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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第67巻(午の巻)
序文
総説
第1篇 美山梅光
第1章 梅の花香
第2章 思想の波
第3章 美人の腕
第4章 笑の座
第5章 浪の皷
第2篇 春湖波紋
第6章 浮島の怪猫
第7章 武力鞘
第8章 糸の縺れ
第9章 ダリヤの香
第10章 スガの長者
第3篇 多羅煩獄
第11章 暗狐苦
第12章 太子微行
第13章 山中の火光
第14章 獣念気
第15章 貂心暴
第16章 酒艶の月
第17章 晨の驚愕
第4篇 山色連天
第18章 月下の露
第19章 絵姿
第20章 曲津の陋呵
第21章 針灸思想
第22章 憧憬の美
余白歌
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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第67巻(午の巻)
> 第2篇 春湖波紋 > 第10章 スガの長者
<<< ダリヤの香
(B)
(N)
暗狐苦 >>>
第一〇章 スガの
長者
(
ちようじや
)
〔一七一二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第67巻 山河草木 午の巻
篇:
第2篇 春湖波紋
よみ(新仮名遣い):
しゅんこはもん
章:
第10章 スガの長者
よみ(新仮名遣い):
すがのちょうじゃ
通し章番号:
1712
口述日:
1924(大正13)年12月27日(旧12月2日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年8月19日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
一行は、スガの港に到着する。
アリーは三五教により救われ、感謝の後に皆に別れる。
イルク、ダリヤは自分たちを助けてくれた宣伝使たち一行を、家に招く。
父親でスガの街の長者、アリスはウラル教に、息子・娘の無事を念じていた。
過去の悪行を思い、懺悔をしていたところ、息子・娘の無事の帰宅を知る。
アリスはウラル教の神殿に悔い改めの祝詞を上げ、息子・娘と三五教の宣伝使たちを迎え入れる。
そこへ、南方の方より鬨の声が聞こえ、雲焼けを認める。一同は、バルガン城に大足別将軍が攻め入り、市外を焼き払ったことを知る。(トルマン国の話は第70巻へ、梅公のその後の行動は第68巻第16章へ続く)
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2018-05-13 18:15:21
OBC :
rm6710
愛善世界社版:
132頁
八幡書店版:
第12輯 78頁
修補版:
校定版:
134頁
普及版:
68頁
初版:
ページ備考:
001
港
(
みなと
)
の
家々
(
いへいへ
)
の
点燈
(
ともしび
)
は
湖水
(
こすい
)
に
映
(
うつ
)
り、
002
恰
(
あたか
)
も
不夜城
(
ふやじやう
)
の
如
(
ごと
)
くにみえた。
003
天空
(
てんくう
)
冴
(
さ
)
え
渡
(
わた
)
り、
004
星光
(
せいくわう
)
きらめき
亘
(
わた
)
つて、
005
えも
云
(
い
)
はれぬ
清新
(
せいしん
)
の
空気
(
くうき
)
が
漂
(
ただよ
)
うた。
006
数百
(
すうひやく
)
人
(
にん
)
の
乗客
(
じやうきやく
)
は
先
(
さき
)
を
争
(
あらそ
)
うて
棧橋
(
さんばし
)
を
渡
(
わた
)
り、
007
各
(
おのおの
)
家路
(
いへぢ
)
に
帰
(
かへ
)
る
者
(
もの
)
、
008
宿
(
やど
)
を
求
(
もと
)
めて
行
(
ゆ
)
く
者
(
もの
)
、
009
一
(
いち
)
時
(
じ
)
は
非常
(
ひじやう
)
な
雑鬧
(
ざつたう
)
を
極
(
きは
)
めた。
010
梅公
(
うめこう
)
一行
(
いつかう
)
は
今
(
いま
)
や
船
(
ふね
)
をおりむとする
時
(
とき
)
、
011
船長
(
せんちやう
)
のアリーはあわただしく
梅公司
(
うめこうつかさ
)
の
前
(
まへ
)
に
跪
(
ひざまづ
)
き、
012
熱
(
あつ
)
い
涙
(
なみだ
)
を
流
(
なが
)
し
乍
(
なが
)
ら、
013
アリー
『
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
014
思
(
おも
)
はぬ
御縁
(
ごえん
)
によりまして、
015
天国
(
てんごく
)
の
福音
(
ふくいん
)
を
聞
(
き
)
かして
頂
(
いただ
)
き、
016
又
(
また
)
日頃
(
ひごろ
)
の
妄執
(
まうしふ
)
もサラリと
晴
(
は
)
れました。
017
之
(
これ
)
よりは
父
(
ちち
)
の
仇
(
あだ
)
を
報
(
ほう
)
ずる
代
(
かは
)
りに、
018
往来
(
ゆきき
)
の
人
(
ひと
)
を
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
の
如
(
ごと
)
くに
愛護
(
あいご
)
し、
019
善
(
ぜん
)
一筋
(
ひとすぢ
)
に
立
(
たち
)
返
(
かへ
)
ります。
020
どうか
私
(
わたし
)
たちの
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
に
021
平和
(
へいわ
)
と
喜
(
よろこ
)
びの
幸
(
さち
)
あらむ
事
(
こと
)
をお
守
(
まも
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
022
此
(
この
)
船
(
ふね
)
が
無
(
な
)
ければ、
023
私
(
わたし
)
は
何処
(
どこ
)
迄
(
まで
)
もお
伴
(
とも
)
が
願
(
ねが
)
いたいので
厶
(
ござ
)
いますが、
024
今日
(
こんにち
)
の
事情
(
じじやう
)
許
(
ゆる
)
しませぬから、
025
残念
(
ざんねん
)
乍
(
なが
)
らお
別
(
わか
)
れ
申
(
まを
)
します。
026
どうぞ
途中
(
とちう
)
無事
(
ぶじ
)
に
神業
(
しんげふ
)
成就
(
じやうじゆ
)
して、
027
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
へ
凱旋
(
がいせん
)
遊
(
あそ
)
ばすやう、
028
私
(
わたし
)
も
朝夕
(
あさゆふ
)
お
祈
(
いの
)
り
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ります。
029
次
(
つぎ
)
にダリヤさま、
030
イルクさま、
031
私
(
わたし
)
は
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
あなたの
家庭
(
かてい
)
を
仇敵
(
きうてき
)
として
附
(
つ
)
け
狙
(
ねら
)
つてをりましたが、
032
最早
(
もはや
)
今日
(
こんにち
)
となつては
三五
(
あななひ
)
の
神風
(
かみかぜ
)
に
吹
(
ふ
)
き
払
(
はら
)
はれ、
033
心中
(
しんちう
)
一点
(
いつてん
)
の
塵
(
ちり
)
も
止
(
と
)
めない
清浄
(
せいじやう
)
無垢
(
むく
)
の
霊身
(
れいしん
)
に
立
(
たち
)
返
(
かへ
)
つたやうな
精神
(
せいしん
)
が
致
(
いた
)
します。
034
恨
(
うら
)
み、
035
妬
(
ねた
)
みも
憤怒
(
ふんど
)
の
念
(
ねん
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬから、
036
どうぞ
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ。
037
そしてダリヤさまは
私
(
わたし
)
と
同
(
おな
)
じ
母
(
はは
)
の
胎内
(
たいない
)
より
生
(
うま
)
れた、
038
いはば
私
(
わたし
)
の
妹
(
いもうと
)
も
同様
(
どうやう
)
ですから、
039
どうか
今後
(
こんご
)
は
親
(
した
)
しく
御
(
ご
)
交際
(
かうさい
)
を
願
(
ねが
)
ひたう
厶
(
ござ
)
います。
040
お
父
(
とう
)
さまにも
宜
(
よろ
)
しく
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
041
イルク『
何事
(
なにごと
)
も
因縁事
(
いんねんごと
)
で
厶
(
ござ
)
いませう。
042
私
(
わたし
)
も
今
(
いま
)
の
貴方
(
あなた
)
のお
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
いて
安心
(
あんしん
)
致
(
いた
)
しました。
043
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は、
044
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
貴方
(
あなた
)
が
私
(
わたし
)
の
父
(
ちち
)
を
附狙
(
つけねら
)
つてゐられるといふ
事
(
こと
)
を、
045
方々
(
はうばう
)
の
人々
(
ひとびと
)
から
内聞
(
ないぶん
)
致
(
いた
)
しまして、
046
内々
(
ないない
)
心配
(
しんぱい
)
してゐた
所
(
ところ
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
047
最早
(
もはや
)
其
(
その
)
お
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
く
上
(
うへ
)
は、
048
私
(
わたし
)
も
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が
広
(
ひろ
)
くなつたやうな
心持
(
こころもち
)
が
致
(
いた
)
します。
049
ダリヤに
対
(
たい
)
して
貴方
(
あなた
)
は
兄上
(
あにうへ
)
さま、
050
又
(
また
)
私
(
わたし
)
もダリヤに
対
(
たい
)
しては
兄
(
あに
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
051
どうか
三
(
さん
)
人
(
にん
)
兄妹
(
きやうだい
)
となつて、
052
仲
(
なか
)
能
(
よ
)
う
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
恵
(
めぐみ
)
に
抱
(
いだ
)
かれて、
053
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
を
渡
(
わた
)
らうぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか』
054
アリ『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
055
こんな
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
は、
056
生
(
うま
)
れてから
一度
(
いちど
)
も
味
(
あぢ
)
はつた
事
(
こと
)
は
厶
(
ござ
)
いませぬ。
057
どうか
親子
(
おやこ
)
兄妹
(
きやうだい
)
仲
(
なか
)
よう
暮
(
く
)
らして
下
(
くだ
)
さいませ。
058
時
(
とき
)
にダリヤさま、
059
私
(
わたし
)
は
月
(
つき
)
に
一回
(
いつくわい
)
づつ
此
(
この
)
港
(
みなと
)
へ
参
(
まゐ
)
りますから、
060
又
(
また
)
どうぞ
遊
(
あそ
)
びに
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さい』
061
ダリ『ハイ、
062
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
063
貴方
(
あなた
)
も
此
(
この
)
港
(
みなと
)
へお
着
(
つ
)
きになつたならば、
064
キツト
私
(
わたし
)
の
宅
(
たく
)
をお
訪
(
たづ
)
ね
下
(
くだ
)
さいませ。
065
私
(
わたし
)
は
本当
(
ほんたう
)
の
兄
(
にい
)
さまのやうに
存
(
ぞん
)
じて
居
(
を
)
りますから』
066
アリー『
有難
(
ありがた
)
し
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御恵
(
みめぐみ
)
に
067
日頃
(
ひごろ
)
の
胸
(
むね
)
の
雲霧
(
くもきり
)
はれぬる』
068
ダリヤ『
一度
(
ひとたび
)
は
恐
(
こ
)
はしと
思
(
おも
)
ひ
一度
(
ひとたび
)
は
069
恋
(
こひ
)
しと
思
(
おも
)
ひし
人
(
ひと
)
に
別
(
わか
)
るる。
070
恋雲
(
こひぐも
)
も
吾
(
わが
)
兄上
(
あにうへ
)
と
聞
(
き
)
きしより
071
拭
(
ぬぐ
)
ふが
如
(
ごと
)
く
晴
(
は
)
れにける
哉
(
かな
)
』
072
アリー『
胤違
(
たねちが
)
ひ
吾
(
わが
)
妹
(
いもうと
)
と
知
(
し
)
り
乍
(
なが
)
ら
073
恋
(
こひ
)
のきづなに
縛
(
しば
)
られにける。
074
あゝされど
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
の
畏
(
かしこ
)
ければ
075
道
(
みち
)
ならぬ
道
(
みち
)
行
(
ゆ
)
くすべもなし』
076
梅公
(
うめこう
)
『
大空
(
おほぞら
)
の
星
(
ほし
)
冴
(
さ
)
えわたり
両人
(
りやうにん
)
が
077
きよき
心
(
こころ
)
を
照
(
て
)
りあかしぬる』
078
ヨリコ
姫
(
ひめ
)
『いざさらばアリーの
君
(
きみ
)
に
別
(
わか
)
れなむ
079
安
(
やす
)
くましませ
湖
(
うみ
)
の
浪路
(
なみぢ
)
を』
080
アリー『ヨリコ
姫
(
ひめ
)
珍
(
うづ
)
の
言霊
(
ことたま
)
おだやかに
081
吾
(
わが
)
魂
(
たましひ
)
を
打
(
うち
)
ぬきにける』
082
花香姫
(
はなかひめ
)
『
惟神
(
かむながら
)
厳
(
いづ
)
の
道芝
(
みちしば
)
ふみしより
083
いとさまざまの
色
(
いろ
)
をみる
哉
(
かな
)
』
084
かく
互
(
たがひ
)
に
別
(
わか
)
れの
歌
(
うた
)
を
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
085
軒燈
(
けんとう
)
輝
(
かがや
)
くスガの
港
(
みなと
)
の
市中
(
しちう
)
をイルクが
館
(
やかた
)
を
指
(
さ
)
して、
086
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
087
スガの
港
(
みなと
)
の
百万
(
ひやくまん
)
長者
(
ちやうじや
)
と
聞
(
きこ
)
えたるアリスの
館
(
やかた
)
は
広大
(
くわうだい
)
なる
土塀
(
どべい
)
をめぐらし、
088
数十棟
(
すうじつとう
)
の
麗
(
うるは
)
しき
邸宅
(
ていたく
)
や
倉庫
(
さうこ
)
が
建
(
たち
)
並
(
なら
)
び、
089
天
(
てん
)
を
封
(
ふう
)
じて
鬱蒼
(
うつさう
)
たる
庭木
(
にはき
)
が
彼方
(
あなた
)
此方
(
こなた
)
に
立
(
たち
)
並
(
なら
)
び、
090
自然
(
しぜん
)
の
森
(
もり
)
をなしてゐた。
091
表門
(
おもてもん
)
には
二人
(
ふたり
)
の
門番
(
もんばん
)
が
092
若主人
(
わかしゆじん
)
や
姫君
(
ひめぎみ
)
の
帰宅
(
きたく
)
なきに
心
(
こころ
)
を
痛
(
いた
)
め、
093
酒
(
さけ
)
を
呑
(
の
)
み
乍
(
なが
)
ら
小声
(
こごゑ
)
に
囁
(
ささや
)
いてゐる。
094
甲
(
かふ
)
(カル)
『オイ、
095
アル、
096
嬢様
(
ぢやうさま
)
は
今日
(
けふ
)
で
半月
(
はんつき
)
許
(
ばか
)
りになるのに、
097
未
(
ま
)
だお
帰
(
かへ
)
りにならないが、
098
一体
(
いつたい
)
何
(
ど
)
うなさつたのだらう。
099
離
(
はな
)
れ
島
(
じま
)
へ
御
(
ご
)
遊覧
(
いうらん
)
の
帰
(
かへ
)
り
路
(
みち
)
に
海賊
(
かいぞく
)
にさらはれ
遊
(
あそ
)
ばしたきり、
100
何
(
なん
)
の
音沙汰
(
おとさた
)
もないのだから、
101
親旦那
(
おほだんな
)
も
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
の
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
相
(
さう
)
な
顔
(
かほ
)
と
云
(
い
)
つたら、
102
見
(
み
)
るもお
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
のやうだ。
103
それに
若旦那
(
わかだんな
)
は
又
(
また
)
十日前
(
とをかまへ
)
から、
104
お
嬢
(
ぢやう
)
さまの
行方
(
ゆくへ
)
を
探
(
さが
)
して
来
(
く
)
ると
云
(
い
)
つて
行
(
ゆ
)
かれたきり、
105
之
(
これ
)
も
何
(
なん
)
の
音沙汰
(
おとさた
)
もないぢやないか。
106
丸
(
まる
)
で
木乃伊
(
みいら
)
取
(
と
)
りが
木乃伊
(
みいら
)
になつたやうなものだなア』
107
アル『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
108
目付役
(
めつけやく
)
が
無能
(
むのう
)
だからね。
109
まして
海賊
(
かいぞく
)
に
捉
(
とら
)
はれたなんて
云
(
い
)
はうものなら、
110
真青
(
まつさを
)
な
顔
(
かほ
)
をして
慄
(
ふる
)
うてゐるのだから、
111
たまつたものだないワ。
112
鼠
(
ねずみ
)
取
(
と
)
らぬ
猫
(
ねこ
)
は
飼
(
か
)
うとく
必要
(
ひつえう
)
はないのだけれどなア』
113
カル『
本当
(
ほんたう
)
に
汝
(
きさま
)
のいふ
通
(
とほ
)
りだよ。
114
去年
(
きよねん
)
の
春
(
はる
)
だつたが、
115
此
(
この
)
珍館
(
うづやかた
)
へ
泥棒
(
どろばう
)
が
忍
(
しの
)
び
込
(
こ
)
んだ
時
(
とき
)
、
116
俺
(
おれ
)
が
一目散
(
いちもくさん
)
に
目付役
(
めつけやく
)
へ
飛込
(
とびこ
)
んで、
117
目付役
(
めつけやく
)
に、
118
今
(
いま
)
泥棒
(
どろばう
)
が
這入
(
はい
)
つてゐますから、
119
今
(
いま
)
すぐに
来
(
き
)
てしばつて
下
(
くだ
)
さいと
云
(
い
)
つたら、
120
目付役
(
めつけやく
)
の
奴
(
やつ
)
、
121
真青
(
まつさを
)
の
面
(
つら
)
しやがつて、
122
地震
(
ぢしん
)
の
孫
(
まご
)
のやうにビリビリとふるうて
斗
(
ばか
)
りゐやがつて、
123
早速
(
さつそく
)
に
出
(
で
)
て
来
(
こ
)
ようとしやがらぬ。
124
そこに
七八
(
しちはち
)
人
(
にん
)
の
部下
(
ぶか
)
の
目付
(
めつけ
)
がコクリコクリと
夜舟
(
よぶね
)
をこいでいたが、
125
俺
(
おれ
)
が
泥棒
(
どろばう
)
が
入
(
はい
)
つたといふ
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
いて、
126
ビツクリ
目
(
め
)
をさまし、
127
梟
(
ふくろ
)
のよな
目
(
め
)
をさらし、
128
泥棒
(
どろばう
)
の
人相
(
にんさう
)
はどうだ、
129
何人
(
なんにん
)
連
(
づ
)
れか、
130
年
(
とし
)
はいくつ
位
(
くらゐ
)
だ、
131
どこから
入
(
はい
)
つたか、
132
着物
(
きもの
)
の
縞柄
(
しまがら
)
はどうだ、
133
男
(
をとこ
)
か
女
(
をんな
)
か、
134
老人
(
らうじん
)
か
子供
(
こども
)
か、
135
跛
(
びつこ
)
か
眼
(
め
)
つかちかなど
聞
(
き
)
かいでもよいことを
聞
(
き
)
きやがつて、
136
グヅグヅ
時間
(
じかん
)
をのばし、
137
可
(
い
)
いかげん
泥棒
(
どろばう
)
が
帰
(
かへ
)
つた
頃
(
ころ
)
、
138
ブリキをちやらつかせてやつて
来
(
こ
)
ようと
云
(
い
)
ふ
算段
(
さんだん
)
だ。
139
案
(
あん
)
の
定
(
ぢやう
)
、
140
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
ると、
141
泥棒
(
どろばう
)
がグツスリ
仕事
(
しごと
)
をして
帰
(
かへ
)
つて
了
(
しま
)
つた
跡
(
あと
)
だつた。
142
本当
(
ほんたう
)
に
盲
(
めくら
)
目付
(
めつけ
)
の
状態
(
じやうたい
)
だ。
143
到底
(
たうてい
)
吾々
(
われわれ
)
はこんな
泥棒
(
どろばう
)
の
蔓延
(
まんえん
)
する
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に、
144
安心
(
あんしん
)
して
暮
(
くら
)
すこた
出来
(
でき
)
ないワ、
145
目付
(
めつけ
)
といふ
者
(
もの
)
は
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
はぬ
者
(
もの
)
だね』
146
アル『それもさうだらうかい。
147
僅
(
わづか
)
な
月給
(
げつきふ
)
を
貰
(
もら
)
つて、
148
夜
(
よる
)
も
昼
(
ひる
)
もこき
使
(
つか
)
はれ、
149
命
(
いのち
)
がけの
仕事
(
しごと
)
をせいと
言
(
い
)
はれちや、
150
誰
(
たれ
)
だつて
尻込
(
しりご
)
みするよ。
151
目付
(
めつけ
)
になる
奴
(
やつ
)
ア、
152
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
社会
(
しやくわい
)
の
落伍者
(
らくごしや
)
斗
(
ばか
)
りだからな。
153
チツト
斗
(
ばか
)
り
気骨
(
きこつ
)
のある
者
(
もの
)
なら、
154
誰
(
たれ
)
がそんなつまらぬ
役
(
やく
)
を
勤
(
つと
)
めるものかい、
155
小学校
(
せうがくかう
)
の
教員
(
けういん
)
には
学
(
がく
)
が
足
(
た
)
らずしてなれず、
156
商売
(
しやうばい
)
せうにも
資本
(
しほん
)
はなし、
157
働
(
はたら
)
くのは
厭
(
いや
)
なり、
158
つまり
堕落
(
だらく
)
書生
(
しよせい
)
上
(
あが
)
りが
食
(
く
)
はむが
悲
(
かな
)
しさに
奉職
(
ほうしよく
)
してゐるのだから、
159
チツタ、
160
大目
(
おほめ
)
に
見
(
み
)
てやらねばなろまいよ』
161
カル『
併
(
しか
)
し、
162
目付
(
めつけ
)
は
月給
(
げつきふ
)
が
安
(
やす
)
いから、
163
先
(
ま
)
づ
大目
(
おほめ
)
にみるとした
所
(
ところ
)
で、
164
目付頭
(
めつけがしら
)
の
奴
(
やつ
)
、
165
エラ
相
(
さう
)
に
大将面
(
たいしやうづら
)
をさげて
居
(
を
)
り
乍
(
なが
)
ら、
166
泥棒
(
どろぼう
)
と
聞
(
き
)
いて、
167
腰
(
こし
)
を
抜
(
ぬ
)
かさん
計
(
ばか
)
りに
驚
(
おどろ
)
くのだから
恐
(
おそれ
)
入
(
い
)
るぢやないか。
168
今時
(
いまどき
)
の
役者
(
やくしや
)
にロクな
奴
(
やつ
)
が
有
(
あり
)
相
(
さう
)
なこたないけれど、
169
人民
(
じんみん
)
保護
(
ほご
)
の
任
(
にん
)
にある
目付役
(
めつけやく
)
がこんなザマでは、
170
天下
(
てんか
)
は
益々
(
ますます
)
紛乱
(
ふんらん
)
する
斗
(
ばか
)
りだ。
171
呑舟
(
どんしう
)
の
魚
(
うを
)
は
法網
(
はふまう
)
を
破
(
やぶ
)
つて
逃
(
のが
)
れ、
172
小魚
(
こうを
)
やモロコは
皆
(
みな
)
ふん
縛
(
じば
)
られて
獄中
(
ごくちう
)
に
呻吟
(
しんぎん
)
してゐる
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だから、
173
到底
(
たうてい
)
お
規定
(
きて
)
を
便
(
たよ
)
りに、
174
吾々
(
われわれ
)
は
安閑
(
あんかん
)
と
暮
(
くら
)
す
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
かぬ。
175
自守団
(
じしゆだん
)
でも
組織
(
そしき
)
して
自
(
みづか
)
ら
守
(
まも
)
るより
途
(
みち
)
はないだないか』
176
などと
目付役
(
めつけやく
)
の
悪口
(
あくこう
)
をついてゐる。
177
そこへイルク、
178
ダリヤの
兄妹
(
きやうだい
)
は
宣伝使
(
せんでんし
)
に
送
(
おく
)
られて
悠々
(
いういう
)
と
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
179
アル、
180
カルの
両人
(
りやうにん
)
は
夢
(
ゆめ
)
かと
許
(
ばか
)
り
狂喜
(
きやうき
)
し
乍
(
なが
)
ら、
181
アル『これはこれは、
182
若旦那
(
わかだんな
)
様
(
さま
)
、
183
お
嬢
(
ぢやう
)
さま、
184
待
(
まち
)
かねまして
厶
(
ござ
)
います』
185
カル『マアマアマア
186
無事
(
ぶじ
)
で
能
(
よ
)
う
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さいました。
187
これで
私
(
わたし
)
達
(
たち
)
も
睾丸
(
きんたま
)
のしわが
伸
(
の
)
びました。
188
親旦那
(
おほだんな
)
様
(
さま
)
のお
顔
(
かほ
)
のしわも
今日
(
けふ
)
からのんびりとする
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いませう。
189
ヤ、
190
沢山
(
たくさん
)
なお
連
(
つれ
)
さまで
厶
(
ござ
)
いますな』
191
イルク『さぞお
父
(
とう
)
さまが
待
(
ま
)
つてゐられただらうな。
192
サア
早
(
はや
)
く
案内
(
あんない
)
してくれ。
193
イヤ、
194
お
父
(
とう
)
さまに
二人
(
ふたり
)
が
無事
(
ぶじ
)
に
帰
(
かへ
)
つたと
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げてくれ。
195
其
(
その
)
間
(
あひだ
)
に
足
(
あし
)
でも
洗
(
あら
)
つてゐるから』
196
『ハイ
畏
(
かしこ
)
まりました』とカルを
門
(
もん
)
に
残
(
のこ
)
しおき、
197
アルはアリスの
居間
(
ゐま
)
に
急
(
いそ
)
ぎかけ
込
(
こ
)
んだ。
198
主人
(
あるじ
)
のアリスは
奥
(
おく
)
の
一間
(
ひとま
)
にウラル
彦
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
を
念
(
ねん
)
じ
終
(
をは
)
り、
199
煙草
(
たばこ
)
をくゆらし
乍
(
なが
)
ら、
200
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
け、
201
独
(
ひと
)
り
言
(
ごと
)
をいつてゐる。
202
アリス『あゝ
私
(
わし
)
程
(
ほど
)
型
(
かた
)
の
悪
(
わる
)
い
者
(
もの
)
が
世
(
よ
)
にあらうか。
203
親
(
おや
)
代々
(
だいだい
)
から
沢山
(
たくさん
)
な
財産
(
ざいさん
)
は
譲
(
ゆづ
)
られて、
204
生活
(
せいくわつ
)
上
(
じやう
)
の
困難
(
こんなん
)
は
少
(
すこ
)
しも
感
(
かん
)
じないが、
205
肝腎
(
かんじん
)
の
女房
(
にようばう
)
はイルクを
生
(
う
)
んだまま、
206
産後
(
さんご
)
の
肥立
(
ひだち
)
悪
(
わる
)
く、
207
冥土
(
めいど
)
黄泉
(
くわうせん
)
の
客
(
きやく
)
となり、
208
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
が
間
(
あひだ
)
空閨
(
くうけい
)
を
守
(
まも
)
つて
妻
(
つま
)
の
菩提
(
ぼだい
)
を
弔
(
とむら
)
うてゐた。
209
思
(
おも
)
ひまはせば
吾
(
わが
)
家
(
や
)
へ
古
(
ふる
)
くより
出入
(
でいり
)
する
売薬
(
ばいやく
)
行商人
(
ぎやうしやうにん
)
の
女房
(
にようばう
)
が
自分
(
じぶん
)
の
亡
(
な
)
くなつた
妻
(
つま
)
に
其
(
その
)
容貌
(
ようばう
)
そつくりなので、
210
忽
(
たちま
)
ち
煩悩
(
ぼんなう
)
の
犬
(
いぬ
)
に
逐
(
お
)
はれ、
211
道
(
みち
)
ならぬこととは
知
(
し
)
り
乍
(
なが
)
ら、
212
女房
(
にようばう
)
の
側
(
そば
)
へ
主人
(
しゆじん
)
の
不在
(
ふざい
)
を
考
(
かんが
)
へて、
213
幾度
(
いくど
)
となく
言
(
い
)
いよつてみたが、
214
どうしても
頑
(
ぐわん
)
として
応
(
おう
)
じてくれぬ。
215
恋
(
こひ
)
の
炎
(
ほのほ
)
は
吾
(
わが
)
身
(
み
)
をこがさん
計
(
ばか
)
りに
燃
(
も
)
え
立
(
た
)
つて、
216
到底
(
たうてい
)
こばり
切
(
き
)
れないので、
217
無理
(
むり
)
と
知
(
し
)
りつつ
彼
(
か
)
の
女房
(
にようばう
)
アンナを
手
(
て
)
だてを
以
(
もつ
)
て、
218
吾
(
わが
)
館
(
やかた
)
へ
引張
(
ひつぱ
)
り
込
(
こ
)
み、
219
倉
(
くら
)
の
中
(
なか
)
へ
閉
(
と
)
ぢこめておいて、
220
無理
(
むり
)
往生
(
わうじやう
)
に
女房
(
にようばう
)
となし、
221
遂
(
つひ
)
に
妹
(
いもうと
)
のダリヤを
生
(
う
)
んだが、
222
又
(
また
)
もやアンナは
先妻
(
せんさい
)
と
同様
(
どうやう
)
産後
(
さんご
)
の
肥立
(
ひだち
)
が
悪
(
わる
)
く、
223
先妻
(
せんさい
)
の
命日
(
めいにち
)
に
亡
(
な
)
くなつて
了
(
しま
)
つた。
224
そして
彼
(
かれ
)
の
夫
(
をつと
)
は
女房
(
にようばう
)
を
捕
(
と
)
られたのが
残念
(
ざんねん
)
さに、
225
ハルの
湖水
(
こすい
)
に
身
(
み
)
を
投
(
な
)
げて
死
(
し
)
んで
了
(
しま
)
つた、
226
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
自分
(
じぶん
)
の
運
(
うん
)
の
悪
(
わる
)
いのも
天
(
てん
)
の
為
(
な
)
す
業
(
わざ
)
であらう。
227
杖
(
つゑ
)
とも
力
(
ちから
)
とも
柱
(
はしら
)
とも
頼
(
たの
)
む
二人
(
ふたり
)
の
愛児
(
あいじ
)
は、
228
又
(
また
)
もや
行方
(
ゆくへ
)
不明
(
ふめい
)
となり、
229
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
巨万
(
きよまん
)
の
富
(
とみ
)
を
抱
(
かか
)
へて、
230
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
残
(
のこ
)
つてゐても、
231
何一
(
なにひと
)
つの
楽
(
たのし
)
みもなく、
232
それだと
云
(
い
)
つて、
233
死
(
し
)
ぬにも
死
(
し
)
なれず、
234
現世
(
げんせ
)
に
於
(
おい
)
て
犯
(
をか
)
した
罪
(
つみ
)
の
報
(
むく
)
ひによつて、
235
死後
(
しご
)
は
必
(
かなら
)
ず
地獄
(
ぢごく
)
のドン
底
(
ぞこ
)
に
落
(
おと
)
されるだらう。
236
それを
思
(
おも
)
へば
淋
(
さび
)
し
乍
(
なが
)
らも、
237
一
(
いち
)
日
(
にち
)
でも
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
永
(
なが
)
らへて
居
(
を
)
りたいやうな
気
(
き
)
もする。
238
あゝ
何
(
ど
)
うしたら、
239
此
(
この
)
苦患
(
くげん
)
から
逃
(
のが
)
れる
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
るだらう。
240
ウラル
彦
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
念
(
ねん
)
じ
乍
(
なが
)
ら、
241
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
を
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
見透
(
みす
)
かされるやうな
気
(
き
)
がして
242
何
(
なん
)
だか
恐
(
おそ
)
ろしいやうだ。
243
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
前
(
まへ
)
へ
出
(
で
)
るのでさへもオヅオヅして
来
(
く
)
る。
244
あゝ
淋
(
さび
)
しい
事
(
こと
)
だ。
245
最早
(
もはや
)
二人
(
ふたり
)
の
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
は、
246
無事
(
ぶじ
)
に
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
る
気遣
(
きづか
)
ひはあるまい。
247
あゝ
何
(
ど
)
うしたら
可
(
よ
)
からうかなア』
248
と
首
(
くび
)
をうな
垂
(
だ
)
れて、
249
悔
(
くや
)
み
涙
(
なみだ
)
にくれてゐた。
250
そこへ
門番
(
もんばん
)
のアルが
慌
(
あわ
)
ただしく、
251
ニコニコとして
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
252
アル『
大旦那
(
おほだんな
)
様
(
さま
)
、
253
お
喜
(
よろこ
)
びなさいませ。
254
お
二人
(
ふたり
)
様
(
さま
)
が
無事
(
ぶじ
)
お
帰
(
かへ
)
りになりました』
255
アリス『ナニ、
256
二人
(
ふたり
)
が
帰
(
かへ
)
つたか。
257
そしてどちらも
機嫌
(
きげん
)
ようしてゐるか』
258
アル『ハイ、
259
シヤンシヤンしてゐられますよ。
260
何
(
なん
)
だか
四
(
よ
)
人
(
にん
)
許
(
ばか
)
りお
伴
(
つ
)
れがあるやうで
厶
(
ござ
)
います。
261
詳
(
くは
)
しいことは
存
(
ぞん
)
じませぬが、
262
若旦那
(
わかだんな
)
様
(
さま
)
もお
嬢様
(
ぢやうさま
)
も、
263
あの
方々
(
かたがた
)
に
助
(
たす
)
けられてお
帰
(
かへ
)
りになつたのぢやなからうかと
思
(
おも
)
ひます。
264
今
(
いま
)
お
足
(
あし
)
を
洗
(
あら
)
つてゐられますから、
265
軈
(
やが
)
てここへお
出
(
い
)
でになりませう』
266
アリス『それは
何
(
なに
)
より
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
だ。
267
私
(
わし
)
は
之
(
これ
)
からウラルの
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
へ
御
(
お
)
礼
(
れい
)
を
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げるから、
268
お
前
(
まへ
)
たちは
番頭
(
ばんとう
)
や
下女
(
げぢよ
)
にさう
云
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れ。
269
早
(
はや
)
く
夕飯
(
ゆふげ
)
の
用意
(
ようい
)
をせよ』
270
アル『ハイ、
271
畏
(
かしこ
)
まりました。
272
左様
(
さやう
)
ならば
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
』
273
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
274
勝手元
(
かつてもと
)
をさして
急
(
いそ
)
ぎ
行
(
ゆ
)
く。
275
アリスは
神殿
(
しんでん
)
に
向
(
むか
)
ひ
感謝
(
かんしや
)
の
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
してゐる。
276
アリス『
天地
(
てんち
)
万有
(
ばんいう
)
の
大
(
だい
)
司宰神
(
しさいじん
)
たるウラル
彦
(
ひこ
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に、
277
スガの
里
(
さと
)
の
薬屋
(
くすりや
)
の
主人
(
あるじ
)
、
278
アリス
謹
(
つつし
)
み
敬
(
うやま
)
ひ、
279
感謝
(
かんしや
)
の
辞
(
ことば
)
を
捧
(
ささ
)
げます。
280
日
(
ひ
)
に
夜
(
よ
)
に
罪悪
(
ざいあく
)
を
重
(
かさ
)
ね
来
(
きた
)
りし、
281
悪魔
(
あくま
)
に
等
(
ひと
)
しき
吾々
(
われわれ
)
が
身魂
(
みたま
)
をも
見
(
み
)
すて
給
(
たま
)
はず、
282
最愛
(
さいあい
)
なる
吾
(
わが
)
倅
(
せがれ
)
、
283
吾
(
わが
)
娘
(
むすめ
)
を
安全
(
あんぜん
)
無事
(
ぶじ
)
に、
284
吾
(
わが
)
家
(
や
)
に
帰
(
かへ
)
させ
給
(
たま
)
ひし、
285
其
(
その
)
広
(
ひろ
)
き
厚
(
あつ
)
き
御
(
ご
)
恩徳
(
おんとく
)
を、
286
有難
(
ありがた
)
く
感謝
(
かんしや
)
致
(
いた
)
します。
287
今日
(
こんにち
)
迄
(
まで
)
、
288
吾
(
わが
)
身
(
み
)
は
貪
(
どん
)
瞋
(
じん
)
痴
(
ち
)
の
三毒
(
さんどく
)
にあてられ、
289
五逆
(
ごぎやく
)
十悪
(
じふあく
)
の
巷
(
ちまた
)
に
迷
(
まよ
)
ひ、
290
人
(
ひと
)
の
貧苦
(
ひんく
)
困窮
(
こんきう
)
を
意
(
い
)
に
介
(
かい
)
せず、
291
利己
(
りこ
)
一片
(
いつぺん
)
の
利
(
り
)
に
走
(
はし
)
り、
292
大神
(
おほかみ
)
の
御子
(
みこ
)
たる
数多
(
あまた
)
の
人民
(
じんみん
)
を
苦
(
くるし
)
めまつり、
293
加
(
くは
)
ふるに
人
(
ひと
)
の
妻女
(
さいぢよ
)
を
奪
(
うば
)
ひ、
294
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
限
(
かぎり
)
を
尽
(
つく
)
して
参
(
まゐ
)
りました。
295
極
(
ごく
)
重悪人
(
ぢうあくにん
)
の
私
(
わたくし
)
をも
見
(
み
)
すて
給
(
たま
)
はず、
296
御
(
おん
)
恵
(
めぐ
)
み
下
(
くだ
)
さいました
其
(
その
)
広大
(
くわうだい
)
無辺
(
むへん
)
の
御
(
ご
)
仁慈
(
じんじ
)
に
対
(
たい
)
し、
297
感謝
(
かんしや
)
にたへませぬ。
298
あゝ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
、
299
私
(
わたくし
)
は
今日
(
こんにち
)
より
前非
(
ぜんぴ
)
を
悔
(
くひ
)
改
(
あらた
)
め、
300
祖先
(
そせん
)
より
伝
(
つた
)
はりし
一切
(
いつさい
)
の
財産
(
ざいさん
)
をあなたに
奉
(
たてまつ
)
り、
301
スガ
山
(
やま
)
の
山元
(
やまもと
)
に
清浄
(
しやうじやう
)
の
地
(
ち
)
を
選
(
えら
)
み、
302
荘厳
(
さうごん
)
なる
社殿
(
しやでん
)
を
営
(
いとな
)
み、
303
吾
(
わが
)
罪悪
(
ざいあく
)
の
万分一
(
まんぶんいち
)
をつぐない、
304
来世
(
らいせ
)
の
冥福
(
めいふく
)
を
与
(
あた
)
へられむ
事
(
こと
)
を
祈
(
いの
)
り
奉
(
たてまつ
)
ります。
305
どうか
吾
(
わが
)
願
(
ねがひ
)
を
平
(
たひら
)
けく
安
(
やす
)
らけく、
306
相
(
あひ
)
うべなひ
下
(
くだ
)
さいまして、
307
子孫
(
しそん
)
永久
(
えいきう
)
に
立
(
たち
)
栄
(
さか
)
え、
308
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
ご
)
恩徳
(
おんとく
)
に
永久
(
えいきう
)
に
浴
(
よく
)
し
得
(
う
)
る
様
(
やう
)
、
309
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
あらむ
事
(
こと
)
を、
310
ひとへに
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
ります。
311
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
ませ』
312
と
悔悟
(
くわいご
)
の
涙
(
なみだ
)
をこぼし
乍
(
なが
)
ら、
313
感謝
(
かんしや
)
と
哀願
(
あいぐわん
)
の
祈願
(
きぐわん
)
をこめてゐる。
314
そこへ
兄
(
あに
)
のイルクを
先頭
(
せんとう
)
にダリヤ
姫
(
ひめ
)
、
315
梅公
(
うめこう
)
、
316
ヨリコ
姫
(
ひめ
)
、
317
花香姫
(
はなかひめ
)
、
318
シーゴーの
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
連
(
づ
)
れ、
319
悠々
(
いういう
)
として
這入
(
はい
)
つて
来
(
き
)
た。
320
アリス『ヤ、
321
其方
(
そなた
)
は
倅
(
せがれ
)
か、
322
……
娘
(
むすめ
)
か、
323
能
(
よ
)
うマア
無事
(
ぶじ
)
で
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
324
父
(
ちち
)
はここ
半月
(
はんつき
)
の
間
(
あひだ
)
、
325
夜
(
よ
)
の
目
(
め
)
もロクに
寝
(
ね
)
ず、
326
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
におすがり
申
(
まを
)
してゐた。
327
其
(
その
)
おかげで、
328
今日
(
けふ
)
はお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
の
無事
(
ぶじ
)
な
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
ることを
得
(
え
)
たのだ。
329
モウ
私
(
わし
)
はこれつきり、
330
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
去
(
さ
)
つても
心残
(
こころのこ
)
りはない。
331
……
何
(
いづ
)
れの
方
(
かた
)
かは
知
(
し
)
りませぬが
332
よくマア
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
を
送
(
おく
)
つて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました。
333
謹
(
つつし
)
んでお
礼
(
れい
)
を
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げます』
334
梅公
(
うめこう
)
『
始
(
はじ
)
めてお
目
(
め
)
にかかります、
335
私
(
わたし
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
のお
伴
(
とも
)
に
仕
(
つか
)
へる
梅公
(
うめこう
)
と
申
(
まを
)
す
者
(
もの
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
336
波切丸
(
なみきりまる
)
の
船中
(
せんちう
)
に
於
(
おい
)
て、
337
イルクさまと
眤懇
(
じつこん
)
になり、
338
一夜
(
いちや
)
の
宿
(
やど
)
を
御
(
ご
)
無心
(
むしん
)
にあがりました。
339
どうか
宜
(
よろ
)
しうお
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
します』
340
アリス『それは
能
(
よ
)
うこそお
出
(
いで
)
下
(
くだ
)
さいました。
341
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り、
342
茅屋
(
あばらや
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
343
家
(
いへ
)
は
広
(
ひろ
)
う
厶
(
ござ
)
いますから、
344
幾人
(
いくにん
)
さまたり
共
(
とも
)
お
泊
(
とま
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
345
ダリヤ『お
父
(
とう
)
様
(
さま
)
、
346
此
(
この
)
神司
(
かむつかさ
)
様
(
さま
)
に
妾
(
わたし
)
は
助
(
たす
)
けて
頂
(
いただ
)
いたのですよ。
347
此
(
この
)
方
(
かた
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
に
仍
(
よ
)
つて、
348
妾
(
わたし
)
は
危
(
あやふ
)
い
所
(
ところ
)
を
助
(
たす
)
けられたやうなものですから、
349
どうぞお
礼
(
れい
)
を
申
(
まを
)
して
下
(
くだ
)
さい。
350
それから、
351
此
(
この
)
奇麗
(
きれい
)
なお
方
(
かた
)
は、
352
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
のお
伴
(
とも
)
で、
353
ヨリコ
姫
(
ひめ
)
さま
花香姫
(
はなかひめ
)
さまといふお
方
(
かた
)
で
厶
(
ござ
)
います。
354
又
(
また
)
白髪
(
はくはつ
)
のお
方
(
かた
)
はシーゴー
様
(
さま
)
といふ
俄
(
にはか
)
道心
(
だうしん
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
355
本当
(
ほんたう
)
に
心意気
(
こころいき
)
のよい
方
(
かた
)
ですから、
356
無事
(
ぶじ
)
に
吾
(
わが
)
家
(
や
)
へ
帰
(
かへ
)
られた
喜
(
よろこ
)
びを
兼
(
か
)
ね、
357
家
(
いへ
)
の
祈祷
(
きたう
)
をして
頂
(
いただ
)
かうと
思
(
おも
)
つて、
358
お
伴
(
とも
)
したので
厶
(
ござ
)
います』
359
アリス『それはそれは、
360
何
(
いづ
)
れも
方様
(
がたさま
)
、
361
ようこそお
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいました。
362
サアどうぞ、
363
くつろいで
下
(
くだ
)
さいませ。
364
御
(
ご
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
は
少
(
すこ
)
しもいりませぬから』
365
梅公
(
うめこう
)
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
366
お
言葉
(
ことば
)
に
従
(
したが
)
ひ、
367
性来
(
しやうらい
)
の
気儘者
(
きままもの
)
、
368
自由
(
じいう
)
にさして
頂
(
いただ
)
きます。
369
サア
皆
(
みな
)
さま、
370
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
のお
許
(
ゆる
)
しが
出
(
で
)
たのだから、
371
体
(
からだ
)
の
疲
(
つか
)
れを
癒
(
い
)
する
為
(
ため
)
横
(
よこ
)
におなりなさい』
372
ダリヤ『お
父
(
とう
)
さま、
373
此
(
この
)
方々
(
かたがた
)
は
本当
(
ほんたう
)
の
活神
(
いきがみ
)
様
(
さま
)
ですから、
374
粗忽
(
そこつ
)
があつては
可
(
い
)
けませぬ。
375
どうぞ
私
(
わたし
)
にお
世話
(
せわ
)
を
任
(
まか
)
して
下
(
くだ
)
さいませぬか』
376
アリス『よしよし、
377
私
(
わし
)
もお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
の
帰
(
かへ
)
つたのを
見
(
み
)
て、
378
俄
(
にはか
)
に
体
(
からだ
)
がガツカリと
草労
(
くたびれ
)
て
来
(
き
)
たやうだ。
379
皆
(
みな
)
さまに
失礼
(
しつれい
)
だけれど、
380
離室
(
はなれ
)
へ
行
(
い
)
つてゆつくり
休
(
やす
)
まして
頂
(
いただ
)
くから、
381
手落
(
ておち
)
のないやう、
382
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
のないやう、
383
おもてなしをしておくれや』
384
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
385
エビの
様
(
やう
)
に
曲
(
まが
)
つた
腰
(
こし
)
を
右
(
みぎ
)
の
掌
(
てのひら
)
で
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つ
打
(
う
)
ち
乍
(
なが
)
ら、
386
アリス『
皆様
(
みなさま
)
、
387
左様
(
さやう
)
なら、
388
失礼
(
しつれい
)
致
(
いた
)
します』
389
と
一言
(
いちごん
)
を
残
(
のこ
)
し、
390
離室
(
はなれ
)
の
座敷
(
ざしき
)
に
身
(
み
)
をかくした。
391
此
(
この
)
時
(
とき
)
南方
(
なんぱう
)
の
空
(
そら
)
に
向
(
むか
)
つて
鬧
(
とき
)
の
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
392
梅公
(
うめこう
)
はヨリコ
姫
(
ひめ
)
と
共
(
とも
)
に
庭先
(
にはさき
)
に
立
(
たち
)
出
(
い
)
で、
393
音
(
おと
)
する
方
(
かた
)
を
眺
(
なが
)
むれば、
394
大空
(
おほぞら
)
は
大変
(
たいへん
)
な
雲焼
(
くもやけ
)
がしてゐる。
395
之
(
こ
)
れはバルガン
城
(
じやう
)
へ
大足別
(
おほだるわけ
)
将軍
(
しやうぐん
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
が
攻
(
せ
)
め
入
(
い
)
つて、
396
市街
(
しがい
)
を
焼
(
やき
)
払
(
はら
)
うた
大火焔
(
だいくわえん
)
が、
397
空
(
そら
)
の
色
(
いろ
)
を
染
(
そめ
)
てゐたのである。
398
(
大正一三・一二・二
新一二・二七
於祥雲閣
松村真澄
録)
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(B)
(N)
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