霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第九章 千代(ちよ)の鶴(つる)〔一九〇三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第75巻 天祥地瑞 寅の巻 篇:第2篇 国魂出現 よみ(新仮名遣い):くにたましゅつげん
章:第9章 千代の鶴 よみ(新仮名遣い):ちよのつる 通し章番号:1903
口述日:1933(昭和8)年11月17日(旧09月30日) 口述場所:水明閣 筆録者:谷前清子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年2月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
神々の祈願のかいあって、生代比女は安らかに御子を産み落とした。この御子産みを助け功あったのは、産玉の神であった。
生まれた御子の名は、千代鶴姫の命と名づけられた。
顕津男の神は喜んで、大前に感謝の神嘉言を宣り上げた。そして、御子誕生の嬉しさを歌に歌った。
玉野比女は祝いの歌を歌い、生代比女は嬉しさと感謝の歌を歌った。
圓屋比古の神は、御子産みを終えた述懐を歌い、自分の新しい職掌である三笠山の国守に発っていった。
他の神々は、それぞれ神業をひとつ終えた述懐と国魂神誕生のめでたさを歌い、黄昏になったところで、各々寝所に帰って休んだ。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:0000-00-00 00:00:00 文字数:4395 OBC :rm7509
愛善世界社版: 八幡書店版:第13輯 329頁 修補版: 校定版:152頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 顕津男(あきつを)の神(かみ)始(はじ)め、002玉野(たまの)比女(ひめ)の神(かみ)、003生代(いくよ)比女(ひめ)の神(かみ)、004其(そ)の他(た)の神々(かみがみ)は、005玉野宮(たまのみや)の大前(おほまへ)に生言霊(いくことたま)の祈願(きぐわん)をこらし給(たま)へば、006生代(いくよ)比女(ひめ)の神(かみ)はここにいよいよ月(つき)足(た)らひ日(ひ)経(た)ちて、007玉(たま)の御子(みこ)を安々(やすやす)と産(う)み落(おと)し給(たま)ひける。
008 この御子産(みこう)みの神業(みわざ)を助(たす)け奉(まつ)りたるは、009産玉(うぶだま)の神(かみ)にぞありける。
010 生(あ)れませる御子(みこ)の御名(みな)を、011千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)の命(みこと)と称(とな)へ奉(たてまつ)る。
012 顕津男(あきつを)の神(かみ)は、013御子(みこ)の生(あ)れませる瑞祥(ずゐしやう)を喜(よろこ)び給(たま)ひて、014大御前(おほみまへ)に感謝(ゐやひ)の神嘉言(かむよごと)を宣(の)らせ給(たま)ふ。
 
015『掛巻(かけまく)も綾(あや)に畏(かしこ)き、016玉藻山(たまもやま)の下津(したつ)岩根(いはね)に宮柱(みやばしら)太敷(ふとしき)立(た)て、017高天原(たかあまはら)に千木高(ちぎたか)知(し)りて鎮(しづ)まりいます玉野宮(たまのみや)の大神(おほかみ)の大前(おほまへ)に、018慎(つつし)み敬(ゐやま)ひ畏(かしこ)み畏(かしこ)みも白(まを)さく。019八十日(やそか)日(ひ)はあれ共(ども)、020今日(けふ)の吉(よ)き日(ひ)の吉(よ)き時(とき)に、021千代(ちよ)万代(よろづよ)と栄(さか)え果(は)てなき、022真鶴(まなづる)の国(くに)の貴(うづ)の真秀良場(まほらば)玉藻(たまも)の山(やま)の頂上(いただき)に、023清(すが)しくも天降(あも)り鎮(しづま)りいます主(ス)の大御神(おほみかみ)天之(あまの)峯火夫(みねひを)の神(かみ)の大前(おほまへ)に感謝言(ゐやひごと)奉(たてまつ)る。024抑々(そもそも)此(これ)の真鶴(まなづる)の国(くに)は未(いま)だ地(つち)稚(わか)く、025朝夕(あしたゆふべ)の御霧(みきり)は時(とき)じくに立(た)ち籠(こ)め、026月日(つきひ)の光(ひかり)さへ折々(をりをり)に曇(くも)らひぬるを、027生言霊(いくことたま)の御稜威(みいづ)によりて国魂神(くにたまがみ)と神定(かむさだ)めてし千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)の命(みこと)は、028ここに目出度(めでたく)大御(おほみ)産声(うぶこゑ)を挙(あ)げさせ給(たま)ひぬ。029故此(かれこれ)を以(も)て大御前(おほみまへ)に海河(うみかは)山野(やまぬ)の種々(くさぐさ)の美味物(うましもの)を八足(やたり)の机代(つくゑしろ)に置(お)き足(たら)はして、030御子(みこ)の生(お)ひたちを守(まも)らせ給(たま)へと、031天(あめ)に跼(せぐくま)り地(つち)に蹐(ぬきあし)して恐(かしこ)み畏(かしこ)み願(ね)ぎ奉(まつ)るさまを、032平(たひら)けく安(やす)らけく聞召(きこしめ)し相諾(あひうづな)ひ給(たま)ひて、033天(あめ)と地(つち)とのあらむ限(かぎ)り、034たまきはる生命(いのち)永久(とは)に生(お)ひ栄(さか)えて大御依(おほみよ)さしの神業(みわざ)に仕(つか)へしめ給(たま)へと、035恐(かしこ)み畏(かしこ)みもこひのみ奉(まつ)らくと白(まを)す。
036天地(あめつち)も一度(いちど)に開(ひら)く心地(ここち)かな
037国魂神(くにたまがみ)は今(いま)生(あ)れましぬ
038呱々(ここ)の声(こゑ)聞(き)くもさやけし玉藻山(たまもやま)の
039玉野(たまの)宮居(みやゐ)に月日(つきひ)かがよふ
040八重垣(やへがき)となりて包(つつ)みし深霧(ふかぎり)も
041産声(うぶごゑ)とともに晴(は)れ渡(わた)りける
042天地(あめつち)の開(ひら)く思(おも)ひや家鶏(かけ)の声(こゑ)
043御子(みこ)の泣(な)かせる声(こゑ)につれつつ
044千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)命(みこと)の行末(ゆくすゑ)に幸(さち)あれと
045玉藻(たまも)の山(やま)の聖所(すがど)に祈(いの)るも
046主(ス)の神(かみ)の依(よ)さし給(たま)ひし神業(かむわざ)を
047やうやく終(を)へて御子(みこ)生(あ)れましぬ
048生(あ)れませる御子(みこ)の面(おもて)を眺(なが)むれば
049真玉(まだま)白玉(しらたま)のよそほひなるも
050月(つき)と日(ひ)になぞらへ得(う)べき二(ふた)つの目(め)も
051澄(す)みきりてあり神(かみ)のいさをに
052つんもりと姿(すがた)正(ただ)しき鼻(はな)の峰(みね)
053二(ふた)つの穴(あな)もほどほどにして
054澄(す)みきらふ玉(たま)の泉(いづみ)の口許(くちもと)に
055紅(くれなゐ)さして薫(かを)りこそすれ
056紅梅(こうばい)の露(つゆ)にほころぶ御子(みこ)の口(くち)の
057そのやさしさに我(われ)見(み)とれける
058兎(と)も角(かく)も真鶴山(まなづるやま)の国柱(くにばしら)
059生(あ)れます今日(けふ)は嬉(うれ)しかりけり
060真鶴(まなづる)の国(くに)の栄(さかえ)を言祝(ことほ)ぎて
061千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)の命(みこと)生(あ)れける
062真鶴(まなづる)の国(くに)の司(つかさ)と生(あ)れませる
063千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)の太(ふと)りたるかも』
064 玉野(たまの)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
065『玉藻山(たまもやま)ふくれ上(あが)りて空(そら)高(たか)き
066これの聖所(すがど)に御子(みこ)生(あ)れましぬ
067生(あ)れませる千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)の命(みこと)はも
068真鶴国(まなづるくに)の御柱(みはしら)なりける
069生代(いくよ)比女(ひめ)神(かみ)の功績(いさをし)なかりせば
070国魂神(くにたまがみ)は生(あ)れまさざるを
071天(あめ)も地(つち)も今日(けふ)は一入(ひとしほ)澄(す)みきりて
072生(あ)れます御子(みこ)を寿(ことほ)ぎにけり
073天(あま)渡(わた)る月日(つきひ)の光(かげ)もさやかなり
074国津柱(くにつはしら)の生(あ)れましぬれば
075主(ス)の神(かみ)の神業(みわざ)に後(おく)れし吾(われ)にして
076今日(けふ)の喜(よろこ)びたへがてに思(おも)ふ
077今日(けふ)よりは玉野(たまの)宮居(みやゐ)に額(ぬか)づきて
078まことの限(かぎ)り仕(つか)へ奉(まつ)らむ
079千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)神(かみ)の命(みこと)の生(お)ひ先(さ)きに
080幸(さち)多(おほ)かれと日夜(にちや)を祈(いの)らむ
081白梅(しらうめ)の花(はな)はいみじく香(かを)るなり
082これの聖所(すがど)に姫(ひめ)生(あ)れまして
083真鶴(まなづる)は今日(けふ)の喜(よろこ)びことほぐか
084常磐(ときは)の松(まつ)に群(む)れつうたへり
085家鶏鳥(かけどり)は時(とき)じく歌(うた)ひ姫(ひめ)命(みこと)の
086その生(お)ひ立(た)ちを寿(ことほ)ぐがに聞(きこ)ゆ
087白駒(しらこま)の嘶(いなな)き高(たか)く聞(きこ)ゆなり
088御子(みこ)生(あ)れませる朝(あした)の庭(には)に
089真鶴(まなづる)の国(くに)の四方(よも)八方(やも)包(つつ)みたる
090深霧(ふかぎり)晴(は)れて月日(つきひ)は照(て)らふ
091昼月(ひるづき)の光(かげ)白々(しらじら)と久方(ひさかた)の
092空(そら)にすみきりのぞかせ給(たま)ふ』
093 生代(いくよ)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
094『浮雲(うきぐも)の空(そら)にそびゆる玉藻山(たまもやま)の
095聖所(すがど)に御子(みこ)は生(あ)れましにけり
096顕津男(あきつを)の神(かみ)の神言(みこと)の水火(いき)こりて
097国魂神(くにたまがみ)と命(みこと)生(あ)れましぬ
098国魂(くにたま)の御子(みこ)の泣(な)かせる産声(うぶごゑ)は
099天津(あまつ)御空(みそら)にひびき渡(わた)れり
100六合(よもやも)にひびき渡(わた)りし言霊(ことたま)は
101国魂神(くにたまがみ)の産声(うぶごゑ)なりけり
102今日(けふ)よりは真鶴(まなづる)の国(くに)もかたらかに
103いと安(やす)らかに栄(さか)え行(ゆ)くかも
104産玉(うぶだま)の神(かみ)の守(まも)りに千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)の
105命(みこと)は安(やす)く生(あ)れましにける
106神々(かみがみ)は言(い)ふも更(さら)なり後(のち)の世(よ)の
107人(ひと)にも幸(さち)あれ産玉(うぶだま)の厳(いづ)
108産玉(うぶだま)の神(かみ)は今日(けふ)より万代(よろづよ)の
109末(すゑ)の末(すゑ)まで産屋(うぶや)守(も)りませ
110昔(むかし)よりためしもあらぬ高山(たかやま)の
111尾根(をね)に生(あ)れます御子(みこ)は気高(けだか)き
112うち仰(あふ)ぎ御子(みこ)の面(おも)ざし眺(なが)むれば
113顕津男(あきつを)の神(かみ)によくも似(に)ませる
114言霊(ことたま)の水火(いき)と水火(いき)とのむつび合(あ)ひて
115生(あ)れます御子(みこ)のうるはしきかも
116産声(うぶごゑ)を始(はじ)めて聞(き)きしたまゆらに
117わが魂線(たましひ)は笑(ゑ)み栄(さか)えける
118果(はて)しなき望(のぞ)み抱(いだ)きて果(はて)しなき
119この国原(くにはら)に栄(さか)えむとぞ思(おも)ふ
120千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)神(かみ)の命(みこと)を朝夕(あさゆふ)に
121守(まも)りて国(くに)を治(をさ)めむとぞ思(おも)ふ
122わが恋(こひ)はつもり積(つも)りて千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)の
123国魂神(くにたまがみ)と生(な)り出(い)でにけり
124はしけやし国魂神(くにたまがみ)の御(おん)声(こゑ)に
125四方(よも)の雲霧(くもきり)立(た)ち去(さ)りにけり
126天(あま)渡(わた)る天津(あまつ)陽光(ひかげ)もさやかなり
127白梅(しらうめ)薫(かを)るこれの聖所(すがど)は
128万代(よろづよ)の末(すゑ)の末(すゑ)まで国魂神(くにたまがみ)の
129御稜威(みいづ)照(て)れよと吾(われ)は祈(いの)るも
130朝夕(あさゆふ)に主(ス)の大神(おほかみ)を祈(いの)りてし
131むくいは今日(けふ)の喜(よろこ)びなりける
132真鶴(まなづる)の山(やま)に帰(かへ)りて国魂神(くにたまがみ)を
133永久(とは)にはごくみ育(そだ)て守(まも)らむ』
134 遠見男(とほみを)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
135『瑞御霊(みづみたま)神(かみ)に仕(つか)へて今(いま)ここに
136この喜(よろこ)びに会(あ)ひにけらしな
137東雲(しののめ)と真鶴(まなづる)の国(くに)を治(をさ)めゆく
138吾(われ)は嬉(うれ)しも命(みこと)生(あ)れましぬ
139白駒(しらこま)の嘶(いなな)き強(つよ)く家鶏鳥(かけどり)の
140鳴(な)く音(ね)さやけし御子(みこ)生(あ)れし今日(けふ)は
141常磐樹(ときはぎ)の松(まつ)の梢(こずゑ)にむらがりて
142神世(みよ)をことほぐ真鶴(まなづる)の声(こゑ)
143玉藻山(たまもやま)千条(ちすぢ)の滝(たき)の音(おと)冴(さ)えて
144吹(ふ)く風(かぜ)すがし宮(みや)の清庭(すがには)
145種々(くさぐさ)のなやみ苦(くる)しみしのびつつ
146御子(みこ)を生(う)ませり顕津男(あきつを)の神(かみ)は
147八十年(やそとせ)を待(ま)たせ給(たま)ひし玉野(たまの)比女(ひめ)の
148御心(みこころ)思(おも)へば嬉(うれ)し悲(かな)しも
149玉野(たまの)比女(ひめ)の御手代(みてしろ)となりし生代(いくよ)比女(ひめ)
150神(かみ)は功(いさを)を立(た)て給(たま)ひけり
151滝(たき)の音(おと)もいとさやさやに聞(きこ)え来(く)る
152宮居(みやゐ)の庭(には)はいとも清(すが)しき』
153 圓屋(まるや)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
154『玉手姫(たまてひめ)命(みこと)を守(まも)る吾(われ)ながら
155千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)の生(あ)れに会(あ)ひける
156圓屋(まるや)比古(ひこ)神(かみ)は御魂(みたま)を現(あらは)して
157瑞(みづ)の御霊(みたま)に従(したが)ひ来(きた)りぬ
158御子産(みこう)みの業(わざ)をへ給(たま)ふ今日(けふ)よりは
159急(いそ)ぎ帰(かへ)らむ三笠(みかさ)の山(やま)に
160三笠山(みかさやま)の百神(ももがみ)等(たち)はわが帰(かへ)り
161待(ま)ちわぶるらむ空(そら)を仰(あふ)ぎて
162いざさらば化身(けしん)のわれは帰(かへ)るべし
163瑞(みづ)の御霊(みたま)よすこやかにませ
164百神(ももがみ)の御前(みまへ)に白(まを)す吾(われ)こそは
165圓屋(まるや)比古神(ひこがみ)の御魂(みたま)なるぞや
166圓屋(まるや)比古(ひこ)神(かみ)の御魂(みたま)は右左(みぎひだり)
167二(ふた)つに分(わか)れて守(まも)りゐたりき
168いざさらば三笠(みかさ)の山(やま)に帰(かへ)るべし
169百神(ももがみ)等(たち)よすこやかなれかし
170千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)命(みこと)の生(お)ひ先(さき)を朝夕(あさゆふ)に
171吾(われ)は祈(いの)らむ三笠(みかさ)の山(やま)に』
172 斯(か)く述懐歌(じゆつくわいか)を歌(うた)ひ終(をは)り、173圓屋(まるや)比古(ひこ)の神(かみ)は白駒(しらこま)の背(せ)に跨(またが)りて玉藻(たまも)の山(やま)を下(くだ)り、174一目散(いちもくさん)に雲(くも)を霞(かすみ)と駆(か)け出(い)で給(たま)ふぞ雄々(をを)しけれ。
175 国中(くになか)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
176『久方(ひさかた)の天(あめ)は晴(は)れたりあらがねの
177地(つち)は澄(す)み澄(す)み射照(いて)らひにけり
178天地(あめつち)も開(ひら)くる思(おも)ひ今日(けふ)の日(ひ)の
179千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)の生(あ)れまし目出度(めでた)し
180真鶴(まなづる)の国(くに)の柱(はしら)と生(あ)れませる
181瑞(みづ)の御霊(みたま)の御子(みこ)ぞうるはし
182美(うるは)しく雄々(をを)しくやさしくましまして
183国魂神(くにたまがみ)と生(あ)れます貴御子(うづみこ)よ
184玉藻山(たまもやま)廻(めぐ)れる四方(よも)の国原(くにはら)も
185今日(けふ)の吉(よ)き日(ひ)に霧(きり)晴(は)れ渡(わた)りぬ
186常磐樹(ときはぎ)の松(まつ)にむらがる真鶴(まなづる)の
187鳴(な)く音(ね)に千代(ちよ)のひびきありける
188東雲(しののめ)の空(そら)に鳴(な)きたつ家鶏鳥(かけどり)の
189声(こゑ)清(すが)しもよ御子(みこ)生(あ)れし今日(けふ)は
190駿馬(はやこま)の嘶(いなな)き殊(こと)に美(うるは)しも
191千代(ちよ)万代(よろづよ)のこゑをそろへて
192たまきはる御子(みこ)の生命(いのち)の永(なが)かれと
193御名(みな)賜(たま)ひけむ千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)の命(みこと)と
194真鶴(まなづる)の国(くに)の司(つかさ)は生(あ)れましぬ
195恐(おそ)れつつしみ朝夕(あさゆふ)仕(つか)へむ
196四方(よも)八方(やも)に朝夕(あしたゆふべ)の霧(きり)立(た)ちて
197小暗(をぐら)き国原(くにはら)今日(けふ)より晴(は)れなむ
198四方(よも)八方(やも)に霧(きり)なす湯気(ゆげ)の立昇(たちのぼ)る
199わが国原(くにはら)の果(はて)もなきかな
200果(はて)しなく拡(ひろ)ごり拡(ひろ)ごり限(かぎ)りなき
201稚国原(わかくにはら)を知食(しら)す御(おん)子(こ)よ
202今日(けふ)よりは姫(ひめ)の命(みこと)の御尾前(みをさき)に
203仕(つか)へて国土(くに)を拓(ひら)きゆくべし』
204 宇礼志穂(うれしほ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
205『産声(うぶごゑ)を清(すが)しく聞(き)きぬ吾(われ)はただ
206心(こころ)をどりてたへがたく思(おも)ふ
207喜(よろこ)びの極(きは)みなるかも真鶴(まなづる)の
208国魂神(くにたまがみ)は生(うま)れましける
209嬉(うれ)しさは何(なん)にたとへむ物(もの)もなし
210かたじけなしと思(おも)ふのみなる
211天(あま)渡(わた)る月日(つきひ)の駒(こま)も歩(あゆ)み止(と)めて
212みそなはすらむ生(あ)れし貴御子(うづみこ)を
213千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)命(みこと)の生(あ)れまし寿(ことほ)ぐか
214今日(けふ)は梅ケ香(うめがか)殊(こと)に芳(かんば)し
215白梅(しらうめ)の花(はな)の梢(こずゑ)に鳴(な)きたつる
216迦陵(かりよう)頻伽(びんが)の声(こゑ)も冴(さ)えたり
217天(あま)そそるこれの高根(たかね)に産声(うぶごゑ)を
218挙(あ)げたる御子(みこ)の姿(すがた)たふとし
219白玉(しらたま)のいすみ渡(わた)らひ赤玉(あかだま)の
220輝(かがや)き給(たま)ふ千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)の命(みこと)よ
221赤玉(あかだま)は緒(を)さへ光(ひか)れど白玉(しらたま)の
222御子(みこ)のよそほひ尊(たふと)かりけり
223たまきはる生命(いのち)を永久(とは)に保(たも)ちまして
224真鶴(まなづる)の国(くに)を知食(しろ)しめしませ』
225 美波志(みはし)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
226『天津(あまつ)日(ひ)もこれの聖所(すがど)に降(お)りまして
227今日(けふ)の吉(よ)き日(ひ)を照(て)らしましつつ
228天(あま)渡(わた)る月読(つきよみ)の舟(ふね)は白玉(しらたま)の
229光(かげ)澄(す)みきらへり白雲(しらくも)のあなたに
230白雲(しろくも)のとばり破(やぶ)れて青雲(あをくも)の
231肌(はだ)ふかぶかと輝(かがや)きにけり
232主(ス)の神(かみ)の澄(す)みきらひたる御霊(みたま)かも
233この貴御子(うづみこ)の面(おも)ざし清(すが)しも
234足引(あしびき)の玉藻(たまも)の山(やま)は高(たか)けれど
235御子(みこ)の功(いさを)の高(たか)きに及(およ)ばず
236顕津男(あきつを)の神(かみ)の御稜威(みいづ)の尊(たふと)さを
237生(あ)れます御子(みこ)の面(おも)に見(み)るかな
238生代(いくよ)比女(ひめ)恋(こひ)の炎(ほのほ)の燃(も)え立(た)ちて
239固(かた)まり生(あ)れし貴(うづ)の御子(みこ)かも
240天界(かみくに)は愛(あい)と善(ぜん)との世(よ)にしあれば
241いかで恐(おそ)れむ恋(こひ)の思(おも)ひを
242天界(かみくに)に恋(こひ)てふ恋(こひ)は多(おほ)けれど
243かかるためしは始(はじ)めなりける』
244 産玉(うぶだま)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
245『千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)命(みこと)の産声(うぶごゑ)まつぶさに
246聞(き)きしゆ心(こころ)とみに和(なご)めり
247平(たひら)けくいと安(やす)らけく産(う)みませし
248生代(いくよ)の比女(ひめ)の幸(さち)を思(おも)へり
249真鶴(まなづる)の国(くに)の要(かなめ)よ生代(いくよ)比女(ひめ)の
250誠(まこと)の恋(こひ)は御子(みこ)を生(う)ませり
251水火(いき)と水火(いき)結(むす)び合(あは)せに生(あ)れませし
252御子(みこ)は国魂神(くにたまがみ)にましける』
253 魂機張(たまきはる)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
254『たまきはる生命(いのち)を永久(とは)に守(まも)るべし
255国魂神(くにたまがみ)と生(あ)れます御子(みこ)を
256玉(たま)の緒(を)の生命(いのち)ながらへ天界(かみくに)に
257若返(わかがへ)りつつ道(みち)に仕(つか)へむ
258八雲(やくも)立(た)つ玉藻(たまも)の山(やま)の頂上(いただき)に
259天地(あめつち)開(ひら)く神声(みこゑ)聞(き)くかな
260駿馬(はやこま)は御子(みこ)の生(あ)れます幸(さちは)ひを
261うたふが如(ごと)く嘶(いなな)きて居(を)り
262真鶴(まなづる)の声(こゑ)勇(いさ)ましく聞(きこ)ゆなり
263常磐(ときは)の松(まつ)のこずゑこずゑに
264迦陵(から)頻伽(びんが)時(とき)じく歌(うた)ひ家鶏(かけ)の鳴(な)く
265この神山(かみやま)は神(かみ)の御舎(みあらか)よ
266玉野宮(たまのみや)の清庭(すがには)に立(た)ちて国魂(くにたま)の
267神(かみ)の出(い)でまし寿(ことほ)ぐ今日(けふ)かな
268白梅(しらうめ)の花(はな)の装(よそほ)ひ永久(とこしへ)に
269幸(さき)くあれませ千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)の命(みこと)よ
270千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)堅磐(かきは)常磐(ときは)の松ケ枝(まつがえ)に
271月日(つきひ)宿(やど)して幸(さき)くいませよ』
272 結比合(むすびあはせ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
273『水火(いき)と水火(いき)結(むす)び合(あは)せて生(あ)れませる
274国魂神(くにたまがみ)のすがた清(すが)しも
275生代(いくよ)比女(ひめ)瑞(みづ)の御霊(みたま)に水火(いき)合(あは)せ
276結(むす)び合(あは)せて生(あ)れます御子(みこ)はも
277主(ス)の神(かみ)の神言(みこと)畏(かしこ)み吾(われ)はしも
278結(むす)び合(あは)せの神(かみ)と仕(つか)へし
279むつかしき恋(こひ)てふ恋(こひ)もやすやすと
280遂(と)げさせ給(たま)はむ結比合(むすびあはせ)の神(かみ)は
281山(やま)と海(うみ)結(むす)び合(あは)せて燃(も)え上(あが)る
282木草(きぐさ)も湯気(ゆげ)も神世(みよ)をうるほす
283国魂(くにたま)の神(かみ)生(あ)れましぬ生代(いくよ)比女(ひめ)の
284神(かみ)のよろこび思(おも)はるるかも
285一度(ひとたび)は雄猛(をたけ)び給(たま)ひし生代(いくよ)比女(ひめ)も
286なごみて御子(みこ)を生(う)ませ給(たま)ひぬ
287玉野湖(たまのこ)の波(なみ)ををどらせ荒風(あらかぜ)を
288吹(ふ)かせすさびし比女(ひめ)思(おも)ひ出(だ)すも
289今(いま)となりて白玉(しらたま)の御子(みこ)を生(う)みましし
290恋(こひ)のすさびをあやしと思(おも)ふ
291神(かみ)を恋(こ)ふるならば生代(いくよ)の比女(ひめ)のごと
292つらぬき通(とほ)せ御子(みこ)を生(う)むまで』
293 美味素(うましもと)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
294『生(あ)れませる国魂神(くにたまがみ)の御(おん)魂(たま)に
295美(うま)し味(あぢ)はひおくり奉(まつ)らむ
296美味素(うましもと)の神(かみ)のさづくる味(あぢ)はひに
297四方(よも)の神々(かみがみ)従(まつ)ろひこそすれ
298味(あぢ)はひのなき御魂(みたま)ならば如何(いか)にして
299この国原(くにはら)の治(をさ)まるべきやは
300天界(かみくに)のよろづのものはことごとく
301味(あぢ)はひありて栄(さか)ゆくものなる』
302 神々(かみがみ)は各自(おのもおのも)述懐(じゆつくわい)を歌(うた)ひ給(たま)ひて、303黄昏(たそがれ)になりければ、304各自(おのもおのも)寝所(ふしど)に入(い)りて休(やす)ませ給(たま)ひぬ。
305(昭和八・一一・一七 旧九・三〇 於水明閣 谷前清子謹録)
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