霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二〇章 曲津(まつ)陋呵(ろうか)〔一七二二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第67巻 山河草木 午の巻 篇:第4篇 山色連天 よみ(新仮名遣い):さんしょくれんてん
章:第20章 曲津の陋呵 よみ(新仮名遣い):まつのろうか 通し章番号:1722
口述日:1924(大正13)年12月29日(旧12月4日) 口述場所:祥雲閣 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年8月19日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
一方、タラハン城内では、王、左守、右守をはじめとする重臣たちが、太子とアリナの行方不明について評定をしていた。
左守ガンヂーは息子アリナの不徳を詫びるが、王も、太子が日ごろ城内の生活に不満を抱いている様を嘆き、かつての自分と王妃の失政を悔いる。
右守は、今回の事件は左守の倅アリナに責任があり、その親たるガンヂーともども処分を受けなければならないと主張する。
左守は責任を感じて自殺しようとするが、王女バンナに止められる。
右守は、実は左守を追い落として自分が左守の地位につき、太子を廃して王女に自分の弟エールを娶わせ、政権を握ろうとの魂胆であった。
右守は自分の野望を遂げんと、太子が日ごろ王制を嫌っていることを挙げ、王制を廃して共和制を敷こうと提案する。
しかしながらこの発言は王を始め重臣たちを怒らせてしまい、左守は怒りのあまり右守に切りつける。
左守は重臣のハルチンに止められ、その間に右守は逃げ去ってしまう。右守は城から逃げ出すときに、ちょうど帰ってきたアリナとぶつかって階段を転げ落ち、足を折りながら家へ逃げ去った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2018-05-24 00:09:06 OBC :rm6720
愛善世界社版:264頁 八幡書店版:第12輯 128頁 修補版: 校定版:267頁 普及版:68頁 初版: ページ備考:
001 タラハン城内(じやうない)カラピン(わう)御前(みまへ)左守(さもり)002右守(うもり)(はじ)めとし、003数多(あまた)重臣(ぢうしん)薬鑵頭(やくわんあたま)湯気(ゆげ)()太子(たいし)()らぬ()殿内(でんない)より姿(すがた)(かく)し、004踪跡(そうせき)をくらました大椿事(だいちんじ)につき、005いろいろと()からびた(あたま)から(くだ)らぬ智慧(ちゑ)(しぼ)()して006小田原(をだはら)評定(ひやうぢやう)(はじ)まつて()る。
007カラピン(わう)(とき)左守(さもり)殿(どの)008日頃(ひごろ)憂鬱(いううつ)(しづ)んだ(わが)太子(たいし)今日(けふ)三日(みつか)になつても、009まだ(かへ)つて()ないのは、010どうしたものだらう。011(なに)か、012いい(かんが)へはつかないかのう』
013左守(さもり)(ガンヂー)『ハイ、014(まこと)(おそ)()つた次第(しだい)(ござ)ります。015殿中(でんちう)監督(かんとく)(にん)にあり(なが)ら、016(この)老臣(らうしん)017大王(だいわう)(たい)(たてまつ)り、018()(もつ)(しや)するより(ほか)(みち)(ござ)いませぬ』
019(わう)其方(そち)(せがれ)も、020まだ(かへ)つて()ぬか。021()(おも)ふに、022日頃(ひごろ)太子(たいし)()()り、023其方(そち)(せがれ)とどつかの山奥(やまおく)()(まよ)ふてゐるのではあるまいかのう』
024()不束(ふつつか)(せがれ)()025太子(たいし)(さま)のお言葉(ことば)(あま)へ、026いつも(おそ)(おほ)くも友人(いうじん)気取(きど)りになつて()()ひます。027その不遜(ふそん)行為(かうゐ)を、028(しん)(つね)(うれ)ひ、029いろいろと折檻(せつかん)(いた)警告(けいこく)(あた)へて()りますが、030(ふた)()には薬鑵頭(やくわんあたま)だの、031骨董品(こつとうひん)だの、032(とこ)置物(おきもの)だのと、033罵詈(ばり)嘲笑(てうせう)(たくま)しふし、034太子(たいし)(さま)()寵愛(ちようあい)(かさ)()(おや)()(こと)()きませぬ。035(まこと)(こま)つた不忠(ふちう)不義(ふぎ)痴者(しれもの)(ござ)います。036もし今度(こんど)(さいは)ひに(せがれ)(かへ)りますれば密室(みつしつ)監禁(かんきん)し、037よく(もの)道理(だうり)()()かせ、038それでも()()れねば039(ただ)一人(ひとり)(せがれ)なれども王家(わうけ)のため、0391国家(こくか)のため、040(しん)()にかけて、0401(せがれ)(いのち)()ち、041(くに)(わざはひ)(のぞ)覚悟(かくご)(ござ)います。042どうか(しばら)()猶予(いうよ)(ねが)ひます。043(いづ)(その)(うち)には無事(ぶじ)()帰城(きじやう)(あそ)ばすで(ござ)いませうから』
044(わう)『ヤ、045そちの(せがれ)新教育(しんけういく)とやらを()け、046余程(よほど)性質(たち)(わる)くなつて()たやうだ。047(しか)し、048(わが)太子(たいし)太子(たいし)だ。049平民(へいみん)主義(しゆぎ)だとか、050平等(べうどう)主義(しゆぎ)だとか、051国体(こくたい)(あは)ない囈言(たはごと)(まを)し、052貴族(きぞく)生活(せいくわつ)()()らぬ(など)駄々(だだ)をこね、053日夜(にちや)不足(ふそく)さうな面貌(めんばう)(あら)はし、054(わが)注意(ちうい)馬耳(ばじ)東風(とうふう)()(なが)し、055()におへない人物(じんぶつ)となつて(しま)つた。056(これ)(まつた)()(いち)()悪霊(あくれい)(たましひ)()せられ057天地(てんち)()れざる残虐(ざんぎやく)(つみ)(をか)したその(むく)いで、058老後(らうご)()(もつ)て、059あるにあられぬ(こころ)苦労(くらう)をさせられてゐるのだらう。060アヽどうなり()くも宿世(すぐせ)因縁(いんねん)だ。061もう左守(さもり)殿(どの)062あまり(あたま)(いた)めて()れな。063()太子(たいし)(こと)只今(ただいま)(かぎ)断念(だんねん)する』
064()(おそ)(おほ)殿下(でんか)のお言葉(ことば)065臣下(しんか)吾々(われわれ)066(なん)(まを)してお(わび)をすれば()いやら、067(じつ)恐懼(きようく)(いた)りで(ござ)います』
068(わう)右守(うもり)殿(どの)069太子(たいし)(かへ)らぬとすれば、070(なん)とか善後策(ぜんごさく)(かう)じなくてはなるまい。071其方(そち)意見(いけん)()()いものだ。072かかる一大事(いちだいじ)場合(ばあひ)073(すこ)しも遠慮(ゑんりよ)()らないから、074其方(そなた)(こころ)(そこ)忌憚(きたん)なく打明(うちあ)けて()れよ』
075右守(うもり)(サクレンス)『ハイ(おそ)()りまして(ござ)います。076太子(たいし)(さま)()出奔(しゆつぽん)以来(いらい)077家中(かちう)面々(めんめん)四方(しはう)八方(はつぱう)()し、078殿下(でんか)()行衛(ゆくゑ)捜索(そうさく)(いた)させましたが、079(いま)(なん)吉報(きつぱう)()ませぬ。080今日(けふ)三日(みつか)三夜(みよさ)081(この)右守(うもり)(こころ)(いた)め、0811(むね)をなやまし、082食事(しよくじ)(ろく)にとれませぬ。083(ひるがへ)つて国内(こくない)事情(じじやう)(かへり)みれば、084(いた)(ところ)民衆(みんしう)不平(ふへい)(こゑ)085いつ大事(だいじ)勃発(ぼつぱつ)するかも()れない形勢(けいせい)になつて()ります。086(くは)ふるにバラモン(ぐん)襲来(しふらい)するとの(うはさ)(かまび)すしく、087人心(じんしん)恟々(きようきよう)として山川(さんせん)草木(さうもく)(いろ)(うしな)ひ、088(まさ)阿鼻(あび)叫喚(けうくわん)地獄(ぢごく)現出(げんしゆつ)せむとするの形勢(けいせい)(ござ)います。089()くの(ごと)国家(こくか)多事(たじ)多難(たなん)(さい)太子(たいし)(きみ)()出奔(しゆつぽん)(あそ)ばされた(こと)090(わが)国家(こくか)にとつては、091痩児(やせご)蓮根(はすね)(まを)さうか、092泣面(なきづら)(はち)(まを)さうか、093(じつ)(おそ)(おほ)次第(しだい)(ござ)います。094風前(ふうぜん)燈火(ともしび)にも(ひと)しきタラハン(ごく)形勢(けいせい)095国家(こくか)未倒(みたう)(すく)ひ、096大廈(たいか)(くづ)れむとするを(ささ)ふるのは、097倒底(たうてい)一木(いちぼく)一柱(いつちう)のよくすべき(ところ)では(ござ)いませぬ。098何分(なにぶん)にも(この)(さい)には上下(しやうか)一致(いつち)099億兆(おくてう)一心(いつしん)100あらむ(かぎ)りの誠心(まごころ)(ささ)げて国難(こくなん)(じゆん)ずる覚悟(かくご)吾々(われわれ)(はじ)め、101なくては(かな)ひませぬ。102かかる危急(ききう)存亡(そんばう)(さい)に、103太子(たいし)(きみ)(そその)かし(たてまつ)り、104殿内(でんない)より(おび)()したる左守(さもり)殿(どの)(せがれ)アリナこそは105天地(てんち)(ゆる)さぬ大逆(だいぎやく)無道(ぶだう)悪臣(あくしん)(ござ)る。106まづ国家(こくか)民心(みんしん)(をさ)むるには親疎(しんそ)(じやう)()り、107上下(じやうげ)区別(くべつ)撤廃(てつぱい)し、108(しん)(しん)とし、109()()とし、110(あく)(あく)とし、111公平(こうへい)無私(むし)(てき)態度(たいど)(もつ)賞罰(しやうばつ)(あきら)かにし、112天下(てんか)善政(ぜんせい)模範(もはん)(しめ)さなくてはなりますまい。113(おそ)(なが)ら、114(しん)()第一(だいいち)着手(ちやくしゆ)として、115左守(さもり)(せがれ)アリナの処分(しよぶん)をなさねばならないだらうと(かんが)へます。116ついてはその(ちち)たる左守(さもり)殿(どの)(この)(さい)責任(せきにん)感知(かんち)し、117闕下(けつか)(つみ)(しや)し、118(しも)国民(こくみん)(たい)する()(わけ)()め、119(すす)んで骸骨(がいこつ)をお()ひなさるが時宜(じぎ)(てき)したる最善(さいぜん)処為(しよゐ)(かんが)へます。120(いな)121国法(こくはふ)(をし)ふる(ところ)確信(かくしん)(いた)します。122殿下(でんか)123何卒(なにとぞ)賢明(けんめい)なる()英断(えいだん)(もつ)て、124官規(くわんき)振粛(しんしゆく)頑迷(ぐわんめい)無恥(むち)官吏(くわんり)退(しりぞ)け、125(もつ)国民(こくみん)殿下(でんか)名君(めいくん)たる(こと)周知(しうち)せしめ()(ぞん)じまする』
126(わう)『イヤ、127右守(うもり)(げん)一応(いちおう)(もつと)もだが128今日(けふ)()太子(たいし)行衛(ゆくゑ)(わか)らず、129(また)アリナの所在(ありか)(わか)らぬ混沌(こんとん)(さい)だから、130左守(さもり)処分(しよぶん)は、131さう(いそ)ぐには(およ)ぶまい』
132()殿下(でんか)(おほ)せでは(ござ)いまするが、133国家(こくか)危急(ききふ)存亡(そんばう)(さい)134さやうな緩慢(くわんまん)()処置(しよち)(かへつ)国家(こくか)(あやふ)くするものと(かんが)へます。135何卒(なにとぞ)()英断(えいだん)(もつ)疾風(しつぷう)迅雷(じんらい)(てき)解決(かいけつ)し、136快刀(くわいたう)乱麻(らんま)()つの快挙(くわいきよ)(いで)られむ(こと)137右守(うもり)138(つつし)んで言上(ごんじやう)(つかまつ)ります』
139(わう)(なんぢ)右守(うもり)のサクレンス、140(なんぢ)王家(わうけ)(おも)国家(こくか)(おも)ふ、141その熱誠(ねつせい)(じつ)()嘉賞(かしやう)する。142(しか)(なが)(わが)国家(こくか)()(およ)んで十五代(じふごだい)143王統(わうとう)連綿(れんめん)として(なん)瑕瑾(かきん)もなく、144国民(こくみん)尊敬(そんけい)中心(ちうしん)となり、145仮令(たとへ)(せう)なりと(いへど)タラハンの国家(こくか)維持(ゐぢ)して()たものだ。146(しか)るに(いま)太子(たいし)貴族(きぞく)生活(せいくわつ)(きら)ひ、147殿内(でんない)()()すやうになつては、148最早(もはや)王政(わうせい)専制(せんせい)政治(せいぢ)到底(たうてい)永続(えいぞく)する(こと)出来(でき)ない。149仮令(たとへ)太子(たいし)帰城(きじやう)するにしても、150(かれ)()(あと)をついでタラハン(ごく)君臨(くんりん)する(こと)(この)まないだらう。151一層(いつそ)(こと)152王女(わうぢよ)のバンナを後継者(こうけいしや)となし、153適当(てきたう)なる養子(やうし)()れて、154王家(わうけ)継承(けいしよう)させ()いと(おも)ふが、155左守(さもり)156右守(うもり)その()重臣(ぢうしん)(ども)は、157どう(かんが)へるかな』
158()殿下(でんか)宸襟(しんきん)(なや)ませ(たてまつ)り、159(しん)として、160ノメノメ生命(いのち)(なが)らへ161殿下(でんか)()心配(しんぱい)坐視(ざし)(たてまつ)るに(しの)びませぬ。162右守(うもり)()はるる(とほ)り、163(じつ)(しん)()(せがれ)()ひ、164王家(わうけ)(あだ)国家(こくか)潰滅者(くわいめつしや)(ござ)いますれば165申訳(まをしわけ)のため、1651(いま)御前(ごぜん)(おい)(しわ)(ぱら)をかき()り、166万死(ばんし)(つみ)(しや)(まつ)ります。167右守(うもり)殿(どの)168何卒(なにとぞ)国家(こくか)(ため)忠勤(ちうきん)(はげ)んで(くだ)さい。169殿下(でんか)170左様(さやう)ならば』
171()ふより(はや)用意(ようい)短刀(たんたう)172(さや)(はら)つて(ひだり)脇腹(わきばら)につき()てむとする一刹那(いつせつな)173王女(わうぢよ)バンナ(ひめ)(あわ)ただしく、174(みす)(なか)より(はし)()で、
175王女(わうぢよ)左守(さもり)ガンヂー(はや)まるな。176(いま)()ぬる(いのち)(なが)らへ、177王家(わうけ)のため国家(こくか)のために何故(なぜ)(まこと)(つく)さないのか。178()んで忠義(ちうぎ)になると(おも)ふか。179()(わけ)()つと(おも)ふか。180血迷(ちまよ)ふにも(ほど)があるぞや』
181(つる)一声(ひとこゑ)182左守(さもり)はハツト(ばか)りに両手(りやうて)をつき、183白髪頭(しらがあたま)(ゆか)にすりつけ(なが)(こゑ)(ふる)はせ(なみだ)(しぼ)り、184()ぶる言葉(ことば)もきれぎれに、
185()『ハイ、186(まこと)無作法(ぶさはふ)狼狽(うろた)へた(さま)をお()にかけまして申訳(まをしわけ)(ござ)いませぬ。187何卒(なにとぞ)188()宥恕(いうじよ)(ねが)(たてまつ)ります』
189()『アハヽヽヽ、190左守(さもり)殿(どの)191()卑怯(ひけふ)では(ござ)らぬか。192一旦(いつたん)男子(だんし)決死(けつし)覚悟(かくご)193仮令(たとへ)王女(わうぢよ)(さま)()言葉(ことば)なればとて194卑怯(ひけふ)末練(みれん)にも()(をし)み、195(せい)執着(しふちやく)(あこが)(たま)ふか。196左様(さやう)女々(めめ)しき(たましひ)(もつ)て、197よくも(いま)(まで)左守(さもり)(しよく)(つと)まりましたな。198チツトは(はぢ)()りなされ』
199悪逆(あくぎやく)無道(ぶだう)右守(うもり)のサクレンスは200左守(さもり)自殺(じさつ)慫慂(しやうよう)してゐる。201(かれ)(じふ)(ねん)以前(いぜん)(まで)左守(さもり)のガンヂーが右守(うもり)として(つか)へてゐた(ころ)202家令(かれい)抜擢(ばつてき)され、203右守(うもり)左守(さもり)栄進(えいしん)すると(とも)204自分(じぶん)抜擢(ばつてき)されて右守(うもり)重職(ぢうしよく)()いたのである。205今日(こんにち)地位(ちゐ)()たのは、206(まつた)(げん)左守(さもり)斡旋(あつせん)によるものであつた。207(しか)るに(こころ)(きたな)右守(うもり)208大恩(だいおん)あるガンヂーを邪魔物(じやまもの)(あつかひ)になし、209今度(こんど)失敗(しつぱい)につけ()左守(さもり)詰腹(つめばら)()らせ、210自分(じぶん)がとつて左守(さもり)(かは)国政(こくせい)自由(じいう)自在(じざい)()(みだ)し、211時節(じせつ)()つて王女(わうぢよ)バンナ(ひめ)自分(じぶん)(おとうと)エールを(めあ)はせ212(わが)一族(いちぞく)(もつ)国家(こくか)左右(さいう)し、213自分(じぶん)外戚(ぐわいせき)となつて権勢(けんせい)天下(てんか)(かがや)かし、214日頃(ひごろ)非望(ひばう)(たつ)せむと(くはだ)てたのである。
215 カラピン(わう)右守(うもり)のサクレンスに(みぎ)(ごと)野心(やしん)あるとは(ゆめ)にも()らず、216危機(きき)一髪(いつぱつ)(さい)217国家(こくか)(すく)ふは数多(あまた)重臣(ぢうしん)(うち)218(この)右守(うもり)(ほか)なしと、219益々(ますます)信任(しんにん)()(あつ)うした。
220 されども流石(さすが)(わが)(おとうと)のエールを王位(わうゐ)(のぼ)せ、221バンナ(ひめ)相並(あひなら)んで王家(わうけ)()がせ、222万機(ばんき)政治(せいぢ)総統(そうとう)させる(こと)(くち)には()()なかつた。223そこで(かれ)は、224ワザとに(つぎ)のやうな(こと)御前(ごぜん)会議(くわいぎ)(せき)喋々(てふてふ)喃々(なんなん)(しやべ)りたて、225(わう)(はじ)重臣(ぢうしん)(ども)(はら)(さぐ)らうとした。
226()殿下(でんか)(まをし)()げます。227今日(こんにち)国家(こくか)のため遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)もなく言上(ごんじやう)せよ」との()令旨(れいし)228参考(さんかう)のために、229殿下(でんか)(はじ)一同(いちどう)重役(ぢうやく)(たち)(わが)意見(いけん)吐露(とろ)(いた)します。230()採用(さいよう)(くだ)さらうと、231(くだ)さるまいと、232それは(すこ)しも(しん)()(かい)する(ところ)では(ござ)いませぬ。233倩々(つらつら)天下(てんか)情勢(じやうせい)(かんが)へまするのに、234世界(せかい)王国(わうこく)次第(しだい)々々(しだい)(たふ)れ、235(いづ)れも民衆(みんしう)政治(せいぢ)236共和(きようわ)政体(せいたい)(かは)()現代(げんだい)趨勢(すうせい)(ござ)います。237(くは)ふるに肝腎要(かんじんかなめ)太子(たいし)(きみ)平民(へいみん)主義(しゆぎ)がお()きでもあり、238(つね)共産(きやうさん)主義(しゆぎ)唱道(しやうだう)されてゐるやうで(ござ)います。239開国(かいこく)以来(いらい)240十五代(じふごだい)継続(けいぞく)(あそ)ばした(この)王家(わうけ)をして万代(ばんだい)不易(ふえき)基礎(きそ)(かた)241王家(わうけ)繁栄(はんゑい)日月(じつげつ)(とも)永遠(えいゑん)無窮(むきう)に、242(つき)(くに)一角(いつかく)(ひか)(かがや)くべく日夜(にちや)祈願(きぐわん)をこらしてゐましたが、243最早(もはや)今日(こんにち)となつては、244どうも覚束(おぼつか)ないやうな気分(きぶん)(いた)します。245殿下(でんか)(はじ)(まつ)り、246諸君(しよくん)()意見(いけん)如何(いかが)(ござ)いませうかな』
247 (この)意外(いぐわい)なる言葉(ことば)(わう)(はじ)左守(さもり)248その()重臣(ぢうしん)(みづ)()つたる(ごと)黙然(もくねん)として249(おほ)きな(いき)さへせなかつた。250(しばら)くあつてカラピン(わう)顔面(がんめん)筋肉(きんにく)緊張(きんちやう)させ(なが)ら、
251(わう)意外(いぐわい)千万(せんばん)なる右守(うもり)言葉(ことば)252(てん)(めい)()けて君臨(くんりん)したる(わが)王室(わうしつ)(はい)し、253共和(きようわ)政治(せいぢ)()かう(など)とは不臣(ふしん)不忠(ふちう)(いた)りだ。254右守(うもり)255(なんぢ)時代(じだい)悪風潮(あくふうてう)感染(かんせん)し、256良心(りやうしん)基礎(どだい)がぐらつき()したと()える。257左様(さやう)精神(せいしん)で、258どうして(わが)国家(こくか)(ささ)へる(こと)出来(でき)るか。259よく(かんが)へて()よ』
260 (この)言葉(ことば)(なみ)ゐる老臣(らうしん)(たち)(やや)愁眉(しうび)(ひら)き、261一斉(いつせい)(くち)(そろ)へて(わう)宣言(せんげん)賛意(さんい)(へう)した。262左守(さもり)憤然(ふんぜん)として(たち)(あが)両眼(りやうがん)(なみだ)(うか)(なが)ら、263右守(うもり)(そば)(ちか)くニジリ()短刀(たんたう)(つか)()をかけ、264(こゑ)(ふる)はせ(なが)ら、
265()(なんぢ)右守(うもり)のサクレンス、266(いたづら)侫弁(ねいべん)(ふる)ひ、267(おもて)忠臣(ちうしん)義士(ぎし)(よそほ)ひ、268(こころ)豺狼(さいらう)爪牙(さうが)(ざう)する悪逆(あくぎやく)無道(ぶだう)不忠(ふちう)不義(ふぎ)曲者(くせもの)()269万代(ばんだい)不易(ふえき)王政(わうせい)撤回(てつくわい)共和(きようわ)政体(せいたい)変革(へんかく)せむとは(なん)囈言(たわごと)270不臣(ふしん)不忠(ふちう)(いた)り、271もう(この)(うへ)左守(さもり)死物狂(しにものぐる)ひ、272(なんぢ)一命(いちめい)()つて国家(こくか)禍根(くわこん)絶滅(ぜつめつ)せむ、273覚悟(かくご)(いた)せ』
274()ふより(はや)右守(うもり)(むか)つて()びつかむとする。275王女(わうぢよ)のバンナは(また)もや(こゑ)をかけ、
276王女(わうぢよ)左守(さもり)277(しば)らく()て、278(わう)(さま)御前(ごぜん)であらうぞ。279殿中(でんちう)刃物(はもの)三昧(ざんまい)国法(こくはふ)厳禁(げんきん)する(ところ)280血迷(ちまよ)ふたか、281狼狽(うろた)へたか。282左守(さもり)283冷静(れいせい)善悪(ぜんあく)理非(りひ)(わきま)へよ』
284 左守(さもり)(こゑ)(はげ)まして、
285()王女(わうぢよ)(さま)厳命(げんめい)なれども、286もとより不忠(ふちう)不義(ふぎ)なる(この)左守(さもり)287()して万死(ばんし)(つみ)(しや)(まつ)る。288ついては()法度(はつと)(やぶ)(おそ)れは(ござ)いませうが、289(この)右守(うもり)(のこ)しておかば王家(わうけ)(ほろ)ぼし国家(こくか)(ほろ)ぼす大逆者(だいぎやくしや)(ござ)れば、290右守(うもり)(いのち)()(かんが)へで(ござ)います。291何卒(なにとぞ)(この)()はお(ゆる)(くだ)さいませ』
292(また)もや()つてかかる。293右守(うもり)(うち)(おどろ)(まつ)廊下(らうか)師直(もろなほ)よろしく、
294右守左守(さもり)殿(どの)295殿中(でんちう)(ござ)る 殿中(でんちう)(ござ)る』
296連呼(れんこ)(なが)彼方(かなた)此方(こなた)()げまはる。297重臣(ぢうしん)のハルチンは加古川(かこがは)本蔵(ほんざう)よろしく、298左守(さもり)(うしろ)よりグツと強力(がうりき)(まか)せて()きかかへ羽抱絞(はがいじ)めにして(しま)つた。299左守(さもり)は、
300()『エー、301(はな)せ、302邪魔(じやま)()さるな。303王家(わうけ)一大事(いちだいじ)だ。304国家(こくか)禍根(くわこん)(はら)ふのは(この)(とき)(ござ)る』
305とあせれど藻掻(もが)けど、306強力(がうりき)のハルチンに()きつかれ307無念(むねん)歯噛(はが)みし(なが)らバタリと短刀(たんたう)床上(しやうじやう)(おと)した。308右守(うもり)(この)(すき)(じやう)じて(くも)(かすみ)卑怯(ひけふ)未練(みれん)にも()()して(しま)つた。
309 かく(さわ)ぎの最中(さいちう)太子(たいし)(きみ)はアリナと(とも)悠然(いうぜん)として城門(じやうもん)(くぐ)つた。310(いま)生命(いのち)からがら(かみ)()(みだ)し、311()()して()右守(うもり)のサクレンスは狼狽(らうばい)(あま)門口(もんぐち)にてアリナの(むね)にドンと(ばか)りつきあたり、312二人(ふたり)(とも)門前(もんぜん)階段(かいだん)から、313二三間(にさんげん)(ばか)(した)街道(かいだう)(ころ)()ちた。314(さいは)ひにアリナは(なん)負傷(ふしやう)もせなかつたが、315右守(うもり)のサクレンスは(すね)()りノタノタと四這(よつば)ひとなり316生命(いのち)カラガラ(わが)()()して(ねこ)()はれた(ねずみ)よろしく(にげ)(かへ)()く。
317大正一三・一二・四 新一二・二九 於祥雲閣 北村隆光録)

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