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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第70巻(酉の巻)
序文
総説
第1篇 花鳥山月
第1章 信人権
第2章 折衝戦
第3章 恋戦連笑
第4章 共倒れ
第5章 花鳥山
第6章 鬼遊婆
第7章 妻生
第8章 大勝
第2篇 千種蛮態
第9章 針魔の森
第10章 二教聯合
第11章 血臭姫
第12章 大魅勒
第13章 喃悶題
第14章 賓民窟
第15章 地位転変
第3篇 理想新政
第16章 天降里
第17章 春の光
第18章 鳳恋
第19章 梅花団
第20章 千代の声
第21章 三婚
第22章 優秀美
附 記念撮影
余白歌
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霊界物語
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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第70巻(酉の巻)
> 第2篇 千種蛮態 > 第11章 血臭姫
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(B)
(N)
大魅勒 >>>
第一一章
血臭姫
(
ちぐさひめ
)
〔一七七八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第70巻 山河草木 酉の巻
篇:
第2篇 千種蛮態
よみ(新仮名遣い):
せんしゅばんたい
章:
第11章 血臭姫
よみ(新仮名遣い):
ちぐさひめ
通し章番号:
1778
口述日:
1925(大正14)年08月24日(旧07月5日)
口述場所:
丹後由良 秋田別荘
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年10月16日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
突然宴の間に現れた千草姫は、キューバーの投獄の沙汰について、王、太子、ジャンク、照国別を非難し、皆にさんざん悪態をついて退出する。
あまりのことに王は怒り心頭に達し、また照国別に無作法をわびるが、逆に照国別は、慈悲の道に従い、キューバーを釈放するように提案する。
明日、ジャンクが牢獄に行ってキューバーを解放する手はずとなって参会するが、太子はひとり心のうちで、悪人キューバー釈放が気に入らない様子である。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-05-28 01:40:24
OBC :
rm7011
愛善世界社版:
136頁
八幡書店版:
第12輯 439頁
修補版:
校定版:
139頁
普及版:
67頁
初版:
ページ備考:
001
千草姫
(
ちぐさひめ
)
は
満座
(
まんざ
)
をキヨロキヨロ
見
(
み
)
まはし
乍
(
なが
)
ら、
002
瞋恚
(
しんい
)
にもゆる
胸
(
むね
)
の
火
(
ひ
)
をジツと
抑
(
おさ
)
へ、
003
わざと
笑顔
(
ゑがほ
)
を
造
(
つく
)
り、
004
特
(
とく
)
に
慇懃
(
いんぎん
)
に
両手
(
りやうて
)
をつかへて、
005
首
(
くび
)
を
二
(
ふた
)
つ
三
(
みつ
)
つ
左右
(
さいう
)
に
振
(
ふ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
006
屈
(
かが
)
んだ
儘
(
まま
)
顔
(
かほ
)
を
上
(
あ
)
げ、
007
額
(
ひたひ
)
と
腮
(
あご
)
とを
殆
(
ほと
)
んど
平行線
(
へいかうせん
)
にし
乍
(
なが
)
ら、
008
『これはこれは
吾
(
わが
)
夫
(
つま
)
ガーデン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
を
始
(
はじ
)
め、
009
智謀
(
ちぼう
)
絶倫
(
ぜつりん
)
の
勇士
(
ゆうし
)
チウイン
太子
(
たいし
)
、
010
野武士
(
のぶし
)
の
蛮勇
(
ばんゆう
)
ジヤンクの
爺
(
ぢい
)
さま、
011
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
雲国別
(
くもくにわけ
)
オツト
違
(
ちが
)
つたピカ
国別
(
くにわけ
)
、
012
又
(
また
)
違
(
ちが
)
つたデルクイ
別
(
わけ
)
とか
云
(
い
)
ふ
神司
(
かむづかさ
)
、
013
其
(
その
)
他
(
た
)
のお
歴々
(
れきれき
)
の
方々
(
かたがた
)
へ
今日
(
こんにち
)
の
御
(
ご
)
祝儀
(
しうぎ
)
、
014
目出
(
めで
)
たう
御
(
お
)
祝
(
いはひ
)
申
(
まを
)
しまする。
015
いよいよ
之
(
これ
)
にてトルマン
国
(
ごく
)
は
天下
(
てんか
)
泰平
(
たいへい
)
、
016
万代
(
ばんだい
)
不易
(
ふえき
)
の
基礎
(
きそ
)
が
定
(
さだ
)
まることと
慶賀
(
けいが
)
に
堪
(
た
)
へませぬ。
017
時
(
とき
)
にスコブツエン
宗
(
しう
)
の
名僧
(
めいそう
)
トルマン
国
(
ごく
)
の
救
(
すく
)
ひ
主
(
ぬし
)
、
018
キユーバー
殿
(
どの
)
は
如何
(
いかが
)
致
(
いた
)
されたか。
019
チウイン
太子
(
たいし
)
に
対
(
たい
)
し、
020
此
(
この
)
母
(
はは
)
が
恐
(
おそ
)
れ
乍
(
なが
)
ら
一言
(
いちごん
)
訊問
(
じんもん
)
に
及
(
およ
)
びまする。
021
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
親
(
おや
)
と
子
(
こ
)
の
仲
(
なか
)
、
022
決
(
けつ
)
して
遠慮
(
ゑんりよ
)
は
要
(
い
)
りませぬ。
023
サ、
024
早
(
はや
)
く
実状
(
じつじやう
)
を
述
(
の
)
べさせられよ』
025
此
(
この
)
言葉
(
ことば
)
にチウイン
太子
(
たいし
)
は
言句
(
げんく
)
も
出
(
い
)
でず、
026
ハアハアと
云
(
い
)
つたきり
俯
(
うつ
)
むひて
了
(
しま
)
つた。
027
千草
(
ちぐさ
)
『ホヽヽヽヽヽ、
028
これ
悴
(
せがれ
)
チウイン
殿
(
どの
)
、
029
最前
(
さいぜん
)
もいふ
通
(
とほ
)
り、
030
親
(
おや
)
と
子
(
こ
)
の
仲
(
なか
)
、
031
隔
(
へだ
)
てがあつては
家内
(
かない
)
睦
(
むつ
)
まじう
治
(
をさ
)
まりませぬ。
032
其方
(
そなた
)
は
此
(
この
)
母
(
はは
)
に
対
(
たい
)
し、
033
必
(
かなら
)
ず
必
(
かなら
)
ず
不孝
(
ふかう
)
の
振舞
(
ふるまひ
)
は
御座
(
ござ
)
いますまいな』
034
チウイン
太子
(
たいし
)
は
益々
(
ますます
)
言句
(
げんく
)
に
詰
(
つま
)
り、
035
『ハ、
036
ハ』と
云
(
い
)
つたきり、
037
俯
(
うつ
)
むひて
了
(
しま
)
つた。
038
ガーデン
王
(
わう
)
はキリリと
目
(
め
)
を
釣上
(
つりあ
)
げ、
039
『ヤ、
040
千草姫
(
ちぐさひめ
)
、
041
倅
(
せがれ
)
に
問
(
と
)
ふ
迄
(
まで
)
もなく
余
(
よ
)
が
逐一
(
ちくいち
)
説明
(
せつめい
)
しよう、
042
トクと
聞
(
き
)
け。
043
彼
(
か
)
れキユーバーなる
者
(
もの
)
は
不敵
(
ふてき
)
の
曲者
(
くせもの
)
、
044
神聖
(
しんせい
)
無比
(
むひ
)
なる
大神
(
おほかみ
)
の
祭典
(
さいてん
)
に
際
(
さい
)
し、
045
照国別
(
てるくにわけ
)
様
(
さま
)
の
大切
(
たいせつ
)
な
御
(
お
)
冠
(
かんむり
)
に
手
(
て
)
をかけ、
046
群衆
(
ぐんしう
)
の
前
(
まへ
)
にて
赤恥
(
あかはぢ
)
をかかさむとしたる
乱暴者
(
らんばうもの
)
、
047
余
(
よ
)
は
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
於
(
お
)
いて
切
(
き
)
つて
捨
(
す
)
てむかと
思
(
おも
)
ひしか
共
(
ども
)
、
048
何
(
なに
)
をいつても
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
、
049
血
(
ち
)
を
以
(
もつ
)
て
聖場
(
せいぢやう
)
を
汚
(
けが
)
すも
恐
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
し、
050
時
(
とき
)
を
待
(
ま
)
つて
誅伐
(
ちうばつ
)
せむと
控
(
ひか
)
えをる
折
(
をり
)
しも、
051
キユーバーが
不敵
(
ふてき
)
の
行動
(
かうどう
)
益々
(
ますます
)
甚
(
はなは
)
だしく、
052
口
(
くち
)
を
極
(
きは
)
めて
宣伝使
(
せんでんし
)
を
罵詈
(
ばり
)
讒謗
(
ざんばう
)
し、
053
両手
(
りやうて
)
を
拡
(
ひろ
)
げて
行列
(
ぎやうれつ
)
の
妨害
(
ばうがい
)
をなすなど、
054
言語
(
げんご
)
に
絶
(
ぜつ
)
したる
其
(
その
)
振舞
(
ふるまひ
)
、
055
見
(
み
)
るに
見
(
み
)
かねてチウイン
太子
(
たいし
)
はジヤンクに
命
(
めい
)
じ、
056
キユーバーを
捕縛
(
ほばく
)
し、
057
獄
(
ごく
)
に
投
(
とう
)
じておいたのだ。
058
城内
(
じやうない
)
の
安寧
(
あんねい
)
秩序
(
ちつじよ
)
を
保
(
たも
)
つ
為
(
ため
)
、
059
最
(
もつと
)
も
時宜
(
じぎ
)
に
適
(
てき
)
した
処置
(
しよち
)
と
余
(
よ
)
は
心得
(
こころえ
)
てゐる』
060
千草
(
ちぐさ
)
『ホヽヽヽヽヽ、
061
如何
(
いか
)
にも
乱暴者
(
らんばうもの
)
を
縛
(
しば
)
り
上
(
あ
)
げ、
062
獄
(
ごく
)
に
投
(
とう
)
じ
玉
(
たま
)
ふは
国法
(
こくはふ
)
の
定
(
さだ
)
むる
所
(
ところ
)
、
063
之
(
これ
)
について
千草姫
(
ちぐさひめ
)
一言
(
ひとこと
)
も
異存
(
いぞん
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬが、
064
彼
(
か
)
れキユーバーだつて、
065
もとより
悪人
(
あくにん
)
でもなく、
066
狂乱者
(
きやうらんしや
)
でもなからうと
存
(
ぞん
)
じます。
067
彼
(
かれ
)
としてかかる
暴挙
(
ばうきよ
)
に
出
(
い
)
でしめたるに
就
(
つ
)
いては、
068
何
(
なに
)
か
深
(
ふか
)
き
原因
(
げんいん
)
がなければなりませぬ。
069
軽卒
(
けいそつ
)
に
外面
(
ぐわいめん
)
的
(
てき
)
行動
(
かうどう
)
のみをみて、
070
一応
(
いちおう
)
の
取
(
とり
)
調
(
しらべ
)
もなく、
071
所
(
ところ
)
もあらうに
大神
(
おほかみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
於
(
おい
)
て、
072
不遜
(
ふそん
)
極
(
きは
)
まる
罪人
(
ざいにん
)
を
出
(
いだ
)
し
玉
(
たま
)
ふとは
千草姫
(
ちぐさひめ
)
心得
(
こころえ
)
ませぬ。
073
刹帝利
(
せつていり
)
様
(
さま
)
、
074
愚鈍
(
ぐどん
)
なる
妾
(
わらは
)
の
得心
(
とくしん
)
が
行
(
ゆ
)
く
迄
(
まで
)
御
(
ご
)
説明
(
せつめい
)
を
願
(
ねが
)
ひませう』
075
王
(
わう
)
『
喧
(
やかま
)
しう
云
(
い
)
ふな、
076
汝
(
なんぢ
)
の
知
(
し
)
る
所
(
ところ
)
でない。
077
余
(
よ
)
は
余
(
よ
)
としての
考
(
かんが
)
へがある。
078
女
(
をんな
)
の
出
(
で
)
しやばる
幕
(
まく
)
でない。
079
サ、
080
トツトと
汝
(
なんぢ
)
が
居間
(
ゐま
)
に
立
(
たち
)
返
(
かへ
)
れよ』
081
千草
(
ちぐさ
)
『ホヽヽヽヽヽ
女
(
をんな
)
の
出
(
で
)
しやばる
場合
(
ばあひ
)
でないとは
刹帝利
(
せつていり
)
様
(
さま
)
、
082
ソラ
何
(
なん
)
といふ
暴言
(
ばうげん
)
で
御座
(
ござ
)
います。
083
王
(
わう
)
様
(
さま
)
は
国民
(
こくみん
)
の
父
(
ちち
)
、
084
王妃
(
わうひ
)
は
国民
(
こくみん
)
の
母
(
はは
)
で
御座
(
ござ
)
いますよ。
085
昔
(
むかし
)
の
神代
(
かみよ
)
に
於
(
おい
)
ても
伊弉諾
(
いざなぎの
)
命
(
みこと
)
伊弉冊
(
いざなみの
)
命
(
みこと
)
二柱
(
ふたはしら
)
、
086
天
(
あめ
)
の
御柱
(
みはしら
)
を
巡
(
めぐ
)
り
合
(
あ
)
ひ、
087
なり
余
(
あま
)
れる
所
(
ところ
)
と、
088
なり
合
(
あ
)
はざる
所
(
ところ
)
を
抱擁
(
はうよう
)
帰一
(
きいつ
)
遊
(
あそ
)
ばし、
089
天下
(
てんか
)
の
神人
(
しんじん
)
を
生
(
う
)
み
玉
(
たま
)
ふたでは
御座
(
ござ
)
いませぬか。
090
男子
(
だんし
)
は
外
(
そと
)
を
守
(
まも
)
る
者
(
もの
)
、
091
女子
(
ぢよし
)
は
内
(
うち
)
を
守
(
まも
)
る
者
(
もの
)
、
092
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
つても
此
(
この
)
城内
(
じやうない
)
の
出来事
(
できごと
)
、
093
千草姫
(
ちぐさひめ
)
の
権限
(
けんげん
)
に
御座
(
ござ
)
いますよ。
094
もし
妾
(
わらは
)
を
排斥
(
はいせき
)
遊
(
あそ
)
ばすならば、
095
トルマンの
国家
(
こくか
)
は
風前
(
ふうぜん
)
の
灯火
(
ともしび
)
、
096
何程
(
なにほど
)
立派
(
りつぱ
)
な
国王
(
こくわう
)
様
(
さま
)
だとて
王妃
(
わうひ
)
の
内助
(
ないじよ
)
なくして、
097
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
国
(
くに
)
が
保
(
たも
)
たれまするか。
098
能
(
よ
)
く
能
(
よ
)
く
御
(
お
)
考
(
かんが
)
へなされませ。
099
それにも
拘
(
かかは
)
らず、
100
ウラルの
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
祭典
(
さいてん
)
に
当
(
あた
)
り、
101
ウラルの
宣伝使
(
せんでんし
)
を
一人
(
ひとり
)
も
用
(
もち
)
ひ
玉
(
たま
)
はず、
102
大神
(
おほかみ
)
の
忌
(
い
)
みきらひ
玉
(
たま
)
ふ
曲神
(
まがかみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
奉
(
ほう
)
ずる
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
を
抜擢
(
ばつてき
)
して
斎主
(
さいしゆ
)
となし
玉
(
たま
)
ふは、
103
実
(
じつ
)
に
天地
(
てんち
)
の
道理
(
だうり
)
を
紊
(
みだ
)
したりといふもの。
104
私
(
ひそ
)
かに
承
(
うけたま
)
はれば
彼
(
か
)
れ
照国別
(
てるくにわけ
)
はウラル
教
(
けう
)
の
謀叛人
(
むほんにん
)
、
105
中途
(
ちうと
)
に
於
(
おい
)
て
三五
(
あななひ
)
の
邪教
(
じやけう
)
に
沈溺
(
ちんでき
)
せし
者
(
もの
)
、
106
益々
(
ますます
)
神
(
かみ
)
の
御
(
お
)
怒
(
いか
)
りは
甚
(
はなは
)
だしかるべく、
107
何時
(
いつ
)
如何
(
いか
)
なる
災
(
わざはひ
)
の、
108
神罰
(
しんばつ
)
に
仍
(
よ
)
つて
突発
(
とつぱつ
)
するかも
知
(
し
)
れますまい。
109
又
(
また
)
ウラル
教
(
けう
)
以外
(
いぐわい
)
の
異教徒
(
いけうと
)
を
以
(
もつ
)
て、
110
斎主
(
さいしゆ
)
となすの
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ざる
場合
(
ばあひ
)
ありとせば、
111
何故
(
なぜ
)
国難
(
こくなん
)
を
救
(
すく
)
ひたる
彼
(
か
)
れキユーバーを
重用
(
ぢうよう
)
し、
112
斎主
(
さいしゆ
)
を
御
(
お
)
命
(
めい
)
じなされませぬか。
113
邪臣
(
じやしん
)
を
賞
(
しやう
)
し
[
※
「邪臣を賞し」は「忠臣を賞し」の誤字か?
]
、
114
逆臣
(
ぎやくしん
)
を
戒
(
いまし
)
むるは
政治
(
せいぢ
)
の
要訣
(
えうけつ
)
、
115
霊界
(
れいかい
)
さへも
天国
(
てんごく
)
地獄
(
ぢごく
)
が
御座
(
ござ
)
いまするぞ。
116
今度
(
こんど
)
の
戦
(
たたか
)
ひに
於
(
お
)
ける
第一
(
だいいち
)
の
勲功者
(
くんこうしや
)
を
除外
(
ぢよぐわい
)
し、
117
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
於
(
おい
)
て
彼
(
か
)
れに
恥
(
はぢ
)
を
与
(
あた
)
へしを
以
(
もつ
)
て、
118
彼
(
か
)
れキユーバーは
悲憤
(
ひふん
)
の
余
(
あま
)
り、
119
かかる
暴挙
(
ばうきよ
)
に
出
(
い
)
でたものと
考
(
かんが
)
へるより
外
(
ほか
)
余地
(
よち
)
はありますまい。
120
否
(
いや
)
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
してキユーバーの
意志
(
いし
)
ではなく、
121
ウラル
教
(
けう
)
の
大神
(
おほかみ
)
、
122
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんわう
)
の
彼
(
かれ
)
の
体
(
たい
)
を
藉
(
か
)
つての
御
(
お
)
戒
(
いまし
)
めに
相違
(
さうゐ
)
御座
(
ござ
)
いますまい。
123
かかる
忠臣
(
ちうしん
)
義士
(
ぎし
)
を
牢獄
(
らうごく
)
に
投
(
とう
)
ずるとは
以
(
もつ
)
ての
外
(
ほか
)
、
124
千草姫
(
ちぐさひめ
)
一向
(
いつかう
)
合点
(
がてん
)
が
参
(
まゐ
)
り
申
(
まを
)
しませぬ。
125
キユーバーを
牢獄
(
らうごく
)
に
投
(
とう
)
じ
玉
(
たま
)
ふに
先立
(
さきだ
)
ち、
126
何故
(
なにゆゑ
)
照国別
(
てるくにわけ
)
一派
(
いつぱ
)
を
投獄
(
とうごく
)
なさりませぬか。
127
かかる
明白
(
めいはく
)
な
理由
(
りいう
)
を
無視
(
むし
)
し、
128
一国
(
いつこく
)
の
王者
(
わうじや
)
で
依怙
(
えこ
)
の
沙汰
(
さた
)
を
遊
(
あそ
)
ばすに
於
(
おい
)
ては、
129
之
(
これ
)
より
賞罰
(
しやうばつ
)
の
道
(
みち
)
乱
(
みだ
)
れ、
130
刑政
(
けいせい
)
行
(
おこな
)
はれず、
131
国家
(
こくか
)
は
再
(
ふたた
)
び
混乱
(
こんらん
)
の
巷
(
ちまた
)
となるで
御座
(
ござ
)
いませう。
132
照国別
(
てるくにわけ
)
は
実
(
じつ
)
に
微弱
(
びじやく
)
なる
教派
(
けうは
)
の
一
(
いち
)
宣伝使
(
せんでんし
)
、
133
キユーバーは
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
御
(
おん
)
覚
(
おぼえ
)
目出
(
めで
)
たしといふスコブツエン
宗
(
しう
)
の
大教祖
(
だいけうそ
)
で
御座
(
ござ
)
いませぬか。
134
万々一
(
ばんばんいち
)
吾
(
わが
)
国運
(
こくうん
)
衰
(
おとろ
)
へ、
135
再
(
ふたた
)
び
大黒主
(
おほくろぬし
)
、
136
此
(
この
)
度
(
たび
)
の
戦争
(
せんそう
)
の
恥辱
(
ちじよく
)
を
雪
(
そそ
)
がむと、
137
数万
(
すうまん
)
の
兵
(
へい
)
を
引
(
ひき
)
つれ
押
(
おし
)
よせ
来
(
きた
)
らば
何
(
なん
)
となされます。
138
其
(
その
)
時
(
とき
)
に
当
(
あた
)
つて
最
(
もつと
)
も
必要
(
ひつえう
)
なる
人物
(
じんぶつ
)
は、
139
キユーバーを
措
(
お
)
いて
外
(
ほか
)
には
御座
(
ござ
)
いますまい。
140
それ
故
(
ゆゑ
)
妾
(
わらは
)
は
飽
(
あ
)
く
迄
(
まで
)
も
彼
(
かれ
)
を
懐柔
(
くわいじう
)
し、
141
まさかの
時
(
とき
)
の
用意
(
ようい
)
にと、
142
平素
(
へいそ
)
より
歓心
(
くわんしん
)
を
買
(
か
)
ひおき、
143
国難
(
こくなん
)
を
救
(
すく
)
ふべく
取計
(
とりはか
)
らひをるので
御座
(
ござ
)
います。
144
かかる
妾
(
わらは
)
が
深遠
(
しんゑん
)
なる
神謀
(
しんぼう
)
鬼策
(
きさく
)
も
御存
(
ごぞん
)
じなく、
145
勢
(
いきほひ
)
に
任
(
まか
)
せて、
146
照国別
(
てるくにわけ
)
の
肩
(
かた
)
をもち、
147
キユーバーを
獄
(
ごく
)
に
投
(
とう
)
ずるとは、
148
何
(
なん
)
といふ
拙
(
まづ
)
い
遣
(
や
)
り
方
(
かた
)
で
御座
(
ござ
)
いませうか。
149
妾
(
わらは
)
は
仮令
(
たとへ
)
キユーバーに
少々
(
せうせう
)
の
欠点
(
けつてん
)
ありとて、
150
邪悪
(
じやあく
)
分子
(
ぶんし
)
ありとて、
151
左様
(
さやう
)
な
些細
(
ささい
)
な
点
(
てん
)
迄
(
まで
)
詮索
(
せんさく
)
する
必要
(
ひつえう
)
はありますまい。
152
彼
(
かれ
)
さへ
薬籠中
(
やくろうちう
)
の
者
(
もの
)
として
優待
(
いうたい
)
に
優待
(
いうたい
)
を
重
(
かさ
)
ねて
城内
(
じやうない
)
に
止
(
と
)
めおかば、
153
大黒主
(
おほくろぬし
)
なりとて、
154
さうムザムザと
本城
(
ほんじやう
)
へ
攻
(
せ
)
めても
来
(
こ
)
られますまい。
155
仮令
(
たとへ
)
不幸
(
ふかう
)
にして
国難
(
こくなん
)
勃発
(
ぼつぱつ
)
する
共
(
とも
)
、
156
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
御
(
おん
)
覚
(
おぼえ
)
めでたきキユーバーを
派遣
(
はけん
)
せば、
157
何
(
なん
)
の
苦
(
く
)
もなく
平和
(
へいわ
)
に
治
(
をさ
)
まる
道理
(
だうり
)
ぢや
御座
(
ござ
)
いませぬか。
158
トルマン
国
(
ごく
)
永遠
(
えいゑん
)
平和
(
へいわ
)
の
為
(
ため
)
にはキユーバーを
獄
(
ごく
)
より
引出
(
ひきだ
)
し、
159
刹帝利
(
せつていり
)
を
始
(
はじ
)
めチウイン
太子
(
たいし
)
、
160
ジヤンク
等
(
ら
)
、
161
九拝
(
きうはい
)
百拝
(
ひやつぱい
)
して
其
(
その
)
罪
(
つみ
)
を
謝
(
しや
)
し、
162
照国別
(
てるくにわけ
)
を
面前
(
めんぜん
)
に
於
(
おい
)
て
縛
(
しば
)
りあげ、
163
キユーバーの
遺恨
(
ゐこん
)
をはらし
玉
(
たま
)
はねば、
164
吾
(
わが
)
国家
(
こくか
)
の
為
(
ため
)
に
由々
(
ゆゆ
)
しき
大事
(
だいじ
)
で
御座
(
ござ
)
りまするぞ。
165
又
(
また
)
ウラル
教
(
けう
)
と
三五教
(
あななひけう
)
の
聯合
(
れんがふ
)
は
国策
(
こくさく
)
上
(
じやう
)
最
(
もつと
)
も
不利益
(
ふりえき
)
千万
(
せんばん
)
で
御座
(
ござ
)
います。
166
速
(
すみやか
)
に
此
(
この
)
聯合
(
れんがふ
)
を
破壊
(
はくわい
)
し、
167
スコブツエン
宗
(
しう
)
と
聯合
(
れんがふ
)
提携
(
ていけい
)
するに
於
(
おい
)
ては、
168
ハルナの
都
(
みやこ
)
の
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
怒
(
いか
)
りも
解
(
と
)
け、
169
吾
(
わが
)
国家
(
こくか
)
は
安穏
(
あんおん
)
に
170
国民
(
こくみん
)
挙
(
こぞ
)
つて
平和
(
へいわ
)
の
夢
(
ゆめ
)
を
貪
(
むさぼ
)
ることを
得
(
う
)
るで
御座
(
ござ
)
いませう。
171
千草姫
(
ちぐさひめ
)
の
言葉
(
ことば
)
に
之
(
こ
)
れでも
異存
(
いぞん
)
が
御座
(
ござ
)
いまするか』
172
王
(
わう
)
『だまれ、
173
千草姫
(
ちぐさひめ
)
、
174
国家
(
こくか
)
の
危急
(
ききふ
)
を
救
(
すく
)
ひ
玉
(
たま
)
ひし
照国別
(
てるくにわけ
)
御
(
ご
)
一行
(
いつかう
)
に
対
(
たい
)
し、
175
無礼
(
ぶれい
)
極
(
きは
)
まる
其
(
その
)
雑言
(
ざふごん
)
、
176
最早
(
もはや
)
聞捨
(
ききずて
)
ならぬぞ』
177
千草
(
ちぐさ
)
『ホヽヽヽヽヽ、
178
青瓢箪
(
あをべうたん
)
や
干瓢
(
かんぺう
)
や
西瓜
(
すいくわ
)
の
様
(
やう
)
な
干
(
ひ
)
からびた
青
(
あを
)
い
頭
(
あたま
)
を
並
(
なら
)
べて、
179
お
歴々
(
れきれき
)
の
御
(
ご
)
相談
(
さうだん
)
、
180
よくマア
国家
(
こくか
)
を
亡
(
ほろ
)
ぼす
為
(
ため
)
の
立派
(
りつぱ
)
な
御
(
ご
)
行動
(
かうどう
)
を、
181
此
(
この
)
千草姫
(
ちぐさひめ
)
遥
(
はるか
)
に
眺
(
なが
)
めて
実
(
じつ
)
にカンチン
仕
(
つかまつ
)
りますワイ。
182
刹帝利
(
せつていり
)
様
(
さま
)
は
老齢
(
らうれい
)
のこととて
聊
(
いささ
)
か
精神
(
せいしん
)
御
(
おん
)
悩
(
なや
)
みあり、
183
一々
(
いちいち
)
仰
(
おほ
)
せらるることは
正鵠
(
せいこう
)
を
欠
(
か
)
き
玉
(
たま
)
ふは
無理
(
むり
)
なけれ
共
(
ども
)
、
184
倅
(
せがれ
)
チウインの
如
(
ごと
)
きは
血気
(
けつき
)
の
若者
(
わかもの
)
、
185
斯
(
か
)
やうな
道理
(
だうり
)
が
分
(
わか
)
らずして、
186
どうして
此
(
この
)
国家
(
こくか
)
を
保
(
たも
)
つことが
出来
(
でき
)
ようぞ。
187
いざ
之
(
これ
)
よりは
王
(
わう
)
様
(
さま
)
に
退隠
(
たいいん
)
を
願
(
ねが
)
ひ、
188
憚
(
はばか
)
り
乍
(
なが
)
ら
千草姫
(
ちぐさひめ
)
女帝
(
によてい
)
となつてトルマン
国
(
ごく
)
を
治
(
をさ
)
めるで
御座
(
ござ
)
いませう。
189
まだ
口
(
くち
)
のはたに
乳
(
ちち
)
の
臭
(
にほひ
)
がしてゐるチウイン
如
(
ごと
)
きは、
190
到底
(
たうてい
)
妾
(
わらは
)
の
相談
(
さうだん
)
相手
(
あひて
)
にはあきたらない、
191
ホヽヽヽヽヽ』
192
チウ『
母上
(
ははうへ
)
に
申
(
まを
)
し
上
(
あげ
)
ます。
193
父
(
ちち
)
ガーデン
王
(
わう
)
があつてこそ
貴女
(
あなた
)
は
王妃
(
わうひ
)
の
位置
(
ゐち
)
に
就
(
つ
)
いて、
194
国
(
くに
)
の
母
(
はは
)
として
政治
(
せいぢ
)
に
干与
(
かんよ
)
遊
(
あそ
)
ばし
玉
(
たま
)
ふことを
得
(
う
)
るのでは
御座
(
ござ
)
いませぬか。
195
父王
(
ちちわう
)
が
退隠
(
たいいん
)
されるとならば、
196
母君
(
ははぎみ
)
は
政治
(
せいぢ
)
に
干与
(
かんよ
)
する
権利
(
けんり
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬぞ。
197
そこをトクと
御
(
お
)
考
(
かんが
)
へなさいませ』
198
千草
(
ちぐさ
)
『ホヽヽヽヽヽ
小賢
(
こざか
)
しい、
199
コレ
悴
(
せがれ
)
、
200
何
(
なん
)
といふ
分
(
わか
)
らぬことを
申
(
まを
)
すのだ。
201
女
(
をんな
)
が
政治
(
せいぢ
)
の
主権者
(
しゆけんじや
)
となることが
出来
(
でき
)
ぬとは、
202
ソリヤ
誰
(
たれ
)
に
教
(
をそ
)
はつたのだい。
203
能
(
よ
)
く
考
(
かんが
)
へて
御覧
(
ごらん
)
なさい。
204
天照
(
あまてらす
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
は
女神
(
めがみ
)
でいらつしやるぢやないか。
205
英国
(
えいこく
)
の
皇帝
(
くわうてい
)
はエリザベスといふ
女帝
(
によてい
)
が
206
太陽
(
たいやう
)
の
没
(
ぼつ
)
するを
知
(
し
)
らぬ
迄
(
まで
)
の
大版図
(
だいはんと
)
の
主権者
(
しゆけんじや
)
となつてゐられたでないか。
207
子
(
こ
)
の
分際
(
ぶんざい
)
として
母
(
はは
)
に
口答
(
くちごた
)
へするとは
不孝
(
ふかう
)
此
(
この
)
上
(
うへ
)
もなし。
208
其方
(
そなた
)
も
此
(
この
)
上
(
うへ
)
一言
(
いちごん
)
でも
云
(
い
)
つてみなさい。
209
母
(
はは
)
の
職権
(
しよくけん
)
を
以
(
もつ
)
て
牢獄
(
らうごく
)
に
投込
(
なげこ
)
みますぞ』
210
といひ
乍
(
なが
)
ら、
211
ツと
立上
(
たちあが
)
り、
212
畳
(
たたみ
)
ざわりも
荒々
(
あらあら
)
しく
吾
(
わが
)
居間
(
ゐま
)
さして
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
213
刹帝利
(
せつていり
)
は
余
(
あま
)
りの
腹立
(
はらだ
)
たしさと、
214
照国別
(
てるくにわけ
)
に
対
(
たい
)
する
義理
(
ぎり
)
から、
215
千草姫
(
ちぐさひめ
)
を
手討
(
てうち
)
にせむとまで
覚悟
(
かくご
)
をきめてゐたが、
216
又
(
また
)
思
(
おも
)
ひ
直
(
なほ
)
して、
2161
グツと
胸
(
むね
)
を
抑
(
おさ
)
へ、
217
歯
(
は
)
をくひしばり
慄
(
ふる
)
ひつつあつた。
218
チウイン
太子
(
たいし
)
も
父
(
ちち
)
の
様子
(
やうす
)
の
常
(
つね
)
ならぬを
見
(
み
)
てとり、
219
いよいよとならば、
220
父
(
ちち
)
の
両腕
(
りやううで
)
に
取縋
(
とりすが
)
つて
千草姫
(
ちぐさひめ
)
を
助
(
たす
)
けむものと、
221
心中
(
しんちう
)
に
覚悟
(
かくご
)
をきめてゐた。
222
刹帝利
(
せつていり
)
は
漸
(
やうや
)
く
口
(
くち
)
を
開
(
ひら
)
き、
223
『
照国別
(
てるくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
224
彼
(
か
)
れ
千草姫
(
ちぐさひめ
)
は、
225
先日来
(
せんじつらい
)
の
戦争
(
せんそう
)
に
脳漿
(
なうせう
)
を
絞
(
しぼ
)
つた
結果
(
けつくわ
)
、
226
精神
(
せいしん
)
に
異状
(
いじやう
)
を
来
(
きた
)
してをりますれば、
227
何卒
(
なにとぞ
)
神直日
(
かむなほひ
)
大直日
(
おほなほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し
228
寛大
(
くわんだい
)
に
御
(
お
)
宥
(
みゆる
)
しの
程
(
ほど
)
願
(
ねがひ
)
奉
(
たてまつ
)
りまする。
229
穴
(
あな
)
でもあらば
潜
(
もぐ
)
り
込
(
こ
)
みたくなりました』
230
と
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
さうにいふ。
231
照国別
(
てるくにわけ
)
は
平然
(
へいぜん
)
として、
232
『
刹帝利
(
せつていり
)
様
(
さま
)
、
233
其
(
その
)
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
は
御
(
ご
)
無用
(
むよう
)
で
御座
(
ござ
)
います。
234
決
(
けつ
)
して
千草姫
(
ちぐさひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
本心
(
ほんしん
)
から
仰
(
おほ
)
せられたのでは
御座
(
ござ
)
いませぬ。
235
之
(
これ
)
には
少
(
すこ
)
し
理由
(
りいう
)
が
御座
(
ござ
)
いまするが、
236
今日
(
こんにち
)
は
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
ぐる
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
きませぬ。
237
決
(
けつ
)
して
私
(
わたし
)
は
千草姫
(
ちぐさひめ
)
様
(
さま
)
のお
言葉
(
ことば
)
に
対
(
たい
)
し、
238
毛頭
(
まうとう
)
意
(
い
)
に
介
(
かい
)
して
居
(
を
)
りませぬ。
239
どうか
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
240
王
(
わう
)
『ヤ、
241
それ
承
(
うけたま
)
はつて
安心
(
あんしん
)
致
(
いた
)
しました。
242
何卒
(
なにとぞ
)
々々
(
なにとぞ
)
末永
(
すえなが
)
く
御
(
ご
)
指導
(
しだう
)
を
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
ります。
243
時
(
とき
)
に
照国別
(
てるくにわけ
)
様
(
さま
)
、
244
如何
(
いかが
)
で
御座
(
ござ
)
いませうか、
245
彼
(
か
)
れキユーバーを
厳罰
(
げんばつ
)
に
処
(
しよ
)
して、
246
禍根
(
くわこん
)
を
断
(
た
)
たむと
存
(
ぞん
)
じまするが』
247
照国
(
てるくに
)
『
私
(
わたし
)
は
人
(
ひと
)
を
助
(
たす
)
くる
宣伝使
(
せんでんし
)
、
248
仮令
(
たとへ
)
鬼
(
おに
)
でも
蛇
(
じや
)
でも
悪魔
(
あくま
)
でも
赤心
(
まごころ
)
を
以
(
もつ
)
て
臨
(
のぞ
)
み、
249
誠
(
まこと
)
の
限
(
かぎり
)
を
尽
(
つく
)
し、
250
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
に
帰順
(
きじゆん
)
させるが
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
、
251
刑罰
(
けいばつ
)
などは
不必要
(
ふひつえう
)
かと
存
(
ぞん
)
じます。
252
人
(
ひと
)
は
何
(
いづ
)
れも
神
(
かみ
)
の
精霊
(
せいれい
)
を
宿
(
やど
)
したもの、
253
人間
(
にんげん
)
で
人間
(
にんげん
)
を
審
(
さば
)
くなどとは
僣上
(
せんじやう
)
至極
(
しごく
)
な
行方
(
やりかた
)
、
254
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
くキユーバーを
御
(
お
)
助
(
たす
)
けなさるが
可
(
よ
)
からうかと
存
(
ぞん
)
じます。
255
さすれば
千草姫
(
ちぐさひめ
)
様
(
さま
)
の
心
(
こころ
)
も
和
(
やは
)
らぎ、
256
家庭
(
かてい
)
円満
(
ゑんまん
)
の
曙光
(
しよくわう
)
を
認
(
みと
)
むるに
至
(
いた
)
るで
御座
(
ござ
)
いませう』
257
王
(
わう
)
『
成程
(
なるほど
)
、
258
一応
(
いちおう
)
御尤
(
ごもつと
)
もかと
存
(
ぞん
)
じます。
259
チウイン、
260
其方
(
そなた
)
は
何
(
ど
)
う
考
(
かんが
)
へるか』
261
太子
(
たいし
)
『ハイ、
262
私
(
わたし
)
は
天
(
てん
)
にも
地
(
ち
)
にも
替
(
か
)
へがたい
吾
(
わが
)
母
(
はは
)
の
意志
(
いし
)
に
反
(
そむ
)
き、
263
彼
(
か
)
れキユーバーを
国民
(
こくみん
)
の
面前
(
めんぜん
)
に
於
(
おい
)
て
捕縛
(
ほばく
)
致
(
いた
)
しました。
264
之
(
これ
)
に
就
(
つ
)
いては
非常
(
ひじやう
)
な
決心
(
けつしん
)
を
持
(
も
)
つて
居
(
を
)
ります。
265
彼
(
かれ
)
が
再
(
ふたた
)
び
城内
(
じやうない
)
に
入
(
い
)
り、
266
母
(
はは
)
と
結託
(
けつたく
)
して
権威
(
けんゐ
)
を
揮
(
ふる
)
ふに
於
(
おい
)
ては、
267
吾
(
わが
)
王室
(
わうしつ
)
は
風前
(
ふうぜん
)
の
灯火
(
ともしび
)
も
同様
(
どうやう
)
で
御座
(
ござ
)
いませう。
268
宣伝使
(
せんでんし
)
の
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
なれど、
269
之
(
これ
)
許
(
ばか
)
りは
即答
(
そくたふ
)
する
訳
(
わけ
)
には
参
(
まゐ
)
りませぬ』
270
ジヤンク『
恐
(
おそ
)
れ
乍
(
なが
)
ら、
271
王
(
わう
)
様
(
さま
)
を
始
(
はじ
)
め
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
に
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げます。
272
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
も
有
(
あ
)
れ、
273
千草姫
(
ちぐさひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
心
(
こころ
)
を
汲取
(
くみと
)
り、
274
彼
(
か
)
れキユーバーをお
免
(
ゆる
)
しなさつたが
可
(
よ
)
からうかと
存
(
ぞん
)
じます。
275
万々一
(
まんまんいち
)
再
(
ふたた
)
び
脱線
(
だつせん
)
的
(
てき
)
行動
(
かうどう
)
を
取
(
と
)
るに
於
(
おい
)
ては、
276
容赦
(
ようしや
)
なく
再
(
ふたた
)
び
投獄
(
とうごく
)
すれば
可
(
よ
)
いぢや
御座
(
ござ
)
いませぬか。
277
及
(
およ
)
ばず
乍
(
なが
)
ら、
278
此
(
この
)
ジヤンク、
279
余生
(
よせい
)
を
王室
(
わうしつ
)
に
捧
(
ささ
)
げ、
280
一身
(
いつしん
)
を
賭
(
と
)
して
国家
(
こくか
)
を
守
(
まも
)
る
考
(
かんが
)
へで
御座
(
ござ
)
いますから』
281
王
(
わう
)
『イヤ、
282
それを
聞
(
き
)
いて
安心
(
あんしん
)
致
(
いた
)
した。
283
左守
(
さもり
)
284
右守
(
うもり
)
の
両柱
(
ふたはしら
)
共
(
とも
)
に、
285
此
(
この
)
度
(
たび
)
の
戦
(
たたか
)
ひに
於
(
おい
)
て
他界
(
たかい
)
なし、
286
棟梁
(
とうりやう
)
の
臣
(
しん
)
なきを
心
(
こころ
)
私
(
ひそ
)
かに
歎
(
なげ
)
いてゐた
矢先
(
やさき
)
、
287
智勇
(
ちゆう
)
絶倫
(
ぜつりん
)
なる
汝
(
なんぢ
)
が、
288
一身
(
いつしん
)
を
賭
(
と
)
して
都
(
みやこ
)
に
止
(
とど
)
まり、
289
吾
(
わが
)
国家
(
こくか
)
を
守
(
まも
)
つてくれるとあらば
何
(
なに
)
をか
云
(
い
)
はむ。
290
キユーバーの
処置
(
しよち
)
は
汝
(
なんぢ
)
に
一任
(
いちにん
)
する。
291
能
(
よ
)
きに
取
(
とり
)
計
(
はか
)
らへよ』
292
ジヤ『
早速
(
さつそく
)
の
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
、
293
有難
(
ありがた
)
う
存
(
ぞん
)
じまする。
294
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
、
295
ジヤンクの
此
(
この
)
処置
(
しよち
)
に
就
(
つ
)
いては、
296
チツと
許
(
ばか
)
りお
気
(
き
)
に
入
(
い
)
りますまいが、
297
ここは
少時
(
しばらく
)
此
(
この
)
老臣
(
らうしん
)
に
御
(
お
)
任
(
まか
)
せ
下
(
くだ
)
さいませ』
298
チウ『
余
(
よ
)
は
此
(
この
)
問題
(
もんだい
)
に
就
(
つい
)
ては
何
(
なに
)
も
言
(
い
)
はない。
299
余
(
よ
)
は
余
(
よ
)
としての
一
(
ひと
)
つの
考
(
かんが
)
へを
持
(
も
)
つてゐる』
300
照国別
(
てるくにわけ
)
は
立
(
たち
)
上
(
あが
)
り、
301
音吐
(
おんと
)
朗々
(
らうらう
)
として
歌
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
した。
302
『
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
303
善悪
(
ぜんあく
)
邪正
(
じやせい
)
を
立分
(
たてわ
)
ける
304
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
305
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
306
只
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
307
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
せ
聞直
(
ききなほ
)
せ
308
世
(
よ
)
の
過
(
あやま
)
ちは
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
せ
309
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
梅
(
うめ
)
の
花
(
はな
)
310
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
神
(
かみ
)
の
国
(
くに
)
311
開
(
ひら
)
いて
散
(
ち
)
りて
実
(
み
)
を
結
(
むす
)
ぶ
312
月日
(
つきひ
)
と
土
(
つち
)
の
恩
(
おん
)
を
知
(
し
)
れ
313
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
生神
(
いきがみ
)
は
314
高天原
(
たかあまはら
)
に
神集
(
かむつど
)
ふ
315
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
316
御霊
(
みたま
)
幸
(
さきは
)
ひましませよ
317
旭
(
あさひ
)
は
照
(
てる
)
とも
曇
(
くも
)
る
共
(
とも
)
318
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つ
共
(
とも
)
虧
(
か
)
くる
共
(
とも
)
319
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
む
共
(
とも
)
320
誠
(
まこと
)
の
力
(
ちから
)
は
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
321
誠
(
まこと
)
の
力
(
ちから
)
は
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
322
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
323
御霊
(
みたま
)
幸
(
さきは
)
ひましませよ』
324
と
謡
(
うた
)
ひ
了
(
をは
)
り、
325
舞
(
ま
)
ひをさめた。
326
此
(
この
)
言霊
(
ことたま
)
に
一同
(
いちどう
)
は
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
ち、
327
何事
(
なにごと
)
も
神
(
かみ
)
のまにまに
任
(
まか
)
すこととなり、
328
此
(
この
)
宴席
(
えんせき
)
を
無事
(
ぶじ
)
閉
(
と
)
づることとなつた。
329
(
大正一四・八・二四
旧七・五
於丹後由良秋田別荘
松村真澄
録)
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