霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二〇章 千代(ちよ)(こゑ)〔一七八七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第70巻 山河草木 酉の巻 篇:第3篇 理想新政 よみ(新仮名遣い):りそうしんせい
章:第20章 千代の声 よみ(新仮名遣い):ちよのこえ 通し章番号:1787
口述日:1925(大正14)年08月25日(旧07月6日) 口述場所:丹後由良 秋田別荘 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年10月16日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
太子は、レール、マークが千草姫襲撃に失敗して捕らわれたことを知り、自ら彼らを助けに行こうとするが、妹の王女に止められる。
そこへ、マーク、レールの妻が、マークとレールが入獄したと聞いて、離縁状を届けにやってくる。
妻たちが去っていくと、入れ違いに、釈放されたマークとレール、そして照国別、照公が帰ってくる。
一同は、いよいよ教政改革の時がきたと判断し、新内局組織の協議会を開いた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2018-12-28 16:16:51 OBC :rm7020
愛善世界社版:251頁 八幡書店版:第12輯 482頁 修補版: 校定版:258頁 普及版:128頁 初版: ページ備考:
001 シグレ(ちやう)のレール、002マークの留守宅(るすたく)には003チウイン太子(たいし)004チンレイ、005テイラ、006ハリスの()(にん)(さび)しく(あたま)(あつ)めて密談(みつだん)をやつてゐる。
007テイラ『もし太子(たいし)(さま)008レールさまやマークさまは、009到頭(たうとう)やりそこなつて(とら)はれたさうぢや御座(ござ)りませぬか。010(わらは)水汲(みづく)みに(まゐ)りました(さい)011そこに()ちてゐた号外(がうぐわい)()吃驚(びつくり)しましたよ』
012チウ『ナニ、013やりそこなつたかな。014ヤアこいつア(こま)つたな。015かうしては()られまい。016ジヤンクの(ところ)へでも()つて二人(ふたり)(すく)()工夫(くふう)でもせなくちやなるまい』
017テイ『およしなさいませ、018剣呑(けんのん)ですよ。019金毛(きんまう)九尾(きうび)悪狐(あくこ)憑依(ひようい)した千草姫(ちぐさひめ)ですもの、020どんな難題(なんだい)をつけて、021(また)もや太子(たいし)(さま)牢獄(らうごく)()()(いのち)をとるか()れませぬから』
022チウ『それだと()つて、023国家(こくか)志士(しし)見殺(みごろ)しにする(わけ)には()かぬぢやないか。024()(これ)から、025どうなつても(かま)はぬ。026二人(ふたり)遭難(さうなん)坐視(ざし)するには(しの)びない。027(ひと)つあらゆる手段(しゆだん)(つく)して(たす)けて()ようと(おも)ふのだ。028どうか(きみ)(たち)(さん)(にん)(そと)()ぬやうにして()つてゐてくれ』
029チンレイ『お兄様(あにさま)030千金(せんきん)(おん)()(もつ)軽挙(けいきよ)妄動(まうどう)はお()しなさいませ。031万一(まんいち)()()(うへ)危険(きけん)(せま)り、032(いのち)でも(うしな)(あそ)ばすやうな(こと)があつては、033それこそトルマン(ごく)常暗(とこやみ)になつて(しま)ひますわ。034これ()人心(じんしん)騒々(さうざう)しく、035豺狼(さいらう)虎竜(こりう)跋扈(ばつこ)跳梁(てうりやう)する()(なか)036(なに)(ほど)太子(たいし)(さま)権威(けんゐ)だつて、037どうする(こと)出来(でき)ますまい。038(いま)重僧(ぢうそう)(ども)我利(がり)我欲(がよく)(ほか)(なに)(ねん)御座(ござ)りませぬ。039千草姫(ちぐさひめ)化物(ばけもの)誑惑(きやうわく)され、040(きん)(くつわ)をはまされてゐる悪人(あくにん)(ばか)りでありますから、041太子(たいし)(さま)だとて、042(わが)()栄達(えいたつ)(ため)には容赦(ようしや)(いた)しませぬよ。043教務(けうむ)総監(そうかん)のジヤンクさまでも(うご)かさうとしてゐるのですもの。044そんな剣呑(けんのん)(ところ)へ、045()しになつてはいけませぬ。046これ(ばか)りは(おも)(とま)つて(くだ)さい』
047太子(たいし)(そで)(すが)りつき涕泣(ていきふ)する。
048チウ『ヤ、049(こま)つたな。050そんなら(しばら)くお(まへ)意見(いけん)(まか)して()(こと)としようかい』
051 ()()(ところ)二三(にさん)(にん)(をとこ)ドヤドヤと()(きた)り、052ソツと門口(かどぐち)(のぞ)(なが)ら、
053(をとこ)『ヤア、054(たれ)()てゐるやうだ、055オイ(たれ)だい。056レール、057マークの大将(たいしやう)不幸(ふかう)にして(つか)まつたやうだが、058(まへ)(たれ)だい』
059チウ『ヤア兄弟(きやうだい)か、060マア這入(はい)(たま)へ。061(じつ)(おれ)もなア、062親分(おやぶん)(つか)まつたと()いて、063向上会(かうじやうくわい)(ゐん)(とも)に、064様子(やうす)(かんが)へに()(ところ)065(たれ)連中(れんぢう)()てゐないので、066留守(るす)師団長(しだんちやう)をやつてゐたのだ。067(まへ)(たれ)だつたいな』
068(をとこ)(おれ)かい、069(おれ)やタールにハール、070ケースの(さん)(にん)だ。071号外(がうぐわい)()てこいつは大変(たいへん)だと(おも)ひ、072(たれ)見舞(みま)ひに()てゐるに(ちが)ひないと、073()るものも()(あへ)()けつけて()たのだが、074(まへ)一体(いつたい)(たれ)だつたいのう』
075チウ『(おれ)かい、076(おれ)はレールの兄貴(あにき)秘蔵(ひざう)(おとうと)だ。077(まへ)(たち)()(つね)から()いてゐたが、078(おれ)特別(とくべつ)任務(にんむ)(あづか)つてゐたから、079(まへ)(たち)(かく)してゐたのだ。080かうなれば(だま)つて()(わけ)には()かぬが、081(なん)とか運動(うんどう)をやつてるだらうね』
082タール『ヤア(じつ)号外(がうぐわい)()るより、083同志(どうし)がクルスの(もり)(あつ)まり、084親分(おやぶん)(なん)とかして取返(とりかへ)さうと相談(さうだん)してる最中(さいちう)に、085数百(すうひやく)番僧隊(ばんそうたい)がうせやがつて、086十重(とへ)二十重(はたへ)()(かこ)んだものだから、087どうする(こと)出来(でき)ず、088同志(どうし)四方(しはう)散乱(さんらん)して(しま)つたのだ。089本当(ほんたう)(おれ)(たち)運動(うんどう)(たい)しては、090親分(おやぶん)入獄(にふごく)()(づら)(はち)だ。091痩児(やせご)蓮根(はすね)だ。092どうにもかうにも、093(いま)(ところ)()のつけやうが()いわい。094オイ、095兄貴(あにき)096(なに)かいい(かんが)へはなからうかな』
097チウ『()()て、098さう(あわ)てた(ところ)仕方(しかた)がない。099(いま)役僧(やくそう)(ども)(あたま)非常(ひじやう)鋭敏(えいびん)になつてゐるから、100(おほ)きな(こゑ)(もの)(ひと)()(こと)出来(でき)ない。101(しばら)成行(なりゆき)(まか)し、102(とき)()(うば)(かへ)すより(ほか)方法(はうはふ)はなからうぞ。103マアゆつくりし(たま)へ』
104タ『オイ、105ハール、106ケース、107兄貴(あにき)があゝ()ふから、108()(かく)一服(いつぷく)しようぢやないか』
109『ウン、110よからう』
111二人(ふたり)はタールの(あと)について(せま)(とこ)かばち(こし)(おろ)した。
112タ『ヤア、113(しか)もナイスが(さん)(にん)()るぢやないか。114オイ兄貴(あにき)115うまい(こと)してやがるな。116一人(ひとり)()つて(さん)(にん)占領(せんりやう)するとは、117本当(ほんたう)(すご)腕前(うでまへ)ぢやないか。118吾々(われわれ)主義(しゆぎ)から()つても、119こんな不道理(ふだうり)(こと)出来(でき)ない。120どうだ婦人(ふじん)国有論(こくいうろん)実行(じつかう)をやらうぢやないか』
121チウ『馬鹿(ばか)()ふな。122この(さん)(にん)(みな)婦人(ふじん)向上会(かうじやうくわい)(ゐん)だ。123婦人(ふじん)参政権(さんせいけん)獲得(くわくとく)運動(うんどう)張本人(ちやうほんにん)だよ。124レール、125マークの両人(りやうにん)遭難(さうなん)()いて、126親切(しんせつ)(たづ)ねて()てくれたのだ』
127タ『成程(なるほど)128そらさうだらう。129これこれ()婦人(ふじん)130(この)(さい)しつかり()活動(くわつどう)(ねが)ひますぜ。131(しか)何時(いつ)バラスパイが追跡(ついせき)して()るかも()れぬから、132永居(ながゐ)(おそ)れだ。133兄貴(あにき)(また)ゆつくりお()にかからう。134左様(さやう)なら』
135足早(あしばや)(やみ)路地(ろぢ)姿(すがた)()した。
136 その()()んだり(くづ)したり、137いろいろと小声(こごゑ)(はな)(なが)(ねむ)つて(しま)ひ、138翌朝(よくてう)(はや)うから(さん)(にん)(をんな)炊事(すゐじ)をしたり、139そこらを()いたりやつて()ると、140乳飲児(ちのみご)()()うた二人(ふたり)(をんな)が、141相当(さうたう)衣服(いふく)()(まと)(なが)142門口(かどぐち)()ち、
143(をんな)『もし、144一寸(ちよつと)(たづ)(まを)しますが、145レール、146マークの(たく)当家(たうけ)ぢや御座(ござ)りませぬか』
147テイラ『ハイ、148左様(さやう)御座(ござ)ります。149誰方(どなた)()りませぬが、150()()這入(はい)(くだ)さいませ』
151(をんな)(わたし)はクロイの(さと)のマサ()152カル()(まを)すもので御座(ござ)ります。153レールさまやマークさまが、154小本山(せうほんざん)役僧(やくそう)(つかま)へられ、155入獄(にふごく)をなさつたと()きまして、156()るものも()(あへ)遙々(はるばる)(たづ)ねて(まゐ)りました。157どうで御座(ござ)りませうかな。158早速(さつそく)には(かへ)つて御座(ござ)るやうな(こと)はありますまいか』
159テイ『貴女(あなた)は、160さうすると、161マサ()さま、162カル()さまと仰有(おつしや)いましたが、163レールさま、164マークさまの(おく)さまぢや御座(ござ)りませぬか』
165マサ()『ハイ、166(わたし)はレールの女房(にようばう)御座(ござ)ります。167この(かた)はマークさまの(おく)さまで御座(ござ)りますよ。168向上(かうじやう)運動(うんどう)とか(なん)とか()つて奇妙(きめう)(こと)主人(しゆじん)がやるものですから、169(わたし)(ところ)まで番僧(ばんそう)()つて()りますの。170本当(ほんたう)(こま)つて(しま)ひますわ』
171チウ『ヤー(おく)さまで御座(ござ)りますか。172サア、173どうか此方(こちら)へお()(くだ)さいませ。174(べつ)に、175さう()心配(しんぱい)にも(およ)びますまい。176やがて(ゆる)されて(かへ)つて()られるでせう』
177マサ()『ハイ、178有難(ありがた)御座(ござ)ります。179本当(ほんたう)(わたし)二人(ふたり)不運(ふうん)なもので御座(ござ)ります。180何程(なにほど)意見(いけん)(いた)しましても、181(をんな)()(こと)でないと、182一言(ひとこと)にはねつけ、183一言(いちごん)女房(にようばう)()(こと)()いて()れないものですから、184たうとうこんな災難(さいなん)にあつたので御座(ござ)ります。185親類(しんるゐ)兄弟(きやうだい)からも(やかま)しく(まを)しまして、186(えん)()つて(かへ)つて()(かへ)つて()いと(すす)めるのですけれど、187二人(ふたり)(なか)に、188()つても()れぬ(かすがひ)出来(でき)ましたので、189可愛(かあい)子供(こども)継母(ままはは)()(わた)すのもいぢらしいと(おも)ひ、190()きの(なみだ)今日(こんにち)(まで)辛抱(しんばう)して()ましたが、191もう()()れませぬ。192それでキツパリ(えん)()つて(もら)()いと(おも)ひまして(たづ)ねて()たので御座(ござ)ります』
193チウ『女房(にようばう)(をつと)離縁(りえん)請求(せいきう)するとは、194如何(いか)なる事情(じじやう)があるにもせよ、195不貞(ふてい)(はなはだ)しきものだ。196今時(いまどき)女性(ぢよせい)は、197どれもこれも、198我利(われよ)しだから、199(こま)つたものだな』
200マサ()『そりや一応(いちおう)御尤(ごもつと)もで御座(ござ)りますが、201こんな(をつと)()うて()りましては、202(この)()(なか)安心(あんしん)して(くら)すことが出来(でき)ませぬわ。203貴方(あなた)矢張(やつぱり)レールのお仲間(なかま)御座(ござ)りますか』
204チウ『ハア、205さうです。206兄貴(あにき)かまつたものだから、207是非(ぜひ)なく(かか)一緒(いつしよ)に、208この牙城(がじやう)(まも)つて()ります。209随分(ずいぶん)留守(るす)師団長(しだんちやう)も、210いい加減(かげん)なものですよ』
211カル()綺麗(きれい)()婦人(ふじん)が、212しかも(さん)(にん)()らつしやいますが、213(この)二人(ふたり)はどうやら、214レールさまとマークの(あい)してゐられる()婦人(ふじん)でせう。215本当(ほんたう)妻子(さいし)(たい)し、216あるにあられぬ心配(しんぱい)をかけておき(なが)ら、217(なん)()(ひど)(ひと)だらう。218マサ()さま、219もう駄目(だめ)ですよ。220スツパリと断念(だんねん)しようぢや御座(ござ)りませぬか』
221マサ『本当(ほんたう)にさうですな。222こんな白首(しらくび)があるものですから妻子(さいし)(かへり)みず、223こんな(ところ)()きすつぽうな(くら)しをやつてゐるのですよ。224エーもう(けがらは)しうなつて()ました。225サア(かへ)りませう』
226(はや)くも立去(たちさ)らむとする。
227チウ『もしもし(おく)さま、228そら(ちが)ひますよ。229さう、230誤解(ごかい)されちやレールさまや、231マークさまに()(どく)ですわ。232(これ)には(ふか)(わけ)があります。233さう(おこ)らずに一応(いちおう)(わたし)()(こと)をお()(くだ)さい』
234マサ『エーエー(なん)仰有(おつしや)つても、235(わたし)(みみ)には這入(はい)りませぬ。236現在(げんざい)白首(しらくび)()せつけ(なが)百万遍(ひやくまんべん)弁解(べんかい)をなさつても、237(わたし)(みみ)へは到底(たうてい)這入(はい)りませぬ。238こんな(こと)だらうと(おも)ひ、239マサカの(とき)用意(ようい)にと、240カル()さまと相談(さうだん)(うへ)に、241(おや)兄弟(きやうだい)承諾(しやうだく)()て、242ここに離縁状(りえんじやう)()つて(まゐ)りました。243レール、244マークの両人(りやうにん)(とら)はれの()(うへ)ですから、245直接(ちよくせつ)(わた)すことは出来(でき)ませぬから、246兄弟分(きやうだいぶん)貴方(あなた)(たしか)(わた)しますから、247どうか面会(めんくわい)においでになつても、248「マサ()やカル()(こと)はフツツリ(おも)()つて(くだ)さい。249以後(いご)関係(くわんけい)はありませぬから、250()貴方(あなた)出獄(しゆつごく)(まで)(あづか)つておきます」と、251(つた)へて(くだ)さい。252エー残念(ざんねん)やな残念(ざんねん)やな』
253二通(につう)離縁状(りえんじやう)()げつけ地団駄(ぢだんだ)()(なが)ら、254路地口(ろぢぐち)一生(いつしやう)懸命(けんめい)(くも)(かすみ)(かへ)()く。
255チウ『ハツハヽヽヽ、256テイラさま、257ハリスさま、258目出度(めでた)う。259到頭(たうとう)レール、260マークさまの(おく)さまにして(しま)はれたぢやないか。261満足(まんぞく)でせうね』
262 二人(ふたり)(かほ)真赤(まつか)()め、
263太子(たいし)(さま)264(はら)(わる)い、265揶揄(からかい)もいい加減(かげん)にして(くだ)さいな。266ホヽヽヽヽヽ』
267チウ『ヤ、268此奴(こいつ)冗談(じようだん)だ。269ハヽヽヽヽヽ』
270(わら)(をり)しも、271(りん)()けたたましく仁恵令(じんけいれい)(おこな)はれ、272囚人(しうじん)全部(ぜんぶ)解放(かいはう)されたと()一葉(いちえふ)号外(がうぐわい)()()んで()た。273()(にん)(この)号外(がうぐわい)()るより(おも)はず()らず()()つて、274天地(てんち)(かみ)感謝(かんしや)した。
275 チウインにも(さん)(にん)(をんな)()にも(うれ)(なみだ)(にぢ)んでゐた。276そこへイソイソとしてレール、277マークの二人(ふたり)(かへ)つて()た。
278チウ『ヤア、279兄貴(あにき)280よう(かへ)つて()てくれた。281(いま)(いま)とて大変(たいへん)心配(しんぱい)をしてゐた(ところ)だ。282随分(ずいぶん)(こま)つただらうな』
283レ『ヤア有難(ありがた)う。284おかげで解放(かいはう)されました』
285マ『どうも()心配(しんぱい)をかけて()みませぬ。286ツイやり(そん)じたものですから、287あんな失敗(しつぱい)をしたのですよ。288(とき)(めづ)らしいお(かた)(つら)つて(かへ)りました。289()にかけませうか。290路地(ろぢ)入口(いりぐち)()つて()られますから』
291チウ『(めづ)らしい(かた)とは、292オイ(きみ)293(たれ)だい』
294レ『貴方(あなた)神軍(しんぐん)(たす)けられたと()ふ、295三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(さま)ですよ。296不思議(ふしぎ)(えん)(おな)牢獄(らうや)打込(うちこ)まれて()つたのです』
297チウ『(なに)298宣伝使(せんでんし)299ヤアそりや、300かうしては()られぬ。301ドレ、302(ぼく)()挨拶(あいさつ)()かう』
303()(なが)ら、304レール、305マークに案内(あんない)させ、306路地口(ろぢぐち)()()れば、307照国別(てるくにわけ)308照公(てるこう)二人(ふたり)がニコニコとして()つてゐる。
309チウ『ヤア、310宣伝使(せんでんし)(さま)311(まこと)にお()(どく)(こと)御座(ござ)りました。312何分(なにぶん)継母(けいぼ)曲神(まががみ)憑依(ひようい)して()りますものですから、313清浄(しやうじやう)潔白(けつぱく)貴方(あなた)(さま)を、3131あのやうな(むさくる)しい牢獄(らうごく)(なげ)()んだもので御座(ござ)りませう。314どうぞ(わたし)(めん)じ、315量見(りやうけん)してやつて(くだ)さいませ』
316照国別(てるくにわけ)『イヤ、317貴方(あなた)はチウイン太子(たいし)(さま)318国家(こくか)()め、319尊貴(そんき)(おん)()(おと)し、3191()尽力(じんりよく)(だん)320(じつ)感謝(かんしや)()へませぬ。321何事(なにごと)(みな)(かみ)(さま)()経綸(けいりん)ですから、322そんなお気遣(きづか)ひは()無用(むよう)にして(くだ)さい』
323照公(てるこう)太子(たいし)(さま)324(いよいよ)教政(けうせい)改革(かいかく)機運(きうん)(めぐ)つて()たやうで御座(ござ)りますわ。325(よろこ)(くだ)さいませ。326最早(もはや)327斯様(かやう)貧民窟(ひんみんくつ)にお(くら)(あそ)ばす時期(じき)()みました。328どうか堂々(だうだう)名乗(なの)りをあげ、329教政(けうせい)改革(かいかく)にお(あた)(くだ)さいませ。330(わたくし)()(きみ)(とも)に、331()らむ(かぎ)りのお(たす)けを(いた)()(かんが)へで御座(ござ)ります』
332チウ『ヤ、333如何(いか)にも、334(せつ)(とほ)りいよいよ時節(じせつ)到来(たうらい)したやうに(おも)ふ。335サア、336レール、337マーク両人(りやうにん)338ここで(ひと)臨時(りんじ)会議(くわいぎ)でも(ひら)いて、339仮内局(かりないきよく)組織(そしき)しようぢやないか』
340レ『()(かく)341ここでは都合(つがふ)(わる)御座(ござ)りませう。342九尺(くしやく)二間(にけん)御殿(ごてん)まで(まゐ)りませう、343アハヽヽヽ』
344(わら)(なが)(かへ)(きた)り、345ここに男女(だんぢよ)(ろく)(にん)六人ではなく八人のはず。次の章では八人と書いてある。チウイン太子、チンレイ、テイラ、ハリス、レール、マーク、照国別、照公の八人。(かうべ)(あつ)めて、346新内局(しんないきよく)組織(そしき)協議会(けふぎくわい)(ひら)いた。347(すずめ)(こゑ)今日(けふ)(なん)となく(いさ)ましく千代(ちよ)々々(ちよ)(きこ)()る。
348大正一四・八・二五 旧七・六 於由良秋田別荘 北村隆光録)
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