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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第70巻(酉の巻)
序文
総説
第1篇 花鳥山月
第1章 信人権
第2章 折衝戦
第3章 恋戦連笑
第4章 共倒れ
第5章 花鳥山
第6章 鬼遊婆
第7章 妻生
第8章 大勝
第2篇 千種蛮態
第9章 針魔の森
第10章 二教聯合
第11章 血臭姫
第12章 大魅勒
第13章 喃悶題
第14章 賓民窟
第15章 地位転変
第3篇 理想新政
第16章 天降里
第17章 春の光
第18章 鳳恋
第19章 梅花団
第20章 千代の声
第21章 三婚
第22章 優秀美
附 記念撮影
余白歌
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霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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第70巻(酉の巻)
> 第2篇 千種蛮態 > 第12章 大魅勒
<<< 血臭姫
(B)
(N)
喃悶題 >>>
第一二章
大魅勒
(
おほみろく
)
〔一七七九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第70巻 山河草木 酉の巻
篇:
第2篇 千種蛮態
よみ(新仮名遣い):
せんしゅばんたい
章:
第12章 大魅勒
よみ(新仮名遣い):
おおみろく
通し章番号:
1779
口述日:
1925(大正14)年08月24日(旧07月5日)
口述場所:
丹後由良 秋田別荘
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年10月16日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
一方、ハリマの森には、覆面頭巾の大男が二人、ひそひそと何かを話し合ってる。これは、向上主義運動家のレールとマークであった。
レールとマークは、自分たちを迫害していたキューバーが太子の命によって獄につながれたことを喜ぶ。
一方でこのままにしておけば、再び釈放となったときにまた悪事を画策するだろうと考え、今のうちにキューバーを獄から奪い取り、拘束してしまおうと、牢獄の裏門にやってくる。
そこへ、同じくキューバー出獄後の成り行きを案じていた太子がやってくる。太子は物陰よりレールとマークの会話を聞き、二人の志に賛成し、今後の援助を誓う。
レール・マークはまんまと牢番の目を盗んでキューバーをかどわかし、荒井ケ嶽の岩窟にキューバーを放り込んでしまった。
夜が明けて、ジャンクは昨日の取り決めどおりキューバーを釈放しようと牢獄にやってきたが、破獄騒動ですでに大騒ぎとなっていた。
ジャンクはあわてて王に注進にくるが、王と太子は平然としていた。千草姫は太子の態度があやしいとにらんで詰問するが、太子は知らぬ振りをして答えない。
千草姫はその尋問の間に、自分は大みろくの生宮であると口走り始める。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
ラスプーチン(ラスプチン)
データ凡例:
データ最終更新日:
2018-12-12 15:28:03
OBC :
rm7012
愛善世界社版:
148頁
八幡書店版:
第12輯 443頁
修補版:
校定版:
151頁
普及版:
74頁
初版:
ページ備考:
001
ハリマの
森
(
もり
)
の
木蔭
(
こかげ
)
に
覆面
(
ふくめん
)
頭巾
(
づきん
)
の
大男
(
おほをとこ
)
が
二人
(
ふたり
)
、
002
ロハ
台
(
だい
)
に
腰
(
こし
)
をかけ、
003
ヒソビソと
何事
(
なにごと
)
か
諜
(
しめ
)
し
合
(
あ
)
はしてゐる。
004
レール『オイ、
005
マーク、
006
スコブツエン
宗
(
しう
)
のキユーバーの
奴
(
やつ
)
、
007
チウイン
太子
(
たいし
)
さまの
英断
(
えいだん
)
に
仍
(
よ
)
つて、
008
小気味
(
こぎみ
)
よくも、
009
あゝして
牢獄
(
らうごく
)
へ
投
(
なげ
)
込
(
こ
)
まれよつたが、
010
併
(
しか
)
し
吾々
(
われわれ
)
は
之
(
これ
)
を
聞
(
き
)
いて
安心
(
あんしん
)
するこた
出来
(
でき
)
ぬぢやないか。
011
噂
(
うはさ
)
に
聞
(
き
)
けば、
012
彼奴
(
あいつ
)
はラスプチンの
如
(
や
)
うな
代物
(
しろもの
)
で、
013
千草姫
(
ちぐさひめ
)
の
歓心
(
くわんしん
)
を
買
(
か
)
ひ、
014
何
(
なん
)
でも
怪
(
け
)
しからぬ
事
(
こと
)
をやつてゐやがるといふ
事
(
こと
)
だ。
015
何
(
ど
)
うしても
斯
(
か
)
うしても
牡鶏
(
めんどり
)
のコケコーを
唄
(
うた
)
ふ
時節
(
じせつ
)
だから、
016
刹帝利
(
せつていり
)
の
権威
(
けんゐ
)
も、
017
賢明
(
けんめい
)
なる
太子
(
たいし
)
の
権威
(
けんゐ
)
も
蹂躙
(
じうりん
)
して、
018
屹度
(
きつと
)
千草姫
(
ちぐさひめ
)
が
彼奴
(
あいつ
)
を
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
すに
違
(
ちが
)
ひない。
019
さうなつたが
最後
(
さいご
)
、
020
益々
(
ますます
)
資本
(
しほん
)
主義
(
しゆぎ
)
の
制度
(
せいど
)
を
布
(
し
)
き、
021
吾々
(
われわれ
)
下層
(
かそう
)
階級
(
かいきふ
)
に
対
(
たい
)
し、
022
圧迫
(
あつぱく
)
と
搾取
(
さくしゆ
)
を
以
(
もつ
)
て
臨
(
のぞ
)
み、
023
世
(
よ
)
に
立
(
た
)
てない
様
(
やう
)
な
悪政
(
あくせい
)
を
布
(
し
)
くに
違
(
ちが
)
ひない。
024
さうだから
吾々
(
われわれ
)
は
向上
(
かうじやう
)
運動
(
うんどう
)
の
代表者
(
だいへうしや
)
たる
立場
(
たちば
)
から、
025
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
彼奴
(
あいつ
)
を
何
(
なん
)
とかしなくちや、
026
枕
(
まくら
)
を
高
(
たか
)
くして
寝
(
ね
)
ることが
出来
(
でき
)
ぬぢやないか。
027
かうして
覆面
(
ふくめん
)
頭巾
(
づきん
)
の
扮装
(
いでたち
)
でお
前
(
まへ
)
をすすめて
出
(
で
)
て
来
(
き
)
たが、
028
決
(
けつ
)
して
強盗
(
がうたう
)
をやる
考
(
かんが
)
へぢやない。
029
彼
(
か
)
れラスプチンを
今
(
いま
)
の
内
(
うち
)
に
屠
(
ほふ
)
つておかうとの
考
(
かんが
)
へから、
030
お
前
(
まへ
)
をボロイ
銭儲
(
ぜにもうけ
)
があると
云
(
い
)
つて、
031
甘
(
うま
)
くここ
迄
(
まで
)
おびき
出
(
だ
)
したのだ』
032
マーク『なアんだい、
033
俺
(
おれ
)
ヤ
又
(
また
)
二進
(
につち
)
も
三進
(
さつち
)
も
生活難
(
せいくわつなん
)
に
追
(
お
)
はれて
立行
(
たちゆ
)
かないものだから、
034
たうとう
汝
(
なんぢ
)
が
生地
(
きぢ
)
を
現
(
あら
)
はし、
035
今晩
(
こんばん
)
泥棒
(
どろばう
)
の
初旅
(
はつたび
)
に
出
(
で
)
ようと
思
(
おも
)
ひ、
036
俺
(
おれ
)
に
応援
(
おうゑん
)
を
頼
(
たの
)
みに
来
(
き
)
よつたのだと
早合点
(
はやがつてん
)
してゐたのだ。
037
俺
(
おれ
)
だつて
怖
(
こは
)
い
目
(
め
)
をして、
038
人家
(
じんか
)
に
忍
(
しの
)
び
入
(
い
)
り、
039
或
(
あるひ
)
は
行人
(
かうじん
)
を
掠
(
かす
)
めて、
040
思
(
おも
)
つた
丈
(
だけ
)
の
金
(
かね
)
が
取
(
と
)
レールか、
041
取
(
と
)
れぬか
分
(
わか
)
らないが、
042
生死
(
せいし
)
を
共
(
とも
)
にしようと
約
(
やく
)
した
友人
(
いうじん
)
の
言葉
(
ことば
)
でもあり、
043
断
(
ことわ
)
る
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
044
今日
(
けふ
)
からいよいよ
太
(
ふと
)
う
短
(
みじか
)
う
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
暮
(
くら
)
す
泥棒
(
どろばう
)
様
(
さま
)
になるのかなア……と
因果腰
(
いんぐわごし
)
を
定
(
き
)
めてやつて
来
(
き
)
たのだ。
045
併
(
しか
)
しお
前
(
まへ
)
の
肚
(
はら
)
を
聞
(
き
)
いて
俺
(
おれ
)
も
安心
(
あんしん
)
した。
046
国家
(
こくか
)
の
毒虫
(
どくむし
)
を
駆除
(
くぢよ
)
するは
正
(
まさ
)
に
国士
(
こくし
)
たる
者
(
もの
)
の
任務
(
にんむ
)
だ。
047
ベツトの
行
(
おこな
)
はれない
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
改革
(
かいかく
)
も
善政
(
ぜんせい
)
もあつたものぢやない。
048
どうか
一
(
ひと
)
つラスプチンを
血祭
(
ちまつり
)
にしてブル
宗教
(
しうけう
)
の
心胆
(
しんたん
)
を
寒
(
さむ
)
からしめ、
049
偽
(
にせ
)
宗教家
(
しうけうか
)
の
腸綿
(
はらわた
)
をデングリ
返
(
がへ
)
してやらなけりや
駄目
(
だめ
)
だよ。
050
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
や
別
(
べつ
)
に
乱暴
(
らんばう
)
な
事
(
こと
)
をせなくても、
051
ラマ
階級
(
かいきふ
)
の
奴
(
やつ
)
等
(
ら
)
に
乱暴者
(
らんばうもの
)
として、
052
怖
(
こわ
)
がられてゐるのだから、
053
何時
(
いつ
)
どんな
計画
(
けいくわく
)
を
以
(
もつ
)
て
其
(
その
)
穴
(
あな
)
へ
陥
(
おとしい
)
れられ、
054
宰相
(
さいしやう
)
ベツト
未遂
(
みすゐ
)
の
嫌疑者
(
けんぎしや
)
として○○
本山
(
ほんざん
)
へ
拘引
(
こういん
)
されるか
知
(
し
)
れたものぢやない。
055
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
なら
今
(
いま
)
の
内
(
うち
)
に
彼奴
(
あいつ
)
を
屠
(
ほふ
)
つておかねば、
056
彼奴
(
あいつ
)
が
擡頭
(
たいとう
)
した
時
(
とき
)
や、
057
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
を
向上会
(
かうじやうくわい
)
撲滅令
(
ぼくめつれい
)
とか、
058
暴力団
(
ばうりよくだん
)
取締令
(
とりしまりれい
)
とか、
059
何
(
なん
)
とか
彼
(
かん
)
とか
下
(
くだ
)
らぬ
法律
(
はふりつ
)
を
発布
(
はつぷ
)
して、
060
益々
(
ますます
)
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
仲間
(
なかま
)
を
苦
(
くる
)
しめ
殺
(
ころ
)
さうとするに
違
(
ちが
)
ひない。
061
本当
(
ほんたう
)
に
彼奴
(
あいつ
)
が
投獄
(
とうごく
)
されてゐるのを
幸
(
さいは
)
ひ、
062
今晩
(
こんばん
)
は
何
(
なん
)
とかして
彼奴
(
あいつ
)
を
奪
(
うば
)
ひ
取
(
と
)
り、
063
暗
(
くら
)
がりでシヤモを
絞
(
し
)
める
様
(
やう
)
にやつつけ
様
(
やう
)
ぢやないか』
064
レ『ヤ、
065
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い、
066
サアもう
牢番
(
らうばん
)
の
寝静
(
ねしづ
)
まる
時分
(
じぶん
)
だ。
067
サア、
068
行
(
ゆ
)
かう』
069
と
二人
(
ふたり
)
は
木蔭
(
こかげ
)
の
暗
(
やみ
)
を
伝
(
つた
)
ふて、
070
トルマン
城外
(
じやうぐわい
)
の
牢獄
(
らうごく
)
の
裏門
(
うらもん
)
へと
進
(
すす
)
んだ。
071
レ『オイ、
072
仲々
(
なかなか
)
此奴
(
こいつ
)
ア、
073
ちよつと、
074
壁
(
かべ
)
が
高
(
たか
)
うて
飛越
(
とびこ
)
える
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
075
困
(
こま
)
つたなア』
076
マ『どつかの
軒下
(
のきした
)
で
梯子
(
はしご
)
でも
探
(
さが
)
して
来
(
き
)
て、
077
入
(
はい
)
らうでないか。
078
そして
中
(
なか
)
へ
入
(
はい
)
つたら
最後
(
さいご
)
、
079
先
(
ま
)
づ
第一
(
だいいち
)
に
門
(
もん
)
の
閂
(
かんぬき
)
を
外
(
はづ
)
し、
080
何時
(
いつ
)
でも
逃出
(
にげだ
)
せるようにしとくのだぞ。
081
之
(
これ
)
から
俺
(
おれ
)
がそこらの
町家
(
ちやうか
)
の
軒
(
のき
)
を
捜
(
さが
)
して
梯子
(
はしご
)
を
盗
(
ぬす
)
んで
来
(
く
)
るから、
082
お
前
(
まへ
)
はキユーバーの
在所
(
ありか
)
を
考
(
かんが
)
へといて
呉
(
く
)
れ。
083
彼奴
(
あいつ
)
は
魔法使
(
まはふづか
)
ひだから、
084
何時
(
いつ
)
も
青
(
あを
)
い
火
(
ひ
)
を
空中
(
くうちう
)
に
燃
(
も
)
やす
事
(
こと
)
を
得意
(
とくい
)
としてる
奴
(
やつ
)
だ。
085
其
(
その
)
魔術
(
まじゆつ
)
を
以
(
もつ
)
て
布教
(
ふけう
)
の
手段
(
しゆだん
)
としてゐるのだ。
086
又
(
また
)
彼奴
(
あいつ
)
ア、
087
屹度
(
きつと
)
其
(
その
)
魔法
(
まはふ
)
を
使
(
つか
)
ひ、
088
牢番
(
らうばん
)
共
(
ども
)
を
驚
(
おどろ
)
かし、
089
……
此奴
(
こいつ
)
ア
矢張
(
やつぱ
)
り
生神
(
いきがみ
)
さまだ……といふ
評判
(
へうばん
)
を
立
(
た
)
てさして、
090
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
出獄
(
しゆつごく
)
の
手段
(
しゆだん
)
を
廻
(
めぐ
)
らしてゐるのに
違
(
ちが
)
ひないからのう』
091
レ『ウンそらさうだ。
092
能
(
よ
)
く
考
(
かんが
)
へて
置
(
お
)
かう』
093
斯
(
か
)
くしてマークは
暗
(
やみ
)
をぬふて
暫
(
しばら
)
く
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
した。
094
レールは
後
(
あと
)
に
独言
(
ひとりごと
)
、
095
『あーあ、
096
本当
(
ほんたう
)
に
約
(
つま
)
らないワ。
097
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
向上会
(
かうじやうくわい
)
の
代表者
(
だいへうしや
)
となつてラマ
階級
(
かいきふ
)
を
打
(
うち
)
亡
(
ほろ
)
ぼし、
098
本当
(
ほんたう
)
に
平和
(
へいわ
)
な
世界
(
せかい
)
を
造
(
つく
)
らうと、
099
今年
(
ことし
)
で
十
(
じふ
)
年
(
ねん
)
の
間
(
あひだ
)
、
100
一
(
いち
)
日
(
にち
)
の
如
(
ごと
)
く
寝食
(
しんしよく
)
を
忘
(
わす
)
れ、
101
妻子
(
さいし
)
は
寒
(
さむ
)
さと
飢
(
うゑ
)
とに
泣
(
な
)
いてるに
拘
(
かかは
)
らず、
102
昼夜
(
ちうや
)
孜々
(
しし
)
として
活動
(
くわつどう
)
して
来
(
き
)
たが、
103
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
強
(
つよ
)
い
者
(
もの
)
の
強
(
つよ
)
い、
104
弱
(
よわ
)
い
者
(
もの
)
の
弱
(
よわ
)
い
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
105
三
(
さん
)
人
(
にん
)
寄
(
よ
)
つて
話
(
はなし
)
をしても
直様
(
すぐさま
)
番僧
(
ばんそう
)
に
取捉
(
とつつか
)
まれ、
106
牢獄
(
らうごく
)
に
打込
(
ぶちこ
)
まれるやうな
険難
(
けんのん
)
な
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だから、
107
手
(
て
)
も
足
(
あし
)
も
出
(
だ
)
せないワ。
108
それにも
拘
(
かかは
)
らず、
109
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
廻
(
まは
)
し
者
(
もの
)
たるキユーバーの
奴
(
やつ
)
、
110
此
(
この
)
トルマン
国
(
ごく
)
へ
出
(
で
)
て
うし
やがつて、
111
トルマン
王家
(
わうけ
)
も
国民
(
こくみん
)
も
土芥
(
どかい
)
の
如
(
ごと
)
くこき
卸
(
おろ
)
し、
112
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
神徳
(
しんとく
)
を
賞揚
(
しやうやう
)
し、
113
邪教
(
じやけう
)
を
開
(
ひら
)
いて
益々
(
ますます
)
吾々
(
われわれ
)
を
苦
(
くる
)
しめようとしてゐやがつたが、
114
賢明
(
けんめい
)
なるチウイン
太子
(
たいし
)
の
英断
(
えいだん
)
によつて、
115
国民
(
こくみん
)
環視
(
くわんし
)
の
前
(
まへ
)
でふん
縛
(
じば
)
られやがつた
時
(
とき
)
の
愉快
(
ゆくわい
)
さ
116
痛快
(
つうくわい
)
さ。
117
彼奴
(
あいつ
)
を
縛
(
しば
)
つた
時
(
とき
)
や、
118
決
(
けつ
)
して
彼奴
(
きやつ
)
一人
(
ひとり
)
ぢやない。
119
彼奴
(
きやつ
)
に
買収
(
ばいしう
)
されてる
番僧
(
ばんそう
)
、
120
ラマ
僧
(
そう
)
などは
頭上
(
づじやう
)
に
鉄槌
(
てつつい
)
を
下
(
おろ
)
されたやうなものだ。
121
それにも
拘
(
かかは
)
らず、
122
彼
(
か
)
れ
妖僧
(
えうそう
)
を
大奥
(
おほおく
)
方
(
がた
)
が
寵愛
(
ちようあい
)
してると
聞
(
き
)
いちや、
123
吾々
(
われわれ
)
は
最早
(
もはや
)
黙過
(
もくくわ
)
する
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
かぬ。
124
国家
(
こくか
)
の
為
(
ため
)
に
此
(
この
)
逆賊
(
ぎやくぞく
)
を
今夜
(
こんや
)
の
中
(
うち
)
に
誅伐
(
ちうばつ
)
しなくちや
取返
(
とりかへ
)
しがつかぬ。
125
又
(
また
)
国難
(
こくなん
)
勃発
(
ぼつぱつ
)
し、
126
吾々
(
われわれ
)
国民
(
こくみん
)
を
苦
(
くる
)
しめるに
違
(
ちが
)
ひない。
127
あーあマークの
奴
(
やつ
)
、
128
どうしたのだらう。
129
早
(
はや
)
く
来
(
こ
)
ないかな。
130
何
(
なん
)
となく、
131
気
(
き
)
がせいて
仕方
(
しかた
)
ない。
132
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
してると
牢番
(
らうばん
)
が
目
(
め
)
を
覚
(
さ
)
まし、
133
あべこべに
自分
(
じぶん
)
達
(
たち
)
が
牢獄
(
らうごく
)
に
打
(
うち
)
込
(
こ
)
まれるやうな
事
(
こと
)
になつちや
大変
(
たいへん
)
だがな』
134
と
呟
(
つぶや
)
いてゐる。
135
チウイン
太子
(
たいし
)
はジヤンクの
進言
(
しんげん
)
に
仍
(
よ
)
つて、
136
明早朝
(
みやうそうてう
)
キユーバーは
放免
(
はうめん
)
されば
再
(
ふたた
)
び
城内
(
じやうない
)
へ
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
り、
137
又
(
また
)
もや
母
(
はは
)
の
心胆
(
しんたん
)
をとろかし、
138
城内
(
じやうない
)
を
攪乱
(
かくらん
)
するに
相違
(
さうゐ
)
ない。
139
彼奴
(
あいつ
)
を
今夜
(
こんや
)
の
中
(
うち
)
に
引張
(
ひつぱ
)
り
出
(
だ
)
し、
140
荒井
(
あらゐ
)
ケ
嶽
(
だけ
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
牢番
(
らうばん
)
をつけて
閉
(
と
)
ぢ
込
(
こ
)
め
置
(
お
)
かむものと
微行
(
びかう
)
し
来
(
きた
)
り、
141
沙羅
(
さら
)
双樹
(
さうじゆ
)
の
木蔭
(
こかげ
)
に
身
(
み
)
を
潜
(
ひそ
)
めて
考
(
かんが
)
へてゐたが、
142
覆面
(
ふくめん
)
頭巾
(
づきん
)
の
曲者
(
くせもの
)
が
二人
(
ふたり
)
居
(
を
)
るので、
143
千草姫
(
ちぐさひめ
)
の
廻
(
まは
)
し
者
(
もの
)
ではないかと
耳
(
みみ
)
を
欹
(
そばた
)
て、
144
いよいよさうでない
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
つたので、
145
稍
(
やや
)
安心
(
あんしん
)
の
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
で
木蔭
(
こかげ
)
をツと
立出
(
たちい
)
で、
146
言葉
(
ことば
)
静
(
しづか
)
に、
147
チウイン『お
前
(
まへ
)
は
何人
(
なにびと
)
ぢや。
148
最前
(
さいぜん
)
からの
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
けば
実
(
じつ
)
に
可
(
い
)
い
志
(
こころざし
)
、
149
余
(
よ
)
も
大賛成
(
だいさんせい
)
だ。
150
お
前
(
まへ
)
は
向上会
(
かうじやうくわい
)
員
(
ゐん
)
と
見
(
み
)
えるが、
151
到底
(
たうてい
)
一人
(
ひとり
)
や
二人
(
ふたり
)
で
彼
(
かれ
)
キユーバーを
奪
(
うば
)
ひ
出
(
だ
)
す
訳
(
わけ
)
にはゆくまい。
152
余
(
よ
)
はチウイン
太子
(
たいし
)
だが、
153
之
(
これ
)
から
門番
(
もんばん
)
を
叩
(
たた
)
き
起
(
おこ
)
し、
154
余
(
よ
)
の
権威
(
けんゐ
)
を
以
(
もつ
)
て
門
(
もん
)
を
開
(
ひら
)
かせ、
155
キユーバーを
引
(
ひき
)
ずり
出
(
だ
)
す
考
(
かんが
)
へだからお
前
(
まへ
)
も
手伝
(
てつだ
)
つてくれ』
156
レ『ハイ、
157
私
(
わたし
)
はレールと
申
(
まを
)
しまして、
158
向上
(
かうじやう
)
運動
(
うんどう
)
の
代表者
(
だいへうしや
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
159
今
(
いま
)
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
のお
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
いて、
160
実
(
じつ
)
に
万民
(
ばんみん
)
の
為
(
ため
)
欣喜
(
きんき
)
に
堪
(
た
)
へませぬ。
161
如何
(
いか
)
なる
御用
(
ごよう
)
なり
共
(
とも
)
御
(
おん
)
申
(
まを
)
し
付
(
つ
)
け
下
(
くだ
)
さいませ』
162
斯
(
か
)
く
話
(
はな
)
す
所
(
ところ
)
へ、
163
マークは
長
(
なが
)
い
梯子
(
はしご
)
を
担
(
かた
)
げて、
164
ハアハアと
息
(
いき
)
はづませ
乍
(
なが
)
らやつて
来
(
き
)
た。
165
マ『オイ、
166
レール、
167
到頭
(
たうとう
)
梯子
(
はしご
)
一本
(
いつぽん
)
盗
(
ぬす
)
んで
来
(
き
)
た、
168
サ、
169
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く』
170
レ『ヤ、
171
そりや
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だつた。
172
併
(
しか
)
しな、
173
ここにチウイン
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
が
御
(
お
)
みえになつてゐるのだ』
174
マ『エ、
175
エー』
176
と
云
(
い
)
つた
切
(
き
)
り、
177
吃驚
(
びつくり
)
して
地上
(
ちじやう
)
に
尻餅
(
しりもち
)
をつく。
178
チウ『ハヽヽヽヽ、
179
ヤ、
180
お
前
(
まへ
)
も
向上会
(
かうじやうくわい
)
員
(
ゐん
)
か、
181
決
(
けつ
)
して
心配
(
しんぱい
)
要
(
い
)
らぬ。
182
今
(
いま
)
此
(
この
)
男
(
をとこ
)
と
相談
(
さうだん
)
の
上
(
うへ
)
、
183
キユーバーを
奪
(
うば
)
ひ
取
(
と
)
るべく
考
(
かんが
)
へてゐる
所
(
ところ
)
だ、
184
安心
(
あんしん
)
せ』
185
マ『ヤ、
186
賢明
(
けんめい
)
なる
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
、
187
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います』
188
レ『もし
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
、
189
斯様
(
かやう
)
に
梯子
(
はしご
)
が
参
(
まゐ
)
りました
以上
(
いじやう
)
は
門番
(
もんばん
)
を
叩
(
たた
)
き
起
(
おこ
)
すにも
及
(
およ
)
びますまい。
190
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
をなさいますと、
191
貴方
(
あなた
)
がキユーバーを
取
(
とり
)
逃
(
に
)
がし
遊
(
あそ
)
ばした
事
(
こと
)
が、
192
千草姫
(
ちぐさひめ
)
様
(
さま
)
の
耳
(
みみ
)
に
入
(
はい
)
るは
当然
(
たうぜん
)
、
193
後
(
あと
)
の
御
(
ご
)
迷惑
(
めいわく
)
が
思
(
おも
)
ひ
遣
(
や
)
られますから、
194
どうぞ
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
は
此処
(
ここ
)
に
待
(
ま
)
つてゐて
下
(
くだ
)
さりませ。
195
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
、
196
牢番
(
らうばん
)
が
万一
(
まんいち
)
抵抗
(
ていかう
)
すれば
擲
(
なぐ
)
り
倒
(
たふ
)
しておいてでも、
197
彼
(
か
)
れ
悪魔
(
あくま
)
を
引
(
ひき
)
ずり
出
(
だ
)
して
参
(
まゐ
)
ります』
198
太子
(
たいし
)
『
成程
(
なるほど
)
199
それも
一策
(
いつさく
)
だ、
200
一
(
ひと
)
つ
骨
(
ほね
)
を
折
(
を
)
つて
見
(
み
)
てくれ。
201
其
(
その
)
代
(
かは
)
りに
此
(
この
)
事
(
こと
)
が
成功
(
せいこう
)
したら、
202
屹度
(
きつと
)
お
前
(
まへ
)
に
褒美
(
ほうび
)
をやる』
203
レ『イヤ、
204
滅相
(
めつさう
)
な、
205
万民
(
ばんみん
)
の
為
(
ため
)
に
命
(
いのち
)
を
捨
(
す
)
ててる
私
(
わたし
)
、
206
褒美
(
ほうび
)
が
欲
(
ほ
)
しさにこんな
危
(
あぶな
)
い
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませうか。
207
それよりも
万民
(
ばんみん
)
の
叫
(
さけび
)
声
(
ごゑ
)
を、
208
心
(
こころ
)
をとめてお
聞
(
き
)
き
下
(
くだ
)
さいませ』
209
太
(
たい
)
『イヤ、
210
余
(
よ
)
も
平素
(
へいそ
)
から
民
(
たみ
)
の
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
かむとし、
211
いろいろと
変装
(
へんさう
)
して
市井
(
しせい
)
の
巷
(
ちまた
)
に
出入
(
しゆつにふ
)
し、
212
お
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
の
活動振
(
くわつどうぶり
)
もよく
知
(
し
)
つてゐるのだ。
213
精々
(
せいぜい
)
活動
(
くわつどう
)
してくれ。
214
今
(
いま
)
は
非常
(
ひじやう
)
に
妨害
(
ばうがい
)
が
強
(
つよ
)
うて
困
(
こま
)
るであらうが、
215
軈
(
やが
)
て
勝利
(
しようり
)
の
都
(
みやこ
)
も
近
(
ちか
)
づくだらう』
216
二人
(
ふたり
)
は
梯子
(
はしご
)
を
伝
(
つた
)
うて
猿
(
ましら
)
の
如
(
ごと
)
く
塀
(
へい
)
を
乗
(
のり
)
越
(
こ
)
え、
217
中
(
なか
)
より
門
(
もん
)
の
戸
(
と
)
をソツと
開
(
あ
)
けおき、
218
どの
牢獄
(
らうごく
)
にキユーバーがゐるかとよくよく
伺
(
うかが
)
へば、
219
パツパツと
青
(
あを
)
い
火
(
ひ
)
の
玉
(
たま
)
の
如
(
ごと
)
きものが
窓口
(
まどぐち
)
から、
220
消
(
き
)
えたり
とぼ
つたりしてゐる……ヤ、
221
的切
(
てつき
)
りここ……と
近
(
ちか
)
より
見
(
み
)
れば、
222
二人
(
ふたり
)
の
牢番
(
らうばん
)
が
高鼾
(
たかいびき
)
をかいて
椅子
(
いす
)
にもたれてゐる。
223
二人
(
ふたり
)
は
牢番
(
らうばん
)
の
腰
(
こし
)
に
下
(
さ
)
げてゐる
鍵
(
かぎ
)
をソツと
取
(
と
)
り、
224
錠
(
ぢやう
)
を
外
(
はづ
)
し、
225
一人
(
ひとり
)
は
中
(
なか
)
に
入
(
い
)
り、
226
一人
(
ひとり
)
は
牢番
(
らうばん
)
を
監視
(
かんし
)
し
乍
(
なが
)
ら、
227
キユーバーを
引出
(
ひきだ
)
し
来
(
きた
)
り、
228
ソツと
門外
(
もんぐわい
)
に
首尾
(
しゆび
)
よく
伴
(
つ
)
れ
出
(
だ
)
した。
229
牢番
(
らうばん
)
はフツと
目
(
め
)
を
覚
(
さま
)
せば、
230
牢
(
らう
)
の
戸
(
と
)
は
開
(
あ
)
いてゐる。
231
自分
(
じぶん
)
の
腰
(
こし
)
の
鍵
(
かぎ
)
は
盗
(
ぬす
)
まれて
跡
(
あと
)
かたもない。
232
俄
(
にはか
)
に『
牢破
(
らうやぶ
)
り
牢破
(
らうやぶ
)
り』と
呶鳴
(
どな
)
り
出
(
だ
)
した。
233
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
を
聞付
(
ききつ
)
けて、
234
牢屋
(
らうや
)
の
番人
(
ばんにん
)
は
一斉
(
いつせい
)
に
目
(
め
)
を
覚
(
さ
)
まし、
235
提灯
(
ちやうちん
)
や
松火
(
たいまつ
)
をさげて
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
にかけ
廻
(
まは
)
る。
236
チウイン
太子
(
たいし
)
は
二人
(
ふたり
)
に
篤
(
とく
)
と
言
(
い
)
ひ
聞
(
き
)
かせ、
237
荒井
(
あらゐ
)
ケ
嶽
(
だけ
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
にキユーバーを
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
み、
238
レール、
239
マークの
両人
(
りやうにん
)
に
沢山
(
たくさん
)
の
金
(
かね
)
を
与
(
あた
)
へて、
240
或
(
ある
)
時機
(
じき
)
まで
之
(
これ
)
を
警護
(
けいご
)
せしむる
事
(
こと
)
とした。
241
二人
(
ふたり
)
は
太子
(
たいし
)
の
旨
(
むね
)
を
奉
(
ほう
)
じ、
242
秘密
(
ひみつ
)
を
守
(
まも
)
り、
243
吾
(
わが
)
妻子
(
さいし
)
にも
之
(
これ
)
を
打明
(
うちあ
)
けなかつた。
244
夜中
(
やちう
)
を
過
(
す
)
ぐれば
翌日
(
よくじつ
)
である……と
云
(
い
)
ふので、
245
ジヤンクは
四五
(
しご
)
の
役人
(
やくにん
)
に
命
(
めい
)
じキユーバーを
放免
(
はうめん
)
すべく
遣
(
つか
)
はし
見
(
み
)
れば、
246
破獄
(
はごく
)
の
大騒動
(
おほさうどう
)
、
247
是非
(
ぜひ
)
共
(
とも
)
王
(
わう
)
及
(
および
)
千草姫
(
ちぐさひめ
)
に
報告
(
はうこく
)
せねばなるまいと、
248
王
(
わう
)
の
居間
(
ゐま
)
を
訪
(
おとづ
)
れ
見
(
み
)
れば、
249
既
(
すで
)
にチウイン
太子
(
たいし
)
は
王
(
わう
)
と
共
(
とも
)
に
何事
(
なにごと
)
か
首
(
くび
)
を
鳩
(
あつ
)
めて
囁
(
ささや
)
いてゐる。
250
ジヤンク『
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げます。
251
昨日
(
さくじつ
)
御
(
お
)
許
(
ゆるし
)
を
被
(
かうむ
)
りまして、
252
彼
(
か
)
のキユーバーを
放免
(
はうめん
)
せむと、
253
小役人
(
こやくにん
)
を
遣
(
つか
)
はし
調
(
しら
)
べ
見
(
み
)
れば、
254
何人
(
なにびと
)
かに
盗
(
ぬす
)
み
去
(
さ
)
られ、
255
牢屋
(
らうや
)
の
番人
(
ばんにん
)
共
(
ども
)
は
周章
(
しうしやう
)
狼狽
(
らうばい
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りまする。
256
万一
(
まんいち
)
彼
(
か
)
れ、
257
ハルナの
都
(
みやこ
)
へ
逃
(
にげ
)
帰
(
かへ
)
り、
258
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
前
(
まへ
)
に
出
(
い
)
で、
259
数万
(
すうまん
)
の
兵士
(
へいし
)
を
拝借
(
はいしやく
)
し、
260
再
(
ふたた
)
び
捲土
(
けんど
)
重来
(
ぢうらい
)
致
(
いた
)
せば
忌々
(
ゆゆ
)
しき
大事
(
だいじ
)
で
御座
(
ござ
)
いますれば、
261
人
(
ひと
)
を
今
(
いま
)
の
中
(
うち
)
八方
(
はつぱう
)
に
派
(
は
)
し、
262
彼
(
かれ
)
の
在所
(
ありか
)
を
捜索
(
さうさく
)
致
(
いた
)
し
度
(
た
)
く
存
(
ぞん
)
じます』
263
王
(
わう
)
及
(
およ
)
び
太子
(
たいし
)
は
平然
(
へいぜん
)
として
別
(
べつ
)
に
驚
(
おどろ
)
きもせず、
264
王
(
わう
)
『ナニ、
265
キユーバーが
破獄
(
はごく
)
逃走
(
たうそう
)
したと
云
(
い
)
ふのか。
266
捨
(
す
)
てとけ
捨
(
す
)
てとけ、
267
別
(
べつ
)
に
心配
(
しんぱい
)
するには
及
(
およ
)
ぶまい』
268
ジヤ『
仰
(
おほ
)
せでは
御座
(
ござ
)
いまするが、
269
今
(
いま
)
の
中
(
うち
)
彼
(
かれ
)
の
在処
(
ありか
)
を
突
(
つき
)
止
(
と
)
め、
270
ハルナの
都
(
みやこ
)
へ
逃
(
に
)
げ
帰
(
かへ
)
らないやうの
手段
(
しゆだん
)
を
廻
(
めぐ
)
らさねばなりますまい。
271
どうか
此
(
この
)
儀
(
ぎ
)
を
老臣
(
らうしん
)
にお
命
(
めい
)
じ
下
(
くだ
)
さいます
様
(
やう
)
……』
272
太
(
たい
)
『ヤ、
273
ジヤンク
殿
(
どの
)
、
274
必
(
かなら
)
ず
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさるな。
275
余
(
よ
)
に
心当
(
こころあた
)
りがある。
276
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
してハルナの
都
(
みやこ
)
へ
逃
(
に
)
げ
帰
(
かへ
)
るやうな
事
(
こと
)
はさせぬ。
277
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
余
(
よ
)
を
信
(
しん
)
じてくれ』
278
ジヤ『
外
(
ほか
)
ならぬ
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
のお
言葉
(
ことば
)
、
279
万々
(
ばんばん
)
抜目
(
ぬけめ
)
は
御座
(
ござ
)
いますまい。
280
然
(
しか
)
らば
老臣
(
らうしん
)
は
之
(
これ
)
にて
下
(
さが
)
りませう』
281
千草姫
(
ちぐさひめ
)
は
気
(
き
)
が
立
(
た
)
つて
一目
(
ひとめ
)
も
眠
(
ねむ
)
られず、
282
且
(
かつ
)
又
(
また
)
聴覚
(
ちやうかく
)
が
非常
(
ひじやう
)
に
鋭敏
(
えいびん
)
と
為
(
な
)
り、
283
蚊
(
か
)
の
囁
(
ささや
)
きでさへも、
284
耳
(
みみ
)
に
入
(
い
)
るやうになつてゐた。
285
ドアを
排
(
はい
)
して
王
(
わう
)
の
室
(
しつ
)
に
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
286
『コレ
悴
(
せがれ
)
チウイン、
287
今
(
いま
)
其方
(
そなた
)
の
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
けば、
288
キユーバーの
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
につき、
289
何
(
なに
)
か
確信
(
かくしん
)
あるものの
如
(
ごと
)
く
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
つたぢやないか。
290
サ、
291
母
(
はは
)
の
権威
(
けんゐ
)
を
以
(
もつ
)
て
飽
(
あ
)
く
迄
(
まで
)
も
詮索
(
せんさく
)
する。
292
何処
(
どこ
)
へ
隠
(
かく
)
したのだ。
293
有体
(
ありてい
)
に
白状
(
はくじやう
)
しなさい』
294
太
(
たい
)
『
母上
(
ははうへ
)
様
(
さま
)
、
295
私
(
わたし
)
がそんな
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
らう
道理
(
だうり
)
が
御座
(
ござ
)
いますか。
296
今
(
いま
)
ジヤンクの
注進
(
ちうしん
)
に
仍
(
よ
)
つてキユーバーの
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えなくなつた
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
り、
297
大変
(
たいへん
)
に
心配
(
しんぱい
)
をしてゐた
所
(
ところ
)
で
御座
(
ござ
)
いますよ』
298
千草
(
ちぐさ
)
『いやいやさうは
云
(
い
)
はせませぬぞや。
299
お
前
(
まへ
)
の
言葉
(
ことば
)
の
端
(
はし
)
にチヤンと
現
(
あら
)
はれてゐる。
300
キユーバーを
隠
(
かく
)
した
張本人
(
ちやうほんにん
)
はお
前
(
まへ
)
だらうがな』
301
太
(
たい
)
『
此
(
これ
)
は
怪
(
け
)
しからぬ。
302
苟
(
いやし
)
くも
太子
(
たいし
)
の
身
(
み
)
を
以
(
もつ
)
て
夜夜中
(
よるよなか
)
、
303
牢獄
(
らうごく
)
などへ
参
(
まゐ
)
れますか』
304
千草
(
ちぐさ
)
『ホヽヽヽヽヽ
参
(
まゐ
)
れないお
方
(
かた
)
がお
出
(
い
)
で
遊
(
あそ
)
ばすのだから
妙
(
めう
)
だよ。
305
其方
(
そなた
)
は
太子
(
たいし
)
の
身
(
み
)
を
有
(
も
)
ち
乍
(
なが
)
ら、
306
何時
(
いつ
)
も
王
(
わう
)
様
(
さま
)
の
目
(
め
)
を
忍
(
しの
)
び、
307
市井
(
しせい
)
の
巷
(
ちまた
)
に
出没
(
しゆつぼつ
)
し、
308
下層
(
かそう
)
階級
(
かいきふ
)
と
交際
(
かうさい
)
をしたり、
309
賤
(
いや
)
しい
女
(
をんな
)
に
戯
(
たはむ
)
れてると
云
(
い
)
ふ
噂
(
うはさ
)
だから、
310
牢獄
(
らうごく
)
などへ
行
(
ゆ
)
くのは
朝飯前
(
あさめしまへ
)
だよ。
311
そんな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つて、
312
此
(
この
)
千草姫
(
ちぐさひめ
)
、
313
大
(
おほ
)
みろく
の
生宮
(
いきみや
)
を
胡麻化
(
ごまくわ
)
さうとしても
駄目
(
だめ
)
で
御座
(
ござ
)
んすぞえ』
314
太
(
たい
)
『
母上
(
ははうへ
)
様
(
さま
)
、
315
貴女
(
あなた
)
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
を
仰
(
おほ
)
せられますな。
316
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
一度
(
いちど
)
も
聞
(
き
)
いた
事
(
こと
)
のない、
317
大
(
おほ
)
みろく
の
生宮
(
いきみや
)
とは、
318
誰
(
たれ
)
に
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
をお
聞
(
き
)
きなさいました』
319
千草
(
ちぐさ
)
『ヘン、
320
お
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
の
青二才
(
あをにさい
)
が
分
(
わか
)
つて
堪
(
たま
)
りますかい。
321
此
(
この
)
母
(
はは
)
はな、
322
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
から
聞
(
き
)
いたのだよ。
323
此
(
この
)
肉体
(
にくたい
)
は
今日
(
けふ
)
より
改
(
あらた
)
めて、
324
下津
(
したつ
)
岩根
(
いはね
)
の
大
(
おほ
)
みろく
様
(
さま
)
、
325
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
、
326
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
で
御座
(
ござ
)
んすぞや。
327
チツポけなトルマン
国
(
ごく
)
の
王妃
(
わうひ
)
だなんて
思
(
おも
)
つて
貰
(
もら
)
つちや、
328
此
(
この
)
神柱
(
かむばしら
)
もチツと
許
(
ばか
)
り
困
(
こま
)
りますよ。
329
ホヽヽヽヽヽあのマア、
330
王
(
わう
)
様
(
さま
)
と
云
(
い
)
ひ、
331
ジヤンクと
云
(
い
)
ひ、
332
太子
(
たいし
)
と
云
(
い
)
ひ、
333
約
(
つま
)
らなさ
相
(
さう
)
なお
面
(
かほ
)
わいの。
334
それ
程
(
ほど
)
此
(
この
)
千草姫
(
ちぐさひめ
)
が、
335
俄
(
にはか
)
に
神柱
(
かむばしら
)
になつたのが
不思議
(
ふしぎ
)
で
御座
(
ござ
)
いますか。
336
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
一度
(
いちど
)
に
見
(
み
)
えすく
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
で
御座
(
ござ
)
いますぞや』
337
太
(
たい
)
『あ、
338
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
いますか。
339
ソラ
誠
(
まこと
)
に
結構
(
けつこう
)
、
340
照国別
(
てるくにわけ
)
様
(
さま
)
が
当城
(
たうじやう
)
へ
御
(
お
)
越
(
こし
)
下
(
くだ
)
さいました
其
(
その
)
神徳
(
しんとく
)
に
仍
(
よ
)
つて、
341
母上
(
ははうへ
)
様
(
さま
)
も
俄
(
にはか
)
に
御
(
お
)
神懸
(
かむがかり
)
におなり
遊
(
あそ
)
ばし、
342
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
様
(
さま
)
と
云
(
い
)
ふやうな、
343
立派
(
りつぱ
)
なエンゼルの
肉宮
(
にくみや
)
に
御
(
ご
)
出世
(
しゆつせ
)
遊
(
あそ
)
ばしたので
御座
(
ござ
)
いませう。
344
就
(
つ
)
いては
屹度
(
きつと
)
キユーバーの
在処
(
ありか
)
位
(
ぐらゐ
)
はお
分
(
わか
)
りになるで
御座
(
ござ
)
いませうな』
345
千草
(
ちぐさ
)
『きまつた
事
(
こと
)
だよ。
346
第一
(
だいいち
)
霊国
(
れいごく
)
の
天人
(
てんにん
)
、
347
底津
(
そこつ
)
岩根
(
いはね
)
の
大
(
おほ
)
みろく
の
太柱
(
ふとばしら
)
、
348
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
、
349
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
肉宮
(
にくみや
)
だもの』
350
太
(
たい
)
『
成程
(
なるほど
)
、
351
それは
結構
(
けつこう
)
な
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
で
御座
(
ござ
)
います。
352
然
(
しか
)
らばどうかキユーバーの
在所
(
ありか
)
をお
知
(
し
)
らせ
下
(
くだ
)
さいませ。
353
それさへお
分
(
わか
)
りになりますれば、
354
母上
(
ははうへ
)
を
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
と
奉
(
たてまつ
)
り、
355
父上
(
ちちうへ
)
様
(
さま
)
も
喜
(
よろこ
)
んで、
356
政治
(
せいぢ
)
万端
(
ばんたん
)
をお
任
(
まか
)
せになるで
御座
(
ござ
)
いませう』
357
千草
(
ちぐさ
)
『ホヽヽヽヽヽ、
358
小賢
(
こざか
)
しい、
359
コレ
悴
(
せがれ
)
、
360
お
前
(
まへ
)
は
母
(
はは
)
をやり
込
(
こ
)
める
積
(
つもり
)
だな。
361
未
(
ま
)
だ
此
(
この
)
母
(
はは
)
を
疑
(
うたが
)
つてゐらつしやるのか、
362
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
に
間違
(
まちが
)
ひは
御座
(
ござ
)
らぬぞや。
363
神
(
かみ
)
は
決
(
けつ
)
して
嘘
(
うそ
)
は
申
(
まを
)
さぬぞや。
364
底津
(
そこつ
)
岩根
(
いはね
)
の
大
(
おほ
)
みろく
様
(
さま
)
の
太柱
(
ふとばしら
)
に
対
(
たい
)
し、
365
易見
(
えきみ
)
か
何
(
なん
)
ぞのやうにキユーバーの
在所
(
ありか
)
が
分
(
わか
)
つたら、
366
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
と
信
(
しん
)
じます……などと、
367
ヘン
馬鹿
(
ばか
)
にして
下
(
くだ
)
さるな。
368
相応
(
さうおう
)
の
理
(
り
)
によつて、
369
此
(
この
)
千草姫
(
ちぐさひめ
)
は
第一
(
だいいち
)
霊国
(
れいごく
)
に
感応
(
かんおう
)
し、
370
根
(
ね
)
の
国
(
くに
)
底
(
そこ
)
の
国
(
くに
)
に
比
(
ひ
)
すべき
牢獄
(
らうごく
)
などは
決
(
けつ
)
して
覗
(
のぞ
)
きませぬぞや。
371
左様
(
さやう
)
な
所
(
ところ
)
へ
天眼通
(
てんがんつう
)
を
使
(
つか
)
はふものなら、
372
折角
(
せつかく
)
の
智慧
(
ちゑ
)
証覚
(
しようかく
)
は
鈍
(
にぶ
)
り、
373
悪魔
(
あくま
)
の
巣窟
(
さうくつ
)
とならねばなりませぬ。
374
大
(
だい
)
それた
第一
(
だいいち
)
霊国
(
れいごく
)
の
天人
(
てんにん
)
の
霊
(
みたま
)
に、
375
牢獄
(
らうごく
)
に
投
(
とう
)
じてあつた
者
(
もの
)
の
在所
(
ありか
)
を
知
(
し
)
らせ……などとは、
376
物
(
もの
)
の
道理
(
だうり
)
を
知
(
し
)
らぬのにも
程
(
ほど
)
があるぢやないか、
377
ホヽヽヽヽヽ。
378
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
賢
(
かしこ
)
いと
云
(
い
)
つても、
379
現界
(
げんかい
)
の
事
(
こと
)
は
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
380
霊界
(
れいかい
)
の
消息
(
せうそく
)
は
到底
(
たうてい
)
分
(
わか
)
りますまいがな。
381
サア
之
(
これ
)
から
此
(
この
)
トルマン
国
(
ごく
)
は
底津
(
そこつ
)
岩根
(
いはね
)
の
大
(
おほ
)
みろく
の
太柱
(
ふとばしら
)
が
現
(
あら
)
はれ、
382
国政
(
こくせい
)
を
握
(
にぎ
)
り、
383
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
を
五六七
(
みろく
)
の
世
(
よ
)
に
致
(
いた
)
す
根源地
(
こんげんち
)
と
定
(
さだ
)
めるから、
384
左様
(
さやう
)
お
心得
(
こころえ
)
なされ。
385
肉体
(
にくたい
)
の
上
(
うへ
)
からは、
386
王
(
わう
)
様
(
さま
)
は
千草姫
(
ちぐさひめ
)
の
夫
(
をつと
)
なれど、
387
神
(
かみ
)
から
云
(
い
)
へば
奴
(
やつこ
)
も
同然
(
どうぜん
)
、
388
天地
(
てんち
)
霄壤
(
せうじやう
)
の
差異
(
さい
)
が
御座
(
ござ
)
いますぞや。
389
之
(
これ
)
からの
政治
(
せいぢ
)
は
神
(
かみ
)
が
致
(
いた
)
します。
390
善悪
(
ぜんあく
)
邪正
(
じやせい
)
は
此
(
この
)
生宮
(
いきみや
)
が
審
(
さば
)
かねば
駄目
(
だめ
)
ですよ。
391
昨日
(
きのふ
)
も
照国別
(
てるくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
謡
(
うた
)
つてゐたぢやありませぬか。
392
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
善悪
(
ぜんあく
)
邪正
(
じやせい
)
を
立分
(
たてわ
)
ける……と。
393
いよいよ
千草姫
(
ちぐさひめ
)
の
肉体
(
にくたい
)
を
機関
(
きくわん
)
とし、
394
第一
(
だいいち
)
霊国
(
れいごく
)
の
天人
(
てんにん
)
の
霊
(
みたま
)
に
大
(
おほ
)
みろく
様
(
さま
)
の
精霊
(
せいれい
)
を
宿
(
やど
)
し、
395
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
となつて
現
(
あら
)
はれ
給
(
たま
)
うた、
396
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
だぞえ。
397
ホツホヽヽヽヽあのマア
刹帝利
(
せつていり
)
殿
(
どの
)
の
六
(
むつ
)
かしい
面
(
つら
)
わいの、
398
チウインの
情
(
なさけ
)
なさ
相
(
さう
)
な
面付
(
つらつき
)
、
399
ウツフヽヽヽヽヽ』
400
と
笑
(
わら
)
ひこけて
了
(
しま
)
つた。
401
(
大正一四・八・二四
旧七・五
於丹後由良秋田別荘
松村真澄
録)
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(B)
(N)
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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