霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一七章 西方(にしかた)の旅(たび)〔一九一一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第75巻 天祥地瑞 寅の巻 篇:第4篇 千山万水 よみ(新仮名遣い):せんざんばんすい
章:第17章 西方の旅 よみ(新仮名遣い):にしかたのたび 通し章番号:1911
口述日:1933(昭和8)年11月29日(旧10月12日) 口述場所:水明閣 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年2月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
古来、文学者たちが神世の物語を著すのに、史詩(シャンソン)と伝奇物語(ロマン)の二種類の様式を使ってきた。
史詩は歴史と空想の混じったものであり、伝奇物語は、史実を踏まえつつ、それをより濃厚な空想で味付けした物語である。
古今東西、神界に言及した多くの歴史物語が存在してきたが、『天祥地瑞』のように言霊を取り扱った書物はいまだかつてなかった。なぜなら、言霊学は深遠微妙、玄妙な学理であるから、並大抵の学者では理解することができなかったのである。
私(=王仁三郎)は大胆不敵にも、大宇宙の極元である言霊の活用に基づいて、宇宙の成立から神々の活動について、史詩の形式を借りて、その大要を述べようとしているのである。
天地茫漠として修理固成がまだなされていない時代、言霊のはたらきから発する意思想念の世界のことを説明すると、現代人には奇妙に感じることが多い。一定不変の形式をもたないので、神々の姿も、竜体・獣体・山岳など、さまざま違っている。なぜなら、意思想念そのものが現れているからである。
一方今日では、人間の形態が定まってしまったので、かえってその人の意思想念がどのようなものか、外から観察することが難しくなってしまった。正しい神の道により知恵正覚を得た人は、精神を看破することができるが、大多数の人には難しい。
そこで、主の大神は、ミロクの神柱を地上に下して、正しい教えを天下に施して人類の眼を覚まさせ、光らせ、悪魔の跳梁を絶滅させることで、ミロクの御世を樹立しようとなさっているのである。
さて、玉藻山に二人の女神を残して真鶴国を旅立った顕津男の神は、宇礼志穂の神、魂機張の神、結比合の神、美味素の神の四柱神を従者として、玉藻山の千条の滝が集まる大滝川に禊をした。そして、主の大神を伏し拝み、西方の国の国土造り・神生みの神業の完成を祈る歌を歌った。
従者神たちもそれぞれ、真鶴国の造営を省み喜びつつ、西方の国への旅立ちの決意を、それぞれ歌った。
宇礼志穂の神が案内に立ち、顕津男の神、そして残り三柱の従者神たちがそれに続いた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:0000-00-00 00:00:00 文字数:3250 OBC :rm7517
愛善世界社版: 八幡書店版:第13輯 376頁 修補版: 校定版:325頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 古来(こらい)文学者(ぶんがくしや)等(たち)が、002天地(てんち)開闢(かいびやく)以後(いご)の史実(しじつ)を説明(せつめい)せむとするに当(あた)り、003二(ふた)つの方法(はうはふ)を用(もち)ゐて来(き)た。004其(その)一(ひと)つは史詩(シヤンソン)であり、005其(その)一(ひと)つは伝奇物語(ロマン)であつた。006而(しか)して史詩(シヤンソン)は歴史(れきし)と空想(くうさう)との交錯(かうさく)であり、007伝奇物語(ロマン)は史的(してき)要素(えうそ)を、008より濃厚(のうこう)な空想(くうさう)で賦彩(ふさい)したものである。009ダンテの詩(し)の如(ごと)き、010又(また)は竹取(たけとり)物語(ものがたり)の如(ごと)きは、011総(すべ)て伝奇物語(ロマン)の形式(けいしき)を取(と)つたものである。012中(なか)にも史詩(シヤンソン)は其(その)大多数(だいたすう)を占(し)めて居(ゐ)たやうであるが、013後世(こうせい)に至(いた)つて学者(がくしや)達(たち)が散文体(さんぶんたい)に翻訳(ほんやく)し、014之(これ)を広(ひろ)く発表(はつぺう)するに至(いた)つたものである。015併(しか)しながら我国(わがくに)は言(い)ふも更(さら)なり、016泰西(たいせい)諸国(しよこく)に流布(るふ)さるる史的(してき)物語(ものがたり)にも、017英雄(えいゆう)、018神(かみ)、019悪魔(あくま)等(とう)を取扱(とりあつか)つて居(ゐ)るもの多(おほ)く、020吾(わ)が述(の)ぶる『天祥(てんしやう)地瑞(ちずゐ)』の如(ごと)く、021言霊(ことたま)を取扱(とりあつか)つた書籍(しよせき)は絶無(ぜつむ)である。022要(えう)するに言霊学(ことたまがく)は深遠(しんゑん)微妙(びめう)にして、023凡庸(ぼんよう)学者(がくしや)の脳髄(なうずゐ)に到底(たうてい)咀嚼(そしやく)し能(あた)はず、024又(また)夢(ゆめ)にも窺知(きち)するを得(え)ざる玄妙(げんめう)なる学理(がくり)なるが故(ゆゑ)に、025今日迄(こんにちまで)閑却(かんきやく)されて居(ゐ)たのである。026一知(いつち)半解(はんかい)の頭脳(づなう)をもつては、027到底(たうてい)言霊学(ことたまがく)を題材(だいざい)とする史詩(シヤンソン)又(また)は伝奇物語(ロマン)は絶対(ぜつたい)不可能(ふかのう)である。028私(わたし)は大胆(だいたん)にも不敵(ふてき)にも、029大宇宙(だいうちう)の極元(きよくげん)たる言霊(ことたま)の活用(くわつよう)に基(もと)づき、030宇宙(うちう)の成立(せいりつ)より、031神々(かみがみ)の御(ご)活動(くわつどう)に就(つ)いて、032史詩(シヤンソン)の形式(けいしき)を借(か)り、033弥々(いよいよ)茲(ここ)にその大要(たいえう)を述(の)べむとするものである。
034 未(いま)だ天地(てんち)茫漠(ばうばく)として修理(しうり)固成(こせい)の光(ひかり)輝(かがや)かざりし時代(じだい)の物語(ものがたり)にして、035言霊(ことたま)の妙用(めうよう)より発(はつ)する意志(いし)想念(さうねん)の世界(せかい)を説明(せつめい)せむとするものなれば、036現代人(げんだいじん)の目(め)より耳(みみ)より不可思議(ふかしぎ)に感(かん)ずる事(こと)最(もつと)も多(おほ)かるべし。037人間(にんげん)は神(かみ)の形(かたち)に造(つく)られたりと、038総(すべ)ての学者(がくしや)は言(い)つて居(ゐ)る。039故(ゆゑ)に神(かみ)は総(すべ)て人間(にんげん)の形(かたち)をなしたるものと想像(さうざう)して居(ゐ)る人々(ひとびと)が多(おほ)いのである。040然(しか)れども意志(いし)想念(さうねん)の情動(じやうどう)によりて、041最初(さいしよ)の世界(せかい)は一定(いつてい)不変(ふへん)なる形式(けいしき)を保(たも)つ事(こと)の出来(でき)ないのは明瞭(めいれう)なる真理(しんり)である。042竜体(りうたい)の神(かみ)もあれば獣体(じうたい)の神(かみ)もあり、043又(また)山岳(さんがく)の形(かたち)をなせる神(かみ)もあり、044十数箇(じふすうこ)の頭(かしら)を有(いう)する大蛇身(だいじやしん)もあり、045千態(せんたい)万様(ばんやう)である。046何故(なにゆゑ)なれば、047意志(いし)想念(さうねん)其(その)ものの形(かたち)の現(あらは)れであるからである。048人間(にんげん)の面貌(めんばう)は精神(せいしん)の索引(さくいん)なりと称(とな)ふるも此(この)理由(りゆう)である。049併(しか)しながら今日(こんにち)にては人間(にんげん)の形態(けいたい)定(さだ)まりたれば、050意志(いし)想念(さうねん)によりて其(その)体(たい)を変(へん)ぜず。051唯(ただ)面貌(めんばう)に変化(へんくわ)を来(きた)すのみとなつたので、052表面(へうめん)より見(み)ては其(その)性格(せいかく)を容易(ようい)に知(し)る事(こと)が出来(でき)なくなつて居(ゐ)る。053外面(げめん)如(によ)菩薩(ぼさつ)、054内心(ないしん)如(によ)夜叉(やしや)の如(ごと)き悪魔(あくま)の横行(わうかう)するのも、055善悪(ぜんあく)共(とも)に同一(どういつ)形態(けいたい)を備(そな)ふるに至(いた)りしより、056悪魔(あくま)に便宜(べんぎ)を与(あた)へて居(ゐ)るのである。057細心(さいしん)に注意(ちうい)する時(とき)は、058形態(けいたい)は人間(にんげん)なれども、059其(その)面貌(めんばう)に、060声音(せいおん)に、061動作(どうさ)に、062悪魔(あくま)の状態(じやうたい)を現(げん)ずるものなれども、063一般(いつぱん)の人間(にんげん)の目(め)よりは、064其(その)精神(せいしん)状態(じやうたい)の善悪(ぜんあく)を容易(ようい)に窺知(きち)する事(こと)が出来(でき)ないやうになつたのである。065正(ただ)しき神(かみ)の道(みち)を踏(ふ)み、066日夜(にちや)に魂(たま)を清(きよ)め、067智慧(ちゑ)証覚(しようかく)を得(え)たる真人間(まにんげん)の眼(まなこ)よりは、068容易(ようい)に之(これ)を観破(くわんぱ)する事(こと)が出来(でき)るのであれども、069盲(めくら)千(せん)人(にん)目明(めあ)き一人(ひとり)の世(よ)の譬(たとへ)に漏(も)れず、070大多数(だいたすう)の人(ひと)は欺(あざむ)かれ禍(わざは)ひにかかるものである。071茲(ここ)に主(ス)の大神(おほかみ)は、072ミロクの神柱(かむばしら)を地上(ちじやう)に下(くだ)して、073正(ただ)しき教(をしへ)を天下(てんか)に布(し)き施(ほどこ)し人類(じんるゐ)の眼(まなこ)を覚(さま)させ、074光(ひか)らせ、075悪魔(あくま)の跳梁(てうりやう)を絶滅(ぜつめつ)し、076以(もつ)てミロクの神世(みよ)を樹立(じゆりつ)せむとし給(たま)へるこそ、077有難(ありがた)き尊(たふと)き限(かぎ)りなれ。
078茲(ここ)に太元(おほもと)顕津男(あきつを)の神(かみ)は
079玉藻(たまも)の山(やま)の聖所(すがどこ)に
080二柱(ふたはしら)の女神(めがみ)残(のこ)しおき
081玉野(たまの)宮居(みやゐ)に礼辞(ゐやひごと)
082宣(の)り終(を)へまして悠々(いういう)と
083駒(こま)に跨(またが)り鈴(すず)の音(ね)も
084いと勇(いさ)ましく百神(ももがみ)に
085その御尾前(みをさき)を守(まも)られて
086傾斜面(なぞへ)の坂路(さかみち)右左(みぎひだり)
087伝(つた)ひ伝(つた)ひて下(くだ)りまし
088千条(ちすぢ)の滝(たき)よりおちくだつ
089谷(たに)の清水(しみづ)に禊(みそぎ)して
090馬(うま)に水飼(みづか)ひ荒野原(あらのはら)
091勇(いさ)み進(すす)みて出(い)でたまふ
092其(その)御姿(みすがた)の雄々(をを)しさよ
093百神(ももがみ)等(たち)は御尾前(みをさき)に
094仕(つか)へまつりて霊光(れいくわう)の
095輝(かがや)きたまふ御後(みあと)より
096畏(おそ)れ謹(つつし)み出(い)でたまふ
097紫微天界(たかあまはら)の国土生(くにう)みや
098御子生(みこう)みの旅(たび)の物語(ものがたり)
099水明閣(すゐめいかく)に端坐(たんざ)して
100東雲社(しののめしや)員(ゐん)に筆(ふで)とらせ
101心(こころ)いそいそ述(の)べてゆく
102嗚呼(ああ)惟神(かむながら)々々(かむながら)
103神(かみ)の御霊(みたま)の幸(さちは)ひて
104此(こ)の物語(ものがたり)いや広(ひろ)に
105いや審(つばら)かに後(のち)の世(よ)の
106鏡(かがみ)ともなり塩(しほ)となり
107花(はな)ともなりて世(よ)の人(ひと)の
108御魂(みたま)に光(ひかり)与(あた)ふべく
109守(まも)らせ給(たま)へと願(ね)ぎ奉(まつ)る。
110 顕津男(あきつを)の神(かみ)は宇礼志穂(うれしほ)の神(かみ)、111魂機張(たまきはる)の神(かみ)、112結比合(むすびあはせ)の神(かみ)、113美味素(うましもと)の神(かみ)の四柱神(よはしらがみ)と共(とも)に、114玉藻山(たまもやま)の千条(ちすぢ)の滝水(たきみづ)の集(あつま)れる大滝川(おほたきがは)の清流(せいりう)に禊(みそぎ)し給(たま)ひ、115おのもおのも駒(こま)に水飼(みづか)ひながら、116主(ス)の大神(おほかみ)を遥(はる)かに伏(ふ)し拝(をが)み、117西方(にしかた)の国(くに)の国土造(くにつく)り神生(かみう)みの神業(みわざ)を、118𪫧怜(うまら)に委曲(つばら)に完成(くわんせい)すべく、119声(こゑ)も清(すが)しく祈(いのり)の御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
120『久方(ひさかた)の天津(あまつ)高宮(たかみや)の主(ス)の神(かみ)に
121禊(みそぎ)終(をは)りて願(ね)ぎ言(ごと)申(まを)さむ
122真鶴(まなづる)の国土(くに)はやうやく固(かた)まりぬ
123西方(にしかた)の国土(くに)生(う)み守(まも)らせたまへ
124玉野丘(たまのをか)膨(ふく)れ上(あが)りし神業(かむわざ)に
125ならひて我(われ)は国土生(くにう)みせむとす
126もろもろの曲神(まがかみ)等(たち)を言向(ことむ)けて
127神(かみ)の依(よ)さしの国土生(くにう)みをせむ
128わが伊行(いゆ)く道(みち)の隈手(くまで)も恙(つつが)なく
129進(すす)ませたまへ主(ス)の大御神(おほみかみ)
130科戸辺(しなどべ)の風(かぜ)も静(しづか)にふくよかに
131わが行(ゆ)く道(みち)に幸(さちは)ひあれかし』
132 宇礼志穂(うれしほ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
133『わが岐美(きみ)の御後(みあと)に従(したが)ひ進(すす)みゆく
134道(みち)の隈手(くまで)も恙(つつが)あらすな
135真鶴(まなづる)の国(くに)の境(さかひ)の日南河(ひなたがは)
136向(むか)つ岸(きし)までおくらせたまはれ
137真鶴(まなづる)の国土(くに)はやうやく固(かた)まれど
138まだ地(つち)稚(わか)し駒(こま)はなづまむ
139玉藻山(たまもやま)千条(ちすぢ)の滝(たき)の集(あつま)りし
140大滝川(おほたきがは)の水底(みそこ)は澄(す)めり
141澄(す)みきらふ大滝川(おほたきがは)の真清水(ましみづ)は
142瑞(みづ)の御霊(みたま)の心(こころ)なるかも
143大滝川(おほたきがは)清(きよ)き流(なが)れに禊(みそぎ)して
144わが魂線(たましひ)は甦(よみが)へりぬる
145水底(みなそこ)の砂利(じやり)さへ小魚(さな)さへ透(す)きとほる
146大滝川(おほたきがは)の清(きよ)くもあるかな
147駿馬(はやこま)は嘶(いなな)き鶴(つる)は万代(よろづよ)を
148うたひて岐美(きみ)がみゆき送(おく)るも
149大滝川(おほたきがは)岸辺(きしべ)に萌(も)ゆる夏草(なつぐさ)の
150緑(みどり)の若草(わかぐさ)わけて進(すす)まむ』
151 魂機張(たまきはる)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
152『魂機張(たまきは)る命(いのち)の清水(しみづ)よ真清水(ましみづ)よ
153千条(ちすぢ)の滝(たき)より落(お)つる流(なが)れは
154たうたうといや永久(とこしへ)におちたぎつ
155滝(たき)のごとあれ岐美(きみ)の齢(よはひ)は
156永久(とこしへ)に涸(か)るるためしはあらたきの
157いや高長(たかなが)に流(なが)るる生命(いのち)よ
158かかる世(よ)に生(うま)れてかかる楽(たの)しさを
159味(あぢ)はひにけり岐美(きみ)に仕(つか)へて
160玉藻山(たまもやま)千条(ちすぢ)の滝(たき)の音(おと)高(たか)く
161響(ひび)きわたらへ岐美(きみ)の御(おん)名(な)は
162百千草(ももちぐさ)四方(よも)に香(にほ)ひて百鳥(ももどり)の
163声(こゑ)冴(さ)え渡(わた)る大滝川(おほたきがは)の辺(へ)
164川水(かはみづ)に五(いつ)つの駒(こま)の水飼(みづか)ひて
165進(すす)まむ今日(けふ)の旅(たび)面白(おもしろ)し
166行(ゆ)く先(さき)に如何(いか)なる神(かみ)のさやるとも
167退(しりぞ)けたまへ言霊(ことたま)の水火(いき)に
168旅立(たびだ)たす岐美(きみ)の御供(みとも)に仕(つか)へつつ
169わが身(み)わが魂(たま)わくわく躍(をど)るも
170極(きは)みなき望(のぞ)みかかへて旅立(たびだ)たす
171岐美(きみ)の面(おも)わを勇(いさ)ましく思(おも)ふ
172御(おん)面(おも)は月日(つきひ)の如(ごと)くかがやきて
173射向(いむか)ふ神(かみ)とならせたまひぬ
174わが神(かみ)は面勝神(おもかつがみ)よ射向(いむか)ふ神(かみ)
175如何(いか)なる曲(まが)もさやらむすべなし
176大野原(おほのはら)吹(ふ)き来(く)る風(かぜ)も柔(やはら)かに
177みゆきことほぐ響(ひびき)をつたふ』
178 結比合(むすびあはせ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
179『大滝川(おほたきがは)清(きよ)き流(なが)れは永久(とこしへ)の
180岐美(きみ)の生命(いのち)と澄(す)みきらひたり
181雲(くも)の上(うへ)に浮(う)きたつ玉藻(たまも)の神山(かみやま)は
182紫(むらさき)の雲(くも)に包(つつ)まれにけり
183紫(むらさき)の雲(くも)の上(うへ)より玉野(たまの)比女(ひめ)
184生代(いくよ)の比女(ひめ)は岐美(きみ)を送(おく)らむ
185生(あ)れませし御子(みこ)の生(お)ひ立(た)ち楽(たの)しみて
186西方(にしかた)の国土(くに)に立(た)たす岐美(きみ)はも
187真鶴山(まなづるやま)玉藻(たまも)の山(やま)や三笠山(みかさやま)は
188真鶴国(まなづるくに)の要(かなめ)なるかも
189月(つき)も日(ひ)も清(きよ)く流(なが)るる大滝(おほたき)の
190川(かは)は底(そこ)まで澄(す)みきらひたり
191夕(ゆふ)ざれば星(ほし)の真砂(まさご)の数々(かずかず)は
192水面(みのも)に清(きよ)く浮(うか)ぶなるらむ
193霊線(たましひ)の結(むす)びの力(ちから)に月(つき)も日(ひ)も
194星(ほし)も虚空(こくう)にやすく定(き)まれり
195まだ稚(わか)き国原(くにはら)なれど月(つき)日(ひ)星(ほし)の
196霊線(たましひ)の糸(いと)に動(うご)くともせず
197天(あま)の川(かは)南(みなみ)ゆ北(きた)に大空(おほぞら)を
198くぎりて清(きよ)き真鶴(まなづる)の国(くに)』
199 美味素(うましもと)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
200『玉藻山(たまもやま)玉(たま)の泉(いづみ)ゆおちたぎつ
201千条(ちすぢ)の滝(たき)の水(みづ)はあまきも
202地(ち)の上(うへ)の総(すべ)てのものを霑(うるほ)して
203育(はぐ)くみ守(まも)れ千条(ちすぢ)の滝水(たきみづ)
204神々(かみがみ)の食(く)ひて生(い)くべき稲種(いなだね)は
205この川水(かはみづ)に育(はぐ)くまるなり
206天(あめ)の狭田(さだ)長田(ながた)に注(そそ)ぐ大滝(おほたき)の
207川(かは)の清水(しみづ)の味(あぢ)はひよきかも
208言霊(ことたま)の水火(いき)こもらずば真清水(ましみづ)も
209あまき味(あぢ)はひ備(そな)はらざらむを
210天地(あめつち)の総(すべ)てのものら美味素(うましもと)の
211神(かみ)の守(まも)りの味(あぢ)はひもてるも
212神々(かみがみ)の魂線(たましひ)までも味(あぢ)はひを
213授(さづ)けて守(まも)る美味素(うましもと)の神(かみ)よ
214川(かは)の辺(べ)に鳴(な)く鈴虫(すずむし)の声(こゑ)さへも
215味(あぢ)はひうましく耳(みみ)に響(ひび)けり
216おちくだつ千条(ちすぢ)の滝(たき)の響(ひびき)さへ
217耳(みみ)なぐさむる味(あぢ)はひなりけり
218いざさらば岐美(きみ)よ召(め)しませ駒(こま)の背(せ)に
219吾(われ)は御供(みとも)に仕(つか)へまつらむ』
220 斯(か)く歌(うた)ひ終(をは)り給(たま)へば、221太元(おほもと)顕津男(あきつを)の神(かみ)は、
222『美味素(うましもと)神(かみ)の言葉(ことば)の味(あぢ)はひに
223我(われ)は進(すす)まむ駒(こま)に鞭(むち)うちて』
224と宣(の)らせつつ、225馬背(こまのせ)に跨(またが)り、226五色(ごしき)の絹(きぬ)もて造(つく)りたる御手綱(みたづな)を左手(ゆんで)にもたせ、227右手(めて)に玉鞭(たまむち)を打(う)ち振(ふ)りながら、228駒(こま)に翳(かざ)せる鈴(すず)の音(ね)もさやさやに、229神跡(みあと)なき若草原(わかくさばら)を進(すす)ませ給(たま)へば、230宇礼志穂(うれしほ)の神(かみ)は案内(あない)の為(た)めと御前(みまへ)に立(た)ち、231三柱神(みはしらがみ)は御後(みしりへ)に従(したが)ひまつり、232湯気(ゆげ)立(た)ち昇(のぼ)る大野原(おほのがはら)を、233西(にし)へ西(にし)へと進(すす)ませ給(たま)ふぞ勇(いさ)ましき。
234(昭和八・一一・二九 旧一〇・一二 於水明閣 加藤明子謹録)
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