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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第67巻(午の巻)
序文
総説
第1篇 美山梅光
第1章 梅の花香
第2章 思想の波
第3章 美人の腕
第4章 笑の座
第5章 浪の皷
第2篇 春湖波紋
第6章 浮島の怪猫
第7章 武力鞘
第8章 糸の縺れ
第9章 ダリヤの香
第10章 スガの長者
第3篇 多羅煩獄
第11章 暗狐苦
第12章 太子微行
第13章 山中の火光
第14章 獣念気
第15章 貂心暴
第16章 酒艶の月
第17章 晨の驚愕
第4篇 山色連天
第18章 月下の露
第19章 絵姿
第20章 曲津の陋呵
第21章 針灸思想
第22章 憧憬の美
余白歌
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王仁三郎のソウルメイト論
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第67巻(午の巻)
> 第3篇 多羅煩獄 > 第11章 暗狐苦
<<< スガの長者
(B)
(N)
太子微行 >>>
第一一章
暗狐苦
(
あんこく
)
〔一七一三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第67巻 山河草木 午の巻
篇:
第3篇 多羅煩獄
よみ(新仮名遣い):
たらはんごく
章:
第11章 暗狐苦
よみ(新仮名遣い):
あんこく
通し章番号:
1713
口述日:
1924(大正13)年12月28日(旧12月3日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年8月19日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
物語は場所を変えて、デカタン高原西南方のタラハン国へ移る。
人口二十万、地味の肥えた産物の豊かな国。
首都タラハン市、ウラル教を国教とし、王家はすでに十数代を経ている。
国王はカラピン王、王妃モンドル姫、太子スダルマン、王女バンナ。
王妃モンドル姫は悪孤の霊に憑依され、市民を虐待した。王はモンドル姫の容色に迷い、王妃を止めることができなかった。
左守の司、シャカンナはたびたび王・王妃を諌めたが、右守の司ガンヂーは、自分がタラハン国の主権を握ろうと、王・王妃に取り入っていた。
あるとき、モンドル姫は遊覧中に白羽の矢に当たり、絶命してしまった。王はこの事件により狂乱し、暴虐の振る舞いを始める。
左守シャカンナは妻とともに死を決して王に諫言をなすが、王によって妻は斬り殺されてしまう。シャカンナは当年6歳の娘スバールとともに逃げ、身を隠した。
右守のガンヂーはこの事件により、シャカンナに代わって左守の位に就く。シャカンナ家の巨万の財産を没収したガンヂーは、己の声名をあげる為にそれを慈善政策の資金とした。
結果的にタラハン国は小康を得た。カラピン王は政務をすべてガンヂーに預け、自分は風流三昧のみの生活に隠退してしまった。
太子スダルマンは18歳を迎えたが、宮中深く閉じこもり、憂鬱に悩まされていた。いかなる音楽、美女も太子の憂鬱を払うことができなかった。
唯一太子の気に入りは、佐守ガンヂーの一人息子、アリナであった。アリナと共に絵を書くのが、太子の慰めとなっていた。
あるとき太子はアリナに秘密の外出を誘った。アリナは、これで太子の憂鬱が治るかもしれないと思い、心ならずも承諾してしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2018-05-13 18:36:42
OBC :
rm6711
愛善世界社版:
149頁
八幡書店版:
第12輯 85頁
修補版:
校定版:
151頁
普及版:
68頁
初版:
ページ備考:
普及版・八幡版「狐」、校定版は目次「孤」、本文「狐」。
001
デカタン
高原
(
かうげん
)
の
西南方
(
せいなんぽう
)
に
当
(
あた
)
つてタラハン
国
(
ごく
)
と
云
(
い
)
ふ、
002
人口
(
じんこう
)
二十万
(
にじふまん
)
を
有
(
いう
)
する
地味
(
ちみ
)
の
肥
(
こえ
)
た
産物
(
さんぶつ
)
の
豊
(
ゆた
)
かな
国土
(
こくど
)
がある。
003
国王
(
こくわう
)
はカラピン
王
(
わう
)
と
云
(
い
)
ひ、
004
国
(
くに
)
の
中心
(
ちうしん
)
地点
(
ちてん
)
なるタラハン
市
(
し
)
に
宏大
(
くわうだい
)
なる
城廓
(
じやうくわく
)
を
構
(
かま
)
へ、
005
ウラル
教
(
けう
)
を
信
(
しん
)
じて
十数代
(
じふすうだい
)
を
継続
(
けいぞく
)
した。
006
その
時
(
とき
)
の
国王
(
こくわう
)
の
名
(
な
)
をカラピン
王
(
わう
)
と
云
(
い
)
ひ
王妃
(
わうひ
)
をモンドル
姫
(
ひめ
)
と
云
(
い
)
ふ。
007
二人
(
ふたり
)
の
中
(
なか
)
には
太子
(
たいし
)
スダルマン、
008
及
(
およ
)
び
王女
(
わうぢよ
)
バンナの
二子
(
にし
)
を
挙
(
あ
)
げて
居
(
ゐ
)
た。
009
王妃
(
わうひ
)
のモンドル
姫
(
ひめ
)
は
銀毛
(
ぎんまう
)
八尾
(
はちぴ
)
の
悪狐
(
あくこ
)
の
霊
(
れい
)
に
憑依
(
ひようい
)
され、
010
残忍性
(
ざんにんせい
)
を
帯
(
お
)
び、
011
常
(
つね
)
に
妊婦
(
にんぷ
)
の
腹
(
はら
)
を
裂
(
さ
)
き、
012
胎児
(
たいじ
)
を
抉
(
えぐ
)
り
出
(
だ
)
して、
013
丸焚
(
まるた
)
きとなし
舌皷
(
したつづみ
)
を
打
(
う
)
つてゐた。
014
国民
(
こくみん
)
怨嗟
(
ゑんさ
)
の
声
(
こゑ
)
は
国内
(
こくない
)
に
充
(
み
)
ち
溢
(
あふ
)
れ、
015
何時
(
なんどき
)
騒動
(
さうだう
)
の
起
(
おこ
)
るやも
知
(
し
)
れざる
形勢
(
けいせい
)
となつて
来
(
き
)
た。
016
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らカラピン
王
(
わう
)
は
王妃
(
わうひ
)
の
容色
(
ようしよく
)
に
恋着
(
れんちやく
)
し、
017
王妃
(
わうひ
)
の
言
(
げん
)
ならば、
018
如何
(
いか
)
なる
無理
(
むり
)
難題
(
なんだい
)
も
二
(
ふた
)
つ
返事
(
へんじ
)
で
承認
(
しようにん
)
すると
云
(
い
)
ふ、
0181
惚
(
とぼ
)
け
方
(
かた
)
である。
019
左守
(
さもり
)
の
司
(
かみ
)
のシャカンナは
民心
(
みんしん
)
日
(
ひ
)
に
月
(
つき
)
に
国家
(
こくか
)
を
離
(
はな
)
るるを
憂
(
うれ
)
ひ、
020
且
(
か
)
つ
何時
(
いつ
)
革命
(
かくめい
)
の
狼火
(
のろし
)
のあがるや
知
(
し
)
れざる
形勢
(
けいせい
)
を
憂慮
(
いうりよ
)
し、
021
常
(
つね
)
に
死
(
し
)
を
決
(
けつ
)
して
王
(
わう
)
及
(
およ
)
び
王妃
(
わうひ
)
に
直諫
(
ちよくかん
)
した。
022
されども
王
(
わう
)
は
少
(
すこ
)
しも
左守
(
さもり
)
の
言
(
げん
)
を
用
(
もち
)
ひず、
023
遂
(
つひ
)
には
左守
(
さもり
)
の
登城
(
とじやう
)
するを
見
(
み
)
るや、
024
奥殿
(
おくでん
)
深
(
ふか
)
く
身
(
み
)
を
忍
(
しの
)
んで
面会
(
めんくわい
)
を
避
(
さ
)
けた。
025
右守
(
うもり
)
の
司
(
かみ
)
ガンヂーは
心
(
こころ
)
よからぬ
痴者
(
しれもの
)
にて
常
(
つね
)
に
王妃
(
わうひ
)
を
煽動
(
せんどう
)
し、
026
左守
(
さもり
)
を
退
(
しりぞ
)
け、
027
自分
(
じぶん
)
が、
028
とつて
代
(
かは
)
つて
左守
(
さもり
)
の
職
(
しよく
)
につき、
029
タラハン
国
(
ごく
)
の
主権
(
しゆけん
)
を
吾
(
わが
)
手
(
て
)
に
握
(
にぎ
)
らむ
事
(
こと
)
を
希求
(
ききう
)
してゐた。
030
右守
(
うもり
)
のガンヂーが
内面
(
ないめん
)
的
(
てき
)
応援
(
おうゑん
)
によつて、
031
王妃
(
わうひ
)
の
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
行為
(
かうゐ
)
は
益々
(
ますます
)
残虐
(
ざんぎやく
)
の
度
(
ど
)
を
加
(
くは
)
へ、
032
民心
(
みんしん
)
益々
(
ますます
)
離反
(
りはん
)
して
所々
(
ところどころ
)
に
百姓
(
ひやくしやう
)
一揆
(
いつき
)
が
勃発
(
ぼつぱつ
)
して
来
(
き
)
た。
033
或時
(
あるとき
)
モンドル
姫
(
ひめ
)
は
034
寵臣
(
ちようしん
)
の
右守
(
うもり
)
ガンヂー
及
(
および
)
その
妻
(
つま
)
アンチーと
共
(
とも
)
に
十数
(
じふすう
)
人
(
にん
)
の
侍女
(
じぢよ
)
を
伴
(
ともな
)
ひ、
035
カルモン
山
(
ざん
)
の
風景
(
ふうけい
)
を
探
(
さぐ
)
るべく
遊覧
(
いうらん
)
を
試
(
こころ
)
みた。
036
何処
(
いづこ
)
ともなく
白羽
(
しらは
)
の
矢
(
や
)
が
飛
(
と
)
んで
来
(
き
)
てモンドル
姫
(
ひめ
)
の
額
(
ひたひ
)
に
命中
(
めいちう
)
し、
037
姫
(
ひめ
)
は
悲鳴
(
ひめい
)
を
挙
(
あ
)
げて
谷底
(
たにぞこ
)
に
転倒
(
てんたう
)
し、
038
遂
(
つひ
)
に
絶命
(
ぜつめい
)
して
了
(
しま
)
つた。
039
この
事
(
こと
)
四方
(
しはう
)
に
喧伝
(
けんでん
)
するや、
040
国民
(
こくみん
)
は
窃
(
ひそか
)
に
大杯
(
たいはい
)
をあげて
国家
(
こくか
)
の
前途
(
ぜんと
)
の
光明
(
くわうみやう
)
を
祝
(
しゆく
)
すると
云
(
い
)
ふ
勢
(
いきほひ
)
であつた。
041
カラピン
王
(
わう
)
は
王妃
(
わうひ
)
に
対
(
たい
)
する
愛着
(
あいちやく
)
の
念
(
ねん
)
去
(
さ
)
り
難
(
がた
)
く、
042
遂
(
つひ
)
には
狂乱
(
きやうらん
)
の
如
(
ごと
)
くなり、
043
近臣
(
きんしん
)
を
手討
(
てうち
)
になし、
044
王妃
(
わうひ
)
の
如
(
ごと
)
く
又
(
また
)
もや
妊婦
(
にんぷ
)
を
裂
(
さ
)
き
胎児
(
たいじ
)
を
丸焚
(
まるた
)
きにして
舌皷
(
したつづみ
)
を
打
(
う
)
つやうになつて
来
(
き
)
た。
045
左守
(
さもり
)
の
司
(
かみ
)
のシャカンナは
046
王家
(
わうけ
)
及
(
および
)
国家
(
こくか
)
の
一大事
(
いちだいじ
)
と
死
(
し
)
を
決
(
けつ
)
して、
047
妻
(
つま
)
のハリスタ
姫
(
ひめ
)
と
共
(
とも
)
に
王宮
(
わうきう
)
深
(
ふか
)
く
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り、
048
王
(
わう
)
に
改心
(
かいしん
)
を
迫
(
せま
)
り、
049
且
(
か
)
つ
国民
(
こくみん
)
の
怨嗟
(
ゑんさ
)
の
声
(
こゑ
)
喧
(
かまびす
)
しく、
050
いつ
擾乱
(
ぜうらん
)
の
勃発
(
ぼつぱつ
)
するやも
知
(
し
)
れぬ
事
(
こと
)
を
説明
(
せつめい
)
した。
051
最愛
(
さいあい
)
の
王妃
(
わうひ
)
を
失
(
うしな
)
ひ、
052
心
(
こころ
)
の
荒
(
すさ
)
びきつたるカラピン
王
(
わう
)
は
053
到底
(
たうてい
)
忠誠
(
ちうせい
)
なる
左守
(
さもり
)
の
諫言
(
かんげん
)
を
耳
(
みみ
)
にするに
至
(
いた
)
らなかつた。
054
忽
(
たちま
)
ち
大刀
(
だいたう
)
を
引
(
ひき
)
抜
(
ぬ
)
いて
形相
(
ぎやうさう
)
凄
(
すさま
)
じく
左守
(
さもり
)
に
向
(
むか
)
つて
云
(
い
)
ふ、
055
王
(
わう
)
『モンドル
姫
(
ひめ
)
の
横死
(
わうし
)
は
必
(
かなら
)
ず
汝
(
なんぢ
)
が
手下
(
てした
)
の
処為
(
しよゐ
)
ならむ。
056
王妃
(
わうひ
)
の
仇
(
あだ
)
だ、
057
観念
(
くわんねん
)
せよ。
058
手討
(
てうち
)
にして
呉
(
く
)
れむ』
059
と
阿修羅
(
あしゆら
)
王
(
わう
)
の
如
(
ごと
)
く
左守
(
さもり
)
に
斬
(
き
)
りつけむとした。
060
左守
(
さもり
)
の
妻
(
つま
)
ハリスタ
姫
(
ひめ
)
は
王
(
わう
)
と
左守
(
さもり
)
の
間
(
あひだ
)
に
立
(
た
)
ち
塞
(
ふさ
)
がつて、
061
ハリスタ姫
『
恐
(
おそ
)
れ
乍
(
なが
)
ら
王
(
わう
)
様
(
さま
)
に
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げます。
062
忠臣
(
ちうしん
)
をお
斬
(
き
)
りになるのは
御
(
ご
)
自分
(
じぶん
)
の
片腕
(
かたうで
)
をお
斬
(
き
)
り
遊
(
あそ
)
ばすも
同様
(
どうやう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
063
国家
(
こくか
)
の
柱石
(
ちうせき
)
なくして、
064
どうしてタラハン
国
(
ごく
)
が
保
(
たも
)
てませうか。
065
まづまづ
心
(
こころ
)
静
(
しづ
)
かにお
考
(
かんが
)
へ
下
(
くだ
)
さいませ、
066
もし
左守
(
さもり
)
の
司
(
かみ
)
を、
067
どうしても
殺
(
ころ
)
さねばならぬのならば、
068
どうか
私
(
わたし
)
を
身代
(
みがは
)
りに
立
(
た
)
てて
下
(
くだ
)
さい』
069
と
涙
(
なみだ
)
を
両眼
(
りやうがん
)
に
滴
(
したた
)
らし
乍
(
なが
)
ら
陳弁
(
ちんべん
)
した。
070
王
(
わう
)
は
怒髪
(
どはつ
)
天
(
てん
)
を
衝
(
つ
)
いて
云
(
い
)
ふ、
071
王
(
わう
)
『エー、
072
さかしき
女
(
をんな
)
の
差出口
(
さしでぐち
)
、
073
聞
(
き
)
く
耳
(
みみ
)
もたぬ。
074
殺
(
ころ
)
して
呉
(
く
)
れなら
殺
(
ころ
)
してやる。
075
汝
(
なんぢ
)
のみならず、
076
シャカンナも
共
(
とも
)
に
刀
(
かたな
)
の
錆
(
さび
)
だ。
077
観念
(
くわんねん
)
せよ』
078
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
079
ハリスタ
姫
(
ひめ
)
の
左
(
ひだり
)
の
肩
(
かた
)
から
右
(
みぎ
)
の
脇
(
わき
)
へ
袈裟掛
(
けさがけ
)
に、
080
切
(
き
)
れ
味
(
あぢ
)
のよい
銘刀
(
めいたう
)
にてスパリと
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
斬
(
き
)
り
倒
(
たふ
)
した。
081
次
(
つ
)
いで
左守
(
さもり
)
を
打殺
(
うちころ
)
さむと
阿修羅
(
あしゆら
)
王
(
わう
)
の
如
(
ごと
)
くに
追掛
(
おつか
)
ける。
082
左守
(
さもり
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
裏門
(
うらもん
)
より
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
し、
083
当年
(
たうねん
)
六
(
ろく
)
才
(
さい
)
になつたスバール
嬢
(
ぢやう
)
を
背
(
せな
)
に
負
(
お
)
ひ、
084
何処
(
いづく
)
ともなく
身
(
み
)
を
隠
(
かく
)
した。
085
右守
(
うもり
)
のガンヂーは
左守
(
さもり
)
となり、
086
妻
(
つま
)
アンチーの
仲
(
なか
)
に
生
(
うま
)
れた
一人
(
ひとり
)
息子
(
むすこ
)
のアリナと
共
(
とも
)
に
得意
(
とくい
)
な
日月
(
じつげつ
)
を
送
(
おく
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
087
さうして
右守家
(
うもりけ
)
の
家令
(
かれい
)
サクレンスを
抜擢
(
ばつてき
)
して
右守
(
うもり
)
に
任
(
にん
)
じた。
088
新
(
しん
)
左守
(
さもり
)
のガンヂーは
左守
(
さもり
)
の
地位
(
ちゐ
)
を
得
(
え
)
て
国政
(
こくせい
)
改革
(
かいかく
)
を
標榜
(
へうばう
)
し、
089
前
(
ぜん
)
左守家
(
さもりけ
)
伝来
(
でんらい
)
の
巨万
(
きよまん
)
の
富
(
とみ
)
を
没収
(
ぼつしう
)
し、
090
国内
(
こくない
)
の
貧民
(
ひんみん
)
に
慈善
(
じぜん
)
を
施
(
ほどこ
)
し、
091
吾
(
わが
)
声名
(
せいめい
)
のあがらむ
事
(
こと
)
にのみ
焦慮
(
せうりよ
)
し、
092
漸
(
やうや
)
くタラハン
国
(
ごく
)
は
小康
(
せうかう
)
を
得
(
え
)
た。
093
カラピン
王
(
わう
)
は
一切
(
いつさい
)
の
政務
(
せいむ
)
を
左守
(
さもり
)
のガンヂーに
一任
(
いちにん
)
し、
094
自分
(
じぶん
)
は
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
、
095
俳諧
(
はいかい
)
などに
心
(
こころ
)
を
傾
(
かたむ
)
け
096
風流
(
ふうりう
)
三昧
(
ざんまい
)
を
事
(
こと
)
として
居
(
ゐ
)
た。
097
カラピン
王
(
わう
)
の
太子
(
たいし
)
スダルマンは
十八
(
じふはつ
)
才
(
さい
)
の
春
(
はる
)
を
迎
(
むか
)
へ
098
王女
(
わうぢよ
)
バンナは
十六
(
じふろく
)
才
(
さい
)
の
春
(
はる
)
を
迎
(
むか
)
へた。
099
太子
(
たいし
)
のスダルマンは
宮中
(
きうちう
)
深
(
ふか
)
く
閉
(
と
)
ぢ
籠
(
こ
)
もり、
100
何
(
なん
)
となく
精神
(
せいしん
)
憂鬱
(
いううつ
)
として
楽
(
たのし
)
まず、
101
父
(
ちち
)
の
言葉
(
ことば
)
は
云
(
い
)
ふも
更
(
さら
)
なり、
102
左守
(
さもり
)
右守
(
うもり
)
、
103
その
他
(
た
)
重臣
(
ぢうしん
)
に
対
(
たい
)
しても、
104
拝謁
(
はいえつ
)
を
乞
(
こ
)
ふ
度
(
たび
)
毎
(
ごと
)
に
面白
(
おもしろ
)
からぬ
面
(
おもて
)
を
現
(
あら
)
はし、
105
只
(
ただ
)
一口
(
ひとくち
)
の
言葉
(
ことば
)
も
発
(
はつ
)
せず
鬱々
(
うつうつ
)
として
書斎
(
しよさい
)
に
籠
(
こも
)
つてゐた。
106
カラピン
王
(
わう
)
を
初
(
はじ
)
め
左守
(
さもり
)
右守
(
うもり
)
の
重臣
(
ぢうしん
)
連
(
れん
)
の
憂慮
(
いうりよ
)
は
一方
(
ひとかた
)
でなかつた。
107
日夜
(
にちや
)
神仏
(
しんぶつ
)
を
念
(
ねん
)
じ、
108
又
(
また
)
は
面白
(
おもしろ
)
き
楽器
(
がくき
)
を
弾
(
ひ
)
きならして
太子
(
たいし
)
を
慰
(
なぐさ
)
め、
109
憂鬱病
(
いううつびやう
)
を
治
(
なほ
)
さむと、
110
相談
(
さうだん
)
の
結果
(
けつくわ
)
、
111
国内
(
こくない
)
の
美人
(
びじん
)
を
召集
(
せうしふ
)
し
太子
(
たいし
)
の
御殿
(
ごてん
)
に
侍
(
はべ
)
らしめた。
112
百余
(
ひやくよ
)
名
(
めい
)
の
嬋妍
(
せんけん
)
窈窕
(
えうてう
)
たる
美人
(
びじん
)
は
燦爛
(
さんらん
)
と
咲
(
さ
)
き
乱
(
みだ
)
れたる
桜花
(
あうくわ
)
の
如
(
ごと
)
く、
113
蝶
(
てふ
)
の
如
(
ごと
)
く
其
(
その
)
美
(
うる
)
はしさ、
114
譬
(
たと
)
ふるに
物
(
もの
)
なきが
如
(
ごと
)
くであつた。
115
されど
太子
(
たいし
)
は
之
(
これ
)
等
(
ら
)
の
美人
(
びじん
)
に
対
(
たい
)
し
一瞥
(
いちべつ
)
もくれず、
116
益々
(
ますます
)
奥殿
(
おくでん
)
に
閉
(
と
)
ぢ
籠
(
こも
)
り
深
(
ふか
)
く
憂鬱
(
いううつ
)
に
陥
(
おちい
)
るのみであつた。
117
只
(
ただ
)
太子
(
たいし
)
の
気
(
き
)
に
入
(
い
)
るのは
左守
(
さもり
)
の
悴
(
せがれ
)
アリナ
一
(
いち
)
人
(
にん
)
のみである。
118
それ
故
(
ゆゑ
)
アリナは
常
(
つね
)
に
太子
(
たいし
)
に
召
(
め
)
されて
話相手
(
はなしあひて
)
となり、
119
時々
(
ときどき
)
城内
(
じやうない
)
を
逍遥
(
せうえう
)
し、
120
太子
(
たいし
)
の
心
(
こころ
)
を
慰
(
なぐさ
)
めて
居
(
ゐ
)
た。
121
太子
(
たいし
)
の
最
(
もつと
)
も
心
(
こころ
)
を
慰
(
なぐさ
)
むるものはアリナと
共
(
とも
)
に
絵
(
ゑ
)
を
描
(
か
)
く
事
(
こと
)
であつた。
122
太子
(
たいし
)
もアリナも
日々
(
にちにち
)
絵筆
(
ゑふで
)
を
弄
(
もてあそ
)
び、
123
人物
(
じんぶつ
)
等
(
など
)
を
描
(
か
)
く
時
(
とき
)
は
殆
(
ほとん
)
ど
実物
(
じつぶつ
)
に
等
(
ひと
)
しきまで
上達
(
じやうたつ
)
した。
124
或
(
ある
)
時
(
とき
)
太子
(
たいし
)
はアリナに
向
(
むか
)
ひ、
125
太
(
たい
)
『オイ、
126
アリナ、
127
どうだ
今日
(
けふ
)
はお
前
(
まへ
)
と
何処
(
どこ
)
かへ
行
(
い
)
つて
写生
(
しやせい
)
でもやらうぢやないか。
128
狭
(
せま
)
い
城内
(
じやうない
)
では、
129
もはや
写生
(
しやせい
)
の
種
(
たね
)
もつきて
了
(
しま
)
つたから』
130
とツヒにない
外出
(
ぐわいしゆつ
)
の
意
(
い
)
を、
131
ほのめかしたので、
132
アリナは…
此
(
この
)
機
(
き
)
逸
(
いつ
)
すべからず、
133
御意
(
ぎよい
)
のかはらぬ
内
(
うち
)
、
134
太子
(
たいし
)
のお
伴
(
とも
)
をなし、
135
太子
(
たいし
)
のお
好
(
す
)
きな
山水
(
さんすゐ
)
の
写生
(
しやせい
)
でも
遊
(
あそ
)
ばしたら、
136
日頃
(
ひごろ
)
の
憂鬱症
(
いううつしやう
)
が
癒
(
なほ
)
るかも
知
(
し
)
れぬ。
137
王家
(
わうけ
)
に
対
(
たい
)
し、
138
国家
(
こくか
)
に
対
(
たい
)
し、
139
これ
位
(
ぐらゐ
)
、
1391
結構
(
けつこう
)
な
事
(
こと
)
はない…と
決心
(
けつしん
)
し、
140
両手
(
りやうて
)
を
支
(
つかへ
)
て、
1401
満面
(
まんめん
)
に
笑
(
ゑみ
)
を
湛
(
たた
)
へ
乍
(
なが
)
ら、
141
ア『
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
、
142
願
(
ねが
)
ふてもなき
御
(
おん
)
催
(
もよほ
)
しで
厶
(
ござ
)
います。
143
どうか
私
(
わたし
)
もお
伴
(
とも
)
さして
頂
(
いただ
)
けば
無上
(
むじやう
)
の
光栄
(
くわうえい
)
で
厶
(
ござ
)
います。
144
山
(
やま
)
青
(
あを
)
く
水
(
みづ
)
清
(
きよ
)
く
飛沫
(
ひまつ
)
をとばす
谷川
(
たにがは
)
の
景色
(
けしき
)
等
(
など
)
は
145
胸
(
むね
)
に
万斛
(
ばんこく
)
の
涼味
(
りやうみ
)
を
味
(
あぢ
)
はつたやうな
気
(
き
)
が
致
(
いた
)
しますよ。
146
さすれば
父
(
ちち
)
の
左守
(
さもり
)
に
申
(
まをし
)
伝
(
つた
)
へましてお
伴
(
とも
)
の
用意
(
ようい
)
を
致
(
いた
)
させませう。
147
何程
(
なにほど
)
微行
(
びかう
)
と
申
(
まを
)
しても
一国
(
いつこく
)
の
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
、
148
二三十
(
にさんじふ
)
人
(
にん
)
の
護衛
(
ごゑい
)
は
威厳
(
ゐげん
)
を
保
(
たも
)
つ
上
(
うへ
)
に
必要
(
ひつえう
)
で
厶
(
ござ
)
いませうから』
149
太子
(
たいし
)
は
頭
(
かしら
)
を
左右
(
さいう
)
に
振
(
ふ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
150
さも
不機嫌
(
ふきげん
)
な
顔
(
かほ
)
にて、
151
『
此
(
この
)
城中
(
じやうちう
)
に
於
(
おい
)
てお
前
(
まへ
)
一人
(
ひとり
)
より、
152
余
(
よ
)
の
気
(
き
)
に
入
(
い
)
るものはない。
153
その
外
(
ほか
)
に
只
(
ただ
)
一
(
いち
)
人
(
にん
)
たりとも
召使
(
めしつかひ
)
をつれる
事
(
こと
)
は
嫌
(
いや
)
だ。
154
そんな
大層
(
たいそう
)
な
事
(
こと
)
をするなら、
155
もう
郊外
(
かうぐわい
)
の
散歩
(
さんぽ
)
は
止
(
や
)
めにする。
156
余
(
よ
)
の
病気
(
びやうき
)
は、
157
かやうな
窮屈
(
きうくつ
)
な
殿中
(
でんちう
)
生活
(
せいくわつ
)
が
嫌
(
いや
)
になつて、
158
其
(
その
)
為
(
た
)
め
起
(
おこ
)
つたのだ。
159
普通
(
ふつう
)
人民
(
じんみん
)
の
如
(
ごと
)
く、
160
極
(
ごく
)
手軽
(
てがる
)
にお
前
(
まへ
)
と
二人
(
ふたり
)
散歩
(
さんぽ
)
して
見
(
み
)
たいのだ』
161
ア『
左様
(
さやう
)
仰
(
おほ
)
せられますれば
是非
(
ぜひ
)
は
厶
(
ござ
)
いませぬ。
162
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
を
窃
(
ひそか
)
に
郊外
(
かうぐわい
)
にお
連
(
つ
)
れ
申
(
まを
)
したとあつては
163
王
(
わう
)
様
(
さま
)
を
初
(
はじ
)
め
吾
(
わが
)
父
(
ちち
)
の
怒
(
いか
)
りは、
164
いか
許
(
ばか
)
りか
分
(
わか
)
りませぬが、
165
私
(
わたし
)
は
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
の
為
(
ため
)
に、
166
仮令
(
たとへ
)
親
(
おや
)
に
勘当
(
かんだう
)
を
受
(
う
)
けても
構
(
かま
)
ひませぬ。
167
半時
(
はんとき
)
でも
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
のお
心
(
こころ
)
が
安
(
やす
)
まればそれで
満足
(
まんぞく
)
で
厶
(
ござ
)
います。
168
然
(
しか
)
らば
明日
(
あす
)
払暁
(
ふつげう
)
裏門
(
うらもん
)
より
窃
(
ひそか
)
に
脱出
(
だつしゆつ
)
し、
169
半日
(
はんにち
)
の
御
(
ご
)
清遊
(
せいいう
)
にお
伴
(
とも
)
を
致
(
いた
)
しませう』
170
太
(
たい
)
『ア、
171
それで
満足
(
まんぞく
)
した。
172
余
(
よ
)
の
病気
(
びやうき
)
も
全快
(
ぜんくわい
)
するだらう。
173
貴族
(
きぞく
)
生活
(
せいくわつ
)
に
飽
(
あ
)
き
果
(
は
)
てた
余
(
よ
)
は
174
庶民
(
しよみん
)
の
山野
(
さんや
)
に
働
(
はたら
)
く
実況
(
じつきやう
)
も
見
(
み
)
たいし、
175
自然
(
しぜん
)
の
風物
(
ふうぶつ
)
に
対
(
たい
)
し、
176
天恵
(
てんけい
)
を
味
(
あぢは
)
ひ
度
(
た
)
い。
177
それではアリナ、
178
屹度
(
きつと
)
頼
(
たの
)
むぞ』
179
ア『ハイ、
180
畏
(
かしこ
)
まつて
厶
(
ござ
)
います。
181
それでは
一切
(
いつさい
)
の
用意
(
ようい
)
を
致
(
いた
)
しておきます』
182
太子
(
たいし
)
は
地獄
(
ぢごく
)
の
餓鬼
(
がき
)
が
天国
(
てんごく
)
に
救
(
すく
)
はれたやうな
心持
(
こころもち
)
になつて
183
翌日
(
あくるひ
)
の
未明
(
よあけ
)
を
一
(
いち
)
時
(
じ
)
千秋
(
せんしう
)
の
思
(
おも
)
ひで
待
(
ま
)
つてゐた。
184
(
大正一三・一二・三
新一二・二八
於祥雲閣
北村隆光
録)
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