霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一八章 神(かみ)の道行(みちゆき)〔一九一二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第75巻 天祥地瑞 寅の巻 篇:第4篇 千山万水 よみ(新仮名遣い):せんざんばんすい
章:第18章 神の道行 よみ(新仮名遣い):かみのみちゆき 通し章番号:1912
口述日:1933(昭和8)年11月29日(旧10月12日) 口述場所:水明閣 筆録者:森良仁 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年2月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
一行は馬上にて歌を歌いながら進んでいく。
先頭の宇礼志穂の神は、真鶴国固成の功績を歌い、今は天地に黒雲かかると聞く西方の国を開くために、万里の駒にまたがり、千里の荒野原を行く、と歌う。また、先遣隊として行った美波志比古の神によって道が踏み固められていることにも言及する。
顕津男の神はしばらく駒を止めて、玉藻山を仰ぎつつ、来し方を顧みる述懐の歌を歌い、これまでの出来事と比女神たちを偲んだ。
四柱の従者神たちはそれぞれ、述懐の歌を歌って続いた。また一同、西方の国に立つ曲神の雲を払わんと、抱負を歌った。
すると顕津男の神は、一人真っ先に進みながら、歌を歌った。従者神たちに頼る自分の心を厳しく自戒し、神業をなすのは他ならぬ自分独りであり、濁った多くの言霊よりも、一つの良き言霊で曲津神を言向け和す、という決意を新たにした。
従者神たちは、自らおごった心がなかったか畏れかしこみ、顕津男の神の言霊の威力への信頼を新たにする述懐の歌を歌った。
顕津男の神を先頭に、一行は大野原を進んで行く。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:0000-00-00 00:00:00 文字数:4193 OBC :rm7518
愛善世界社版: 八幡書店版:第13輯 381頁 修補版: 校定版:341頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 宇礼志穂(うれしほ)の神(かみ)は馬上(ばじやう)豊(ゆたか)に、002顕津男(あきつを)の神(かみ)の御前(みまへ)に立(た)ちて進(すす)ませながら、003御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
004『紫微天界(たかあまはら)の中(なか)にして
005𪫧怜(うまら)に委曲(つばら)に固(かた)まりし
006真鶴国(まなづるくに)の尊(たふと)さよ
007顕津男(あきつを)の神(かみ)出(い)でまして
008未(ま)だ地(つち)稚(わか)き国原(くにはら)を
009生言霊(いくことたま)の幸(さちは)ひに
010造(つく)らせ固(かた)めなし給(たま)ひ
011国魂神(くにたまがみ)と定(さだ)まりし
012千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)の命(みこと)まで
013生(う)み落(おと)しまし漸々(やうやう)に
014玉藻(たまも)の山(やま)を立(た)ち出(い)でて
015黒雲(くろくも)ふさがる常闇(とこやみ)の
016西方(にしかた)の国土(くに)生(う)まさむと
017出(い)でます今(いま)の旅立(たびだち)を
018送(おく)る吾(われ)こそ楽(たの)しけれ
019天地(てんち)に黒雲(くろくも)ふさがりて
020行方(ゆくへ)もわかぬ西方(にしかた)の
021国土(くに)に曲神(まがかみ)五月蠅(さばへ)なし
022万(よろづ)の災(わざはひ)日(ひ)に月(つき)に
023起(おこ)ると聞(き)けば主(ス)の神(かみ)は
024瑞(みづ)の御霊(みたま)を遣(つか)はして
025堅磐(かきは)常磐(ときは)の天津国(あまつくに)を
026開(ひら)かせ給(たま)ふぞ尊(たふと)けれ
027道(みち)の隈手(くまで)も恙(つつが)なく
028万里(ばんり)の駒(こま)に跨(またが)りて
029胡砂(こさ)吹(ふ)く風(かぜ)をあびながら
030縹渺(へうべう)千里(せんり)の荒野原(あらのはら)
031右左(みぎりひだり)に鳴(な)く虫(むし)の
032音(ね)もさやさやに草(くさ)の根(ね)に
033響(ひび)き渡(わた)りて肝(きも)向(むか)ふ
034心(こころ)は勇(いさ)み駒(こま)勇(いさ)み
035出(い)で立(た)つ今日(けふ)ぞ楽(たの)しけれ
036嗚呼(ああ)惟神(かむながら)々々(かむながら)
037美波志(みはし)比古神(ひこがみ)は今(いま)何処(いづこ)
038岐美(きみ)のみゆきを守(まも)らむと
039先(さき)に立(た)たせる功績(いさをし)は
040今(いま)目(ま)の前(あたり)見(み)えにつつ
041岐美(きみ)がみゆきの道芝(みちしば)は
042弥固(いやかた)まりて駿馬(はやこま)の
043蹄(ひづめ)を運(はこ)ぶあらがねの
044地(つち)を進(すす)むも安(やす)けかり
045嗚呼(ああ)惟神(かむながら)々々(かむながら)
046恩頼(みたまのふゆ)の幸(さちは)ひて
047今日(けふ)の御空(みそら)に雲(くも)もなく
048吹(ふ)き来(く)る風(かぜ)もなごやかに
049吾(われ)等(ら)が面(おも)をなでて行(ゆ)く
050げに天国(てんごく)の旅立(たびだち)と
051思(おも)へば楽(たの)し吾(われ)は今(いま)
052日南(ひなた)の河(かは)の河岸(かはぎし)に
053岐美(きみ)を送(おく)りて進(すす)むなり
054岐美(きみ)を送(おく)りて進(すす)むなり』
055 顕津男(あきつを)の神(かみ)は暫(しば)し駒(こま)を止(とど)めて、056来(こ)し方(かた)を顧(かへり)み給(たま)ひつつ、057遠(とほ)く霞(かす)める玉藻山(たまもやま)を仰(あふ)ぎて、058御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
059『振返(ふりかへ)り眺(なが)むる空(そら)に玉藻山(たまもやま)は
060紫雲(しうん)の衣(ころも)着(つ)けてかすめり
061紫(むらさき)の雲(くも)のとばりを引(ひ)き廻(まは)し
062玉野(たまの)の比女(ひめ)は宮仕(みやづか)へまさむ
063真鶴(まなづる)の山(やま)遠(とほ)みつつ見(み)えねども
064生代(いくよ)の比女(ひめ)は安(やす)くいまさむ
065わが道(みち)の隈手(くまで)も恙(つつが)なかりけり
066主(ス)の大神(おほかみ)の守(まも)らす恵(めぐみ)に
067仰(あふ)ぎ見(み)れば行手(ゆくて)遥(はろ)けし西方(にしかた)の
068国土(くに)の御空(みそら)に黒雲(くろくも)立(た)つも
069日々(かか)並(な)べて神生(かみう)みの神業(わざ)に仕(つか)へ行(ゆ)く
070我(われ)はせはしき御霊(みたま)なるかも
071醜神(しこがみ)の醜(しこ)の災(わざはひ)免(のが)れつつ
072我(われ)は今日(けふ)まで進(すす)み来(こ)しはや
073今(いま)となりて高日(たかひ)の宮(みや)に仕(つか)へます
074八柱神(やはしらがみ)の偲(しの)ばれにける
075東南(とうなん)の空(そら)を眺(なが)めて八柱(やはしら)の
076比女神(ひめがみ)われを偲(しの)ぶなるらむ
077一日(ひとひ)だも御霊(みたま)安(やす)むるいとまなく
078旅(たび)に立(た)つ身(み)は苦(くる)しかりけり
079国土(くに)を生(う)み神(かみ)を生(う)まむと出(い)でて来(こ)し
080我(われ)は世(よ)の味(あぢ)つぶさに覚(さと)りぬ』
081 宇礼志穂(うれしほ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
082『瑞御霊(みづみたま)神(かみ)の功(いさを)を今更(いまさら)に
083さとりけるかな大野(おほの)の旅路(たびぢ)に
084四方(よも)八方(やも)に雲(くも)立(た)ちのぼり月(つき)も日(ひ)も
085かくろひし国土(くに)を照(て)らし行(ゆ)く岐美(きみ)よ
086百鳥(ももどり)の声(こゑ)は千歳(ちとせ)をうたひつつ
087八千草(やちぐさ)の根(ね)に虫(むし)鳴(な)き渡(わた)る
088若草(わかぐさ)の萌(も)ゆる大野(おほの)を進(すす)み行(ゆ)く
089岐美(きみ)の行手(ゆくて)に幸(さち)あれと思(おも)ふ
090もうもうと霧(きり)立(た)ち昇(のぼ)る国原(くにはら)を
091照(て)らして出(い)でます岐美(きみ)の旅(たび)はも
092仰(あふ)ぎ見(み)れば眼(まなこ)くらまむ顕津男(あきつを)の
093神(かみ)より出(い)づる貴(うづ)の光(ひかり)は
094御空(みそら)行(ゆ)く大鳥(おほとり)小鳥(ことり)悉(ことごと)く
095岐美(きみ)の御後(みあと)に従(したが)ひ奉(まつ)るも
096幾千万(かずかぎり)の鶴(つる)は翼(つばさ)を揃(そろ)へつつ
097岐美(きみ)がみゆきを送(おく)りて舞(ま)へるも
098大空(おほぞら)は明(あか)らみにけり真鶴(まなづる)の
099数多(あまた)の翼(つばさ)白(しろ)く光(ひか)りて』
100 魂機張(たまきはる)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
101『駒(こま)止(と)めて四方(よも)の国形(くにがた)眺(なが)むれば
102目路(めぢ)の限(かぎ)りは雲界(うんかい)なりけり
103雲界(うんかい)の中(なか)に漂(ただよ)ふ心地(ここち)して
104岐美(きみ)の御後(みあと)に従(したが)ひ行(ゆ)くも
105雲(くも)の浪(なみ)立(た)ち騒(さわ)ぎつつ岐美(きみ)が行(ゆ)く
106西方(にしかた)の国土(くに)は遥(はろ)けくもあるか
107真鶴(まなづる)は千歳(ちとせ)をうたひ駿馬(はやこま)は
108万世(よろづよ)いななく今日(けふ)の旅(たび)なり
109岐美(きみ)が生命(いのち)幾億万年(かきはときは)の末(すゑ)までも
110国土(くに)守(まも)るべく保(たも)たせ給(たま)へ
111たまきはる神(かみ)は守(まも)らむ瑞御霊(みづみたま)の
112生命(いのち)を永久(とは)に若返(わかがへ)らせつつ
113若返(わかがへ)り若返(わかがへ)りつつ幾億万世(よろづよ)の
114岐美(きみ)は神国(みくに)の柱(はしら)とならせよ
115行先(ゆくさき)に八頭(やつがしら)八尾(やつを)の大蛇神(をろちがみ)
116岐美(きみ)が出(い)でまし迎(むか)へまちつつ
117この大蛇(をろち)幾山脈(いくやまなみ)に跨(またが)りて
118怪(あや)しき水火(いき)を四方(よも)に放(はな)てる
119西方(にしかた)の国土(くに)を曇(くも)らす大蛇神(をろちがみ)の
120水火(いき)祓(はら)はむは言霊(ことたま)の幸(さち)なり
121わが力(ちから)如何(いか)で及(およ)ばむ大蛇神(をろちがみ)の
122怪(あや)しき水火(いき)に立(た)ち向(むか)ひなば
123わが岐美(きみ)の生言霊(いくことたま)の御水火(みいき)には
124醜(しこ)の大蛇(をろち)も服従(まつろ)ひ奉(まつ)らむ
125日南河(ひなたがは)を前(まへ)に控(ひか)へて醜(しこ)の大蛇(をろち)は
126山(やま)の姿(すがた)と化(な)りて待(ま)たなむ
127山(やま)と化(な)り河(かは)とも化(な)りて醜神(しこがみ)は
128岐美(きみ)のみゆきを艱(なや)めむとすも
129如何(いか)ならむ事(こと)のありともたまきはる
130岐美(きみ)の生命(いのち)は永久(とは)に落(おと)さじ
131果(はて)しなき神業(みわざ)に仕(つか)ふる岐美(きみ)なれば
132醜(しこ)の大蛇(をろち)もものの数(かず)かは』
133 結比合(むすびあはせ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
134『久方(ひさかた)の御空(みそら)は高(たか)し地(つち)広(ひろ)し
135この中国(なかくに)を行(ゆ)きます岐美(きみ)はも
136仰(あふ)ぎ見(み)れば玉藻(たまも)の山(やま)は雲(くも)の上(へ)に
137その頂上(いただき)をかがやかし居(を)り
138玉藻山(たまもやま)傾斜面(なぞへ)に一処(ひととこ)黒(くろ)き影(かげ)の
139走(はし)るは雲(くも)のうつれるなるらむ
140ちぎれ雲(ぐも)ちぎれぬ雲(くも)のはざまより
141玉藻(たまも)の山(やま)の肌(はだ)は見(み)ゆるも
142玉藻山(たまもやま)の貴(うづ)の姿(すがた)はくづれつつ
143遠(とほ)く来(き)にけり大野(おほの)が原(はら)を
144立(た)ち迷(まよ)ふ霧雲(きりぐも)の野(の)を照(て)らしつつ
145出(い)でます岐美(きみ)の御稜威(みいづ)は高(たか)し
146玉藻山(たまもやま)立(た)ち出(い)で給(たま)ひしわが岐美(きみ)は
147光(ひかり)ますます強(つよ)まりにけり
148かくの如(ごと)畏(かしこ)き岐美(きみ)と知(し)らずして
149吾(われ)は光(ひかり)に包(つつ)まれにけむ
150今(いま)となりてわが目(め)覚(さ)めしか瑞御霊(みづみたま)の
151強(つよ)き光(ひかり)を仰(あふ)ぎぬるかな
152行先(ゆくさき)に八岐(やまた)の大蛇(をろち)すむと聞(き)きて
153わが魂線(たましひ)は立(た)ち勇(いさ)むなり
154わが岐美(きみ)の言霊(ことたま)の水火(いき)の光(ひかり)にて
155服従(まろつ)ひ奉(まつ)らむ醜(しこ)の大蛇(をろち)は
156山(やま)となり又(また)河(かは)となり雲(くも)となりて
157道(みち)にさやらむ醜(しこ)の大蛇(をろち)は
158心(こころ)して行(ゆ)きませわが岐美(きみ)山(やま)も河(かは)も
159醜(しこ)の大蛇(をろち)の化身(けしん)なりせば
160行先(ゆくさき)を醜(しこ)の大蛇(をろち)はいろいろに
161身(み)を変(へん)じつつさやらむとすも
162河(かは)も沼(ぬま)も木草(きぐさ)も悉(ことごと)言問(ことと)ひて
163世(よ)を乱(みだ)さむとするぞゆゆしき
164五月蠅(さばへ)なす醜神(しこがみ)等(たち)の雄猛(をたけ)びを
165祓(はら)ふは岐美(きみ)の言霊(ことたま)あるのみ
166いすくはし生言霊(いくことたま)の御光(みひかり)に
167この地(ち)の上(うへ)の曲津(まが)は亡(ほろ)びむ
168天界(てんかい)は言霊(ことたま)の国(くに)よ意志(いし)の国(くに)よ
169想念(さうねん)の国(くに)よ果(はて)のなき国土(くに)
170意志(いし)想念(さうねん)曇(くも)りて醜(しこ)の醜神(まがかみ)は
171生(うま)れ出(い)づると聞(き)くぞ恐(おそ)ろし
172掛巻(かけまく)も畏(かしこ)き皇(すめら)大神(おほかみ)の
173水火(いき)の光(ひかり)を力(ちから)ともがな
174主(ス)の神(かみ)の依(よ)さしの儘(まま)に旅立(たびだ)たす
175岐美(きみ)の行手(ゆくて)に功(いさを)あれかし
176八柱(やはしら)の女神(めがみ)を宮(みや)に残(のこ)し置(お)きて
177御子生(みこう)みに立(た)たすヒーローの岐美(きみ)よ』
178 美味素(うましもと)の神(かみ)は馬上(ばじやう)豊(ゆたか)に御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
179『駒(こま)止(と)めて岐美(きみ)と休(やす)らふ大野原(おほのはら)に
180吹(ふ)き渡(わた)る風(かぜ)も言霊(ことたま)の水火(いき)よ
181心地(ここち)よくわが面(おも)を吹(ふ)く科戸辺(しなどべ)の
182風(かぜ)は正(まさ)しく神(かみ)の水火(いき)なり
183八千草(やちぐさ)の蔭(かげ)に潜(ひそ)みて鳴(な)く虫(むし)の
184声(こゑ)も残(のこ)らず言霊(ことたま)の水火(いき)なり
185岐美(きみ)が功(いさを)慕(した)ひて玉藻(たまも)の山鶴(やまづる)は
186翼(つばさ)揃(そろ)へて見送(みおく)り来(きた)るも
187何処(どこ)となく白梅(しらうめ)香(かを)りさやさやに
188音楽(おんがく)響(ひび)く岐美(きみ)の旅立(たびだ)ち
189玉藻山(たまもやま)西(にし)吹(ふ)く風(かぜ)に梅(うめ)桜(さくら)
190清(きよ)き花弁(はなびら)舞(ま)ひ来(きた)るかも
191久方(ひさかた)の雲井(くもゐ)の上(うへ)にも梅(うめ)咲(さ)くか
192岐美(きみ)の頭上(づじやう)に花(はな)びらの散(ち)る
193心地(ここち)よく澄(す)みきらひたる大空(おほぞら)の
194したびを伊行(いゆ)く吾(われ)ぞ楽(たの)しき
195昼月(ひるづき)の光(かげ)は御空(みそら)に白々(しろじろ)と
196円(まろ)き姿(すがた)を浮(うか)べ給(たま)へり
197昼(ひる)ながら彼方(かなた)此方(こなた)の大空(おほぞら)に
198輝(かがや)き初(そ)めぬ大(おほい)なる星(ほし)は
199駒(こま)止(と)めてゆるゆる憩(いこ)ひ玉(たま)へかし
200この行先(ゆくさき)に曲津(まが)の待(ま)てれば
201曲神(まがかみ)を言向(ことむ)け和(やは)す言霊(ことたま)の
202水火(いき)を固(かた)めて用意(ようい)せむかな
203地(つち)稚(わか)き八雲(やくも)立(た)ちたつ国原(くにはら)は
204醜(しこ)の魔神(まがみ)の棲所(すみか)なりけり
205月(つき)も日(ひ)も照男(てるを)の神(かみ)の治(をさ)めます
206西方(にしかた)の国土(くに)は未(ま)だ地(つち)稚(わか)し
207地(つち)稚(わか)き西方(にしかた)の国土(くに)の彼方(あち)此方(こち)に
208湧(わ)き立(た)つ雲(くも)は魔神(まがみ)を隠(かく)せる
209日南河(ひなたがは)越(こ)ゆれば最早(もはや)西方(にしかた)の
210曲津(まが)の棲(す)む国(くに)常闇(とこやみ)の国土(くに)よ
211いざさらば轡(くつわ)を並(なら)べて進(すす)むべし
212岐美(きみ)の光(ひかり)に包(つつ)まれにつつ』
213 顕津男(あきつを)の神(かみ)は駒(こま)に鞭(むち)うち、214宇礼志穂(うれしほ)の神(かみ)を後方(うしろ)に廻(まは)らせ、215真先(まつさき)に進(すす)ませながら、216御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
217『国魂神(くにたまがみ)生(う)む我(われ)なれば御供神(みともがみ)
218如何(いか)で頼(たよ)らむ独神(ひとり)進(すす)まばや
219大勢(おほぜい)の力(ちから)を借(か)らむをぢなさを
220恥(は)ぢらひ我(われ)は前(さき)に進(すす)まむ
221我(われ)は只(ただ)一人(ひとり)進(すす)まむ百神(ももがみ)よ
222心(こころ)に任(まか)せて従(したが)ふもよし
223言霊(ことたま)の水火(いき)の力(ちから)を学(まな)ぶべく
224従(したが)ひ来(く)るも我(われ)さまたげじ
225森羅万象(もろもろ)は言霊(ことたま)の水火(いき)に生(うま)れたる
226思(おも)へば何(なに)かわれ恐(おそ)れめや
227我(われ)も亦(また)言霊(ことたま)の水火(いき)を照(て)らしつつ
228醜(しこ)の曲霊(まがひ)を言向(ことむ)け和(やは)さむ
229濁(にご)りたる数(かず)の言霊(ことたま)放(はな)つより
230良(よ)き言霊(ことたま)の一(ひと)つが強(つよ)し
231禊(みそぎ)して清(きよ)め澄(す)ませし言霊(ことたま)に
232我(われ)は和(なご)めむ醜(しこ)の魔神(まがみ)を
233百神(ももがみ)の厚(あつ)き心(こころ)は思(おも)ひやれど
234我(あ)は国土(くに)生(う)みよ一人(ひとり)進(すす)まむ』
235 斯(か)く歌(うた)ひ終(をは)り、236駒(こま)の蹄(ひづめ)の音(おと)カツカツと嘶(いなな)き高(たか)く勇(いさ)ましく、237鈴(すず)の音(ね)もさやさやに、238若草(わかぐさ)もゆる大野原(おほのがはら)を前(さき)に立(た)たせ進(すす)ませ給(たま)ふ。239四柱(よはしら)の神(かみ)は恐(おそ)る恐(おそ)る御後方(みあと)に従(したが)ひながら続(つづ)かせ給(たま)ふ。
240 宇礼志穂(うれしほ)の神(かみ)の御歌(みうた)。
241『知(し)らず識(し)らず心(こころ)傲(おご)りてわが岐美(きみ)の
242前(さき)に立(た)ちたる心(こころ)を悔(く)ゆるも
243愚(おろか)なる吾(われ)にもあるか吾(わ)が岐美(きみ)の
244光(ひかり)も知(し)らず前(さき)に立(た)ちける
245百神(ももがみ)の言霊(ことたま)よりもわが岐美(きみ)の
246生言霊(いくことたま)は輝(かがや)くものを
247言霊(ことたま)の水火(いき)完(また)からずして吾(われ)は今(いま)
248御前(みさき)に仕(つか)へし愚(おろか)さを悔(く)ゆ
249真鶴(まなづる)の国(くに)は広(ひろ)けし言霊(ことたま)の
250水火(いき)を清(きよ)めて仕(つか)へ奉(まつ)らばや
251わが岐美(きみ)の尊(たふと)き光(ひかり)みながらに
252気付(きづ)かざりしよ愚(おろか)なる吾(われ)は
253山(やま)も野(の)も木草(きぐさ)もすべて言霊(ことたま)の
254水火(いき)に生(うま)ると始(はじ)めて覚(さと)りぬ
255千代鶴(ちよつる)姫(ひめ)命(みこと)も岐美(きみ)の清(きよ)らけき
256水火(いき)に生(あ)れますを思(おも)へば畏(かしこ)し
257わが岐美(きみ)の生(う)ませ給(たま)ひし真鶴(まなづる)の
258国土(くに)を汚(けが)すと思(おも)へば恐(おそ)ろし
259わが御魂(みたま)濁(にご)らひあれば言霊(ことたま)の
260水火(いき)も曇(くも)りてはづかしきかも
261今日(けふ)よりは禊(みそぎ)の神事(わざ)を励(はげ)みつつ
262心(こころ)みがきて言霊(ことたま)生(い)かさむ』
263 魂機張(たまきはる)の神(かみ)の御歌(みうた)。
264『思(おも)ひきや瑞(みづ)の御霊(みたま)のわが岐美(きみ)は
265水火(いき)の光(ひかり)の神(かみ)にますとは
266わが岐美(きみ)の雄健(をたけ)び言葉(ことば)聞(き)きしより
267わが魂線(たましひ)はをののきにけり
268天地(あめつち)の神(かみ)の御用(ごよう)に仕(つか)へしと
269誇(ほこ)り居(ゐ)たりし心(こころ)の恥(は)づかし
270天地(あめつち)の神(かみ)の御用(ごよう)に使(つか)はれ居(ゐ)ながらも
271知(し)らず識(し)らずに心(こころ)傲(おご)りぬ
272主(ス)の神(かみ)の恵(めぐみ)によりて朝夕(あさゆふ)を
273神(かみ)に仕(つか)ふるわが身(み)なりしよ
274果(はて)しなき生命(いのち)の種(たね)を抱(かか)へつつ
275言霊(ことたま)の岐美(きみ)を覚(さと)らざりける
276永久(とこしへ)の生命(いのち)保(たも)ちて瑞御霊(みづみたま)
277国魂(くにたま)生(う)まさむ万世(よろづよ)までも
278恥(は)づかしく吾(われ)なりにけり知(し)らず識(し)らず
279心(こころ)傲(おご)りて光(ひかり)を忘(わす)れし』
280 結比合(むすびあはせ)の神(かみ)の御歌(みうた)。
281『駒(こま)の背(せ)に跨(またが)り御供(みとも)に仕(つか)へ行(ゆ)く
282今日(けふ)のわが身(み)は楽(たの)しかりけり
283天(あめ)も地(つち)も澄(す)みきらひたる国原(くにはら)を
284鶴(つる)に送(おく)られ虫(むし)に迎(むか)へられつ
285真鶴(まなづる)の幾千万(もも)の翼(つばさ)に送(おく)られて
286国土生(くにう)みの供(とも)に仕(つか)ふる嬉(うれ)しさ
287わが為(ため)を思(おも)はず国(くに)の御(おん)為(ため)に
288尽(つく)すは善(ぜん)とわれは思(おも)へり
289わが為(ため)を思(おも)ひて国(くに)を次(つぎ)にする
290心(こころ)は正(まさ)しく悪(あく)なりにけり
291善悪(よしあし)の差別(けぢめ)を立(た)てて今日(けふ)よりは
292神(かみ)の御供(みとも)につかへ奉(まつ)らむ
293よしやよし荒野(あらの)の果(はて)に倒(たふ)るとも
294神国(みくに)の為(ため)には厭(いと)はざるべし
295国土(くに)を生(う)み御子(みこ)生(う)みませるわが岐美(きみ)の
296御供(みとも)に仕(つか)ふるは清(きよ)き御魂(みたま)なるべきを
297わが魂(たま)はひたに曇(くも)れば言霊(ことたま)の
298水火(いき)も濁(にご)りて恥(は)づかしきかも
299わが岐美(きみ)の神宣(みのり)なければ今日(けふ)よりは
300曲津(まが)に向(むか)ひて言霊(ことたま)宣(の)らじ』
301 美味素(うましもと)の神(かみ)の御歌(みうた)。
302『天地(あめつち)の中(なか)に抱(いだ)かれ進(すす)み行(ゆ)く
303岐美(きみ)の御供(みとも)は畏(かしこ)かりけり
304西方(にしかた)の国土(くに)ははろけし八雲(やくも)立(た)つ
305雲井(くもゐ)の空(そら)も濁(にご)らひて居(を)り
306曇(くも)りたる西方(にしかた)の国土(くに)を照(て)らします
307岐美(きみ)の功(いさを)の大(おほい)さを思(おも)ふ
308わが岐美(きみ)は言霊神(ことたまがみ)にましましぬ
309出(い)で行(ゆ)く先(さき)に輝(かがや)き給(たま)へば
310天地(あめつち)の水火(いき)を合(あは)せて進(すす)み行(ゆ)く
311岐美(きみ)の旅路(たびぢ)にさやる神(かみ)なし』
312 神々(かみがみ)は各自(おのもおのも)述懐歌(じゆつくわいか)をうたひながら、313果(はて)しも知(し)らぬ大野原(おほのがはら)を、314顕津男(あきつを)の神(かみ)の御後方(みあと)に従(したが)ひ心(こころ)いそいそ進(すす)ませ給(たま)ふぞ畏(かしこ)けれ。
315(昭和八・一一・二九 旧一〇・一二 於水明閣 森良仁謹録)
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