霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第五章 花鳥山(くわてうざん)〔一七七二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第70巻 山河草木 酉の巻 篇:第1篇 花鳥山月 よみ(新仮名遣い):かちょうさんげつ
章:第5章 花鳥山 よみ(新仮名遣い):かちょうざん 通し章番号:1772
口述日:1925(大正14)年08月23日(旧07月4日) 口述場所:丹後由良 秋田別荘 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年10月16日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
五色の雲がたなびき、鳳凰、孔雀ほか何百種もの鳥が舞い、地は一面の緑、空には色とりどり、紫・浅黄・白・黄色のめでたい雲がたなびいている。
紅の花が咲きにおい、胡蝶は花に遊び、天国浄土の光景を眺めつつ、地上三、四尺の空中を進んでゆく。
前方には黄金の甍が日に照り輝く、荘厳な世界がある。左手には青い海原、舟、五色の鳥。
涼しい風が常に吹いて、なんとも言えぬ芳香を送っている。
旅人は槍を片手につきながら、青草茂る山の中腹に、今きた道を眺めながら、タバコをくゆらし休憩している。
そこへ、おーい、おーいと声をあげながら、登ってくる貴婦人がある。よくみればその貴婦人は千草姫であった。
千草姫は旅人のそばに来て、満面の笑みにて話し掛ける。
千草姫:右守のスマンヂー様、あなたはどうしてこのようなところにいらっしゃったのですか。
スマンヂー:てっきり、軍議の最中ガーデン王の手にかかって死んだと思ったのだが、あれは夢だったのだろうか。しかし合点のいかないのは自分の身の様子、名も知らない清い聖地にいるのはなぜだろう。また、あなたがどうして私の後を追ってこんなところへおいでになったのだろうか。
千草姫:ここは天界の第三段の浄土です。私は寿命が尽きて、主の神様により、浄土住まいを命じられました。また、伊吹戸主の神様にお伺いしたところ、あなたも天界に住まうべき身の上であるとのことです。
千草姫:こうなった上は、神のお引き合わせ、私とガーデン王は意思想念を異にし、霊界では添えない定めです。あなたとここで夫婦となって、天国浄土の御用をいたしましょう。
スマンヂー:ああ、有難いことだ、実を言えば、私は現界であなたを恋しておりました。しかしながら、現実界のしがらみにより、思いを伝えることさえできませんでした。こうやって神様から定められた縁であれば、そのようにいたしましょう。現実界にて善行を尽くした報酬が今ここに実り、二人は喜びの苑にあって、時間空間を越えて永遠に、嬉しく楽しく暮らしましょう。ああ惟神惟神、御霊の恩頼をほぎまつります。
このように、お互いに歌い交わしているところへ、ダイヤモンドのごとく白金光のごとく天空を輝かし、二人の前に火の弾となって落下してきたのは、エンゼル・言霊別命であった。
言霊別は二人を第二霊国の花鳥山に案内する。スマンヂーは、なぜ俗人の自分が、宣伝使の楽園である霊国に招かれるのか言霊別に尋ねる。
言霊別:霊国は、宣伝使、国民指導者の善良なる霊の永久の住処である。今日の現実界の宣伝使・僧侶・牧師などは地獄に籍を置いている。一方スマンヂーは生前宣伝使ではなかったけれども、現実界の最善を尽くし、正守護神が霊国に相応していた。宇宙はすべて相応の理によってなりたっており、この花鳥山も、スマンヂーの精霊が、現界にありながら、作り上げていたものである。
言霊別は去り、二人はここに祝いの歌を歌い、霊国に夫婦となって永久に暮らすこととなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2018-11-28 15:53:46 文字数:4269 OBC :rm7005
愛善世界社版:59頁 八幡書店版:第12輯 411頁 修補版: 校定版:59頁 普及版:32頁 初版: ページ備考:
001天津(あまつ)御空(みそら)はいと清(きよ)く
002五色(ごしき)の雲(くも)が棚引(たなび)いて
003鳳凰(ほうわう)孔雀(くじやく)百鳥(ももどり)は
004低空(ていくう)飛行(ひかう)をやつてゐる
005地(ち)は一面(いちめん)の青畳(あをだたみ)
006紫(むらさき)浅黄(あさぎ)白(しろ)黄色(きいろ)
007紅(くれなゐ)の花(はな)咲(さ)き匂(にほ)ひ
008胡蝶(こてふ)の姿(すがた)翩飜(へんぽん)と
009天国(てんごく)浄土(じやうど)の光景(くわうけい)を
010いとも楽(たの)しく眺(なが)めつつ
011風(かぜ)に吹(ふ)かるる心地(ここち)して
012地上(ちじやう)を距(さ)ること三四(さんし)尺(しやく)
013空中(くうちう)易々(やすやす)進(すす)み行(ゆ)く
014遥(はるか)前方(ぜんぱう)を眺(なが)むれば
015黄金(こがね)の甍(いらか)キラキラと
016天津(あまつ)日影(ひかげ)に照(て)り映(は)えて
017荘厳(さうごん)世界(せかい)を現出(げんしゆつ)し
018左手(ゆんで)の方(かた)を眺(なが)むれば
019青海原(あをうなばら)は波(なみ)しづか
020彼方(あなた)此方(こなた)にチラチラと
021胡蝶(こてふ)の空中(くうちう)に舞(ま)ふ如(ごと)く
022白(しろ)く輝(かがや)く真帆(まほ)片帆(かたほ)
023五色(ごしき)の鳥(とり)は右(みぎ)左(ひだり)
024波(なみ)の上(へ)走(はし)る面白(おもしろ)さ
025涼(すず)しき風(かぜ)は永遠(とは)に吹(ふ)き
026何(なん)とも云(い)へぬ芳香(はうかう)を
027道(みち)行(ゆ)く人(ひと)の身辺(しんぺん)に
028送(おく)り来(きた)るぞ床(ゆか)しけれ。
029茲(ここ)に一人(ひとり)の旅人(たびびと)は
030鎗(やり)を片手(かたて)につき乍(なが)ら
031青草(あをくさ)しげる丸山(まるやま)の
032其(その)中腹(ちうふく)に身(み)をおいて
033吾(わが)身(み)の歩(あゆ)み来(きた)りたる
034あとを眺(なが)めてニコニコと
035煙草(たばこ)をくゆらし憩(いこ)ひゐる
036かかる所(ところ)へ山下(さんか)より
037オーイ オーイと声(こゑ)をかけ
038登(のぼ)り来(きた)れる婦人(ふじん)あり
039よくよく見(み)ればこはいかに
040思(おも)ひもよらぬ千草姫(ちぐさひめ)
041涼(すず)しき清(きよ)き白妙(しろたへ)の
042衣(ころも)を風(かぜ)に飜(ひるがへ)し
043旅人(りよじん)のそばに近(ちか)よりて
044満面(まんめん)笑(ゑみ)を湛(たた)へつつ
045『貴方(あなた)は右守(うもり)のスマンヂー
046コラまあ何(ど)うして此(この)様(やう)な
047平和(へいわ)の山(やま)に御(ご)到来(たうらい)
048訝(いぶ)かしさよ』と尋(たづ)ぬれば
049一人(ひとり)の旅人(りよじん)はうなづいて
050『貴女(あなた)は尊(たふと)きお姫(ひめ)様(さま)
051何(ど)うして此処(ここ)へお出(で)ましか
052私(わたし)は合点(がてん)が行(ゆ)きませぬ
053トルマン城(じやう)の奥(おく)の間(ま)で
054ガーデン王(わう)や左守司(さもりがみ)
055大足別(おほだるわけ)の攻軍(こうぐん)に
056抵抗(ていかう)せむといろいろに
057軍議(ぐんぎ)を運(めぐら)しゐたりしが
058協議(けふぎ)叶(かな)はぬ私(わたくし)は
059尊(たふと)き主(きみ)の御(おん)為(ため)に
060お手(て)にかかつて身失(みう)せしと
061思(おも)ひしことは夢(ゆめ)なるか
062合点(がてん)のゆかぬ此(この)体(からだ)
063ここは何(なん)といふ所(とこ)か
064名(な)さへも知(し)らない清浄(しやうじやう)の
065百花(ももばな)千花(ちばな)咲(さき)ほこる
066浄土(じやうど)の如(や)うな聖地(せいち)です
067貴女(あなた)は何(ど)うして吾々(われわれ)の
068後(あと)を尋(たづ)ねてお出(で)ましか
069不思議(ふしぎ)不思議(ふしぎ)が重(かさ)なつて
070どうして可(よ)いやら分(わか)らない』
071語(かた)れば千草(ちぐさ)はうなづいて
072『ここは所謂(いはゆる)天界(てんかい)の
073第三段(だいさんだん)の浄土(じやうど)です
074私(わたし)は天寿(てんじゆ)が尽(つ)きまして
075主(す)の神(かみ)様(さま)の命令(めいれい)で
076浄土(じやうど)の住居(すまゐ)を命(めい)ぜられ
077喜(よろこ)び勇(いさ)んでスタスタと
078花(はな)咲(さ)く野辺(のべ)を参(まゐ)りました
079貴方(あなた)も何(ど)うやら天界(てんかい)に
080お住居(すまゐ)遊(あそ)ばすお身(み)の上(うへ)
081伊吹戸主(いぶきどぬし)の神(かみ)様(さま)に
082確(たしか)に聞(き)いておきました
083現界(げんかい)などに心(こころ)をば
084残(のこ)させ玉(たま)はず速(すみやか)に
085神(かみ)の依(よ)さしの天界(てんかい)へ
086私(わたし)と共(とも)に昇(のぼ)りませう
087あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
088尊(たふと)き神(かみ)の引合(ひきあは)せ
089貴方(あなた)は永(なが)らく独身者(ひとりもの)
090私(わたし)は夫(をつと)はおはせ共(ども)
091現幽(げんいう)所(ところ)を異(こと)にした
092今日(けふ)の吾(わが)身(み)は独身者(ひとりもの)
093意思(いし)想念(さうねん)の相異(さうい)より
094ガーデン王(わう)と永久(えいきう)に
095霊界(れいかい)までは添(そ)へませぬ
096貴方(あなた)の智性(ちせい)は吾(わが)智性(ちせい)
097私(わたし)の意思(いし)は全然(さつぱり)と
098貴方(あなた)の意思(いし)に通(かよ)ひます
099神(かみ)の開(ひら)きし天界(てんかい)の
100此(この)楽園(らくゑん)に二柱(ふたはしら)
101夫婦(ふうふ)となつて永久(とこしへ)に
102天国(てんごく)浄土(じやうど)の御用(ごよう)をば
103力(ちから)限(かぎ)りに致(いた)しませう
104如何(いかが)で御座(ござ)る右守(うもり)さま』
105いへば右守(うもり)は頷(うなづ)いて
106『あゝ有難(ありがた)し有難(ありがた)し
107私(わたし)は現世(げんせ)に居(ゐ)る中(うち)ゆ
108貴女(あなた)を恋(こひ)して居(を)りました
109とは云(い)ふものの現界(げんかい)の
110下(くだ)らぬ階級(かいきふ)が邪魔(じやま)をして
111心(こころ)の丈(たけ)を一言(ひとこと)も
112申(まを)し上(あ)げたることはない
113貴女(あなた)の心(こころ)も其(その)通(とほ)り
114私(わたし)を愛(あい)してゐらるると
115早(はや)くも承知(しようち)はしてゐたが
116現実界(げんじつかい)の義理(ぎり)人情(にんじやう)
117法則(はふそく)などを省(かへり)みて
118こらへ忍(しの)んで居(を)りました
119もう此(この)上(うへ)は神(かみ)様(さま)の
120定(さだ)め玉(たま)ひし縁(えん)ぢやもの
121誰(たれ)に遠慮(ゑんりよ)はいりませぬ
122現実界(げんじつかい)におきまして
123あらむ限(かぎり)の善行(ぜんかう)を
124尽(つく)した二人(ふたり)の報酬(はうしう)は
125今(いま)や稔(みの)つて此(この)通(とほ)り
126歓喜(くわんき)の苑(その)に身(み)をおいて
127千代(ちよ)も八千代(やちよ)も万代(よろづよ)も
128時間(じかん)空間(くうかん)超越(てうゑつ)し
129嬉(うれ)しく楽(たの)しく暮(くら)しませう
130あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
131御霊(みたま)の恩頼(ふゆ)をほぎまつる』
132 かく互(たがひ)に歌(うた)つてゐる所(ところ)へ、133天空(てんくう)を輝(かがや)かし、134ゴウゴウと音(おと)を立(た)て、135両人(りやうにん)の前(まへ)に火弾(くわだん)となつて落下(らくか)した。136其(その)光明(くわうみやう)はダイヤモンドの如(ごと)く、137白金光(プラチナ)の如(ごと)くであつた。138両人(りやうにん)はハツと驚(おどろ)き、139両手(りやうて)で目(め)を押(おさ)へ其(その)場(ば)に蹲踞(しやが)んでゐる。140火光(くわくわう)は忽(たちま)ち麗(うるは)しき神人(しんじん)と化(くわ)し、141声(こゑ)も静(しづか)に、
142エンゼル『スマンヂー様(さま)、143千草姫(ちぐさひめ)様(さま)、144私(わたし)は第一(だいいち)霊国(れいごく)より貴方(あなた)をお迎(むか)へに来(き)たエンゼルで御座(ござ)います。145どうかお目(め)をあけて下(くだ)さい』
146 両人(りやうにん)は『ハイ』と言葉(ことば)を返(かへ)し乍(なが)ら、147徐(しづ)かに両眼(りやうがん)を開(ひら)けば、148白妙(しろたへ)の衣(ころも)を纒(まと)ひたる、149威厳(ゐげん)備(そな)はる神人(しんじん)が七八(しちはち)尺(しやく)前(まへ)にニコニコし乍(なが)ら立(た)つてゐる。
150エンゼル『私(わたし)は言霊別(ことたまわけの)命(みこと)であります。151スマンヂーさま、152千草姫(ちぐさひめ)さま、153貴方(あなた)等(がた)は現界(げんかい)に於(おい)て、154トルマン国(ごく)の為(ため)、155多数(たすう)民衆(みんしう)の為(ため)、156現界(げんかい)に於(お)ける最善(さいぜん)を尽(つく)しておいでになりました。157そして貴方(あなた)等(がた)両人(りやうにん)は、158意思(いし)想念(さうねん)の合致(がつち)した真正(しんせい)の御(ご)夫婦(ふうふ)であり乍(なが)ら、159所在(あらゆる)苦痛(くつう)を堪(た)へ忍(しの)び、160恋(こひ)てふ魔(ま)に打(うち)勝(か)つて、161よくも一生(いつしやう)の間(あひだ)忍(しの)ばれました。162神界(しんかい)に於(おい)ては、163特(とく)に貴女(あなた)の善行(ぜんかう)が記(しる)されて御座(ござ)いますよ。164サア、165之(これ)から第二(だいに)霊国(れいごく)を御(ご)案内(あんない)申(まを)しませう』
166スマンヂー『ハイ有難(ありがた)う御座(ござ)います。167思(おも)はぬ所(ところ)で神(かみ)様(さま)に御(お)目(め)にかかり、168何(なん)といふ有難(ありがた)いことで御座(ござ)いませうか。169御(お)礼(れい)は言葉(ことば)に尽(つく)されませぬ』
170言霊別(ことたまわけ)『貴方(あなた)の培(つち)かふた畑(はたけ)に稔(みの)つた果実(くわじつ)で御座(ござ)いますよ。171決(けつ)して私(わたし)に御(お)礼(れい)を申(まを)されては困(こま)ります。172今日(けふ)の喜(よろこ)びは貴方(あなた)が培(つちか)ひ養(やしな)つてゐた所(ところ)の喜(よろこ)びの実(み)で御座(ござ)います。173千草姫(ちぐさひめ)様(さま)も其(その)通(とほ)り、174必(かなら)ず必(かなら)ず礼(れい)なんか言(い)つてはなりませぬ。175サア私(わたし)についてお出(いで)なさいませ』
176と言霊別(ことたまわけの)命(みこと)は一足先(ひとあしさき)に立(た)ち、177両人(りやうにん)は互(たがひ)に労(いたは)り乍(なが)ら、178雲(くも)の如(ごと)き、1781波(なみ)の如(ごと)き青々(あをあを)とした丘陵(きうりよう)をふみこえふみこえ、179東(ひがし)へ東(ひがし)へと進(すす)んで行(ゆ)く。
180 何時(いつ)とはなしに嚠喨(りうりやう)たる音楽(おんがく)の響(ひび)き、181四辺(しへん)より聞(きこ)えるとみれば、182二人(ふたり)は早(はや)くも方形(はうけい)の岩(いは)を以(もつ)て畳(たた)んだ様(やう)な丘陵(きうりよう)の上(うへ)に着(つい)てゐた。
183言霊別(ことたまわけ)『此処(ここ)は第二(だいに)霊国(れいごく)に於(おい)て有名(いうめい)なる花鳥山(くわてうざん)で御座(ござ)います。184御覧(ごらん)なさい、185緑(みどり)の羽(はね)を拡(ひろ)げ、186紅(くれなゐ)の冠(かむり)を頂(いただ)き、187美(うつく)しい鳥(とり)が四方(しはう)八方(はつぱう)に翺翔(かうしよう)し、188美妙(びめう)の声(こゑ)を放(はな)ち、189又(また)此(この)通(とほ)り地上(ちじやう)の世界(せかい)にないやうな麗(うるは)しき花(はな)が咲(さ)き乱(みだ)れ香気(かうき)を放(はな)つてをります。190ここは貴方(あなた)等(がた)の千代(ちよ)の住家(すみか)で御座(ござ)いますよ。191食(たべ)たい物(もの)は何(なん)でも望(のぞ)み次第(しだい)、192此(この)麗(うるは)しき樹木(じゆもく)の枝(えだ)に臨時(りんじ)に熟(じゆく)しますから、193それを採(と)つておあがりなさい』
194スマンヂー『一寸(ちよつと)エンゼル様(さま)にお尋(たづ)ね致(いた)します。195今(いま)霊国(れいごく)と承(うけたま)はりましたが196霊国(れいごく)は宣伝使(せんでんし)の集(あつ)まる楽園(らくゑん)では御座(ござ)いませぬか。197私(わたし)はトルマン国(ごく)の小臣(せうしん)、198平素(へいそ)ウラル教(けう)を奉(ほう)じ乍(なが)ら、199深(ふか)い信仰(しんかう)も致(いた)しませず、200又(また)千草姫(ちぐさひめ)様(さま)だとて其(その)通(とほ)り、201トルマン国(ごく)の王妃(わうひ)として、202国民(こくみん)の母(はは)として最善(さいぜん)をお尽(つく)し遊(あそ)ばしたもの、203宣伝使(せんでんし)牧師(ぼくし)ならばいざ知(し)らず、204吾々(われわれ)如(ごと)き俗界(ぞくかい)に心(こころ)をひたして居(を)りましたものが、205何(ど)うして又(また)霊国(れいごく)へ来(こ)られたもので御座(ござ)いませうか、206どうも此(この)理由(りいう)が分(わか)りませぬ』
207言霊(ことたま)『お尋(たづ)ねの通(とほ)り、208霊国(れいごく)は凡(すべ)て宣伝使(せんでんし)や、209国民(こくみん)指導者(しだうしや)の善良(ぜんりやう)なる霊(れい)の来(きた)るべき永久(えいきう)の住所(すみか)で御座(ござ)います。210今日(こんにち)の現実界(げんじつかい)に於(おい)て、211宣伝使(せんでんし)や僧侶(そうりよ)や神官(しんくわん)牧師(ぼくし)などは一人(ひとり)として霊国(れいごく)へ昇(のぼ)り来(く)る資格(しかく)を有(も)つてをりませぬ。212又(また)天国(てんごく)へは猶(なほ)更(さら)昇(のぼ)る者(もの)なく、213何(いづ)れも地獄(ぢごく)に籍(せき)をおき、214地獄界(ぢごくかい)に於(おい)て昏迷(こんめい)と矛盾(むじゆん)と、215射利(しやり)と脱線(だつせん)と暗黒(あんこく)との実(み)を結(むす)んで、216互(たがひ)に肉(にく)を削(けづ)り合(あ)ひ、217血(ち)を啜(すす)り合(あ)ひ、218妄動(まうどう)を続(つづ)けて居(を)りまする。219貴方(あなた)は生前(せいぜん)に於(おい)て宣伝使(せんでんし)ではなかつたが、220現実界(げんじつかい)の人間(にんげん)としての最善(さいぜん)を尽(つく)されました。221之(これ)は要(えう)するに表面(へうめん)的(てき)神(かみ)を信仰(しんかう)せなくても、222貴方(あなた)の正(せい)守護神(しゆごじん)はすでに天界(てんかい)の霊国(れいごく)に相応(さうおう)し、223神籍(しんせき)をおいてゐられたのです。224凡(すべ)て宇宙(うちう)は相応(さうおう)の理(り)に仍(よ)つて成(なり)立(た)つてゐるものです。225此(この)第二(だいに)霊国(れいごく)の花鳥山(くわてうざん)は貴方(あなた)の物(もの)です。226貴方(あなた)の精霊(せいれい)が現界(げんかい)に於(おい)て、227已(すで)に此(この)麗(うるは)しき霊山(れいざん)を造(つく)つておかれたのです。228誰(たれ)に遠慮(ゑんりよ)は要(い)りませぬ。229永久(えいきう)に富(とみ)栄(さか)えて夫婦(ふうふ)仲(なか)よく神界(しんかい)の御用(ごよう)をお勤(つと)めなさい。230左様(さやう)ならば』
231と立去(たちさ)らむとするを、232千草姫(ちぐさひめ)は慌(あわ)てて白(しろ)い手(て)を上(あ)げ乍(なが)ら、
233『もしもし、234エンゼル様(さま)、235妾(わらは)は今(いま)フツと考(かんが)へましたが、236スコブツエン宗(しう)のキユーバーと申(まを)す者(もの)と手(て)を握(にぎ)り合(あ)ひ、237双方(さうはう)共(とも)に一(いち)時(じ)に気絶(きぜつ)した様(やう)に記憶(きおく)が浮(う)かんで参(まゐ)ります。238あのキユーバーはどうなりましたか、239一寸(ちよつと)お尋(たづ)ね致(いた)します』
240言霊(ことたま)『彼(かれ)は未(いま)だ現界(げんかい)に生命(せいめい)が残(のこ)つて居(を)りますから、241今(いま)や八衢(やちまた)に彷徨(さまよう)て居(を)ります。242併(しか)し乍(なが)ら愛善(あいぜん)の徳(とく)うすく、243智慧(ちゑ)証覚(しようかく)の光(ひかり)鈍(にぶ)き彼(かれ)が如(ごと)き人物(じんぶつ)のことを思(おも)い出(だ)してはなりませぬよ。244貴女(あなた)の智慧(ちゑ)証覚(しようかく)が鈍(にぶ)りますから、245今後(こんご)は決(けつ)して現界(げんかい)のことを思(おも)ひ起(おこ)してはなりませぬ。246最早(もはや)現界(げんかい)の貴女(あなた)の用(よう)はすんでをります。247スマンヂーさまも御(ご)同様(どうやう)に248決(けつ)して決(けつ)して現界(げんかい)のことを思(おも)はないで居(ゐ)て下(くだ)さい』
249 両人(りやうにん)はハツと頭(かしら)を下(さ)げ有難涙(ありがたなみだ)にくれてゐる。250言霊別(ことたまわけの)命(みこと)は五色(ごしき)の雲(くも)に包(つつ)まれ、251一大(いちだい)火光(くわくわう)となつて、252東天(とうてん)を指(さ)して空中(くうちう)を轟(とどろ)かせ乍(なが)ら帰(かへ)つて行(ゆ)く。253後(あと)に二人(ふたり)は顔(かほ)見合(みあは)せ、
254スマンヂー『姫(ひめ)様(さま)、255不思議(ふしぎ)な事(こと)ぢや御座(ござ)いませぬか。256吾々(われわれ)は夢(ゆめ)でもみて居(ゐ)る様(やう)ですなア』
257千草(ちぐさ)『本当(ほんたう)に不思議(ふしぎ)でたまりませぬ。258確(たしか)に貴方(あなた)も私(わたし)も死(し)んだに間違(まちが)ひは御座(ござ)いませぬ。259それにも拘(かか)はらず、260益々(ますます)意識(いしき)が明瞭(めいれう)になり、261斯様(かやう)な麗(うるは)しき山(やま)の頂(いただ)きに、262恋(こひ)しき貴方(あなた)と二人(ふたり)許(ゆる)されて夫婦(ふうふ)となると云(い)ふやうなことが、263どうして現実(げんじつ)と思(おも)はれませう。264どうも不思議(ふしぎ)でたまりませぬ』
265スマ『私(わたし)は現界(げんかい)に於(おい)て貴方(あなた)の臣下(しんか)で御座(ござ)います。266そして貴女(あなた)はトルマン国(ごく)に於(お)ける王(わう)様(さま)に次(つ)いでの尊(たふと)き御(お)方(かた)、267如何(いか)に神(かみ)様(さま)のお許(ゆる)しとは云(い)ひ乍(なが)ら、268貴女(あなた)を女房(にようばう)と呼(よ)ぶことは実(じつ)に恐(おそ)れ多(おほ)くてなりませぬワ』
269千草(ちぐさ)『スマンヂー様(さま)、270現幽(げんいう)所(ところ)を異(こと)にした今日(こんにち)、271何(なに)もかも凡(すべ)て洗替(あらひかへ)ぢや御座(ござ)いませぬか、272かかる尊(たふと)き霊国(れいごく)に来(きた)り乍(なが)ら、273未(いま)だ左様(さやう)な虚礼(きよれい)虚式(きよしき)的(てき)な辞令(じれい)をお使(つか)ひ遊(あそ)ばすのは、274自(みづか)らの想念(さうねん)を詐(いつは)るようなもので御座(ござ)いますよ』
275スマ『成程(なるほど)左様(さやう)で御座(ござ)いますな。276そんなら改(あらた)めて、277貴女(あなた)を妻(つま)と呼(よ)びませう。278私(わたし)を夫(をつと)と呼(よ)んで下(くだ)さい。279一人(ひとり)の娘(むすめ)が残(のこ)して御座(ござ)いますけれど、280此(この)事(こと)も思(おも)ひ切(き)りませう』
281千草(ちぐさ)『どうかさうして下(くだ)さいませ。282サア之(これ)から二人(ふたり)で此(この)喜(よろこ)びを歌(うた)ひませう』
283 茲(ここ)に両人(りやうにん)は手(て)をつなぎ、284胡蝶(こてふ)の如(ごと)く花鳥山(くわてうざん)の頂(いただ)きにて爽(さはや)かな声(こゑ)を張(はり)上(あ)げ、285歌(うた)ひつつ舞(ま)ひ始(はじ)めた。
286『天津(あまつ)御空(みそら)を眺(なが)むれば
287百(もも)のエンゼル星(ほし)の如(ごと)
288輝(かがや)き玉(たま)ひ吾(わが)身(み)をば
289或(あるひ)は遠(とほ)く或(あるひ)は近(ちか)く
290守(まも)らせ玉(たま)ふ有難(ありがた)さ
291脚下(きやくか)を伏(ふ)して眺(なが)むれば
292堅磐(かきは)常磐(ときは)の巌(いはほ)もて
293造(つく)り固(かた)めし神(かみ)の山(やま)
294見(み)なれぬ鳥(とり)は麗(うるは)しき
295翼(つばさ)拡(ひろ)げて天界(てんかい)の
296瑞祥(ずゐしやう)うたひ百花(ももばな)は
297艶(えん)を競(きそ)ふて咲(さき)匂(にほ)ひ
298吾(われ)等(ら)二人(ふたり)の眼(まなこ)をば
299心(こころ)ゆく迄(まで)慰(なぐさ)むる
300あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
301人(ひと)の命(いのち)は現世(うつしよ)の
302百年(ももとせ)許(ばか)りに限(かぎ)らない
303幾億(いくおく)年(ねん)の末(すゑ)までも
304吾(わが)精霊(せいれい)は生通(いきとほ)し
305生(いき)て栄(さか)えて花(はな)咲(さ)かし
306誠(まこと)の稔(みのり)を楽(たの)しまむ
307誠(まこと)の稔(みのり)を楽(たの)しまむ
308神(かみ)は吾(われ)等(ら)と共(とも)にあり
309吾(われ)等(ら)も神(かみ)と共(とも)にあり
310神(かみ)と神(かみ)とがむつび合(あ)ひ
311神(かみ)の御国(みくに)をいや広(ひろ)に
312広(ひろ)めてゆかむ夫婦仲(ふうふなか)
313弥(いや)永久(とこしへ)に春(はる)なれや
314いや永久(とこしへ)に栄(さか)えませ
315いや永久(とこしへ)に夏(なつ)来(きた)れ
316いや永久(とこしへ)に楽(たの)しまむ
317天(てん)は益(ますま)す高(たか)くして
318空気(くうき)の色(いろ)はいや清(きよ)く
319地(つち)は益(ますま)す広(ひろ)くして
320百草(ももくさ)千草(ちぐさ)皆(みな)光(ひか)る
321光明(くわうみやう)世界(せかい)の真中(まんなか)で
322汝(なれ)と吾(われ)とは世(よ)を送(おく)る
323夢(ゆめ)か現(うつつ)か幻(まぼろし)か
324否々(いやいや)決(けつ)して夢(ゆめ)でない
325夢(ゆめ)の浮世(うきよ)を立(た)ちいでて
326真(まこと)の神(かみ)のあれませる
327真(まこと)の国(くに)へまゐ昇(のぼ)り
328真(まこと)の花(はな)を手折(たを)りつつ
329真(まこと)の暮(くら)しをいとなまむ
330あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
331御霊(みたま)幸(さち)倍(はへ)ましませよ』
332と歌(うた)ひ乍(なが)ら、333二人(ふたり)は永久(えいきう)の霊国(れいごく)に住民(ぢうみん)となつた。334あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)。
335(大正一四・八・二三 旧七・四 於丹後由良秋田別荘 松村真澄録)
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