霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二三章 魔(ま)の森林(しんりん)〔一九一七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第75巻 天祥地瑞 寅の巻 篇:第4篇 千山万水 よみ(新仮名遣い):せんざんばんすい
章:第23章 魔の森林 よみ(新仮名遣い):まのしんりん 通し章番号:1917
口述日:1933(昭和8)年11月30日(旧10月13日) 口述場所:水明閣 筆録者:森良仁 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年2月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
スウヤトゴル(=聖なる山)に身を変えて、西方の国土の天地を我が物としようとしていた大曲津見は、顕津男の神を騙って朝香比女の神を騙し、御子生みをなそうと企んでいた。
しかし、本物の顕津男の神が西方の国に間近にやってきたのに驚き恐れ、途中で一行を全滅させようと、部下の邪神を集めて何度も評議をした。
その結果、嘘つきに長けた醜狐を柏木の森に遣わして、妨害計画を与えて実行させたのである。この醜狐は、醜女の神、といった。
醜女の神は柏木の森の手前に姿を隠し、顕津男の神の一行の駒の足許ちかく、かすかな声で、『右に行けば必ず勝つ、中の道を行けば必ず負ける、左に行けば必ず滅びる、主の神の教えであるぞ』と歌っていた。
顕津男の神はこの歌を聞いて微笑みつつ、醜神の罠と見破り、左の道へ進むことを歌う。
従者神たちはそれを聞いて不安に思うが、美波志比古は、スウヤトゴルの手下の曲津神の姦計であろう、と歌って不安を鎮める。
こうして一行は、曲津神が滅びると言った左の道を選んだ。おのおの曲津神に対する決意を歌って勇気をつけつつ、柏木の森を難なく突破し、スウヤトゴル山脈さして悠然と進んで行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-09-11 16:56:16 文字数:4382 OBC :rm7523
愛善世界社版: 八幡書店版:第13輯 407頁 修補版: 校定版:439頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 スウヤトゴルに姿(すがた)を変(へん)じて、002西方(にしかた)の国土(くに)の天地(てんち)を吾物(わがもの)とし、003邪気(じやき)に包(つつ)み居(ゐ)たる大曲津見(おほまがつみ)は、004高地秀(たかちほ)の宮(みや)より降(くだ)らせ給(たま)ふ朝香(あさか)比女(ひめ)の神(かみ)を、005自(みづか)ら顕津男(あきつを)の神(かみ)と称(しよう)し迎(むか)へ奉(まつ)りて、006御子生(みこう)みを為(な)し、007西方(にしかた)の国土(くに)を完全(くわんぜん)に占領(せんりやう)せむものと、008計画(けいくわく)をさをさ怠(をこた)らざりし処(ところ)へ、009真正(しんせい)の太元(おほもと)顕津男(あきつを)の神(かみ)の間近(まぢか)に来(きた)り給(たま)ひしに驚(おどろ)き、010途中(とちう)にて瑞(みづ)の御霊(みたま)一行(いつかう)を全滅(ぜんめつ)せしめむと、011部下(ぶか)の邪神(じやしん)等(たち)を集(あつ)めて種々(しゆじゆ)評議(ひやうぎ)の結果(けつくわ)、012最(もつと)も狡猾(かうくわつ)にして性質(せいしつ)悪(わる)く、013嘘(うそ)つき上手(じやうず)で、014自己(じこ)の利益(りえき)のみを巧妙(かうめう)に計(はか)らふ醜狐(しこぎつね)を柏木(かしはぎ)の森(もり)に遣(つか)はし、015種々(しゆじゆ)の謀計(ぼうけい)を与(あた)へて之(これ)に当(あた)らしめて居(ゐ)る。016此(この)狐(きつね)を醜女(しこめ)の神(かみ)といふ。017醜女(しこめ)の神(かみ)は柏木(かしはぎ)の森(もり)の手前(てまへ)に姿(すがた)を隠(かく)しながら、018顕津男(あきつを)の神(かみ)の一行(いつかう)の駒(こま)の脚許(あしもと)近(ちか)く、019微(かすか)なる声(こゑ)にて、
020『右(みぎ)行(ゆ)かば必(かなら)ず勝(か)たむ
021中(なか)行(ゆ)かば必(かなら)ず負(ま)けむ
022左(ひだり)行(ゆ)かば必(かなら)ず亡(ほろ)びむ
023主(ス)の神(かみ)の教(をしへ)ぞ』
024と姿(すがた)を隠(かく)して歌(うた)つて居(ゐ)る。
025 顕津男(あきつを)の神(かみ)は耳敏(みみざと)くも、026醜女(しこめ)の神(かみ)の歌(うた)を聞(き)きて微笑(ほほゑ)みつつ御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
027『醜神(しこがみ)の醜(しこ)の言葉(ことば)を聞(き)きにけり
028左(ひだり)に行(ゆ)くも我(われ)は亡(ほろ)びず
029三(み)ツ栗(ぐり)の中津道(なかつみち)をば我(われ)行(ゆ)かむ
030亡(ほろ)びを知(し)らぬ面勝(おもかつ)の神(かみ)は
031右(みぎ)行(ゆ)かば勝(か)たむといひし醜(しこ)の声(こゑ)は
032我(われ)を謀(たばか)る偽(いつは)り言(ごと)なり
033この森(もり)は奥深(おくふか)くしてほの暗(ぐら)し
034駒(こま)の蹄(ひづめ)に踏(ふ)み破(やぶ)りなむ
035右(みぎ)行(ゆ)かば必(かなら)ず曲津(まが)の深(ふか)き罠(わな)に
036かかりて百神(ももがみ)亡(ほろ)ぶなるべし
037いざさらば亡(ほろ)ぶといひし左(ゆんで)の道(みち)を
038駒(こま)の蹄(ひづめ)にかけて進(すす)まむ』
039 この御歌(みうた)に七柱(ななはしら)の供神(ともがみ)は稍(やや)不安(ふあん)の面持(おももち)しながら、040各自(おのもおのも)に御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
041 美波志(みはし)比古(ひこ)の神(かみ)の御歌(みうた)。
042『スウヤトゴル醜(しこ)の曲津(まがつ)の先走(さきばし)り
043醜女(しこめ)の神(かみ)の謀計(たくみ)なるらむ
044美波志(みはし)比古(ひこ)吾(われ)は進(すす)まむ瑞御霊(みづみたま)の
045御許(みゆる)しを得(え)て左(ひだり)の道(みち)を
046わが岐美(きみ)の光(ひかり)を恐(おそ)れてスウヤトゴルは
047此処(ここ)に謀計(たくみ)の罠(わな)を造(つく)れるか
048スウヤトゴル輩下(てした)に仕(つか)ふる醜狐(しこぎつね)
049この森林(しんりん)に仇(あだ)すると聞(き)く
050この森(もり)を拓(ひら)き渡(わた)りてスウヤトゴルの
051曲津(まが)のすみかに進(すす)まむと思(おも)ふ
052兎(と)も角(かく)も吾(われ)は御前(みさき)に仕(つか)ふべし
053瑞(みづ)の御霊(みたま)よ続(つづ)かせ給(たま)へ』
054 斯(か)く歌(うた)ひて、055左(ひだり)へ行(ゆ)けば亡(ほろ)ぶべしとの曲神(まがかみ)の言葉(ことば)踏(ふ)みにじりつつ、056奥(おく)へ奥(おく)へと一行(いつかう)八柱(やはしら)は馬上(ばじやう)豊(ゆたか)に御歌(みうた)うたひつつ進(すす)み給(たま)ふ。
057 顕津男(あきつを)の神(かみ)の御歌(みうた)。
058『柏木(かしはぎ)の森(もり)は小暗(をぐら)く繁(しげ)りたれど
059我(われ)は恐(おそ)れじ悪魔(まが)のすみかも
060大空(おほぞら)を封(ふう)じて小暗(をぐら)き柏木(かしはぎ)の
061森(もり)を照(てら)してわが行(ゆ)かむかな
062スウヤトゴル大曲津見(おほまがつみ)の潜(ひそ)みたる
063峰(みね)は彼方(かなた)の空(そら)に聳(そび)えつ
064四方(よも)八方(やも)ゆ怪(あや)しき声(こゑ)の響(ひび)き来(く)る
065われ柏木(かしはぎ)の森(もり)を拓(ひら)かむ
066曲神(まがかみ)の勢(いきほひ)如何(いか)に強(つよ)くとも
067生言霊(いくことたま)に拓(ひら)きすすまむ
068愛善(あいぜん)の光(ひかり)を四方(よも)に照(てら)し行(ゆ)く
069我(われ)に仇(あだ)する曲津(まが)は亡(ほろ)びむ
070醜神(しこがみ)の亡(ほろ)ぶといひし森林(しんりん)の
071左(ひだり)の道(みち)を伊行(いゆ)くは楽(たの)しも
072大空(おほぞら)の雲(くも)はちぎれて天津(あまつ)日(ひ)の
073光(ひかり)は静(しづか)にさし初(そ)めにけり
074曲神(まがかみ)は雲(くも)を起(おこ)して御空(みそら)包(つつ)み
075月日(つきひ)の光(かげ)をさへぎりて居(を)り』
076 内津(うちつ)豊日(ゆたひ)の神(かみ)の御歌(みうた)。
077『時(とき)じくに怪(あや)しき音(おと)の聞(きこ)ゆなる
078柏木(かしはぎ)の森(もり)は曲津(まが)のすみかよ
079今(いま)とならば何(なに)を恐(おそ)れむ瑞御霊(みづみたま)
080光(ひかり)の岐美(きみ)の現(あ)れましぬれば
081亡(ほろ)びなむと醜女(しこめ)の神(かみ)の叫(さけ)びたる
082道行(みちゆ)く吾(われ)は楽(たの)しかりけり
083亡(ほろ)ぶべき道(みち)を明(あか)して進(すす)み行(ゆ)く
084光(ひかり)の岐美(きみ)の雄々(をを)しきろかも
085斯(か)くならば如何(いか)なる醜(しこ)のさやるとも
086何(なに)か恐(おそ)れむ禊(みそぎ)せし身(み)は
087惟神(かむながら)禊祓(みそぎはら)ひしわれなれば
088醜(しこ)の犯(をか)さむ術(すべ)なかるべし
089わが行(ゆ)かむ道(みち)の隈手(くまで)も恙(つつが)なく
090守(まも)らせ給(たま)へ皇(すめら)大神(おほかみ)
091主(ス)の神(かみ)のウ声(ごゑ)に生(あ)れし吾(われ)にして
092醜女(しこめ)の言葉(ことば)に動(うご)くべきやは
093地(つち)稚(わか)き西方(にしかた)の国土(くに)は彼方(あち)此方(こち)に
094曲津見(まがつみ)潜(ひそ)みて仇(あだ)を為(な)すかな
095今日(けふ)よりはこの国原(くにはら)は天国(てんごく)と
096新(あらた)に生(あ)れし聖所(すがど)なるぞや』
097 大道(おほみち)知男(しりを)の神(かみ)の御歌(みうた)。
098『惟神(かむながら)大道(おほみち)知男(しりを)の神(かみ)われは
099左(ひだり)の道(みち)に災(わざはひ)なしと思(おも)ふ
100右(みぎ)行(ゆ)けば災(わざはひ)せむと醜女神(しこめがみ)
101力(ちから)かぎりに謀(たく)らみ居(ゐ)るも
102この森(もり)は東西(とうざい)十(じふ)里(り)南北(なんぼく)は
103三十八(さんじふはち)里(り)の曲津(まが)のすみかぞ
104スウヤトゴル輩下(てした)の神(かみ)の大方(おほかた)は
105この森林(しんりん)に潜(ひそ)み居(を)るとふ
106兎(と)も角(かく)も柏木(かしはぎ)の森(もり)の醜神(しこがみ)を
107言向和(ことむけやは)せて進(すす)みませ岐美(きみ)
108行(ゆ)けど行(ゆ)けど果(はて)しも知(し)らぬ森林(しんりん)の
109木蔭(こかげ)を渡(わた)る風(かぜ)は冷(つめ)たき
110曲神(まがかみ)の水火(いき)凝(こ)り凝(こ)りて風(かぜ)さへも
111わが身(み)の骨(ほね)を浸(し)み透(とほ)すなり
112言霊(ことたま)の水火(いき)を照(てら)してこの森(もり)を
113駒(こま)の蹄(ひづめ)に踏(ふ)みにじり行(ゆ)かむ
114曲神(まがかみ)の醜(しこ)の謀計(たくみ)は飽(あ)くまでも
115深(ふか)くあれども底力(そこぢから)なし
116表面(うはべ)のみ強(つよ)く見(み)ゆれど曲神(まがかみ)は
117生言霊(いくことたま)にあひて消(き)ゆるも
118言霊(ことたま)の幸(さち)はふ国(くに)よ言霊(ことたま)の
119天照(あまて)る国(くに)よ恐(おそ)れなき国(くに)よ
120今日(けふ)までは曲津(まがつ)の神(かみ)に襲(おそ)はれしが
121今(いま)や真言(まこと)の力(ちから)得(え)にけり
122禊(みそぎ)して清(きよ)まりにけるわが魂(たま)は
123昨日(きのふ)に増(ま)して百倍(ももへ)強(つよ)きも』
124 宇志波岐(うしはぎ)の神(かみ)の御歌(みうた)。
125『この辺(あた)り宇志波岐(うしはぎ)居(を)れど柏木(かしはぎ)の
126森(もり)に足(あし)をば入(い)れし事(こと)なし
127今日(けふ)までは怪(あや)しの森(もり)と捨(す)て置(お)きし
128曲津(まが)のすみかを踏(ふ)みて破(やぶ)らむ
129心強(こころづよ)くも光(ひかり)の神(かみ)の御供(みとも)して
130曲津(まがつ)のこもる森(もり)行(ゆ)く今日(けふ)は
131スウヤトゴル峰(みね)の魔神(まがみ)もこの森(もり)の
132亡(ほろ)びを聞(き)かば忽(たちま)ち消(き)ゆべし
133果(はて)しなき小暗(をぐら)き穢(きたな)きこの森(もり)は
134曲津(まが)のすみかに応(ふさ)はしきかな
135百木々(ももきぎ)は半(なか)ば枯(か)れつつ各(おの)も各(おの)も
136邪気(じやき)吐(は)き出(い)でて世(よ)を汚(けが)しつつ
137曲津見(まがつみ)の邪気(じやき)の集(あつま)るこの森(もり)を
138生言霊(いくことたま)にきよめひらかむ
139この森(もり)に醜(しこ)の狐(きつね)の棲(す)むと聞(き)けば
140分(わ)け入(い)りし神(かみ)今(いま)までになし
141この森(もり)に迷(まよ)ひ入(い)りたる国津(くにつ)神(かみ)は
142生(い)きて帰(かへ)りし一柱(ひとはしら)もなし
143瑞御霊(みづみたま)岐美(きみ)に仕(つか)へて進(すす)み行(ゆ)く
144吾(われ)等(ら)に邪気(じやき)は襲(おそ)はざりけり
145わが駒(こま)は邪気(じやき)の集(あつま)る森中(もりなか)を
146いななきながら進(すす)み行(ゆ)くかも
147顕津男(あきつを)の神(かみ)の御稜威(みいづ)に驚(おどろ)きて
148醜(しこ)の曲津(まがつ)は逃(に)げ去(さ)りにけむか
149安々(やすやす)と渡(わた)り行(ゆ)くかも魔(ま)の森(もり)の
150茂(しげ)みを分(わ)けて八柱(やはしら)の神(かみ)は』
151 臼造男(うすつくりを)の神(かみ)の御歌(みうた)。
152『岐美(きみ)行(ゆ)かば柏木(かしはぎ)の森(もり)は明(あき)らけく
153光(ひか)り初(そ)めたり曲津(まが)は何処(いづく)ぞ
154仰(あふ)ぎ見(み)ればスウヤトゴルの山脈(やまなみ)は
155いやつぎつぎに遠去(とほざ)りにける
156顕津男(あきつを)の神(かみ)の光(ひかり)に曲津見(まがつみ)は
157恐(おそ)れ山(やま)もて逃(に)げ去(さ)ると見(み)ゆ
158この森(もり)は生言霊(いくことたま)に縛(しば)りあれば
159曲津(まが)も動(うご)かす能(あた)はざるべし
160醜女神(しこめがみ)この森林(しんりん)に永遠(とことは)に
161すまひて国土(くに)の仇(あだ)をなしつつ
162曲津見(まがつみ)の輩下(てした)の神(かみ)は八百万(やほよろづ)
163この柏木(かしはぎ)の森(もり)にひそめる
164曲神(まがかみ)の数(かず)の限(かぎ)りを言向(ことむ)けて
165神(かみ)の聖所(すがど)に清(きよ)めむとぞ思(おも)ふ
166亡(ほろ)ぶべしと曲津(まがつ)の宣(の)りし左(ゆんで)の道(みち)は
167心安(うらやす)けかり神(かみ)の光(ひかり)に
168月(つき)も日(ひ)も御空(みそら)の雲(くも)を押分(おしわ)けて
169柏木(かしはぎ)の森(もり)の上(うへ)に輝(かがや)く
170輝(かがや)ける御魂(みたま)々々(みたま)を照(てら)しつつ
171出(い)で行(ゆ)く道(みち)に曲津(まが)の姿(かげ)なし
172日南河(ひなたがは)禊(みそぎ)の神事(わざ)の功績(いさをし)に
173安(やす)く渡(わた)らむ柏木(かしはぎ)の森(もり)を
174曲神(まがかみ)は姿(かげ)を潜(ひそ)めて静(しづか)なり
175梢(こずゑ)を渡(わた)る風(かぜ)の音(ね)のみにて
176迦陵(から)頻伽(びんが)時(とき)を得顔(えがほ)にうたふなり
177曲津見(まがつみ)の森(もり)にも天津(あまつ)日(ひ)照(て)らひて
178百花(ももばな)は露(つゆ)を帯(お)びつつ森蔭(もりかげ)に
179艶(えん)を競(きそ)ひて咲(さ)き出(い)でにける
180花蓆(はなむしろ)敷(し)き並(なら)べたる如(ごと)くなり
181わが行(ゆ)く森(もり)の木下蔭(こしたかげ)の道(みち)は
182醜神(しこがみ)のすまへる森(もり)は忽(たちま)ちに
183花(はな)匂(にほ)ひつつ小鳥(ことり)はうたひつ
184虫(むし)の音(ね)も小鳥(ことり)の声(こゑ)も天国(かみくに)の
185春(はる)をうたふか冴(さ)え渡(わた)るなり
186斯(か)くの如(ごと)花(はな)咲(さ)き満(み)つる柏木(かしはぎ)の
187森(もり)に曲津(まがつ)のすむと思(おも)へず
188岐美(きみ)が行(ゆ)く道(みち)の隈手(くまで)に曲津(まが)はなし
189花(はな)咲(さ)き匂(にほ)ひ鳥(とり)うたふのみ
190真鶴(まなづる)の国(くに)より来(きた)るか幾千(いくせん)の
191鶴(つる)は御空(みそら)に舞(ま)ひ初(そ)めにけり
192斯(か)くならばこの魔(ま)の森(もり)は天国(かみくに)よ
193醜女(しこめ)の神(かみ)は逃(に)げ去(さ)りにけむ
194勇(いさ)ましき岐美(きみ)の旅(たび)かも山(やま)も野(の)も
195木草(きぐさ)の果(はて)までよみがへりつつ
196幾千(いくせん)の鶴(つる)の鳴(な)く音(ね)は西方(にしかた)の
197国土(くに)の万世(よろづよ)うたふなるらむ
198右左(みぎひだり)道(みち)を違(たが)へず進(すす)み来(こ)し
199今日(けふ)の旅路(たびぢ)は安(やす)けかりけり
200右(みぎ)行(ゆ)かば醜女(しこめ)の神(かみ)の謀計(たくらみ)に
201落(お)ちて吾(われ)はも苦(くる)しみにけむ
202曲神(まがかみ)の謀(たくみ)の裏(うら)をかきながら
203岐美(きみ)は雄々(をを)しく出(い)でまししはや
204吾(われ)も亦(また)光(ひかり)の岐美(きみ)の御恵(みめぐみ)に
205心(こころ)安(やす)けく魔(ま)の森(もり)を行(ゆ)くも
206処々(ところどころ)清水(しみづ)湛(たた)ふる泉(いづみ)ありて
207天津(あまつ)日(ひ)の影(かげ)浮(うか)べて澄(す)むも
208この清水(しみづ)今日(けふ)が日(ひ)までも濁(にご)らひしを
209生言霊(いくことたま)に甦(よみがへ)りたるよ
210斯(か)くならば手(て)に掬(むす)ぶとも汚(けが)れまじ
211長(なが)き生命(いのち)の糧(かて)ともならむか』
212 内容居(うちいるゐ)の神(かみ)の御歌(みうた)。
213『月読(つきよみ)の神(かみ)の御霊(みたま)に従(したが)ひて
214心(こころ)安(やす)けく魔(ま)の森(もり)を行(ゆ)くも
215大曲津見(おほまがつみ)醜(しこ)のすみかのこの森(もり)の
216岐美(きみ)のみゆきに清(きよ)まりしはや
217曲津見(まがつみ)は恐(おそ)れをなしてスウヤトゴルの
218山(やま)もろともに遠去(とほざ)りにける
219醜狐(しこぎつね)数多(あまた)棲(す)むてふこの森(もり)も
220月日(つきひ)輝(かがや)く神園(みその)となりしはや
221吹(ふ)く風(かぜ)も清(すが)しく冴(さ)えて光(ひか)るなり
222木々(きぎ)の梢(こずゑ)は千代(ちよ)ささやきつ
223大空(おほぞら)を包(つつ)みし醜(しこ)の黒雲(くろくも)も
224散(ち)りて跡(あと)なく月日(つきひ)は照(て)らふ
225斯(か)くならば未(ま)だ地(つち)稚(わか)き西方(にしかた)の
226国土(くに)は栄(さか)えむ草木(くさき)は萌(も)えむ
227天津(あまつ)醜女(しこめ)神(かみ)は何処(いづく)の野(の)の果(はて)に
228逃(に)げ去(さ)りにけむ姿(かげ)だにもなし
229次々(つぎつぎ)に岐美(きみ)の光(ひかり)の輝(かがや)きて
230醜(しこ)の魔神(まがみ)の隠(かく)れ所(が)もなし
231天(あま)翔(かけ)り地(つち)を潜(くぐ)りて逃(に)ぐるとも
232如何(いか)でのがれむ神(かみ)の眼(まなこ)を
233西方(にしかた)の稚(わか)き国原(くにはら)にやうやうと
234あらはれましぬ光(ひかり)の岐美(きみ)は
235この国土(くに)は八十(やそ)比女神(ひめがみ)のいまさずば
236殊(こと)に乱(みだ)れし曲津(まが)のすみかよ
237曲神(まがかみ)は八十(やそ)比女神(ひめがみ)のいまさぬを
238よき機会(しほ)として雄猛(をたけ)び狂(くる)ふも
239主(ス)の神(かみ)の依(よ)さし給(たま)ひし八十(やそ)比女(ひめ)の
240神(かみ)の御稜威(みいづ)は国土(くに)の鎮(しづ)めよ
241この国土(くに)に八十(やそ)比女(ひめ)の一柱(ひとり)ましまさば
242斯(か)くも曲津(まがつ)は猛(たけ)ばざりしを
243漸(やうや)くに光(ひかり)の神(かみ)の出(い)でましを
244仰(あふ)ぎて国原(くにはら)よみがへりつつ
245主(ス)の神(かみ)の神言(みこと)畏(かしこ)み国原(くにはら)を
246廻(めぐ)れど曲津(まが)は亡(ほろ)びざりける
247八十日(やそか)日(ひ)はあれども今日(けふ)の生日(いくひ)こそ
248国土(くに)の始(はじ)めの吉日(よきひ)なるかも
249濛々(もうもう)と黒雲(くろくも)立(た)ちて昼(ひる)もなほ
250小暗(をぐら)き国土(くに)を照(てら)し給(たま)ひぬ
251わが岐美(きみ)の厳(いづ)の御水火(みいき)に大空(おほぞら)を
252包(つつ)みし雲(くも)も散(ち)り失(う)せにけり
253黒雲(くろくも)は紫(むらさき)の雲(くも)と変(へん)じつつ
254この国原(くにはら)はあらたに生(うま)れむ
255八雲(やくも)立(た)つ黒雲(くろくも)立(た)ちたつ西方(にしかた)の
256国土(くに)を照(てら)して光(ひか)る岐美(きみ)はも
257待(ま)ち待(ま)ちし光(ひかり)の岐美(きみ)は現(あ)れましぬ
258神(かみ)に祈(いの)りし功(いさを)なるらむ
259今日(けふ)よりは国津神(くにつかみ)等(たち)導(みちび)きて
260禊(みそぎ)の神事(わざ)に世(よ)を生(い)かすべし
261四方(よも)八方(やも)は雲(くも)と霧(きり)とに包(つつ)まれて
262月光(つきかげ)さへも見(み)ぬ国土(くに)なりけり
263仰(あふ)ぎ見(み)れば天津(あまつ)日(ひ)の光(かげ)月(つき)の光(かげ)
264御空(みそら)の碧(あを)に輝(かがや)き給(たま)ひぬ
265空(そら)碧(あを)く地(つち)は緑(みどり)に木草(きぐさ)生(お)ひて
266生(うま)れし国土(くに)は神国(みくに)なるかも
267高照(たかてる)の山(やま)は東(ひがし)に聳(そび)えつつ
268紫(むらさき)の雲(くも)わき立(た)つが見(み)ゆ
269今日(けふ)までは高照山(たかてるやま)の頂上(いただき)も
270雲(くも)に包(つつ)まれ見(み)えずありしよ』
271 初産霊(はつむすび)の神(かみ)の御歌(みうた)。
272『駿馬(はやこま)の嘶(いなな)き強(つよ)し御空(みそら)にも
273鶴(つる)の鳴(な)く音(ね)の冴(さ)え渡(わた)る今日(けふ)
274この国土(くに)に始(はじ)めて見(み)たる日月(じつげつ)の
275光(かげ)のさやけさに吾(わが)魂(たま)生(い)くるも
276黒雲(くろくも)に空(そら)は閉(とざ)され国津(くにつ)神(かみ)は
277始(はじ)めて拝(をが)む月日(つきひ)なりけり
278真鶴(まなづる)の空(そら)に舞(ま)ひつつ歌(うた)ひつつ
279岩戸(いはと)開(ひら)けし国土(くに)を祝(いは)ふも
280大空(おほぞら)を十重(とへ)に二十重(はたへ)に包(つつ)みたる
281雲(くも)散(ち)り行(ゆ)きて御空(みそら)高(たか)しも
282碧々(あをあを)と底(そこ)ひも知(し)らぬ空(そら)の海(うみ)を
283静(しづか)に渡(わた)らす月舟(つきふね)の影(かげ)
284嬉(うれ)しさは何(なに)に譬(たと)へむ百千花(ももちばな)
285咲(さ)き匂(にほ)ひたる新(あたら)しき国土(くに)を
286山(やま)に野(の)に百花(ももばな)千花(ちばな)咲(さ)き満(み)ちて
287吹(ふ)き来(く)る風(かぜ)も芳(かむば)しき国土(くに)』
288 愛見男(なるみを)の神(かみ)の御歌(みうた)。
289『天国(かみくに)と早(は)や愛見男(なるみを)の神柱(みはしら)の
290国土(くに)はさやけく雲(くも)晴(は)れにつつ
291瑞御霊(みづみたま)光(ひかり)の岐美(きみ)の出(い)でましに
292新(あたら)しき国土(くに)生(うま)れたるかも
293スウヤトゴル曲津見(まがつみ)潜(ひそ)む山脈(やまなみ)は
294今(いま)を限(かぎ)りに遠(とほ)ざかりつつ
295曲神(まがかみ)を言向(ことむ)け和(やは)せ西方(にしかた)の
296国土(くに)の月日(つきひ)を永久(とは)に拝(をが)まむ
297草(くさ)も木(き)も小鳥(ことり)も虫(むし)も今日(けふ)よりは
298岐美(きみ)の御稜威(みいづ)をうたひ奉(まつ)らむ
299有難(ありがた)き日(ひ)は来(きた)りけり瑞御霊(みづみたま)
300光(ひかり)の岐美(きみ)の御稜威(みいづ)あふれて
301雲霧(くもきり)は四方(よも)に立(た)ち立(た)ち風(かぜ)冷(ひ)えて
302木草(きぐさ)の生育(そだち)も乏(とぼ)しき国土(くに)なりし
303永遠(とことは)の光(ひかり)の岐美(きみ)の言霊(ことたま)に
304この稚国土(わかぐに)はよみがへるべし
305西方(にしかた)の国土(くに)には八十(やそ)比女神(ひめがみ)坐(ま)さず
306曲津見(まがつみ)処得顔(ところえがほ)に猛(たけ)びし
307待佗(まちわ)びし光(ひかり)の岐美(きみ)の国土造(くにつく)り
308喜(よろこ)び迎(むか)へむ国津神(くにつかみ)等(たち)は』
309 斯(か)く神々(かみがみ)は各自(おのもおのも)生言霊(いくことたま)の御歌(みうた)うたひつつ、310曲神(まがかみ)の棲(す)めるてふ、311柏木(かしはぎ)の森(もり)を何(なん)の艱(なや)みもなく突破(とつぱ)し、312スウヤトゴル山脈(さんみやく)さして、313駒(こま)の轡(くつわ)を並(なら)べ悠然(いうぜん)として進(すす)み給(たま)ふぞ畏(かしこ)き極(きは)みなりけり。
314(昭和八・一一・三〇 旧一〇・一三 於水明閣 森良仁謹録)
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