霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は従来バージョンをお使い下さい| サブスクのお知らせ

第二〇章 曲津(まつ)陋呵(ろうか)〔一七二二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第67巻 山河草木 午の巻 篇:第4篇 山色連天 よみ(新仮名遣い):さんしょくれんてん
章:第20章 曲津の陋呵 よみ(新仮名遣い):まつのろうか 通し章番号:1722
口述日:1924(大正13)年12月29日(旧12月4日) 口述場所:祥雲閣 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年8月19日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
一方、タラハン城内では、王、左守、右守をはじめとする重臣たちが、太子とアリナの行方不明について評定をしていた。
左守ガンヂーは息子アリナの不徳を詫びるが、王も、太子が日ごろ城内の生活に不満を抱いている様を嘆き、かつての自分と王妃の失政を悔いる。
右守は、今回の事件は左守の倅アリナに責任があり、その親たるガンヂーともども処分を受けなければならないと主張する。
左守は責任を感じて自殺しようとするが、王女バンナに止められる。
右守は、実は左守を追い落として自分が左守の地位につき、太子を廃して王女に自分の弟エールを娶わせ、政権を握ろうとの魂胆であった。
右守は自分の野望を遂げんと、太子が日ごろ王制を嫌っていることを挙げ、王制を廃して共和制を敷こうと提案する。
しかしながらこの発言は王を始め重臣たちを怒らせてしまい、左守は怒りのあまり右守に切りつける。
左守は重臣のハルチンに止められ、その間に右守は逃げ去ってしまう。右守は城から逃げ出すときに、ちょうど帰ってきたアリナとぶつかって階段を転げ落ち、足を折りながら家へ逃げ去った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2018-05-24 00:09:06 OBC :rm6720
愛善世界社版:264頁 八幡書店版:第12輯 128頁 修補版: 校定版:267頁 普及版:68頁 初版: ページ備考:
001 タラハン城内(じやうない)カラピン(わう)御前(みまへ)左守(さもり)002右守(うもり)(はじ)めとし、003数多(あまた)重臣(ぢうしん)薬鑵頭(やくわんあたま)湯気(ゆげ)()太子(たいし)()らぬ()殿内(でんない)より姿(すがた)(かく)し、004踪跡(そうせき)をくらました大椿事(だいちんじ)につき、005いろいろと()からびた(あたま)から(くだ)らぬ智慧(ちゑ)(しぼ)()して006小田原(をだはら)評定(ひやうぢやう)(はじ)まつて()る。
007カラピン(わう)(とき)左守(さもり)殿(どの)008日頃(ひごろ)憂鬱(いううつ)(しづ)んだ(わが)太子(たいし)今日(けふ)三日(みつか)になつても、009まだ(かへ)つて()ないのは、010どうしたものだらう。011(なに)か、012いい(かんが)へはつかないかのう』
013左守(さもり)(ガンヂー)『ハイ、014(まこと)(おそ)()つた次第(しだい)(ござ)ります。015殿中(でんちう)監督(かんとく)(にん)にあり(なが)ら、016(この)老臣(らうしん)017大王(だいわう)(たい)(たてまつ)り、018()(もつ)(しや)するより(ほか)(みち)(ござ)いませぬ』
019(わう)其方(そち)(せがれ)も、020まだ(かへ)つて()ぬか。021()(おも)ふに、022日頃(ひごろ)太子(たいし)()()り、023其方(そち)(せがれ)とどつかの山奥(やまおく)()(まよ)ふてゐるのではあるまいかのう』
024()不束(ふつつか)(せがれ)()025太子(たいし)(さま)のお言葉(ことば)(あま)へ、026いつも(おそ)(おほ)くも友人(いうじん)気取(きど)りになつて()()ひます。027その不遜(ふそん)行為(かうゐ)を、028(しん)(つね)(うれ)ひ、029いろいろと折檻(せつかん)(いた)警告(けいこく)(あた)へて()りますが、030(ふた)()には薬鑵頭(やくわんあたま)だの、031骨董品(こつとうひん)だの、032(とこ)置物(おきもの)だのと、033罵詈(ばり)嘲笑(てうせう)(たくま)しふし、034太子(たいし)(さま)()寵愛(ちようあい)(かさ)()(おや)()(こと)()きませぬ。035(まこと)(こま)つた不忠(ふちう)不義(ふぎ)痴者(しれもの)(ござ)います。036もし今度(こんど)(さいは)ひに(せがれ)(かへ)りますれば密室(みつしつ)監禁(かんきん)し、037よく(もの)道理(だうり)()()かせ、038それでも()()れねば039(ただ)一人(ひとり)(せがれ)なれども王家(わうけ)のため、0391国家(こくか)のため、040(しん)()にかけて、0401(せがれ)(いのち)()ち、041(くに)(わざはひ)(のぞ)覚悟(かくご)(ござ)います。042どうか(しばら)()猶予(いうよ)(ねが)ひます。043(いづ)(その)(うち)には無事(ぶじ)()帰城(きじやう)(あそ)ばすで(ござ)いませうから』
044(わう)『ヤ、045そちの(せがれ)新教育(しんけういく)とやらを()け、046余程(よほど)性質(たち)(わる)くなつて()たやうだ。047(しか)し、048(わが)太子(たいし)太子(たいし)だ。049平民(へいみん)主義(しゆぎ)だとか、050平等(べうどう)主義(しゆぎ)だとか、051国体(こくたい)(あは)ない囈言(たはごと)(まを)し、052貴族(きぞく)生活(せいくわつ)()()らぬ(など)駄々(だだ)をこね、053日夜(にちや)不足(ふそく)さうな面貌(めんばう)(あら)はし、054(わが)注意(ちうい)馬耳(ばじ)東風(とうふう)()(なが)し、055()におへない人物(じんぶつ)となつて(しま)つた。056(これ)(まつた)()(いち)()悪霊(あくれい)(たましひ)()せられ057天地(てんち)()れざる残虐(ざんぎやく)(つみ)(をか)したその(むく)いで、058老後(らうご)()(もつ)て、059あるにあられぬ(こころ)苦労(くらう)をさせられてゐるのだらう。060アヽどうなり()くも宿世(すぐせ)因縁(いんねん)だ。061もう左守(さもり)殿(どの)062あまり(あたま)(いた)めて()れな。063()太子(たいし)(こと)只今(ただいま)(かぎ)断念(だんねん)する』
064()(おそ)(おほ)殿下(でんか)のお言葉(ことば)065臣下(しんか)吾々(われわれ)066(なん)(まを)してお(わび)をすれば()いやら、067(じつ)恐懼(きようく)(いた)りで(ござ)います』
068(わう)右守(うもり)殿(どの)069太子(たいし)(かへ)らぬとすれば、070(なん)とか善後策(ぜんごさく)(かう)じなくてはなるまい。071其方(そち)意見(いけん)()()いものだ。072かかる一大事(いちだいじ)場合(ばあひ)073(すこ)しも遠慮(ゑんりよ)()らないから、074其方(そなた)(こころ)(そこ)忌憚(きたん)なく打明(うちあ)けて()れよ』
075右守(うもり)(サクレンス)『ハイ(おそ)()りまして(ござ)います。076太子(たいし)(さま)()出奔(しゆつぽん)以来(いらい)077家中(かちう)面々(めんめん)四方(しはう)八方(はつぱう)()し、078殿下(でんか)()行衛(ゆくゑ)捜索(そうさく)(いた)させましたが、079(いま)(なん)吉報(きつぱう)()ませぬ。080今日(けふ)三日(みつか)三夜(みよさ)081(この)右守(うもり)(こころ)(いた)め、0811(むね)をなやまし、082食事(しよくじ)(ろく)にとれませぬ。083(ひるがへ)つて国内(こくない)事情(じじやう)(かへり)みれば、084(いた)(ところ)民衆(みんしう)不平(ふへい)(こゑ)085いつ大事(だいじ)勃発(ぼつぱつ)するかも()れない形勢(けいせい)になつて()ります。086(くは)ふるにバラモン(ぐん)襲来(しふらい)するとの(うはさ)(かまび)すしく、087人心(じんしん)恟々(きようきよう)として山川(さんせん)草木(さうもく)(いろ)(うしな)ひ、088(まさ)阿鼻(あび)叫喚(けうくわん)地獄(ぢごく)現出(げんしゆつ)せむとするの形勢(けいせい)(ござ)います。089()くの(ごと)国家(こくか)多事(たじ)多難(たなん)(さい)太子(たいし)(きみ)()出奔(しゆつぽん)(あそ)ばされた(こと)090(わが)国家(こくか)にとつては、091痩児(やせご)蓮根(はすね)(まを)さうか、092泣面(なきづら)(はち)(まを)さうか、093(じつ)(おそ)(おほ)次第(しだい)(ござ)います。094風前(ふうぜん)燈火(ともしび)にも(ひと)しきタラハン(ごく)形勢(けいせい)095国家(こくか)未倒(みたう)(すく)ひ、096大廈(たいか)(くづ)れむとするを(ささ)ふるのは、097倒底(たうてい)一木(いちぼく)一柱(いつちう)のよくすべき(ところ)では(ござ)いませぬ。098何分(なにぶん)にも(この)(さい)には上下(しやうか)一致(いつち)099億兆(おくてう)一心(いつしん)100あらむ(かぎ)りの誠心(まごころ)(ささ)げて国難(こくなん)(じゆん)ずる覚悟(かくご)吾々(われわれ)(はじ)め、101なくては(かな)ひませぬ。102かかる危急(ききう)存亡(そんばう)(さい)に、103太子(たいし)(きみ)(そその)かし(たてまつ)り、104殿内(でんない)より(おび)()したる左守(さもり)殿(どの)(せがれ)アリナこそは105天地(てんち)(ゆる)さぬ大逆(だいぎやく)無道(ぶだう)悪臣(あくしん)(ござ)る。106まづ国家(こくか)民心(みんしん)(をさ)むるには親疎(しんそ)(じやう)()り、107上下(じやうげ)区別(くべつ)撤廃(てつぱい)し、108(しん)(しん)とし、109()()とし、110(あく)(あく)とし、111公平(こうへい)無私(むし)(てき)態度(たいど)(もつ)賞罰(しやうばつ)(あきら)かにし、112天下(てんか)善政(ぜんせい)模範(もはん)(しめ)さなくてはなりますまい。113(おそ)(なが)ら、114(しん)()第一(だいいち)着手(ちやくしゆ)として、115左守(さもり)(せがれ)アリナの処分(しよぶん)をなさねばならないだらうと(かんが)へます。116ついてはその(ちち)たる左守(さもり)殿(どの)(この)(さい)責任(せきにん)感知(かんち)し、117闕下(けつか)(つみ)(しや)し、118(しも)国民(こくみん)(たい)する()(わけ)()め、119(すす)んで骸骨(がいこつ)をお()ひなさるが時宜(じぎ)(てき)したる最善(さいぜん)処為(しよゐ)(かんが)へます。120(いな)121国法(こくはふ)(をし)ふる(ところ)確信(かくしん)(いた)します。122殿下(でんか)123何卒(なにとぞ)賢明(けんめい)なる()英断(えいだん)(もつ)て、124官規(くわんき)振粛(しんしゆく)頑迷(ぐわんめい)無恥(むち)官吏(くわんり)退(しりぞ)け、125(もつ)国民(こくみん)殿下(でんか)名君(めいくん)たる(こと)周知(しうち)せしめ()(ぞん)じまする』
126(わう)『イヤ、127右守(うもり)(げん)一応(いちおう)(もつと)もだが128今日(けふ)()太子(たいし)行衛(ゆくゑ)(わか)らず、129(また)アリナの所在(ありか)(わか)らぬ混沌(こんとん)(さい)だから、130左守(さもり)処分(しよぶん)は、131さう(いそ)ぐには(およ)ぶまい』
132()殿下(でんか)(おほ)せでは(ござ)いまするが、133国家(こくか)危急(ききふ)存亡(そんばう)(さい)134さやうな緩慢(くわんまん)()処置(しよち)(かへつ)国家(こくか)(あやふ)くするものと(かんが)へます。135何卒(なにとぞ)()英断(えいだん)(もつ)疾風(しつぷう)迅雷(じんらい)(てき)解決(かいけつ)し、136快刀(くわいたう)乱麻(らんま)()つの快挙(くわいきよ)(いで)られむ(こと)137右守(うもり)138(つつし)んで言上(ごんじやう)(つかまつ)ります』
139(わう)(なんぢ)右守(うもり)のサクレンス、140(なんぢ)王家(わうけ)(おも)国家(こくか)(おも)ふ、141その熱誠(ねつせい)(じつ)()嘉賞(かしやう)する。142(しか)(なが)(わが)国家(こくか)()(およ)んで十五代(じふごだい)143王統(わうとう)連綿(れんめん)として(なん)瑕瑾(かきん)もなく、144国民(こくみん)尊敬(そんけい)中心(ちうしん)となり、145仮令(たとへ)(せう)なりと(いへど)タラハンの国家(こくか)維持(ゐぢ)して()たものだ。146(しか)るに(いま)太子(たいし)貴族(きぞく)生活(せいくわつ)(きら)ひ、147殿内(でんない)()()すやうになつては、148最早(もはや)王政(わうせい)専制(せんせい)政治(せいぢ)到底(たうてい)永続(えいぞく)する(こと)出来(でき)ない。149仮令(たとへ)太子(たいし)帰城(きじやう)するにしても、150(かれ)()(あと)をついでタラハン(ごく)君臨(くんりん)する(こと)(この)まないだらう。151一層(いつそ)(こと)152王女(わうぢよ)のバンナを後継者(こうけいしや)となし、153適当(てきたう)なる養子(やうし)()れて、154王家(わうけ)継承(けいしよう)させ()いと(おも)ふが、155左守(さもり)156右守(うもり)その()重臣(ぢうしん)(ども)は、157どう(かんが)へるかな』
158()殿下(でんか)宸襟(しんきん)(なや)ませ(たてまつ)り、159(しん)として、160ノメノメ生命(いのち)(なが)らへ161殿下(でんか)()心配(しんぱい)坐視(ざし)(たてまつ)るに(しの)びませぬ。162右守(うもり)()はるる(とほ)り、163(じつ)(しん)()(せがれ)()ひ、164王家(わうけ)(あだ)国家(こくか)潰滅者(くわいめつしや)(ござ)いますれば165申訳(まをしわけ)のため、1651(いま)御前(ごぜん)(おい)(しわ)(ぱら)をかき()り、166万死(ばんし)(つみ)(しや)(まつ)ります。167右守(うもり)殿(どの)168何卒(なにとぞ)国家(こくか)(ため)忠勤(ちうきん)(はげ)んで(くだ)さい。169殿下(でんか)170左様(さやう)ならば』
171()ふより(はや)用意(ようい)短刀(たんたう)172(さや)(はら)つて(ひだり)脇腹(わきばら)につき()てむとする一刹那(いつせつな)173王女(わうぢよ)バンナ(ひめ)(あわ)ただしく、174(みす)(なか)より(はし)()で、
175王女(わうぢよ)左守(さもり)ガンヂー(はや)まるな。176(いま)()ぬる(いのち)(なが)らへ、177王家(わうけ)のため国家(こくか)のために何故(なぜ)(まこと)(つく)さないのか。178()んで忠義(ちうぎ)になると(おも)ふか。179()(わけ)()つと(おも)ふか。180血迷(ちまよ)ふにも(ほど)があるぞや』
181(つる)一声(ひとこゑ)182左守(さもり)はハツト(ばか)りに両手(りやうて)をつき、183白髪頭(しらがあたま)(ゆか)にすりつけ(なが)(こゑ)(ふる)はせ(なみだ)(しぼ)り、184()ぶる言葉(ことば)もきれぎれに、
185()『ハイ、186(まこと)無作法(ぶさはふ)狼狽(うろた)へた(さま)をお()にかけまして申訳(まをしわけ)(ござ)いませぬ。187何卒(なにとぞ)188()宥恕(いうじよ)(ねが)(たてまつ)ります』
189()『アハヽヽヽ、190左守(さもり)殿(どの)191()卑怯(ひけふ)では(ござ)らぬか。192一旦(いつたん)男子(だんし)決死(けつし)覚悟(かくご)193仮令(たとへ)王女(わうぢよ)(さま)()言葉(ことば)なればとて194卑怯(ひけふ)末練(みれん)にも()(をし)み、195(せい)執着(しふちやく)(あこが)(たま)ふか。196左様(さやう)女々(めめ)しき(たましひ)(もつ)て、197よくも(いま)(まで)左守(さもり)(しよく)(つと)まりましたな。198チツトは(はぢ)()りなされ』
199悪逆(あくぎやく)無道(ぶだう)右守(うもり)のサクレンスは200左守(さもり)自殺(じさつ)慫慂(しやうよう)してゐる。201(かれ)(じふ)(ねん)以前(いぜん)(まで)左守(さもり)のガンヂーが右守(うもり)として(つか)へてゐた(ころ)202家令(かれい)抜擢(ばつてき)され、203右守(うもり)左守(さもり)栄進(えいしん)すると(とも)204自分(じぶん)抜擢(ばつてき)されて右守(うもり)重職(ぢうしよく)()いたのである。205今日(こんにち)地位(ちゐ)()たのは、206(まつた)(げん)左守(さもり)斡旋(あつせん)によるものであつた。207(しか)るに(こころ)(きたな)右守(うもり)208大恩(だいおん)あるガンヂーを邪魔物(じやまもの)(あつかひ)になし、209今度(こんど)失敗(しつぱい)につけ()左守(さもり)詰腹(つめばら)()らせ、210自分(じぶん)がとつて左守(さもり)(かは)国政(こくせい)自由(じいう)自在(じざい)()(みだ)し、211時節(じせつ)()つて王女(わうぢよ)バンナ(ひめ)自分(じぶん)(おとうと)エールを(めあ)はせ212(わが)一族(いちぞく)(もつ)国家(こくか)左右(さいう)し、213自分(じぶん)外戚(ぐわいせき)となつて権勢(けんせい)天下(てんか)(かがや)かし、214日頃(ひごろ)非望(ひばう)(たつ)せむと(くはだ)てたのである。
215 カラピン(わう)右守(うもり)のサクレンスに(みぎ)(ごと)野心(やしん)あるとは(ゆめ)にも()らず、216危機(きき)一髪(いつぱつ)(さい)217国家(こくか)(すく)ふは数多(あまた)重臣(ぢうしん)(うち)218(この)右守(うもり)(ほか)なしと、219益々(ますます)信任(しんにん)()(あつ)うした。
220 されども流石(さすが)(わが)(おとうと)のエールを王位(わうゐ)(のぼ)せ、221バンナ(ひめ)相並(あひなら)んで王家(わうけ)()がせ、222万機(ばんき)政治(せいぢ)総統(そうとう)させる(こと)(くち)には()()なかつた。223そこで(かれ)は、224ワザとに(つぎ)のやうな(こと)御前(ごぜん)会議(くわいぎ)(せき)喋々(てふてふ)喃々(なんなん)(しやべ)りたて、225(わう)(はじ)重臣(ぢうしん)(ども)(はら)(さぐ)らうとした。
226()殿下(でんか)(まをし)()げます。227今日(こんにち)国家(こくか)のため遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)もなく言上(ごんじやう)せよ」との()令旨(れいし)228参考(さんかう)のために、229殿下(でんか)(はじ)一同(いちどう)重役(ぢうやく)(たち)(わが)意見(いけん)吐露(とろ)(いた)します。230()採用(さいよう)(くだ)さらうと、231(くだ)さるまいと、232それは(すこ)しも(しん)()(かい)する(ところ)では(ござ)いませぬ。233倩々(つらつら)天下(てんか)情勢(じやうせい)(かんが)へまするのに、234世界(せかい)王国(わうこく)次第(しだい)々々(しだい)(たふ)れ、235(いづ)れも民衆(みんしう)政治(せいぢ)236共和(きようわ)政体(せいたい)(かは)()現代(げんだい)趨勢(すうせい)(ござ)います。237(くは)ふるに肝腎要(かんじんかなめ)太子(たいし)(きみ)平民(へいみん)主義(しゆぎ)がお()きでもあり、238(つね)共産(きやうさん)主義(しゆぎ)唱道(しやうだう)されてゐるやうで(ござ)います。239開国(かいこく)以来(いらい)240十五代(じふごだい)継続(けいぞく)(あそ)ばした(この)王家(わうけ)をして万代(ばんだい)不易(ふえき)基礎(きそ)(かた)241王家(わうけ)繁栄(はんゑい)日月(じつげつ)(とも)永遠(えいゑん)無窮(むきう)に、242(つき)(くに)一角(いつかく)(ひか)(かがや)くべく日夜(にちや)祈願(きぐわん)をこらしてゐましたが、243最早(もはや)今日(こんにち)となつては、244どうも覚束(おぼつか)ないやうな気分(きぶん)(いた)します。245殿下(でんか)(はじ)(まつ)り、246諸君(しよくん)()意見(いけん)如何(いかが)(ござ)いませうかな』
247 (この)意外(いぐわい)なる言葉(ことば)(わう)(はじ)左守(さもり)248その()重臣(ぢうしん)(みづ)()つたる(ごと)黙然(もくねん)として249(おほ)きな(いき)さへせなかつた。250(しばら)くあつてカラピン(わう)顔面(がんめん)筋肉(きんにく)緊張(きんちやう)させ(なが)ら、
251(わう)意外(いぐわい)千万(せんばん)なる右守(うもり)言葉(ことば)252(てん)(めい)()けて君臨(くんりん)したる(わが)王室(わうしつ)(はい)し、253共和(きようわ)政治(せいぢ)()かう(など)とは不臣(ふしん)不忠(ふちう)(いた)りだ。254右守(うもり)255(なんぢ)時代(じだい)悪風潮(あくふうてう)感染(かんせん)し、256良心(りやうしん)基礎(どだい)がぐらつき()したと()える。257左様(さやう)精神(せいしん)で、258どうして(わが)国家(こくか)(ささ)へる(こと)出来(でき)るか。259よく(かんが)へて()よ』
260 (この)言葉(ことば)(なみ)ゐる老臣(らうしん)(たち)(やや)愁眉(しうび)(ひら)き、261一斉(いつせい)(くち)(そろ)へて(わう)宣言(せんげん)賛意(さんい)(へう)した。262左守(さもり)憤然(ふんぜん)として(たち)(あが)両眼(りやうがん)(なみだ)(うか)(なが)ら、263右守(うもり)(そば)(ちか)くニジリ()短刀(たんたう)(つか)()をかけ、264(こゑ)(ふる)はせ(なが)ら、
265()(なんぢ)右守(うもり)のサクレンス、266(いたづら)侫弁(ねいべん)(ふる)ひ、267(おもて)忠臣(ちうしん)義士(ぎし)(よそほ)ひ、268(こころ)豺狼(さいらう)爪牙(さうが)(ざう)する悪逆(あくぎやく)無道(ぶだう)不忠(ふちう)不義(ふぎ)曲者(くせもの)()269万代(ばんだい)不易(ふえき)王政(わうせい)撤回(てつくわい)共和(きようわ)政体(せいたい)変革(へんかく)せむとは(なん)囈言(たわごと)270不臣(ふしん)不忠(ふちう)(いた)り、271もう(この)(うへ)左守(さもり)死物狂(しにものぐる)ひ、272(なんぢ)一命(いちめい)()つて国家(こくか)禍根(くわこん)絶滅(ぜつめつ)せむ、273覚悟(かくご)(いた)せ』
274()ふより(はや)右守(うもり)(むか)つて()びつかむとする。275王女(わうぢよ)のバンナは(また)もや(こゑ)をかけ、
276王女(わうぢよ)左守(さもり)277(しば)らく()て、278(わう)(さま)御前(ごぜん)であらうぞ。279殿中(でんちう)刃物(はもの)三昧(ざんまい)国法(こくはふ)厳禁(げんきん)する(ところ)280血迷(ちまよ)ふたか、281狼狽(うろた)へたか。282左守(さもり)283冷静(れいせい)善悪(ぜんあく)理非(りひ)(わきま)へよ』
284 左守(さもり)(こゑ)(はげ)まして、
285()王女(わうぢよ)(さま)厳命(げんめい)なれども、286もとより不忠(ふちう)不義(ふぎ)なる(この)左守(さもり)287()して万死(ばんし)(つみ)(しや)(まつ)る。288ついては()法度(はつと)(やぶ)(おそ)れは(ござ)いませうが、289(この)右守(うもり)(のこ)しておかば王家(わうけ)(ほろ)ぼし国家(こくか)(ほろ)ぼす大逆者(だいぎやくしや)(ござ)れば、290右守(うもり)(いのち)()(かんが)へで(ござ)います。291何卒(なにとぞ)(この)()はお(ゆる)(くだ)さいませ』
292(また)もや()つてかかる。293右守(うもり)(うち)(おどろ)(まつ)廊下(らうか)師直(もろなほ)よろしく、
294右守左守(さもり)殿(どの)295殿中(でんちう)(ござ)る 殿中(でんちう)(ござ)る』
296連呼(れんこ)(なが)彼方(かなた)此方(こなた)()げまはる。297重臣(ぢうしん)のハルチンは加古川(かこがは)本蔵(ほんざう)よろしく、298左守(さもり)(うしろ)よりグツと強力(がうりき)(まか)せて()きかかへ羽抱絞(はがいじ)めにして(しま)つた。299左守(さもり)は、
300()『エー、301(はな)せ、302邪魔(じやま)()さるな。303王家(わうけ)一大事(いちだいじ)だ。304国家(こくか)禍根(くわこん)(はら)ふのは(この)(とき)(ござ)る』
305とあせれど藻掻(もが)けど、306強力(がうりき)のハルチンに()きつかれ307無念(むねん)歯噛(はが)みし(なが)らバタリと短刀(たんたう)床上(しやうじやう)(おと)した。308右守(うもり)(この)(すき)(じやう)じて(くも)(かすみ)卑怯(ひけふ)未練(みれん)にも()()して(しま)つた。
309 かく(さわ)ぎの最中(さいちう)太子(たいし)(きみ)はアリナと(とも)悠然(いうぜん)として城門(じやうもん)(くぐ)つた。310(いま)生命(いのち)からがら(かみ)()(みだ)し、311()()して()右守(うもり)のサクレンスは狼狽(らうばい)(あま)門口(もんぐち)にてアリナの(むね)にドンと(ばか)りつきあたり、312二人(ふたり)(とも)門前(もんぜん)階段(かいだん)から、313二三間(にさんげん)(ばか)(した)街道(かいだう)(ころ)()ちた。314(さいは)ひにアリナは(なん)負傷(ふしやう)もせなかつたが、315右守(うもり)のサクレンスは(すね)()りノタノタと四這(よつば)ひとなり316生命(いのち)カラガラ(わが)()()して(ねこ)()はれた(ねずみ)よろしく(にげ)(かへ)()く。
317大正一三・一二・四 新一二・二九 於祥雲閣 北村隆光録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki