霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第70巻(酉の巻)
序文
総説
第1篇 花鳥山月
第1章 信人権
第2章 折衝戦
第3章 恋戦連笑
第4章 共倒れ
第5章 花鳥山
第6章 鬼遊婆
第7章 妻生
第8章 大勝
第2篇 千種蛮態
第9章 針魔の森
第10章 二教聯合
第11章 血臭姫
第12章 大魅勒
第13章 喃悶題
第14章 賓民窟
第15章 地位転変
第3篇 理想新政
第16章 天降里
第17章 春の光
第18章 鳳恋
第19章 梅花団
第20章 千代の声
第21章 三婚
第22章 優秀美
附 記念撮影
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は
従来バージョン
をお使い下さい|
サブスク
のお知らせ
霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第70巻(酉の巻)
> 第1篇 花鳥山月 > 第4章 共倒れ
<<< 恋戦連笑
(B)
(N)
花鳥山 >>>
第四章
共倒
(
ともだふ
)
れ〔一七七一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第70巻 山河草木 酉の巻
篇:
第1篇 花鳥山月
よみ(新仮名遣い):
かちょうさんげつ
章:
第4章 共倒れ
よみ(新仮名遣い):
ともだおれ
通し章番号:
1771
口述日:
1925(大正14)年08月23日(旧07月4日)
口述場所:
丹後由良 秋田別荘
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年10月16日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
一方、太子チウインは妹チンレイ、右守の娘ハリスと共に、キューバーが談判にきた当初から様子を察知し、王と左守には内密で、全国から兵を招集すべく密かに動いていた。
一方、大足別はキューバーが戻ってこないので、城を攻めるわけにもいかず、こう着状態に陥っていた。
千草姫に一度は気絶させられたキューバーは正気を取り戻し、今度は自分が姫を気絶させようと躍起になっている。
その間に、王は密書により、太子が国内より兵を集めて合流することを知る。またそれは、千草姫・右守の先見の明による計略であったことを知る。王と左守は、はじめて右守の心を知り、その死を悼んだ。
一方、千草姫は気絶したふりをしたりしてキューバーをからかっていたが、最後に双方同時に手を握り合うということになった。キューバーも千草姫も厳しく相手の手を握り合い、二人とも気絶してその場に倒れてしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm7004
愛善世界社版:
47頁
八幡書店版:
第12輯 407頁
修補版:
校定版:
47頁
普及版:
25頁
初版:
ページ備考:
001
太子
(
たいし
)
のチウインは
妹
(
いもうと
)
のチンレイ
及
(
およ
)
び、
0011
右守
(
うもり
)
の
娘
(
むすめ
)
ハリスと
共
(
とも
)
に
002
初
(
はじ
)
めてキユーバーが
談判
(
だんぱん
)
に
来
(
き
)
た
時
(
とき
)
、
0021
ソツと
物蔭
(
ものかげ
)
より
様子
(
やうす
)
を
聞
(
き
)
き、
003
容易
(
ようい
)
ならざる
大事件
(
だいじけん
)
となし、
004
ガーデン
王
(
わう
)
や
左守
(
さもり
)
には
内密
(
ないみつ
)
にて、
005
妹
(
いもうと
)
のチンレイ
及
(
およ
)
び
右守
(
うもり
)
の
娘
(
むすめ
)
ハリスと
夜中
(
やちう
)
諜
(
しめ
)
し
合
(
あは
)
せ、
006
王命
(
わうめい
)
と
佯
(
いつは
)
り
全国
(
ぜんこく
)
の
兵員
(
へいゐん
)
を
召集
(
せうしふ
)
すべく、
007
腹心
(
ふくしん
)
の
部下
(
ぶか
)
に
命
(
めい
)
を
下
(
くだ
)
した。
008
一方
(
いつぱう
)
ガーデン
王
(
わう
)
、
009
左守
(
さもり
)
は
010
城内
(
じやうない
)
五百
(
ごひやく
)
の
兵
(
へい
)
に
武装
(
ぶさう
)
をさせ
乍
(
なが
)
ら、
011
敵軍
(
てきぐん
)
押
(
お
)
し
寄
(
よ
)
せ
来
(
きた
)
らば、
012
唯
(
ただ
)
一戦
(
いつせん
)
に
粉砕
(
ふんさい
)
し
呉
(
く
)
れむと
部下
(
ぶか
)
を
督励
(
とくれい
)
して、
013
士気
(
しき
)
の
皷舞
(
こぶ
)
に
全力
(
ぜんりよく
)
を
注
(
そそ
)
いで
居
(
ゐ
)
た。
014
大足別
(
おほだるわけ
)
将軍
(
しやうぐん
)
は
三千
(
さんぜん
)
の
兵
(
へい
)
を
率
(
ひき
)
ゐて、
015
城下
(
じやうか
)
迄
(
まで
)
押
(
お
)
し
寄
(
よ
)
せて
来
(
き
)
たが、
016
キユーバーを
守
(
まも
)
りたる
数十騎
(
すうじつき
)
の
注進
(
ちうしん
)
により、
017
殿内
(
でんない
)
深
(
ふか
)
くキユーバーの
入
(
い
)
り
込
(
こ
)
みし
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
り、
018
徒
(
いたづら
)
に
戦端
(
せんたん
)
を
開
(
ひら
)
き、
019
キユーバーの
生命
(
せいめい
)
を
失
(
うしな
)
つては
大変
(
たいへん
)
だ、
020
大黒主
(
おほくろぬし
)
に
如何
(
いか
)
なるお
目玉
(
めだま
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
するかも
知
(
し
)
れない。
021
古今
(
ここん
)
無双
(
むさう
)
の
英雄
(
えいゆう
)
豪傑
(
がうけつ
)
キユーバーには、
022
何
(
なに
)
か
深
(
ふか
)
い
策略
(
さくりやく
)
があつて、
023
唯
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
城内
(
じやうない
)
に
入
(
い
)
り
込
(
こ
)
み、
024
樽爼
(
そんそ
)
折衝
(
せつしよう
)
の
間
(
あひだ
)
に
円満
(
ゑんまん
)
解決
(
かいけつ
)
の
曙光
(
しよくわう
)
を
認
(
みと
)
むべく
活動
(
くわつどう
)
して
居
(
ゐ
)
るのだらう。
025
先
(
ま
)
づキユーバーの
命令
(
めいれい
)
の
来
(
く
)
る
迄
(
まで
)
、
026
総攻撃
(
そうこうげき
)
をしてはならぬ、
027
……と
部下
(
ぶか
)
を
厳重
(
げんぢう
)
に
戒
(
いまし
)
め、
028
キユーバー
警護
(
けいご
)
の
意味
(
いみ
)
にて
三日
(
みつか
)
三夜
(
みや
)
滞陣
(
たいぢん
)
して
居
(
ゐ
)
た。
029
ガーデン
王
(
わう
)
、
030
左守
(
さもり
)
は、
031
千草姫
(
ちぐさひめ
)
の
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
え
無
(
な
)
くなつたのは、
032
右守
(
うもり
)
の
最後
(
さいご
)
を
聞
(
き
)
き、
033
禍
(
わざはひ
)
の
身
(
み
)
に
及
(
およ
)
ばむ
事
(
こと
)
を
恐
(
おそ
)
れて
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
したのだらう……
位
(
くらゐ
)
に
考
(
かんが
)
へ、
034
軍備
(
ぐんび
)
の
方
(
はう
)
に
全心
(
ぜんしん
)
を
集注
(
しふちう
)
し、
035
千草姫
(
ちぐさひめ
)
が
秘術
(
ひじゆつ
)
を
尽
(
つく
)
しての
善戦
(
ぜんせん
)
善闘
(
ぜんとう
)
も
気
(
き
)
がつかなかつた。
036
扨
(
さ
)
てキユーバーは
半時
(
はんとき
)
許
(
ばか
)
りして
息
(
いき
)
を
吹
(
ふ
)
き
返
(
かへ
)
し、
037
団栗眼
(
どんぐりまなこ
)
を
ぎろつかせ
千草姫
(
ちぐさひめ
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
て、
038
『ヤア、
039
お
前
(
まへ
)
は
千草姫
(
ちぐさひめ
)
ぢやないか。
040
かよわい
腕
(
うで
)
をしながら
俺
(
おれ
)
の
脈処
(
みやくどころ
)
を
折
(
をり
)
悪
(
あし
)
く
掴
(
つか
)
みよつて、
041
ど
甚
(
えら
)
い
目
(
め
)
に
会
(
あは
)
したぢやないか。
042
俺
(
おれ
)
は
暫
(
しばら
)
くの
間
(
あひだ
)
、
043
幽冥
(
いうめい
)
旅行
(
りよかう
)
をやつて
居
(
ゐ
)
たよ。
044
掴
(
つか
)
むと
云
(
い
)
つても
余
(
あま
)
りひどいぢやないか』
045
千草姫
(
ちぐさひめ
)
『ハイ、
046
妾
(
わらは
)
どんなに
心配
(
しんぱい
)
したか
知
(
し
)
れませぬわ。
047
貴方
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
を
遵奉
(
じゆんぽう
)
し、
048
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
握
(
にぎ
)
りましたら、
049
貴方
(
あなた
)
はウンといつた
切
(
き
)
り、
050
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
返事
(
へんじ
)
して
下
(
くだ
)
さらないのですもの。
051
大変
(
たいへん
)
怒
(
おこ
)
つて
返事
(
へんじ
)
して
下
(
くだ
)
さらないと
思
(
おも
)
ひ、
052
早速
(
さつそく
)
バラモンの
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
水垢離
(
みづごり
)
取
(
と
)
つて
御
(
ご
)
祈願
(
きぐわん
)
した
処
(
ところ
)
、
053
やつと
物
(
もの
)
云
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さつたのですもの。
054
幽冥
(
いうめい
)
旅行
(
りよかう
)
したのなんのと
本当
(
ほんたう
)
に
腹
(
はら
)
の
悪
(
わる
)
いお
方
(
かた
)
よ。
055
半時
(
はんとき
)
許
(
ばか
)
りも
妾
(
わらは
)
に
怒
(
おこ
)
つて
物
(
もの
)
を
云
(
い
)
ふて
下
(
くだ
)
さらないのですもの』
056
キユ『いや、
057
本当
(
ほんたう
)
に
気絶
(
きぜつ
)
して
居
(
ゐ
)
たに
違
(
ちが
)
ひない。
058
決
(
けつ
)
して
嘘
(
うそ
)
は
云
(
い
)
はない。
059
これから
手
(
て
)
を
握
(
にぎ
)
るのなら
指
(
ゆび
)
の
先
(
さき
)
を
握
(
にぎ
)
つてくれ。
060
脈処
(
みやくどころ
)
を
握
(
にぎ
)
られると
困
(
こま
)
るからな』
061
千草
(
ちぐさ
)
『
世界
(
せかい
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
様
(
さま
)
が
妾
(
わらは
)
の
細腕
(
ほそうで
)
に
握
(
にぎ
)
られて
気絶
(
きぜつ
)
なさると
云
(
い
)
ふやうな
道理
(
だうり
)
がどこに
御座
(
ござ
)
います。
062
嘘
(
うそ
)
許
(
ばか
)
り
仰有
(
おつしや
)
います。
063
ホヽヽヽヽヽ』
064
キユ『
本当
(
ほんたう
)
にそれやさうぢや。
065
実
(
じつ
)
は
気絶
(
きぜつ
)
したのぢやないよ。
066
お
前
(
まへ
)
の
心底
(
しんてい
)
を
考
(
かんが
)
へる
為
(
ため
)
にあんな
真似
(
まね
)
をして
居
(
ゐ
)
たのぢや。
067
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
つても
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
だ。
068
そんな
へどろい
事
(
こと
)
でどうならう』
069
千草
(
ちぐさ
)
『ホヽヽヽヽヽ、
070
ほんとに
甚
(
ひど
)
いお
方
(
かた
)
、
071
人
(
ひと
)
の
気
(
き
)
を
揉
(
も
)
ましてひどいわ』
072
と
又
(
また
)
手首
(
てくび
)
を
握
(
にぎ
)
らうとする。
073
キユーバーは
吃驚
(
びつくり
)
して
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
き、
074
『ヤ、
075
もう
手
(
て
)
は
一度
(
いちど
)
握
(
にぎ
)
つたらよいものだ。
076
それよりも
今度
(
こんど
)
は
俺
(
おれ
)
が
握
(
にぎ
)
つてやらう、
077
サア
手
(
て
)
を
出
(
だ
)
したり
手
(
て
)
を
出
(
だ
)
したり』
078
千草
(
ちぐさ
)
『どうか
息
(
いき
)
が
切
(
き
)
れる
処
(
ところ
)
迄
(
まで
)
握
(
にぎ
)
つて
頂戴
(
ちやうだい
)
な。
079
一
(
いつ
)
ぺん
八衢
(
やちまた
)
の
状況
(
じやうきやう
)
を
見
(
み
)
て
来
(
く
)
る
処
(
ところ
)
迄
(
まで
)
……。
080
さうして
冥官
(
めいくわん
)
に
会
(
あ
)
ひ
081
貴方
(
あなた
)
と
妾
(
わらは
)
と
永久
(
えいきう
)
に
暮
(
くら
)
すべき
蓮座
(
れんざ
)
を
教
(
をし
)
へて
貰
(
もら
)
つて
来
(
き
)
たう
御座
(
ござ
)
いますわ。
082
天国
(
てんごく
)
の
満員
(
まんゐん
)
にならない
中
(
うち
)
に、
083
特等席
(
とくとうせき
)
を
予約
(
よやく
)
して
置
(
お
)
きたう
御座
(
ござ
)
いますから』
084
キユ『ハヽヽヽヽヽ、
085
おい
姫
(
ひめ
)
さま、
086
このキユーバーの
手
(
て
)
がお
前
(
まへ
)
の
手
(
て
)
に
触
(
さは
)
るな
否
(
いな
)
や
本当
(
ほんたう
)
に
気絶
(
きぜつ
)
して
了
(
しま
)
ふよ。
087
それでもよいか』
088
千草
(
ちぐさ
)
『よろしう
御座
(
ござ
)
いますとも、
089
仮令
(
たとへ
)
殺
(
ころ
)
されても
私
(
わたし
)
の
体
(
からだ
)
ぢや
御座
(
ござ
)
いませぬ。
090
貴方
(
あなた
)
に
捧
(
ささ
)
げたもので
御座
(
ござ
)
いますもの、
091
貴方
(
あなた
)
の
命
(
いのち
)
も
同様
(
どうやう
)
ですわ』
092
キユーバーは
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
にて……この
女
(
をんな
)
仲々
(
なかなか
)
手
(
て
)
がよく
利
(
き
)
いて
居
(
を
)
る。
093
柔術
(
じうじゆつ
)
の
極意
(
ごくい
)
に
達
(
たつ
)
して
居
(
を
)
るらしい。
094
俺
(
おれ
)
も
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
握
(
にぎ
)
つて
気絶
(
きぜつ
)
させ、
095
八衢
(
やちまた
)
を
覗
(
のぞ
)
いて
来
(
く
)
る
処
(
ところ
)
迄
(
まで
)
やつておかねば、
096
将来
(
しやうらい
)
威張
(
ゐば
)
られちや
耐
(
たま
)
らない。
097
夫
(
をつと
)
の
権式
(
けんしき
)
がさつぱり
ゼロ
になつて
了
(
しま
)
ふ。
098
よし、
099
また
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
急所
(
きふしよ
)
を
握
(
にぎ
)
り
100
俺
(
おれ
)
の
腕前
(
うでまへ
)
を
見
(
み
)
せておかねば
将来
(
しやうらい
)
嬶天下
(
かかてんか
)
になり、
101
褌
(
いまき
)
[
*
「
褌
(
いまき
)
」は底本通り。
]
の
紐
(
ひも
)
で
縛
(
しば
)
られるやうになるかも
知
(
し
)
れない。
102
ここが
千騎
(
せんき
)
一騎
(
いつき
)
の
恋
(
こひ
)
の
かけひき
だ……と、
103
毛
(
け
)
だらけの
手
(
て
)
を
ぬつ
と
突
(
つき
)
出
(
だ
)
し、
104
姫
(
ひめ
)
の
真白
(
まつしろ
)
の
なま
竹
(
たけ
)
のやうな
手
(
て
)
を
骨
(
ほね
)
も
砕
(
くだ
)
けとヒン
握
(
にぎ
)
つた。
105
千草姫
(
ちぐさひめ
)
はキユーバーの
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
迄
(
まで
)
直覚
(
ちよくかく
)
して
居
(
ゐ
)
るので、
106
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
キユーバーが
力
(
ちから
)
をこめて
握
(
にぎ
)
つても
痛
(
いた
)
くも
何
(
なん
)
ともない、
107
真綿
(
まわた
)
が
触
(
さは
)
つたやうな
気
(
き
)
がして
居
(
ゐ
)
る、
108
見
(
み
)
かけによらぬ
剛
(
がう
)
の
者
(
もの
)
であつた。
109
併
(
しか
)
しわざと
気絶
(
きぜつ
)
した
体
(
てい
)
を
装
(
よそほ
)
ひ
握
(
にぎ
)
られた
刹那
(
せつな
)
、
110
ウーンと
顔
(
かほ
)
を
顰
(
しか
)
めて
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
倒
(
たふ
)
れて
了
(
しま
)
つた。
111
キユーバー『ハヽヽヽヽヽ、
112
遉
(
さすが
)
は
女
(
をんな
)
だな。
113
たうとう
屁古垂
(
へこた
)
れて
了
(
しま
)
ひよつた。
114
かうして
半時
(
はんとき
)
許
(
ばか
)
り
幽冥界
(
いうめいかい
)
を
覗
(
のぞ
)
かしておけば、
115
気
(
き
)
がついてから
俺
(
おれ
)
の
神力
(
しんりき
)
に
感服
(
かんぷく
)
し、
116
ぞつこん
惚
(
ほ
)
れ
込
(
こ
)
むだらう。
117
エヘヽヽヽヽヽ、
118
これだけ
俺
(
おれ
)
に
惚
(
ほ
)
れ
込
(
こ
)
んで
居
(
を
)
るのだから、
119
大足別
(
おほだるわけ
)
の
軍勢
(
ぐんぜい
)
に
一
(
いち
)
時
(
じ
)
この
城
(
しろ
)
を
屠
(
ほふ
)
らせ、
120
ガーデン
王
(
わう
)
や、
121
左守
(
さもり
)
、
122
右守
(
うもり
)
を
征伐
(
せいばつ
)
し、
123
太子
(
たいし
)
や
其
(
その
)
他
(
た
)
の
重臣
(
ぢうしん
)
を
重刑
(
ぢうけい
)
に
処
(
しよ
)
し、
124
このキユーバーが
取
(
と
)
つて
代
(
かは
)
つてトルマン
国
(
ごく
)
の
浄行
(
じやうぎやう
)
兼
(
けん
)
刹帝利
(
せつていり
)
となり、
125
天下
(
てんか
)
無双
(
むさう
)
の
姫
(
ひめ
)
を
女房
(
にようばう
)
となし、
126
数千万
(
すうせんまん
)
の
財産
(
ざいさん
)
を
横奪
(
わうだつ
)
して
天晴
(
あつぱれ
)
城主
(
じやうしゆ
)
となり、
127
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
向
(
むか
)
ふを
張
(
は
)
つて、
128
七千
(
しちせん
)
余国
(
よこく
)
の
覇者
(
はしや
)
となつてやらう。
129
あゝ
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い、
130
開運
(
かいうん
)
の
時節
(
じせつ
)
到来
(
たうらい
)
、
131
智謀
(
ちぼう
)
絶倫
(
ぜつりん
)
にして
其
(
その
)
胆力
(
たんりよく
)
は
神
(
かみ
)
の
如
(
ごと
)
く、
132
鬼
(
おに
)
の
如
(
ごと
)
しとは
俺
(
おれ
)
の
事
(
こと
)
だわい、
133
エヘヽヽヽヽヽ。
134
ヤ
何
(
なん
)
だ
135
大変
(
たいへん
)
な
物音
(
ものおと
)
ぢや、
136
どうれ
一
(
ひと
)
つ
外
(
そと
)
へ
出
(
で
)
て
様子
(
やうす
)
を
考
(
かんが
)
へよう』
137
と、
138
ドアを
外
(
はづ
)
さむとしたが、
139
秘密
(
ひみつ
)
の
錠
(
ぢやう
)
が
卸
(
おろ
)
してあるので、
140
千草姫
(
ちぐさひめ
)
でなければ
開
(
あ
)
ける
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ない。
141
遉
(
さすが
)
のキユーバーも
当惑
(
とうわく
)
して
居
(
ゐ
)
る。
142
外
(
そと
)
には
暫
(
しばら
)
く
城内
(
じやうない
)
と
城外
(
じやうぐわい
)
との
小糶
(
こぜり
)
合
(
あ
)
ひがあつたが、
143
用心
(
ようじん
)
深
(
ぶか
)
い
大足別
(
おほだるわけ
)
はキユーバーが
城内
(
じやうない
)
に
潜入
(
せんにふ
)
し
居
(
を
)
る
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
き、
144
戦
(
たたかひ
)
を
中止
(
ちうし
)
して、
145
キユーバーの
様子
(
やうす
)
を
偵察
(
ていさつ
)
せむと
焦慮
(
せうりよ
)
して
居
(
ゐ
)
た。
146
それ
故
(
ゆゑ
)
戦
(
たたかひ
)
は
半時
(
はんとき
)
足
(
た
)
らずに
止
(
や
)
んで
了
(
しま
)
つた。
147
大足別
(
おほだるわけ
)
は
三千
(
さんぜん
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
を
以
(
もつ
)
てトルマン
城
(
じやう
)
を
十重
(
とへ
)
二十重
(
はたへ
)
に
取
(
と
)
りまいて
居
(
ゐ
)
る。
148
ガーデン
王
(
わう
)
もこの
敵
(
てき
)
の
大兵
(
たいへい
)
を
遠
(
とほ
)
く
眺
(
なが
)
めて、
149
打
(
う
)
つて
出
(
い
)
づる
勇気
(
ゆうき
)
もなく
150
援兵
(
ゑんぺい
)
の
来
(
きた
)
る
迄
(
まで
)
差控
(
さしひか
)
へむと
矛
(
ほこ
)
を
磨
(
みが
)
いて
警戒
(
けいかい
)
して
居
(
ゐ
)
た。
151
此
(
こ
)
の
時
(
とき
)
チウイン
太子
(
たいし
)
の
近侍
(
きんじ
)
が、
152
王
(
わう
)
の
傍
(
かたはら
)
に
来
(
き
)
たり、
153
恭
(
うやうや
)
しく
敬礼
(
けいれい
)
し
乍
(
なが
)
ら、
154
『
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
より
殿下
(
でんか
)
に
奉
(
たてまつ
)
れよとの
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
にて、
155
お
預
(
あづか
)
り
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
りました
此
(
この
)
御
(
ご
)
書面
(
しよめん
)
、
156
お
受取
(
うけと
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
157
と
差出
(
さしだ
)
す。
158
王
(
わう
)
『
何
(
なに
)
、
159
太子
(
たいし
)
がこの
書面
(
しよめん
)
を
余
(
よ
)
に
渡
(
わた
)
せたと
云
(
い
)
つたか。
160
余
(
あま
)
り
周章
(
しうしやう
)
狼狽
(
らうばい
)
の
結果
(
けつくわ
)
、
161
太子
(
たいし
)
の
事
(
こと
)
を
忘
(
わす
)
れて
居
(
ゐ
)
た』
162
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
慌
(
あわただ
)
しく
封
(
ふう
)
押
(
お
)
し
切
(
き
)
りながむれば、
163
左
(
さ
)
の
如
(
ごと
)
き
文面
(
ぶんめん
)
が
墨痕
(
ぼくこん
)
淋漓
(
りんり
)
として
認
(
したた
)
めてあつた。
164
一
(
ひと
)
つ
今夕
(
こんせき
)
、
165
父
(
ちち
)
を
訪問
(
はうもん
)
致
(
いた
)
したるキユーバーなるものは、
166
大足別
(
おほだるわけ
)
将軍
(
しやうぐん
)
と
諜
(
しめ
)
し
合
(
あは
)
せ、
167
本城
(
ほんじやう
)
を
占領
(
せんりやう
)
し、
168
吾
(
わが
)
王家
(
わうけ
)
を
覆
(
くつが
)
へさむと
謀
(
はか
)
るものに
候
(
さふら
)
へば、
169
此
(
この
)
際
(
さい
)
一刻
(
いつこく
)
の
猶予
(
いうよ
)
も
相成
(
あひな
)
らず
候
(
さふらふ
)
。
170
小子
(
せうし
)
は
父
(
ちち
)
及
(
およ
)
び
左守
(
さもり
)
に
協議
(
けふぎ
)
致
(
いた
)
すも、
171
到底
(
たうてい
)
六ケ敷
(
むつかし
)
かしからむと
存
(
ぞん
)
じ、
172
妹
(
いもうと
)
チンレイ、
173
及
(
およ
)
び
右守
(
うもり
)
の
娘
(
むすめ
)
ハリスと
諜
(
しめ
)
し
合
(
あは
)
せ、
174
国内
(
こくない
)
の
総動員
(
そうどうゐん
)
をなすべく、
175
吾
(
わ
)
が
臣下
(
しんか
)
を
諸方
(
しよはう
)
に
派遣
(
はけん
)
し、
176
小子
(
せうし
)
も
亦
(
また
)
出城
(
しゆつじやう
)
して
大足別
(
おほだるわけ
)
の
軍
(
ぐん
)
を
後方
(
こうはう
)
より
攻撃
(
こうげき
)
致
(
いた
)
すべく
準備
(
じゆんび
)
に
取
(
とり
)
かかり
申
(
まを
)
し
候
(
さふらふ
)
。
177
故
(
ゆゑ
)
に
小子
(
せうし
)
が
総
(
そう
)
司令官
(
しれいくわん
)
となつて
軍隊
(
ぐんたい
)
を
編成
(
へんせい
)
し、
178
城下
(
じやうか
)
に
帰
(
かへ
)
り
候
(
さふらふ
)
迄
(
まで
)
、
179
決
(
けつ
)
して
敵
(
てき
)
と
戦端
(
せんたん
)
を
開
(
ひら
)
き
給
(
たま
)
ふべからず。
180
一時
(
ひととき
)
たりとも
時間
(
じかん
)
を
延
(
の
)
ばし、
181
吾
(
わが
)
軍
(
ぐん
)
の
至
(
いた
)
るを
待
(
ま
)
たせ
給
(
たま
)
ふやう、
182
偏
(
ひとへ
)
に
懇願
(
こんぐわん
)
仕
(
つかまつ
)
り
候
(
さふらふ
)
。
183
国難
(
こくなん
)
救援軍
(
きうゑんぐん
)
総大将
(
そうだいしやう
)
トルマン
国
(
ごく
)
太子
(
たいし
)
チウイン
184
御
(
おん
)
父
(
ちち
)
ガーデン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
、
185
左守
(
さもり
)
、
186
右守
(
うもり
)
殿
(
どの
)
187
と
記
(
き
)
してあつた。
188
ガーデン
王
(
わう
)
は、
189
此
(
この
)
書面
(
しよめん
)
を
読
(
よ
)
み
終
(
をは
)
るや、
190
さも
満足
(
まんぞく
)
の
色
(
いろ
)
を
現
(
あら
)
はし、
191
左守
(
さもり
)
に
向
(
むか
)
ひ、
192
言葉
(
ことば
)
も
勇
(
いさ
)
ましく、
193
『アイヤ
左守
(
さもり
)
殿
(
どの
)
、
194
喜
(
よろこ
)
んで
呉
(
く
)
れ。
195
太子
(
たいし
)
は
已
(
すで
)
に
兵
(
へい
)
を
召集
(
せうしふ
)
し、
196
近
(
ちか
)
く
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
る
様子
(
やうす
)
だ。
197
それ
迄
(
まで
)
は
戦
(
たたか
)
ひを
開
(
ひら
)
くなとの
事
(
こと
)
。
198
遉
(
さすが
)
は
俺
(
おれ
)
の
悴
(
せがれ
)
だけあつて、
199
軍略
(
ぐんりやく
)
にかけたら
旨
(
うま
)
いものだらうがな』
200
左守
(
さもり
)
『
成程
(
なるほど
)
允文
(
いんぶん
)
允武
(
いんぶ
)
に
渡
(
わた
)
らせらるる
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
、
201
老臣
(
らうしん
)
も
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
つて
御座
(
ござ
)
います。
202
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
の
神軍
(
しんぐん
)
が
城下
(
じやうか
)
に
近
(
ちか
)
づくを
待
(
ま
)
ち、
203
城内
(
じやうない
)
より
一斉
(
いつせい
)
に
打
(
う
)
ち
出
(
だ
)
し、
204
大足別
(
おほだるわけ
)
を
挟
(
はさみ
)
撃
(
うち
)
いたせば
勝利
(
しようり
)
を
得
(
う
)
る
事
(
こと
)
磐石
(
ばんじやく
)
をもつて、
205
卵
(
たまご
)
を
砕
(
くだ
)
くに
等
(
ひと
)
しからむと
存
(
ぞん
)
じます。
206
あゝ
勇
(
いさ
)
ましや
勇
(
いさ
)
ましや』
207
と
老臣
(
らうしん
)
の
左守
(
さもり
)
は
王
(
わう
)
の
手
(
て
)
を
執
(
と
)
つて
雄健
(
をたけ
)
びし、
208
部下
(
ぶか
)
又
(
また
)
此
(
この
)
様子
(
やうす
)
を
見
(
み
)
て
士気
(
しき
)
俄
(
にはか
)
に
振
(
ふる
)
ふ。
209
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
千草姫
(
ちぐさひめ
)
の
侍女
(
じぢよ
)
は
一通
(
いつつう
)
の
封書
(
ふうしよ
)
を
携
(
たづさ
)
へ、
210
王
(
わう
)
の
前
(
まへ
)
に
恭
(
うやうや
)
しく
捧
(
ささ
)
げた。
211
此
(
この
)
密書
(
みつしよ
)
は
千草姫
(
ちぐさひめ
)
、
212
キユーバーの
手
(
て
)
を
握
(
にぎ
)
り
気絶
(
きぜつ
)
させおき、
213
其
(
その
)
間
(
あひだ
)
に
認
(
したた
)
めたものである。
214
王
(
わう
)
は
訝
(
いぶ
)
かり
乍
(
なが
)
ら、
215
『
何
(
なに
)
、
216
千草姫
(
ちぐさひめ
)
の
手紙
(
てがみ
)
とな、
217
彼
(
かれ
)
は
既
(
すで
)
に
右守
(
うもり
)
の
難
(
なん
)
を
聞
(
き
)
き
城内
(
じやうない
)
を
脱出
(
だつしゆつ
)
せしものと
思
(
おも
)
ひしに、
218
ハテ
不思議
(
ふしぎ
)
』
219
と
手早
(
てばや
)
く
封
(
ふう
)
押
(
お
)
し
切
(
き
)
つて
見
(
み
)
れば、
220
左
(
さ
)
の
如
(
ごと
)
き
文面
(
ぶんめん
)
が
水茎
(
みづくき
)
の
跡
(
あと
)
麗
(
うるは
)
しく
記
(
しる
)
されてあつた。
221
重大
(
ぢうだい
)
なる
御
(
お
)
疑
(
うたがひ
)
を
受
(
う
)
けし
千草姫
(
ちぐさひめ
)
より
一大事
(
いちだいじ
)
を
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げます。
222
何卒
(
なにとぞ
)
々々
(
なにとぞ
)
心
(
こころ
)
を
落着
(
おちつ
)
けてお
読
(
よ
)
み
下
(
くだ
)
さいませ。
223
スコブツエンのキユーバーなる
者
(
もの
)
、
224
一
(
いつ
)
ケ
月前
(
げつまへ
)
より
本城
(
ほんじやう
)
を
屠
(
ほふ
)
らむと
大足別
(
おほだるわけ
)
と
諜
(
しめ
)
し
合
(
あは
)
せ、
225
種々
(
しゆじゆ
)
劃策
(
くわくさく
)
を
廻
(
めぐ
)
らして
居
(
を
)
りました
事
(
こと
)
は、
226
右守
(
うもり
)
のスマンヂー
軍事
(
ぐんじ
)
探偵
(
たんてい
)
の
報告
(
はうこく
)
により
之
(
これ
)
を
前知
(
ぜんち
)
し、
227
太子
(
たいし
)
チウイン、
228
王女
(
わうぢよ
)
チンレイ、
229
右守
(
うもり
)
の
娘
(
むすめ
)
ハリスと
共
(
とも
)
に
千草姫
(
ちぐさひめ
)
も
加
(
くは
)
はり、
230
応戦
(
おうせん
)
の
準備
(
じゆんび
)
に
取
(
とり
)
かかるべく
国内
(
こくない
)
の
調査
(
てうさ
)
を
密々
(
ひそびそ
)
始
(
はじ
)
めて
居
(
を
)
りました
処
(
ところ
)
、
231
兵役
(
へいえき
)
に
立
(
た
)
ち
得
(
う
)
べきものは
漸
(
やうや
)
く
二千
(
にせん
)
五百
(
ごひやく
)
名
(
めい
)
。
232
万一
(
まんいち
)
の
時
(
とき
)
の
用意
(
ようい
)
にと
国内
(
こくない
)
一般
(
いつぱん
)
に
王
(
わう
)
の
命
(
めい
)
と
称
(
しよう
)
し、
233
軍隊
(
ぐんたい
)
教育
(
けういく
)
を
施
(
ほどこ
)
し
置
(
お
)
きました
処
(
ところ
)
、
234
弥々
(
いよいよ
)
戦
(
たたか
)
はねばならなくなつて
参
(
まゐ
)
りました。
235
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
大足別
(
おほだるわけ
)
の
大軍
(
たいぐん
)
は
既
(
すで
)
に
城下
(
じやうか
)
に
迫
(
せま
)
り
居
(
を
)
りますれば、
236
今日
(
こんにち
)
彼
(
かれ
)
と
戦
(
たたか
)
ふは
不利
(
ふり
)
の
最
(
もつと
)
も
甚
(
はなは
)
だしきものと
存
(
ぞん
)
じ、
237
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
信任
(
しんにん
)
最
(
もつと
)
も
厚
(
あつ
)
く、
238
大足別
(
おほだるわけ
)
の
謀主
(
ぼうしゆ
)
と
仰
(
あふ
)
ぐキユーバーを
或
(
ある
)
手段
(
しゆだん
)
を
以
(
もつ
)
て
捕
(
とら
)
へおきました。
239
やがて
太子
(
たいし
)
は
全軍
(
ぜんぐん
)
を
率
(
ひき
)
ゐて
城下
(
じやうか
)
に
迫
(
せま
)
る
事
(
こと
)
と
存
(
ぞん
)
じます。
240
それ
迄
(
まで
)
キユーバーを
私
(
わたし
)
にお
任
(
まか
)
せおき
下
(
くだ
)
さいませ。
241
大足別
(
おほだるわけ
)
が
未
(
いま
)
だ
砲火
(
はうくわ
)
を
開
(
ひら
)
かざるも、
242
要
(
えう
)
するにキユーバーの
消息
(
せうそく
)
を
案
(
あん
)
じての
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
いますれば、
243
彼
(
かれ
)
さへ
吾
(
わが
)
城内
(
じやうない
)
に
閉
(
と
)
ぢ
込
(
こ
)
みおけば、
244
短兵
(
たんぺい
)
急
(
きふ
)
に
攻
(
せめ
)
寄
(
よ
)
せて
来
(
く
)
る
憂
(
うれ
)
ひはありますまい。
245
この
所
(
ところ
)
賢明
(
けんめい
)
なる
王
(
わう
)
様
(
さま
)
、
246
左守
(
さもり
)
殿
(
どの
)
247
よくお
考
(
かんが
)
へ
下
(
くだ
)
さるやう
偏
(
ひとへ
)
に
懇願
(
こんぐわん
)
し
奉
(
たてまつ
)
ります。
248
軍務所
(
ぐんむしよ
)
に
於
(
おい
)
て トルマン
国
(
ごく
)
王妃
(
わうひ
)
千草姫
(
ちぐさひめ
)
249
ガーデン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
250
御
(
ご
)
机下
(
きか
)
251
王
(
わう
)
『ヤ、
252
左守
(
さもり
)
殿
(
どの
)
、
253
右守
(
うもり
)
は
可哀
(
かあい
)
さうな
事
(
こと
)
をしたわい。
254
可惜
(
あたら
)
忠臣
(
ちうしん
)
を
自
(
みづか
)
ら
殺
(
ころ
)
すとは
残念
(
ざんねん
)
至極
(
しごく
)
だ。
255
千草姫
(
ちぐさひめ
)
も
矢張
(
やはり
)
天下
(
てんか
)
国家
(
こくか
)
を
思
(
おも
)
ふ
純良
(
じゆんりやう
)
なる
妻
(
つま
)
であつた。
256
ヤ、
257
疑
(
うたが
)
つて
済
(
す
)
まなかつた。
258
ヤ、
259
千草姫
(
ちぐさひめ
)
許
(
ゆる
)
して
呉
(
く
)
れい』
260
と
落涙
(
らくるい
)
し
差
(
さし
)
俯向
(
うつむ
)
く。
261
左守
(
さもり
)
『
全
(
まつた
)
く
老臣
(
らうしん
)
が
不明
(
ふめい
)
の
致
(
いた
)
す
処
(
ところ
)
、
262
千草姫
(
ちぐさひめ
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
し
申
(
まをし
)
訳
(
わけ
)
が
御座
(
ござ
)
いませぬ。
263
又
(
また
)
右守
(
うもり
)
に
対
(
たい
)
しても
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
で
御座
(
ござ
)
います』
264
と
流涕
(
りうてい
)
しつつ
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
る。
265
何
(
なん
)
となく
城内
(
じやうない
)
の
士気
(
しき
)
は
大
(
おほい
)
に
揮
(
ふる
)
ひ、
266
既
(
すで
)
に
大足別
(
おほだるわけ
)
を
打
(
う
)
ち
滅
(
ほろ
)
ぼしたるが
如
(
ごと
)
き
戦勝
(
せんしよう
)
気分
(
きぶん
)
が
漂
(
ただよ
)
ふて
居
(
ゐ
)
た。
267
◎
268
話
(
はなし
)
は
元
(
もと
)
へ
復
(
かへ
)
る。
269
千草姫
(
ちぐさひめ
)
はキユーバーの
独語
(
ひとりごと
)
をすつかり
聞
(
き
)
き
終
(
をは
)
り、
270
ウンと
一声
(
ひとこゑ
)
蘇
(
よみがへ
)
つたやうな
顔
(
かほ
)
をして
息苦
(
いきぐる
)
しさうに、
271
『ヤ
貴方
(
あなた
)
は
恋
(
こひ
)
しき
恋
(
こひ
)
しきキユーバー
様
(
さま
)
で
御座
(
ござ
)
いましたか。
272
私
(
わたし
)
は
妙
(
めう
)
な
所
(
ところ
)
を
旅行
(
りよかう
)
して
居
(
ゐ
)
るやうな
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
て
居
(
を
)
りました。
273
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
貴方
(
あなた
)
と
二人
(
ふたり
)
が
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
いて
274
愉快
(
ゆくわい
)
に
愉快
(
ゆくわい
)
に
天国
(
てんごく
)
の
旅
(
たび
)
をしたやうに
思
(
おも
)
ひます。
275
百花
(
ひやくくわ
)
爛漫
(
らんまん
)
と
咲
(
さ
)
き
乱
(
みだ
)
れ
馥郁
(
ふくいく
)
たる
香気
(
かうき
)
は
四辺
(
しへん
)
に
満
(
み
)
ち、
276
何処
(
どこ
)
も
彼処
(
かしこ
)
も
透
(
す
)
き
通
(
とほ
)
り、
277
何
(
なん
)
とも
彼
(
か
)
とも
云
(
い
)
へぬ
麗
(
うるは
)
しさで
御座
(
ござ
)
いましたよ』
278
キユーバー『ハヽヽヽヽヽ。
279
それやお
前
(
まへ
)
、
280
俺
(
おれ
)
の
手
(
て
)
で
手首
(
てくび
)
を
握
(
にぎ
)
られ、
281
気絶
(
きぜつ
)
してお
前
(
まへ
)
の
精霊
(
せいれい
)
が
霊界
(
れいかい
)
へ
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
して
居
(
ゐ
)
たのだ。
282
ほんの
一寸
(
ちよつと
)
許
(
ばか
)
り
触
(
さは
)
つたやうに
思
(
おも
)
つたが、
283
何分
(
なにぶん
)
俺
(
おれ
)
の
腕
(
うで
)
に
力
(
ちから
)
が
剰
(
あま
)
つて
居
(
を
)
るものだから、
284
お
前
(
まへ
)
を
気絶
(
きぜつ
)
さして
了
(
しま
)
ひ、
285
大変
(
たいへん
)
心配
(
しんぱい
)
致
(
いた
)
したが、
286
バラモン
自在天
(
じざいてん
)
の
御
(
ご
)
加護
(
かご
)
によつて、
287
やつと
息
(
いき
)
吹
(
ふ
)
き
返
(
かへ
)
したのだ。
288
もうこれからは
握手
(
あくしゆ
)
だけはやらない
事
(
こと
)
にせうかい』
289
千草姫
(
ちぐさひめ
)
は
可笑
(
をか
)
しくて
耐
(
たま
)
らず、
290
吹
(
ふ
)
き
出
(
だ
)
す
許
(
ばか
)
り
思
(
おも
)
はるるを
耐
(
た
)
へ
忍
(
しの
)
んで、
291
態
(
わざ
)
とに
吃驚
(
びつくり
)
した
様
(
やう
)
な
顔
(
かほ
)
をし
乍
(
なが
)
ら、
292
千草
(
ちぐさ
)
『まあまあ
嫌
(
いや
)
だわ、
293
キユーバーさまとした
事
(
こと
)
が、
294
私
(
わたし
)
を
活
(
い
)
かしたり、
295
殺
(
ころ
)
したり
296
丸切
(
まるきり
)
手品師
(
てじなし
)
の
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
をなさるのだもの。
297
本当
(
ほんたう
)
に
甚
(
ひど
)
いわ。
298
何程
(
なにほど
)
命
(
いのち
)
を
上
(
あ
)
げますと
云
(
い
)
つたつて、
299
一夜
(
いちや
)
の
枕
(
まくら
)
も
交
(
かは
)
さぬ
先
(
さき
)
に
葬
(
はうむ
)
られて
仕舞
(
しま
)
つては
耐
(
たま
)
りませぬからね。
300
本当
(
ほんたう
)
に
貴方
(
あなた
)
は
憎
(
にく
)
らしい
人
(
ひと
)
だわ。
301
もう
是
(
これ
)
から
握手
(
あくしゆ
)
の
交換
(
かうくわん
)
は
止
(
や
)
めて
呉
(
く
)
れなんて、
302
そんな
事
(
こと
)
は
嫌
(
いや
)
ですよ。
303
気絶
(
きぜつ
)
しない
程度
(
ていど
)
にそつと
握手
(
あくしゆ
)
させて
下
(
くだ
)
さいな』
304
キユ『よし、
305
そんならお
前
(
まへ
)
は
俺
(
おれ
)
の
左
(
ひだり
)
の
手
(
て
)
を
握
(
にぎ
)
れ。
306
俺
(
おれ
)
もお
前
(
まへ
)
の
左
(
ひだり
)
の
手
(
て
)
を
握
(
にぎ
)
つてやらう』
307
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
両方
(
りやうはう
)
から
一度
(
いちど
)
にグツと
握
(
にぎ
)
り
締
(
し
)
めた。
308
キユーバーは
姫
(
ひめ
)
に
厳
(
きび
)
しく
左
(
ひだり
)
の
手首
(
てくび
)
を
握
(
にぎ
)
られ、
309
目
(
め
)
が
眩
(
ま
)
ひさうになつたので
死物狂
(
しにものぐるひ
)
になつて、
3091
姫
(
ひめ
)
の
手
(
て
)
をグツと
握
(
にぎ
)
つた。
310
途端
(
とたん
)
311
双方
(
さうはう
)
共
(
とも
)
一
(
いち
)
時
(
じ
)
に
気絶
(
きぜつ
)
し
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
倒
(
たふ
)
れて
仕舞
(
しま
)
つた。
312
デカタン
高原
(
かうげん
)
の
名物風
(
めいぶつかぜ
)
は
313
四辺
(
あたり
)
の
樹木
(
じゆもく
)
の
梢
(
こずゑ
)
を
叩
(
たた
)
いて
何
(
なん
)
となく
物騒
(
ものさわ
)
がしい。
314
(
大正一四・八・二三
旧七・四
於由良海岸秋田別荘
加藤明子
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 恋戦連笑
(B)
(N)
花鳥山 >>>
霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第70巻(酉の巻)
> 第1篇 花鳥山月 > 第4章 共倒れ
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第4章 共倒れ|第70巻|山河草木|霊界物語|/rm7004】
合言葉「みろく」を入力して下さい→