霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一九章 日南河(ひなたがは)〔一九一三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第75巻 天祥地瑞 寅の巻 篇:第4篇 千山万水 よみ(新仮名遣い):せんざんばんすい
章:第19章 日南河 よみ(新仮名遣い):ひなたがわ 通し章番号:1913
口述日:1933(昭和8)年11月29日(旧10月12日) 口述場所:水明閣 筆録者:谷前清子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年2月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
ここに語られている物語は、おとぎ話でなく、伝説や伝奇物語でもなく、言霊学上から見た史詩(シャンソン)である。
『霊界物語』は、人に伝わったものではなく、天地に充満した水火(いき)の妙用原理にもとづき、宇宙創造の状態より、諸般の事象について説き示したものである。
この物語を著すにあたっては、日夜神界の枢機に参じ、宇宙万有発生の歴史的事実に至るまで開示したものなので、現代の学者たちが怪しく思うのも当然のことである。
未だ誰も見たことも聞いたこともなく、伝わっていない宇宙の物語であり、有史以前の事象であるので、誰も善悪の批判を加えることはできないのだ。
惟神(かむながら)の道徳上の義務に服し、天界に奉仕し、自己を制して自己以外のひとたちに寛大な神人(ひと)は、実際上、精神の上で自由なのであり、一切万事、公共のために活動して、成功しないことは一つもないのである。
天之峯火夫の神が皇神(すめかみ)として君臨したまう紫微天界は、未だに霊と言霊の世界であり、形のあるものはただ、気体が凝ったものだけである。だから、意思想念の世界ともいうべきものである。
善良な意思想念は、善良な神人の姿と現れる。そして、醜悪な意思想念が醜悪な形となって現れるのも、自然の理なのである。
大蛇、鬼、半鬼、巨人、山、河、岩石等、さまざまな形の神々が多数あるのも、意思想念があわられた姿なのであれば、驚くにあたらないのである。
顕津男の神は、七日七夜、旅を続けて、濁流がとうとうと流れる日南(ひなた)河の南岸に着いた。このとき、日は三十度の位置に昇り、こうこうと輝いて、日南河の波を金銀色に彩らせた。
顕津男の神は、激流を眺め、スウヤトゴル山を前に旅の述懐の歌を歌った。
そして、河の中に波をせき止めてそびえる岩を曲神の化身と見破り、言霊歌を歌うと、巨巖はたちまち蛇体となって逃げていった。すると、河の水は減っていき、向こう岸まで渡れるほどになった。
顕津男の神は駒にまたがり、最後まで見送りに従ってきた四柱の神々に、別れの歌を歌った。
宇礼志穂の神、魂機張の神、結比合の神、美味素の神は、顕津男の神の無事を祈る歌をそれぞれ歌った。
顕津男の神が悠々と向こうの岸へ渡り上ったのを見届けると、見送りの四柱の神々は真鶴国の聖地へと戻っていった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:0000-00-00 00:00:00 文字数:2829 OBC :rm7519
愛善世界社版: 八幡書店版:第13輯 388頁 修補版: 校定版:369頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 ロシヤの俚言(りげん)に、002お伽噺(とぎばなし)は作(つく)り事(ごと)にして、003伝説(でんせつ)は実際(じつさい)あつた事(こと)なりと言(い)つてゐるのは、004要(えう)するに伝説(でんせつ)の確実性(かくじつせい)を言(い)つたものである。005わが唱(とな)ふる物語(ものがたり)は、006お伽噺(とぎばなし)でもなく、007伝説(でんせつ)でもなく、008伝奇物語(ロマン)でもなく、009確実(かくじつ)なる言霊学(ことたまがく)上(じやう)より見(み)たる史詩(シヤンソン)である。010伝説(でんせつ)とは後世(こうせい)の人々(ひとびと)の口(くち)に伝(つた)はり、011其(そ)の事実(じじつ)が次第(しだい)々々(しだい)に誇張(こちやう)され、012又(また)は濃厚(のうこう)の度(ど)を重(かさ)ねて面白(おもしろ)く出来上(できあが)つてゐるが、013この『霊界(れいかい)物語(ものがたり)』は何人(なんぴと)にも伝(つた)はつたものでなく、014只単(ただたん)に天地(てんち)に充満(じうまん)せる水火(すゐくわ)の水火(いき)の妙用(めうよう)原理(げんり)にもとづき、015宇宙(うちう)創造(さうざう)の状態(じやうたい)より、016諸般(しよはん)の事象(じしやう)に就(つ)いて説示(せつじ)したるものである。
017 この物語(ものがたり)を著(あらは)すに就(つ)いては、018日夜(にちや)神界(しんかい)の枢機(すうき)に参(さん)じ、019宇宙(うちう)万有(ばんいう)発生(はつせい)の歴史(れきし)的(てき)事実(じじつ)に到(いた)るまで開示(かいじ)したるものなれば、020現代(げんだい)学者(がくしや)の耳目(じもく)には怪(あや)しく思(おも)はるるは当然(たうぜん)である。
021 未(いま)だ見(み)ざる、022聞(き)かざる、023伝(つた)はらざる幽玄(いうげん)微妙(びめう)の宇宙(うちう)の物語(ものがたり)にして、024有史(いうし)以前(いぜん)の事象(じしやう)なれば、025何人(なんぴと)も善悪(ぜんあく)の批判(ひはん)を加(くは)ふる余地(よち)はなかるべし。026万々一(まんまんいち)この物語(ものがたり)に対(たい)して、027批判(ひはん)を加(くは)ふる者(もの)あらば、028そは迂愚(うぐ)の骨頂(こつちやう)にして、029論議(ろんぎ)すべき価値(かち)なきものである。
030 惟神(かむながら)的(てき)道徳(だうとく)上(じやう)の義務(ぎむ)に服(ふく)し、031天界(てんかい)に奉仕(ほうし)し、032自己(じこ)を制(せい)して自己(じこ)以外(いぐわい)に寛大(くわんだい)なる神人(ひと)は、033其(その)実際(じつさい)に於(おい)て精神(せいしん)上(じやう)の自由(じいう)を有(いう)し、034一切(いつさい)万事(ばんじ)公共(こうきやう)の為(ため)、035何一(なにひと)つ成(な)らざるはなきものである。036之(これ)に反(はん)し、037惟神(かむながら)的(てき)道徳(だうとく)上(じやう)の義務(ぎむ)を省(かへり)みず、038自己(じこ)の欲望(よくばう)にのみ執着(しふちやく)し、039自己(じこ)に寛大(くわんだい)に、040他(た)に対(たい)して残忍(ざんにん)である所(ところ)の神人(ひと)は、041其(そ)の実(じつ)運命(うんめい)の手(て)に縛(しば)られてゐるのである。
042 天之(あまの)峯火夫(みねひを)の神(かみ)の、043皇神(すめかみ)として君臨(くんりん)し給(たま)ふ紫微(しび)天界(てんかい)は、044未(いま)だ霊(れい)と言霊(ことたま)の世界(せかい)にして、045形(かたち)あるものは気体(きたい)の凝(こ)れるもののみなれば、046一(いつ)に意志(いし)想念(さうねん)の世界(せかい)と称(しよう)しても他(ほか)なき事(こと)である。047故(ゆゑ)に善良(ぜんりやう)なる意志(いし)想念(さうねん)は、048善良(ぜんりやう)なる神人(ひと)の姿(すがた)を現(げん)じ、049醜悪(しうあく)なる意志(いし)想念(さうねん)は、050最(もつと)も醜悪(しうあく)なる形(かたち)を現(げん)ずるも、051自然(しぜん)の理(ことわり)である。052八岐(やまた)の大蛇神(をろちがみ)あり、053十二(じふに)の頭(かしら)を持(も)つ鬼神(おにがみ)あり、054半鬼(はんおに)あり、055大山(たいざん)を懐(ふところ)に包(つつ)みて提(ひつさ)げ歩(ある)く如(ごと)き巨大(きよだい)なる神(かみ)あり、056山(やま)の姿(すがた)を為(な)し、057河(かは)の形(かたち)を為(な)し、058岩石(がんせき)の形(かたち)を現(げん)ずる神(かみ)等(たち)数多(あまた)あるも、059意志(いし)想念(さうねん)の現(げん)ずる姿(すがた)なのである。060我(わが)説(と)くところの物語(ものがたり)も、061種々(しゆじゆ)の神(かみ)、062動物(どうぶつ)の現(あらは)るる事(こと)あれども、063決(けつ)して怪(あや)しむに足(た)らずと知(し)るべし。
064 顕津男(あきつを)の神(かみ)は、065七日(なぬか)七夜(ななよ)の旅(たび)を重(かさ)ねて、066濁流(だくりう)滔々(たうたう)と漲(みなぎ)る、067幅(はば)広(ひろ)き水底(みなそこ)深(ふか)き日南河(ひなたがは)の南岸(なんがん)に着(つ)かせ給(たま)ひけるが、068この時(とき)早(はや)くも天津(あまつ)日(ひ)の神(かみ)は三十度(さんじふど)の位置(ゐち)に昇(のぼ)らせ給(たま)ひ、069晃々(くわうくわう)と輝(かがや)き渡(わた)りて、070日南河(ひなたがは)の速瀬(はやせ)の波(なみ)を、071金銀色(きんぎんいろ)に彩(いろど)らせ給(たま)ひける。
072 顕津男(あきつを)の神(かみ)は、073日南河(ひなたがは)の岸辺(きしべ)に駒(こま)を下(お)り立(た)ち、074激流(げきりう)を眺(なが)めて御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
075『日並(けなら)べて荒野(あらの)が原(はら)を渡(わた)り来(き)つ
076日南(ひなた)の河(かは)の岸辺(きしべ)に着(つ)きぬ
077滔々(たうたう)と流(なが)るる水(みづ)の波頭(なみがしら)に
078かがやく太陽(おほひ)の黄金色(こがねいろ)はも
079日南河(ひなたがは)黄金(こがね)白銀(しろがね)紫(むらさき)の
080波(なみ)を交(まじ)へて永遠(とは)に流(なが)るる
081目路(めぢ)はるか彼方(かなた)の岸(きし)に霞(かす)めるは
082大蛇(をろち)のすめるスウヤトゴルの山(やま)
083スウヤトゴルの山(やま)に立(た)ちたつ黒雲(くろくも)は
084曲神(まがみ)の水火(いき)か天(あめ)をにごせる
085駿馬(はやこま)は嘶(いなな)き勇(いさ)めど日南河(ひなたがは)
086流(なが)れを渡(わた)る術(すべ)もなきかな
087さりながらわが言霊(ことたま)に光(ひかり)あれば
088この河水(かはみづ)も暫(しば)しは引(ひ)かむ
089日並(けなら)べて昼夜(ちうや)の旅(たび)をつづけつつ
090諸神(ももがみ)も亦(また)つかれけるかな
091駿馬(はやこま)の脚(あし)を休(やす)めて今(いま)暫(しば)し
092河水(かはみづ)引(ひ)かむ時(とき)を待(ま)たむか
093足引(あしびき)の山(やま)はあなたに霞(かす)みをり
094燃(も)ゆるが如(ごと)く雲(くも)立(た)ち昇(のぼ)る
095真鶴(まなづる)の国(くに)の広原(ひろはら)渡(わた)り越(こ)えて
096今(いま)や進(すす)まむ西方(にしかた)の国土(くに)へ
097河中(かはなか)に波(なみ)せき止(と)めて聳(そび)え立(た)てる
098巌(いはほ)は曲(まが)の化身(けしん)なるらむ
099いざさらばわが言霊(ことたま)に払(はら)はばや
100醜(しこ)の大蛇(をろち)の化身(けしん)の巌(いはほ)。
101一(ひと)二(ふた)三(み)四(よ)五(いつ)六(むゆ)七(なな)八(や)九(ここの)十(たり)
102百(もも)千(ち)万(よろづ)千万(ちよろづ)の
103生言霊(いくことたま)の神々(かみがみ)は
104ここに天降(あも)りて醜神(しこがみ)の
105御魂(みたま)をきため給(たま)へかし
106国土(くに)を生(う)み御子生(みこう)みの旅(たび)にさやりゐる
107この曲神(まがかみ)は主(ス)の神(かみ)の
108神業(みわざ)にそむく醜大蛇(しこをろち)
109守(まも)らせ給(たま)へ神々(かみがみ)よ
110瑞(みづ)の御霊(みたま)の言霊(ことたま)に
111真心(まごころ)こめて願(ね)ぎ奉(まつ)る
112ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
113御霊(みたま)の幸(さち)を給(たま)へかし』
114 斯(か)く歌(うた)ひ給(たま)へば、115激流(げきりう)をせき止(と)めて、116峙(そばだ)ちし千引(ちびき)の巨巌(きよがん)は、117忽(たちま)ち水中(すゐちう)に沈(しづ)むよと見(み)る間(ま)に、118巨大(きよだい)なる蛇体(じやたい)となりて、119北側(きたがは)の岸辺(きしべ)にかけ上(あが)り、120忽(たちま)ち暴風雨(ばうふうう)を起(おこ)し、121黒雲(くろくも)に乗(の)り、122一目散(いちもくさん)に逃(に)げゆきぬ。
123 この巨巌(きよがん)の怪物(くわいぶつ)退(しりぞ)きしより、124河水(かはみづ)は次第(しだい)々々(しだい)にその量(りやう)を減(げん)じ、125時(とき)ならずして向(むか)つ岸辺(きしべ)に渡(わた)り得(う)る所(ところ)まで引(ひ)きたれば、126ここに顕津男(あきつを)の神(かみ)はひらりと駒(こま)に跨(またが)り、127河(かは)に向(むか)つて御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
128『主(ス)の神(かみ)の生言霊(いくことたま)の助(たす)けにて
129わが宣(の)る水火(いき)は輝(かがや)きしはや
130曲神(まがかみ)は千引(ちびき)の巌(いは)と身(み)を変(へん)じ
131わが行(ゆ)く道(みち)にさやりゐしかも
132わが目路(めぢ)のとどかぬ迄(まで)にいや広(ひろ)き
133河(かは)の流(なが)れもあせにけらしな
134言霊(ことたま)の水火(いき)の光(ひかり)の尊(たふと)さを
135今更(いまさら)ながら悟(さと)らひしはや
136この先(さき)は曲津(まがつ)のすさぶ醜(しこ)の国土(くに)よ
137心(こころ)そそぎてわれは進(すす)まむ
138四柱(よはしら)の神(かみ)勇(いさ)ましくわが後(あと)を
139守(まも)りて此処(ここ)に送(おく)り来(き)ませり
140四柱(よはしら)の神(かみ)よこれより帰(かへ)りませ
141真鶴(まなづる)国土(くに)を開(ひら)かむために
142いざさらば別(わか)れて行(ゆ)かむ西方(にしかた)の
143国土(くに)は真近(まぢか)に迫(せま)りけらしな』
144 ここに宇礼志穂(うれしほ)の神(かみ)は、145顕津男(あきつを)の神(かみ)の乗(の)らせる神馬(しんめ)の轡(くつわ)に手(て)をかけ乍(なが)ら、146御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
147『ヒーローの岐美(きみ)とは知(し)れど斯(か)くまでも
148光(ひか)りますとは思(おも)はざりしよ
149吾(われ)は今(いま)岐美(きみ)に別(わか)れむ苦(くる)しさに
150空(そら)にしられぬ雨(あめ)ぞ降(ふ)るなり
151いざさらばまめにおはして国土生(くにう)みの
152神業(みわざ)𪫧怜(うまら)に仕(つか)へませ岐美(きみ)よ
153いや広(ひろ)き日南(ひなた)の河(かは)の河水(かはみづ)も
154岐美(きみ)の言葉(ことば)にあせにけらしな』
155 魂機張(たまきはる)の神(かみ)は、156別(わか)れの御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
157『八十日(やそか)日(ひ)を岐美(きみ)に仕(つか)へて今(いま)此処(ここ)に
158別(わか)るる思(おも)へばさみしかりけり
159恙(つつが)なく道(みち)の隈手(くまで)を渡(わた)り来(き)て
160光(ひかり)の岐美(きみ)に別(わか)れむとすも
161真鶴(まなづる)の翼(つばさ)そろへて送(おく)りける
162この河岸(かはぎし)は国(くに)の境(さかひ)よ
163わが岐美(きみ)の生言霊(いくことたま)に醜神(しこがみ)の
164巌(いは)は砕(くだ)けて河(かは)あせにける
165斯(か)くの如(ごと)水火(いき)の光(ひかり)を満(み)たせます
166岐美(きみ)の行(ゆ)く先(さ)き思(おも)はるるかな
167果(はて)しなき思(おも)ひ抱(いだ)きて玉藻山(たまもやま)
168真鶴山(まなづるやま)に吾(われ)等(ら)は帰(かへ)らむ
169遠見男(とほみを)の神(かみ)に仕(つか)へて今日(けふ)よりは
170神国(みくに)守(まも)らむ安(やす)く思(お)ぼせよ』
171 結比合(むすびあはせ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
172『はろばろと岐美(きみ)を送(おく)りて今(いま)此処(ここ)に
173別(わか)ると思(おも)へば何(なに)か悲(かな)しき
174愛善(あいぜん)の国(くに)に悲(かな)しみなけれども
175今(いま)は涙(なみだ)の止(と)めどなきかも
176嬉(うれ)しさに又(また)悲(かな)しさに迸(ほとばし)る
177わが目(め)の涙(なみだ)いぶかしきかも
178スウヤトゴル山(やま)にひそめる曲神(まがかみ)を
179言向和(ことむけやは)すと出(い)でます岐美(きみ)はも
180山(やま)も河(かは)も巌(いは)もことごと醜神(しこがみ)の
181化身(けしん)なりせば心(こころ)し行(ゆ)きませ
182この河(かは)は高照山(たかてるやま)の溪々(たにだに)ゆ
183流(なが)ると思(おも)へば尊(たふと)かりけり
184日南河(ひなたがは)見(み)るにつけても思(おも)ふかな
185如衣(ゆくえ)の比女神(ひめがみ)神去(かむさ)りし日(ひ)を』
186 美味素(うましもと)の神(かみ)の御歌(みうた)。
187『高照(たかてる)の山(やま)より落(お)つる日南河(ひなたがは)の
188水(みづ)はあせけり生言霊(いくことたま)に
189河底(かはぞこ)の岩(いは)むら見(み)えて水浅(みづあさ)み
190大(おほ)き小(ちひ)さき魚族(うろくづ)はねをり
191魚族(うろくづ)も神(かみ)の水火(いき)より生(うま)れたる
192御魂(みたま)なりせばおろそかならじ
193いざさらば岐美(きみ)に別(わか)れむ真鶴(まなづる)の
194国(くに)治(をさ)むべく後(あと)にかへさむ
195さりながら向(むか)つ岸辺(きしべ)に着(つ)かすまで
196われは佇(たたず)み見(み)とどけ奉(まつ)らむ』
197 顕津男(あきつを)の神(かみ)は諸神(ももがみ)に答(こた)へて御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
198『種々(くさぐさ)の悩(なや)みしのぎてわが旅(たび)を
199送(おく)りし功(いさを)うれしみ思(おも)ふ
200玉野(たまの)比女(ひめ)生代(いくよ)比女神(ひめがみ)その外(ほか)の
201神(かみ)につたへよわが河越(かはごえ)を』
202 ここに顕津男(あきつを)の神(かみ)は諸神(ももがみ)に別(わか)れを告(つ)げ、203馬背(こまのせ)に鞭(むち)を加(くは)へ、204水(みづ)あせし河底(かはぞこ)を悠々(いういう)として、205またたく間(うち)に彼方(かなた)の岸(きし)に上(のぼ)らせ給(たま)ひければ、206四柱神(よはしらがみ)は安堵(あんど)の胸(むね)を撫(な)で下(おろ)し、207ひらりと駒(こま)に跨(またが)り、208元来(もとき)し道(みち)をたどりたどり、209両聖地(りやうせいち)をさして急(いそ)がせ給(たま)ひける。
210(昭和八・一一・二九 旧一〇・一二 於水明閣 谷前清子謹録)
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