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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第70巻(酉の巻)
序文
総説
第1篇 花鳥山月
第1章 信人権
第2章 折衝戦
第3章 恋戦連笑
第4章 共倒れ
第5章 花鳥山
第6章 鬼遊婆
第7章 妻生
第8章 大勝
第2篇 千種蛮態
第9章 針魔の森
第10章 二教聯合
第11章 血臭姫
第12章 大魅勒
第13章 喃悶題
第14章 賓民窟
第15章 地位転変
第3篇 理想新政
第16章 天降里
第17章 春の光
第18章 鳳恋
第19章 梅花団
第20章 千代の声
第21章 三婚
第22章 優秀美
附 記念撮影
余白歌
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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第70巻(酉の巻)
> 第1篇 花鳥山月 > 第1章 信人権
<<< 総説
(B)
(N)
折衝戦 >>>
第一章
信人権
(
しんじんけん
)
〔一七六八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第70巻 山河草木 酉の巻
篇:
第1篇 花鳥山月
よみ(新仮名遣い):
かちょうさんげつ
章:
第1章 信人権
よみ(新仮名遣い):
しんじんけん
通し章番号:
1768
口述日:
1925(大正14)年02月13日(旧01月21日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年10月16日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
物語の背景
バラモン教の根源地たるインドは、七千余国を一団となす地であり、浄行(僧侶階級?)、刹帝利(クシャトリア=武士)、首陀(シュードラ=隷属民)、毘舎(ヴァイシャ=商人)、その他の階級が設けられていた。
一方、ウラル教がデカタン高原の一角に勢力を築き、バラモン教の本拠ハルナの都に向かって教線を拡大しつつあった。
この状況に、バラモン教の大黒主は「宣伝将軍」を各地に遣わし、とくに大足別将軍に数千の兵を与え、討伐を主目的として出発せしめていた。
舞台となるトルマン国は、デカタン高原の最も土地の肥えた所にあり、国土は広くはないが、かなりの人口を持っている。そして、地理上、代々ウラル教を報じていた。
大黒主は、トルマン国にもバラモンの勢力を広めるため、寵臣キューバーに命じて、スコブツエン宗という、名前は違うが内容は同じ一派を立てさせ、トルマン国にて布教させた。しかし、王家・有力者の人々はスコブツエン宗に入信することはなかった。
キューバーは、大黒主の寵臣として、また密命を受けた身として、特殊の権利と地位を与えられていた。バラモン軍の将軍たちでさえも、キューバーに従わざるを得なかった。
キューバーのスコブツエン宗は、バラモン教に輪をかけて難行・苦行を重んじる残酷な宗旨である。
ある小さな山里の古ぼけた祠の前で、二人の三五教徒の首陀、レールとマークが、バラモンの批判をしている。その現世的なやり方、差別をあげつらい、首陀向上運動の進展、信仰の独立を目指している。
そこへ、スコブツエン宗のキューバーが現れた。首陀たちはにわかに話題を転じ、さっさと逃げてしまう。
キューバーは、耳さとく大黒主への反逆を聞き取って姿をあらわしたが、レールとマークもいち早く山林に姿を隠してしまった。レール、マークは再びキューバーの悪口に花を咲かせるが、またもやキューバーが追ってくるのを認めて、山林の奥へ逃げてしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm7001
愛善世界社版:
7頁
八幡書店版:
第12輯 391頁
修補版:
校定版:
7頁
普及版:
2頁
初版:
ページ備考:
001
往古
(
わうこ
)
文化
(
ぶんくわ
)
の
中心
(
ちうしん
)
、
002
仏祖
(
ぶつそ
)
の
出現地
(
しゆつげんち
)
なる
七千
(
しちせん
)
余
(
よ
)
ケ
国
(
こく
)
をかためて
一団
(
いちだん
)
となしたる
印度
(
いんど
)
は
003
浄行
(
じやうぎやう
)
、
004
刹帝利
(
せつていり
)
、
005
首陀
(
しゆだ
)
、
006
毘舎
(
びしや
)
其
(
その
)
他
(
た
)
各種
(
かくしゆ
)
の
階級
(
かいきふ
)
が
設
(
まう
)
けられて
居
(
ゐ
)
た。
007
殊
(
こと
)
に
印度
(
いんど
)
はバラモン
教
(
けう
)
の
根元地
(
こんげんち
)
とも
云
(
い
)
ふべき
国
(
くに
)
である。
008
さうしてウラル
教
(
けう
)
はデカタン
高原
(
かうげん
)
の
一角
(
いつかく
)
に、
009
相当
(
さうたう
)
に
勢力
(
せいりよく
)
を
保
(
たも
)
ち、
010
バラモン
教
(
けう
)
の
本城
(
ほんじやう
)
ハルナの
都
(
みやこ
)
に
向
(
むか
)
つて、
011
ややもすれば
教線
(
けうせん
)
を
拡張
(
くわくちやう
)
し、
012
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
根底
(
こんてい
)
を
覆
(
くつが
)
へさむとするの
慨
(
がい
)
があつた。
013
茲
(
ここ
)
に
大黒主
(
おほくろぬし
)
は
宣伝
(
せんでん
)
将軍
(
しやうぐん
)
を
四方
(
しはう
)
に
遣
(
つかは
)
し、
014
殊
(
こと
)
にこの
方面
(
はうめん
)
は
大足別
(
おほだるわけ
)
将軍
(
しやうぐん
)
に
数千
(
すうせん
)
の
兵
(
へい
)
を
与
(
あた
)
へて
015
討伐
(
たうばつ
)
のみを
主
(
しゆ
)
たる
目的
(
もくてき
)
にて
出発
(
しゆつぱつ
)
せしめたのである。
016
扨
(
さ
)
てデカタン
高原内
(
かうげんない
)
の
最
(
もつと
)
も
土地
(
とち
)
肥
(
こえ
)
たるトルマン
国
(
ごく
)
は
余
(
あま
)
り
大
(
だい
)
なる
区域
(
くゐき
)
ではないが、
017
相当
(
さうたう
)
に
沢山
(
たくさん
)
な
人
(
ひと
)
が
住
(
す
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
018
さうして
地理
(
ちり
)
上
(
じやう
)
の
関係
(
くわんけい
)
からウラル
教
(
けう
)
を
奉
(
ほう
)
じて
居
(
ゐ
)
た。
019
トルマン
国
(
ごく
)
の
王
(
わう
)
の
名
(
な
)
はガーデンと
云
(
い
)
ふ。
020
ガーデンはウラル
教
(
けう
)
を
信
(
しん
)
ずるでもなく、
021
又
(
また
)
排斥
(
はいせき
)
するでもなく、
022
祖先
(
そせん
)
伝来
(
でんらい
)
の
宗教
(
しうけう
)
として、
023
弔
(
とむら
)
ひの
儀式
(
ぎしき
)
にのみ
用
(
もち
)
ふる
位
(
くらゐ
)
の
観念
(
くわんねん
)
を
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
024
然
(
しか
)
るに
国民
(
こくみん
)
の
過半数
(
くわはんすう
)
はウラル
教
(
けう
)
を
奉
(
ほう
)
じ、
025
一部分
(
いちぶぶん
)
はバラモン
教
(
けう
)
に
入
(
い
)
り、
026
二三分
(
にさんぶ
)
通
(
どほ
)
りはスコブツエン
宗
(
しう
)
に
新
(
あらた
)
に
入信
(
にふしん
)
する
事
(
こと
)
となり、
027
其
(
その
)
勢
(
いきほ
)
ひは
燎原
(
れうげん
)
を
焼
(
や
)
く
火
(
ひ
)
の
如
(
ごと
)
くであつた。
028
ハルナの
都
(
みやこ
)
の
大黒主
(
おほくろぬし
)
はバラモン
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
を
遣
(
つか
)
はして、
029
トルマン
国
(
ごく
)
を
全部
(
ぜんぶ
)
バラモンの
勢力
(
せいりよく
)
範囲
(
はんゐ
)
になさむものと、
030
いろいろ
苦心
(
くしん
)
の
結果
(
けつくわ
)
、
031
到底
(
たうてい
)
バラモンの
名
(
な
)
にてはこの
国
(
くに
)
の
人心
(
じんしん
)
に
投
(
とう
)
じない
事
(
こと
)
を
悟
(
さと
)
り、
032
狡猾
(
かうくわつ
)
にして
万事
(
ばんじ
)
抜目
(
ぬけめ
)
のない
大黒主
(
おほくろぬし
)
は、
033
日頃
(
ひごろ
)
手慣
(
てなづ
)
けおいた、
034
寵臣
(
ちようしん
)
のキユーバーに
命
(
めい
)
じ、
035
バラモン
教
(
けう
)
の
名
(
な
)
を
避
(
さ
)
けて、
036
スコブツエン
宗
(
しう
)
と
云
(
い
)
ふ、
037
変名
(
へんめい
)
同主義
(
どうしゆぎ
)
の
宗教
(
しうけう
)
を
築
(
きづ
)
かせ、
038
先
(
ま
)
づ
第一
(
だいいち
)
にトルマン
王
(
わう
)
を
帰順
(
きじゆん
)
せしめむと
百方
(
ひやくぱう
)
尽力
(
じんりよく
)
して
居
(
ゐ
)
たのである。
039
トルマン
王
(
わう
)
のガーデンには
千草姫
(
ちぐさひめ
)
と
云
(
い
)
ふ
王妃
(
わうひ
)
があり、
040
太子
(
たいし
)
はチウイン、
041
王女
(
わうぢよ
)
はチンレイと
云
(
い
)
つた。
042
左守
(
さもり
)
の
司
(
かみ
)
をフーランと
云
(
い
)
ひ、
043
妻
(
つま
)
モクレンとの
中
(
なか
)
にテイラと
云
(
い
)
ふ
一人娘
(
ひとりむすめ
)
があつた。
044
右守
(
うもり
)
の
司
(
かみ
)
はスマンヂーと
云
(
い
)
ひ
妻
(
つま
)
は
已
(
すで
)
に
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
去
(
さ
)
り、
045
ハリスと
云
(
い
)
ふ
一人
(
ひとり
)
の
娘
(
むすめ
)
をもつて
居
(
ゐ
)
た。
046
然
(
しか
)
るに
王
(
わう
)
を
初
(
はじ
)
め、
047
左守
(
さもり
)
右守
(
うもり
)
はバラモン
教
(
けう
)
はもとより、
048
スコブツエン
宗
(
しう
)
には
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
勧
(
すす
)
められても
入信
(
にふしん
)
せず、
049
体的
(
たいてき
)
方面
(
はうめん
)
の
政治
(
せいぢ
)
のみに
没頭
(
ぼつとう
)
して
居
(
ゐ
)
たのである。
050
茲
(
ここ
)
にバラモン
軍
(
ぐん
)
の
大足別
(
おほだるわけ
)
が、
051
俄
(
にはか
)
にトルマン
城
(
じやう
)
の
攻撃
(
こうげき
)
を
開始
(
かいし
)
した
経緯
(
いきさつ
)
について、
052
其
(
その
)
大略
(
たいりやく
)
を
述
(
の
)
べて
見
(
み
)
ようと
思
(
おも
)
ふ。
053
トルマン
城
(
じやう
)
を
去
(
さ
)
る
十数
(
じふすう
)
里
(
り
)
を
隔
(
へだ
)
てた、
054
或
(
ある
)
小
(
ちひ
)
さき
山里
(
やまざと
)
の
古
(
ふる
)
ぼけた
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
で、
055
二人
(
ふたり
)
の
首陀
(
しゆだ
)
が
何事
(
なにごと
)
か
頻
(
しきり
)
に
囁
(
ささや
)
き
合
(
あ
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
056
春
(
はる
)
の
初
(
はじめ
)
とは
云
(
い
)
へど、
057
未
(
ま
)
だ
風
(
かぜ
)
は
寒
(
さむ
)
く
青草
(
あをぐさ
)
の
芽
(
め
)
は
去年
(
きよねん
)
の
記念物
(
きねんぶつ
)
たる
長
(
なが
)
い
枯草
(
かれぐさ
)
の
間
(
あひだ
)
から
細長
(
ほそなが
)
く
空
(
そら
)
を
覗
(
のぞ
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
058
レール『
信仰
(
しんかう
)
的
(
てき
)
に
自覚
(
じかく
)
した
吾々
(
われわれ
)
の
擡頭
(
たいとう
)
を
見
(
み
)
て、
059
バラモン
階級
(
かいきふ
)
の
鬼畜
(
きちく
)
どもは
周章
(
しうしやう
)
狼狽
(
らうばい
)
し、
060
尠
(
すくな
)
からず
戦慄
(
せんりつ
)
し
恐怖
(
きようふ
)
を
感
(
かん
)
じたものと
見
(
み
)
える。
061
彼奴
(
あいつ
)
等
(
ら
)
は
自分
(
じぶん
)
等
(
ら
)
の
占有
(
せんいう
)
せる
支配
(
しはい
)
の
地位
(
ちゐ
)
たる
宗教
(
しうけう
)
上
(
じやう
)
、
062
経済
(
けいざい
)
上
(
じやう
)
より
顛覆
(
てんぷく
)
しつつある
己
(
おの
)
れ
自身
(
じしん
)
を
解
(
かい
)
し、
063
哀
(
あは
)
れ
至極
(
しごく
)
にも
泣
(
な
)
き
面
(
づら
)
をかわき、
064
勃興
(
ぼつこう
)
せる
三五
(
あななひ
)
運動
(
うんどう
)
の
大征伐
(
だいせいばつ
)
に
向
(
むか
)
つて
今
(
いま
)
や
死物狂
(
しにものぐる
)
ひになつて
居
(
ゐ
)
る。
065
溺
(
おぼ
)
れむとするものは
毒蛇
(
どくじや
)
の
尻尾
(
しつぽ
)
でも
生命
(
いのち
)
限
(
かぎ
)
りに
掴
(
つか
)
まむとするものである、
066
諺
(
ことわざ
)
通
(
どほ
)
りの
彼奴
(
あいつ
)
等
(
ら
)
の
狂態
(
きやうたい
)
は、
067
噴飯
(
ふんぱん
)
の
価値
(
かち
)
以外
(
いぐわい
)
には
全
(
まつた
)
くゼロだ』
068
マーク『さうだねー、
069
浪速節
(
なにはぶし
)
語
(
がたり
)
の
屁放爺
(
へひりぢい
)
……………に
奏任
(
そうにん
)
待遇
(
たいぐう
)
を
与
(
あた
)
へたり、
070
若衆
(
わかしう
)
に
僧服
(
そうふく
)
を
纒
(
まと
)
はせたり、
071
老衆
(
らうしう
)
に
民風
(
みんぷう
)
作興
(
さくこう
)
を
卸売
(
おろしう
)
りしたり、
072
糞造機
(
ふんざうき
)
の
似而非
(
えせ
)
宗教家
(
しうけうか
)
に
思想
(
しさう
)
善導
(
ぜんだう
)
の
元売捌
(
もとうりさば
)
きを
許
(
ゆる
)
したのを
見
(
み
)
ても、
073
愈
(
いよいよ
)
彼奴
(
あいつ
)
等
(
ら
)
が
境遇
(
きやうぐう
)
を
暴露
(
ばくろ
)
せるもので、
074
思
(
おも
)
へば
実
(
じつ
)
に
哀
(
あは
)
れな
次第
(
しだい
)
ではないか。
075
是
(
これ
)
を
見
(
み
)
ても
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
に
虐
(
しひた
)
げられた
吾々
(
われわれ
)
三五
(
あななひ
)
教徒
(
けうと
)
に
取
(
と
)
つては
溜飲
(
りういん
)
が
下
(
さ
)
がる
様
(
やう
)
だ、
076
痛快
(
つうくわい
)
千万
(
せんばん
)
だアハヽヽヽ。
077
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
今日
(
こんにち
)
の
場合
(
ばあひ
)
078
吾々
(
われわれ
)
は
毫
(
がう
)
も
油断
(
ゆだん
)
は
出来
(
でき
)
ない。
079
尚
(
な
)
ほ
層一層
(
そういつそう
)
この
運動
(
うんどう
)
に
大努力
(
だいどりよく
)
を
要
(
えう
)
する
天下
(
てんか
)
別目
(
わけめ
)
の
時期
(
じき
)
だ。
080
バラモン
教徒
(
けうと
)
の
滅亡
(
めつぼう
)
は
自業
(
じごふ
)
自得
(
じとく
)
の
結果
(
けつくわ
)
として
拱手
(
きようしゆ
)
傍観
(
ばうくわん
)
すべきでは
無
(
な
)
い。
081
自業
(
じごふ
)
自得
(
じとく
)
の
必然性
(
ひつぜんせい
)
を
認
(
みと
)
むればこそ、
082
且
(
か
)
つ
鼬
(
いたち
)
の
最期屁
(
さいごぺ
)
の
害毒
(
がいどく
)
の
甚大
(
じんだい
)
なるを
悟
(
さと
)
ればこそ、
083
吾々
(
われわれ
)
は
最善
(
さいぜん
)
の
戦法
(
せんぱふ
)
を
選
(
えら
)
んで
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
宗教戦
(
しうけうせん
)
の
勝利
(
しようり
)
を
得
(
う
)
るやうに、
084
奮闘
(
ふんとう
)
努力
(
どりよく
)
せなければならぬ。
085
彼奴
(
あいつ
)
等
(
ら
)
のこの
自業
(
じごふ
)
自得
(
じとく
)
の
収獲
(
しうくわく
)
こそ
人類
(
じんるゐ
)
史上
(
しじやう
)
[
*
底本では「
人類
(
じんるゐし
)
上
(
じやう
)
」。
]
、
086
最大
(
さいだい
)
罪悪
(
ざいあく
)
の
裁判
(
さいばん
)
の
結果
(
けつくわ
)
で、
087
一点
(
いつてん
)
の
恕
(
じよ
)
すべき
所
(
ところ
)
はないのだ。
088
只
(
ただ
)
吾々
(
われわれ
)
は
彼奴
(
あいつ
)
らの
滅亡
(
めつぼう
)
を
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
断行
(
だんかう
)
し、
089
促進
(
そくしん
)
することが
寧
(
むし
)
ろ
彼奴
(
あいつ
)
等
(
ら
)
に
対
(
たい
)
してせめてもの
優遇
(
いうぐう
)
だ、
090
弔
(
とむら
)
ひだ、
091
ハナムケともなるべき
慈善
(
じぜん
)
だ。
092
アハヽヽヽ』
093
レ『
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
仲間
(
なかま
)
の
第一
(
だいいち
)
癪
(
しやく
)
に
障
(
さわ
)
る
事
(
こと
)
は
暴利
(
ばうり
)
の
権化
(
ごんげ
)
とも
云
(
い
)
ふべきブル
的
(
てき
)
宗教家
(
しうけうか
)
の
今日
(
こんにち
)
のやり
方
(
かた
)
だ。
094
好景気
(
かうけいき
)
時代
(
じだい
)
に、
095
己
(
おの
)
れ
先
(
ま
)
づシコタマ
信徒
(
しんと
)
の
油
(
あぶら
)
を
搾
(
しぼ
)
り
懐中
(
くわいちう
)
をふくらせやがつて、
096
最後
(
さいご
)
にお
義理
(
ぎり
)
的
(
てき
)
に
申訳
(
まうしわけ
)
的
(
てき
)
に、
097
渋々
(
しぶしぶ
)
吾々
(
われわれ
)
三五教
(
あななひけう
)
信者
(
しんじや
)
へホンの
鼻糞
(
はなくそ
)
ほどのお
守
(
まも
)
り
札
(
ふだ
)
を
呉
(
く
)
れよつて、
098
恩情
(
おんじやう
)
主義
(
しゆぎ
)
だの
何
(
なん
)
のと
臆面
(
おくめん
)
もなく
誤託
(
ごたく
)
[
*
ママ
]
を
吐
(
ほざ
)
き、
099
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
の
汗
(
あせ
)
や
油
(
あぶら
)
を
搾
(
しぼ
)
つて
妾宅
(
せふたく
)
を
造
(
つく
)
り、
100
栄華
(
えいぐわ
)
の
夢
(
ゆめ
)
に
酔
(
よ
)
ひ
潰
(
つぶ
)
れ、
101
一朝
(
いつてう
)
不景気
(
ふけいき
)
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
き
初
(
はじ
)
めると、
102
何
(
なに
)
は
扨
(
さ
)
て
置
(
お
)
きイの
一番
(
いちばん
)
にお
札
(
ふだ
)
の
値下
(
ねさ
)
げだの、
103
お
払
(
はら
)
ひ
箱
(
ばこ
)
だのと
大鉈
(
おほなた
)
を
振
(
ふ
)
り
上
(
あ
)
げ、
104
人間
(
にんげん
)
の
生命
(
せいめい
)
を
制
(
せい
)
し、
105
ミイラを
製造
(
せいざう
)
しておき
乍
(
なが
)
ら、
106
己
(
おの
)
れは
依然
(
いぜん
)
として
甘
(
あま
)
い
汁
(
しる
)
をシコタマ
吸収
(
きふしう
)
し、
107
そして
吐
(
ぬか
)
すことを
聞
(
き
)
けば………
宗教界
(
しうけうかい
)
に
不景気
(
ふけいき
)
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
き
荒
(
すさ
)
み、
108
真価
(
しんか
)
は
日
(
ひ
)
を
追
(
お
)
ふて
暴落
(
ばうらく
)
として
来
(
き
)
た。
109
こんな
悪現象
(
あくげんしやう
)
を
招来
(
せうらい
)
した
原因
(
げんいん
)
は
信仰律
(
しんかうりつ
)
低下
(
ていか
)
と、
110
教義
(
けうぎ
)
の
余
(
あま
)
りに
高尚
(
かうしやう
)
に
過
(
す
)
ぐるからだ………と
吐
(
ほざ
)
きやがるのだ。
111
そして
洒々
(
しやしや
)
として
澄
(
す
)
まし
込
(
こ
)
んで
居
(
ゐ
)
やがる。
112
ブル
宗教家
(
しうけうか
)
連中
(
れんぢう
)
も
矢張
(
やは
)
り
吾々
(
われわれ
)
同様
(
どうやう
)
に
白
(
しろ
)
い
米
(
こめ
)
を
喰
(
く
)
つて
黄色
(
きいろ
)
い
糞
(
くそ
)
を
垂
(
た
)
れる
人間
(
にんげん
)
の
片割
(
かたわ
)
れだ。
113
こんな
奴
(
やつ
)
が
覇張
(
はば
)
つて
居
(
ゐ
)
る
宗教界
(
しうけうかい
)
は
何時
(
いつ
)
になつても
駄目
(
だめ
)
だないか』
114
マ『そりや
其
(
そ
)
の
通
(
とほ
)
りだ、
115
俺
(
おれ
)
も
同感
(
どうかん
)
だ。
116
併
(
しか
)
し
今日
(
こんにち
)
の
僧侶
(
そうりよ
)
共
(
ども
)
は
実
(
じつ
)
に
怪
(
け
)
しからぬ
代物
(
しろもの
)
ではないか。
117
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
の
仲間
(
なかま
)
に
対
(
たい
)
して
吐
(
ぬか
)
すことには、
118
「お
前
(
まへ
)
等
(
たち
)
の
如
(
や
)
うな
悪信仰
(
あくしんかう
)
の
没分暁漢
(
わからずや
)
連
(
れん
)
が
八釜敷
(
やかましく
)
云
(
い
)
つて
飛
(
と
)
び
廻
(
まは
)
るものだから、
119
宗教
(
しうけう
)
は
日
(
ひ
)
に
月
(
つき
)
に
悪化
(
あくくわ
)
し
混乱
(
こんらん
)
状態
(
じやうたい
)
に
陥
(
おちい
)
るのだ」と
吐
(
ほざ
)
きやがる。
120
こんな
僧侶
(
そうりよ
)
の
盲目
(
めくら
)
共
(
ども
)
は、
121
梵鐘
(
ぼんしよう
)
を
鳴
(
な
)
らしたから
火事
(
くわじ
)
が
起
(
おこ
)
つたと
吐
(
ぬ
)
かす
没分暁漢
(
わからずや
)
だ。
122
更
(
さら
)
に
又
(
また
)
「
人間
(
にんげん
)
社会
(
しやくわい
)
に
貧乏
(
びんばふ
)
と
云
(
い
)
ふ
怪物
(
くわいぶつ
)
が
現
(
あら
)
はれるのは、
123
食物
(
しよくもつ
)
の
生産力
(
せいさんりよく
)
に
比
(
ひ
)
して
人口
(
じんこう
)
の
加増率
(
かぞうりつ
)
が
一層
(
いつそう
)
多
(
おほ
)
き
為
(
ため
)
だから、
124
是
(
これ
)
を
救済
(
きうさい
)
する
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
良法
(
りやうはふ
)
は
貧乏人
(
びんばふにん
)
等
(
たち
)
が
節制
(
せつせい
)
して、
125
余
(
あま
)
り
沢山
(
たくさん
)
な
子
(
こ
)
を
産
(
う
)
まない
様
(
やう
)
にするのが、
126
社会
(
しやくわい
)
救治策
(
きうぢさく
)
の
最善
(
さいぜん
)
なる
方法
(
はうはふ
)
手段
(
しゆだん
)
だ」と
主張
(
しゆちやう
)
する
馬鹿
(
ばか
)
な
学者
(
がくしや
)
も
現
(
あら
)
はれて
来
(
き
)
た。
127
さて
何
(
いづ
)
れも
理窟
(
りくつ
)
は
抜
(
ぬ
)
きにして、
128
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
き
坊主
(
ばうず
)
が
社会
(
しやくわい
)
に
公然
(
こうぜん
)
として
生存
(
せいぞん
)
し
得
(
う
)
るのも、
129
畢竟
(
ひつきやう
)
宗教家
(
しうけうか
)
第一
(
だいいち
)
主義
(
しゆぎ
)
の
社会
(
しやくわい
)
なればこそだ、
130
思
(
おも
)
へば
涙
(
なみだ
)
の
溢
(
こぼ
)
れる
程
(
ほど
)
有難
(
ありがた
)
きお
目出度
(
めでた
)
き
次第
(
しだい
)
だ。
131
バラモン
主義
(
しゆぎ
)
の
現代
(
げんだい
)
の
社会
(
しやくわい
)
に
於
(
おい
)
て
横綱
(
よこづな
)
たる、
132
ブル
宗教家
(
しうけうか
)
力士
(
りきし
)
の
土俵入
(
どへうい
)
りに
従
(
したが
)
ふ
雑僧
(
ざつそう
)
の
太刀持
(
たちもち
)
や、
133
露払
(
つゆばら
)
ひを
勤
(
つと
)
むる
御用
(
ごよう
)
学者
(
がくしや
)
の
出場
(
しゆつぢやう
)
なぞは、
134
実
(
じつ
)
に
見物人
(
けんぶつにん
)
の
吾々
(
われわれ
)
に
取
(
と
)
つては
立派
(
りつぱ
)
で
見事
(
みごと
)
である。
135
此
(
この
)
土俵入
(
どへうい
)
りを
拝見
(
はいけん
)
する
為
(
ため
)
には、
136
随分
(
ずいぶん
)
種々
(
しゆじゆ
)
の
美
(
うる
)
はしい
名目
(
めいもく
)
で、
137
過重
(
くわぢう
)
な
見料
(
けんれう
)
を
否応
(
いなおう
)
なしに
徴集
(
ちようしふ
)
されるのだから、
138
吾々
(
われわれ
)
の
貧弱
(
ひんじやく
)
な
骨
(
ほね
)
と
皮
(
かは
)
との
痩肉
(
やせにく
)
には
139
錦上
(
きんじやう
)
更
(
さら
)
に
花
(
はな
)
を
飾
(
かざ
)
ると
云
(
い
)
ふお
目出度
(
めでた
)
い
状態
(
じやうたい
)
だ。
140
アヽ
吾々
(
われわれ
)
信徒
(
しんと
)
はこのお
目出度
(
めでた
)
に
対
(
たい
)
して
祝福
(
しゆくふく
)
の
言
(
げん
)
を
述
(
の
)
べねばならぬ。
141
一層
(
いつそう
)
声
(
こゑ
)
を
大
(
おほ
)
きくして、
142
横綱
(
よこづな
)
力士
(
りきし
)
の
今
(
いま
)
に
土俵
(
どへう
)
の
外
(
そと
)
に
転
(
ころ
)
げ
出
(
で
)
て、
143
手足
(
てあし
)
を
挫
(
くじ
)
き
吠面
(
ほえづら
)
を
曝
(
さ
)
らす
幕切
(
まくぎ
)
りを
見
(
み
)
たいものだ、
144
アハヽヽヽ』
145
レ『
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
くその
土俵入
(
どへうい
)
りの
盛観
(
せいくわん
)
と
幕切
(
まくぎ
)
りを
拝見
(
はいけん
)
したいものだ。
146
腕
(
うで
)
を
撫
(
ぶ
)
し
固唾
(
かたず
)
を
呑
(
の
)
み
拳骨
(
げんこつ
)
でも
固
(
かた
)
めて………』
147
マ『それはさうとして、
148
僕
(
ぼく
)
の
友人
(
いうじん
)
なる
首陀
(
しゆだ
)
のバリー
君
(
くん
)
に
149
大喇嘛
(
だいらま
)
が「
貴様
(
きさま
)
は
首陀
(
しゆだ
)
の
分際
(
ぶんざい
)
であり
乍
(
なが
)
ら、
150
浄行
(
じやうぎやう
)
の
言語
(
げんご
)
を
使用
(
しよう
)
し、
151
頭髪
(
とうはつ
)
を
長
(
なが
)
くしやがつて
怪
(
け
)
しからぬ
奴
(
やつ
)
だ」と
云
(
い
)
ふ
罵詈
(
ばり
)
雑言
(
ざふごん
)
の
末
(
すゑ
)
、
152
如意棒
(
によいぼう
)
をブラ
下
(
さ
)
げた
髯
(
ひげ
)
のある
立派
(
りつぱ
)
な
番僧
(
ばんそう
)
に
散々
(
さんざん
)
つぱら
毒付
(
どくつ
)
かれたのだ、
153
「
首陀
(
しゆだ
)
のくせに
浄行
(
じやうぎやう
)
の
語
(
ご
)
を
使
(
つか
)
ひくさる」とは、
154
首陀
(
しゆだ
)
と
浄行
(
じやうぎやう
)
とは
別国人
(
べつこくじん
)
だ。
155
印度人
(
いんどじん
)
では
無
(
な
)
いと
云
(
い
)
ふ
以上
(
いじやう
)
に
軽蔑
(
けいべつ
)
の
意味
(
いみ
)
が
充分
(
じゆうぶん
)
に
含
(
ふく
)
まれて
居
(
ゐ
)
るのだ。
156
此
(
この
)
番僧
(
ばんそう
)
が
大喇嘛
(
だいらま
)
から「
浄行語
(
じやうぎやうご
)
を
使
(
つか
)
ふ
首陀
(
しゆだ
)
は
用捨
(
ようしや
)
なく
蹴
(
け
)
り
倒
(
たふ
)
せ、
157
擲
(
なぐ
)
り
付
(
つ
)
けよ」との
命令
(
めいれい
)
を
受
(
う
)
けて
居
(
ゐ
)
たか
否
(
いな
)
かは
別問題
(
べつもんだい
)
として、
158
首陀
(
しゆだ
)
向上
(
かうじやう
)
運動
(
うんどう
)
の
煽動者
(
せんどうしや
)
であることだけは
君
(
きみ
)
も
知
(
し
)
つて
居
(
ゐ
)
るだらう。
159
故
(
ゆゑ
)
に
吾々
(
われわれ
)
は
不逞
(
ふてい
)
首陀団
(
しゆだだん
)
と
目
(
もく
)
されて
居
(
ゐ
)
る
憐
(
あは
)
れな
運動者
(
うんどうしや
)
よりも、
160
先
(
ま
)
づ
所謂
(
いはゆる
)
番僧
(
ばんそう
)
連
(
れん
)
を、
161
信徒
(
しんと
)
安定
(
あんてい
)
の
上
(
うへ
)
から
見
(
み
)
て
厳粛
(
げんしゆく
)
に
取締
(
とりしま
)
らねば
成
(
な
)
るまいと
思
(
おも
)
ふのだ。
162
実
(
じつ
)
に
思
(
おも
)
ふても
馬鹿
(
ばか
)
々々
(
ばか
)
しい
問題
(
もんだい
)
だが、
163
番僧
(
ばんそう
)
連
(
れん
)
は
片手
(
かたて
)
で
浄首
(
じやうしゆ
)
融和会
(
ゆうわくわい
)
と
云
(
い
)
ふ
魔酔薬
(
ますゐやく
)
を
突
(
つき
)
出
(
だ
)
し、
164
片手
(
かたて
)
では「
浄行語
(
じやうぎやうご
)
をエラソウに
使
(
つか
)
ひくさるから」とて
拳骨
(
げんこつ
)
を
突
(
つき
)
出
(
だ
)
して
居
(
ゐ
)
るのだ。
165
併
(
しか
)
し
首陀
(
しゆだ
)
向上団
(
かうじやうだん
)
の
連中
(
れんぢう
)
から
聞
(
き
)
いて
見
(
み
)
ると、
166
幸
(
かう
)
か
不幸
(
ふかう
)
か
魔酔薬
(
ますゐやく
)
も
拳骨
(
げんこつ
)
も
余
(
あま
)
り
好感
(
かうかん
)
を
以
(
もつ
)
て
迎
(
むか
)
へられて
居
(
ゐ
)
ないさうだ』
167
レ『
僕
(
ぼく
)
はそれだから、
168
近頃
(
ちかごろ
)
途上
(
とじやう
)
では
成
(
な
)
るべく
浄行
(
じやうぎやう
)
の
番僧
(
ばんそう
)
には
会
(
あ
)
はない
様
(
やう
)
にと
注意
(
ちうい
)
してゐるのだ。
169
「
貴様
(
きさま
)
は
首陀
(
しゆだ
)
階級
(
かいきふ
)
の
癖
(
くせ
)
に
俺
(
おれ
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
るとは
生意気
(
なまいき
)
千万
(
せんばん
)
な
奴
(
やつ
)
だ」と
直
(
す
)
ぐに
擲
(
なぐ
)
られるのが
嫌
(
いや
)
だからだ。
170
ホントに
馬鹿
(
ばか
)
々々
(
ばか
)
しいぢや
無
(
な
)
いか』
171
マ『
馬鹿
(
ばか
)
らしい
事
(
こと
)
と
云
(
い
)
つたら、
172
一夕
(
いつせき
)
俺
(
おれ
)
の
亡妻
(
ばうさい
)
の
追悼会
(
つゐたうゑ
)
を
催
(
もよほ
)
した
事
(
こと
)
があつたが、
173
数日
(
すうじつ
)
の
後
(
のち
)
に
婆羅門
(
ばらもん
)
総本山
(
そうほんざん
)
から、
1731
番僧
(
ばんそう
)
が
御
(
ご
)
出張
(
しゆつちやう
)
遊
(
あそ
)
ばされて
174
「お
宅
(
たく
)
の
追悼会
(
つゐたうゑ
)
を
少
(
すこ
)
しも
知
(
し
)
らなかつた
所
(
ところ
)
、
175
今日
(
こんにち
)
本山
(
ほんざん
)
から
散々
(
さんざん
)
に
小言
(
こごと
)
を
云
(
い
)
はれ、
176
大
(
おほい
)
に
目玉
(
めだま
)
の
飛
(
と
)
び
出
(
で
)
る
程
(
ほど
)
叱
(
しか
)
られた。
177
それでお
宅様
(
たくさま
)
の
追悼会
(
つゐたうゑ
)
には
誰々
(
だれだれ
)
が
集
(
あつ
)
まつたか、
178
どんな
弔辞
(
てうじ
)
があつたか
聞
(
き
)
かして
呉
(
く
)
れろ」との
仰
(
おほ
)
せだ。
179
僕
(
ぼく
)
は
葬婚
(
さうこん
)
の
礼儀
(
れいぎ
)
さへ
弁
(
わきま
)
へ
知
(
し
)
らぬ
番僧
(
ばんそう
)
連
(
れん
)
にはホトホト
呆
(
あき
)
れ
返
(
かへ
)
つて、
180
開
(
あ
)
いた
口
(
くち
)
が
早速
(
さつそく
)
に
閉
(
すぼ
)
まらなかつた。
181
そこで
余
(
あま
)
り
業腹
(
ごふばら
)
が
立
(
た
)
つので
182
「
幾
(
いく
)
ら
番僧
(
ばんそう
)
だつて
葬式
(
さうしき
)
や
婚儀
(
こんぎ
)
にまで
干渉
(
かんせう
)
する
権利
(
けんり
)
はありますまい。
183
宗権
(
しうけん
)
を
蹂躙
(
じうりん
)
するものだから、
184
そんな
事
(
こと
)
は
答弁
(
たふべん
)
の
限
(
かぎ
)
りでは
御座
(
ござ
)
らぬ」とキツパリ
温順
(
をんじゆん
)
に
云
(
い
)
つて
退
(
の
)
けてやつた。
185
さうすると
斯
(
こ
)
の
頓馬
(
とんま
)
番僧
(
ばんそう
)
、
186
其
(
その
)
翌朝
(
よくてう
)
から
毎日
(
まいにち
)
六ケ敷
(
むつかしき
)
御
(
ご
)
面相
(
めんさう
)
を
遊
(
あそ
)
ばして
187
宅
(
たく
)
の
表
(
おもて
)
に
如意棒
(
によいぼう
)
をブラ
下
(
さ
)
げ
乍
(
なが
)
ら
頑張
(
ぐわんば
)
つて
御座
(
ござ
)
るが、
188
何
(
いづ
)
れの
目的
(
もくてき
)
がお
在
(
あ
)
り
遊
(
あそ
)
ばすのか
俺
(
おれ
)
には
合点
(
がつてん
)
が
行
(
ゆ
)
かない。
189
又
(
また
)
その
番僧
(
ばんそう
)
の
非常識
(
ひじやうしき
)
なやり
方
(
かた
)
を
遊
(
あそ
)
ばすのは、
190
何
(
なん
)
の
理由
(
りいう
)
だか
知
(
し
)
る
由
(
よし
)
もないが、
191
大喇嘛
(
だいらま
)
から
叱
(
しか
)
られた
時
(
とき
)
は
尚
(
な
)
ほ「
一層
(
いつそう
)
酷
(
きび
)
しく
首陀
(
しゆだ
)
向上会
(
かうじやうくわい
)
をヤツつけろ」と
云
(
い
)
ふ
約束
(
やくそく
)
が
番僧間
(
ばんそうかん
)
の
金科
(
きんくわ
)
玉条
(
ぎよくでう
)
とされて
居
(
ゐ
)
るのか、
192
兎
(
と
)
にも
角
(
かく
)
にも
不都合
(
ふつがふ
)
な
話
(
はなし
)
だ。
193
実
(
じつ
)
に
吾々
(
われわれ
)
には
迷惑
(
めいわく
)
の
至
(
いた
)
りだ。
194
ウラナイバラニズムの
好
(
よ
)
い
見本
(
みほん
)
だ。
195
キヽヽヽだ』
196
レ『
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
吾々
(
われわれ
)
の
向上
(
かうじやう
)
運動
(
うんどう
)
を
進
(
すす
)
めて、
197
根本
(
こんぽん
)
的
(
てき
)
に
大運動
(
だいうんどう
)
、
198
否
(
いな
)
荒料理
(
あられうり
)
のメスを
振
(
ふる
)
はなくては
駄目
(
だめ
)
だ。
199
吾々
(
われわれ
)
首陀
(
しゆだ
)
信徒
(
しんと
)
は
自滅
(
じめつ
)
するより
外
(
ほか
)
に
進
(
すす
)
むべき
道
(
みち
)
は
無
(
な
)
いのだ。
200
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
黴菌
(
ばいきん
)
を
怖
(
おそ
)
れ、
201
難病
(
なんびやう
)
を
避
(
さ
)
ける
医学
(
いがく
)
博士
(
はかせ
)
、
202
毒蛇
(
どくじや
)
や
毒草
(
どくさう
)
を
避
(
さ
)
けて
通
(
とほ
)
る
博物
(
はくぶつ
)
学者
(
がくしや
)
、
203
テンデ
貧乏人
(
びんばふにん
)
には
接近
(
せつきん
)
しない
活仏
(
くわつぶつ
)
や、
204
弱
(
よわ
)
い
者
(
もの
)
を
虐
(
いぢ
)
める
牧師
(
ぼくし
)
の
公々然
(
こうこうぜん
)
として
頭
(
あたま
)
を
擡
(
もた
)
げる
暗黒
(
あんこく
)
世界
(
せかい
)
だもの、
205
況
(
いは
)
んや
俗
(
ぞく
)
の
俗
(
ぞく
)
たる
婆羅門
(
ばらもん
)
僧侶
(
そうりよ
)
に
於
(
おい
)
てをやだ。
206
吾々
(
われわれ
)
は
飽
(
あ
)
くまでも
婆羅門
(
ばらもん
)
どもの
根城
(
ねじろ
)
を
根本
(
こんぽん
)
の
土台
(
どだい
)
から
転覆
(
てんぷく
)
させん
事
(
こと
)
には、
207
信仰
(
しんかう
)
独立権
(
どくりつけん
)
を
保持
(
ほぢ
)
することさへ
六ケ
(
むつか
)
しからうよ』
208
二人
(
ふたり
)
の
三五
(
あななひ
)
信者
(
しんじや
)
なる
首陀
(
しゆだ
)
が
209
盛
(
さかん
)
に
森蔭
(
もりかげ
)
に
腰
(
こし
)
を
下
(
お
)
ろして
談
(
だん
)
じて
居
(
ゐ
)
る
所
(
ところ
)
へ、
210
錫杖
(
しやくぢやう
)
をガチヤつかせて
悠然
(
いうぜん
)
と
現
(
あら
)
はれたのは、
211
婆羅門
(
ばらもん
)
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
キユーバーであつた。
212
二人
(
ふたり
)
は
宣伝使
(
せんでんし
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
るより
又
(
また
)
もやバラスパイが
来
(
き
)
よつたなーと、
213
俄
(
にはか
)
に
話頭
(
わとう
)
を
転
(
てん
)
じて、
214
レール『この
間
(
あひだ
)
死
(
し
)
んだ
俺
(
おれ
)
の
倅
(
せがれ
)
から
幽冥
(
いうめい
)
通信
(
つうしん
)
があつたが、
215
その
音信
(
おとづれ
)
に「
地獄界
(
ぢごくかい
)
は
僧侶
(
そうりよ
)
や
牧師
(
ぼくし
)
ばかりで
満員
(
まんゐん
)
だ。
216
普通
(
ふつう
)
の
人間
(
にんげん
)
では
殺人
(
さつじん
)
、
217
放火
(
はうくわ
)
ぐらいなもので、
218
余
(
あま
)
り
罪
(
つみ
)
が
軽
(
かる
)
すぎて
滅多
(
めつた
)
に
地獄
(
ぢごく
)
に
入
(
い
)
れては
呉
(
く
)
れない。
219
併
(
しか
)
し
坊主
(
ばうず
)
や
牧師
(
ぼくし
)
なら
其
(
その
)
名称
(
めいしよう
)
だけでも
幾人
(
いくにん
)
でも
割
(
わ
)
り
込
(
こ
)
む
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
る」とのことだつたよ』
220
キユーバー『
君
(
きみ
)
たちは
今
(
いま
)
何
(
なに
)
を
話
(
はな
)
して
居
(
ゐ
)
ましたか、
221
穏
(
おだや
)
かならぬ
事
(
こと
)
を
喋
(
しやべ
)
つて
居
(
ゐ
)
た
様
(
やう
)
だなア。
222
お
前
(
まへ
)
の
姓名
(
せいめい
)
は
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふか、
223
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
ひたいものだ』
224
レール『
俺
(
おれ
)
の
名
(
な
)
は
俺
(
おれ
)
だ、
225
友人
(
いうじん
)
の
名
(
な
)
は
友人
(
いうじん
)
だ。
226
坊主
(
ばうず
)
は
何処
(
どこ
)
までも
坊主
(
ばうず
)
だ。
227
オイ
兄弟
(
きやうだい
)
、
228
サア
行
(
ゆ
)
かう』
229
と
尻
(
しり
)
に
帆
(
ほ
)
かけて
一目散
(
いちもくさん
)
に
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
した。
230
キユーバー(
急場
(
きふば
)
)に
迫
(
せま
)
つた
時
(
とき
)
は
三十六
(
さんじふろく
)
計
(
けい
)
の
奥
(
おく
)
の
手
(
て
)
だと、
231
頭
(
あたま
)
を
抱
(
かか
)
へてトントントンと
畔路
(
あぜみち
)
を
倒
(
こ
)
けつ
転
(
まろ
)
びつ
走
(
はし
)
り
行
(
ゆ
)
く。
232
彼
(
か
)
れ
婆羅門
(
ばらもん
)
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
233
スコブツエンと
云
(
い
)
ふ
一派
(
いつぱ
)
の
宗旨
(
しうし
)
を
開
(
ひら
)
いた
新
(
しん
)
婆羅門
(
ばらもん
)
の
教祖
(
けうそ
)
であつて、
234
婆羅門
(
ばらもん
)
の
大棟梁
(
だいとうりやう
)
大黒主
(
おほくろぬし
)
が
意
(
い
)
を
承
(
う
)
け、
235
私
(
ひそか
)
に
第二
(
だいに
)
の
準備
(
じゆんび
)
に
取
(
と
)
りかかつたのである。
236
大黒主
(
おほくろぬし
)
は
万々一
(
まんまんいち
)
婆羅門
(
ばらもん
)
教
(
けう
)
が、
237
ウラル
教
(
けう
)
又
(
また
)
は
三五教
(
あななひけう
)
に
潰
(
つぶ
)
された
時
(
とき
)
は、
238
スコブツエン
教
(
けう
)
に
身
(
み
)
を
托
(
たく
)
すべく、
239
彼
(
か
)
れキユーバーに
数多
(
あまた
)
の
機密費
(
きみつひ
)
を
与
(
あた
)
へ、
240
且
(
か
)
つ
特殊
(
とくしゆ
)
の
権利
(
けんり
)
と
地位
(
ちゐ
)
を
与
(
あた
)
へて、
241
隠密
(
おんみつ
)
の
役目
(
やくめ
)
を
申付
(
まをしつ
)
けて
居
(
ゐ
)
たのである。
242
故
(
ゆゑ
)
に
彼
(
か
)
れキユーバーは
何
(
なん
)
の
不自由
(
ふじゆう
)
も
感
(
かん
)
ぜず、
243
傲然
(
がうぜん
)
として
高
(
たか
)
く
止
(
と
)
まり、
244
官民
(
くわんみん
)
を
睥睨
(
へいげい
)
しつつ
天下
(
てんか
)
を
横行
(
わうかう
)
濶歩
(
くわつぽ
)
して
居
(
ゐ
)
たのである。
245
大足別
(
おほだるわけ
)
将軍
(
しやうぐん
)
も、
246
彼
(
か
)
れが
特殊
(
とくしゆ
)
の
地位
(
ちゐ
)
に
居
(
ゐ
)
ることと、
247
絶大
(
ぜつだい
)
なる
権威
(
けんゐ
)
を
大黒主
(
おほくろぬし
)
に
授与
(
じゆよ
)
されて
居
(
ゐ
)
る
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
つて
居
(
ゐ
)
るので、
248
抜目
(
ぬけめ
)
の
無
(
な
)
き
大足別
(
おほだるわけ
)
は
249
キユーバーに
対
(
たい
)
しては
色々
(
いろいろ
)
と
媚
(
こ
)
びを
呈
(
てい
)
し、
250
且
(
か
)
つ
彼
(
かれ
)
の
前
(
まへ
)
に
出
(
い
)
でては、
251
殆
(
ほとん
)
ど
従僕
(
じゆうぼく
)
の
如
(
ごと
)
き
態度
(
たいど
)
を
以
(
もつ
)
て
望
(
のぞ
)
み、
252
維
(
こ
)
れ
命
(
めい
)
維
(
こ
)
れ
従
(
したが
)
ふのみであつた。
253
扨
(
さ
)
てキユーバーが
東地
(
ハルナ
)
の
都
(
みやこ
)
の
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
内命
(
ないめい
)
を
受
(
う
)
けて
開
(
ひら
)
いて
居
(
ゐ
)
る
婆羅門
(
ばらもん
)
教
(
けう
)
の
別派
(
べつぱ
)
、
254
スコブツエン
宗
(
しう
)
は
255
由来
(
ゆらい
)
難行
(
なんぎやう
)
苦行
(
くぎやう
)
を
以
(
もつ
)
て
神
(
かみ
)
に
奉仕
(
ほうし
)
の
誠
(
まこと
)
を
捧
(
ささ
)
ぐるものと
為
(
な
)
し、
256
聞
(
き
)
くだに
恐
(
おそ
)
ろしき
苦行
(
くぎやう
)
の
教団
(
けうだん
)
である。
257
百千
(
ひやくせん
)
の
苦行
(
くぎやう
)
を
信徒
(
しんと
)
に
向
(
むか
)
つて
強
(
しひ
)
る
点
(
てん
)
は、
258
婆羅門
(
ばらもん
)
教
(
けう
)
と
少
(
すこ
)
しも
異
(
ことな
)
りはないが、
259
殊
(
こと
)
に
甚
(
はなは
)
だしき
苦行
(
くぎやう
)
は
260
婦人
(
ふじん
)
がヱマスキユレート
即
(
すなは
)
ち
男性化
(
だんせいくわ
)
の
修業
(
しうげふ
)
で、
261
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
願
(
ぐわん
)
を
立
(
た
)
てて
女性
(
ぢよせい
)
たることを
脱
(
だつ
)
せむとする
事
(
こと
)
が、
262
最
(
もつと
)
も
重要
(
ぢうえう
)
とされて
居
(
ゐ
)
る。
263
其
(
その
)
方法
(
はうはふ
)
には
卵巣
(
らんさう
)
除去法
(
ぢよきよはふ
)
と
乳房
(
ちぶさ
)
除却法
(
ぢよきやくはふ
)
とがあつて、
264
卵巣
(
らんさう
)
除去法
(
ぢよきよはふ
)
の
修業
(
しうげふ
)
になると、
265
百
(
ひやく
)
人
(
にん
)
の
中
(
うち
)
九十九
(
くじふく
)
人
(
にん
)
迄
(
まで
)
生命
(
いのち
)
を
殞
(
おと
)
すに
至
(
いた
)
る、
266
実
(
じつ
)
に
惨酷
(
ざんこく
)
なる
修業
(
しうげふ
)
であり、
267
乳房
(
ちぶさ
)
除却法
(
ぢよきやくはふ
)
に
至
(
いた
)
つては、
268
白熱
(
はくねつ
)
せる
火箸
(
ひばし
)
を
以
(
もつ
)
て
婦人
(
ふじん
)
の
乳房
(
ちぶさ
)
を
焼
(
や
)
き
切
(
き
)
るのである。
269
斯
(
か
)
くした
者
(
もの
)
に
対
(
たい
)
して
270
教主
(
けうしゆ
)
及
(
およ
)
び
重役人
(
ぢうやくにん
)
が
婆羅門
(
ばらもん
)
大神
(
おほかみ
)
へ
奉仕
(
ほうし
)
を
標章
(
へうしやう
)
するため
焼印
(
やきいん
)
を
押
(
お
)
す。
271
之
(
これ
)
を
熱火
(
ねつくわ
)
の
洗礼
(
せんれい
)
と
称
(
とな
)
へて
居
(
ゐ
)
る。
272
斯
(
か
)
くして
切
(
き
)
り
落
(
おと
)
された
乳房
(
ちぶさ
)
は
聖壇
(
せいだん
)
に
供
(
そな
)
へられ、
273
之
(
これ
)
を
捧
(
ささ
)
げたる
犠牲者
(
ぎせいしや
)
は
聖座
(
せいざ
)
に
安置
(
あんち
)
されて、
274
神
(
かみ
)
の
如
(
ごと
)
くに
崇敬
(
すうけい
)
されるのである。
275
そして
聖晩餐
(
せいばんさん
)
の
食物中
(
しよくもつちう
)
には、
276
乳房
(
ちぶさ
)
の
断片
(
だんぺん
)
が
混
(
ま
)
ぜられ、
277
会衆
(
くわいしう
)
一同
(
いちどう
)
之
(
これ
)
を
喫
(
きつ
)
し
終
(
をは
)
るや、
278
犠牲者
(
ぎせいしや
)
の
周囲
(
しうゐ
)
に
熱狂
(
ねつきやう
)
せる
舞踏
(
ぶたう
)
が
演
(
えん
)
ぜられるのである。
279
その
光景
(
くわうけい
)
は
実
(
じつ
)
に
凄惨
(
せいさん
)
極
(
きは
)
まるもので、
280
正
(
ただ
)
しき
神々
(
かみがみ
)
の
所為
(
しよゐ
)
でないことは
之
(
これ
)
を
見
(
み
)
ても
判
(
わか
)
るのである。
281
抑
(
そもそ
)
も
乳房
(
ちぶさ
)
は
女性
(
ぢよせい
)
のシンボルであり、
282
美
(
び
)
のシンボルであり、
283
又
(
また
)
婦人
(
ふじん
)
生殖器
(
せいしよくき
)
の
一部
(
いちぶ
)
とさへ
考
(
かんが
)
へられて
居
(
ゐ
)
た。
284
畢竟
(
つまり
)
、
285
婦人
(
ふじん
)
を
代表
(
だいへう
)
さるものは
乳房
(
ちぶさ
)
だと
云
(
い
)
ふ
観念
(
くわんねん
)
の
下
(
もと
)
に
立
(
た
)
てられた
邪教
(
じやけう
)
なのである。
286
印度
(
いんど
)
に
興
(
おこ
)
つた
宗教
(
しうけう
)
の
説
(
せつ
)
は
概
(
がい
)
して、
287
自我
(
じが
)
の
世界
(
せかい
)
は
纒綿
(
てんめん
)
の
世界
(
せかい
)
であるとか、
288
出纒
(
しゆつてん
)
の
行
(
ぎやう
)
と
述
(
い
)
ひ、
289
無我
(
むが
)
と
道
(
い
)
ひ、
290
空
(
くう
)
と
謂
(
ゐ
)
ひ、
291
解脱
(
げだつ
)
と
曰
(
い
)
ひ、
292
涅槃
(
ねはん
)
と
説
(
い
)
つて
293
所謂
(
いはゆる
)
転迷
(
てんめい
)
開悟
(
かいご
)
に
専
(
もつぱ
)
らなる
諸々
(
もろもろ
)
の
宗教
(
しうけう
)
が
発生
(
はつせい
)
するだけあつて、
294
土地
(
とち
)
と
気温
(
きをん
)
の
関係
(
くわんけい
)
の
然
(
しか
)
らしむる
為
(
ため
)
か、
295
印度
(
いんど
)
と
曰
(
い
)
ふ
国
(
くに
)
は
恐
(
おそ
)
ろしく
美
(
うつく
)
しい、
296
且
(
か
)
つ
物凄
(
ものすご
)
く
壮大
(
さうだい
)
な
自然
(
しぜん
)
に
包
(
つつ
)
まれた、
297
何百種
(
なんびやくしゆ
)
かの
人間
(
にんげん
)
が
幾百種
(
いくひやくしゆ
)
の
階級
(
かいきふ
)
を
作
(
つく
)
り、
298
幾百種
(
いくひやくしゆ
)
の
言語
(
げんご
)
を
使
(
つか
)
つて
居
(
ゐ
)
る
国
(
くに
)
だけあつて、
299
樹上
(
じゆじやう
)
に
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
、
300
石
(
いし
)
の
上
(
うへ
)
に
十
(
じふ
)
年
(
ねん
)
も
立
(
た
)
つたり
坐
(
すわ
)
つたりして
居
(
ゐ
)
たり、
301
穴
(
あな
)
の
中
(
なか
)
の
逆立
(
さかだち
)
を
三
(
さん
)
ケ
月間
(
げつかん
)
も
続
(
つづ
)
けて
修行
(
しうぎやう
)
するとか、
302
水
(
みづ
)
ばかり
呑
(
の
)
んで
生
(
い
)
きるだけ
生
(
い
)
きるとか、
303
木乃伊
(
みゐら
)
となるために
氷雪
(
ひようせつ
)
の
裡
(
うち
)
、
304
岩角
(
いはかど
)
の
上
(
うへ
)
に
飲食物
(
いんしよくぶつ
)
を
絶
(
た
)
つて
坐
(
すわ
)
つて
修行
(
しうぎやう
)
すると
云
(
い
)
ふやうな
迷信
(
めいしん
)
、
305
妄信
(
ばうしん
)
、
306
愚信
(
ぐしん
)
、
307
悪邪信
(
あくじやしん
)
の
醗酵地
(
はつかうち
)
であり、
308
持戒
(
ぢかい
)
、
309
精進
(
しやうじん
)
、
310
禅定
(
ぜんぢやう
)
、
311
忍辱
(
にんにく
)
などと
八釜敷
(
やかまし
)
く
叫
(
さけ
)
び
乍
(
なが
)
らも、
312
淫靡
(
いんび
)
、
313
不浄
(
ふじやう
)
、
314
惰弱
(
だじやく
)
で
始末
(
しまつ
)
に
了
(
を
)
へない
国民性
(
こくみんせい
)
である。
315
それ
故
(
ゆゑ
)
に
自然
(
しぜん
)
の
結果
(
けつくわ
)
としてスコブツエン
宗
(
しう
)
の
如
(
ごと
)
きものが
発生
(
はつせい
)
し
得
(
え
)
たのである。
316
彼
(
か
)
れ
教祖
(
けうそ
)
のキユーバーは
凄
(
すご
)
い
眼
(
め
)
をギヨロつかしながら、
317
レール、
318
マークの
二人
(
ふたり
)
の
談話
(
だんわ
)
を
耳敏
(
みみざと
)
くも
聴
(
き
)
き
取
(
と
)
つて、
319
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
国家
(
こくか
)
を
覆
(
くつが
)
へすものと
憂慮
(
いうりよ
)
し、
320
二人
(
ふたり
)
の
逃
(
に
)
げ
行
(
ゆ
)
く
姿
(
すがた
)
を
追跡
(
つゐせき
)
せむと
金剛杖
(
こんがうづゑ
)
を
力
(
ちから
)
に、
321
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
焦慮
(
あせり
)
出
(
だ
)
したのである。
322
然
(
しか
)
るに
彼
(
か
)
の
二人
(
ふたり
)
は
逸早
(
いちはや
)
くも
山林
(
さんりん
)
に
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
し、
323
谷川
(
たにがは
)
の
水
(
みづ
)
を
掬
(
すく
)
つて
咽喉
(
のど
)
を
潤
(
うるほ
)
しながら、
324
レール『オイ、
325
マーク
大変
(
たいへん
)
な
奴
(
やつ
)
に
出会
(
でくは
)
したものだないか。
326
彼奴
(
あいつ
)
は
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
邸内
(
ていない
)
に
数年前
(
すうねんぜん
)
まで
出入
(
でいり
)
して、
327
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
御
(
おん
)
覚
(
おぼ
)
え
目出度
(
めでた
)
かつたと
云
(
い
)
ふスコブツエン
宗
(
しう
)
の
親玉
(
おやだま
)
ぢやないか、
328
下手
(
へた
)
に
魔誤
(
まご
)
付
(
つ
)
いて
居
(
ゐ
)
たら
大黒主
(
おほくろぬし
)
より
重罰
(
ぢうばつ
)
に
処
(
しよ
)
せられる
危
(
あぶ
)
ない
処
(
ところ
)
だつた。
329
彼
(
あ
)
んな
坊主
(
ばうず
)
が
何故
(
なぜ
)
あれほど
威張
(
ゐば
)
り
散
(
ち
)
らしよるのだらう。
330
何故
(
なぜ
)
あんな
不完全
(
ふくわんぜん
)
極
(
きは
)
まる
宗教
(
しうけう
)
が
亡
(
ほろ
)
びないのだらうか』
331
マーク『
印度
(
いんど
)
七千
(
しちせん
)
余国
(
よこく
)
には
幾百
(
いくひやく
)
の
小
(
ちひ
)
さい
宗教
(
しうけう
)
があるが、
332
何
(
いづ
)
れの
宗教
(
しうけう
)
も
完全
(
くわんぜん
)
なものは
一
(
ひと
)
つも
無
(
な
)
いにきまつて
居
(
ゐ
)
るよ。
333
殊
(
こと
)
に
彼
(
あ
)
の
宗教
(
しうけう
)
は
殊更
(
ことさら
)
不完全
(
ふくわんぜん
)
極
(
きは
)
まる
未成品
(
みせいひん
)
宗
(
しう
)
だから、
334
命脈
(
めいみやく
)
を
保
(
たも
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ。
335
凡
(
すべ
)
て
不完全
(
ふくわんぜん
)
なものには
将来
(
しやうらい
)
発達
(
はつたつ
)
すべき
余地
(
よち
)
があり、
336
未来
(
みらい
)
があるのだ。
337
完全
(
くわんぜん
)
は
行詰
(
ゆきづま
)
りを
意味
(
いみ
)
し、
338
結局
(
けつきよく
)
滅亡
(
めつぼう
)
の
代名詞
(
だいめいし
)
に
外
(
ほか
)
ならないのだ、
339
アハヽヽヽ』
340
レ『さうすると
吾々
(
われわれ
)
の
運動
(
うんどう
)
も
成功
(
せいこう
)
せない
未完成
(
みくわんせい
)
の
間
(
あひだ
)
が、
341
花
(
はな
)
もあり、
342
香
(
にほひ
)
もあり、
343
実
(
み
)
もあり、
344
世人
(
せじん
)
からも
注目
(
ちうもく
)
されるのだな。
345
アハヽヽヽ』
346
マ『ナアニ
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
はブルジョア
宗教
(
しうけう
)
やラマ
階級
(
かいきふ
)
に
圧迫
(
あつぱく
)
され
苦
(
くる
)
しめられ、
347
明敏
(
めいびん
)
な
頭脳
(
づなう
)
が
滅茶
(
めちや
)
苦茶
(
くちや
)
になつたので、
348
チツト
許
(
ばか
)
り
小理窟
(
こりくつ
)
を
覚
(
おぼ
)
えて
居
(
ゐ
)
るのを
利用
(
りよう
)
して、
349
実
(
じつ
)
は
滅茶
(
めつちや
)
苦茶
(
くちや
)
な
革正
(
かくせい
)
運動
(
うんどう
)
をやるやうに
成
(
な
)
つたのだ。
350
然
(
しか
)
し
斯
(
か
)
う
曰
(
い
)
ふ
頭悩
(
づなう
)
でなければ、
351
創意
(
さうい
)
創見
(
さうけん
)
は
生
(
うま
)
れて
来
(
こ
)
ないのだ。
352
復古
(
ふくこ
)
を
叫
(
さけ
)
ぶ
人間
(
にんげん
)
は
必
(
かなら
)
ず
覚明家
(
かくめいか
)
だ。
353
石火
(
せきくわ
)
坊子団
(
ばうしだん
)
は
即
(
すなは
)
ち
石下
(
せきか
)
坊主団
(
ばうずだん
)
だ。
354
日露
(
にちろ
)
協約
(
けふやく
)
の
結果
(
けつくわ
)
は
白雪
(
はくせつ
)
までも
赤化
(
せきくわ
)
したぢやないか、
355
アハヽヽヽ。
356
それだから
吾々
(
われわれ
)
は
天
(
てん
)
の
表示
(
へうじ
)
を
確信
(
かくしん
)
して
驀地
(
まつしぐら
)
に
進
(
すす
)
まむとするのだ。
357
アヽ
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
吾々
(
われわれ
)
の
目的
(
もくてき
)
を
達成
(
たつせい
)
せなくては、
358
到底
(
たうてい
)
吾々
(
われわれ
)
三五
(
あななひ
)
信者
(
しんじや
)
兼
(
けん
)
首陀
(
しゆだ
)
向上
(
かうじやう
)
会員
(
くわいゐん
)
は
身
(
み
)
の
置
(
お
)
き
所
(
どころ
)
がなくなつて
了
(
しま
)
ふわ。
359
「
白雪
(
はくせつ
)
も
日露
(
にちろ
)
協約
(
けふやく
)
で
赤
(
あか
)
く
化
(
くわ
)
し」』
360
かくて
両人
(
りやうにん
)
は
又
(
また
)
もやキユーバーの
悪口
(
あくこう
)
に
花
(
はな
)
を
咲
(
さ
)
かせ、
361
不平
(
ふへい
)
の
焔
(
ほのほ
)
を
燃
(
も
)
やす
折
(
をり
)
しも、
362
執念
(
しふねん
)
深
(
ぶか
)
いキユーバーの
窺
(
うかが
)
ひ
寄
(
よ
)
る
姿
(
すがた
)
が
木
(
こ
)
の
間
(
ま
)
を
透
(
す
)
かしてチラチラと
見
(
み
)
え
出
(
だ
)
したのに
肝
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
し、
363
尻
(
しり
)
はし
折
(
を
)
つて
山林
(
さんりん
)
深
(
ふか
)
く
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
して
了
(
しま
)
つた。
364
(
大正一四・二・一三
旧一・二一
加藤明子
録)
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