(
め
)
をいからして、
2121
睨
(
にら
)
み
乍
(
なが
)
ら、
213
逃
(
に
)
げるが
如
(
ごと
)
く
湖面
(
こめん
)
を
渡
(
わた
)
つて
夫婦
(
めうと
)
連
(
づ
)
れ、
214
西方
(
せいはう
)
指
(
さ
)
して
浮
(
う
)
きつ
沈
(
しづ
)
みつ
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く。
215
俄
(
にはか
)
に
浮島
(
うきじま
)
は
鳴動
(
めいどう
)
を
始
(
はじ
)
め、
216
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に、
2161
全山
(
ぜんざん
)
は
揺
(
ゆ
)
れて
来
(
き
)
た。
217
チクリチクリと
山
(
やま
)
の
量
(
かさ
)
は
小
(
ちひ
)
さくなり
低
(
ひく
)
くなり、
218
半時
(
はんとき
)
許
(
ばか
)
りの
内
(
うち
)
に
水面
(
すいめん
)
に
其
(
その
)
影
(
かげ
)
を
没
(
ぼつ
)
して
了
(
しま
)
つた。
219
余
(
あま
)
り
沈没
(
ちんぼつ
)
の
仕方
(
しかた
)
が
漸進
(
ぜんしん
)
的
(
てき
)
であつたので、
220
恐
(
おそ
)
ろしき
荒波
(
あらなみ
)
も
立
(
た
)
たず、
221
波切丸
(
なみきりまる
)
を
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
動揺
(
どうえう
)
する
位
(
くらゐ
)
ですんだ。
222
一同
(
いちどう
)
の
船客
(
せんきやく
)
は
此
(
この
)
光景
(
くわうけい
)
を
眺
(
なが
)
めて、
223
何
(
いづ
)
れも
顔色
(
がんしよく
)
青
(
あを
)
ざめ、
224
不思議
(
ふしぎ
)
々々
(
ふしぎ
)
と
連呼
(
れんこ
)
するのみであつた。
225
此
(
この
)
時
(
とき
)
船底
(
せんてい
)
に
横臥
(
わうぐわ
)
してゐた
梅公
(
うめこう
)
宣伝使
(
せんでんし
)
は
226
船
(
ふね
)
の
少
(
すこ
)
しく
動揺
(
どうえう
)
せしに
目
(
め
)
を
醒
(
さ
)
まし、
227
ヒヨロリヒヨロリと
甲板
(
かんばん
)
に
上
(
あが
)
つて
来
(
き
)
た。
228
さしもに
有名
(
いうめい
)
な
大高
(
おほたか
)
の
岩山
(
いはやま
)
は
跡形
(
あとかた
)
もなく
水泡
(
みなわ
)
と
消
(
き
)
えてゐた。
229
そして
船客
(
せんきやく
)
が
口々
(
くちぐち
)
に
陥没
(
かんぼつ
)
の
記念所
(
きねんしよ
)
を
話
(
はな
)
してゐる。
230
梅公
(
うめこう
)
は
船客
(
せんきやく
)
の
一人
(
ひとり
)
に
向
(
むか
)
つて、
231
『
風
(
かぜ
)
もないのに、
232
大変
(
たいへん
)
な
波
(
なみ
)
ですな。
233
どつかの
島
(
しま
)
が
沈没
(
ちんぼつ
)
したのぢやありませぬか』
234
甲
(
かふ
)
『ハイ、
235
貴方
(
あなた
)
、
236
あの
大変事
(
たいへんじ
)
を
御覧
(
ごらん
)
にならなかつたのですか。
237
随分
(
ずいぶん
)
見物
(
みもの
)
でしたよ。
238
昔
(
むかし
)
から
日月
(
じつげつ
)
の
如
(
ごと
)
く
光
(
ひか
)
つてゐた
頂上
(
ちやうじやう
)
の
夫婦岩
(
めうといは
)
は
俄
(
にはか
)
に
揺
(
ゆ
)
るぎ
出
(
だ
)
し、
239
終
(
しま
)
いの
果
(
はて
)
には
大
(
おほ
)
きな
虎
(
とら
)
となり、
240
磯端
(
いそばた
)
へ
下
(
くだ
)
つて
来
(
き
)
た
時分
(
じぶん
)
には
猫
(
ねこ
)
となり、
241
波
(
なみ
)
の
間
(
あひだ
)
を
浮
(
う
)
きつ
沈
(
しづ
)
みつ、
242
西
(
にし
)
の
方
(
はう
)
へ
逃
(
に
)
げて
行
(
い
)
つたと
思
(
おも
)
へば、
243
チクリチクリと
島
(
しま
)
が
沈
(
しづ
)
み
出
(
だ
)
し、
244
たうとう
無
(
な
)
くなつて
了
(
しま
)
ひました。
245
こんな
事
(
こと
)
は
昔
(
むかし
)
から
見
(
み
)
た
事
(
こと
)
はありませぬ。
246
コリヤ
何
(
なん
)
かの
天
(
てん
)
のお
知
(
し
)
らせでせうかな』
247
梅
(
うめ
)
『どうも
不思議
(
ふしぎ
)
ですな。
248
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
人間
(
にんげん
)
から
見
(
み
)
れば
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
のやうですが、
249
宇宙
(
うちう
)
万有
(
ばんいう
)
を
創造
(
さうざう
)
し
玉
(
たま
)
うた
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
目
(
め
)
から
見
(
み
)
れば、
250
吾々
(
われわれ
)
が
頬
(
ほほ
)
に
吸
(
す
)
ひついた
蚊
(
か
)
を
一匹
(
いつぴき
)
叩
(
たた
)
き
殺
(
ころ
)
す
様
(
やう
)
なものでせう。
251
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
吾々
(
われわれ
)
は
之
(
これ
)
を
見
(
み
)
て、
252
自
(
みづか
)
ら
戒
(
いまし
)
め、
253
悟
(
さと
)
らねばなりませぬ』
254
乙
(
おつ
)
『
貴方
(
あなた
)
は
何教
(
なにけう
)
かの
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
のやうですが、
255
一体
(
いつたい
)
全体
(
ぜんたい
)
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
何
(
ど
)
うなるでせうか。
256
吾々
(
われわれ
)
は
不安
(
ふあん
)
で
堪
(
たま
)
らないのです。
257
つい
一時前
(
いつときまへ
)
迄
(
まで
)
泰然
(
たいぜん
)
として
湖中
(
こちう
)
に
聳
(
そび
)
えてゐた、
258
あの
岩山
(
いはやま
)
が
脆
(
もろ
)
くも
湖底
(
こてい
)
に
沈没
(
ちんぼつ
)
するといふよな
不祥
(
ふしやう
)
な
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
ですからなア』
259
梅
(
うめ
)
『
今日
(
こんにち
)
は
妖邪
(
えうじや
)
の
気
(
き
)
、
260
国
(
くに
)
の
上下
(
じやうげ
)
に
充
(
み
)
ちあふれ、
261
仁義
(
じんぎ
)
だの、
262
道徳
(
だうとく
)
だのと
云
(
い
)
ふ
美風
(
びふう
)
は
地
(
ち
)
を
払
(
はら
)
ひ、
263
悪
(
あく
)
と
虚偽
(
きよぎ
)
との
悪風
(
あくふう
)
吹
(
ふ
)
き
荒
(
すさ
)
び、
264
世
(
よ
)
は
益々
(
ますます
)
暗黒
(
あんこく
)
の
淵
(
ふち
)
に
沈淪
(
ちんりん
)
し、
265
聖者
(
せいじや
)
は
野
(
の
)
に
隠
(
かく
)
れ、
266
愚者
(
ぐしや
)
は
高
(
たか
)
きに
上
(
のぼ
)
つて
国政
(
こくせい
)
を
私
(
わたくし
)
し、
267
善
(
ぜん
)
は
虐
(
しひた
)
げられ
悪
(
あく
)
は
栄
(
さか
)
えるといふ
無道
(
むだう
)
の
社会
(
しやくわい
)
ですから、
268
天地
(
てんち
)
も
之
(
これ
)
に
感応
(
かんのう
)
して、
269
色々
(
いろいろ
)
の
不思議
(
ふしぎ
)
が
勃発
(
ぼつぱつ
)
するのでせう。
270
今日
(
こんにち
)
の
人間
(
にんげん
)
は
何
(
いづ
)
れも
堕落
(
だらく
)
の
淵
(
ふち
)
に
沈
(
しづ
)
み、
271
卑劣心
(
ひれつしん
)
のみ
頭
(
あたま
)
を
擡
(
もた
)
げ、
272
有為
(
いうゐ
)
の
人材
(
じんざい
)
は
生
(
うま
)
れ
来
(
きた
)
らず、
273
末法
(
まつぽふ
)
常暗
(
とこやみ
)
の
世
(
よ
)
となり
果
(
はて
)
てゐるのですから、
274
吾々
(
われわれ
)
は
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
の
神柱
(
かむばしら
)
、
275
主
(
す
)
の
神
(
かみ
)
の
救世
(
きうせい
)
的
(
てき
)
御
(
ご
)
神業
(
しんげふ
)
に
奉仕
(
ほうし
)
し、
276
天下
(
てんか
)
の
暗雲
(
あんうん
)
を
払
(
はら
)
ひ、
277
悲哀
(
ひあい
)
の
淵
(
ふち
)
に
沈
(
しづ
)
める
蒼生
(
あをひとぐさ
)
を
平安
(
へいあん
)
無事
(
ぶじ
)
なる
楽郷
(
らくきやう
)
に
救
(
すく
)
はむが
為
(
ため
)
に
278
所在
(
あらゆる
)
艱難
(
かんなん
)
辛苦
(
しんく
)
をなめ、
279
天下
(
てんか
)
を
遍歴
(
へんれき
)
して、
280
神教
(
しんけう
)
を
伝達
(
でんたつ
)
してゐるのです。
281
未
(
ま
)
だ
未
(
ま
)
だ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は、
282
之
(
こ
)
れ
位
(
くらゐ
)
な
不思議
(
ふしぎ
)
では
治
(
をさ
)
まりませぬよ。
283
茲
(
ここ
)
十
(
じふ
)
年
(
ねん
)
以内
(
いない
)
には、
284
世界
(
せかい
)
的
(
てき
)
、
285
又々
(
またまた
)
大戦争
(
だいせんそう
)
が
勃発
(
ぼつぱつ
)
するでせう。
286
今日
(
こんにち
)
ウラル
教
(
けう
)
とバラモン
教
(
けう
)
との
戦争
(
せんそう
)
が
始
(
はじ
)
まらむとして
居
(
を
)
りますが、
287
斯
(
こ
)
んなことはホンの
児戯
(
じぎ
)
に
等
(
ひと
)
しきもので、
288
世界
(
せかい
)
の
将来
(
しやうらい
)
は、
289
実
(
じつ
)
に
戦慄
(
せんりつ
)
すべき
大禍
(
たいくわ
)
が
横
(
よこ
)
たはつて
居
(
を
)
ります。
290
夫
(
それ
)
故
(
ゆゑ
)
、
291
吾々
(
われわれ
)
は
愛善
(
あいぜん
)
の
徳
(
とく
)
と
信真
(
しんしん
)
の
光
(
ひかり
)
に
満
(
み
)
ち
玉
(
たま
)
ふ
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神諭
(
しんゆ
)
を
拝
(
はい
)
し、
292
普
(
あまね
)
く
天下
(
てんか
)
の
万民
(
ばんみん
)
を
救
(
すく
)
はむが
為
(
ため
)
に、
293
草
(
くさ
)
のしとね、
294
星
(
ほし
)
の
夜具
(
やぐ
)
、
295
木
(
き
)
の
根
(
ね
)
を
枕
(
まくら
)
として、
296
天下
(
てんか
)
公共
(
こうきよう
)
の
為
(
ため
)
に
塵身
(
ぢんしん
)
を
捧
(
ささ
)
げてゐるのです』
297
甲
(
かふ
)
『
成程
(
なるほど
)
承
(
うけたま
)
はれば
承
(
うけたま
)
はる
程
(
ほど
)
、
298
今日
(
こんにち
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
不安
(
ふあん
)
の
空気
(
くうき
)
が
漂
(
ただよ
)
うてゐるやうです。
299
今
(
いま
)
の
人間
(
にんげん
)
は
神仏
(
しんぶつ
)
の
洪大
(
こうだい
)
無辺
(
むへん
)
なる
御
(
ご
)
威徳
(
いとく
)
を
無視
(
むし
)
し、
300
暴力
(
ばうりよく
)
と
圧制
(
あつせい
)
とを
以
(
も
)
つて
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
武器
(
ぶき
)
とする
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
前
(
まへ
)
に
拝跪
(
はいき
)
渇仰
(
かつかう
)
し、
301
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
尊
(
たふと
)
き
者
(
もの
)
はハルナの
都
(
みやこ
)
の
大黒主
(
おほくろぬし
)
より
外
(
ほか
)
にないものだと
誤解
(
ごかい
)
してゐるのだから、
302
天地
(
てんち
)
の
怒
(
いかり
)
に
触
(
ふ
)
れて、
303
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
一旦
(
いつたん
)
破壊
(
はくわい
)
さるるのは
当然
(
たうぜん
)
でせう。
304
私
(
わたし
)
はウラル
教
(
けう
)
の
信者
(
しんじや
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
305
第一
(
だいいち
)
、
306
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
からして、
307
……
神
(
かみ
)
を
信
(
しん
)
ずるのは
科学
(
くわがく
)
的
(
てき
)
でなくては
可
(
い
)
かない。
308
神秘
(
しんぴ
)
だとか
奇蹟
(
きせき
)
だとかを
以
(
もつ
)
て
信仰
(
しんかう
)
を
維持
(
ゐぢ
)
してゐたのは、
309
太古
(
たいこ
)
未開
(
みかい
)
の
時代
(
じだい
)
の
事
(
こと
)
だ。
310
日進
(
につしん
)
月歩
(
げつぽ
)
、
311
開明
(
かいめい
)
の
今日
(
こんにち
)
は、
312
そんなゴマカシは
世人
(
せじん
)
が
受入
(
うけい
)
れない……と
言
(
い
)
つてゐらつしやるのですもの、
313
丸
(
まる
)
切
(
き
)
り
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
科学
(
くわがく
)
扱
(
あつか
)
ひにし、
314
御
(
ご
)
神体
(
しんたい
)
を
分析
(
ぶんせき
)
解剖
(
かいばう
)
して、
3141
色々
(
いろいろ
)
の
批評
(
ひひやう
)
を
下
(
くだ
)
すといふ
極悪
(
ごくあく
)
世界
(
せかい
)
ですもの。
315
斯
(
こ
)
んな
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が
出
(
で
)
て
来
(
く
)
るのは
寧
(
むし
)
ろ
当然
(
たうぜん
)
でせう。
316
貴方
(
あなた
)
は
何教
(
なにけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
で
厶
(
ござ
)
いますか。
317
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
する
御
(
ご
)
感想
(
かんさう
)
を
承
(
うけたま
)
はりたいもので
厶
(
ござ
)
いますな』
318
梅
(
うめ
)
『
最前
(
さいぜん
)
も
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げた
通
(
とほ
)
り、
319
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
は
三五教
(
あななひけう
)
を
御
(
お
)
開
(
ひら
)
きになつたのです。
320
そして
私
(
わたし
)
は
同教
(
どうけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
照国別
(
てるくにわけ
)
様
(
さま
)
といふ
御
(
お
)
方
(
かた
)
の
従者
(
じゆうしや
)
となつて、
321
宣伝
(
せんでん
)
の
旅
(
たび
)
に
立
(
た
)
つたもので
厶
(
ござ
)
います。
322
それ
故
(
ゆゑ
)
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
のお
尋
(
たづ
)
ねに
対
(
たい
)
し、
323
立派
(
りつぱ
)
な
答
(
こたへ
)
は
到底
(
たうてい
)
出来
(
でき
)
ませぬ。
324
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
昔
(
むかし
)
の
人
(
ひと
)
のいつた
様
(
やう
)
に、
325
超然
(
てうぜん
)
として
人間
(
にんげん
)
を
離
(
はな
)
れた
者
(
もの
)
ではありませぬ。
326
神人
(
しんじん
)
合一
(
がふいつ
)
の
境
(
きやう
)
に
入
(
い
)
つて
始
(
はじ
)
めて、
327
神
(
かみ
)
の
神
(
かみ
)
たり、
328
人
(
ひと
)
の
人
(
ひと
)
たる
働
(
はたら
)
きが
出来得
(
できう
)
るのです。
329
故
(
ゆゑ
)
に
三五教
(
あななひけう
)
にては、
330
人
(
ひと
)
は
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
神
(
かみ
)
の
宮
(
みや
)
と
称
(
とな
)
へ、
331
舎身
(
しやしん
)
的
(
てき
)
大活動
(
だいくわつどう
)
を、
332
天下
(
てんか
)
万民
(
ばんみん
)
の
為
(
ため
)
にやつてゐるのです』
333
甲
(
かふ
)
『
何
(
なに
)
か
御
(
ご
)
教示
(
けうじ
)
について、
334
極
(
ごく
)
簡単
(
かんたん
)
明瞭
(
めいれう
)
に、
335
神
(
かみ
)
と
人
(
ひと
)
との
関係
(
くわんけい
)
を
解
(
わか
)
らして
頂
(
いただ
)
く
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ますまいか』
336
梅
(
うめ
)
『ハイ、
337
私
(
わたし
)
にもまだ
修業
(
しうげふ
)
が
未熟
(
みじゆく
)
なので、
338
判然
(
はつきり
)
した
事
(
こと
)
は
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げ
兼
(
かね
)
ますが、
339
吾
(
わが
)
宣伝使
(
せんでんし
)
の
君
(
きみ
)
から
教
(
をそ
)
はつた
一
(
ひと
)
つの
格言
(
かくげん
)
が
厶
(
ござ
)
いますから、
340
之
(
これ
)
を
貴方
(
あなた
)
にお
聞
(
き
)
かせ
致
(
いた
)
しませう。
341
神力
(
しんりき
)
と
人力
(
じんりき
)
342
一、
343
宇宙
(
うちう
)
の
本源
(
ほんげん
)
は
活動力
(
くわつどうりよく
)
にして
即
(
すなは
)
ち
神
(
かみ
)
なり。
344
一、
345
万物
(
ばんぶつ
)
は
活動力
(
くわつどうりよく
)
の
発現
(
はつげん
)
にして
神
(
かみ
)
の
断片
(
だんぺん
)
なり。
346
一、
347
人
(
ひと
)
は
活動力
(
くわつどうりよく
)
の
主体
(
しゆたい
)
、
348
天地
(
てんち
)
経綸
(
けいりん
)
の
司宰者
(
しさいしや
)
なり。
349
活動力
(
くわつどうりよく
)
は
洪大
(
こうだい
)
無辺
(
むへん
)
にして
宗教
(
しうけう
)
、
350
政治
(
せいぢ
)
、
351
哲学
(
てつがく
)
、
352
倫理
(
りんり
)
、
353
教育
(
けういく
)
、
354
科学
(
くわがく
)
、
355
法律
(
はふりつ
)
等
(
とう
)
の
源泉
(
げんせん
)
なり。
356
一、
357
人
(
ひと
)
は
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
なり。
358
而
(
しか
)
して
又
(
また
)
神
(
かみ
)
と
成
(
な
)
り
得
(
う
)
るものなり。
359
一、
360
人
(
ひと
)
は
神
(
かみ
)
にしあれば
神
(
かみ
)
に
習
(
なら
)
ひて
能
(
よ
)
く
活動
(
くわつどう
)
し、
361
自己
(
じこ
)
を
信
(
しん
)
じ、
362
他人
(
たにん
)
を
信
(
しん
)
じ、
363
依頼心
(
いらいしん
)
を
起
(
おこ
)
す
可
(
べか
)
らず。
364
一、
365
世界
(
せかい
)
人類
(
じんるゐ
)
の
平和
(
へいわ
)
と
幸福
(
かうふく
)
の
為
(
ため
)
に
苦難
(
くなん
)
を
意
(
い
)
とせず、
366
真理
(
しんり
)
の
為
(
ため
)
に
活躍
(
くわつやく
)
し
実行
(
じつかう
)
するものは
神
(
かみ
)
なり。
367
一、
368
神
(
かみ
)
は
万物
(
ばんぶつ
)
普遍
(
ふへん
)
の
活霊
(
くわつれい
)
にして、
369
人
(
ひと
)
は
神業
(
しんげふ
)
経綸
(
けいりん
)
の
主体
(
しゆたい
)
なり。
370
霊体
(
れいたい
)
一致
(
いつち
)
して
茲
(
ここ
)
に
無限
(
むげん
)
無極
(
むきよく
)
の
権威
(
けんゐ
)
を
発揮
(
はつき
)
し、
371
万世
(
ばんせい
)
の
基本
(
きほん
)
を
樹立
(
じゆりつ
)
す』
372
甲
(
かふ
)
『イヤ
有難
(
ありがた
)
う。
373
御
(
ご
)
教示
(
けうじ
)
を
聞
(
き
)
いて
地獄
(
ぢごく
)
から
極楽
(
ごくらく
)
浄土
(
じやうど
)
へ
転住
(
てんぢう
)
したやうな
法悦
(
ほふえつ
)
に
咽
(
むせ
)
びました。
374
成程
(
なるほど
)
人間
(
にんげん
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
分派
(
ぶんぱ
)
で、
375
いはば
小
(
せう
)
なる
神
(
かみ
)
で
厶
(
ござ
)
いますなア。
376
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
ウラル
教
(
けう
)
で
称
(
とな
)
へてをりました
教理
(
けうり
)
に
比
(
くら
)
ぶれば、
377
其
(
その
)
内容
(
ないよう
)
に
於
(
おい
)
て、
378
其
(
その
)
尊
(
たふと
)
さに
於
(
おい
)
て、
379
真理
(
しんり
)
の
徹底
(
てつてい
)
したる
点
(
てん
)
に
於
(
おい
)
て、
380
天地
(
てんち
)
霄壌
(
せうじやう
)
の
差
(
さ
)
が
厶
(
ござ
)
います。
381
私
(
わたし
)
はスガの
港
(
みなと
)
の
小
(
ちひ
)
さい
商人
(
せうにん
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
382
宅
(
うち
)
にはウラル
彦
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
奉斎
(
ほうさい
)
してをります。
383
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
之
(
これ
)
は
祖先
(
そせん
)
以来
(
いらい
)
伝統
(
でんとう
)
的
(
てき
)
に
祀
(
まつ
)
つてゐるので、
384
言
(
い
)
はば
葬式
(
さうしき
)
などの
便利
(
べんり
)
上
(
じやう
)
、
385
ウラル
教徒
(
けうと
)
となつてゐるのに
過
(
す
)
ぎませぬ。
386
既成
(
きせい
)
宗教
(
しうけう
)
は
已
(
すで
)
に
命脈
(
めいみやく
)
を
失
(
うしな
)
ひ、
387
只
(
ただ
)
其
(
その
)
残骸
(
ざんがい
)
を
止
(
とど
)
むるのみ。
388
吾々
(
われわれ
)
人民
(
じんみん
)
は
信仰
(
しんかう
)
に
飢
(
うゑ
)
渇
(
かわ
)
き、
389
精神
(
せいしん
)
の
道
(
みち
)
に
放浪
(
はうらう
)
し、
390
一
(
いち
)
日
(
にち
)
として、
391
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
安心
(
あんしん
)
に
送
(
おく
)
る
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
なかつたのです。
392
旧
(
きう
)
道徳
(
だうとく
)
は
既
(
すで
)
に
已
(
すで
)
に
世
(
よ
)
にすたれて、
393
新
(
しん
)
道徳
(
だうとく
)
も
起
(
おこ
)
らず、
394
又
(
また
)
偉大
(
ゐだい
)
なる
新宗教
(
しんしうけう
)
も
勃起
(
ぼつき
)
せないと
云
(
い
)
つて、
395
日夜
(
にちや
)
悔
(
くや
)
んで
居
(
を
)
りましたが、
396
かやうな
崇高
(
すうかう
)
な
偉大
(
ゐだい
)
な
真宗教
(
しんしうけう
)
が
起
(
おこ
)
つてゐるとは、
397
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らなかつたのです。
398
計
(
はか
)
らずも
波切丸
(
なみきりまる
)
の
船中
(
せんちう
)
に
於
(
おい
)
て、
399
かかる
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
使
(
つかひ
)
に
巡
(
めぐ
)
り
会
(
あ
)
ひ、
400
起死
(
きし
)
回生
(
くわいせい
)
の
御
(
ご
)
神教
(
しんけう
)
を
聞
(
き
)
かして
頂
(
いただ
)
くとは、
401
何
(
なん
)
たる、
402
私
(
わたし
)
は
幸福
(
かうふく
)
で
厶
(
ござ
)
いませう。
403
私
(
わたし
)
の
宅
(
うち
)
は、
404
誠
(
まこと
)
に
手狭
(
てぜま
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
405
スガの
港
(
みなと
)
のイルクと
云
(
い
)
つて、
406
多少
(
たせう
)
遠近
(
ゑんきん
)
に
名
(
な
)
を
知
(
し
)
られた
小商人
(
こあきんど
)
で
厶
(
ござ
)
います。
407
どうか、
408
私
(
わたし
)
の
宅
(
たく
)
へも
蓮歩
(
れんぽ
)
を
枉
(
ま
)
げ
下
(
くだ
)
さいまして、
409
家族
(
かぞく
)
一同
(
いちどう
)
に、
410
尊
(
たふと
)
き
教
(
をしへ
)
をお
授
(
さづ
)
け
下
(
くだ
)
さいます
様
(
やう
)
にお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します。
411
そして
私
(
わたし
)
は
此
(
この
)
結構
(
けつこう
)
な
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
を
独占
(
どくせん
)
せず、
412
力
(
ちから
)
のあらむ
限
(
かぎ
)
り、
413
万民
(
ばんみん
)
に
神徳
(
しんとく
)
を
宣伝
(
せんでん
)
さして
頂
(
いただ
)
く
考
(
かんが
)
へで
厶
(
ござ
)
いますから、
414
何卒
(
なにとぞ
)
宜
(
よろ
)
しくお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げます』
415
梅公
(
うめこう
)
『
実
(
じつ
)
に
結構
(
けつこう
)
なる
貴方
(
あなた
)
の
御
(
お
)
心掛
(
こころがけ
)
、
416
之
(
これ
)
も
大慈
(
だいじ
)
大悲
(
だいひ
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
引合
(
ひきあは
)
せで
厶
(
ござ
)
いませう。
417
之
(
これ
)
を
御縁
(
ごえん
)
に、
418
私
(
わたし
)
もスガの
港
(
みなと
)
へ
船
(
ふね
)
がつきましたら、
419
貴方
(
あなた
)
のお
宅
(
たく
)
へ
立
(
たち
)
よらして
頂
(
いただ
)
きませう。
420
思
(
おも
)
ひきや
神
(
かみ
)
の
仕組
(
しぐみ
)
の
真人
(
まさびと
)
は
421
御船
(
みふね
)
の
中
(
なか
)
にもくばりあるとは。
422
此
(
この
)
船
(
ふね
)
は
神
(
かみ
)
の
救
(
すく
)
ひの
船
(
ふね
)
ぞかし
423
世
(
よ
)
の
荒波
(
あらなみ
)
を
分
(
わ
)
けつつ
進
(
すす
)
めり』
424
(
大正一三・一二・二
新一二・二七
於祥雲閣
松村真澄
録)
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