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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第67巻(午の巻)
序文
総説
第1篇 美山梅光
第1章 梅の花香
第2章 思想の波
第3章 美人の腕
第4章 笑の座
第5章 浪の皷
第2篇 春湖波紋
第6章 浮島の怪猫
第7章 武力鞘
第8章 糸の縺れ
第9章 ダリヤの香
第10章 スガの長者
第3篇 多羅煩獄
第11章 暗狐苦
第12章 太子微行
第13章 山中の火光
第14章 獣念気
第15章 貂心暴
第16章 酒艶の月
第17章 晨の驚愕
第4篇 山色連天
第18章 月下の露
第19章 絵姿
第20章 曲津の陋呵
第21章 針灸思想
第22章 憧憬の美
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霊界物語
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第67巻(午の巻)
> 第3篇 多羅煩獄 > 第17章 晨の驚愕
<<< 酒艶の月
(B)
(N)
月下の露 >>>
第一七章
晨
(
あした
)
の
驚愕
(
きやうがく
)
〔一七一九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第67巻 山河草木 午の巻
篇:
第3篇 多羅煩獄
よみ(新仮名遣い):
たらはんごく
章:
第17章 晨の驚愕
よみ(新仮名遣い):
あしたのきょうがく
通し章番号:
1719
口述日:
1924(大正13)年12月28日(旧12月3日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年8月19日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
朝目が覚めると、シャカンナ、玄真坊、コルトンの3人はダリヤとバルギーが逃げ出したことを知る。
玄真坊は山賊たちを使って、2人の行方を探らんと、岩窟を出て行く。
シャカンナは、玄真坊がもうここへは戻らないだろうと考えた。そして、玄真坊、あるいはダリヤがこの岩窟の隠れ家の場所をタラハン国に漏らし、軍隊が攻めてくることを恐れた。
シャカンナは建物に火をつけ、200人の山賊の部下を打ち捨てて、娘のスバールとコルトンを連れ、さらに山奥の隠れ家へと移っていった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2018-05-15 14:44:26
OBC :
rm6717
愛善世界社版:
221頁
八幡書店版:
第12輯 112頁
修補版:
校定版:
224頁
普及版:
68頁
初版:
ページ備考:
001
十四日
(
いざよひ
)
の
月
(
つき
)
は
空
(
そら
)
に
白
(
しら
)
けて
星影
(
ほしかげ
)
薄
(
うす
)
く、
002
カアカアと
鳴
(
な
)
く
烏
(
からす
)
の
声
(
こゑ
)
に
東
(
あづま
)
の
空
(
そら
)
は
白
(
しら
)
み
初
(
そ
)
めた。
003
コルトンはふつと
目
(
め
)
を
醒
(
さ
)
まし
四辺
(
あたり
)
を
見
(
み
)
れば
緋縮緬
(
ひぢりめん
)
を
白
(
しろ
)
い
薄絹
(
うすぎぬ
)
で
包
(
つつ
)
んだやうなダリヤ
姫
(
ひめ
)
の
影
(
かげ
)
もなく、
004
羅漢面
(
らかんづら
)
の
醜男
(
ぶをとこ
)
バルギーの
姿
(
すがた
)
も
見
(
み
)
えない。
005
はて
不思議
(
ふしぎ
)
だと
訝
(
いぶ
)
かしみ
乍
(
なが
)
ら、
006
大親分
(
おほおやぶん
)
シャカンナの
寝顔
(
ねがほ
)
を
見
(
み
)
れば
額
(
ひたひ
)
に
モーイヌ
と
片仮名
(
かたかな
)
で
記
(
しる
)
してある。
007
玄真坊
(
げんしんばう
)
はと
振
(
ふ
)
り
返
(
かへ
)
つて
額
(
ひたひ
)
を
見
(
み
)
ればこれ
又
(
また
)
ネンネコ
と
女
(
をんな
)
の
筆蹟
(
ひつせき
)
で
記
(
しる
)
してある。
008
コルトンは
直
(
ただ
)
ちに
玄真坊
(
げんしんばう
)
を
揺
(
ゆ
)
り
起
(
おこ
)
し、
009
コル『もしもし、
010
天真坊
(
てんしんばう
)
様
(
さま
)
、
011
奥
(
おく
)
さまが
見
(
み
)
えなくなりました。
012
何卒
(
どうぞ
)
起
(
お
)
きて
下
(
くだ
)
さい。
013
……
親分
(
おやぶん
)
様
(
さま
)
、
014
大変
(
たいへん
)
です
早
(
はや
)
く
起
(
お
)
きて
下
(
くだ
)
さい。
015
大騒動
(
おほさうどう
)
が
起
(
おこ
)
りましたよ』
016
玄
(
げん
)
『
何
(
なに
)
、
017
奥
(
おく
)
が
見
(
み
)
えなくなつたと
云
(
い
)
ふのか、
018
そりや
大変
(
たいへん
)
だ。
019
大方
(
おほかた
)
パサパーナにでも
行
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
るのぢやないか、
020
よく
調
(
しら
)
べて
来
(
こ
)
い』
021
コル『それでも
親分
(
おやぶん
)
様
(
さま
)
の
顔
(
かほ
)
には
022
モーイヌと
女
(
をんな
)
の
筆蹟
(
ひつせき
)
で
記
(
しる
)
して
有
(
あ
)
り、
023
貴方
(
あなた
)
のお
顔
(
かほ
)
にはネンネコと
書
(
か
)
いてありますよ』
024
玄
(
げん
)
『ヤ、
025
如何
(
いかに
)
もシャカンナの
額
(
ひたひ
)
には
モーイヌ
、
026
お
前
(
まへ
)
の
額
(
ひたひ
)
にも
サル
、
027
カヘル
と
書
(
か
)
いてある。
028
俺
(
おれ
)
の
顔
(
かほ
)
に
ネンネコ
、
029
ハテな。
030
よく
寝
(
ね
)
て
居
(
ゐ
)
る
間
(
ま
)
に
此処
(
ここ
)
を
サル
、
031
イヌ
、
032
カヘル
と
云
(
い
)
ふ
謎
(
なぞ
)
だな。
033
これや、
034
大変
(
たいへん
)
だ。
035
彼奴
(
あいつ
)
を
逃
(
に
)
がしては、
036
岩窟
(
がんくつ
)
の
一大事
(
いちだいじ
)
だ。
037
秘密
(
ひみつ
)
の
漏洩
(
ろうえい
)
する
畏
(
おそ
)
れがある。
038
オイ、
039
コルトン、
040
乾児
(
こぶん
)
共
(
ども
)
を
督励
(
とくれい
)
して
後
(
あと
)
を
追
(
おつ
)
かけて
呉
(
く
)
れ』
041
コル『ハイ
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
042
大親分
(
おほおやぶん
)
さま、
043
貴方
(
あなた
)
どう
考
(
かんが
)
へられますか』
044
シャ『
彼奴
(
あいつ
)
に
逃
(
に
)
げられては
俺
(
おれ
)
も
些
(
ちつ
)
と
面喰
(
めんくら
)
はざるを
得
(
え
)
ない。
045
なぜ
貴様
(
きさま
)
監督
(
かんとく
)
をして
居
(
ゐ
)
ないのだ。
046
アタ
卑
(
いや
)
しい
047
酒
(
さけ
)
を
喰
(
くら
)
ひやがつて
同
(
おな
)
じ
様
(
やう
)
に
寝
(
ね
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるものか』
048
コルトンは
頭
(
あたま
)
を
掻
(
か
)
き
乍
(
なが
)
ら、
049
さも
云
(
い
)
ひ
悪
(
にく
)
さうに、
050
コル『ヘイ、
051
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り
僕
(
ぼく
)
、
052
拙者
(
せつしや
)
、
053
此
(
この
)
方
(
はう
)
、
054
私
(
わたくし
)
、
055
やつがれは
酒
(
さけ
)
の
嫌
(
きら
)
いな
下戸
(
げこ
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
056
あの
奇麗
(
きれい
)
な
奇麗
(
きれい
)
な
天真坊
(
てんしんぼう
)
の
奥様
(
おくさま
)
ダリヤ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
が、
057
コルトンさまコルトンさまと
妙
(
めう
)
な
目
(
め
)
をして
笑顔
(
ゑがほ
)
を
作
(
つく
)
り
桃色
(
ももいろ
)
の
頬辺
(
ほほぺた
)
に
笑
(
ゑみ
)
を
湛
(
たた
)
へ、
058
白
(
しろ
)
い
綺麗
(
きれい
)
な
象牙
(
ざうげ
)
細工
(
ざいく
)
のやうな、
059
お
手々
(
てて
)
で……コルトンさま、
060
さア
一杯
(
いつぱい
)
お
過
(
す
)
ごしなさい……と
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さつたものですから
061
ヘヽヽヽイ、
062
つい……その
調子
(
てうし
)
に
乗
(
の
)
つて
男振
(
をとこぶり
)
を
見
(
み
)
せてやらうと
思
(
おも
)
ふて、
063
つい、
064
ぐいぐいとやりました、
065
いや
呑
(
の
)
みました。
066
さうしたら
前後
(
ぜんご
)
も
知
(
し
)
らずに
酔
(
よ
)
ひ
潰
(
つぶ
)
れて
寝
(
ね
)
て
了
(
しま
)
つたのです。
067
どうぞ
御
(
ご
)
勘弁
(
かんべん
)
、
068
御
(
ご
)
了簡
(
れうけん
)
、
069
御
(
ご
)
赦免
(
しやめん
)
を
070
どうぞ
一重
(
ひとへ
)
に
二重
(
ふたへ
)
に
宜敷
(
よろし
)
くお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げます。
071
慎
(
つつし
)
んで
歎願
(
たんぐわん
)
致
(
いた
)
します』
072
シャ『エヽ、
073
貴様
(
きさま
)
はまだ
酔
(
よ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのか、
074
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふのだ。
075
一体
(
いつたい
)
姫
(
ひめ
)
をどうしたのだ』
076
コル『エー
何
(
ど
)
うも
斯
(
か
)
うもありませぬ。
077
何
(
ど
)
うしたか
解
(
わか
)
るやうなら、
078
決
(
けつ
)
して
取
(
と
)
り
逃
(
のが
)
しは
致
(
いた
)
しませぬ。
079
何
(
なん
)
でもバルギーと
手
(
て
)
に
手
(
て
)
を
取
(
と
)
つて、
080
遁走
(
とんそう
)
して
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
したかも
知
(
し
)
れませぬよ』
081
玄
(
げん
)
『チエ、
082
エエ
扨
(
さ
)
ても
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かぬ
野郎
(
やらう
)
だな。
083
サア
早
(
はや
)
く
乾児
(
こぶん
)
共
(
ども
)
を
叩
(
たた
)
き
起
(
おこ
)
し
084
四方
(
しはう
)
に
手配
(
てくば
)
りをなし、
085
ダリヤ
姫
(
ひめ
)
を
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
つて
呉
(
く
)
れ』
086
コル『ヘン、
087
偉
(
えら
)
さうに
云
(
い
)
ふない。
088
お
前
(
まへ
)
と
俺
(
おれ
)
とは
同役
(
どうやく
)
ぢやないか。
089
自分
(
じぶん
)
の
嬶
(
かか
)
が
逐電
(
ちくでん
)
して
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
したと
云
(
い
)
ふて、
090
さう
俺
(
おれ
)
にケンケンと
云
(
い
)
ふものぢやないわ。
091
嬶
(
かか
)
が
探
(
さが
)
して
欲
(
ほ
)
しけれや、
092
……どうか
兄弟
(
きやうだい
)
捜索
(
そうさく
)
して
探
(
さが
)
しに
行
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れないか……と、
093
御
(
ご
)
依頼
(
いらい
)
して
頼
(
たの
)
まないのだ。
094
俺
(
おれ
)
は、
095
此
(
この
)
方
(
はう
)
は、
096
拙者
(
せつしや
)
は、
097
僕
(
ぼく
)
はお
前
(
まへ
)
の
命令
(
めいれい
)
の
云
(
い
)
ひつけは
聞
(
き
)
いて
承
(
うけたま
)
はる
権利
(
けんり
)
義務
(
ぎむ
)
が
無
(
な
)
いのだ。
098
俺
(
おれ
)
は、
099
僕
(
ぼく
)
は、
100
拙者
(
せつしや
)
は
大親分
(
おほおやぶん
)
の
命令
(
めいれい
)
の
云
(
い
)
ひつけを
聞
(
き
)
いて
活動
(
くわつどう
)
して
働
(
はたら
)
くのみだ。
101
大親分
(
おほおやぶん
)
の
命令
(
めいれい
)
の
云
(
い
)
ひつけさへあれば
何時
(
いつ
)
何時
(
なんどき
)
でも、
102
尻
(
しり
)
をからげて
出発
(
しゆつぱつ
)
して
出
(
で
)
かけるのだ。
103
ヘン、
104
偉
(
えら
)
さうに
云
(
い
)
ふない。
105
頓馬
(
とんま
)
野郎
(
やらう
)
奴
(
め
)
、
106
嬶
(
かか
)
取
(
と
)
られの
腰抜
(
こしぬ
)
け
奴
(
め
)
、
107
阿呆
(
あはう
)
、
108
馬鹿
(
ばか
)
、
109
頓痴気
(
とんちき
)
野郎
(
やらう
)
』
110
シャ『オイ、
111
コルトン、
112
貴様
(
きさま
)
は
未
(
ま
)
だ
酔
(
よひ
)
が
醒
(
さ
)
めて
居
(
ゐ
)
ないと
見
(
み
)
える。
113
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
114
かうしては
居
(
ゐ
)
られまい。
115
早
(
はや
)
く
部下
(
ぶか
)
を
叩
(
たた
)
き
起
(
おこ
)
し、
116
捜索
(
そうさく
)
だ
捜索
(
そうさく
)
だ』
117
コル『もし
親分
(
おやぶん
)
、
118
親方
(
おやかた
)
、
119
旦那
(
だんな
)
、
120
大頭目
(
だいとうもく
)
、
121
それ
程
(
ほど
)
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
にや
及
(
およ
)
びますまい。
122
親分
(
おやぶん
)
の
女房
(
にようばう
)
の
嬶
(
かか
)
が
逃走
(
たうそう
)
して
逃
(
に
)
げたのぢやあるまいし、
123
嬶
(
かか
)
の
所在
(
ありか
)
を
捜索
(
そうさく
)
して
探
(
さが
)
すのは、
124
天帝
(
てんてい
)
の
化神
(
けしん
)
、
125
天来
(
てんらい
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
、
126
天真坊
(
てんしんばう
)
さまの
双肩
(
さうけん
)
の
両肩
(
りやうかた
)
にふりかかつて
居
(
ゐ
)
る
責任
(
せきにん
)
でせう』
127
シャ『チヨツ、
128
仕方
(
しかた
)
のない
野郎
(
やらう
)
だな。
129
それだから
常
(
つね
)
から
酒
(
さけ
)
を
喰
(
くら
)
ふなと
云
(
い
)
ふのだ。
130
貴様
(
きさま
)
は
酒
(
さけ
)
を
呑
(
の
)
まないと
云
(
い
)
ふから
131
抜擢
(
ばつてき
)
して
重
(
おも
)
く
用
(
もち
)
ゐて
居
(
ゐ
)
たのに
何
(
なん
)
の
態
(
ざま
)
だ。
132
ダリヤ
姫
(
ひめ
)
の
手
(
て
)
で
額
(
ひたひ
)
にサル、
133
カヘルと
云
(
い
)
ふ
字
(
じ
)
を
書
(
か
)
かれる
迄
(
まで
)
知
(
し
)
らずに
寝
(
ね
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるか、
134
馬鹿
(
ばか
)
』
135
コル『
馬鹿
(
ばか
)
でも
何
(
なん
)
でもよろしい、
136
あんな
美人
(
びじん
)
に
優
(
やさ
)
しう
云
(
ゐ
)
ふて
貰
(
もら
)
へば
137
男子
(
だんし
)
たるもの
天下
(
てんか
)
の
馬鹿
(
ばか
)
にならざるを
得
(
え
)
ぬぢやありませぬか。
138
それよりも
親分
(
おやぶん
)
、
139
お
前
(
まへ
)
さまの
額部
(
がくぶ
)
の
額口
(
ひたひぐち
)
にモーイヌとダリヤさまの
筆蹟
(
ひつせき
)
で
大書
(
たいしよ
)
して
書
(
か
)
いてありますぜ。
140
そんな
悪戯
(
いたづら
)
をしられても
分
(
わか
)
らぬ
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
、
141
なぜ
親方
(
おやかた
)
も
熟睡
(
じゆくすゐ
)
して
睡
(
ねむ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのですか。
142
天真
(
てんしん
)
さまだつてさうぢやないか。
143
あんな
美人
(
びじん
)
のシャンの
奥
(
おく
)
、
144
女房
(
にようばう
)
の
嬶
(
かか
)
を
持
(
も
)
ち
乍
(
なが
)
ら
心
(
こころ
)
をゆるし
安心
(
あんしん
)
して
脂下
(
やにさが
)
つて
惚
(
のろ
)
けて
居
(
ゐ
)
るものだから、
145
アタ
阿呆
(
あはう
)
らしい、
146
馬鹿
(
ばか
)
らしい、
147
ネンネコなんどと
落書
(
らくがき
)
され、
148
まるで
顔面
(
がんめん
)
の
顔
(
かほ
)
は
幼稚園
(
えうちえん
)
の
生徒
(
せいと
)
の
草紙
(
さうし
)
見
(
み
)
たやうなものだ。
149
些
(
ちつ
)
と
確
(
しつか
)
りなさいませ』
150
玄
(
げん
)
『エヽ
仕方
(
しかた
)
がない、
151
かうなれや
自分
(
じぶん
)
もグヅグヅしては
居
(
を
)
れまい。
152
サアこれから
御
(
おん
)
大
(
たい
)
自
(
みづか
)
ら
捜索
(
そうさく
)
と
出
(
で
)
かけよう。
153
シャカンナ
殿
(
どの
)
、
154
何
(
ど
)
うか
部下
(
てした
)
をお
貸
(
か
)
し
下
(
くだ
)
さい』
155
コル『それや、
天真
(
てんしん
)
さま
156
御尤
(
ごもつとも
)
です。
157
肝腎
(
かんじん
)
の
奥
(
おく
)
、
158
女房
(
にようばう
)
の
嬶
(
かか
)
が
韜晦
(
とうくわい
)
して
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
して
居
(
ゐ
)
るのに、
159
さう
依然
(
いぜん
)
とじつとしては
居
(
を
)
れますまい。
160
サア
私
(
わたし
)
も
手伝
(
てつだ
)
ひますからダリヤさまの
所在
(
ありか
)
を
捜索
(
そうさく
)
に
出
(
で
)
かけませう。
161
あの
優
(
やさ
)
しい
顔
(
かほ
)
を、
162
僕
(
ぼく
)
、
163
俺
(
おれ
)
、
164
私
(
わたし
)
だつて
今一度
(
いまいちど
)
拝顔
(
はいがん
)
して
拝
(
をが
)
みたいからな、
165
イヒヽヽヽ』
166
シャカンナは
部下
(
ぶか
)
の
集
(
あつ
)
まつて
居
(
ゐ
)
るバラック
建
(
だて
)
の
土間
(
どま
)
に
這入
(
はい
)
つて
見
(
み
)
ると、
167
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
落花
(
らくくわう
)
狼藉
(
らうぜき
)
、
168
徳利
(
とくり
)
を
枕
(
まくら
)
にして
居
(
ゐ
)
るもの、
169
盃
(
さかづき
)
を
噛
(
か
)
んで
喰
(
く
)
はへて
寝
(
ね
)
て
居
(
ゐ
)
るもの、
170
オチコやポホラを
丸出
(
まるだ
)
しにしてふん
延
(
の
)
びて
居
(
ゐ
)
るもの、
171
全然
(
まるきり
)
小供
(
こども
)
の
玩具箱
(
おもちやばこ
)
をぶち
開
(
あ
)
けたやうな
光景
(
くわうけい
)
である。
172
シャカンナは
大喝
(
だいかつ
)
一声
(
いつせい
)
173
やや
怒気
(
どき
)
を
含
(
ふく
)
み
乍
(
なが
)
ら、
174
シャ『これや、
175
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
起
(
お
)
きぬか。
176
もう
夜
(
よ
)
が
明
(
あ
)
けて
居
(
ゐ
)
るぢやないか。
177
この
有様
(
ありさま
)
は
何
(
なん
)
だ。
178
お
館
(
やかた
)
には
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
が
突発
(
とつぱつ
)
して
居
(
ゐ
)
るぞ。
179
早
(
はや
)
く
目
(
め
)
を
醒
(
さ
)
まして
180
起
(
お
)
きた
起
(
お
)
きた』
181
コルトンは
言葉
(
ことば
)
の
尾
(
を
)
について
威猛高
(
ゐたけだか
)
になり、
182
肩
(
かた
)
迄
(
まで
)
四角
(
しかく
)
にして、
183
未
(
ま
)
だ
昨夜
(
ゆうべ
)
の
酒気
(
しゆき
)
が
残
(
のこ
)
つて
舌
(
した
)
の
根
(
ね
)
が
自由
(
じいう
)
に
運転
(
うんてん
)
し
兼
(
か
)
ねる
奴
(
やつ
)
を
無理
(
むり
)
に
使
(
つか
)
ひながら、
184
コル『これや、
185
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
何
(
なに
)
をして
居
(
ゐ
)
るのか。
186
いつ
迄
(
まで
)
睡眠
(
すゐみん
)
して
睡
(
ねむ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのか。
187
この
態
(
ざま
)
は
何
(
なん
)
だ。
188
早
(
はや
)
く
起床
(
きしやう
)
して
起
(
お
)
きぬか。
189
困
(
こま
)
つた
野郎
(
やらう
)
だな。
190
もはや
暁天
(
げうてん
)
の
夜明
(
よあ
)
けだぞ。
191
昨夜
(
ゆうべ
)
お
出
(
いで
)
になつた
天真坊
(
てんしんばう
)
の
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
の
奥
(
おく
)
、
192
女房
(
にようばう
)
の
嬶
(
かか
)
が
逃走
(
たうそう
)
して
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
し、
193
行方
(
ゆくへ
)
不明
(
ふめい
)
に
分
(
わか
)
らなくなつたのだ。
194
サア
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く
用意
(
ようい
)
々々
(
ようい
)
』
195
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も、
196
鼈
(
すつぽん
)
に
尻
(
けつ
)
をいかれたやうな、
197
寝
(
ね
)
て
居
(
ゐ
)
る
間
(
ま
)
に
睾丸
(
きんたま
)
を
抜
(
ぬ
)
かれたやうな
妙
(
めう
)
な
面付
(
つらつき
)
をして、
198
アヽヽヽと
焜爐
(
こんろ
)
のやうな
口
(
くち
)
を
開
(
あ
)
けて
猫
(
ねこ
)
のやうな
手水
(
てうづ
)
をつかつたり、
199
狼狽
(
うろた
)
へて
徳利
(
とくり
)
を
抱
(
かか
)
へ
外
(
そと
)
へ
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
す
奴
(
やつ
)
、
200
着物
(
きもの
)
を
逆
(
さか
)
さまに
着
(
き
)
て
狼狽
(
うろた
)
へる
奴
(
やつ
)
、
201
何
(
なん
)
とも
形容
(
けいよう
)
し
難
(
がた
)
い
光景
(
くわうけい
)
であつた。
202
玄真坊
(
げんしんばう
)
は
二百
(
にひやく
)
の
部下
(
ぶか
)
を
借
(
か
)
り
受
(
う
)
け
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
に
手配
(
てくば
)
りし
乍
(
なが
)
ら、
203
ダリヤ
姫
(
ひめ
)
の
行方
(
ゆくへ
)
を
捜索
(
そうさく
)
すべく
顔
(
かほ
)
に
血
(
ち
)
を
漲
(
みなぎ
)
らして
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く。
204
後
(
あと
)
にはシャカンナと、
205
今年
(
こんねん
)
十五
(
じふご
)
才
(
さい
)
になつた
娘
(
むすめ
)
のスバール
姫
(
ひめ
)
とコルトンの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
であつた。
206
シャ『オイ、
207
コルトン、
208
過
(
す
)
ぎ
去
(
さ
)
つた
事
(
こと
)
は
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
小言
(
こごと
)
を
云
(
い
)
つても
詮
(
せん
)
無
(
な
)
い
事
(
こと
)
だが、
209
約
(
つ
)
まらぬ
事
(
こと
)
を
仕出
(
しで
)
かしたぢやないか。
210
さうして、
211
バルギーはお
前
(
まへ
)
どうなつたと
思
(
おも
)
ふ。
212
彼奴
(
あいつ
)
反逆心
(
はんぎやくしん
)
を
起
(
おこ
)
してダリヤを
何処
(
どこ
)
かへ
連
(
つ
)
れ
出
(
だ
)
し、
213
自分
(
じぶん
)
が
天真坊
(
てんしんぼう
)
の
女房
(
にようばう
)
を
横取
(
よこどり
)
する
考
(
かんが
)
へであるまいか
喃
(
のう
)
』
214
コル『ヤ、
215
親方
(
おやかた
)
様
(
さま
)
、
216
決
(
けつ
)
して
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
の
御
(
お
)
心遣
(
こころづかひ
)
は
要
(
い
)
りませぬ。
217
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
ナイスの
美人
(
びじん
)
のシャンのダリヤ
姫
(
ひめ
)
だつて、
218
あんな
ヒヨツトコ
面
(
づら
)
には
恋慕
(
れんぼ
)
して
惚
(
ほ
)
れる
気遣
(
きづかひ
)
はありませぬよ。
219
又
(
また
)
仮
(
か
)
りに、
220
よしんばバルギーが
恋慕
(
れんぼ
)
して
惚
(
ほれ
)
た
所
(
ところ
)
で、
221
ダリヤ
姫
(
ひめ
)
は
諾
(
うん
)
と
首
(
くび
)
を
縦
(
たて
)
に
振
(
ふ
)
つて
承諾
(
しようだく
)
して
靡
(
なび
)
く
気遣
(
きづかひ
)
はありませぬ。
222
必
(
かなら
)
ず
屹度
(
きつと
)
要
(
えう
)
するに
約
(
つ
)
まり
即
(
すなは
)
ちダリヤ
姫
(
ひめ
)
に
甘
(
うま
)
く
誑
(
だま
)
され、
223
荷物
(
にもつ
)
でも
持
(
も
)
たされて
随行
(
ずいかう
)
してお
伴
(
とも
)
に
行
(
ゆ
)
きよつたのですよ。
224
何
(
なん
)
だか
彼女
(
あいつ
)
の
視線
(
しせん
)
の
目遣
(
めつか
)
いが
可怪
(
をか
)
しいと
思
(
おも
)
つて
居
(
を
)
りました』
225
シャ『オイ、
226
もう
斯
(
か
)
うなつちや
此処
(
ここ
)
に
居
(
を
)
る
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ない。
227
まさかの
時
(
とき
)
の
用意
(
ようい
)
としてあの
山奥
(
やまおく
)
に
建
(
た
)
ておいたあの
庵
(
いほり
)
に
行
(
い
)
つて
匿
(
かく
)
れようではないか。
228
天真坊
(
てんしんばう
)
だつてあの
女
(
をんな
)
の
居
(
ゐ
)
ない
限
(
かぎ
)
り、
229
此処
(
ここ
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
る
気遣
(
きづかひ
)
はない。
230
さうすりや、
231
よしやダリヤが
云
(
い
)
はないだつても
天真坊
(
てんしんぼう
)
が
云
(
い
)
ふに
定
(
きま
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
232
さうして
沢山
(
たくさん
)
の
乾児
(
こぶん
)
が
居
(
ゐ
)
ても
碌
(
ろく
)
な
奴
(
やつ
)
は
一人
(
ひとり
)
も
無
(
な
)
い。
233
中
(
なか
)
にも
少
(
すこ
)
し
まし
なのは
貴様
(
きさま
)
とバルギー
位
(
ぐらゐ
)
の
者
(
もの
)
だが、
234
それでさへ、
235
こんな
へま
をやるのだから
236
俺
(
おれ
)
の
大望
(
たいまう
)
も
到底
(
たうてい
)
成功
(
せいこう
)
しない。
237
グヅグヅして
居
(
ゐ
)
るとカラピン
王
(
わう
)
の
耳
(
みみ
)
に
入
(
い
)
り
238
俺
(
おれ
)
の
命
(
いのち
)
迄
(
まで
)
取
(
と
)
りに
来
(
く
)
るかも
知
(
し
)
れない。
239
サア
此
(
こ
)
のバラック
式
(
しき
)
の
建物
(
たてもの
)
に
火
(
ひ
)
をつけて
焼払
(
やきはら
)
ひ、
240
貴様
(
きさま
)
と
俺
(
おれ
)
とこの
娘
(
こ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
、
241
三
(
さん
)
里
(
り
)
山奥
(
やまおく
)
の
隠家
(
かくれが
)
に
行
(
ゆ
)
かう』
242
コル『ハイ、
243
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
に
成
(
な
)
つたものですな。
244
併
(
しか
)
し
天真坊
(
てんしんぼう
)
は
天真坊
(
てんしんぼう
)
として
自由
(
じいう
)
行動
(
かうどう
)
の
勝手
(
かつて
)
なやり
方
(
かた
)
をするとした
所
(
ところ
)
で、
245
彼奴
(
あいつ
)
は
放任
(
はうにん
)
して
打
(
う
)
つちやつておけば
宜敷
(
よろし
)
いが、
246
二百
(
にひやく
)
人
(
にん
)
の
部下
(
ぶか
)
の
手下
(
てした
)
共
(
ども
)
は
忽
(
たちま
)
ち
路頭
(
ろとう
)
に
迷
(
まよ
)
ふぢやありませぬか。
247
親分
(
おやぶん
)
は
部下
(
ぶか
)
の
生命
(
せいめい
)
の
命
(
いのち
)
を
守
(
まも
)
つてやる
決心
(
けつしん
)
のお
心
(
こころ
)
は
無
(
な
)
いのですか』
248
シャ『もはや
今日
(
こんにち
)
となつては
可愛
(
かあい
)
さうでも
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
い。
249
第一
(
だいいち
)
俺
(
おれ
)
の
生命
(
いのち
)
が
危
(
あやふ
)
くなる。
250
サア
貴様
(
きさま
)
と
俺
(
おれ
)
と
娘
(
むすめ
)
と
三
(
さん
)
人
(
にん
)
此
(
この
)
館
(
やかた
)
に
火
(
ひ
)
をつけて
此処
(
ここ
)
を
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
さう。
251
さうすれば、
252
仮令
(
たとへ
)
カラピン
王
(
わう
)
が
沢山
(
たくさん
)
の
兵
(
へい
)
を
持
(
も
)
つて
攻
(
せ
)
めて
来
(
き
)
ても
拍子
(
ひやうし
)
ぬけがして、
253
「ヤア
山賊
(
さんぞく
)
は
何処
(
どこ
)
かへ
逃
(
に
)
げた」
位
(
ぐらゐ
)
で
帰
(
かへ
)
るだらう。
254
乾児
(
こぶん
)
の
奴
(
やつ
)
等
(
ら
)
も
帰
(
かへ
)
つて
見
(
み
)
た
所
(
ところ
)
で
住家
(
すみか
)
が
無
(
な
)
ければ
255
自然
(
しぜん
)
に
何処
(
どこ
)
かへ
散
(
ち
)
るだらう』
256
コル『
親分
(
おやぶん
)
、
257
仮令
(
たとへ
)
家屋
(
かをく
)
の
家
(
いへ
)
は
焼棄
(
せうき
)
して
焼
(
や
)
いて
了
(
しま
)
つた
所
(
ところ
)
で、
258
岩窟
(
いはや
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
が
残
(
のこ
)
つて
居
(
ゐ
)
る
以上
(
いじやう
)
は、
259
又
(
また
)
乾児
(
こぶん
)
の
奴
(
やつ
)
等
(
ら
)
が
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
て
住居
(
ぢうきよ
)
して
住
(
す
)
むかも
知
(
し
)
れませぬ。
260
岩屋
(
いはや
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
を
破壊
(
はくわい
)
して
叩
(
たた
)
き
破
(
やぶ
)
る
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
きますまい。
261
焼棄
(
せうき
)
して
焼
(
や
)
く
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
きますまい。
262
此
(
この
)
点
(
てん
)
は
如何
(
いかが
)
してどうしたらよいのでせう』
263
シャ『
後
(
あと
)
は
野
(
の
)
となれ
山
(
やま
)
となれだ。
264
サア
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
265
吾
(
わが
)
身
(
み
)
が
危
(
あぶ
)
ない、
266
此処
(
ここ
)
を
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
らう。
267
オイ、
268
スバール
嬢
(
ぢやう
)
、
269
お
父
(
とう
)
さまは
270
いつもの
隠
(
かく
)
れ
家
(
が
)
へ
転宅
(
てんたく
)
するから
271
お
前
(
まへ
)
もその
用意
(
ようい
)
をせい』
272
スバール『お
父
(
とう
)
さま、
273
妾
(
わたし
)
いつ
迄
(
まで
)
も
此処
(
ここ
)
に
居
(
を
)
り
度
(
た
)
いのよ。
274
山水
(
さんすい
)
の
景色
(
けしき
)
が
好
(
よ
)
いからねえ』
275
シャ『ウン』
276
コル『これこれお
嬢様
(
ぢやうさま
)
、
277
千騎
(
せんき
)
一騎
(
いつき
)
の
此
(
この
)
場合
(
ばあひ
)
、
278
そんな
緩慢
(
くわんまん
)
な
緩
(
ゆつく
)
りした
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つて
貰
(
もら
)
つちや
誠
(
まこと
)
に
困難
(
こんなん
)
して
困
(
こま
)
りますよ。
279
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
出立
(
しゆつたつ
)
して
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
でる
事
(
こと
)
にしませう。
280
向
(
むか
)
ふの
朝倉谷
(
あさくらだに
)
に
往
(
ゆ
)
けば、
281
此処
(
ここ
)
よりも
幾層倍
(
いくそうばい
)
勝
(
ま
)
して
風景
(
ふうけい
)
の
景色
(
けしき
)
が
宜敷
(
よろし
)
い。
282
サア
参
(
まゐ
)
りませう』
283
スバ『お
父
(
とう
)
さま、
284
どうしても
行
(
ゆ
)
かなくちやならないの。
285
私
(
わたし
)
もう
暫
(
しばら
)
く
此処
(
ここ
)
に
居
(
を
)
り
度
(
た
)
いのだけどなア。
286
もう
十日
(
とをか
)
もすればダリヤの
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
くのだもの。
287
あの
美
(
うつく
)
しいダリヤの
花
(
はな
)
の
唇
(
くちびる
)
に
吸
(
す
)
ひ
付
(
つ
)
いて
遊
(
あそ
)
びたいのよ』
288
コル『エヽお
嬢
(
ぢやう
)
さま、
289
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
気楽
(
きらく
)
な
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
るのだ。
290
グヅグヅして
居
(
ゐ
)
ると
吾々
(
われわれ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
生命
(
せいめい
)
の
命
(
いのち
)
が
無
(
な
)
くなつて
了
(
しま
)
ひますがな』
291
スバ『
何故
(
なぜ
)
夫
(
それ
)
程
(
ほど
)
292
お
父
(
とう
)
さまやお
前
(
まへ
)
は
怖
(
こは
)
がるの、
293
二百
(
にひやく
)
人
(
にん
)
の
乾児
(
こぶん
)
が
居
(
ゐ
)
るぢやないか。
294
何
(
なに
)
が
来
(
き
)
たつて
是
(
これ
)
丈
(
だ
)
け
居
(
を
)
れば
防
(
ふせ
)
げるぢやないか。
295
あんな
山奥
(
やまおく
)
の
小
(
ちひ
)
さい
庵
(
いほり
)
へ
行
(
い
)
つて
住
(
す
)
むのは
嫌
(
いや
)
だわ』
296
コル『
家
(
いへ
)
が
小
(
ちひ
)
さうて
嫌
(
いや
)
なら、
297
大
(
おほ
)
きな
家屋
(
かをく
)
の
家
(
いへ
)
を、
298
僕
(
ぼく
)
、
299
私
(
わたし
)
、
300
拙者
(
せつしや
)
が
建築
(
けんちく
)
して
建
(
た
)
てて
上
(
あ
)
げますわな』
301
スバ『そんなら
302
一寸
(
ちよつと
)
まアお
父
(
とう
)
さまと
一緒
(
いつしよ
)
に
行
(
い
)
つて
見
(
み
)
ませう。
303
嫌
(
いや
)
になつたら
又
(
また
)
此処
(
ここ
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
ますよ』
304
コル『ヤア、
305
占
(
しめ
)
た。
306
親分
(
おやぶん
)
さま、
307
もう
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
です。
308
お
嬢
(
ぢやう
)
さまの
娘
(
むすめ
)
さまが
行
(
ゆ
)
くと
仰有
(
おつしや
)
いました。
309
どうぞ
歓喜
(
くわんき
)
して
喜
(
よろこ
)
んで
下
(
くだ
)
さい』
310
これより
手近
(
てぢか
)
の
必要品
(
ひつえうひん
)
を
取
(
とり
)
纏
(
まと
)
め、
311
コルトンは
大風呂敷
(
おほぶろしき
)
に
包
(
つつ
)
んで
背
(
せ
)
に
負
(
お
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
312
主従
(
しゆじゆう
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
嶮
(
けは
)
しき
谷川
(
たにがは
)
の
辺
(
ほとり
)
を
辿
(
たど
)
つて、
313
三
(
さん
)
里
(
り
)
山奥
(
やまおく
)
の
茅屋
(
ばうをく
)
に
隠
(
かく
)
れる
事
(
こと
)
となつた。
314
(
大正一三・一二・三
新一二・二八
於祥雲閣
加藤明子
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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(B)
(N)
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