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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第67巻(午の巻)
序文
総説
第1篇 美山梅光
第1章 梅の花香
第2章 思想の波
第3章 美人の腕
第4章 笑の座
第5章 浪の皷
第2篇 春湖波紋
第6章 浮島の怪猫
第7章 武力鞘
第8章 糸の縺れ
第9章 ダリヤの香
第10章 スガの長者
第3篇 多羅煩獄
第11章 暗狐苦
第12章 太子微行
第13章 山中の火光
第14章 獣念気
第15章 貂心暴
第16章 酒艶の月
第17章 晨の驚愕
第4篇 山色連天
第18章 月下の露
第19章 絵姿
第20章 曲津の陋呵
第21章 針灸思想
第22章 憧憬の美
余白歌
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霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第67巻(午の巻)
> 第3篇 多羅煩獄 > 第12章 太子微行
<<< 暗狐苦
(B)
(N)
山中の火光 >>>
第一二章
太子
(
たいし
)
微行
(
びかう
)
〔一七一四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第67巻 山河草木 午の巻
篇:
第3篇 多羅煩獄
よみ(新仮名遣い):
たらはんごく
章:
第12章 太子微行
よみ(新仮名遣い):
たいしびこう
通し章番号:
1714
口述日:
1924(大正13)年12月28日(旧12月3日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年8月19日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
太子とアリナは、タラハン城の東北にある城山に分け入った。すばらしい光景を目にして太子は感慨無量の思いとなり、ますます宮中を捨てたくなった。
太子の希望により一行はさらに山を越え、奥山へと進み行くアリナは途方にくれたが、太子の意思は堅く、さらに北へ北へと歩を進めていく。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6712
愛善世界社版:
157頁
八幡書店版:
第12輯 88頁
修補版:
校定版:
159頁
普及版:
68頁
初版:
ページ備考:
派生
[?]
この文献を底本として書かれたと思われる文献です。
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:
出口王仁三郎著作集 > 第三巻 愛と美といのち > [3] 美 > [3-1] 造化の芸術 > [3-1-3] 天然の美
001
スダルマン
太子
(
たいし
)
は
左守
(
さもり
)
の
一子
(
いつし
)
アリナと
共
(
とも
)
に
002
窮屈
(
きうくつ
)
な
殿内
(
でんない
)
生活
(
せいくわつ
)
を
逃
(
のが
)
れて
心
(
こころ
)
の
駒
(
こま
)
の
進
(
すす
)
むまま
膝栗毛
(
ひざくりげ
)
に
鞭
(
むちう
)
ち
003
タラハン
城
(
じやう
)
の
東北
(
とうほく
)
に
当
(
あた
)
る
樹木
(
じゆもく
)
鬱蒼
(
うつさう
)
たる
城山
(
しろやま
)
を
目指
(
めざ
)
して
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
つた。
004
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
見
(
み
)
た
事
(
こと
)
も、
005
聞
(
き
)
いた
事
(
こと
)
もない
麗
(
うる
)
はしき
羽翼
(
うよく
)
を
拡
(
ひろ
)
げた
百鳥
(
ひやくてう
)
、
006
木
(
こ
)
の
間
(
ま
)
にチユンチユンと
囀
(
さへづ
)
り、
007
デカタン
高原
(
かうげん
)
名物
(
めいぶつ
)
の
風
(
かぜ
)
は
今日
(
けふ
)
は
殊更
(
ことさら
)
穏
(
おだや
)
かに
吹
(
ふ
)
き
渡
(
わた
)
り
自然
(
しぜん
)
の
音楽
(
おんがく
)
を
奏
(
そう
)
し、
008
山野
(
さんや
)
の
草木
(
くさき
)
は
惟神
(
かむながら
)
的
(
てき
)
舞踏
(
ぶたふ
)
を
演
(
えん
)
じ、
009
谷川
(
たにがは
)
の
流
(
なが
)
れは
激湍
(
げきたん
)
飛沫
(
ひまつ
)
の
絶景
(
ぜつけい
)
を
現
(
げん
)
じ、
010
太子
(
たいし
)
の
目
(
め
)
には
一
(
ひと
)
つとして
奇
(
き
)
ならざるなく
011
珍
(
ちん
)
ならざるはなかつた。
012
太
(
たい
)
『オイ、
013
アリナ
014
お
前
(
まへ
)
のお
蔭
(
かげ
)
で
俺
(
おれ
)
も
窮屈
(
きうくつ
)
な
殿内
(
でんない
)
をやつとの
事
(
こと
)
で
脱走
(
だつそう
)
し、
015
造化
(
ざうくわ
)
の
技巧
(
ぎかう
)
を
凝
(
こ
)
らした
天然
(
てんねん
)
の
風光
(
ふうくわう
)
に
親
(
した
)
しく
接
(
せつ
)
し
016
山野
(
さんや
)
の
草木
(
くさき
)
や、
0161
禽獣
(
きんじう
)
を
友
(
とも
)
として
017
気楽
(
きらく
)
に
逍遥
(
せうえう
)
する
心持
(
こころもち
)
は
余
(
よ
)
が
生
(
うま
)
れてから
未
(
いま
)
だ
初
(
はじ
)
めてだ。
018
見
(
み
)
れば
見
(
み
)
る
程
(
ほど
)
、
019
考
(
かんが
)
へれば
考
(
かんが
)
へる
程
(
ほど
)
、
020
天然
(
てんねん
)
と
云
(
い
)
ふものはなんとした
結構
(
けつこう
)
なものだらう。
021
人間
(
にんげん
)
の
造
(
つく
)
つた
美術
(
びじゆつ
)
や
絵画
(
くわいぐわ
)
とは
違
(
ちが
)
つて
022
云
(
い
)
ふに
云
(
い
)
はれぬ
風韻
(
ふうゐん
)
が
籠
(
こも
)
つて
居
(
ゐ
)
るではないか。
023
余
(
よ
)
は
不幸
(
ふかう
)
にして
王族
(
わうぞく
)
に
生
(
うま
)
れ、
024
十八
(
じふはち
)
年
(
ねん
)
の
今日
(
こんにち
)
迄
(
まで
)
狭苦
(
せまくる
)
しい
殿中
(
でんちう
)
生活
(
せいくわつ
)
に
苦
(
くる
)
しめられ、
025
かかる
広大
(
くわうだい
)
なる
原野
(
げんや
)
に
天地
(
てんち
)
を
友
(
とも
)
として、
026
悠然
(
いうぜん
)
として
観光
(
くわんくわう
)
する
余裕
(
よゆう
)
がなかつた。
027
あゝ
平民
(
へいみん
)
の
境遇
(
きやうぐう
)
が
羨
(
うらや
)
ましい。
028
人生
(
じんせい
)
貴族
(
きぞく
)
に
生
(
うま
)
るる
程
(
ほど
)
不幸
(
ふかう
)
不運
(
ふうん
)
のものはないぢやないか。
029
余
(
よ
)
は
何
(
なん
)
の
天罰
(
てんばつ
)
で
斯様
(
かやう
)
な
窮屈
(
きうくつ
)
な
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
に
生
(
うま
)
れて
来
(
き
)
たのだらう。
030
そしてお
前
(
まへ
)
は
左守
(
さもり
)
の
悴
(
せがれ
)
で、
031
貴族
(
きぞく
)
の
家
(
いへ
)
に
生
(
うま
)
れたと
云
(
い
)
つても
余
(
よ
)
に
比
(
くら
)
ぶれば
余程
(
よほど
)
の
自由
(
じいう
)
がある。
032
余
(
よ
)
は
王族
(
わうぞく
)
と
云
(
い
)
ふ
牢獄
(
らうごく
)
に
投
(
とう
)
ぜられ、
033
かかる
無限
(
むげん
)
の
天地
(
てんち
)
の
恩恵
(
おんけい
)
に
浴
(
よく
)
することの
出来
(
でき
)
ないのは
実
(
じつ
)
に
残念
(
ざんねん
)
だ。
034
代
(
かは
)
れるものならお
前
(
まへ
)
と
代
(
かは
)
つて
貰
(
もら
)
ひたい、
035
あゝあゝ』
036
と
溜息
(
ためいき
)
をつき
感慨
(
かんがい
)
無量
(
むりやう
)
の
体
(
てい
)
であつた。
037
ア『
若君
(
わかぎみ
)
様
(
さま
)
、
038
さう
思召
(
おぼしめ
)
すのも
御尤
(
ごもつと
)
もで
厶
(
ござ
)
いませうが、
039
何程
(
なにほど
)
苦
(
くる
)
しくつても、
040
そこを
辛抱
(
しんばう
)
して
頂
(
いただ
)
かねばなりませぬ。
041
殿下
(
でんか
)
は
一国
(
いつこく
)
の
親
(
おや
)
ともなり、
042
師
(
し
)
ともなり、
043
主
(
しゆ
)
ともお
成
(
な
)
り
遊
(
あそ
)
ばして
国民
(
こくみん
)
を
愛撫
(
あいぶ
)
し、
044
指導
(
しだう
)
し、
045
監督
(
かんとく
)
なさらねばならない
天
(
てん
)
よりの
御
(
ご
)
職掌
(
しよくしやう
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
046
御
(
ご
)
境遇
(
きやうぐう
)
には
同情
(
どうじやう
)
致
(
いた
)
しますが、
047
どうぞ
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
を
仰
(
おほ
)
せられずに、
048
父王
(
ちちわう
)
様
(
さま
)
の
跡
(
あと
)
をお
継
(
つ
)
ぎ
遊
(
あそ
)
ばし
天下
(
てんか
)
に
君臨
(
くんりん
)
して
頂
(
いただ
)
かねばなりませぬ。
049
私
(
わたし
)
はどこ
迄
(
まで
)
も
殿下
(
でんか
)
の
為
(
ため
)
には
身命
(
しんめい
)
を
賭
(
と
)
して
働
(
はたら
)
きませう。
050
又
(
また
)
成
(
なる
)
可
(
べ
)
く
御
(
ご
)
窮屈
(
きうくつ
)
でないやうに
取計
(
とりはから
)
ひますで
厶
(
ござ
)
いませう』
051
太
(
たい
)
『ウン、
052
それもさうだな。
053
余
(
よ
)
は
残念
(
ざんねん
)
に
思
(
おも
)
ふわい』
054
ア『
殿下
(
でんか
)
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
いませう、
055
此
(
この
)
絶景
(
ぜつけい
)
を
殿下
(
でんか
)
の
妙筆
(
めうひつ
)
で
描写
(
べうしや
)
なさいましては。
056
殿中
(
でんちう
)
に
居
(
ゐ
)
られます
時
(
とき
)
とは、
057
余程
(
よほど
)
変
(
かは
)
つた
立派
(
りつぱ
)
なものが
出来
(
でき
)
るでせう。
058
そしてお
心
(
こころ
)
が
安
(
やす
)
まるで
厶
(
ござ
)
いませうから』
059
太
(
たい
)
『いや、
060
余
(
よ
)
はもう
絵筆
(
ゑふで
)
を
捨
(
す
)
てた。
061
殿中
(
でんちう
)
許
(
ばか
)
りに
居
(
を
)
つて
園内
(
ゑんない
)
の
景色
(
けしき
)
を
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
得意
(
とくい
)
になつて
写生
(
しやせい
)
して
居
(
ゐ
)
たが、
062
かう
山野
(
さんや
)
に
出
(
で
)
て
造化
(
ざうくわ
)
の
芸術
(
げいじゆつ
)
を
目撃
(
もくげき
)
しては、
063
もう
筆
(
ふで
)
を
揮
(
ふる
)
ふ
気
(
き
)
にはなれない。
064
何程
(
なにほど
)
丹精
(
たんせい
)
を
凝
(
こ
)
らしても
万分一
(
まんぶいち
)
の
真景
(
しんけい
)
をも
描写
(
べうしや
)
することは
出来
(
でき
)
ぬぢやないか。
065
これだけ
雄大
(
ゆうだい
)
な
山川
(
さんせん
)
草木
(
さうもく
)
が
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
に
横
(
よこ
)
たはつて
居
(
ゐ
)
ては、
066
どこから
筆
(
ふで
)
を
下
(
お
)
ろしてよいやら、
067
其
(
その
)
端緒
(
たんちよ
)
さへ
認
(
みと
)
むるに
苦
(
くる
)
しむぢやないか。
068
唯
(
ただ
)
一本
(
いつぽん
)
の
樹木
(
じゆもく
)
を
描写
(
べうしや
)
するにも
余程
(
よほど
)
の
丹精
(
たんせい
)
を
凝
(
こ
)
らさねばならぬ。
069
際限
(
さいげん
)
もなき
山野
(
さんや
)
草木
(
さうもく
)
070
渺茫
(
べうばう
)
として
天
(
てん
)
に
続
(
つづ
)
く
大高原
(
だいかうげん
)
、
071
どうしてこれが
人間
(
にんげん
)
の
筆
(
ふで
)
に
描
(
ゑが
)
き
出
(
だ
)
されるものか。
072
王者
(
わうじや
)
だとか
貴族
(
きぞく
)
だとか、
073
高位
(
かうゐ
)
高官
(
かうくわん
)
だとか、
074
国民
(
こくみん
)
に
対
(
たい
)
し
威張
(
ゐば
)
つて
見
(
み
)
た
所
(
ところ
)
で、
075
神
(
かみ
)
の
力
(
ちから
)
、
076
自然
(
しぜん
)
の
風光
(
ふうくわう
)
に
比
(
くら
)
ぶれば
殆
(
ほと
)
んど
物
(
もの
)
の
数
(
かず
)
でもない、
077
児戯
(
じぎ
)
に
等
(
ひと
)
しいものだ。
078
天地
(
てんち
)
万有
(
ばんいう
)
は
079
余
(
よ
)
に
対
(
たい
)
しては
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
経文
(
きやうもん
)
で
無上
(
むじやう
)
の
教
(
をしへ
)
だ。
080
これを
見
(
み
)
ても
人間
(
にんげん
)
たるものの
腑甲斐
(
ふがひ
)
なさに
呆
(
あき
)
れ
返
(
かへ
)
らざるを
得
(
え
)
ぬではないか』
081
ア『
左様
(
さやう
)
で
厶
(
ござ
)
いますな。
082
殿下
(
でんか
)
は
観察眼
(
くわんさつがん
)
が
非常
(
ひじやう
)
に
優
(
すぐ
)
れて
居
(
ゐ
)
られます。
083
私
(
わたし
)
は
幸
(
さいは
)
ひ
小臣
(
せうしん
)
の
悴
(
せがれ
)
、
084
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
に
山野
(
さんや
)
を
逍遥
(
せうえう
)
し
得
(
う
)
るの
便宜
(
べんぎ
)
が
厶
(
ござ
)
いますので、
085
時々
(
ときどき
)
自然
(
しぜん
)
の
風光
(
ふうくわう
)
に
接
(
せつ
)
し、
086
日月
(
じつげつ
)
の
光
(
ひかり
)
を
浴
(
あ
)
びて、
087
自由
(
じいう
)
の
天地
(
てんち
)
に
遊
(
あそ
)
ぶ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ます
為
(
た
)
めか、
088
造化
(
ざうくわ
)
の
芸術
(
げいじゆつ
)
に
見慣
(
みな
)
れて
了
(
しま
)
ひ、
089
左
(
さ
)
迄
(
まで
)
雄大
(
ゆうだい
)
だとも、
090
絶妙
(
ぜつめう
)
だとも
考
(
かんが
)
へませなんだ。
091
一木
(
いちぼく
)
一草
(
いつさう
)
の
片
(
はし
)
に
至
(
いた
)
る
迄
(
まで
)
心
(
こころ
)
を
留
(
とめ
)
て
眺
(
なが
)
めた
時
(
とき
)
には、
092
如何
(
いか
)
にも
不可思議
(
ふかしぎ
)
千万
(
せんばん
)
の
現象
(
げんしやう
)
で
厶
(
ござ
)
います』
093
太
(
たい
)
『どうぢやアリナ、
094
此
(
この
)
山
(
やま
)
を
向
(
むか
)
ふへ
越
(
こ
)
えて
些
(
すこ
)
しく
珍
(
めづ
)
らしい
風景
(
ふうけい
)
を
眺望
(
てうばう
)
して
来
(
こ
)
うぢやないか』
095
ア『ハイ、
096
お
伴
(
とも
)
を
致
(
いた
)
しませう。
097
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
余
(
あま
)
り
遠方
(
ゑんぱう
)
へお
出
(
で
)
ましになると
帰
(
かへ
)
りが
遅
(
おそ
)
くなり、
098
頑迷
(
ぐわんめい
)
なる
役人
(
やくにん
)
共
(
ども
)
に
見
(
み
)
つけられては、
099
警戒
(
けいかい
)
が
益々
(
ますます
)
厳
(
げん
)
になり、
100
殿下
(
でんか
)
とかう
気楽
(
きらく
)
に
自由
(
じいう
)
に
散歩
(
さんぽ
)
する
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ないやうになるかも
知
(
し
)
れませぬ。
101
さうすればお
互
(
たがひ
)
の
迷惑
(
めいわく
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
102
今日
(
こんにち
)
は
殿下
(
でんか
)
の
仰
(
おほ
)
せの
場所
(
ばしよ
)
迄
(
まで
)
急
(
いそ
)
ぎ
足
(
あし
)
に
参
(
まゐ
)
り、
103
又
(
また
)
急
(
いそ
)
いで
殿中
(
でんちう
)
に
帰
(
かへ
)
りませう』
104
太
(
たい
)
『ヨシヨシ
105
お
前
(
まへ
)
の
意見
(
いけん
)
にも
従
(
したが
)
はなくちやなるまい。
106
そんなら
急
(
いそ
)
いで
城山
(
しろやま
)
を
北
(
きた
)
に
越
(
こ
)
え、
107
観光
(
くわんくわう
)
を
恣
(
ほしいまま
)
にしようぢやないか。
108
サア
行
(
ゆ
)
かう』
109
と
早
(
はや
)
くも
太子
(
たいし
)
は
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて
歩
(
ほ
)
を
進
(
すす
)
めた。
110
アリナは
写生
(
しやせい
)
に
要
(
えう
)
する
一切
(
いつさい
)
の
道具
(
だうぐ
)
を
背
(
せ
)
に
負
(
お
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
111
木
(
こ
)
の
間
(
ま
)
を
潜
(
くぐ
)
つて
余
(
あま
)
り
高
(
たか
)
からぬ
城山
(
しろやま
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
にあえぎあえぎ
登
(
のぼ
)
つていつた。
112
太子
(
たいし
)
は
山
(
やま
)
の
頂
(
いただき
)
に
立
(
た
)
つて
四方
(
よも
)
を
見渡
(
みわた
)
しながら、
113
『オイ、
114
アリナ、
115
タラハンの
市街
(
しがい
)
はタラハンの
首府
(
しゆふ
)
といつて、
116
随分
(
ずいぶん
)
広
(
ひろ
)
い
広
(
ひろ
)
いと
誰
(
たれ
)
も
彼
(
か
)
も
褒
(
ほ
)
めて
居
(
ゐ
)
るが、
117
僅
(
わづ
)
か
三万
(
さんまん
)
の
人口
(
じんこう
)
。
118
又
(
また
)
広大
(
くわうだい
)
なる
王城
(
わうじやう
)
も、
119
かう
山
(
やま
)
の
上
(
うへ
)
から
瞰下
(
みおろ
)
して
見
(
み
)
れば、
120
実
(
じつ
)
に
宇宙
(
うちう
)
の
断片
(
だんぺん
)
に
過
(
す
)
ぎないぢやないか。
121
かかる
小
(
ちひ
)
さい
物
(
もの
)
の
数
(
かず
)
にも
足
(
た
)
らぬ
王城
(
わうじやう
)
に
122
余
(
よ
)
は
十八
(
じふはち
)
年
(
ねん
)
も
窮屈
(
きうくつ
)
の
生活
(
せいくわつ
)
をやつて
居
(
ゐ
)
た
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
して、
123
心
(
こころ
)
恥
(
はづ
)
かしくなつて
来
(
き
)
た。
124
此
(
この
)
雄大
(
ゆうだい
)
なる
天
(
てん
)
に
続
(
つづ
)
いた
大広野
(
だいくわうや
)
の
中
(
なか
)
にチラチラ
見
(
み
)
える
人家
(
じんか
)
は
125
まるでハルの
湖水
(
こすい
)
に
船
(
ふね
)
が
浮
(
うか
)
んで
居
(
ゐ
)
るやうぢやないか。
126
山野
(
さんや
)
の
草木
(
さうもく
)
はソロソロ
芽
(
め
)
ぐみ
出
(
だ
)
し、
127
緑
(
みどり
)
、
128
紅
(
くれなゐ
)
、
129
黄
(
き
)
、
130
白
(
しろ
)
などの
花
(
はな
)
は
至
(
いた
)
る
所
(
ところ
)
に
咲
(
さ
)
き
満
(
み
)
ち、
131
白紙
(
はくし
)
を
散
(
ち
)
らしたやうに
所々
(
ところどころ
)
に
池
(
いけ
)
や
沼
(
ぬま
)
が
日光
(
につくわう
)
に
照
(
て
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
132
この
風光
(
ふうくわう
)
は
実
(
じつ
)
に
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
の
移写
(
いしや
)
のやうだ。
133
名
(
な
)
も
知
(
し
)
らぬ
珍
(
めづ
)
らしい
鳥
(
とり
)
はこの
通
(
とほ
)
り
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
飛
(
と
)
び
交
(
か
)
ひ
134
微妙
(
びめう
)
な
声
(
こゑ
)
を
放
(
はな
)
つて
天下
(
てんか
)
の
春
(
はる
)
を
唄
(
うた
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
135
余
(
よ
)
も
人間
(
にんげん
)
と
生
(
うま
)
れて
心
(
こころ
)
ゆくまで
天然
(
てんねん
)
の
恩恵
(
おんけい
)
に
浴
(
よく
)
したく
思
(
おも
)
ふ。
136
籠
(
かご
)
の
鳥
(
とり
)
の
境遇
(
きやうぐう
)
にある
余
(
よ
)
に
取
(
と
)
つては、
137
此
(
この
)
天地
(
てんち
)
は
実
(
じつ
)
に
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
慰安所
(
ゐあんしよ
)
だ。
138
命
(
いのち
)
の
洗濯場
(
せんたくば
)
だ。
139
あゝ
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
も
此所
(
ここ
)
にかうして
遊
(
あそ
)
んで
居
(
ゐ
)
たいやうだ。
140
仮令
(
たとへ
)
老臣
(
らうしん
)
が
何
(
なん
)
と
小言
(
こごと
)
を
云
(
い
)
はうとも
構
(
かま
)
はぬぢやないか。
141
グヅグヅいつたら
太子
(
たいし
)
の
位
(
くらゐ
)
を
捨
(
す
)
て
142
山
(
やま
)
に
入
(
い
)
り
杣人
(
そまびと
)
となつて
143
お
前
(
まへ
)
と
二人
(
ふたり
)
簡易
(
かんい
)
の
生活
(
せいくわつ
)
をやつてもよいぢやないか。
144
余
(
よ
)
は
再
(
ふたた
)
び
以前
(
いぜん
)
のやうな
貴族
(
きぞく
)
生活
(
せいくわつ
)
はやり
度
(
た
)
くない』
145
ア『
長
(
なが
)
らく
窮屈
(
きうくつ
)
な
生活
(
せいくわつ
)
に
苦
(
くる
)
しみ
遊
(
あそ
)
ばした
殿下
(
でんか
)
としては、
146
御
(
ご
)
無理
(
むり
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬ。
147
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
満足
(
まんぞく
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
到底
(
たうてい
)
無
(
な
)
いもので
厶
(
ござ
)
いますから、
148
どうぞ
心
(
こころ
)
を
取
(
と
)
り
直
(
なほ
)
して
一先
(
ひとま
)
づ
殿中
(
でんちう
)
にお
帰
(
かへ
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
149
余
(
あま
)
り
遅
(
おそ
)
くなると
又
(
また
)
老臣
(
らうしん
)
共
(
ども
)
が
騒
(
さわ
)
ぎ
立
(
た
)
てますから』
150
太
(
たい
)
『お
前
(
まへ
)
は
余
(
よ
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
なら
命
(
いのち
)
迄
(
まで
)
も
捨
(
す
)
てますと
常
(
つね
)
に
誓
(
ちか
)
つて
居
(
ゐ
)
るぢやないか。
151
老臣
(
らうしん
)
共
(
ども
)
の
小言
(
こごと
)
がそれ
程
(
ほど
)
お
前
(
まへ
)
は
怖
(
おそ
)
ろしいのか。
152
矢張
(
やつぱ
)
り
人間並
(
にんげんなみ
)
に
小
(
ちひ
)
さい
私欲
(
しよく
)
に
目
(
め
)
が
眩
(
くら
)
んで
居
(
ゐ
)
るのだらう。
153
帰
(
かへ
)
り
度
(
たく
)
ばお
前
(
まへ
)
勝手
(
かつて
)
に
帰
(
かへ
)
つたがよい。
154
余
(
よ
)
はこの
山頂
(
さんちやう
)
において
今夜
(
こんや
)
の
月
(
つき
)
を
賞
(
しやう
)
し、
155
宝石
(
はうせき
)
の
如
(
ごと
)
く
輝
(
かがや
)
く
星
(
ほし
)
の
空
(
そら
)
を
心
(
こころ
)
ゆく
迄
(
まで
)
眺
(
なが
)
めて
帰
(
かへ
)
るつもりだ。
156
十八
(
じふはち
)
年
(
ねん
)
の
今日
(
こんにち
)
迄
(
まで
)
未
(
ま
)
だ
一回
(
いつくわい
)
も
見
(
み
)
た
事
(
こと
)
もない
満天
(
まんてん
)
の
星光
(
せいくわう
)
、
157
円満
(
ゑんまん
)
具足
(
ぐそく
)
なる
三五
(
さんご
)
の
月
(
つき
)
、
158
其
(
その
)
月
(
つき
)
の
玉
(
たま
)
より
滴
(
したた
)
る
白露
(
しらつゆ
)
を
身
(
み
)
に
浴
(
あ
)
びて、
159
人間
(
にんげん
)
の
真味
(
しんみ
)
を
味
(
あぢ
)
はつて
見
(
み
)
たいのだ。
160
汝
(
なんぢ
)
は
是
(
これ
)
より
急
(
いそ
)
ぎ
殿中
(
でんちう
)
に
帰
(
かへ
)
つて
呉
(
く
)
れ。
161
余
(
よ
)
はもう
一
(
ひと
)
つ
向
(
むか
)
ふの
山
(
やま
)
を
踏査
(
たふさ
)
して
見
(
み
)
る
積
(
つも
)
りだ。
162
左様
(
さやう
)
なら』
163
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
らスタスタと
尾上
(
をのへ
)
を
伝
(
つた
)
ふて
北
(
きた
)
へ
北
(
きた
)
へと
進
(
すす
)
み
往
(
ゆ
)
かむとす。
164
アリナは
途方
(
とはう
)
に
呉
(
く
)
れ
乍
(
なが
)
ら
帰
(
かへ
)
らねばならず、
165
それだといつて
太子
(
たいし
)
を
山
(
やま
)
に
残
(
のこ
)
して
帰
(
かへ
)
るのは
尚
(
なほ
)
悪
(
わる
)
し、
166
仕方
(
しかた
)
なく
太子
(
たいし
)
の
足跡
(
あしあと
)
を
踏
(
ふ
)
んで
北
(
きた
)
へ
北
(
きた
)
へと
進
(
すす
)
み
往
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
となりける。
167
(
大正一三・一二・三
新一二・二八
於祥雲閣
加藤明子
録)
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【第12章 太子微行|第67巻|山河草木|霊界物語|/rm6712】
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